Q. HPV(ヒトパピローマウイルス)ってなんですか?
A. ヒトに感染して、癌の他色々な病気を引き起こすウイルスです。
ウイルスというと「風邪の病原体」というイメージがありますが、実はいろんな病気をヒトの体に引き起こします。肝炎ウイルスやこのHPVは、なんと癌を発生させることもあるのですね。子宮頚癌の原因がウイルス感染だとわかったのは1980年代と比較的最近のことです。
2008年秋、子宮頚癌がHPV感染によることを発見した功績で Harald zur Hausen 博士がノーベル生理学医学賞を受賞しました。
※ もうちょっと詳しく知りたい方へ・・・
HPVは100種類以上のタイプ(遺伝子型、あるいは亜型)に分類されている「環状二本鎖DNAウイルス」というものだそうです。
そのうち約40種のタイプが子宮頚部,膣壁,外陰,陰茎などに感染する性器HPVであり、さらに子宮頚がんに代表される性器癌から検出される高リスク型HPV(high-risk HPV)と,尖圭コンジローマなどの良性乳頭腫から検出される低リスク型HPV(low-risk HPV)に区別されるとのこと。
【高リスク型】16/18/31/33/35/39/45/51/52/56/58/66/68型
【低リスク型】6/11/40/42/43/44/54/61/72型
Q. HPVと子宮頚癌の関係は?
A. HPVに感染した女性の1000人に約1人が子宮頚癌を発症します。
子宮頚癌の原因になるHPVタイプ(亜型)は100種類のうち約15種類で、その中でも16型と18型がもっとも頻度が高く、この2つで子宮頚癌全体の約70%の原因となります。
HPV感染から子宮頚癌発症までには長い道のりがあります。
HPVの主な感染経路は性交渉です。
感染したときの症状は、ほとんど無いそうです。ですからいつ感染したが自覚できません。
HPVに感染した女性がすべて子宮頚癌を発症するわけではなく、最終的に感染者1000人に一人の割合です。
※ もうちょっと詳しく知りたい方へ・・・
① 感染期(CIN、数週間〜2年):
・性交渉経験のある女性の約6割(本により7〜8割)が感染します。ほとんどは自然治癒しますが、一部の方は持続感染し、②へ
② 前癌期(CIN2/3、数年〜10数年):
・感染者の約1%が前癌病変へ発展します。
③ 発癌期(SCC、数年):
・最終的に感染者の0.1%が子宮頚癌を発症します。
Q. 子宮頚癌って多いんですか? 乳癌の方が有名だけど・・・
A. 女性特有の癌では死因の第2位(1位は乳癌)です。
子宮頚癌は全世界で年間約50万人が診断され、約26万人が死亡しています。日本では年間約10000人が発症し、約3500人が死亡しています。
近年、日本では20〜30歳代の患者が急増し、30歳代の死亡率は10年で2倍に倍増しています。
今までなぜ知らなかったんだろう、と思うほど多い数字ですね。
覚えている方もいらっしゃるかと思われますが、しばらく前に40歳で亡くなったZARDの坂井泉水さんの死因はこの「子宮頚癌」でした。
Q. ワクチンで癌が予防できるなんて、ピンと来ません。
A. 子宮頚癌の始まりはHPV感染だからです。
子宮頚癌の原因がウイルス感染なので「感染を予防すれば癌も予防可能」という単純な考えです。
全ての癌の原因がウイルス感染ではありません(例えば子宮体癌の原因はウイルス感染ではありません)ので誤解無きよう。
HPVが原因となる癌は子宮頚癌だけではありません。他の癌に関する数字を上げておきます;
<HPVが各種癌の原因となる比率>
・子宮頚癌:100%
・膣癌/外陰癌/陰茎癌:約40%
・肛門癌:約90%
・中咽頭癌:約12%
・口腔関連癌:約3%
こ、こわいウイルスなんですね・・・。
Q. どうして10歳代に接種するんですか?
A. 未感染者(=セクシャル・デビュー前)が対象となるからです。
例えば、麻疹に罹ったヒトに麻疹ワクチンは接種しませんよね。
HPVワクチンも未感染者=性交渉未経験者が対象になります。
Q. 成人女性に接種する意味はあるのですか?
A. あります(当院では扱いませんが)。
性交渉経験者は感染している可能性があるので、その分だけ有効率が低下します。
でも、性交渉を経験した全ての女性が感染しているわけでもない・・・この辺が話を複雑にしています。
実際、有効率は落ちますが10代以降の年齢でも有効です。これを「キャッチアップ接種」と呼ぶそうです。
その理由は、HPV感染が「一度かかったらお終い」ではなく「一過性&反復性」という特殊なパターンをとるためです。感染期には無効ですが、それが一過性でウイルスが排除された時期に接種すれば十分免疫がつくのです。
当然、持続感染期〜前癌期以降には無効です。あくまでも感染予防であり、感染後にウイルスを排除する効果はありません。
成人女性は「やり損」を避けるため、接種前に子宮癌検診を受けて接種対象となるかどうか確認する必要がありそうです。自然感染では抗体価が上がりにくく、残念ながら血液検査ではわかりません。
では何歳まで接種する価値があるか・・・上限はないとのこと(一つの目安は45歳らしい)。
※ HPV感染が「一過性&反復性」の理由;
「一度感染するとずっと抗体が維持されて二度と感染しない」という一般的なウイルス感染パターンと異なり、HPVは一回感染しても終生免疫が獲得されず、何回も感染を繰り返すという特徴があります。
それは子宮頚部の粘膜細胞(扁平上皮)にのみ感染するため。全身に感染するわけでないので血液中の抗体もできにくい、次回の感染を防げないというカラクリです。
一方、HPVは「反復感染」ではなく「潜伏持続感染」するという意見もあり、後者の考え方では感染後は効果が期待できないことになります。
本を読んでいても、やはりわかりにくいですねえ・・・というより完全にはわかっていないようです。
Q. HPVワクチンはどんなふうに作るんですか?
A. ウイルス粒子から核を抜いたような形の、どちらかというと不活化ワクチンです。
HPVの「L1蛋白」を抗原として作成したリコンビナントワクチンと呼ばれるもの。「蛋白はウイルスのように集合してHPVと同じ形になるがコアDNAを有しておらず、感染・癌化は起こらないが防御抗体を作る能力を有する」そうです。
ちょっと説明が難しいのでワクチン製造会社のホームページ(★ サーバリックスの成分)をどうぞ。
<製品>
「サーバリックス®」(GSK社):HPV16/18型を標的とした二価ワクチン(発売済み)、
「ガーダシル®」(メルク社)はHPV16/18型に6/11型を加えた四価ワクチン(未発売)。
前述の通りHPV6/11型は「尖圭コンジローマ」という病気を引き起こす亜型であり、ガーダシルはそれらもカバーする目的で造られました。
Q. 怖い副反応はありますか?
A. 今のところ、報告されていません。
ただし、筋肉注射なので「痛みは必発」です(99%!)。ふつうの予防接種は皮下注射であり、筋肉注射の痛みはその比ではありませんのでそのつもりで受けてください。
接種当日・翌日の「倦怠感」も多く報告されています。翌日大切な用事・行事があるときは控えた方が無難かもしれませんね。
Q. HPVワクチンを接種すれば子宮頚癌対策は完璧?
A. いいえ。子宮癌検診も併せれば完璧になります。
前述の通り、HPVワクチンはHPV亜型のうち16型と18型に対応していますが、この2つが子宮頚癌全体に占める割合は約70%であり、100%カバーできません。
従来の子宮癌検診と合わせることにより、ほぼ完璧になる(子宮頚癌撲滅も夢ではない!)と考えられています。
欧米では子宮癌検診率が80%を越えているそうですが、日本では20%台と低迷しています。確かに乳癌ほど意識されてきませんでしたね。
Q. 有効率は? 効果はどれくらい持続しますか?
A. 有効率は約70%、効果持続期間は計算上20年以上とのこと。
HPV16/18型に対する免疫効果は90%以上ですが、前項の通り子宮頚癌全体に対する効果は70%にとどまります。
まあ、これはワクチンの成り立ちからすると仕方がないことです。
長期効果のデータは、まだ発売して間もないので存在しません。
短期間での抗体価の推移から理論的に推測すると上記の数字になるそうです。
Q. 値段が高いって聞いたんですけど・・・
A. 1セット(3回接種で完了)合計5万円弱です。
医院が購入するワクチン1本の値段(つまり仕入れ値)が12000〜13000円程度と云われていますが、これがこのまま接種料金にはなりません(コンビニでも仕入れ値と販売価格が異なることはご存じですよね)。
ワクチン価格に診察料と注射手技料、人件費・手数料などを足し算すると16000円以上になります。リスクの伴うことをプロが請け負うわけですから、ボランティア価格ではできません。ご了承ください。
3回接種ですから、合計5万円弱。
まあ、癌を5万円で予防できると考えれば高くはない・・・けど、目の前の5万円はちょっと手が出にくい値段です。
公的補助が待たれるところですが、今の日本の予防接種行政を見ていると全額補助は難しそう。
これから支給される「子ども手当」を利用することを考えてはいかがでしょう? 女性の一生を考えると大きな大きなプレゼントです。
実は、世界的には公的補助・定期接種化が進んでいます(次項参照)。
Q. 海外での状況はどうなんですか?
A. 既に100カ国以上で導入され、30カ国以上で定期接種(つまり公費負担)に設定されています。
日本はヒブワクチンも任意接種で開始し、失敗を指摘されていますが、今回も定期接種ではなく任意接種での承認です。
はやく予防接種行政が変わらないかなあ・・・。
Q.「たけい小児科・アレルギー科」では接種できますか?
A. 2010年4月から受付を開始しました。
<接種方法・対象>
■ 方法:合計3回、腕の筋肉に注射
初回接種の1ヶ月後に2回目
初回接種の6ヶ月後に3回目
■ 対象:女子中学生
10歳から接種できますが、推奨年齢は11〜14歳です。
※ 大人(お母さん)は婦人科でご相談ください。ちなみに、妊婦又は妊娠している可能性のある女性の接種は妊娠終了まで延期する、また接種期間の途中で妊娠した際には、その後の接種は見合わせることとされています。
Q. 感染経路を考えると・・・男性にも接種すべきじゃないんですか?
A. 実は私もそう思います。
HPVは男性の尿道からはげ落ちた精液中の上皮細胞に存在するそうです。
性交渉で感染するなら「男性からもらった」はず。さらに「陰茎癌」の原因にもなる・・・それなら男性にも接種を考えるべきだ、と私も疑問に思いました。
事実、ワクチンの資料によると10歳代の男性にも適応と記載されているものがありました。
でも、全然話題になりませんねえ。

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