■ 赤ちゃんの五感 ー視覚ー
「生まれたばかりの赤ちゃんは目が見えているんですか?」と時々質問されます。
新生児期(生まれてから1ヶ月まで)の視力は数字で表すと「0.01」しかなく、目の前で何か動いているのがわかるくらいだそうです。
しかし、生後数週で約30cm先に焦点が合うようになってきます。この距離はおっぱいを飲んでいるときのお母さんの顔までの距離ですね。
その後の視力は、生後6ヶ月でも0.06、生後8ヶ月でやっと0.1、1.0以上の視力は3歳以降と、ゆっくり発達していきます(具体的な数字は書物により結構バラバラでした)。なお、3歳児検診時の眼科検診では視力の基準として「0.5」が採用されています。
なんだそれしか見えていないのかあ・・・まあ、このペースが「必要十分」なのでしょう。赤ちゃんが大人と同じ視力をもって現実世界を見ても幸せになれるとは限りませんから。
<赤ちゃんの視力>
新生児期: 0.01
生後6ヶ月: 0.06
生後8ヶ月: 0.1
3歳: 0.5
※ 視力が1.0に発達するのは3歳以降です
【両眼視】
「赤ちゃんの目線が右と左でずれる時があるんです」と心配そうなお母さん。
いつも右目と左目が違う方へ向いていると「斜視」の疑いがあり、眼科受診を勧めるのですが、この場合はどうでしょう。
毎日新聞のホームページ内の「毎日こどもクリニック」に答えがありました(担当は榊原洋一先生)。
・・・両眼視(両目でものを見ること)は生後1歳頃からできるようになり、6歳頃完成する。・・・生まれて数週間の赤ちゃんは右目と左目が少しずれた動き方をするのはそういった未熟性のため・・・
フムフム、勉強になりました。
■ 赤ちゃんの五感 ー聴覚ー
生まれた時すでに耳は聞こえています。母子手帳の質問欄に「大きな音に反応してビクッとしますか」という項目がありますね。
実はヒトは生まれる前から耳は聞こえています(え、知ってるって?)。妊娠7ヶ月頃からだそうです。
お母さんのお腹の中ではどんな音を聞いているのでしょう。羊水という名の海に浮かんでいますから、身近で言えばプールに潜ったときと同じ。声も音楽もくぐもっていて細かいところまでは聞こえていないようです。
胎児期と同じ音を聞かせるとぐずっていた赤ちゃんがおとなしくなることが知られています。産科病棟ではお母さんの心臓の音を録音して聞かせています。
NHKの「ためしてがってん」の赤ちゃん特集でおもしろいことを言っていました。お母さんのお腹の中で聞いた音と似ている身近な音は「スーパーのレジ袋をガサゴソともむ音」だそうで、ぐずる赤ちゃんに聞かせると効果あり、とのことでした。育児雑誌の付録絵本にも応用されているのを見たことがあります。
夜泣きで睡眠不足になっているお母さん方、お試しあれ。ただし、泣きやんだけれど、逆に喜んでしまって眠らないというクレームもあったとか・・・。
■ 赤ちゃんの五感 ー味覚ー
味を感じる「味蕾」(舌にある目立つブツブツのこと)は胎生12週(=妊娠3ヶ月)には大人と同じ形になるそうです。羊水に甘味を加えるとお腹の中の赤ちゃんは盛んに飲み込むようになるという研究結果があります。つまり、生まれる前から赤ちゃんは味覚を持っているのです。
生まれた後の赤ちゃんに甘味・酸味・苦味のものを与えると表情が変わるそうです。また、母乳を飲むときとミルクを飲むときは明らかにスピードが違ったという研究結果を読んだことがあります。
大人と同じレベルの味覚の発達は離乳期からと考えられています。この時、甘いものをたくさん与えると、他の味に慣れずに総合的な味覚の発達が損なわれる可能性があるそうです。いろんな味を経験させてください。
■ 赤ちゃんの五感 ー嗅覚ー
古くは、進化論で有名なチャールズ・ダーウィンが、「生後1ヶ月の赤ちゃんは10cm離れたお母さんの乳首を匂いで感じる」と記しています。
また、母乳をしみ込ませたパッドとそうでないパッドを並べると母乳の方に反応する、という結果もあります。
このように、お母さんの匂い(=母乳の匂い)を中心に過去に研究がされてきました。どうやら、ヒトの嗅覚の原点はお母さんのおっぱいの匂いのようですね。
■ 赤ちゃんの五感 ー触覚ー
生まれる前から触覚はあります。
胎生10週以降(妊娠3ヶ月以降)に触覚刺激により反応・反射があるという研究結果があります。そして胎生(=妊娠)31週頃に完成し、それ以降の赤ちゃんへの適度な皮膚刺激はいろんな面でよい影響を及ぼします。
現在、赤ちゃん専門のICUである「NICU」では、予定より早く生まれた赤ちゃんに対して、「カンガルーケア」「タッチケア」という手法を用いて適度の接触刺激を導入しています。
■ 赤ちゃんの五感と母乳栄養
赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸っている時は五感がフル活動しています。
お母さんの匂いを嗅いで(嗅覚)、おっぱいを味わい(味覚)、お母さんの優しい声を聞きながら(聴覚)、お母さんに優しく抱かれ(触覚)、お母さんの顔を見て安心し(視覚)、とっても幸せ。
その姿をみると、誰でも思わず微笑んでしまいますね。これはヒトの五感を快適にくすぐる原点、幸福の原点が凝縮されているからではないでしょうか。
■ 赤ちゃんウォッチング:これって病気?
生まれてから産科を退院するまでの赤ちゃんをよく観察すると、いろいろなことに気がつきます。「これって病気?」とお母さんが心配になることもままあります。というわけで、心配のいらない不思議な現象を集めてみました。
・皮膚落屑
・中毒性紅斑
・顔の正中部母斑(サーモンパッチ、ウンナ母斑)
・蒙古斑
・乳房腫脹・魔乳・新生児月経、など
まあ、これを読んでも不安でしたら看護師か医師をつかまえて聞いてください。
■ 皮膚がポロポロ・・・「新生児皮膚落屑」
生まれたばかりの赤ちゃんは潤いのある皮膚をしていると皆さん思っていらっしゃる。しかし、胎脂の取れた赤ちゃんの肌はカサカサしてポロポロと剥けてくることが多いのです。
これを医学用語で「皮膚落屑」と言いますが、病気ではありません。
実は、皮膚が成熟している証拠なのです。予定日より何週間か早く生まれると薄いピンクのきれいな肌ですが、予定日頃に生まれると90%の赤ちゃんで皮膚がポロポロ剥がれてきます。予定日を過ぎて生まれると手足の皮膚は厚ぼったくなり、亀裂が入ることがあります。
でも、心配いりません。2〜4日で自然に脱落してなめらかな皮膚が現れてくると書いてあります。が、本によっては「1ヶ月ほど続くことがある」とも書いてありました。さて、あなたの赤ちゃんはどのくらいで落ち着きましたか。
■ 体に赤い斑点が・・・「新生児中毒性紅斑」
生まれて数日の赤ちゃんの体に赤い斑点がでてきた! さあ大変!?
これは一度見たら忘れない(見たことのない新人小児科医にはわからない)中毒性紅斑です。特徴は赤い斑点の真ん中に白いポチがあること。顔や手足よりも体に多く出てきます。
生後数日頃から見られはじめ、1週間以内には自然に消えます。当然、治療は必要ありません。
■ 赤ちゃんの顔真ん中あたりに赤い斑点が・・・「サーモンパッチ」
赤ちゃんの額の中心に縦に帯状の赤い斑が見られることがあります。よく見ると、眉毛の間とまぶたの内側も赤っぽい・・・。
これは「サーモンパッチ(サケの色の斑点)」と呼ばれるものです。赤ちゃんの20〜30%に見られ、珍しいものではありません。そのまま様子を見ていると、次第に薄くなり、1〜2歳で消えてしまうことがほとんどです。
<サーモンパッチ番長>
しかし、成長と共に消えたかと思っていたサーモンパッチが興奮して真っ赤な顔になるとうっすら浮かび上がることがあるようです。
実はこの現象をネタにした少年漫画を読んでびっくりした経験があります。
・・・とある中学校にケンカのめっぽう強い番長がいました。いつもクールに敵をやっつけてしまうのですが、ある時強敵に出会い、野獣が目覚めたように興奮したその時に、彼の額に赤い模様が浮かび上がったのです。それを見てしまった者は無事に帰れないという伝説が今再び・・・(言い回しが昔っぽくて申し分けない)。
ムム、漫画家の観察力侮り難し。
■ うなじに赤い斑点が・・・ウンナ母斑
前述の「サーモンパッチ」のある赤ちゃんのうなじを見てみると、たいていそこにも赤い斑点がいくつか見られます。
これを医学用語で「ウンナ母斑」と言います。別名「ストークマーク(stork mark)」とも言い、コウノトリのが赤ちゃんをくわえて運んできた印と欧米では考えられてきました。なんだか、夢のある話ですね。
赤ちゃんの約30%に見られます。そのまま様子を見ていると徐々に薄くなっていきますがサーモンパッチより消えにくく、大人になっても残っていることがあるようです。まあ、髪の毛で隠れてしまう場所なので審美上問題になることは少ないようですが。
■ みんなにある蒙古斑
言わずと知れたお尻の青あざ。日本人は誰でも(どんな美人でも、ハンサムでも)乳幼児期に持っていました。意外なことに、白人の1〜20%、黒人の80〜90%にも認められるそうです。
4〜5歳頃までに自然に消えます。当然、治療は必要ありません。しかし、異所性蒙古斑(お尻、背中以外の場所にある少し青みが濃い蒙古斑)は消えにくく、10歳時に残っているものは生涯残るとのことです。
※ 蒙古斑に対してレーザー治療を行っている医療機関がありますが、治療適応・治療時期に対する考え方は様々で、まだ確立された治療方針は無いようです。
ですから、受診した医療機関により「治療の必要なし」「いや、治療の必要あり」と異なった説明を受ける可能性があります。
☆ ネット上に蒙古斑の治療に関する記事を見つけましたので載せておきます。
異所性蒙古斑 お尻以外にできるあざ。除去治療を希望する人が…
(2010年10月10日:毎日新聞社)
◆異所性蒙古斑 お尻以外にできるあざ。除去治療を希望する人が増えています。
◇レーザー照射で消失
◇真皮のメラニン色素破壊 痛み緩和へ全身麻酔も
お尻以外にできる蒙古斑(もうこはん)「異所性蒙古斑」を消す治療を希望する人がここ数年、増えている。技術の進歩に加え、消せることが広く知られるようになったためとみられる。一部では新たな治療法の研究も進んでいる。
「治療を希望する人はここ5年ほど、少しずつ増えています」。1000人以上の異所性蒙古斑を診た葛西形成外科(大阪市西区)の葛西健一郎院長はこう話す。最近の相談者は年間約100人。大半は子どもで、「プールに行けない」「あざを理由にいじめられた」など理由はさまざま。「子どもが就学する前に消したい」という親の思いから、入学期の4月が近づくと相談が増加する傾向もあるという。
*
そもそも蒙古斑とは何か? 人間は胎児の時、表皮より奥の「真皮」にメラニン色素があり、全身が青く見える。ほとんどは妊娠20週前後で消えるが、お尻周辺はしばらく消えず、生後もあざとして残る。これが蒙古斑だ。
日本人では新生児の90%以上に蒙古斑がある。黄色人種のほか黒人にも多いが、白人ではほとんど表れない。濃さが増すことはなく、1歳ごろから薄くなり、ほとんどは7~8歳までに消える。
しかし、日本人の3~4%は10歳を超えても蒙古斑が残る。自然に薄くなる程度以上に色が濃いためだ。特に、異所性蒙古斑は消えない傾向が強い。蒙古斑が残っても健康に影響はないが、範囲が広く腕や首回りなど衣服で隠れない場所に残ると、精神的に負担となるケースもあるという。
*
治療はレーザー光線で真皮に残るメラニン色素を破壊する方法が一般的だ。ほとんどは保険適用の「Qスイッチ付きルビーレーザー」と呼ばれる機器を使い、直径約6ミリのレーザー光線を蒙古斑全体にまんべんなく照射する。治療回数は濃さによってさまざまだが、成人の場合、約半年ごとに数回の照射を続ければ消えるという。
一方、子どもは成人に比べ治療効果が高く、少ない照射回数で自然に消える程度まで薄くなる。葛西院長は「どうしても生活に支障が出るなら取り除けばいい。治療が必要な程度の濃さなのかも含め、早めの相談が効果的」と話す。
ただ、同レーザーは必要以上に強く照射したり、照射間隔が短すぎたりすることで、皮膚そのものの色まで抜け落ち、白くなる危険性がある。また、照射時には一瞬刺すような痛みを感じる。広範囲の異所性蒙古斑では、治療に数時間かかることもあり、痛みの緩和や、治療中に体を動かすことによる「消しむら」を防ぐために、全身麻酔や入院が必要な場合もある。このため、新たな治療法を探る動きもある。
年間のべ1000人を診察する大阪市立大医学部付属病院形成外科(大阪市阿倍野区)。病院講師の小澤俊幸医師らのグループはシミ、そばかすのケアに利用する美顔器などで使われる「IPL」という光線に注目する。IPLはレーザーと比べ約16倍の照射範囲があり、照射時の痛みも軽いため、1回の診療時間短縮や全身麻酔の回避につながると期待している。
グループは同意を得た患者4人の異所性蒙古斑にIPLを照射し、その効果を試した。レーザーと同程度とはいかなかったものの、青い色が薄くなったことを確認。研究結果は今年4月、日本形成外科学会総会・学術集会で発表された。現在IPL照射は中断しているが、今後も研究は続ける方針だ。小澤医師は「レーザー治療は生後すぐからでも始められるが、全身麻酔や入院が必要となれば患者側の心理的ハードルも高い。外来で治療を済ませられる範囲が理想だろう」と話す。
■ 赤ちゃんからおっぱいが・・・魔乳
赤ちゃんはお母さんの胎盤を経由して女性ホルモンの影響を受け、以下の現象が見られることがあります。
【乳房腫脹】
赤ちゃんのおっぱいがふくれてくることがあります。軽度のものを含めると80〜100%に観察されると本に書いてありました。まあ、赤ちゃんの診察をしていると目立つものに時々出会う、といった感じです。
生後数日以内に出現し、1〜2週で大きさはピークに達し、2〜4週で消失します。時に5〜6週に及ぶものもあり、女の赤ちゃんでは数ヶ月続くこともあります(ということは、男の子にも見られるということです!)。
【魔乳 witch's milk】
これは赤ちゃんの乳腺から出るおっぱいのことです。頻度は約5%でメカニズムは母乳と同じ。乳房腫脹と同じく男の子にも観察され、私も初めて見たときはびっくりしました。ウ〜ン、人体の神秘!
この怪しげなネーミングは、ヨーロッパでは魔女がこの赤ちゃんのおっぱいを使って魔法の薬を造っていたという伝説に由来しているそうです。
生まれて2日目頃に始まることが多く、3〜4日目にピークに達し、1週間前後で出なくなりますが、長いものでは5〜6週に及ぶそうです。面白がって搾ると痛がって泣くし、炎症を起こしやすいのでそっとしておきましょう。
<新生児関連記事>
ネットで見つけた新生児関係のニュースを拾い読みしました。
■ 超未熟児の視力を守る(2011年11月:朝日新聞)
小さく生まれた赤ちゃんが発症しやすい未熟児網膜症。網膜の血管が異常に伸び、失明しかねない病気だ。以前は重症だと、明暗が分かる程度の視力しか得られなかった。最近は治療法の進歩で、日常生活に支障がないほどの視力になる子どもも増えた。抗がん剤を応用した新しい治療法の研究も進む。
●血管触れぬ早期手術、平均0.2にも
東京都内に住む女児(4)は2007年8月、都内の大学病院で389グラムで生まれた。予定日まで4カ月もあった。肺や心臓などに加え、目も未発達で、未熟児網膜症と診断された。
目の構造をカメラに例えると、フィルムにあたる網膜の血管の発達が途中で止まり、その先端に「新生血管」という異常な血管が伸びる病気だ。母親のおなかの中にいた期間が28週未満か、1千グラム未満で生まれた子の8割が発症するとの報告がある。
異常な血管が増えてできる膜が網膜を引っ張ると、失明につながる。女児は両目にレーザーをあて、異常な血管が増えるのを防ぐ治療を受けた。多くはレーザー照射で治るが、女児は血管が極端に増える重症例で、国立成育医療研究センターで「早期硝子体手術」が必要と診断された。東範行眼科医長が04年に始め、血管が伸びる「足場」となる硝子体の線維を切り取る手術法だ。
東医師によると、従来の硝子体手術は異常な血管を含む膜を切り取っていた。出血を防ぐため、レーザーの照射後、異常な血管の活発な動きがおさまるのを待たなければならなかった。その間も網膜のはがれは進み、術後も明暗がわかる程度しか見えなかった。
新しい手術法では、血管にふれないことで、従来よりも1カ月以上早く手術でき、網膜の損傷を減らすことができた。
女児は今の視力は左右ともに0・2で、遊園地で数十メートル先のマスコットに手を振ることもある。順調な発達が期待できるという。
同センターで重症の約60人(約90眼)が早期手術を受けた。うち9割強は手術の時期などが適切で、網膜が完全に戻った。視力は平均0・2だが、0・6まで発達した子もいる。
「教室の一番前に座れば黒板の文字も裸眼で見え、ルーペなどを使えば細かい文字も読める」と東医師は言う。
重症例への早期手術は今後、数年で香川大や福島県立医科大など、さらに5カ所ほどの病院にも広げる計画が進む。
●抗がん剤を目に注射 評価は二分
ここ数年は、異常な血管が増えるのを抑える薬を目に注射する治療法も研究されている。「抗VEGF抗体療法」という方法で、「アバスチン」(一般名・ベバシズマブ)という薬を使う。もともとは大腸がんの抗がん剤として07年に承認された薬だった。
この治療法は主に三つのケースで使われる。手術前に異常な血管の活動を抑えたり、レーザーが効かない患者の網膜剥離(はくり)を防いだりする目的で使うほか、最初からレーザーを照射せずに注射する。
近畿大堺病院眼科の日下俊次教授は06年、当時勤めていた大阪大でこの薬を使い始めた。網膜がはがれ始める前の子では、23眼中20眼で剥離を防ぐことができたという。
ただ、この治療に使う薬は、正常な血管の発達も妨げる恐れがあり、赤ちゃんに使うことには慎重な意見もある。米国では今年、レーザーよりも有効とする臨床試験の結果が発表されたが、評価は分かれている。
この薬を使った治療法は今月から近畿大で受けられるようになったほか、宮崎大など国内数カ所でも行われている。
日下教授は「この治療法は知能や心身の発達にどのような影響があるかまだ、分からない。レーザーが効かず、他に治療法がない子に限っている」といい、今後、最適な薬の量を確立させたいという。
■ 出生前診断(2011年7月:読売新聞)
(1)エコー検査に振り回され
「どうも少し、気になることがありましてね」
妊婦健診で超音波(エコー)検査を受けた千葉県の河野真由子さん(33)が医師にそう告げられたのは2009年5月のことだ。次男の充希(みつき)ちゃん(1)をおなかに宿してから13週が過ぎていた。
超音波検査は、胎児の発育などを確かめる目的で広く行われている。河野さんは「赤ちゃんの顔がみられるサービス」と思い、毎回楽しみにしていた。
検査の結果は、「NT」と呼ばれる胎児の首の後ろのむくみが通常より厚いというものだった。一定以上の厚さだと、染色体異常の可能性が高まるとされる。近年の画像技術の進歩で妊娠初期からわかるようになった。
確実な診断には、腹部に針を刺し羊水を採取して調べる検査が必要だ。検査には流産や死産の危険も約0・5%伴う。医師は言った。
「まだ堕胎できる。よく家族で話し合ってください」
人工妊娠中絶について定めた母体保護法は、中絶が可能な条件に「胎児の異常」は認めていない。だが「母体の健康を害する恐れがある」との中絶を認める条件に当たると拡大解釈されているのが実情という。
いきなり「堕胎」という言葉を突きつけられたショックで、家では毎晩、泣いてばかりいた。別の大きな病院にも相談したが、病気や羊水検査の説明があるだけで、悩みの解決にはならなかった。ノイローゼになり、とてもお産ができる状態ではなかった。
超音波検査から2週間後。医師に中絶を申し出た。手術日と、お葬式の日も決めた。一人で逝くのは寂しかろうと、ひつぎに入れる家族の写真を集めた。
「もう一度だけ、我が子の顔の画像を見たい」
夫の壮臣(あきおみ)さん(35)が切り出したのは手術の3日前。元の病院では主治医が不在で、検査した別の医師が首をかしげた。「手術は待った方がいい」。むくみは小さくなっているというのだ。
NTは小さくなることもある。検査で厚いむくみが見つかっても結果的に異常はないことも多い。診断も医師によって差がある。
約1週間後、別の医療機関での検査でも、むくみは目立たなくなっていた。11月、充希ちゃんを出産。指摘された異常は何もなかった。笑顔をみるたびに河野さんは思う。「最初の医師がもっと丁寧に説明してくれれば、こんな苦しい思いをしないですんだのに」と。
技術の進歩で、多くの妊婦が胎児の染色体異常や病気を知らされる可能性のある時代。超音波や羊水検査などで胎児の異常を調べる出生前診断について考える。(2011年7月6日 読売新聞)
(2)2人目 羊水検査に葛藤
2人目を妊娠したら羊水検査を受けるかどうか――。兵庫県赤穂市の室井知世さん(26)は、夫の優作さん(27)と何度も話し合った。
室井さんは2009年6月、第一子の長女の心歌(ここか)ちゃん(2)を出産した。心歌ちゃんはダウン症だ。
超音波(エコー)検査で染色体異常のひとつであるダウン症の疑いを指摘されていたが、迷いはなかった。「授かったかけがえのない命。夫婦共々、すべて受け入れる覚悟だった」
大好きなテレビの音楽番組のリズムに乗って手や体を動かす心歌ちゃんをみると、室井さんは「かけがえのない存在だ」とつくづく思う。最近は、つかまり立ちで少し歩けるようになった。「歩みは遅いけれど、元気に育っている。とてもかわいい」と室井さん。
歯の生えそろうのが遅いため食べ物を軟らかくしてあげたり、早く歩けるようにと体操教室に通わせたりもしている。でも、もし2人目にも障害があると、これまで通りの愛情と時間を注げるのか。自分たち親が死んだら、2人ともどうやって生きていくのか――心配は尽きない。
しかし、「羊水検査を受けることは、心歌の存在を否定することになりはしないか」という思いも強い。
心の葛藤の中、第2子を妊娠中の今年5月、腹部に針を刺し、羊水を採取して調べる羊水検査を受けた。「とても難しく、苦しい選択」だったが、「心歌を愛するがゆえの決断でした」と室井さんは言う。結果は「染色体の異常なし」。11月に出産を予定している。
長男(9)がダウン症の奈良県の女性(38)は第三子を妊娠中の今年1月、子宮の内側の絨毛(じゅうもう)と呼ばれる突起を採取して調べる検査を受けた。「もし第三子もダウン症で、これまで通りに長男に愛情を注げなくなってしまったらどうなるのかと考えた」と話す。
日本ダウン症協会(東京)によると、ダウン症の子を持つ親が2人目を妊娠した際に「羊水検査を受けるべきか」という相談は多く寄せられる。
羊水検査を受けることは、上の子を否定するようでつらいが、社会に障害者を支援する仕組みが十分ではない現実のなかでは、2人を育てるのは経済的な面も含め大変なのが実情という。
同協会理事長の玉井邦夫さんは「受ける方がよいとも悪いとも言えない」としたうえで、「検査を受けることを選んだ親がいたとしても、そのことは批判できない」と話している。(2011年7月7日 読売新聞)
(3)母親の心に寄り添う
「胎児の心臓にトラブルのある可能性がある」
横浜市の女性(38)は2008年12月に受けた超音波(エコー)検査で、医師にそう告げられた。妊娠20週。初産だった。
翌月、神奈川県立こども医療センター(横浜市)を受診した。精密検査で、「エプスタイン病」と呼ばれる心臓の弁の病気と判明。症状が重く、「出産直後に亡くなる可能性もある」と医師は言った。
その夜。止めどなく涙があふれた。
短大を卒業後、舞台の衣装を作る仕事を続けた。
舞台監督の夫(35)とは仕事を通じて知り合った。徹夜が続くなど生活は不規則だが、やりがいはあった。
「赤ちゃんの病気はそんな生活のせいではないか」
病気について、何かと理由をつけて自分を責めた。
パンパンに膨らんだおなかが突然、破裂する――。悪夢で夜中にハッと目覚めることもあった。
精神的に弱った女性を支えたのは、看護師や「保健福祉相談室」の保健師、ケースワーカーらだった。
「お母さんが元気ないと赤ちゃんも元気なくなっちゃうよ」「赤ちゃんも頑張っている。できることからやっていきましょう」
保健師の日極(ひずめ)有紀子さん(現・鎌倉保健福祉事務所)は、告知に大泣きした女性に寄り添い、励ました。
出産は翌年4月。妊娠38週の自然分娩だった。
「よくがんばったね。生まれてくれてありがとう」
分娩台で、女性は、産声を上げられない長男の頭をそっとなでた。胸がいっぱいになり、涙があふれた。
新生児集中治療室(NICU)での延命治療はしないことを医師と確認していた。貴重な時間は、できるだけ赤ちゃんと一緒に過ごしたいと思ったからだ。
医師が手動で酸素を送り続ける長男を、夫と交互に抱きしめた。肌にはぬくもりがあった。分娩室や、病室で写真も撮った。
出生から3時間。長男は短すぎる人生を終えた。
母乳を搾り、小さなくちびるにふくませる。天国で着られるようにと、黄色のニット帽や青いベビー服を着せてあげる――。さよならの儀式も日極さんらが気遣ってくれた。
女性は当初、出生前に病気のことなんてわからなければよかったと思っていた。でも今は、「短い命だとわかったからこそ、かけがえのない時間を一緒に過ごすことができた」と感謝する。
女性は5月、次男を出産した。分娩台の上で、右手に長男の写真をぎゅっと握りしめていた。「長男は確かにこの世に生を受けた。4人で家族なんです」。(2011年7月8日 読売新聞)
(4)心臓病発見が救った命
横浜市の金子孝枝さん(36)は、自宅近くの公園で全速力で駆け寄ってくる長男の英大(えいだい)ちゃん(3)をぎゅっと抱きしめた。この上なく幸せを感じる瞬間だ。そして思った。「おなかにいる時に病気がわからなかったら、一体どうなっていたのだろう」と。
金子さんは英大ちゃんを妊娠中の2007年9月、外出先で腹痛に襲われた。妊娠32週目。超音波(エコー)検査を受けたところ、心配された胎盤剥離などはなかったが、胎児の「血液の流れが気になる」という。まだ見ぬ我が子が心配で、涙が止まらなかった。
神奈川県立こども医療センター(横浜市)新生児科の川滝元良さんを紹介され、胎児の心臓の詳しい超音波検査を受けた。診断は、完全大血管転位症。心臓から肺に血液を送る肺動脈と全身に送る大動脈が入れ替わっている病気だ。近年の超音波画像の進歩で、出生前にわかるようになった。
全身から心臓に戻った血液が肺に送られず再び全身に回るため、そのままでは全身に酸素が行き渡らず、生きられない。出産後にはすみやかな手術が必要だ。
「出生前の診断は、ご家族の心構えと出生後の準備のためです。共にがんばりましょう」と、川滝さん。
この日、金子さんと夫の竜一さん(40)夫婦は誓い合った。「親が泣いている場合ではない。心を強くして乗り越えよう」
約1か月後に帝王切開で出産。分娩室には川滝さんら3人の医師が待ちかまえ、英大ちゃんはすぐに新生児集中治療室(NICU)へと運ばれた。
肺動脈と大動脈を本来の位置に戻す手術は産後1週間をめどに予定されていたが、3日目の夜、英大ちゃんは自力呼吸ができなくなるなど容体が急変。翌日、緊急手術となった。
手術は7時間に及んだ。「経過は順調」と告げられた金子さん夫妻は、手を取り合って喜んだ。涙を流したのはあの時以来だった。
手術を終えた医師から「英大ちゃんの心臓は何もしなければ10分間もたないものでした」と、聞いた。もし、出生前に病気がわからなかったらすぐに亡くなるか、助かっても重度の脳障害を負っていた可能性が高いという。
あの日、なぜ急におなかが痛くなったのか。川滝さんは首をかしげる。腹痛とは直接、関係ないためだ。金子さんは今、こう思う。「生きたいと願う英大のサインだったんだ」と。(2011年7月12日 読売新聞)
(5)カウンセリングで安心感
東京都の女性(37)は2010年6月、おなかの長女(生後7か月)が妊娠15週の時、遺伝カウンセリングを受けた。
前年の夏、妊娠9週で赤ちゃんを流産した経験があった。「高齢出産に問題があるのでは。赤ちゃんの健康状態を確かめたい」と、妊婦健診の際に羊水検査を申し出たところ、まず、遺伝の専門医から話を聞くよう勧められたためだ。
夫(37)と一緒に、紹介された医療機関の臨床遺伝専門医を受診。カウンセリングは約1時間、静かな個室で行われた。
この女性は、妊婦が35歳を超えると、赤ちゃんがダウン症になる確率が急に高まると思っていた。
カウンセラーの専門医はまず、「すべての胎児には先天異常の可能性があります」と指摘。ダウン症など染色体異常は、30歳以降徐々に高まるとはいえ、若い妊婦でも発症し、年齢だけが原因ではないことを丁寧に話した。
おなかに針を刺し羊水を採取する羊水検査は、染色体の異常は確認できるが、知的障害などはわからないこと、検査には流産の危険もあることも説明した。
カウンセラーとのやりとりのおかげで、女性は胸のつかえがとれた気がした。漠然と捉えていた胎児の異常について、正しい知識を得たという安心感が生まれたからだ。
夫と相談。流産の危険性も考え合わせ、羊水検査は受けないことにした。「たとえ生まれた子どもに病気があっても育てる覚悟ができた。夫婦にとって大切な時間でした」と話す。女性は10年12月、長女を出産。心配した異常はなかった。 遺伝カウンセリングは主に、日本人類遺伝学会などが認定する臨床遺伝専門医や、看護師らの認定遺伝カウンセラーなどが担っている。臨床遺伝専門医は全国に623人いるが、東京都の141人に対し、和歌山県は1人など地域差も大きい。認定遺伝カウンセラーも全国に102人にとどまる。増えつつあるが、十分とはいえない。
遺伝カウンセリングは特定の遺伝子検査に伴う場合を除き、保険はきかない。費用は施設で異なり、この女性の場合、1時間8400円だった。
日本遺伝カウンセリング学会理事長(信州大医学部長)の福嶋義光さんは、「遺伝に関する問題は、すべての人が当事者となりうる。遺伝カウンセリングが大切なのは言うまでもないが、小中学校の教育から、遺伝についてきちんとした教育が行われるべきだ」と話している。
日本遺伝カウンセリング学会などが認定する臨床遺伝専門医の一覧
都道府県別に臨床遺伝専門医のいる病院がわかる。
(2011年7月13日 読売新聞)
(6)Q&A 事前の十分な説明必要
出生前診断について、国立成育医療研究センター(東京・世田谷区)周産期センター長の左合治彦さんに聞きました。
――出生前診断とは、どんなものですか
代表的なのは、腹部に針を刺し、羊水を採取して調べる羊水検査です。赤ちゃんの染色体異常の有無や種類を確認できます。検査に伴う破水や出血、感染による流産や死産の危険が約0・5%あります。母親の血液を調べる母体血清マーカーは、異常のある確率がわかりますが、1999年に国が慎重実施を促す通知を出し、いったん減りました。妊婦の2~3%がこれらの検査を受けています。
これに加え、日本産科婦人科学会は6月、胎児の異常を見つけようとする超音波(エコー)検査を出生前診断にあたると位置づけ、遺伝カウンセリングを行った上で、事前に十分な説明と同意が必要だとする指針を打ち出しました。
――なぜですか
近年の超音波検査画像の進歩で、妊娠初期でも胎児の異常がわかるようになったためです。胎児の首の後ろにみられるむくみ(NT)が一定以上の厚さだと、胎児に染色体異常や心臓の病気が高い頻度でみられることがわかってきました。
ただし、むくみが厚くても赤ちゃんは正常であることも多いです。妊婦が正しい知識や心構えのないまま、突然、告知を受けている問題も指摘されています。
――染色体異常はどれぐらいの確率であるのですか
赤ちゃんの約0・4%にみられ、最も頻度が高いのがダウン症(約0・1%)です。母親の年齢が高齢になるほど、確率は上昇します。出産時の年齢が30歳以降、次第に増加し、33歳で約0・3%、35歳では約0・5%、40歳だと約1・5%になります。
――遺伝カウンセリングは、どんなものですか
赤ちゃんは誰でも先天的な病気などの障害を持って生まれてくる可能性があります。すべての妊婦の2~3%に起き、染色体異常はその一部にすぎません。遺伝カウンセリングは、妊婦や家族にこういった情報を提供して理解してもらい、意思決定に役立ててもらうようにすることです。
出生前診断に遺伝カウンセリングは欠かせませんが、診断を行うからカウンセリングが必要なのではありません。十分なカウンセリングを受けた結果、母親が選択できる道のひとつとして、出生前診断があるのです。(加納昭彦)(2011年7月14日 読売新聞)
★ エコー検査も「出生前診断」…産科婦人科学会(2011年6月26日 読売新聞)
日本産科婦人科学会は25日、妊婦や胎児の状態を調べる超音波(エコー)検査について、「出生前診断」に相当すると位置づけ、検査で胎児の異常を見つけようとする際は、インフォームド・コンセント(医師による十分な説明と妊婦の同意)が必要などとする指針を打ち出した。
エコー検査は胎児の発育経過などを調べるため、妊婦健診ではほぼ全員に実施されている。近年は画像精度の向上により、ダウン症など一部の染色体異常の可能性もわかるようになった。しかし、医師や妊婦にエコー検査が出生前診断になるとの認識が薄く、検査後、医師から突如、異常の可能性を告げられ、妊婦が戸惑うケースが少なくない。
◆出生前診断=胎児の染色体や遺伝子の異常を調べる検査。ダウン症など一部の染色体異常を調べる羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査、妊婦への血液検査で胎児に異常のある確率を割り出す母体血清マーカーなどがある。
★ 出生前診断で異常発見し中絶、10年間に倍増(2011年7月22日 読売新聞)
胎児の染色体異常などを調べる「出生前診断」で、2009年までの10年間、胎児の異常を診断された後、人工妊娠中絶したと推定されるケースが前の10年間に比べ倍増していることが、日本産婦人科医会の調査でわかった。
妊婦健診の際に行われるエコー(超音波)検査で近年、中絶が可能な妊娠初期でも異常がわかるためとみられる。技術の進歩で妊婦が重大な選択を迫られている実態が浮き彫りになった。
調査によると、染色体異常の一つであるダウン症や、胎児のおなかや胸に水がたまる胎児水腫などを理由に中絶したと推定されるのは、2000~09年に1万1706件。1990~99年(5381件)と比べると2・2倍に増えた。
調査は横浜市大国際先天異常モニタリングセンター(センター長=平原史樹・同大教授)がまとめた。
全国約330の分娩施設が対象で、毎年100万件を超える全出産数の1割をカバーする。回答率は年によって25~40%程度だが、調査では回答率が100%だったとして「中絶数」を補正した。
人工妊娠中絶について定めた母体保護法は、中絶が可能な条件に「胎児の異常」は認めていない。だが「母体の健康を害する恐れがある」との中絶を認める条件に当たると拡大解釈されているのが実情だ。平原教授は「ダウン症など染色体異常の増加は妊婦の高年齢化も一因だ」と話す。
調査結果は22日から都内で開かれる日本先天異常学会学術集会で発表される。
玉井邦夫・日本ダウン症協会理事長の話「個々の選択がどうだったかわからないが、エコー検査が、ダウン症児は生まれてこない方が良いという判断を助長していると考えられる」
妊婦に十分な説明必要
出生前診断の結果を受け中絶したと推定されるケースが倍増した背景には、エコー検査の画像精度が向上し、異常が妊娠初期の段階でも把握できるようになったことがある。
同じ出生前検査でも、腹部に針を刺し、羊水を採取する検査は、流産や死産の危険が約0・5%あることなどから受診率は全妊婦の約1・2%にとどまっている。エコー検査はそうした危険はなく、妊婦健診でほぼ全員が受けている。
近年、エコー検査で胎児の首の後ろのむくみ(NT)の厚さが一定以上だと、ダウン症など染色体異常や心疾患の可能性が増すことがわかった。
しかし、検査でNTが厚くても結果的に異常はないことも多い。胎内で成長する間にNTが小さくなることもある。そうした説明や遺伝カウンセリングもなく、突如、医師から異常の可能性を告げられた妊婦が中絶という重大な選択を迫られているとすれば問題だ。
検査を赤ちゃんの顔が見られるサービスと考える妊婦も少なくない。そもそも「胎児の異常を理由にした中絶は生命の選別につながり、行うべきではない」との指摘もある。妊婦には正しい知識、医師には適切な説明が求められる。(医療情報部 加納昭彦)
※出生前診断 胎児の染色体や遺伝子の異常を調べる検査。エコー検査の他、ダウン症など染色体異常を調べる羊水検査や絨毛(じゅうもう)検査、妊婦への血液検査で胎児に異常のある確率を割り出す母体血清マーカーなどがある。

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