■ 顔の湿疹・・・新生児ざ瘡(赤ちゃんニキビ)
生後1ヶ月頃の顔の湿疹で一番多いのは「赤ちゃんニキビ」(医学用語では「新生児ざ瘡」)です。
生後まもなくから2〜3ヶ月頃に、額やほっぺたに多く見られるやや赤いブツブツです。痒くはなさそう。
赤ちゃんの肌はみずみずしいイメージがありますが、生後2〜3ヶ月くらいまではオイリーで思春期と似た状態であり、「ニキビ」と呼ばれています。
赤ちゃんニキビを見つけたとき、お母さんに「顔を洗うとき石けんを使ってますか?」と聞くと「No」の返事がほとんど。
ここまで書けばおわかりかと思いますが、対策は「油を落とすスキンケア」。
つまり、沐浴の時に顔も石けんを使って洗うことです。高級な香料入の石けんはかえって皮膚に刺激になることがありますので普通のベビー石けんを使ってください。具体的には、石けんをお母さんの手にとりよく泡立たせて、指のお腹の柔らかいところを使って赤ちゃんの顔を洗い、その後にお湯でよくすすぎます。すすぐときはガーゼなど柔らかい布を使ってもかまいません。
これを繰り返せば徐々によくなってきます。
ただし、赤みが強く炎症を起こしているとき、ジクジク液が出てきているときは小児科あるいは皮膚科を受診してください。おそらく軟膏が処方されることでしょう。
他に顔のブツブツには「あせも」もありますが、対策は同じく皮膚を清潔に保つスキンケアが基本です。
■ 頭のかさぶた・・・乳児脂漏性湿疹
前項の「赤ちゃんニキビ」がひどくなってくると、眉毛、頭の前の方、耳などに黄色いカサブタ(油の固まり)ができてきます。これを「乳児脂漏性湿疹」といいます。生後3〜4週頃から目立ち始め、3ヶ月を過ぎると軽快へ向かいます。
対策はやはり油をとるスキンケア。入浴1時間前にオリーブオイル(あるいは白色ワセリン)をカサブタに塗っておいてふやけさせ、入浴時は石けんあるいはシャンプーを使って洗い、その後クシで少しずつ削ると改善してきます。
【乳児湿疹とアトピー性皮膚炎との違い】
「赤ちゃんの湿疹=アトピー性皮膚炎?」と心配されるお母さんが多いので違いを説明しておきましょう。
アトピー性皮膚炎では痒みが強いですが、脂漏性湿疹では無いかあっても軽度。3〜4ヶ月を過ぎても湿疹が治らず、痒みを伴って皮膚の引っかき傷のような変化が出てきたらアトピー性皮膚炎を疑います。また、耳の付け根が赤くなって切れてしまう「耳切れ」はアトピー性皮膚炎に特徴的です。
■ げっぷが出ない
生後2〜3ヶ月までの赤ちゃんは哺乳の際、空気も一緒に飲み込みやすい傾向があります。つまり、下手なんですね。お母さんのおっぱいから直接哺乳した方が、哺乳瓶を使った時より空気を飲みません。
(・・・ウン、なんとなくわかるような気がする。)
げっぷをさせようとしてもなかなか出ないときどうしたらよいか・・・
育児書を何冊か読むと様々なことが書いてありました。出るまでひたすらがんばる、ある程度粘ってダメだったらあきらめる、等々。
最近の本では5〜10分間経っても出ないときは無理にさせる必要はなく、一旦ベッドに寝かしましょう、そのときは側臥位(横を向かせて寝かせる)をとらせましょう、とする傾向がありました。横を向かせるのは乳を吐いたときにのどに詰まらせないためです。
まあ、「これが正解!」というのは無いので、トライ&エラーでやってみるしかなさそうです。
■ 吐きやすい
とにかく赤ちゃんは吐きやすい。
ある本には病気でなくても80%の赤ちゃんが嘔吐すると書いてありました。
原因は胃の入口(噴門といいます)の締まりが悪いためです。そのため胃から食道・喉に逆流しやすいのです。吐くきっかけとしては、おっぱいの飲み過ぎ、げっぷが十分出なかった、服や姿勢により腹圧がかかった、など様々です。
吐き方もいろいろ。
「溢乳」・・・気がつくと口の端からダラダラとたれている。
「吐乳」・・・ケポッ、あるいはカポッと吐く。
「噴水状嘔吐」・・・勢いよく噴水状に吐く、など。
吐いていても機嫌良く哺乳でき、体重が増えていればまず心配ありません。
「嘔吐+機嫌が悪い」ときは小児科医の診察を受けて下さい。
何回吐いたら異常か?と聞かれても困りますが、新生児期に哺乳の度に噴水状嘔吐を繰り返す場合は「肥厚性幽門狭窄症」という病気が疑われます(→小児科へ)。
また、吐いたものの色が黄色〜緑、あるいは赤い場合は病気が隠れている可能性があります(→小児科へ)。
■ おむつかぶれ
おむつかぶれの原因は、おむつとうんちとおしっこです。
1)おむつ:おむつのゴム、合成樹脂のおむつカバー、残っている洗剤、パウダーなど。
2)うんち:うんちに含まれる蛋白分解酵素、脂肪分解酵素。
3)おしっこ:尿素が分解されて生じるアンモニアなど。
もともとおむつかぶれはおむつがあたる場所全体が赤く炎症を起こした状態を指しましたから、昔は1)が原因になることが多かったのでしょう。しかし、最近見るおむつかぶれはうんちとおしっこが付着する場所に多い印象がありますので、2)と3)が原因になることが増えてきたことを実感します。
対策とすると、これはもうこまめにおむつを替えることに尽きます。紙おむつは便利ですが、紙おむつが普及してから1日におむつを替える回数が減っているデータを何回も目にしました。当然ながら、おむつをしない民族ではおむつかぶれは存在しません。
ふだんおむつを替えるときは「拭く」だけですが、おむつかぶれのひどいときは「拭く」+「洗う」+「乾かす」+「軟膏を塗る」まで行う必要があります。
私の長女も肛門周囲のびらん(皮が剥けてしまうこと)がなかなか治らなくて、洗面器にお湯を張って坐浴をしてはドライヤーの低温設定の風で乾かし、軟膏を塗っていたことがありました。まめにおむつを替えているつもりでも「あっ」という間に悪化してしまうんですよねえ。
治療としては・・・
・赤くなっているとき → 産科でもらったサトウザルベ(亜鉛華軟膏:皮膚を保護する)を塗る。
・ただれている・皮が剥けて痛そう → 小児科あるい皮膚科を受診し軟膏を処方してもらいましょう。
・長引いてブツブツが目立つ → カビが悪さしている可能性あり(乳児寄生菌性紅斑)。軟膏を塗っていても良くならないときは再度受診してください。
なお、ベビーパウダーは過剰に使うと汗で固まってしまい、かえって皮膚を刺激して悪化因子となる可能性があります。また、間違って吸い込むと肺炎を起こすこともあり、使用を勧めない医師が増えてきました。
■ 目やに
目やにの相談も多いです。これは、赤ちゃんの涙の通り道が発達途上であることと、自分で涙を拭けないので乾けば目やにになってしまうからです。
目と鼻はつながっているのをご存じですか?
涙は上まぶたの外側半分に位置する涙腺から出てきます。そして下まぶたの内側の穴(涙点:鏡で見ることができます)から涙嚢を経由し鼻涙管という管を通って鼻の中に流れていきます。
泣いたときに鼻水が出るのはこのためです。
また、大人でも風邪を引いて鼻づまりがひどいと涙目になりますよね。
奇人変人の瞬間芸で、鼻から入れた牛乳を目から出すのを見たことがありませんか?
あれは鼻涙管を逆行させたのですね。
クリーム色の目やにがちょっと付くぐらいでしたら拭き取って様子を見て良いでしょう。大量の緑〜黄色の目やにがある場合は眼科か小児科を受診しましょう。病気として多いのは:
【鼻涙管閉鎖】
前述の鼻涙管がつまっている状態です。涙が流れないためいつも涙目で、乾くとべっとりと目やにが・・・。「涙嚢炎」(涙嚢に炎症が起こること)を併発すると色の付いた汚い感じの目やにになります。次項の結膜炎とは白目が赤くならないことで区別可能です。
眼科あるいは小児科を受診し、抗生物質入りの目薬と涙嚢マッサージで治療しますが、鼻涙管閉鎖状態が改善しないときは眼科で開通処置を行うことがあります。
【結膜炎】
目やに+白目が赤くなる状態です。両目のことが多いです。眼科あるいは小児科を受診して下さい。
【逆さまつげ】
逆さまつげが目を刺激して目やにの原因になることがあります。実は逆さまつげは赤ちゃんの1/4〜1/2に見られ、珍しいものではありません。
赤ちゃんのまつげはまだ柔らかく、角膜を傷つけて視力障害を起こすことはまれとされています。また、ぺちゃんこの鼻柱が高くなるにつれ、自然に治る傾向が強いため逆さまつげそのものに対して治療はしません。
ただし、1歳頃になるとまつげもしっかりした剛毛になるため、角膜を傷つける可能性が出てくるので治療対象になります(→眼科へ)。
■ ミルクの量がわからない
これは母乳栄養ではなく、人工栄養の場合の話です。
ミルクでは飲んだ量がわかってしまうので、一度気になり出すとその数字に振り回されてしまうお母さんがたまにいます。特にまじめで完璧主義の方が陥りやすい・・・。
また、ミルクの缶に「生後何ヶ月で○○ccが適当です」と書いてあるのがいけません。この量はあくまでも参考程度とし基本は自律哺乳(欲しがるときに好きなだけ飲ませる)でよいのです。飲む量は赤ちゃんによって異なります。機嫌良く過ごし、体重増加が良ければ問題ありません。
自宅用に精密な体重計は買わないで下さいね。以前、哺乳量と毎日の体重をパソコンに入力し、グラフにして相談にいらした御両親にびっくりした経験があります。
ただ、飲む量が数字の上で減ってくるとさすがに心配になります。でも、健康な赤ちゃんでもこれはあり得る話なのです。
そのからくりは・・・赤ちゃんは生後1ヶ月まではあげればあげるだけ飲んでしまいます。ところが、生後1ヶ月を過ぎる頃から満腹感を感じるようになり、「もういらない」と哺乳瓶を離してしまうときが出てきます。哺乳量は頭打ちとなり、むしろ減ってしまうこともたまにあります。この場合も、機嫌と体重増加がよければまず心配ありません。
当然、機嫌が悪くて様子がヘンだったら小児科へ行って相談して下さい。
かつて「粉ミルクで育てると赤ちゃんは太る」といわれたことがありましたが、現在の粉ミルクは以前と比べて薄く作って飲ませるものとなっており、指定された割合で調乳すれば粉ミルクが理由で太ることはないとされたいます。
■ しゃっくりが多い
しゃっくりとは胸とお腹の境界にある「横隔膜」のけいれん(ぴくつき)です。赤ちゃんではよくみられます。一過性のものであれば病気と考える必要はありません。
特に哺乳直後に多い傾向があります。きっかけとしては、がっつき飲み、適温でないミルクなど。
対策としては、ゆっくり哺乳させる、途中でげっぷをさせる、もう一度おっぱいを飲ませる、等々。
成長につれて自然に消えていきます。
私の長女も一時哺乳後のしゃっくりが目立って、仕事柄(?)「病気じゃないだろうか」といろいろ調べた記憶があります。昼間に刺激を与えすぎると出やすいとか、ゆったりとした気持ちで向き合うべきである、とか「ホンマかいな?」と思うようなことも書いてありました。
結局、前述の通りの経過でいつの間にか気にならなくなりました。
■ ゼーゼー、ゼロゼロ
いつもゼーゼーしていて息づかいが荒い場合は小児科医の診察を受けてください。喉頭軟化症などの生まれつきの病気が疑われます。
ふだんは聞こえないけれど、授乳直後に一過性に聞こえるゼーゼーは、様子をみているといつの間にか消えてしまうことがほとんどです。
これは、母乳やミルクのネバネバが喉の奥に絡まっているため聞こえるゼーゼーで、しばらくすると食道に流れて音も消えてしまいます。
■ 便が出づらい
【赤ちゃんの排便習慣】
母乳栄養の赤ちゃんは生後2週間までは「哺乳→排便」という反射があり、ゆるいうんちを1日10回以上します。それ以降は1日1回とか、2〜3日に1回へ減っていきます(本によっては生後1ヶ月までは1日2〜5回との記載あり)。つまり直腸にうんちをためる機能が発達し、「うんちのまとめ出し」ができるようになるのです。
生後3ヶ月頃までの母乳栄養の赤ちゃんののうんちはゆるめで、これが理想的というか本来のヒトの赤ちゃんのうんちです。ミルク(つまり牛乳)を飲んでいる赤ちゃんのうんちはやや硬めで匂いも違いますね。
【便秘とは】
一般に、便秘というのは排便回数が少ないだけではなく、便が硬いために排便に苦痛を伴う場合をいいます。
「うんちの回数が少なくて心配です」と相談に来られるお母さんに「うんちの硬さはいかがですか」と尋ねると、「ふつうです」と答える場合が多いのです。これは「便秘」とは言えません。お腹がパンパンに張ったりすることが無く、機嫌・体重増加が良ければその赤ちゃんのペースと言っても良いくらいです。赤ちゃんのうんちは毎日出ないといけないわけではありません。
でも何日も出なくていきんでいる様子があると、少し助けてあげたくなります。方法は以下の通り:
① 腸の動きを刺激する飲み物を与える:砂糖水、果汁、薬店で売っているマルツエキス(麦芽糖です)など。
②「綿棒浣腸」:肛門に綿棒を入れて刺激してうんちを出す方法。
具体的には綿棒の先にオリーブオイルかワセリンを塗って痛くないようにし、赤ちゃんの肛門にそっと挿入します。深さは綿棒の頭の部分が隠れる程度までにして下さい。そこでゆっくり小さな円を描くように綿棒を動かしたり、しばらく入れたまま様子を見たりしていると、ムニュムニュとうんちが出てきます。
強く刺激するより時間をかけて刺激する方が効果的です。
③ 本物の浣腸(イチジク浣腸の類):
5日間以上うんちが出ないときの最終手段です。1日出ないからすぐ浣腸、というパターンを繰り返していると、かえって腸が怠けて働かなくなりますので。一方、うんちを5日間以上ためていると水分がどんどん吸収されて硬さが増すし、直腸が膨らみきった風船のように収縮力を無くしてしまう可能性があるので積極的に出す必要があります。
■ 夜泣きには漢方
「夜泣き」は生後3週頃から始まり、6ヶ月〜1歳半がピークで、3歳頃には80%消失する現象です。
夜間、それも結構決まった時間帯に赤ちゃんは泣いてぐずります。これが連日続くとお母さん、お父さんは参ってしまいます。
一般的な対策としては、まず赤ちゃんが不快となることをチェック!
・お腹がすいた
・おむつが汚れた
・暑いあるいは寒い、など。
一通り対応しても泣きやまないときは・・・「抱っこ」。
「私がいるから大丈夫」と安心させる気持ちで抱っこしたり、子守歌を歌ったり。
お母さん一人では大変ですから、疲れがたまってくるようであればお父さんにも是非協力してもらって下さい。お母さんが幸せでなければ赤ちゃんも幸せになれません。
ポイントは「赤ちゃんの感情をしっかり受け止めてあげること」だと思います。理由はいろいろあるでしょうが、「泣く」という行為は数少ない赤ちゃんの意思表示の方法です。それを繰り返し受け止めてあげることにより「自分は大切にされている」と感じるようになり、「生きてるって幸せなことだ」「ヒトと触れ合うって気持ちの良いことだ」と広がっていきます。赤ちゃんが初めて育むヒトとヒトの間の信頼関係です。これが将来豊かな人間関係を築く土台になっていくのです。
その昔、アメリカの有名な「スポック博士の育児書」には子どもを乳児期から一人で別室で寝かせ、自立心を養う旨の記述がありました。日本でも「抱き癖がつくから放っておきなさい」とする風潮が一時ありました。
しかし、現在は前述のように赤ちゃんが泣いたらしっかり抱きしめてあげることが推奨されています。
もし、泣いている赤ちゃんを放っておいたらどうなるのでしょう。より激しく泣き、最後には疲れ果てて寝てしまいます。これが繰り返されるとだんだん泣かない赤ちゃんになっていきます。
これは決して「がまん強くなった」訳ではありません。「自分がつらくて泣いていても誰も助けてくれないんだ」とあきらめてしまうのです。それが続くと、「自分は大切にされない存在」「生きていたってしょうがないんだ」と自己評価の低い子どもになっていきます。
現在社会問題になっている子どもの「不登校」「引きこもり」「摂食障害(拒食症、過食症)」「切れやすい」などを扱っている専門家は、それらに陥る子どもの共通点として「自己評価の低さ」を挙げています。
などなど、お母さんを脅すようで申し訳ありません。
いろいろやってみたけどやはり大変・・・というときは漢方薬をお勧めしています。日本の伝統的な医学である漢方には夜泣きの薬が複数用意されています。お母さんも「もう限界!」とつらいときには赤ちゃんと同じ薬をお母さんにも飲んでいただきます。すると母子ともに気分が楽になるのです。これは「母子同服」といって、昔から行われてきたことです。
■ 向き癖
「いつも同じ方ばかりを向いていて、頭の形が変形してきて心配で・・・」という相談は乳児検診ついでに聞かれることが多いです。
まず「筋性斜頸」がないかどうか診察します。首にしこりを触れ、違う方向へ動かそうとしても抵抗があれば「筋性斜頸」です。抵抗なく違う方向へ首を動かせれば単なる「向き癖」です。
【筋性斜頸】
これは赤ちゃんが生まれるとき、産道を通る際に圧迫された結果、首の筋肉内に出血し、その後血腫(血のかたまり)になり筋肉が硬く縮まったものです。生後1週間頃から気づき、3週間くらいまで大きくなります。10ヶ月〜1歳くらいまでにほとんど自然に治るので治療の必要はありません。ただし、生後6ヶ月を過ぎても改善傾向が見られない場合は整形外科へ相談することになっています。
昔はマッサージとか、「徒手筋切術」といってエイヤッと引っ張って硬くなった筋肉を無理矢理伸ばした処置をしたそうです(痛そう・・・)。
【向き癖】
首が据わり、お座りができる頃になると徐々に目立たなくなっていきます、と本には書いてありますが、子どもの頭を触ると幼児期にも結構変形が残っている例に出会います。まあ、髪の毛で隠れるので目立ちませんが。
さて、「向き癖」の対処法は・・・
・向きにくい側からあやす、授乳する。
・ドーナツ枕、砂嚢、巻タオルで調節する。
と本には書いてありますが、なかなかうまくいかないんですよねえ。
■ おへそのトラブル
ご存知のように、おへそはお母さんと赤ちゃんをつないでいた臍帯の名残で、太い血管が通っていました。役割を終える過程でいろいろなトラブルに出会います。
まずは正常なおへその経過を知りましょう。生まれたとき臍帯は1〜2cmの太さの管状のものですが、赤ちゃん側に少し残してハサミで切られます。その後乾燥して小さくなっていき、生後7〜10日でとれるのが普通です。とれた跡はしばらくジクジクしていますが、その後7〜10日で乾いてすっきりします。おへそが乾くまでは自宅でアルコール消毒をするよう指導している産科が多いようです。
次によくあるおへそのトラブルについて。こんな時は小児科に相談して下さい:
・おへその周りが赤くなって腫れている。
・出血や分泌物がダラダラ続く。
・塊が残り、ジクジクしている。
どんな病気があるかというと・・・
【臍炎】
おへそに病原菌が入り、増殖して炎症を起こした状態です。治療はおへその消毒し、抗生物質(病原菌をやっつける薬)を飲ませます。それでもよくならず、熱も出てくるようなら入院して治療が必要になることも希ながらあります。
【臍出血】
元々血管が通っていた場所ですから少しの出血は必ずしも異常ではありません。量が多く、長引くときは血が止まりにくい病気が隠れていることがありますので小児科に相談して下さい。
【臍肉芽腫】
臍帯の脱落後に臍帯の一部が残っていて塊が作られ、いつもジュクジュクしている状態です。生後数週間してもジュクジュクが治まる気配が無い場合は小児科を受診して下さい。薬で固めたり、大きい塊が残っている場合はヒモで縛ったりします。
ただし、処置後もジュクジュクが続くときはまれながら解剖学的異常(卵黄嚢菅遺残や尿膜管遺残など)が隠れていることがありますので再度診察を受けて下さい。
■ でべそ?
臍帯がとれたときは普通のおへそだったのに、それから数週間後(つまり生まれて1ヶ月)頃からおへそが膨らんで目立つことがあります。いつも膨らんでいるわけではないのですが、泣いたときやいきんでお腹に力が入ったときに目立ちます。
これは「臍ヘルニア」と呼ばれるものです。小児期以降の「いわゆるでべそ」とはちょっと異なりますが、まあ「赤ちゃんのでべそ」と言ってもいいでしょう。
原因はおへその周りの筋肉の発達が未熟でまだ閉じきっていないことです。腹圧がかかるとそのすき間から皮膚の下に腸が出てきてしまうのです。
おへそが膨らんでいても赤ちゃんは泣き続けるわけではないので痛くはなさそうです(後述する鼡径ヘルニアは痛がって泣きます)。膨らんだおへそを触ってみると柔らかい。揉んでみるとグジュグジュした感覚。そのうちに小さくなって無くなってしまうこともあります。これは皮膚の下に出てきていた腸がお腹の中に戻ったのです。
予定日より早く・小さく産まれた赤ちゃんに多く見られる傾向があります。満期産の成熟児では数%に頻度です。ほとんどが1歳までに目立たなくなってしまいますが、1歳になっても目立つようなら手術も検討します。ただし、膨らみが2cm以上で大きいときは生後3ヶ月くらいまでに小児科あるいは小児外科に一度相談されると良いでしょう。
<臍ヘルニア処置の変遷>
昔はコインをおへそに当てて、ヒモで固定していた時期があったそうです。しかし、おへそがかぶれて炎症を起こすトラブルが多かったため、私が小児科医になった約20年前は「何もしないで様子観察」する時代でした。ところが、ここ数年、一部の小児科医が「やはり固定した方が早く治る、皮膚のたるみも目立たない」と以前とは少し異なる固定法を採用し始めています。名付けて「綿球固定法」。まだ賛否両論があるので当院では採用していません。
というわけで、相談する小児科医により説明される内容は異なる可能性があります。説明に納得できる「かかりつけ医」に巡り会えるとよいですね。
■ アザ
赤ちゃんの全身くまなく観察すると、小さなアザ・シミがたいてい見つかります。
蒙古斑と正中部母斑(サーモンパッチ、ウンナ母斑)については以前書きましたのでそちらをご参照ください。
また、生まれてから形・色・大きさの変化のないものは小児科よりは皮膚科へ相談した方が良いと思います。その分野のレーザー治療は日進月歩で治療適応もかわっていくようなので。
さて、ここでは「盛り上がってくるアザ」についてお話しします。
【イチゴ状血管腫】
生まれたときはそこに何もないか、少し色素が抜けて白っぽいこともあります。それが生後2週頃から赤みを帯びてきて、生後2〜3ヶ月頃には急速に増大し(4ヶ月検診で結構見かけます)、赤くて表面がブツブツしているので「イチゴ状血管腫」という名前が付いています。生後6ヶ月〜1歳頃に増大傾向は止まり、1歳以降は消退し始め、6〜7歳で自然に消えていきます。
という経過をたどるので、基本的に治療は必要ありません。
ただし、何事にも例外はあるもので、大きさが巨大なとき、場所が良くないとき(目の回り、張力のかかる部位)などでは治療対象となる場合があります。皮膚科に相談して下さい。
★ 青アザの治療例(2010年11月:朝日新聞)
1 医師「いずれ消える」と説明
今年7月、札幌市の集合住宅の一室で玄関の呼び鈴が鳴った。この部屋に住む岸田美智代(きしだ・みちよ)さん(53)は、「ちょっと待って下さい」と言いそうになった。「化粧をしなくちゃ」と思ったからだ。
けれど、思い直してこの日は素顔のまま玄関のドアを開け、宅配業者と向かい合った。
近所のスーパーへの買い物、新聞の集金やベランダでの洗濯もの干し。数カ月前までは、一歩でも外に出るときは必ず化粧をした。顔にある青いあざを隠すためだった。
そのあざは、2008年秋に始めたレーザー治療で、ほとんどわからないまでに薄くなった。とはいっても、この日、宅配の荷物を受け取りながら、少し恥ずかしい気持ちになった。素顔のままで人前に出ることに、まだ慣れていなかった。
人間の皮膚は表面から順に、表皮、真皮、皮下組織に分かれる。青あざは、肌の色を決めるメラニン色素が、真皮に過剰に集まるためにできる。
赤ん坊のころ、額の右上部と首筋に青い斑があった。両親は医師から「いずれ消えるでしょう」と説明されたが、数年たっても色は薄くならなかった。
小学生になってすぐ、近所に住む男子大学生が似顔絵を描いてくれた。絵を見た2歳下の妹が額を指さしながら、「ここ足りないよ。青く塗って」と言った。
その言葉が心に刺さった。岸田さんは何も言えず、「自分は他の子とは違うんだ」と初めて実感した。やりとりを知った母に妹がしかられるのを見て、余計つらくなった。
高学年になると、「うつるからそばに寄るな」と言われ、学校に行きたくなくなった。でも、家族には相談できなかった。
買ってもらったばかりのワンピースの背中に、クラスの男の子が油性ペンで落書きをしたときは隠しきれなかった。怒った母が、相手の子の家に怒鳴り込んだ。
中学校に上がる少し前、母から「つらいよね。お母さんの皮膚を移植したら、きれいになるよ」と言われた。
当時の治療の一つに、あざを切除して体の他の部分から皮膚を移植する方法があった。あざは消えるものの、顔に手術の跡は残る。母の体への負担や、費用も心配だった。「このままでいい」。岸田さんはそう返事した。
2 出産のたびに広がった
札幌市の岸田美智代さん(53)は、赤ん坊のころから顔に青いあざがあった。小学校でいじめられたが、皮膚を移植してまであざを消そうとは思わなかった。
首筋が隠れるように髪を結ったり、あざ専用のファンデーションを塗ったりして、目立たないようにした。
中学では、あざのことをからかう生徒はいなかった。仲良くなった子は「あざのことは気にしないで」と言い、男女を問わず、同級生が自宅に遊びに来るようになった。
高校を卒業し、地元企業に事務職として就職した。学生時代と違って毎日メークをするようになると、1個1000円前後の専用ファンデーションを月に2、3個使った。
21歳のとき、同期入社の男性と結婚した。あざがあることは結婚前から話していたが、新婚旅行で初めて素顔を見せた。「何も気にしなくていいよ」と話していた夫の表情は、いつもと変わらなかった。
翌年、長男を産んだころ、あざがまぶたまで広がってきた。「ホルモンバランスが変わったせいかな」。あまり気にしなかった。でも、長女と次女を産むたびに、あざは広がり、30歳になるころには、顔の右側を覆うまでになった。
子育てや仕事に忙しく、離婚も経験した。病院に行く暇がなくて、ファンデーションで隠し続けた。冬、首元まである服を着ると、べっとりとメークがついた。化粧をしていない時に宅配業者などが来ると、居留守を使った。札幌市内でも数カ所でしか売っていないファンデーションの買い置きがなくなると、不安でたまらなかった。
ある日、5、6歳だった長女が、突然、「お母さんの顔、気持ち悪い」と言い出した。5歳上の長男が長女を平手でたたいた。岸田さんは後日、子どもたちに「醜くてごめんね」と言った。
2008年秋、左ほおに以前からあったしこりが痛み出し、KKR札幌医療センター斗南病院(札幌市)を訪れた。しこりを切除するために化粧を落とすと、青いあざがあらわになった。
「真っ白になるとまでは言えませんが、レーザーであざを治療してみませんか」。形成外科の医師から声をかけられた。
岸田さんはとりあえず、テスト照射を受けることにした。
3 レーザー照射でほぼ消える
札幌市の岸田美智代さん(53)は、左ほおのしこりの治療で訪れたKKR札幌医療センター斗南病院(札幌市)で、レーザーを当てて顔の青あざ「太田母斑」を薄くする治療法を知った。
2008年秋、右のもみ上げの下の約1センチ四方に、テスト照射を受けた。効果やダメージを見るのが目的だった。五つほどの輪ゴムで同時にはじかれたような痛みを感じた。
使われたのは、「Qスイッチアレキサンドライトレーザー」。原因となる過剰に集まったメラニン色素を破壊する。
太田母斑の治療は以前、ドライアイスで凍傷を起こしてはがしたり、皮膚を移植したりしていた。現在は、レーザーを3~5回ほど照射するのが一般的で、健康保険も適用されている。
テスト照射を終えた岸田さんは、「本当にきれいになるのかな」と思いながら、治療を受けることにした。入院し、全身麻酔であざの一部にレーザーが当てられた。直後はヒリヒリするように痛んだ。1週間後、初めて自分でガーゼをとって患部を見ると、熱の影響で患部が赤黒くなっていた。
医師からは「数週間で黒さがひいて、あざの色も薄くなる」と説明されていたが、「本当に元に戻るのかな。何もしないほうがよかったかも」と気持ちが揺れた。
その後、確かに黒さはひいたが、あざの色が薄くなったとは感じなかった。それでも、「先生の言葉を信じてみよう」と思い、4~6カ月おきに範囲を広げながら、照射を受け続けた。
「だいぶ薄くなったな」。4回目の照射を終えた今年初め、自宅で鏡を見て、そう感じた。それからは、ファンデーションを塗らずにスーパーに出かけるようになった。6月には5回目を受けて、いまは肌にうっすら青みがかかる程度。ほとんど目立たないまでになった。家族や友人には「本当に白くなったね」と言われた。
高校生のころ、友人にファッション誌のモデルへの応募を勧められたが、髪を高く結えば化粧でもあざを隠しきれない、と断った。女優、客室乗務員、看護師。あこがれた職業も、すべてあきらめた。
「もしあざがなかったら、人生違っていたかも」と思うことはある。けれど、素顔で外に出かけられるだけで、いまは十分だ。
★ 赤あざの治療例(2010年12月:朝日新聞)
1 10年以上治療…薄くならない
「何とかなるって、大丈夫」。札幌市の女子高校生(16)は、楽しみにしていた小学校の運動会の直前に足をねんざした時も、両親に学校の成績を心配される時も、いつも笑顔でこの言葉を返してきた。
小さいころから楽天的な娘のあっけらかんとした明るさに、「随分助けられてきたな」と母(43)は思う。
生まれたときから、柔らかくふっくらした顔の右半分に赤いあざがあった。
「妊娠中におなかをぶつけるか何かしたんでしょうか」と詰め寄る母に、大学病院の医師は「原因はよくわかっていませんが、お母さんのせいでも遺伝でもありません」ときっぱり言った。
赤あざは、青あざと違って皮膚そのものが赤いわけではない。血管内に良性のしこりができるか、血管の形成が異常なために皮膚の表面が赤く見える。異常な血管が盛り上がって出血や神経の圧迫が起きると、視力や知能、運動機能にも影響が出る。
女子高校生のあざは「単純性血管腫」。毛細血管が異常に発達するタイプだ。旧ソ連のゴルバチョフ元大統領の頭のあざと同じという。目や脳内に異常は見つからなかった。
1歳過ぎ、生まれた病院の形成外科であざにレーザーを当てる治療が始まった。血液中のヘモグロビンに反応する「色素レーザー」を使い、異常な血管をつぶす方法だ。幼いころは全身麻酔で照射を受けたが、小学生になると外来での部分麻酔になった。
診察室のベッドに横になり、目を保護するゴーグルを着けると、治療の様子は見えなかった。パシュッ、パシュッという音とともに、針で刺されたような痛みが走った。数分の治療だが、長い時間に感じた。その間ずっと息を止めて体を硬直させ、付き添う母の手につめの跡がくっきり残るほど強く握った。
学校は楽しく、あざがどう見えるかは気にならなかった。けれど、治療から約2週間は、日に焼けないよう外で遊べなかった。衝撃で出血しないよう屋内での体育の授業も休んだ。運動が好きなのに、思いっきり体を動かせないのがつらかった。
あざが薄くなったという実感はなかった。血管が盛り上がってこないことだけを願って10年以上、ほぼ休まずに治療を続けてきた。
中学校に入って環境が変わるのを機に、しばらく休むことにした。
2 病気学び、理学療法士めざす
顔にある赤あざのレーザー治療を1歳すぎから続けてきた札幌市の女子高校生(16)。2007年、中学生になって環境が変わるのを機に、しばらく治療を休むことにした。
入学前、家族に「学校にはメークして行かない」と宣言した。専用のファンデーションを塗っても完全には隠せない。塗るかどうかは自分や家族にとっては大きな違いでも、他人にとっては大差ないだろうと考えた。
「任せるよ」と言った母(43)は、心の中で娘の決心にエールを送った。あざを隠すことに気持ちや時間をなるべく割かず、青春を思い切り楽しんだらいい、と。
スポーツが好きで、バドミントン部に入り、男性アイドルに夢中になった。中学2年の秋、2年ぶりにレーザー治療を再開することにした。放っておくと、血管が膨らんでくるかもしれないという不安があった。
10年来の主治医、佐々木了(ささきさとる)医師(49)をKKR札幌医療センター斗南病院(札幌市)に訪ねた。血管腫と血管奇形が専門で、同院がその年の夏に開いた「血管腫・血管奇形センター」の責任者を務めていた。
再開後も、「あまり薄くならないな」という実感は変わらなかった。だが翌年、血管の状態に応じてレーザーの照射条件を細かく設定できる機種が導入されると、赤色が濃かったあご先や目の下が驚くほど薄くなった。効果を実感でき、治療が苦痛でなくなった。
中学3年のとき、授業の一環で自分の病気について調べ、小論文を書いた。最初は好きな音楽や犬をテーマに考えたが、自分のことを知らないのは恥ずかしいと思って選んだ。ただ、原因不明の病気だけに資料が見つからなかった。困って佐々木医師に相談すると、医学書のコピーをいくつも渡してくれた。
たいていのことに前向きなのに、将来には悲観的だった。「営業や受付、レジ打ち。人前に立つそんな職場では、雇ってもらえないだろうな」
論文を書くため赤あざについて調べ、周りの人に話を聞くうち、「患者としての経験を役立てたい」と思うようになった。
目指すのは、理学療法士。体を動かしながら、患者の回復を手伝えるからだ。
この先、あざが広がったり、目や脳の血管に異常が出たりしないという保証はない。それでも、「いま大丈夫なんだから、大丈夫」。持ち前のプラス思考で、夢を追う。
3 原因不明の痛み、おさまらず
札幌市の会社で働く女性(44)は、左足のつま先から尻にかけて、赤いあざが張りついたようにある。
「これ、同じ病気じゃないかい?」
昨年初め、地元の市議会報を手にした母にそう言われた。複数の血管の形成異常で起こる「混合型血管奇形」を難病に指定するよう、国に意見書を出したとする記事。この病気はあざのような症状が出る、とあった。
あざは、赤ん坊のころからあった。
血管の奇形が原因らしいことは、当時の医師から何となく聞かされていたが、詳しいことはわからなかった。小学校ではなるべくジャージーを着てあざを隠した。
4年生のころ、「どんな痛い思いをしてもいいから、あざを治したい」と母に頼んだ。だが、当時は小学生の自分に合った治療法がなく、病院であざを目立たなくするファンデーションを教えられた。毎朝、母に20~30分かけて塗ってもらった。
「特別扱いできない」と、中学校でジャージーの着用が認められなくなると、割り切ってあざを隠さなくなった。バレー部に入り、足が隠れないふつうの練習着で活動した。高校時代は海に行き、水着姿で遊んだ。
短大を出て就職してからも、同僚と同じ制服のスカートをはいた。他人の視線が気になったが、「どう思われてもいい」と自分に言い聞かせていた。
30代半ばごろ、左ひざがピリピリ痛み始めた。トゲが刺さったように感じた。
ひざのやや上にごま粒大のしこりがあった。痛みの元のように思えて、気になった。やがてひざ全体が腫れだし、近くの整形外科に行った。「あざが関係しているかも」と指摘され、皮膚科で腫れた場所にレーザーを当てた。でも何も変わらなかった。
その後、左足に静脈瘤(りゅう)という血管のこぶが見つかり、手術した。それでも痛みや腫れは治まらない。原因がわからないまま、痛みの範囲が徐々に広がっていった。
このころ知り合った年配の女性に「あなたのあざを見たくない人もいるんじゃない?」と言われた。思ったこともない考えだった。
市議会報を見たのは、そんなころ。
インターネットで調べると、KKR札幌医療センター斗南病院の佐々木了医師が専門だとわかった。「この先生に診てほしい」。光が差したような気がした。
4 地道に血管治療 痛み和らぐ
札幌市の会社で働く女性(44)は30代半ばから、左足の痛みや腫れに悩まされていた。
皮膚科や整形外科などいろいろな医師にかかったが、症状は悪くなるばかり。先が見えず不安が募ったころ、KKR札幌医療センター斗南病院にある血管腫・血管奇形センターの佐々木了センター長の存在を知った。
昨年4月に受診した。佐々木医師は、これまでの症状を細かく質問してきた。「さすが専門の先生だな」。女性は驚いた。同時に、自分の話もじっくり聴いてくれると感じ、気持ちが少し楽になった。
MRIや血管造影の結果、女性のあざは混合型血管奇形の一つで、肌の表面近くにある毛細血管と、筋肉内の静脈の奇形が同時に起こることで、ひざの周りの腫れや痛みにつながっていることがわかった。
血管の奇形をつぶすため、血液中にあるヘモグロビンに反応する色素レーザーを当てる治療が始まった。薬剤で血管を固める硬化療法もした。ふくらはぎからももにかけて、数回に分けて注射した。血管が焼けるような感覚がした。
「勤務先に申し訳ない」と感じながら約1年半、同院への入院や外来で治療を続けてきた。あざは、少し薄くなったと思える程度の変化だが、ひざ周りの痛みは和らいだ。
血管の奇形が治ったわけではない。最近はむしろ、奇形のために、肌の表面のでこぼこが目立つようになってきた。左足は全体的に太くなってきていて、昨年まで履いていたブーツが入らなくなった。
混合型血管奇形はまだ治療法が確立していない。だから劇的に良くなることは期待しないようにしている。「一喜一憂せず、先生を信じて、手探りの治療を続けていこう」。以前のような不安は、もう感じていない。
佐々木医師を頼って全国から患者が集まる。我が子のために、必死に情報を集める親たちがいる。混合型血管奇形の難病指定を求める動きもある。「自分にもできることはないか」と思うようになった。
足の血流が滞って痛みを起こさないよう、患者の多くは医療用ストッキングで足を圧迫する必要がある。1足数千円もするのに、デザインがみな同じで、色も3種類くらいしかない。女性にはそれが不満だ。
「みんなでメーカーに改善をお願いしたい」。そんなことを考え始めている。
■ 黄疸
「黄疸」とは、皮膚の色が黄色くなることです。皮膚だけでなく白目が黄色くなるので目立ちます。強い・弱いの違いはありますが黄疸はすべての赤ちゃんに見られる現象です。これは「生理的黄疸」と呼ばれており、生後3〜4日頃から目立ち始め、約2週間で自然に消えていきます。
また、母乳栄養の赤ちゃんでは生理的黄疸が長引く傾向があります。これを「母乳性黄疸」と呼びます。それも生後6週間には消えていきます。
これらの黄疸は、機嫌が良く、食欲もあり、生後1週間頃がピークであとは徐々に薄くなっていく印象があれば心配ありません。様子を見て良いでしょう。
さて、生まれてから退院するまでの約1週間、産科では看護師・医師が黄疸の程度を毎日チェックしています。皮膚に当てると黄疸の程度がわかる器械があり、それで強めの値が出ると実際に採血をして黄疸の元である「ビリルビン」値を測定して治療の要否を判断しています。
希ながら、黄疸の裏に病気が隠れていることもあります。
「大人の黄疸=肝臓の病気」というイメージがありますが、赤ちゃんの病的黄疸の原因は実に様々です。
一番多い原因は生理的黄疸が強めに出た場合です。他に血液型不適合(有名なRh式以外にも、ABO式不適合もあるのです)、感染症、生まれつきの代謝異常などの病気のこともあります。
ビリルビン値が異常に高い場合は治療の適応となります。これは赤ちゃんの体重と生まれてから何日目かで基準が細かく決められています。
黄疸に対する治療は「光線療法」です。ある波長の光を体に当てて黄疸の元のビリルビンを分解する方法です。この治療法は、その昔看護師が日当たりのよい窓際にいる赤ちゃんの方が黄疸が軽い傾向があるという鋭い観察から発明された歴史があります。より強くて進行が速い黄疸に対しては赤ちゃんの血液を入れ替える「交換輸血」を行うこともあります(希です)。
黄疸を治療する目的は「核黄疸」を予防することです。ビリルビンは普通は脳の中には入れないことになっているのですが、黄疸が強いと脳に入り込み、そこに沈着して精神運動発達に障害を残すのです。
なお、感染症など他の病気が見つかった場合は当然その病気に対する治療も一緒に行います。
また、産科に入院中は問題なかったけれど、退院してからだんだん黄疸が目立ってくるパターンもあります。
「黄疸+元気がない」「黄疸+うんちが白っぽい」場合は重い病気が隠れていることがありますので、早めに小児科を受診して下さい。
余談ですが、幼児期に「皮膚が黄色い」と心配されて受診なさる方が時々います。たいてい「柑皮症」(医学名はカロチン血症)といってミカン、カボチャ、にんじんなどの黄色い食べ物をたくさん食べた結果黄色く見える現象です。「黄疸」との違いは、白目が黄色くならないことです。微妙なときは血液検査で確認します。
■ うつぶせ寝と仰向け寝
うつぶせ寝と仰向け寝のどちらがよいか?
歴史的には頭の形が良くなるという理由でうつぶせ寝が推奨された時代もありましたが、現在は仰向け寝の方が安全とされています。
その理由は、うつぶせ寝は乳児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome:略してSIDS)の危険が増すと統計的に結論されたからです。
日本における数年前の大規模な調査の結果、SIDSは「うつぶせ寝」「人工栄養」「母親あるいは同居者の喫煙」により3〜5倍多く発生することがわかりました。皆様、ご注意下さい。
でも、赤ちゃんはうつ伏せの方がよく寝てくれる傾向があります。仰向けではなかなか寝てくれない場合は硬めのマットを選び、6ヶ月未満の乳児では目を離すときは仰向けにするのが現実的です。
■ 冷暖房について
赤ちゃんのいる部屋の温度はどのくらいが適当ですか、という質問もよく受けます。
あえて数字で示しますと下記の通り。
・夏:24〜26(本によっては26〜28)℃
・冬:20〜22(本によっては18〜22)℃
まあ、調べれば調べるほど微妙に数字が異なりきりがありません。概ね、夏は25℃くらいで外気との差が5℃以内になるように、冬は20℃くらいで湿度を40〜60%に保つ、といったところでしょうか。
注意点2つ。
・エアコン・扇風機を使う場合は、吹き出す風が赤ちゃんに直接当たらないようにする。
・室温を考えるときは赤ちゃんの目線で。赤ちゃんのフトンかベッドに寝ており、大人の感じる室温と異なります。
■ おちんちん関係のアレ?!
赤ちゃんのおちんちん付近の「アレ?」について。
「タマ」がない! → 【停留睾丸】
タマ(睾丸)がふくろ(陰嚢)に降りていない状態です。片方のことが多いです。まず、病院へ行く前に、いつも無いのか時々無いのか確認して下さい。お父さんに聞くとわかりますが、寒いときとか緊張しているときはタマはキュッと縮みますので。おむつを替えるときに触らなくても、お風呂に入っているときに触れればそれは「移動性睾丸」ですので心配いりません。
でも、いつも触れないとき、あるいはたまにしか触れないときは生後6ヶ月くらいを目安に泌尿器科へ相談して下さい。一般的に1歳までに降りてこないときは手術を検討するようです(医療機関により多少異なります)。
タマ(睾丸)は将来子どもの元になる精子を作る大切な臓器であり、別名「精巣」とも呼ばれます。
なぜ陰嚢の中でぶら下がっているか? それは高温を避けるためです。タマがお腹の中にあると温度として約2℃高い環境にさらされることになり、これが長期間続くと精巣の変化が進み、将来不妊症の原因になると考えられています。また、思春期以降の腫瘍発生の頻度が高くなります。
タマは涼しいところでブラブラしているのが好きなのです。
ふくろが妙に大きく膨らんでいる → 【陰のう水腫】
袋の中に水がたまった状態です。90%以上は1歳前に自然に消失しますので治療の必要はありません。1歳を過ぎても消えない場合や、1歳以降で膨らんできた場合は手術の対象になるようです。
昔は、パンパンに膨れた場合に針を刺して水を抜いた時代があったそうですが、今はやりません。
おちんちんの横が時々腫れている → 【鼡径ヘルニア】
おちんちんの横に穴が開いていて、腹圧がかかるとそこから腸が出てきて腫れているように見えます。本人は気にしていないときもありますが、痛がって泣きやまないこともあります。赤ちゃんが急に機嫌が悪くなって泣きやまず病院を受診した場合、小児科医は必ずこれをチェックします。
頻度は1〜4%。小さく産まれた赤ちゃんでは出やすいです。
鼡径ヘルニアは「嵌頓」の危険があります。これは、穴が何かの拍子にキュッと締まって狭くなり、出ていた腸が元に戻れなくなった状態です。血流が悪くなりますので、放っておくと腸の組織が死んでしまいます(これを壊死と言います)。膨らんでいるところが紫色に変色してくるのが特徴です。
このため、鼡径ヘルニアは「見つけたときが手術のタイミング」ですが、手術の危険性など諸条件を考慮し、嵌頓を起こさない限り、生後3ヶ月以降に手術を行う施設が多いようです。
同じ「ヘルニア」の名前が付く「臍ヘルニア」はこの嵌頓の危険性がゼロに近いので、何もしないのが基本です。
なお、鼡径ヘルニアは女の赤ちゃんにも起こります。出てくる内容は腸の他に「卵巣」のこともあり、元に戻そうとむやみにいじり回すのは卵巣を傷つける可能性がありますのでやってはいけません。早めに小児外科へ相談して下さい。
(2009年1月初掲載)
<関連記事>
乳児期の悩みに関する記事を拾い読み。
■ 臍ヘルニア(でべそ)の原因と治療
(2011.12.20 all about:清益 功浩先生)
臍ヘルニアは、俗に「でべそ」です。おへそが膨らんでいる状態で、新生児から乳児に多く、自然に治ることが多いです。見た目で気になる「でべそ」について説明したいと思います。
臍ヘルニアのできるメカニズム
赤ちゃんがお腹に居る時に母親とつながっているのが臍帯(さいたい)です。臍帯には赤ちゃんと母親をつなぐ血管があります。臍帯はへその緒と言われ、産まれた時に、切ります。そして、臍帯から出血しないように止めておきます。すると、徐々に臍帯が小さくなり、乾燥して、へその緒として「桐の箱」に入れて渡されることが多いと思います。臍(へそ)には、皮膚、筋肉などがくっついていきますので、一度、へこんでいきますが、くっつかない時に、腸がそこから出て、臍ヘルニア、つまり「でべそ」になるわけです。従って、生後1カ月頃から3カ月程度の間に膨らんできます。
この臍ヘルニアは5~10人に1人の割合でみられますので、比較的よく見られます。
臍ヘルニアの症状
臍が出た部分には腸が入っているので、触れると柔らかく、少し押さえるとグジュグジュとした感じがして、お腹の中に戻っていきます。しかし、泣くと、お腹の圧が高くなり、また、腸が出た臍ヘルニアになってしまいます。このように、出たり引っ込んだりしています。破れそうに見えても破れることはないです。
臍ヘルニアの経過
生後3カ月頃までは大きくなりますが、ハイハイやお座りなどができると、お腹の筋肉がついてきます。すると、筋肉で臍ヘルニアは治ってきます。95%以上の子供が1歳までに自然に治ります。
私自身もよく外来で診察していますが、基本は何もせず様子見るように言っています。祖父母に言われて受診される人もいますが、昔からの言い伝えが正しいとは限りません。
臍ヘルニアの治療
自然に治るので、基本的には、治療を必要としません。よく5円玉(なぜ5円玉)をガーゼに包んで押さえたり、ガーゼを貼ってテープで押さえたりことがありましたが、基本的にはお勧めできません。赤ちゃんの皮膚はデリケートなので、すぐにテープでかぶれますし、臍がジクジクしたりして、感染を起こす危険があるからです。祖父母が言っても、決してお金で臍を押さえないようにしてください。
ただし、治療を要する臍ヘルニアがあります。
1歳過ぎても、全く良くならない場合と治っても皮膚が余った感じになった場合は、小児外科にて手術して、臍の形成術を行います。ただ、形のいい状態にするのは難しく、子供には成長もあるので、手術するかどうかは、小児外科で相談した方がいいでしょう。
その意味では、もし、臍ヘルニアは気になったら、1歳までなら小児科か小児外科、1歳過ぎたら小児外科に受診してもいいと思います。
■ 赤ちゃんでべそ 2歳過ぎて気になるなら手術も
(2011年12月8日:朝日新聞)

<赤ちゃんのおへそ、気になる症状は?>
おなかの真ん中にあるへそ。思春期のころ、自分のおへそが「でべそ」だと、悩んだ人も多いかもしれない。
生まれたばかりの赤ちゃんのへその緒は、しばらくすると、根元から自然に落ちる。表面を皮膚で覆われたくぼみが「へそ」だ。
赤ちゃんのでべそは、へその緒がとれたあと、生まれて数週間すると目立ち始める。へそが、ピンポン球のように、2、3センチ飛び出したり、泣くたびに出たり入ったりすることもある。これは「臍(さい)ヘルニア」といって、出生体重が2千~2500グラムの赤ちゃんの場合5人に1人にみられる症状だ。
◇
生後間もない赤ちゃんは、へその下の腹壁がまだ閉じていない。へその下には、脂肪や筋肉の組織もないため、腹圧がかかると、おなかの中の臓器が皮膚を押し上げて、へそが出っ張る。
ただ、順天堂大学小児外科の山高篤行教授によると、幼いころの臍ヘルニアは、1~2歳までに9割ほどが、自然に解消するという。腹筋が発達してへその下の腹壁が閉じ、内臓が飛び出さなくなる。へその輪も縮んで、くぼんでいく。「ばんそうこうで押さえるなどの、特別な処置はいりません」と、山高さんは話す。
腹壁がなかなか閉じないと、2歳をすぎても臍ヘルニアが残る。腹壁は閉じても、皮膚が余って、へそが出っ張ってしまうこともある。山高さんは「でべそは病気ではないけれど、いじめられたり、自分で引っぱって遊んだりすることもある。2歳を超えても残る時は、手術をお勧めします」。
手術は全身麻酔で、30分から1時間ほどで終わるという。
一方、赤ちゃんの場合、へその緒がとれてから、なかなか皮膚が閉じないときは、注意が必要だ。
じくじくした状態が続く場合は、きれいに洗って清潔に保つ。数カ月たっても症状が続いたり、へその周りが赤く腫れたりする場合は、病院を受診した方がいいという。感染や炎症が起きている可能性がある。まれに、へそが膀胱(ぼうこう)や腸とつながっていて、手術が必要になることもある。
◇
大人になって「でべそ」が気になる場合は、形成外科に相談するとよい。昭和大学形成外科の清水祐紀准教授によると、悩みの大きさは、おへその大小とは関係ないそうだ。直径が1センチほどの一見「普通」のおへそでも、「でべそだから治したい」と訪ねてくる女性もいるという。清水さんは「体の健康には、精神的な健康も大切。気になるようならば、相談を」と話す。
大人の場合、局所麻酔を使った日帰り手術は30分ほどですむ。自費診療の場合、費用は15万円前後という。臍ヘルニアなら保険診療で治療を受けることもできるそうだ。
◆相談ナビ◇
子どもの臍(さい)ヘルニアの基礎知識については、日本小児外科学会のウェブサイト「小児外科で治療する病気」のコーナーが参考になる。日本形成外科学会は、学会が認定した専門医を、ウェブサイトで公表している。
■ 乳児のうつぶせ寝減少で,今度は“絶壁頭”が問題に―米国学会が予防の手引き
(2011.12.7:メディカルトリビューン)
米国小児科学会は先月末、「乳幼児の仰向け寝による頭蓋骨変形症の予防と管理」と題する手引きを、米医学誌「Pediatrics」(2011; 128: 1236-1241)に発表した。米国では1990年代初頭から、後頭部の一方が平らになる、いわゆる“絶壁頭”(斜頭症)の子供を診察する機会が増えているという。同学会は乳幼児突然死症候群(SIDS)予防のため、うつぶせ寝をさせないよう勧告しており、これが頭蓋(ずがい)骨変形例の増加につながっているとの見方を示している。
腹ばいで遊ぶ時間を設ける、頭の向きを毎晩変える…
多胎や寝るときの体勢などが原因で起こる斜頭症は、頭蓋骨癒合症を除いては良性であることが一般的と同学会。小児科医やかかりつけ医は良性と悪性の鑑別を行う必要があるほか、保護者にあらかじめ斜頭症の進行を予防できる方策のアドバイスや、必要に応じて専門医を紹介することが求められるとしている。
米国小児科学会の手引きによると、予防策としては
・生後すぐから毎晩頭の向きを入れ替えて寝かせること、
・腹ばいで遊ぶ時間を一定時間設けること
などが示されている。頭蓋骨が最も変形しやすい生後2~4週までに、保護者は斜頭症予防に関するカウンセリングを受けるべきという。
また、斜頭症と診断された場合、原則として手術やヘルメットなどによる治療は不要で、基本的には平らになっていない側の頭を下にして寝かせる、おむつ替えの際にできる首のストレッチなどを行うことが勧められている。
一方、これらの方法を行ってもなお改善が見られない場合は、小児神経外科や脳顔面頭蓋の形成異常を専門とする医師などの専門家らと相談の上、ヘルメットなどの機械的な補正法を試してもよいとしている。ただし、同学会はヘルメットなどに関して「エビデンス(根拠となる研究結果)はまだない」との見解を示している。

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