お母さんの心配事 ー1ヶ月検診編ー

■ 顔の湿疹・・・新生児ざ瘡(赤ちゃんニキビ)

 生後1ヶ月頃の顔の湿疹で一番多いのは「赤ちゃんニキビ」(医学用語では「新生児ざ瘡」)です。
 生後まもなくから2〜3ヶ月頃に、額やほっぺたに多く見られるやや赤いブツブツです。痒くはなさそう。
 赤ちゃんの肌はみずみずしいイメージがありますが、生後2〜3ヶ月くらいまではオイリーで思春期と似た状態であり、「ニキビ」と呼ばれています。
 赤ちゃんニキビを見つけたとき、お母さんに「顔を洗うとき石けんを使ってますか?」と聞くと「No」の返事がほとんど。
 ここまで書けばおわかりかと思いますが、対策は「油を落とすスキンケア」。
 つまり、沐浴の時に顔も石けんを使って洗うことです。高級な香料入の石けんはかえって皮膚に刺激になることがありますので普通のベビー石けんを使ってください。具体的には、石けんをお母さんの手にとりよく泡立たせて、指のお腹の柔らかいところを使って赤ちゃんの顔を洗い、その後にお湯でよくすすぎます。すすぐときはガーゼなど柔らかい布を使ってもかまいません。
 これを繰り返せば徐々によくなってきます。
 ただし、赤みが強く炎症を起こしているとき、ジクジク液が出てきているときは小児科あるいは皮膚科を受診してください。おそらく軟膏が処方されることでしょう。
 他に顔のブツブツには「あせも」もありますが、対策は同じく皮膚を清潔に保つスキンケアが基本です。

■ 頭のかさぶた・・・乳児脂漏性湿疹

 前項の「赤ちゃんニキビ」がひどくなってくると、眉毛、頭の前の方、耳などに黄色いカサブタ(油の固まり)ができてきます。これを「乳児脂漏性湿疹」といいます。生後3〜4週頃から目立ち始め、3ヶ月を過ぎると軽快へ向かいます。
 対策はやはり油をとるスキンケア。入浴1時間前にオリーブオイル(あるいは白色ワセリン)をカサブタに塗っておいてふやけさせ、入浴時は石けんあるいはシャンプーを使って洗い、その後クシで少しずつ削ると改善してきます。

【乳児湿疹とアトピー性皮膚炎との違い】
 「赤ちゃんの湿疹=アトピー性皮膚炎?」と心配されるお母さんが多いので違いを説明しておきましょう。
 アトピー性皮膚炎では痒みが強いですが、脂漏性湿疹では無いかあっても軽度。3〜4ヶ月を過ぎても湿疹が治らず、痒みを伴って皮膚の引っかき傷のような変化が出てきたらアトピー性皮膚炎を疑います。また、耳の付け根が赤くなって切れてしまう「耳切れ」はアトピー性皮膚炎に特徴的です。

■ げっぷが出ない

 生後2〜3ヶ月までの赤ちゃんは哺乳の際、空気も一緒に飲み込みやすい傾向があります。つまり、下手なんですね。お母さんのおっぱいから直接哺乳した方が、哺乳瓶を使った時より空気を飲みません。
 (・・・ウン、なんとなくわかるような気がする。)
 げっぷをさせようとしてもなかなか出ないときどうしたらよいか・・・
 育児書を何冊か読むと様々なことが書いてありました。出るまでひたすらがんばる、ある程度粘ってダメだったらあきらめる、等々。
 最近の本では5〜10分間経っても出ないときは無理にさせる必要はなく、一旦ベッドに寝かしましょう、そのときは側臥位(横を向かせて寝かせる)をとらせましょう、とする傾向がありました。横を向かせるのは乳を吐いたときにのどに詰まらせないためです。
 まあ、「これが正解!」というのは無いので、トライ&エラーでやってみるしかなさそうです。

■ 吐きやすい

 とにかく赤ちゃんは吐きやすい。
 ある本には病気でなくても80%の赤ちゃんが嘔吐すると書いてありました。
 原因は胃の入口(噴門といいます)の締まりが悪いためです。そのため胃から食道・喉に逆流しやすいのです。吐くきっかけとしては、おっぱいの飲み過ぎ、げっぷが十分出なかった、服や姿勢により腹圧がかかった、など様々です。
 吐き方もいろいろ。
 「溢乳」・・・気がつくと口の端からダラダラとたれている。
 「吐乳」・・・ケポッ、あるいはカポッと吐く。
 「噴水状嘔吐」・・・勢いよく噴水状に吐く、など。
 吐いていても機嫌良く哺乳でき、体重が増えていればまず心配ありません。
 「嘔吐+機嫌が悪い」ときは小児科医の診察を受けて下さい。
 何回吐いたら異常か?と聞かれても困りますが、新生児期に哺乳の度に噴水状嘔吐を繰り返す場合は「肥厚性幽門狭窄症」という病気が疑われます(→小児科へ)。
 また、吐いたものの色が黄色〜緑、あるいは赤い場合は病気が隠れている可能性があります(→小児科へ)。

■ おむつかぶれ

 おむつかぶれの原因は、おむつとうんちとおしっこです。

1)おむつ:おむつのゴム、合成樹脂のおむつカバー、残っている洗剤、パウダーなど。
2)うんち:うんちに含まれる蛋白分解酵素、脂肪分解酵素。
3)おしっこ:尿素が分解されて生じるアンモニアなど。

 もともとおむつかぶれはおむつがあたる場所全体が赤く炎症を起こした状態を指しましたから、昔は1)が原因になることが多かったのでしょう。しかし、最近見るおむつかぶれはうんちとおしっこが付着する場所に多い印象がありますので、2)と3)が原因になることが増えてきたことを実感します。
 対策とすると、これはもうこまめにおむつを替えることに尽きます。紙おむつは便利ですが、紙おむつが普及してから1日におむつを替える回数が減っているデータを何回も目にしました。当然ながら、おむつをしない民族ではおむつかぶれは存在しません。
 ふだんおむつを替えるときは「拭く」だけですが、おむつかぶれのひどいときは「拭く」+「洗う」+「乾かす」+「軟膏を塗る」まで行う必要があります。
 私の長女も肛門周囲のびらん(皮が剥けてしまうこと)がなかなか治らなくて、洗面器にお湯を張って坐浴をしてはドライヤーの低温設定の風で乾かし、軟膏を塗っていたことがありました。まめにおむつを替えているつもりでも「あっ」という間に悪化してしまうんですよねえ。

 治療としては・・・
・赤くなっているとき → 産科でもらったサトウザルベ(亜鉛華軟膏:皮膚を保護する)を塗る。
・ただれている・皮が剥けて痛そう → 小児科あるい皮膚科を受診し軟膏を処方してもらいましょう。
・長引いてブツブツが目立つ → カビが悪さしている可能性あり(乳児寄生菌性紅斑)。軟膏を塗っていても良くならないときは再度受診してください。

 なお、ベビーパウダーは過剰に使うと汗で固まってしまい、かえって皮膚を刺激して悪化因子となる可能性があります。また、間違って吸い込むと肺炎を起こすこともあり、使用を勧めない医師が増えてきました。

■ 目やに

 目やにの相談も多いです。これは、赤ちゃんの涙の通り道が発達途上であることと、自分で涙を拭けないので乾けば目やにになってしまうからです。
 目と鼻はつながっているのをご存じですか?
 涙は上まぶたの外側半分に位置する涙腺から出てきます。そして下まぶたの内側の穴(涙点:鏡で見ることができます)から涙嚢を経由し鼻涙管という管を通って鼻の中に流れていきます。
 泣いたときに鼻水が出るのはこのためです。
 また、大人でも風邪を引いて鼻づまりがひどいと涙目になりますよね。
 奇人変人の瞬間芸で、鼻から入れた牛乳を目から出すのを見たことがありませんか?
 あれは鼻涙管を逆行させたのですね。

 クリーム色の目やにがちょっと付くぐらいでしたら拭き取って様子を見て良いでしょう。大量の緑〜黄色の目やにがある場合は眼科か小児科を受診しましょう。病気として多いのは:

鼻涙管閉鎖
 前述の鼻涙管がつまっている状態です。涙が流れないためいつも涙目で、乾くとべっとりと目やにが・・・。「涙嚢炎」(涙嚢に炎症が起こること)を併発すると色の付いた汚い感じの目やにになります。次項の結膜炎とは白目が赤くならないことで区別可能です。
 眼科あるいは小児科を受診し、抗生物質入りの目薬と涙嚢マッサージで治療しますが、鼻涙管閉鎖状態が改善しないときは眼科で開通処置を行うことがあります。

結膜炎
 目やに+白目が赤くなる状態です。両目のことが多いです。眼科あるいは小児科を受診して下さい。

逆さまつげ
 逆さまつげが目を刺激して目やにの原因になることがあります。実は逆さまつげは赤ちゃんの1/4〜1/2に見られ、珍しいものではありません。
 赤ちゃんのまつげはまだ柔らかく、角膜を傷つけて視力障害を起こすことはまれとされています。また、ぺちゃんこの鼻柱が高くなるにつれ、自然に治る傾向が強いため逆さまつげそのものに対して治療はしません。
 ただし、1歳頃になるとまつげもしっかりした剛毛になるため、角膜を傷つける可能性が出てくるので治療対象になります(→眼科へ)。

■ ミルクの量がわからない

 これは母乳栄養ではなく、人工栄養の場合の話です。
 ミルクでは飲んだ量がわかってしまうので、一度気になり出すとその数字に振り回されてしまうお母さんがたまにいます。特にまじめで完璧主義の方が陥りやすい・・・。
 また、ミルクの缶に「生後何ヶ月で○○ccが適当です」と書いてあるのがいけません。この量はあくまでも参考程度とし基本は自律哺乳(欲しがるときに好きなだけ飲ませる)でよいのです。飲む量は赤ちゃんによって異なります。機嫌良く過ごし、体重増加が良ければ問題ありません。
 自宅用に精密な体重計は買わないで下さいね。以前、哺乳量と毎日の体重をパソコンに入力し、グラフにして相談にいらした御両親にびっくりした経験があります。

 ただ、飲む量が数字の上で減ってくるとさすがに心配になります。でも、健康な赤ちゃんでもこれはあり得る話なのです。
 そのからくりは・・・赤ちゃんは生後1ヶ月まではあげればあげるだけ飲んでしまいます。ところが、生後1ヶ月を過ぎる頃から満腹感を感じるようになり、「もういらない」と哺乳瓶を離してしまうときが出てきます。哺乳量は頭打ちとなり、むしろ減ってしまうこともたまにあります。この場合も、機嫌と体重増加がよければまず心配ありません。
 当然、機嫌が悪くて様子がヘンだったら小児科へ行って相談して下さい。

 かつて「粉ミルクで育てると赤ちゃんは太る」といわれたことがありましたが、現在の粉ミルクは以前と比べて薄く作って飲ませるものとなっており、指定された割合で調乳すれば粉ミルクが理由で太ることはないとされたいます。

■ しゃっくりが多い

 しゃっくりとは胸とお腹の境界にある「横隔膜」のけいれん(ぴくつき)です。赤ちゃんではよくみられます。一過性のものであれば病気と考える必要はありません。
 特に哺乳直後に多い傾向があります。きっかけとしては、がっつき飲み、適温でないミルクなど。
 対策としては、ゆっくり哺乳させる、途中でげっぷをさせる、もう一度おっぱいを飲ませる、等々。
 成長につれて自然に消えていきます。

 私の長女も一時哺乳後のしゃっくりが目立って、仕事柄(?)「病気じゃないだろうか」といろいろ調べた記憶があります。昼間に刺激を与えすぎると出やすいとか、ゆったりとした気持ちで向き合うべきである、とか「ホンマかいな?」と思うようなことも書いてありました。
 結局、前述の通りの経過でいつの間にか気にならなくなりました。

■ ゼーゼー、ゼロゼロ

 いつもゼーゼーしていて息づかいが荒い場合は小児科医の診察を受けてください。喉頭軟化症などの生まれつきの病気が疑われます。
 ふだんは聞こえないけれど、授乳直後に一過性に聞こえるゼーゼーは、様子をみているといつの間にか消えてしまうことがほとんどです。
 これは、母乳やミルクのネバネバが喉の奥に絡まっているため聞こえるゼーゼーで、しばらくすると食道に流れて音も消えてしまいます。

■ 便が出づらい

【赤ちゃんの排便習慣】

 母乳栄養の赤ちゃんは生後2週間までは「哺乳→排便」という反射があり、ゆるいうんちを1日10回以上します。それ以降は1日1回とか、2〜3日に1回へ減っていきます(本によっては生後1ヶ月までは1日2〜5回との記載あり)。つまり直腸にうんちをためる機能が発達し、「うんちのまとめ出し」ができるようになるのです。
 生後3ヶ月頃までの母乳栄養の赤ちゃんののうんちはゆるめで、これが理想的というか本来のヒトの赤ちゃんのうんちです。ミルク(つまり牛乳)を飲んでいる赤ちゃんのうんちはやや硬めで匂いも違いますね。

【便秘とは】

 一般に、便秘というのは排便回数が少ないだけではなく、便が硬いために排便に苦痛を伴う場合をいいます。
 「うんちの回数が少なくて心配です」と相談に来られるお母さんに「うんちの硬さはいかがですか」と尋ねると、「ふつうです」と答える場合が多いのです。これは「便秘」とは言えません。お腹がパンパンに張ったりすることが無く、機嫌・体重増加が良ければその赤ちゃんのペースと言っても良いくらいです。赤ちゃんのうんちは毎日出ないといけないわけではありません。
 でも何日も出なくていきんでいる様子があると、少し助けてあげたくなります。方法は以下の通り:

① 腸の動きを刺激する飲み物を与える:砂糖水、果汁、薬店で売っているマルツエキス(麦芽糖です)など。
②「綿棒浣腸」:肛門に綿棒を入れて刺激してうんちを出す方法。
 具体的には綿棒の先にオリーブオイルかワセリンを塗って痛くないようにし、赤ちゃんの肛門にそっと挿入します。深さは綿棒の頭の部分が隠れる程度までにして下さい。そこでゆっくり小さな円を描くように綿棒を動かしたり、しばらく入れたまま様子を見たりしていると、ムニュムニュとうんちが出てきます。
 強く刺激するより時間をかけて刺激する方が効果的です。
③ 本物の浣腸(イチジク浣腸の類):
 5日間以上うんちが出ないときの最終手段です。1日出ないからすぐ浣腸、というパターンを繰り返していると、かえって腸が怠けて働かなくなりますので。一方、うんちを5日間以上ためていると水分がどんどん吸収されて硬さが増すし、直腸が膨らみきった風船のように収縮力を無くしてしまう可能性があるので積極的に出す必要があります。

■ 夜泣きには漢方

「夜泣き」は生後3週頃から始まり、6ヶ月〜1歳半がピークで、3歳頃には80%消失する現象です。
 夜間、それも結構決まった時間帯に赤ちゃんは泣いてぐずります。これが連日続くとお母さん、お父さんは参ってしまいます。
 一般的な対策としては、まず赤ちゃんが不快となることをチェック!
・お腹がすいた
・おむつが汚れた
・暑いあるいは寒い、など。
 一通り対応しても泣きやまないときは・・・「抱っこ」。
 「私がいるから大丈夫」と安心させる気持ちで抱っこしたり、子守歌を歌ったり。
 お母さん一人では大変ですから、疲れがたまってくるようであればお父さんにも是非協力してもらって下さい。お母さんが幸せでなければ赤ちゃんも幸せになれません。

 ポイントは「赤ちゃんの感情をしっかり受け止めてあげること」だと思います。理由はいろいろあるでしょうが、「泣く」という行為は数少ない赤ちゃんの意思表示の方法です。それを繰り返し受け止めてあげることにより「自分は大切にされている」と感じるようになり、「生きてるって幸せなことだ」「ヒトと触れ合うって気持ちの良いことだ」と広がっていきます。赤ちゃんが初めて育むヒトとヒトの間の信頼関係です。これが将来豊かな人間関係を築く土台になっていくのです。

 その昔、アメリカの有名な「スポック博士の育児書」には子どもを乳児期から一人で別室で寝かせ、自立心を養う旨の記述がありました。日本でも「抱き癖がつくから放っておきなさい」とする風潮が一時ありました。
 しかし、現在は前述のように赤ちゃんが泣いたらしっかり抱きしめてあげることが推奨されています。

 もし、泣いている赤ちゃんを放っておいたらどうなるのでしょう。より激しく泣き、最後には疲れ果てて寝てしまいます。これが繰り返されるとだんだん泣かない赤ちゃんになっていきます。
 これは決して「がまん強くなった」訳ではありません。「自分がつらくて泣いていても誰も助けてくれないんだ」とあきらめてしまうのです。それが続くと、「自分は大切にされない存在」「生きていたってしょうがないんだ」と自己評価の低い子どもになっていきます。
 現在社会問題になっている子どもの「不登校」「引きこもり」「摂食障害(拒食症、過食症)」「切れやすい」などを扱っている専門家は、それらに陥る子どもの共通点として「自己評価の低さ」を挙げています。

 などなど、お母さんを脅すようで申し訳ありません。
 いろいろやってみたけどやはり大変・・・というときは漢方薬をお勧めしています。日本の伝統的な医学である漢方には夜泣きの薬が複数用意されています。お母さんも「もう限界!」とつらいときには赤ちゃんと同じ薬をお母さんにも飲んでいただきます。すると母子ともに気分が楽になるのです。これは「母子同服」といって、昔から行われてきたことです。

■ 向き癖

「いつも同じ方ばかりを向いていて、頭の形が変形してきて心配で・・・」という相談は乳児検診ついでに聞かれることが多いです。
 まず「筋性斜頸」がないかどうか診察します。首にしこりを触れ、違う方向へ動かそうとしても抵抗があれば「筋性斜頸」です。抵抗なく違う方向へ首を動かせれば単なる「向き癖」です。

筋性斜頸
 これは赤ちゃんが生まれるとき、産道を通る際に圧迫された結果、首の筋肉内に出血し、その後血腫(血のかたまり)になり筋肉が硬く縮まったものです。生後1週間頃から気づき、3週間くらいまで大きくなります。10ヶ月〜1歳くらいまでにほとんど自然に治るので治療の必要はありません。ただし、生後6ヶ月を過ぎても改善傾向が見られない場合は整形外科へ相談することになっています。
 昔はマッサージとか、「徒手筋切術」といってエイヤッと引っ張って硬くなった筋肉を無理矢理伸ばした処置をしたそうです(痛そう・・・)。

向き癖
 首が据わり、お座りができる頃になると徐々に目立たなくなっていきます、と本には書いてありますが、子どもの頭を触ると幼児期にも結構変形が残っている例に出会います。まあ、髪の毛で隠れるので目立ちませんが。
 さて、「向き癖」の対処法は・・・
・向きにくい側からあやす、授乳する。
・ドーナツ枕、砂嚢、巻タオルで調節する。
と本には書いてありますが、なかなかうまくいかないんですよねえ。

■ おへそのトラブル

 ご存知のように、おへそはお母さんと赤ちゃんをつないでいた臍帯の名残で、太い血管が通っていました。役割を終える過程でいろいろなトラブルに出会います。
 まずは正常なおへその経過を知りましょう。生まれたとき臍帯は1〜2cmの太さの管状のものですが、赤ちゃん側に少し残してハサミで切られます。その後乾燥して小さくなっていき、生後7〜10日でとれるのが普通です。とれた跡はしばらくジクジクしていますが、その後7〜10日で乾いてすっきりします。おへそが乾くまでは自宅でアルコール消毒をするよう指導している産科が多いようです。

 次によくあるおへそのトラブルについて。こんな時は小児科に相談して下さい:
・おへその周りが赤くなって腫れている。
・出血や分泌物がダラダラ続く。
・塊が残り、ジクジクしている。

 どんな病気があるかというと・・・
臍炎
 おへそに病原菌が入り、増殖して炎症を起こした状態です。治療はおへその消毒し、抗生物質(病原菌をやっつける薬)を飲ませます。それでもよくならず、熱も出てくるようなら入院して治療が必要になることも希ながらあります。
臍出血
 元々血管が通っていた場所ですから少しの出血は必ずしも異常ではありません。量が多く、長引くときは血が止まりにくい病気が隠れていることがありますので小児科に相談して下さい。
臍肉芽腫
 臍帯の脱落後に臍帯の一部が残っていて塊が作られ、いつもジュクジュクしている状態です。生後数週間してもジュクジュクが治まる気配が無い場合は小児科を受診して下さい。薬で固めたり、大きい塊が残っている場合はヒモで縛ったりします。
 ただし、処置後もジュクジュクが続くときはまれながら解剖学的異常(卵黄嚢菅遺残や尿膜管遺残など)が隠れていることがありますので再度診察を受けて下さい。

■ でべそ?

臍帯がとれたときは普通のおへそだったのに、それから数週間後(つまり生まれて1ヶ月)頃からおへそが膨らんで目立つことがあります。いつも膨らんでいるわけではないのですが、泣いたときやいきんでお腹に力が入ったときに目立ちます。
 これは「臍ヘルニア」と呼ばれるものです。小児期以降の「いわゆるでべそ」とはちょっと異なりますが、まあ「赤ちゃんのでべそ」と言ってもいいでしょう。
 原因はおへその周りの筋肉の発達が未熟でまだ閉じきっていないことです。腹圧がかかるとそのすき間から皮膚の下に腸が出てきてしまうのです。
 おへそが膨らんでいても赤ちゃんは泣き続けるわけではないので痛くはなさそうです(後述する鼡径ヘルニアは痛がって泣きます)。膨らんだおへそを触ってみると柔らかい。揉んでみるとグジュグジュした感覚。そのうちに小さくなって無くなってしまうこともあります。これは皮膚の下に出てきていた腸がお腹の中に戻ったのです。
 予定日より早く・小さく産まれた赤ちゃんに多く見られる傾向があります。満期産の成熟児では数%に頻度です。ほとんどが1歳までに目立たなくなってしまいますが、1歳になっても目立つようなら手術も検討します。ただし、膨らみが2cm以上で大きいときは生後3ヶ月くらいまでに小児科あるいは小児外科に一度相談されると良いでしょう。

<臍ヘルニア処置の変遷>
 昔はコインをおへそに当てて、ヒモで固定していた時期があったそうです。しかし、おへそがかぶれて炎症を起こすトラブルが多かったため、私が小児科医になった約20年前は「何もしないで様子観察」する時代でした。ところが、ここ数年、一部の小児科医が「やはり固定した方が早く治る、皮膚のたるみも目立たない」と以前とは少し異なる固定法を採用し始めています。名付けて「綿球固定法」。まだ賛否両論があるので当院では採用していません。
 というわけで、相談する小児科医により説明される内容は異なる可能性があります。説明に納得できる「かかりつけ医」に巡り会えるとよいですね。

■ アザ

 赤ちゃんの全身くまなく観察すると、小さなアザ・シミがたいてい見つかります。
 蒙古斑と正中部母斑(サーモンパッチ、ウンナ母斑)については以前書きましたのでそちらをご参照ください。
 また、生まれてから形・色・大きさの変化のないものは小児科よりは皮膚科へ相談した方が良いと思います。その分野のレーザー治療は日進月歩で治療適応もかわっていくようなので。

 さて、ここでは「盛り上がってくるアザ」についてお話しします。
イチゴ状血管腫
 生まれたときはそこに何もないか、少し色素が抜けて白っぽいこともあります。それが生後2週頃から赤みを帯びてきて、生後2〜3ヶ月頃には急速に増大し(4ヶ月検診で結構見かけます)、赤くて表面がブツブツしているので「イチゴ状血管腫」という名前が付いています。生後6ヶ月〜1歳頃に増大傾向は止まり、1歳以降は消退し始め、6〜7歳で自然に消えていきます。
 という経過をたどるので、基本的に治療は必要ありません。
 ただし、何事にも例外はあるもので、大きさが巨大なとき、場所が良くないとき(目の回り、張力のかかる部位)などでは治療対象となる場合があります。皮膚科に相談して下さい。

青アザの治療例(2010年11月:朝日新聞)

1 医師「いずれ消える」と説明

 今年7月、札幌市の集合住宅の一室で玄関の呼び鈴が鳴った。この部屋に住む岸田美智代(きしだ・みちよ)さん(53)は、「ちょっと待って下さい」と言いそうになった。「化粧をしなくちゃ」と思ったからだ。
 けれど、思い直してこの日は素顔のまま玄関のドアを開け、宅配業者と向かい合った。
 近所のスーパーへの買い物、新聞の集金やベランダでの洗濯もの干し。数カ月前までは、一歩でも外に出るときは必ず化粧をした。顔にある青いあざを隠すためだった。
 そのあざは、2008年秋に始めたレーザー治療で、ほとんどわからないまでに薄くなった。とはいっても、この日、宅配の荷物を受け取りながら、少し恥ずかしい気持ちになった。素顔のままで人前に出ることに、まだ慣れていなかった。
 人間の皮膚は表面から順に、表皮、真皮、皮下組織に分かれる。青あざは、肌の色を決めるメラニン色素が、真皮に過剰に集まるためにできる。
 赤ん坊のころ、額の右上部と首筋に青い斑があった。両親は医師から「いずれ消えるでしょう」と説明されたが、数年たっても色は薄くならなかった。
 小学生になってすぐ、近所に住む男子大学生が似顔絵を描いてくれた。絵を見た2歳下の妹が額を指さしながら、「ここ足りないよ。青く塗って」と言った。
 その言葉が心に刺さった。岸田さんは何も言えず、「自分は他の子とは違うんだ」と初めて実感した。やりとりを知った母に妹がしかられるのを見て、余計つらくなった。
 高学年になると、「うつるからそばに寄るな」と言われ、学校に行きたくなくなった。でも、家族には相談できなかった。
 買ってもらったばかりのワンピースの背中に、クラスの男の子が油性ペンで落書きをしたときは隠しきれなかった。怒った母が、相手の子の家に怒鳴り込んだ。
 中学校に上がる少し前、母から「つらいよね。お母さんの皮膚を移植したら、きれいになるよ」と言われた。
 当時の治療の一つに、あざを切除して体の他の部分から皮膚を移植する方法があった。あざは消えるものの、顔に手術の跡は残る。母の体への負担や、費用も心配だった。「このままでいい」。岸田さんはそう返事した。

2 出産のたびに広がった

 札幌市の岸田美智代さん(53)は、赤ん坊のころから顔に青いあざがあった。小学校でいじめられたが、皮膚を移植してまであざを消そうとは思わなかった。
 首筋が隠れるように髪を結ったり、あざ専用のファンデーションを塗ったりして、目立たないようにした。
 中学では、あざのことをからかう生徒はいなかった。仲良くなった子は「あざのことは気にしないで」と言い、男女を問わず、同級生が自宅に遊びに来るようになった。
 高校を卒業し、地元企業に事務職として就職した。学生時代と違って毎日メークをするようになると、1個1000円前後の専用ファンデーションを月に2、3個使った。
 21歳のとき、同期入社の男性と結婚した。あざがあることは結婚前から話していたが、新婚旅行で初めて素顔を見せた。「何も気にしなくていいよ」と話していた夫の表情は、いつもと変わらなかった。
 翌年、長男を産んだころ、あざがまぶたまで広がってきた。「ホルモンバランスが変わったせいかな」。あまり気にしなかった。でも、長女と次女を産むたびに、あざは広がり、30歳になるころには、顔の右側を覆うまでになった。
 子育てや仕事に忙しく、離婚も経験した。病院に行く暇がなくて、ファンデーションで隠し続けた。冬、首元まである服を着ると、べっとりとメークがついた。化粧をしていない時に宅配業者などが来ると、居留守を使った。札幌市内でも数カ所でしか売っていないファンデーションの買い置きがなくなると、不安でたまらなかった。
 ある日、5、6歳だった長女が、突然、「お母さんの顔、気持ち悪い」と言い出した。5歳上の長男が長女を平手でたたいた。岸田さんは後日、子どもたちに「醜くてごめんね」と言った。
 2008年秋、左ほおに以前からあったしこりが痛み出し、KKR札幌医療センター斗南病院(札幌市)を訪れた。しこりを切除するために化粧を落とすと、青いあざがあらわになった。
 「真っ白になるとまでは言えませんが、レーザーであざを治療してみませんか」。形成外科の医師から声をかけられた。
 岸田さんはとりあえず、テスト照射を受けることにした。

3 レーザー照射でほぼ消える

 札幌市の岸田美智代さん(53)は、左ほおのしこりの治療で訪れたKKR札幌医療センター斗南病院(札幌市)で、レーザーを当てて顔の青あざ「太田母斑」を薄くする治療法を知った。
 2008年秋、右のもみ上げの下の約1センチ四方に、テスト照射を受けた。効果やダメージを見るのが目的だった。五つほどの輪ゴムで同時にはじかれたような痛みを感じた。
 使われたのは、「Qスイッチアレキサンドライトレーザー」。原因となる過剰に集まったメラニン色素を破壊する。
 太田母斑の治療は以前、ドライアイスで凍傷を起こしてはがしたり、皮膚を移植したりしていた。現在は、レーザーを3~5回ほど照射するのが一般的で、健康保険も適用されている。
 テスト照射を終えた岸田さんは、「本当にきれいになるのかな」と思いながら、治療を受けることにした。入院し、全身麻酔であざの一部にレーザーが当てられた。直後はヒリヒリするように痛んだ。1週間後、初めて自分でガーゼをとって患部を見ると、熱の影響で患部が赤黒くなっていた。
 医師からは「数週間で黒さがひいて、あざの色も薄くなる」と説明されていたが、「本当に元に戻るのかな。何もしないほうがよかったかも」と気持ちが揺れた。
 その後、確かに黒さはひいたが、あざの色が薄くなったとは感じなかった。それでも、「先生の言葉を信じてみよう」と思い、4~6カ月おきに範囲を広げながら、照射を受け続けた。
 「だいぶ薄くなったな」。4回目の照射を終えた今年初め、自宅で鏡を見て、そう感じた。それからは、ファンデーションを塗らずにスーパーに出かけるようになった。6月には5回目を受けて、いまは肌にうっすら青みがかかる程度。ほとんど目立たないまでになった。家族や友人には「本当に白くなったね」と言われた。
 高校生のころ、友人にファッション誌のモデルへの応募を勧められたが、髪を高く結えば化粧でもあざを隠しきれない、と断った。女優、客室乗務員、看護師。あこがれた職業も、すべてあきらめた。
 「もしあざがなかったら、人生違っていたかも」と思うことはある。けれど、素顔で外に出かけられるだけで、いまは十分だ。

赤あざの治療例(2010年12月:朝日新聞)

1 10年以上治療…薄くならない

 「何とかなるって、大丈夫」。札幌市の女子高校生(16)は、楽しみにしていた小学校の運動会の直前に足をねんざした時も、両親に学校の成績を心配される時も、いつも笑顔でこの言葉を返してきた。
 小さいころから楽天的な娘のあっけらかんとした明るさに、「随分助けられてきたな」と母(43)は思う。
 生まれたときから、柔らかくふっくらした顔の右半分に赤いあざがあった。
 「妊娠中におなかをぶつけるか何かしたんでしょうか」と詰め寄る母に、大学病院の医師は「原因はよくわかっていませんが、お母さんのせいでも遺伝でもありません」ときっぱり言った。
 赤あざは、青あざと違って皮膚そのものが赤いわけではない。血管内に良性のしこりができるか、血管の形成が異常なために皮膚の表面が赤く見える。異常な血管が盛り上がって出血や神経の圧迫が起きると、視力や知能、運動機能にも影響が出る。
 女子高校生のあざは「単純性血管腫」。毛細血管が異常に発達するタイプだ。旧ソ連のゴルバチョフ元大統領の頭のあざと同じという。目や脳内に異常は見つからなかった。
 1歳過ぎ、生まれた病院の形成外科であざにレーザーを当てる治療が始まった。血液中のヘモグロビンに反応する「色素レーザー」を使い、異常な血管をつぶす方法だ。幼いころは全身麻酔で照射を受けたが、小学生になると外来での部分麻酔になった。
 診察室のベッドに横になり、目を保護するゴーグルを着けると、治療の様子は見えなかった。パシュッ、パシュッという音とともに、針で刺されたような痛みが走った。数分の治療だが、長い時間に感じた。その間ずっと息を止めて体を硬直させ、付き添う母の手につめの跡がくっきり残るほど強く握った。
 学校は楽しく、あざがどう見えるかは気にならなかった。けれど、治療から約2週間は、日に焼けないよう外で遊べなかった。衝撃で出血しないよう屋内での体育の授業も休んだ。運動が好きなのに、思いっきり体を動かせないのがつらかった。
 あざが薄くなったという実感はなかった。血管が盛り上がってこないことだけを願って10年以上、ほぼ休まずに治療を続けてきた。
 中学校に入って環境が変わるのを機に、しばらく休むことにした。

2 病気学び、理学療法士めざす

 顔にある赤あざのレーザー治療を1歳すぎから続けてきた札幌市の女子高校生(16)。2007年、中学生になって環境が変わるのを機に、しばらく治療を休むことにした。
 入学前、家族に「学校にはメークして行かない」と宣言した。専用のファンデーションを塗っても完全には隠せない。塗るかどうかは自分や家族にとっては大きな違いでも、他人にとっては大差ないだろうと考えた。
 「任せるよ」と言った母(43)は、心の中で娘の決心にエールを送った。あざを隠すことに気持ちや時間をなるべく割かず、青春を思い切り楽しんだらいい、と。
 スポーツが好きで、バドミントン部に入り、男性アイドルに夢中になった。中学2年の秋、2年ぶりにレーザー治療を再開することにした。放っておくと、血管が膨らんでくるかもしれないという不安があった。
 10年来の主治医、佐々木了(ささきさとる)医師(49)をKKR札幌医療センター斗南病院(札幌市)に訪ねた。血管腫と血管奇形が専門で、同院がその年の夏に開いた「血管腫・血管奇形センター」の責任者を務めていた。
 再開後も、「あまり薄くならないな」という実感は変わらなかった。だが翌年、血管の状態に応じてレーザーの照射条件を細かく設定できる機種が導入されると、赤色が濃かったあご先や目の下が驚くほど薄くなった。効果を実感でき、治療が苦痛でなくなった。
 中学3年のとき、授業の一環で自分の病気について調べ、小論文を書いた。最初は好きな音楽や犬をテーマに考えたが、自分のことを知らないのは恥ずかしいと思って選んだ。ただ、原因不明の病気だけに資料が見つからなかった。困って佐々木医師に相談すると、医学書のコピーをいくつも渡してくれた。
 たいていのことに前向きなのに、将来には悲観的だった。「営業や受付、レジ打ち。人前に立つそんな職場では、雇ってもらえないだろうな」
 論文を書くため赤あざについて調べ、周りの人に話を聞くうち、「患者としての経験を役立てたい」と思うようになった。
 目指すのは、理学療法士。体を動かしながら、患者の回復を手伝えるからだ。
 この先、あざが広がったり、目や脳の血管に異常が出たりしないという保証はない。それでも、「いま大丈夫なんだから、大丈夫」。持ち前のプラス思考で、夢を追う。

3 原因不明の痛み、おさまらず

 札幌市の会社で働く女性(44)は、左足のつま先から尻にかけて、赤いあざが張りついたようにある。
 「これ、同じ病気じゃないかい?」
 昨年初め、地元の市議会報を手にした母にそう言われた。複数の血管の形成異常で起こる「混合型血管奇形」を難病に指定するよう、国に意見書を出したとする記事。この病気はあざのような症状が出る、とあった。
 あざは、赤ん坊のころからあった。
 血管の奇形が原因らしいことは、当時の医師から何となく聞かされていたが、詳しいことはわからなかった。小学校ではなるべくジャージーを着てあざを隠した。
 4年生のころ、「どんな痛い思いをしてもいいから、あざを治したい」と母に頼んだ。だが、当時は小学生の自分に合った治療法がなく、病院であざを目立たなくするファンデーションを教えられた。毎朝、母に20~30分かけて塗ってもらった。
 「特別扱いできない」と、中学校でジャージーの着用が認められなくなると、割り切ってあざを隠さなくなった。バレー部に入り、足が隠れないふつうの練習着で活動した。高校時代は海に行き、水着姿で遊んだ。
 短大を出て就職してからも、同僚と同じ制服のスカートをはいた。他人の視線が気になったが、「どう思われてもいい」と自分に言い聞かせていた。
 30代半ばごろ、左ひざがピリピリ痛み始めた。トゲが刺さったように感じた。
 ひざのやや上にごま粒大のしこりがあった。痛みの元のように思えて、気になった。やがてひざ全体が腫れだし、近くの整形外科に行った。「あざが関係しているかも」と指摘され、皮膚科で腫れた場所にレーザーを当てた。でも何も変わらなかった。
 その後、左足に静脈瘤(りゅう)という血管のこぶが見つかり、手術した。それでも痛みや腫れは治まらない。原因がわからないまま、痛みの範囲が徐々に広がっていった。
 このころ知り合った年配の女性に「あなたのあざを見たくない人もいるんじゃない?」と言われた。思ったこともない考えだった。
 市議会報を見たのは、そんなころ。
 インターネットで調べると、KKR札幌医療センター斗南病院の佐々木了医師が専門だとわかった。「この先生に診てほしい」。光が差したような気がした。

4 地道に血管治療 痛み和らぐ

 札幌市の会社で働く女性(44)は30代半ばから、左足の痛みや腫れに悩まされていた。
 皮膚科や整形外科などいろいろな医師にかかったが、症状は悪くなるばかり。先が見えず不安が募ったころ、KKR札幌医療センター斗南病院にある血管腫・血管奇形センターの佐々木了センター長の存在を知った。
 昨年4月に受診した。佐々木医師は、これまでの症状を細かく質問してきた。「さすが専門の先生だな」。女性は驚いた。同時に、自分の話もじっくり聴いてくれると感じ、気持ちが少し楽になった。
 MRIや血管造影の結果、女性のあざは混合型血管奇形の一つで、肌の表面近くにある毛細血管と、筋肉内の静脈の奇形が同時に起こることで、ひざの周りの腫れや痛みにつながっていることがわかった。
 血管の奇形をつぶすため、血液中にあるヘモグロビンに反応する色素レーザーを当てる治療が始まった。薬剤で血管を固める硬化療法もした。ふくらはぎからももにかけて、数回に分けて注射した。血管が焼けるような感覚がした。
 「勤務先に申し訳ない」と感じながら約1年半、同院への入院や外来で治療を続けてきた。あざは、少し薄くなったと思える程度の変化だが、ひざ周りの痛みは和らいだ。
 血管の奇形が治ったわけではない。最近はむしろ、奇形のために、肌の表面のでこぼこが目立つようになってきた。左足は全体的に太くなってきていて、昨年まで履いていたブーツが入らなくなった。
 混合型血管奇形はまだ治療法が確立していない。だから劇的に良くなることは期待しないようにしている。「一喜一憂せず、先生を信じて、手探りの治療を続けていこう」。以前のような不安は、もう感じていない。
 佐々木医師を頼って全国から患者が集まる。我が子のために、必死に情報を集める親たちがいる。混合型血管奇形の難病指定を求める動きもある。「自分にもできることはないか」と思うようになった。
 足の血流が滞って痛みを起こさないよう、患者の多くは医療用ストッキングで足を圧迫する必要がある。1足数千円もするのに、デザインがみな同じで、色も3種類くらいしかない。女性にはそれが不満だ。
 「みんなでメーカーに改善をお願いしたい」。そんなことを考え始めている。

■ 黄疸

 「黄疸」とは、皮膚の色が黄色くなることです。皮膚だけでなく白目が黄色くなるので目立ちます。強い・弱いの違いはありますが黄疸はすべての赤ちゃんに見られる現象です。これは「生理的黄疸」と呼ばれており、生後3〜4日頃から目立ち始め、約2週間で自然に消えていきます。
 また、母乳栄養の赤ちゃんでは生理的黄疸が長引く傾向があります。これを「母乳性黄疸」と呼びます。それも生後6週間には消えていきます。
 これらの黄疸は、機嫌が良く、食欲もあり、生後1週間頃がピークであとは徐々に薄くなっていく印象があれば心配ありません。様子を見て良いでしょう。
 さて、生まれてから退院するまでの約1週間、産科では看護師・医師が黄疸の程度を毎日チェックしています。皮膚に当てると黄疸の程度がわかる器械があり、それで強めの値が出ると実際に採血をして黄疸の元である「ビリルビン」値を測定して治療の要否を判断しています。

 希ながら、黄疸の裏に病気が隠れていることもあります。
 「大人の黄疸=肝臓の病気」というイメージがありますが、赤ちゃんの病的黄疸の原因は実に様々です。
 一番多い原因は生理的黄疸が強めに出た場合です。他に血液型不適合(有名なRh式以外にも、ABO式不適合もあるのです)、感染症、生まれつきの代謝異常などの病気のこともあります。
 ビリルビン値が異常に高い場合は治療の適応となります。これは赤ちゃんの体重と生まれてから何日目かで基準が細かく決められています。
 黄疸に対する治療は「光線療法」です。ある波長の光を体に当てて黄疸の元のビリルビンを分解する方法です。この治療法は、その昔看護師が日当たりのよい窓際にいる赤ちゃんの方が黄疸が軽い傾向があるという鋭い観察から発明された歴史があります。より強くて進行が速い黄疸に対しては赤ちゃんの血液を入れ替える「交換輸血」を行うこともあります(希です)。
 黄疸を治療する目的は「核黄疸」を予防することです。ビリルビンは普通は脳の中には入れないことになっているのですが、黄疸が強いと脳に入り込み、そこに沈着して精神運動発達に障害を残すのです。
 なお、感染症など他の病気が見つかった場合は当然その病気に対する治療も一緒に行います。

 また、産科に入院中は問題なかったけれど、退院してからだんだん黄疸が目立ってくるパターンもあります。
黄疸+元気がない」「黄疸+うんちが白っぽい」場合は重い病気が隠れていることがありますので、早めに小児科を受診して下さい。

 余談ですが、幼児期に「皮膚が黄色い」と心配されて受診なさる方が時々います。たいてい「柑皮症」(医学名はカロチン血症)といってミカン、カボチャ、にんじんなどの黄色い食べ物をたくさん食べた結果黄色く見える現象です。「黄疸」との違いは、白目が黄色くならないことです。微妙なときは血液検査で確認します。

■ うつぶせ寝と仰向け寝

 うつぶせ寝と仰向け寝のどちらがよいか?
 歴史的には頭の形が良くなるという理由でうつぶせ寝が推奨された時代もありましたが、現在は仰向け寝の方が安全とされています。
 その理由は、うつぶせ寝は乳児突然死症候群(Sudden Infant Death Syndrome:略してSIDS)の危険が増すと統計的に結論されたからです。
 日本における数年前の大規模な調査の結果、SIDSは「うつぶせ寝」「人工栄養」「母親あるいは同居者の喫煙」により3〜5倍多く発生することがわかりました。皆様、ご注意下さい。
 でも、赤ちゃんはうつ伏せの方がよく寝てくれる傾向があります。仰向けではなかなか寝てくれない場合は硬めのマットを選び、6ヶ月未満の乳児では目を離すときは仰向けにするのが現実的です。

■ 冷暖房について

赤ちゃんのいる部屋の温度はどのくらいが適当ですか、という質問もよく受けます。

 あえて数字で示しますと下記の通り。

・夏:24〜26(本によっては26〜28)℃
・冬:20〜22(本によっては18〜22)℃

 まあ、調べれば調べるほど微妙に数字が異なりきりがありません。概ね、夏は25℃くらいで外気との差が5℃以内になるように、冬は20℃くらいで湿度を40〜60%に保つ、といったところでしょうか。

 注意点2つ。
・エアコン・扇風機を使う場合は、吹き出す風が赤ちゃんに直接当たらないようにする。
・室温を考えるときは赤ちゃんの目線で。赤ちゃんのフトンかベッドに寝ており、大人の感じる室温と異なります。

■ おちんちん関係のアレ?!

赤ちゃんのおちんちん付近の「アレ?」について。

「タマ」がない! → 【停留睾丸】

 タマ(睾丸)がふくろ(陰嚢)に降りていない状態です。片方のことが多いです。まず、病院へ行く前に、いつも無いのか時々無いのか確認して下さい。お父さんに聞くとわかりますが、寒いときとか緊張しているときはタマはキュッと縮みますので。おむつを替えるときに触らなくても、お風呂に入っているときに触れればそれは「移動性睾丸」ですので心配いりません。
 でも、いつも触れないとき、あるいはたまにしか触れないときは生後6ヶ月くらいを目安に泌尿器科へ相談して下さい。一般的に1歳までに降りてこないときは手術を検討するようです(医療機関により多少異なります)。
 タマ(睾丸)は将来子どもの元になる精子を作る大切な臓器であり、別名「精巣」とも呼ばれます。
 なぜ陰嚢の中でぶら下がっているか? それは高温を避けるためです。タマがお腹の中にあると温度として約2℃高い環境にさらされることになり、これが長期間続くと精巣の変化が進み、将来不妊症の原因になると考えられています。また、思春期以降の腫瘍発生の頻度が高くなります。
 タマは涼しいところでブラブラしているのが好きなのです。

ふくろが妙に大きく膨らんでいる → 【陰のう水腫】

 袋の中に水がたまった状態です。90%以上は1歳前に自然に消失しますので治療の必要はありません。1歳を過ぎても消えない場合や、1歳以降で膨らんできた場合は手術の対象になるようです。
 昔は、パンパンに膨れた場合に針を刺して水を抜いた時代があったそうですが、今はやりません。

おちんちんの横が時々腫れている → 【鼡径ヘルニア】

 おちんちんの横に穴が開いていて、腹圧がかかるとそこから腸が出てきて腫れているように見えます。本人は気にしていないときもありますが、痛がって泣きやまないこともあります。赤ちゃんが急に機嫌が悪くなって泣きやまず病院を受診した場合、小児科医は必ずこれをチェックします。
 頻度は1〜4%。小さく産まれた赤ちゃんでは出やすいです。
 鼡径ヘルニアは「嵌頓」の危険があります。これは、穴が何かの拍子にキュッと締まって狭くなり、出ていた腸が元に戻れなくなった状態です。血流が悪くなりますので、放っておくと腸の組織が死んでしまいます(これを壊死と言います)。膨らんでいるところが紫色に変色してくるのが特徴です。
 このため、鼡径ヘルニアは「見つけたときが手術のタイミング」ですが、手術の危険性など諸条件を考慮し、嵌頓を起こさない限り、生後3ヶ月以降に手術を行う施設が多いようです。
 同じ「ヘルニア」の名前が付く「臍ヘルニア」はこの嵌頓の危険性がゼロに近いので、何もしないのが基本です。
 なお、鼡径ヘルニアは女の赤ちゃんにも起こります。出てくる内容は腸の他に「卵巣」のこともあり、元に戻そうとむやみにいじり回すのは卵巣を傷つける可能性がありますのでやってはいけません。早めに小児外科へ相談して下さい。

(2009年1月初掲載)

<乳児の健康関連記事>

 乳児期の悩みに関する記事を拾い読み。

■ 母乳による授乳期間が長いほど児の知能が向上(2013年8月1日:MTPro)New_Icon_bl_01.png

米・1,300人母子対象研究

 母乳が児の健康に好影響を及ぼすことは知られているが,授乳期間などによる児の知能への影響については詳細な報告があまりないという。米ハーバード大学ボストン小児病院新生児部門のMandy B. Belfort氏らは,1,300人超の母子を対象に,母乳による授乳期間(粉ミルクとの混合授乳含む)や母乳に限定した授乳期間による3歳および7歳で知能アウトカムへの影響を検討した。その結果,授乳期間が長くなるほどいずれの年齢においても児の知能アウトカムが向上する傾向が示唆されたが,母乳に限定した場合でより顕著であったという(JAMA Pediatrics 2013年7月29日オンライン版)。

6・12カ月時の授乳状況や3・7歳時の知能を調査

 母乳による児の身体への影響については,消化管感染症や中耳炎の予防効果など,多くのエビデンスが知られているとBelfort氏ら(Evid Rep Technol Assess 2007; 153: 1-186)。一方で,児の知能への影響については,授乳期間や母乳に限定した授乳といった細かい解析はあまり報告されていないという。
 そこで,出生前要因と妊娠および児の健康との関連について検討した前向きコホート研究Project Vivaの参加者を対象に,母乳による授乳と児の知能アウトカムについての関連を検討した。
 対象は,1999年4月22日〜2002年7月31日にマサチューセッツ州東部にある8つの産科施設で妊婦検診に参加した妊婦とその児1,312人。多胎児出生,英会話力の欠如,初回妊婦検診時に妊娠22週以上,出生前に対象地域外への引っ越し予定などは除外対象とした。
 母親については,児が6カ月の時点で“母乳を与えたことがあるか(与えた場合,乳房から直接吸わせて児が飲用したか否か,または間接的に母乳を与えたか)” “現在,粉ミルクを与えているか” “現在,母乳を与えているか”を,12カ月の時点で“いまだに母乳を与えているか”などを質問。既に離乳している場合には卒乳の月齢を尋ねた。母乳については,母乳のみの限定授乳か,粉ミルクとの混合授乳か,また,IQスコアや出生後の魚摂取などのデータも収集した。
 児については,3歳時点でピーボディ絵画語彙検査第3版(Peabody Picture Vocabulary Test Third Edition;PPVT-Ⅲ)や視覚運動能力の広範評価(Wide Range Assessment of Visual Motor Abilities;WRAVMA)などを実施。さらに,7歳時点ではカウフマン簡易知能検査第2版(Kaufman Brief Intelligence Test Second Edition;KBIT-Ⅱ),WRAVMA,記憶・学習の広範評価(Wide Range Assessment of Memory and Learning;WRAML)などの測定を行った。

授乳期間と児の言語・知能スコアに関連

 児が3歳時点で解析データが得られたのは1,224人で,平均授乳期間は6.4カ月,母乳限定では2.4カ月。児が7歳時点(解析データ1,037人)においても同様であった(平均授乳期間6.5カ月,母乳限定2.4カ月)。3歳時点のPPVT-Ⅲ平均スコアは103.7,7歳時点のKBIT-Ⅱの言語の平均スコアは112.5であった。
 線形回帰モデルを用い,児の年齢および性で補正した母乳の授乳期間(母乳限定・混合のいずれも含む)による児の知能アウトカムへの効果サイズを求めた。
 その結果,母乳による授乳期間が長いほど3歳時点のPPVT-Ⅲスコアがより高くなる傾向が認められたが〔母乳期間1カ月増加ごとにPPVT-Ⅲスコア0.58(95%CI 0.40〜0.76)ポイント上昇〕,在胎期間や母親のIQスコアなど全ての変数で調整したところ,同スコアの上昇は0.21(95%CI 0.03〜0.38)ポイントに減少した。7歳時点のKBIT-Ⅱ(言語および非言語)スコアでも同様の結果が得られた。
 母乳の限定授乳(授乳期間6カ月まで)と児の知能アウトカムで同様の検討を行ったところ,授乳期間が1カ月増加するごとに3歳時点のPPVT-Ⅲスコアは0.50(95%CI 0.11〜0.89),7歳時点のKBTI-Ⅱの言語スコアは0.80(同0.38〜1.22),非言語スコアは0.58(同0.01〜1.14)それぞれ有意に上昇することが認められた。
 一方,WRAVMA(3歳時点)およびWRAML(3歳および7歳時点)スコアでは,いずれも母乳による授乳期間(母乳限定を含む)との関連は示されなかった。

出生後の魚摂取は授乳期間と知能アウトカムの関連に影響及ぼさず

 さらに,出生後の母親の魚摂取(1週当たり2サービング以上 vs. 2サービング未満)で層別化し,母乳による授乳期間(母乳限定・混合のいずれも含む)と3歳時点および7歳時点それぞれの知能アウトカムとの関連を検討した。
 その結果,授乳期間と3歳時点でのWRAVMAスコアでのみ,魚摂取が少ない場合に比べ多い場合で相関がより強い傾向が見られたが,有意差は示されなかった(交互作用のP=0.16)。その他の知能アウトカムに対しても魚摂取の影響は見られなかった。
 今回のBelfort氏らの研究により,母乳による授乳期間,特に母乳に限定した授乳期間の長さと,3歳時点での受容言語能力および7歳時点での言語・非言語能力に関連が示された。同氏らは「生後6カ月までの母乳限定授乳および少なくとも生後12カ月までの母乳による授乳の持続が,世界的に推奨されることを支持する結果」と,研究の意義を強調した。

(院長のつぶやき)育児用ミルクが発売された当初は「母乳を飲ませるより頭がよくなる」などと宣伝されて「母乳栄養は時代遅れ」という雰囲気があったそうです。でも育児用ミルクは昔も今も牛乳からつくられています。ウシの乳よりヒトの乳の方が人間の赤ちゃんに合っているのは当然ですね。私もミルクで育てられたそうですが、母乳栄養であればもうちょっと頭の回転がよくなったかなあ・・・。

■ 子供の指しゃぶり、5歳過ぎたら要注意(2013.07.16:メディカルトリビューン)

歯並びやかみ合わせに悪影響

 指しゃぶりはかわいいしぐさだが、5歳を超えても続く場合、注意した方がよい。歯並びやかみ合わせなどに悪影響を及ぼすことがあるからだ。日本大学歯学部(東京都)歯科矯正科の田村隆彦診療准教授に、子供の指しゃぶりによる影響について聞いた。

出っ歯になりやすい

 乳児の指しゃぶりは、母乳をやめた後に起きる生理的な現象。そのため、断乳した後も3歳程度までは、指しゃぶりをしていても問題はない。しかし、それ以降もなかなかやめないことがある。
 「指しゃぶりは断乳後の本能的な行為ですが、親の仕事が忙しくあまり構ってもらえないなどの欲求不満から、3歳以降もなかなかやめない子供がいます。永久歯が生え始める5歳を過ぎてもやめないと、指で上顎の前歯部を押すので出っ歯になります。その結果、隙間が空くため、通常より舌が前がかりになる『舌突出癖』(舌で歯を押す癖)を来すのです。舌突出癖は、嚥下(えんげ=のみ込むこと)の異常や、全ての歯を使って正しく食べ物をかめないオープンバイト、話し方が舌足らずになるなどの要因となります」(田村診療准教授)
 また、唇が閉じないために口呼吸をすることになり、鼻呼吸であれば防げる風邪などの細菌やウィルスに感染しやすくなるほか、免疫力が低下して喘息(ぜんそく)、歯肉炎、歯周病などにもかかりやすくなるという。ここまでくれば、治療が必要だ。
 「永久歯が出っ歯になると、治療が必要になります。唇の筋肉を強くして、舌を元の位置に戻す訓練をする筋機能療法や矯正が治療法として挙げられますが、前者は根気がいる治療であり、長期にわたって続けないと改善は見込めません」(田村診療准教授)

まずは欲求不満の解消を

 こうした状態になるのを未然に防ぐため、5歳を過ぎても指しゃぶりを続けているようならば、早期にやめさせる必要がある。前述のように、指しゃぶりの背景には欲求不満があるため、まずはその解消を心掛けるとよい。
 「どうしても指しゃぶりをやめない場合には、指に包帯や針金を巻く、からしをつけるなど、物理的な処置を試みるのも良いでしょう。また中には、指しゃぶりが原因で出っ歯になった写真を見せたり、歯がぐらぐらに動くことを指摘したりなど、きちんと話をすれば理解できる子供もいます。おしゃぶりの種類によっては、指をしゃぶるよりはましなものもありますが、いずれにせよ、長期間使うことで出っ歯を招くことが考えられます」(田村診療准教授)
 子供によって最善策は異なるので、それぞれの方法を試してみて、最も効果的方法を見つけるよう田村診療准教授はアドバイスしている。

■ 離乳食の開始時期が1型糖尿病発症リスクに関連(2013/07/23 ケアネット)

 乳児に固形食(離乳食)を与え始める時期が1型糖尿病発症リスク上昇に関連することが、米コロラド大学デンバー校公衆衛生学部のBrittni Frederiksen氏らの疫学研究によって示唆された。生後4カ月より早くても、6カ月より遅くても発症リスクは2~3倍になっていたという。
 「JAMA Pediatrics」オンライン版に7月8日掲載された論文によると、1型糖尿病は、特に5歳未満での発症が世界的に増加している。要因はさまざまだが、なかでも乳児期の食事は主要な原因の1つと考えられており、研究が進められてきた。
 本研究では、1親等以内に1型糖尿病患者のいるデンバー地域在住の乳児データを解析した。その結果、月齢4カ月未満、あるいは6カ月以上の離乳食の開始はいずれも1型糖尿病発症リスクを上昇させていた。
 食品別の検討では、果物摂取の早い開始、あるいは米やオート麦摂取の遅い開始は1型糖尿病発症リスクを2~3倍に高めるが、大麦や小麦摂取の開始時に母乳も継続しているとリスクが0.47に低下することがわかった。
 Frederiksen氏は、複数の食品/抗原が発症リスクに関連していること、また、離乳食開始のタイミングと食品の種類、発症リスクは複雑な関係にあることが示唆されたと結論。
 「要約すれば、離乳食の開始は生後4~5カ月の時期が安全ということになる。1型糖尿病の遺伝的因子がある児では、発症リスクを最小化するため、母乳を飲んでいるうちに離乳食を始めるべきだろう」と述べ、今回の知見はより大規模な試験で確認される必要があるとしている。
 本研究は離乳食開始の月齢と1型糖尿病発症リスクの関連を明らかにしたが、その因果関係を確認したものではない。

■ 赤ちゃんノート「母乳とミルク」(2013年4月〜 読売新聞)

【1】妊娠中に頑張らないと母乳は出ない?(2013年4月11日 読売新聞)

 いま妊娠中の"プレママ"の皆さんは、出産後「おっぱいをあげたい」と望んでいますか?
 厚生労働省が2005年度に行った「乳幼児栄養調査」によると、子育て中の女性に妊娠中の考えを尋ねたところ、43.1%が「ぜひ母乳で育てたい」、52.9%が「母乳がでれば母乳で育てたい」と回答しています。合わせると96%にも達しました。

乳房の大きさや形で母乳の出方は決まらない

 ただ、あれこれ不安も感じることでしょう。例えば、妊娠中の準備。出産までの過ごし方をアドバイスする本の中には、「妊娠後期には乳房のマッサージを始めましょう」とすすめるものもあります。ある子育て中の女性は、「出産前の母親学級で、牛のおっぱいのように柔らかい乳頭がベストと言われ、入浴時などにほぐしてみました。涙が出るほど痛かったけれど、これで母乳が出るならと頑張りました」と振り返ります。
 こんなに妊娠中から頑張らないと、赤ちゃんを母乳で育てられないのでしょうか。
 日本赤十字看護大学教授の井村真澄さんは、「特別な準備はしなくても大丈夫です。むしろ痛みを感じるようなケアは避けたほうがよいですし、何かをしておかないと母乳育児がうまくいかないと思うことはマイナスです」と話します。
 そして、「体形や顔が一人ひとり違うように、乳房の大きさや乳頭の形もさまざまです。おっぱいの大きさや形によって、母乳の出方が決まるわけではありません」とアドバイスします。赤ちゃんが乳頭だけでなく、おっぱいに深く吸い付き、しっかり飲み取ることによって、母乳はさらにたくさん作られるようになるのだそうです。

「母乳で育てられる!」と自信を持てる支援を

 では、実際に母乳で育てている人の割合はどのくらいなのでしょう。厚生労働省の2010年「乳幼児身体発育調査」を見ると、生後1~2か月未満の赤ちゃんのうち、母乳栄養は51.6%、母乳とミルクの混合栄養が43.8%という結果でした。
 希望と実際の"差"について、井村さんは、「先の調査結果にあった『母乳がでれば母乳で育てたい』というのは、言い換えれば、母乳が十分に出ないかもしれないと不安に思っている人も多いということではないでしょうか。お母さんの自信のなさや不安が、母乳が足りていないのではないかという"母乳不足感"となって、ミルクを足すことにつながっていきます。お母さんが妊娠中に赤ちゃんや母乳育児についてよく理解し、疑問や不安を解消して、『私は母乳で育てられる!』と思えるよう、周囲がサポートすることが大切です」と話します。
 お母さんへの支援は、もちろん産後も大切です。
 「人間も哺乳類なのだから、誰だっておっぱいは出るはず」と言われ、プレッシャーに感じるお母さんもいますが、井村さんによると、身体的な理由で母乳が出にくい人の割合は少ないそうです。出にくいのは環境的な理由が多く、出産直後からお母さんと赤ちゃんが一緒に過ごしたり、赤ちゃんのほしがるタイミングで与えられるよう促したり、産院での適切なサポートがあるとスムーズに始められることが多いでしょう。
 また最近では、「赤ちゃんは、自分でお母さんのおっぱいを探し出して吸い付く能力を持っている」と分かってきたそうです。「お母さんがリクライニングの姿勢を取って赤ちゃんを胸に抱き、自由に動けるようにしておくと、ほとんどの場合、赤ちゃんは自分でおっぱいを見つけ出して母乳を飲んでくれます。赤ちゃんは頼もしいパートナーですね」(井村さん)

【2】「カンガルーケア」をすれば母乳育児がスムーズになる?(2013年4月19日 読売新聞)

 どんな産院でお産をするか――? 「産院不足で選びようがない」という地域もあるかもしれませんが、妊娠が分かったら、次はこんな悩みも出てきます。小児科も備えた総合病院かどうか、分娩方法は選べるかなど、いろいろチェックポイントはありますが、母乳で育てたいなら「赤ちゃんにやさしい病院」に認定されているかどうかを確認しておくのもおすすめです。

もともと「カンガルーケア」って?

 WHO(世界保健機関)、ユニセフ(国連児童基金)によって「赤ちゃんにやさしい病院」に認定された産科施設では、「母乳育児を成功させるための10か条」が実践されています。例えば、「母親が分娩後30分以内に母乳を飲ませられるように援助をすること」「母子同室にすること。赤ちゃんと母親が1日中24時間、一緒にいられるようにすること」などです。
 こうした母乳育児支援を促す活動もあり、新生児を母親が胸に抱く、いわゆる「カンガルーケア」を行う産院も増えました。赤ちゃんとお母さんが素肌で触れ合うと、赤ちゃんの呼吸や体温などが安定し、「子宮外の環境に適応しやすくなる」と言われています。こども未来財団(東京)が2010年に行った調査では、全国の分娩施設のうち約65%で行われていました。
 「もともとカンガルーケアは、早産などで小さく生まれた赤ちゃんのためにNICU(新生児集中治療室)で行われるケアでしたが、出生直後に正期産の新生児を肌と触れ合わせて抱っこするケアのことも、カンガルーケアと呼ばれるようになりました」と、日本赤十字看護大学教授の井村真澄さんはケア発展の経緯を説明します。
 さらに井村さんは、カンガルーケアを希望して、安全に安心して行うためには、いくつかの留意点があると話しています。
 まず、一口に「カンガルーケアを実施している」と言っても、その内容はさまざまだそうです。出産すぐに肌と肌を触れ合わせて抱っこするところもあれば、30分くらいたってから着衣の赤ちゃんを抱っこする施設もあり、お母さんと赤ちゃんが一緒にいる時間も数分から2時間ぐらいの幅で、施設によってかなり違いがみられるようです。

より安全なケアへ

 さらに最近、カンガルーケア中に赤ちゃんの心臓や呼吸が止まるなどの事故が発生したことなどが報道され、お母さん、お父さんの中には、「カンガルーケアは危険なのではないか」と感じている人もいるかもしれません。
 ただ、これはカンガルーケア自体が危険というわけではありません。生まれてしばらくは、どの赤ちゃんも母胎の外の生活に適応するため不安定になりやすく、注意して見守ることが必要な時期なのだそうです。
 カンガルーケアへの誤解を整理し、より安全に進める必要が出てきたため、日本周産期・新生児医学会など八つの団体は、出生直後に分娩室で行われるこうしたケアを「早期母子接触」(early skin-to-skin contactまたはBirth Kangaroo Care)と呼ぶことを提案しました。また、行う基準や新生児の状態を細やかに注意深く観察すること、新生児蘇生法の研修を受けたスタッフを常時配置することなど、留意点もまとめています。

一度きりの時間を大切に

 カンガルーケアは、親子が最初に出会って「きずな」を作り始める場になるでしょう。赤ちゃん自身からおっぱいを探し、吸いはじめるなどスムーズに母乳育児を始めるきっかけにもなります。
 井村さんによると、出生後、赤ちゃんは数分間休んだ後、徐々におっぱいを探して動き始め、出生後1時間頃までにおっぱいを吸い始めるそうです。井村さんは、「赤ちゃんは出生後からいろいろな動きをします。目を開け、手足や顔を使ってはい上がったり、手を口に持っていったり、手に付いた羊水をしゃぶったり、お話ししたり……。生まれたての赤ちゃんが次々に見せてくれる動きと能力には驚かされます。お母さんが赤ちゃんと一緒に見守られているという安心感の中で、新しい家族が一度きりの時間を大切に過ごせるといいですね」と話しています。

【3】母乳は足りている?――5つのチェックポイント(2013年4月25日 読売新聞)

 「出産してから2日目までは母乳だけでしたが、3日目に赤ちゃんの体重が減っているからミルクを毎回足すように言われました」。掲示板「発言小町」に、生後4か月の赤ちゃんを育てているお母さんから、こんな投稿がありました。
 昭和大学医学部小児科の水野克己准教授は、「赤ちゃんの栄養が足りているのかどうか、分からずに悩むお母さんは少なくありません。周りのお母さんや家族、保健師さんやお医者さんたちに『ミルクを足したら』と言われ、とても悩んでいます」と話します。
 また、母乳で育てている場合は、ミルクと違って飲んだ量が分かりません。そのため不安になる人もいるようです。

体重の増え方だけで判断しないで!

 水野さんによると、ミルクを足すかどうかの判断には、赤ちゃんの体重の変化だけでなく、授乳回数や授乳にかかる時間、授乳のタイミング、抱き方・含ませ方など、さまざまなチェックポイントがあります。
 この投稿については、「授乳のたびにミルクを足す必要はないでしょう。退院までの間、3時間おきにミルクと母乳をあげたということも書いてありましたが、赤ちゃんとお母さんはいつも一緒にいて、空腹のサインを出したらすぐにおっぱいをあげられるといいですね。1日に10回、12回くらいになることも普通です。一緒にいれば、赤ちゃんがおっぱいをほしがっているかどうか、機嫌が良いか悪いかなど、よくわかるようになります」とアドバイスしています。
 水野さんは、産院を退院してから生後6週くらいまでについて、「母乳が足りているかどうか」を確認する五つのポイントを紹介してくれました。

<1>少なくとも1日に8回は飲んでいる
<2>色の薄いおしっこが1日に6~8回出る
<3>1日に3~8回はうんちをする
<4>元気があって肌に張りがあり、皮膚の色も良い
<5>体重増加の目安は、1週間平均140~210グラム

 ただし、うんちの回数は個人差があり、生後1か月を過ぎると3~4日に1回になる子もいるそうです。
 また、おっぱいを飲んでいるとき、「コクン、コクン」などと飲み込む音が聞こえていれば、よく飲んでいると考えられます。赤ちゃんののどを見て、ゆっくりゴクゴクと飲み込む様子が見えず、満腹になったように感じられない場合や、眠ってばかりであまり母乳を飲まないなどの場合は、ちゃんと乳房に深く吸い付いていなかったり、上手に飲めていなかったりする可能性があります。
 水野さんは「うまく飲んでもらうには、おっぱいをあげるときの抱っこの仕方、含ませ方のコツがあります。助産師さんなど専門家に授乳の様子を見てもらうのもよいかもしれません」とアドバイスしています。

母乳は少しずつでも、長く続けよう

 一方、「ミルクを足すことになった」と悔やんでいるお母さんたちに、水野さんはこう呼びかけます。「ミルクが主になったとしても、母乳を少しでもあげられればメリットがあります。少し“しか”あげられないのではなくて、少し“でも”あげられるのはすばらしいこと。長く続けてください」
 搾乳した母乳をスプーンで飲ませるなど、方法もいろいろあるそうです。「ぜひお母さんの納得できる形で続けられるといいですね。周りの人たちも、お母さんの選んだ方法を認めてあげてほしいです」と水野さんは話しています。

【4】母乳ばかり飲んでいて食事をいやがる(2013年5月2日 読売新聞)

 「母乳育児がスムーズに進められたお母さんの中には、『うちの子はおっぱいが大好きで……』と、離乳食(補完食)をなかなか始めない人もいます」と、昭和大学医学部小児科の水野克己准教授は、注意を呼びかけます。
 生後6か月頃になると、それまで赤ちゃんの体内に蓄えてきた鉄分が不足してきます。筋肉など体をつくるもととなるたんぱく質も、母乳だけでは不十分と指摘されています。そのため、厚生労働省が2007年に出した「授乳・離乳の支援ガイド」でも、離乳食を始める時期は「生後5、6か月頃が適当」とされています。
 頻繁に授乳をしても、もっと飲みたがったり、お父さん、お母さんが食事をしていると食べ物に関心を示したりする場合をおおよその目安に、始めてみましょう。
 最近では、アレルギーへの不安から、なかなか離乳食を始めたがらないお母さんも多いようです。水野さんは「4か月より前の赤ちゃんでは、食物をとることによるアレルギーへの不安は当てはまりますが、5~6か月になれば、むしろ、たんぱく質などは補完する必要があります。免疫の専門医の間でも、実際に食べることによって、食べられる体になっていくという考え方が一般的になってきています」と話します。

無理強いはかえって遠回り

 一方、いざ離乳食をスタートしてもベーッと吐き出してしまうなど、なかなか進まないということも多いもの。「食べてもらいたい」という気持ちが強くて焦ったり、「母乳ばかり飲んでいて大丈夫?」と不安を感じたりすると、それまで赤ちゃんのペースで授乳していたのが、大人のペースで食べさせるということになってしまいます。
 水野さんのもとには、「離乳食をたくさん食べてもらうには、おなかがすくように授乳の間隔を空けなければならないの?」という相談も寄せられますが、そんな必要はないそうです。
 「なかなか食べたがらない」という赤ちゃんも、食べる量が増えないという赤ちゃんも、まずは家族の食事に仲間入りをしましょう。何かを手でつかんで口に入れようとする、口をもぐもぐと動かす――そんな時がチャンスです。お母さんがスプーンで口に運ぶのでなく、赤ちゃんに軟らかく煮た野菜など手づかみできる食材を用意しておくのもいいかもしれません。
 「赤ちゃんにはやわらかいおかゆやカボチャ、ニンジンなど、と頑なに思いこまないで。8か月くらいでおにぎりを食べる子もいます。ただし、大人と同じものではいけないので、お父さん、お母さんも一緒に離乳食を食べてみてはどうでしょう。そして赤ちゃんが食べたら、とってもうれしそうにして、声に出して喜び、ほめてあげてください。無理強いはかえって遠回りですよ」(水野さん)

【5】「早期母子接触(カンガルーケア)」はどのくらいの時間が適当?(2013年5月9日 読売新聞)

 このシリーズの記事「『カンガルーケア』をすれば母乳育児がスムーズになる?」で、早期母子接触(いわゆるカンガルーケア)を実施している出産施設の調査結果について紹介しました。
 出産後、お母さんと赤ちゃんが一緒にいる時間は、数分から2時間ぐらいまで幅があり、「施設によってかなり違いがみられるようだ」と伝えたところ、「それでは、どのくらいの時間、抱っこしているのが望ましいの?」と質問が寄せられました。
 日本赤十字看護大学教授の井村真澄さんに尋ねると、「出生直後2時間くらいで一区切りつきます」との回答でした。
 赤ちゃん自身の力でお母さんの乳首を捉えたり、お母さんが手伝って含ませたりするのをきっかけに、赤ちゃんはおっぱいを吸い始めます。2時間くらいすると、吸い続けていた赤ちゃんが眠りに入り、お母さんも眠くなってくるそうです。そこが一区切りのタイミングです。「そのあと、お母さんと赤ちゃんが分娩室から産後を過ごす部屋に一緒に移動して、自然な形で母子同室で過ごし始めるとよいでしょう」と井村さんは話しています。
 また、井村さんによると、出産後2時間は「分娩第4期」とも言われる時間帯にあたります。胎盤が出てから子宮が急速に収縮する時期ですが、このとき、子宮収縮がうまく進まなかったり、産道が傷ついたりしたために起こる出血が発見されやすいのだそうです。そのため2時間は、すぐ処置のできる分娩室で、重点的にお母さんの体も見守る必要があるのです。
 「この分娩第4期に、赤ちゃんがお母さんのおなかに乗っていると、赤ちゃんが自分の体を使ってお母さんのマッサージをしてくれているようなもの。また、母乳が出る時に分泌されるホルモン『オキシトシン』は子宮を収縮ホルモンでもあるので、早期接触と早期授乳は、子宮収縮を促して産後早期の出血予防にもなるのです」(井村さん)

【6】授乳は3~4時間おきにするもの?(2013年5月30日 読売新聞)

 育児書などを見ると、授乳のタイミングについて「泣いたら飲ませる」「3~4時間おきに飲ませる」など、いろいろなアドバイスが載っています。実際には、どんなときに授乳すればよいのでしょうか?

規則授乳の“ルーツは”――

 まずは、「3~4時間おきに飲ませる」というアドバイスについて。日本赤十字看護大学教授の井村真澄さんによると、こうした「規則授乳」が呼びかけられたのは、20世紀の初め、ニュージーランドの医師トルビー・キングが「科学的方法によるトルビー・キング・プログラム」を考案したのがきっかけだそうです。
 「キング医師は、当時問題になっていた重症の下痢の原因が不規則な授乳にあると考えました。日本にも、ヨーロッパを経由して、明治期のうちに『ドイツ式時間制授乳法』として伝わっていたようですが、当時は広まらず、むしろ第2次大戦後、産科施設でのお産が一般的になるのに合わせて定着したようです」(井村さん)
 現在、母乳育児では、こうした規則授乳は「赤ちゃんの生理機能に合っていない」として推奨されていません。「時計を見ながらではなく、赤ちゃんを見ながら授乳しましょう」と井村さんはアドバイスします。では、「赤ちゃんが泣いたら飲ませる」のがふさわしいタイミングなのでしょうか?

「早めのサイン」をキャッチして

 井村さんは「大泣きしている赤ちゃんは、口に異物が入り込まないように、反射で舌が上に上がるようになっています。そこにおっぱいを差し入れようとするので、上手に含ませられないことも多いのです。赤ちゃんが大泣きする前の、おっぱいを欲しがる早めのサインに応じて授乳するとよいでしょう」と話します。
 赤ちゃんがおっぱいを欲しがっているときに出す“早めのサイン”として、「おっぱいを探すように口を開けて首を動かす」「口に触れるものを吸う」「目を閉じているとき、まぶたの下の目の動きが増える」「むずかる」――などがあるそうです。こうしたサインに注目してみましょう。

ほしがるたびに飲ませたら、飲ませすぎになる?

 一方で、「ほしがるたびに飲ませていると、飲ませすぎになるでは?」と、不安になるお母さんもいるかもしれません。
 井村さんは、「おっぱいは『第二の胎盤』とも言われます。生後早期の赤ちゃんは、お母さんのおなかの中にいたときと同じで、いつもそれをくわえているような状態が普通ですから、飲ませすぎの心配はありません」と説明します。
 ただ、赤ちゃんがむずかったらすぐにおっぱいをあげるのではなく、「どうしたの?」「何をしてほしいの?」と尋ねながら一呼吸おき、お母さん自身の気持ちを落ち着かせて対応するとよいでしょう。おしっこやうんちが出た、げっぷが出なくておなかが張っているなど、赤ちゃんのいろいろなニーズに気づくかもしれません。
 授乳したばかりなのにぐずったら、抱っこしてあやしたり、縦に抱いて背中をトントンと軽くたたいてみたりするのもよいでしょう。「おっぱいをほしがっているかどうか、話しかける、目を見るなどして、徐々にお母さんと赤ちゃんの間で確認し合えるようになるといいですね。授乳の時間もより楽しいものになるでしょう」と、井村さんは話しています。

【7】職場復帰のときは断乳しなければならない?(2013年6月6日 読売新聞)

 育児休業を終えて仕事に戻るとき、それまで続けてきた母乳での育児をストップさせなければならないの? こう悩む妊婦さん、お母さんは少なくありません。
 「保育園に預けてミルクを飲んでくれるだろうか」「今は数時間おきに授乳しているのに、ずっと母乳を飲ませられないとおっぱいが張って痛くなるのでは」など、心配になりますね。
 日本赤十字看護大学教授の井村真澄さんは、「仕事に戻ったら母乳は続けられない、と思っているお母さんも多いかもしれませんね。職場復帰したことが理由で、おっぱいを止めなければいけないことはありませんし、むしろ母乳は仕事をするお母さんと保育園で過ごす赤ちゃんの力強いサポーターになってくれるでしょう」と話します。

哺乳瓶に慣れるのは職場復帰が近づいてからでもOK

 井村さんの話すポイントは大きく三つ。
 まず、「やがて仕事に戻るからと、最初から母乳育児をあきらめないで」ということです。
 厚生労働省の雇用均等基本調査(2010年度)によると、女性の育児休業取得期間で最も多いのは「10か月~12か月未満」(32.4%)。次いで「12か月~18か月未満」「8か月~10か月未満」の順になっています。「この間はお母さんと赤ちゃんがいつも一緒にいられるので、赤ちゃんに十分に母乳を飲ませることができますね。初めから哺乳瓶に慣れさせておかなければと先回りして、母乳が出ているのにミルクを足すと、時として乳房で母乳が滞り、乳腺炎の原因になることもありますので要注意です」(井村さん)
 では、哺乳瓶の練習を始める場合、いつごろがいいのでしょうか。井村さんは「はっきりしていない先々を見通して不確かな計画を立てるより、実際の状況が具体的になった時期に、赤ちゃんとおっぱいの状態、離乳食の進み方などをふまえて考えた方が、より現実に適した方法を選択することができるでしょう」とアドバイスしています。職場復帰の時期が近づいてからで大丈夫です。お母さん以外の他の家族が哺乳瓶で母乳(またはミルク)を飲ませる機会を作り、シリコーンの乳首やミルクの味に慣れておけばいいでしょう。また、慣らし保育が始まってから、哺乳瓶で授乳する体験を始めてもよいでしょう。

「射乳反射」の仕組みを知って搾乳上手に

 二つ目に、搾乳した母乳を飲ませたい場合は、保育園が冷凍母乳などを預かってくれるかどうかなどを調べておくことです。
 搾乳のコツについて井村さんは「射乳反射をうまく利用して」とすすめています。赤ちゃんがおっぱいを吸い始めるときには、最初から「ゴクンゴクン」と飲むのではなく、初めのうちはチュクチュクと吸います。その刺激でホルモン(プロラクチン)が分泌されて母乳が作られると同時に、乳腺を網目状に取り囲んでいる筋肉を収縮させるホルモン(オキシトシン)も出ます。収縮するときに、母乳が自動的に出てくるようになっていて、それを射乳反射といいます。
 「搾乳するときに、最初から強い力で搾り出そうとすると、乳房に青あざや擦り傷ができたり、肩や手首を痛めたりします。最初に乳房全体をタオルなどで温め、赤ちゃんが吸い始めるときのように乳首を軽く優しく刺激して、射乳反射が起こって母乳が出始めたら乳輪付近をそっと深く、ゆっくり押すようにして搾乳しましょう」

母乳がたまって痛い場合は軽く搾るのがコツ

 最後は、搾乳をしない場合に、赤ちゃんと離れて過ごす間のおっぱいのケアです。月齢にもよりますが、まず朝、保育園に出かける前に授乳して、出社した後、「いつもなら授乳している」という頃に「おっぱいが痛くてつらい」「母乳がたまって強いしこりがある」などと感じたら、そっと軽く搾るとよいそうです。乳頭をたくさん刺激したり大量に搾乳したりすると、その後さらに母乳が作られてしまいます。乳房を刺激しないように「ちょっと楽になって痛みもない程度」、ほどほどに搾乳しておくことがポイントです。
 保育園のお迎え後、帰宅してから授乳。あとは眠る前や夜中ぐずったときなどに飲ませられると、よいリズムができるようです。
 「仕事に復帰して1~2週間がたつと、お子さんが熱を出すこともあるでしょう。預け先や職場の様子などが分かり、課題もはっきり見えてきます。そのときは、お母さん、お父さん、ご家族で一緒に話し合い、理解を深めながら調整し、対応策を考える機会が持てるとよいですね。お母さんが仕事をしながら楽しく母乳育児が続けられて、お父さんや周りの家族もハッピーになれるよう、バージョンアップされた協力体制を作っていきましょう」(井村さん)

■ 離乳食、生後4カ月以前が4割 【米国小児科学会】(2013年4月2日)New_Icon_bl_01.png

推奨の4-6カ月よりも早期に与える

 米国小児科学会(AAP)は3月25日、専門家の推奨である生後4-6カ月よりも早期に、母親が子に対して離乳食を与えている実態を示した研究結果を紹介した。学会発行のPediatrics誌4月号に掲載している。
 研究グループは約1300人の母親を対象に調査。生後4カ月までに離乳食を与える母親が40.4%に上ることを示した。内訳として、もともと人工乳を与えていた場合、離乳食を4カ月以前に与える母親の割合が52.7%、母乳を与えていた場合が24.3%と、差が出ていた。
 早期に離乳食を与える理由は、「子が十分に成長した」「おなかがすいているように見えた」「子が夜により長く眠ると思った」。医療従事者は早期の離乳食を認めていた。
 早期に離乳食を与える母親は、若い、結婚していない、教育水準が低い、栄養補足プログラムに参加しているという特徴があった。
 研究グループは、早期の離乳食によって慢性疾患の原因になりかねないと懸念。医療従事者が食事指導により関わる必要性があると提案している。

【関連リンク】
Many Moms Not Following Expert Advice on When to Give Solid Foods to Babies 
Prevalence and Reasons for Introducing Infants Early to Solid Foods: Variations by Milk Feeding Type

■ 赤ちゃんノート「ホームケア」(2013年1月〜 読売新聞)

【1】お母さんがノロウイルスにかかったら(2013年1月17日 読売新聞)

 「赤ちゃんはお母さんから免疫をもらって生まれてきているから、病気になりにくい」。そんなことをよく聞きます。これは本当でしょうか?

生まれつき母親から抗体を得られる病気

 昭和大学医学部の水野克己准教授(小児科)は、「嘘ではありません」と言います。
 水野さんによると、水ぼうそうは生後1か月、はしか(麻疹)は4か月、風疹は6か月、おたふくかぜは8か月ほどの間、母体内にいたときにもらった抗体で守られるそうです。また、お母さんが妊娠の中期~後期にインフルエンザの予防接種を受ければ、赤ちゃんもそれに近い効果が得られると考えられています。
 ただ、RSウイルスや百日ぜき、非常に多くのウイルスが存在する「風邪」は母子免疫はききません。

ノロウイルスにかかったら

 この冬は、ノロウイルスが流行しています。下痢や嘔吐、発熱などの症状が3~8日間続くもので、赤ちゃんもかかります。
 「赤ちゃんが感染した場合は、嘔吐よりも下痢が長く続く例が多いようです。母乳で育てている場合は、そのまま母乳をあげるのが一番です。胃腸炎で傷んだ腸の粘膜への負担も、ミルクより小さいためです」と水野さん。
 母乳でもミルクでも、嘔吐がある場合は、脱水症状に気をつけながら、こまめに授乳しましょう。1回の量は少なめにしたほうが良いそうです。
 感染予防には、マスクをするのも効果的ですが、ノロウイルスは便や嘔吐物から排泄されるので、おむつの処理をしたときは、手をよく洗うことが大切。そのほか、嘔吐物が乾くと、吸い込んで感染することもあります。乾く前に、適切に処理してください。
 拭き取る前にマスクと手袋をして、雑巾やタオルでしっかり拭き取り、嘔吐物は雑巾やタオルごとビニール袋に入れて密閉し、そのまま捨てるのが望ましいそうです。フローリングの床では、吐いた場所から広い範囲に飛び散ることもあるので、塩素系の消毒液で拭きましょう。

お母さんがかかっても、母乳からは移らない

 万一お母さんが感染した場合でも、これまで通り母乳をあげられます。ノロウイルスは母乳から赤ちゃんに移ることはありません。「むしろ授乳により、お母さんの体内で作られた抗体が赤ちゃんへ移行します。そのため発症予防や、赤ちゃんがかかったとしても症状が軽くて済むなどの効果が期待できます。母乳は、様々な病原体の免疫が得られる『天然のワクチン』です」(水野さん)
 ただ、「授乳しなければ」と頑張りすぎず、お母さんの体調回復も優先しましょう。赤ちゃんのお世話や家事は、お父さんや祖父母ら家族に任せ、ゆっくりと体を休めてください。

【2】病院に行ったほうがいい?(2013年2月1日 読売新聞)

 赤ちゃんが熱っぽかったり、咳が続いたりすると、とても心配になりますね。そして、病院を受診すべきか迷うというお母さん、お父さんが多いのではないでしょうか。「夜間の救急に駆け込むほどの症状なのか、一晩様子を見て大丈夫なのか分からない」「病院に行って、かえって別の感染症をもらってくるのでは……」

「いつもと違う」を感じ取って

 東京都杉並区の小児科医・佐山圭子さん(母親学級「ひだまりクラス」主宰)は、「抱っこしたり、オムツ替えや着替えのときに頭やおなかや背中をなでたり、ちょっと押してみたり、日ごろから赤ちゃんをたくさん触って」とすすめます。毎日たくさん触れていれば、「あ、今日はいつもと違う」と、気づきやすくなるからです。「お母さんの、そうした感覚がとても大切です。受診すべきかどうか、自分なりの見極めができるといいですね」と佐山さんは話します。見て触って、においをかいでみて……いろんな感覚で赤ちゃんを感じてみてください。

生後3か月以内の発熱は早めに受診を

 小児科を訪ねる理由で最も多いのが発熱だそうです。佐山さんによると、生後3か月以内の赤ちゃんが熱を出した場合は注意が必要です。水分を取ったり、汗をかいていたら涼しくしたりしましょう。それでも数時間続く場合は、38度前後の熱であっても、急いで診てもらいましょう。
 「体温がいつもより高いな」と感じたら、体温を測って変化をメモしておくのがおすすめです。咳や鼻水、発疹、おう吐、下痢などの症状がないか、おしっこやうんち、食欲はいつもと比べてどうかなども把握しておくといいですね。
 発熱しているうえ、「いつもの元気がなく、ひどくぐったりとしている」「おしっこの回数が少ない」「皮膚にいつもの弾力がない」などと感じたら、脱水傾向かもしれません。夜でも救急外来を受診してください。

「ゼイゼイ」する呼吸に注意

 このほか、すぐに受診が必要な症状を紹介します。

【けいれん】▼5分以上続く(通常は1~2分)▼左右差がある(片側のけいれんや、目が右か左に寄る)▼いったん治まったのに再び続けてけいれんする(24時間以内に2回以上)など。
【呼吸困難】▼ゼイゼイいう、胸の動きがいつもと違う▼呼吸が速くなる▼横になっていられず座らないと苦しがる▼顔色が悪く、唇が紫色になる▼咳が止まらず興奮して寝ない、など。
【急性腹痛】▼おう吐を繰り返す、どんどん悪くなりぐったりする▼血便など。

 ワーッと泣いて、落ち着いて、またワーッと泣く――を繰り返す場合は、「腸重積」の可能性もあるので気をつけましょう。「聞いたことのないような激しい泣き方のことが多いです。まれな病気ですが、お母さんの判断ですばやく受診できた人もいました。発症後の時間が早ければ内科的な処置で整復できるので、頭の片隅にメモしておいてください」と佐山さんはアドバイスしています。

【3】母乳をドバッと吐いてしまう(2013年2月7日 読売新聞)

 母乳やミルクを飲んだ後、赤ちゃんは吐くことがよくあります。ドバッと大量に、口からも鼻からも、まるで噴水のように戻すこともあり、初めての赤ちゃんを育てているお母さん、お父さんは、きっとびっくりすることでしょう。

赤ちゃんの胃は逆流しやすい

 赤ちゃんがよく吐くのは、まず胃の構造に理由があります。大人の胃は入り口がしっかりしまっていて、また「J」の字のようにカーブを描いていますが、赤ちゃんの胃は「とっくり」のような形。入り口あたりの筋肉も未発達のため、おっぱいやミルクが逆流しやすいのです。
 また、大人と違い、赤ちゃんは基本、横抱きされていたり、寝ていたりというのも逆流しやすい理由の一つです。
 げっぷと一緒にタラーッと出る「溢乳」は、生まれてすぐの赤ちゃんにはよくある嘔吐です。吐いた後、けろりと機嫌よくしていれば大丈夫。「またおっぱいを欲しがるようであれば、あげても構いません」と、東京都杉並区の小児科医・佐山圭子さんは話します。
 たまたま大量に吐いたり、「鼻から出たから大変!」というわけではないそうです。
 授乳後、吐きにくい体位は上半身を上げること。赤ちゃんを胸に寄りかからせて、お母さんはソファでゆったり寄りかかるというのもいいですね。飲んだ直後で寝かせているときに泣いたら、おなかがすいたというよりも、吐きそうで苦しいのかもしれません。斜めに立てて抱っこしてあげると泣きやむなら、それが理由だったのかもしれません。
 また、上半身を高くして寝かせる工夫もあります。タオルを折りたたんだものや雑誌などを布団の下に敷くと、傾斜がつけられます。

吐いた後の様子をよく見て

 一方、嘔吐は、ウイルス性胃腸炎、細菌性腸炎、腸重積などの消化管の病気ほか、髄膜炎や脳炎などでも起こります。
 0~2か月の赤ちゃんが、授乳のたびに噴水状に飲んだだけ大量に吐く場合や、うんちやおしっこが極端に少ない、ぐったりしているなどの症状があるときは、この時期に起こる「消化管通過障害」を疑います。
 嘔吐が発熱を伴っている場合で、下痢症状がない、ぐったりする、顔色が悪くいつもの活気がない――などは髄膜炎かもしれません。小児科を受診しましょう。
 赤ちゃんの髄膜炎を予防するための、ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンをきちんと受けていれば、髄膜炎を9割予防できると言われています。生後2か月になったら2種類の細菌性髄膜炎のワクチンを受けましょう。
 嘔吐したときに注意するのは、吐いた後ケロッとしている“普通の嘔吐”か、または、いつもよりもぐったりしている、機嫌が悪い、大泣きするか、ということです。

脱水予防に経口補水液も活用を

 胃腸炎では、嘔吐はウイルスなどを体外に排出するための防御反応ですが、症状が続くと、水分のほかナトリウム、カリウムが失われるので脱水が心配です。
 最近は「経口補水液」が市販されているので、こうした飲料で水分を取るのもおすすめです。スポーツ飲料と混同しがちですが、食塩とブドウ糖を一定の割合で水に溶かしたもので、吸収しやすい規定された濃度にしたものです。スポーツ飲料よりも糖質が少なくなっています。5分ごとにスプーン1杯から、慎重に少しずつ飲ませましょう。母乳やミルクの赤ちゃんは、1回の量は少なめに、こまめに授乳すると良いでしょう。
 嘔吐が治まってきてご飯を食べるときも、まずは少量ずつ。「下痢をしているときは、便の様子も見ながら、ゆっくり進めてください。極端な制限は不要ですが、もちろん消化のよいものから慎重に。おかゆや、やわらかい野菜や豆腐など、離乳食の食材をイメージしてみてくださいね」と佐山さんはすすめています。

【4】処方された薬は全部飲まなきゃいけない?(2013年2月14日 読売新聞)

 「鼻水と咳で小児科に行ったら、4日分の薬をもらいました。これは全部飲まなきゃいけないの?」
 「4日間は家で様子を見て、ってこと?」
 東京都杉並区で産後の母親学級「ひだまりクラス」を開いている小児科医・佐山圭子さんは、友人からこんな質問を受けたことがあるそうです。「お母さんたちは病院に行っても、聞きたいことを十分に聞けず、不安や不満を抱えたまま帰宅しているのだなと感じました」と話します。
 薬を数日分もらっても、経過の中で症状が変わったり、全身の状態が悪くなったりして、お母さん、お父さんが不安に感じたら、もう一度受診しましょう。

薬への考えも素直に伝えよう

 そして、こんな声もありました。「お医者さんから『お母さん、薬いる?』って聞かれたけど、それはこっちが聞きたいことなのに!」
 佐山さんによると、風邪の大部分はウイルスが原因で、ウイルス自体に効く薬はありません。処方されるのは、熱や咳、鼻水などの症状を緩和する薬で、「飲まなければ絶対に治らない」というわけではないそうです。飲んだらピタッと治る薬もありません。症状や不快感を改善する薬が処方されていることを覚えておくと良さそうです。
 薬を使うメリットとしては、例えば解熱剤は、病気そのものに効果はありませんが、熱が下がれば元気になって食欲が戻ることもあります。食事がとれれば回復力につながるでしょう。
 一方、溶連菌感染症など細菌の感染が分かっている病気では、細菌を殺す抗生物質が治療のために必要です。ウイルス性感染症の中にも、水疱瘡やインフルエンザなどは効く薬があります。外来では、そうした「薬が効く病気かどうか」「入院を要する病気かどうか」……などの見分けが大事になります。
 毎日、大勢のお母さんと接する医師の側からすると、「薬が欲しい」と考えているのか、それとも「なるべくなら薬は使いたくない」と考えているのか、すぐには判断できません。先ほどのお医者さんの「薬はいる?」という質問は、お母さんの薬への考え方を確認する質問です。
 佐山さんは「薬に対する気持ちも正直に話して、医師の意見も聞くと良いでしょう。すべて思うように処方されるわけではありませんが、なるべく気持ちに沿った処方に変わることもあります。飲みたくない希望があっても抗生物質が必要な時もありますし、薬が欲しくても必要ないこともあります」と説明します。

「この先の症状」を聞いてケアを

 また、病気の「見通し」をきちんと聞いておくと、ホームケアでも安心です。どのくらい熱が続くか、どんなふうに治っていくか、どうなったら注意が必要か――などです。効く薬がなく、時間がたたないと治らない病気もありますし、合併症が起こってくることもあります。いろんなパターンの中で、注意すべきポイントを知っておくといいでしょう。
 例えば赤ちゃんの発熱の場合、全身状態が悪くなければ、「3日ほどの熱の後、全身に発疹が出たら突発性発疹かも。4日以上の熱が続いたら心配ですよ」と言われるかもしれません。
 「小児科を受診したら、納得して帰れるように、薬や症状について本音で尋ねましょう。小さい子は薬を飲むのが苦手で、飲ませられないというお母さんも多いと思います。粉薬の場合、どんな飲み物となら薬を混ぜて溶かしても味が変わらず飲ませやすいかなど、薬剤師さんに相談してみてください」(佐山さん)

【5】子どもの病気、学んで安心(2013年2月21日 読売新聞)

 けいれんが続く生後9か月の長男を抱え、夜間の小児科救急外来に駆け込んだ阿真京子さん(東京都杉並区)は、「あまりの混雑ぶりに驚きました」と振り返ります。
 2004年秋のことです。医師や看護師は疲れきった表情に見えたそうです。そして、その数年後に受け取った、小児科医の友人からのメールが忘れられません。「24時間寝ないで働くパイロットの飛行機に、わが子を乗せたいでしょうか? これが日本の小児医療現場の日常です

救急を受診すべきか見極めを

 2007年、阿真さんは「『知ろう! 小児医療 守ろう! 子ども達』の会」を設立しました。「厚生労働省などによると、夜間救急の患者の9割は軽症と言われます。そんな子どもを連れて行く親が批判されますが、救急を受診する必要がなくても、子どもが心配だからと駆け込んでしまう気持ちも分かります」と話します。
 しかし、軽症での受診が増えれば、本当に救急医療が必要な、重症の子がなかなか診てもらえません。医師、看護師への負担も増します。「この悪循環を断ち切るため、まずできるのは、親が子どもの病気について学び、安心して自宅で子どもをみてあげられるようになることだと思います」
 阿真さんの会では、北海道から九州まで、各地の小児科医の協力を得て、毎月1回無料でメールを配信したり、講座を開いたりと、お母さんお父さんたちが子どもの病気を知る機会を作る活動をしています。2月、3月は、この春から保育園に子どもを預けるお父さん、お母さん向けに講座を予定しています。プール熱に手足口病、溶連菌、ヘルパンギーナ……。集団生活を始めると、とにかくいろんな病名を耳にします。もらってくることもあるでしょう。熱が出るのか、何日くらい続くのか。嘔吐
おうと
の後に下痢がくるなど病気の特徴を知っていれば、症状の変化にあわてず、家庭でも対処できることが増えるかもしれません。
 阿真さんは「お母さんお父さんたちは『病気のときは何もできない』と言いますが、子どもの様子をよく見ること、その変化を医師に伝えることはできます。適切な情報を伝えれば、適切な診断が受けられますよ」と呼びかけています。

電話相談、ネットも活用して

 自分で見極めるのは難しい、という場合は、「小児救急医療電話相談」(#8000)を利用しましょう。休日・夜間の急な病気で、病院に行ったほうがいいか迷ったとき、小児科医や看護師に電話で相談できます。全国共通の電話番号ですが、都道府県によって利用できる時間帯などが異なります。
 東京都では、このほか「救急相談センター」(#7119)も利用できます。
 また、日本小児科学会によるサイト「こどもの救急」も、URLを登録しておくと便利です。「発熱(38℃以上)」「けいれん・ふるえ」などの症状ごとに、さらに細かい症状や月齢などを選ぶページがあり、病院へ行くべきかの目安になります。受診のときに持って行くと良いもの、医師に伝えたらいい症状などのアドバイスも参考になります。
 ただ、電話相談やネットの場合でも、子どもの症状をよく観察しておくことが肝心。電話であればなおさら、「全身の様子がいつもとどう違うか」を具体的に伝えましょう。

【6】「はやり病」を知ろう! 首都圏では風疹が大流行中(2013年2月28日 読売新聞)

 子どもの病気には流行があります。一般社団法人「知ろう小児医療守ろう子ども達の会」(東京)の代表理事・阿真京子さんは、「自分の子が通っている保育園・幼稚園や学校、住んでいる地域で、今どんな病気がはやっているのかを知っておきましょう。予防のためにも、いざ症状が出て病院に行くときにも、情報を知っておくことは大切です」と話します。
 多くの保育園では、クラスごとにどんな病気の子が何人いるかを掲出しています。
 未就園児の場合でも、地域の保健所・保健センターなどで病気の流行を確認できます。「親も、体調が優れないときなどはうつることがあるので、マスクをしたり、うがい・手洗いを十分にしたり、予防を心がけるといいですね」と阿真さんはアドバイスしています。

成人男性が流行の中心

 この冬は、特に首都圏で風疹がはやっています。昨年は関東・関西を中心に流行し、患者数は2353人に上りました。すべての患者数を報告する現在の統計方法になってから、最多です。
 今年はさらに、昨年を上回るペースで患者数が報告されています。国立感染症研究所・感染症情報センター(東京)によると、2月13日現在すでに535人に達し、去年の同時期に比べ約20倍になっています。
 今年の流行の特徴は、東京都、神奈川県、埼玉県など首都圏に集中していることと、20~40歳代の男性が多いことです。昨年も患者の7割以上が男性で、そのうち20~40歳代が8割を占めました。1990年代半ばまでは、風疹の予防接種の対象が女子中学生に限られていたことなどから、子どもの頃に予防接種を受けていないためと考えられています。

妊婦のパートナーは注意を

 風疹は発熱や発疹、リンパ節が腫れるなどの症状が出る病気で、患者の咳などで感染します。特に妊娠初期の女性が感染した場合は、おなかの赤ちゃんの心臓や耳、目などに障害が出る「先天性風疹症候群(CRS)」のおそれがあるので、注意が必要です。
 風疹はワクチン接種で予防できますが、おなかの赤ちゃんに影響を及ぼす可能性もあるため、妊娠中は打つことができません。そのため、夫がまず予防接種を受けましょう。妊婦さんは、検査で風疹の抗体が十分にないと分かった場合は、外出時は必ずマスクをつけましょう。
 同センターでは「CRSの赤ちゃんは、昨年10月以降、全国で6人も報告されています。例年、風疹の流行は春から夏で、今後さらに感染が広まることも予想されます。生まれてくる赤ちゃんを守るため、これから妊娠を希望するカップルは、家族も含めて、ぜひ予防接種を受けてください」と呼びかけています。

【7】熱中症のチェックポイントは?(2013年7月17日 読売新聞)

 30度を超す暑い日が続き、熱中症のニュースも連日のように報じられていますが、赤ちゃんとの暮らしではどんなことに気をつければよいのでしょうか。

汗のかき方、顔色をよく見て

 まずは熱中症にならないよう、赤ちゃんの様子を普段よりさらによく見ることが大切です。小児科医の佐山圭子さんによると、汗をひどくかいたり、顔が真っ赤になったりしている場合は注意しましょう。おしっこもチェックポイントの一つ。「色が濃く、回数が減っているときは、脱水傾向かもしれません。十分な水分補給が欠かせません」と指摘します。
 佐山さんは東京都杉並区で母親学級「ひだまりクラス」を開いていますが、最近「赤ちゃんの水分補給って何を飲ませるの?」とよく聞かれるそうです。「母乳の赤ちゃんなら、いつもより回数を多めに、こまめに授乳しましょう。ミルクの場合でも、ミルクを少し多めに飲ませるので構いません。カウプ指数が少し高めで、ミルクの量を増やすのが心配なら、お茶や白湯を飲ませるとよいと思います」とアドバイスします。
 汗をたくさんかいているとき、嘔吐や下痢をしているときなど、脱水がひどくなりそうなら、「経口補水液」を飲ませるようにしましょう。吸収が素早くできる濃度の食塩とブドウ糖の飲料水です。ドラッグストアなどで買い求めることができます。「普通のスポーツ飲料やイオン飲料は糖分も多いので、赤ちゃんには与えないようにしてください」と佐山さんは注意を呼びかけています。

授乳間隔が開きすぎないように注意を

 室内で過ごすときは、エアコンを活用しましょう。赤ちゃんの寝る場所に直接エアコンからの風が当たらないよう、扇風機で室内の空気の循環を作るのもおすすめです。
 外出する用がある場合も、なるべく日差しの強い時間帯は避け、短時間で済ませるのが望ましいそうです。「抱っこで出かけ赤ちゃんがちょうど寝てくれると、ついでに買い物も済ませてしまおう――などとなりがちですが、気づくと3~4時間授乳の間隔が開いてしまうこともあります。こまめに授乳できるようなスケジュールで動けるといいですね」(佐山さん)。いつでも授乳できる授乳服はこまめに授乳できますね。
 赤ちゃんは体温調節が苦手なので、暑い中にいると平熱よりも高くなることがあります。それでも、水分をしっかり取り、涼しいところで1時間程度過ごし、落ち着けば心配はないそうです。
 「赤ちゃんを熱中症にしないためには、何より目を離さないことが大事です。駐車場の車内に放置するのはもってのほかですが、買い物を終えて炎天下に止めてあった車に乗り込むときも、シートが熱くなっていることがあるので気をつけましょう。シートを冷やすために、保冷剤を活用しているお母さんもいましたよ。無理せず、上手に夏を乗り切ってくださいね」と佐山さんは話しています。

■ 健やかキッズ(2012年〜読売新聞)

「赤ちゃん返り」乗り切ろう(2013年7月12日 読売新聞)

「見守られる」安心感カギ

 弟や妹の誕生を機に上の子どもが急に「赤ちゃん返り」し、どう対応したらよいか悩む親は少なくない。おおらかに接し、子どもの気持ちに寄り添うことが大切だ。
 大阪市の主婦(34)は、2歳の長女の赤ちゃん返りに手を焼いている。弟が今春生まれたが、2週間を過ぎた頃から、長女は主婦のそばを離れようとしなくなり、「遊んで」とせがむようになった。授乳中の弟の足をつかみ、胸元から引き離そうとしたことも。「相手にしないとおさまらない。乳児期にはなかった夜泣きも始まりました。今後ひどくならないか心配です」
 京都大教授(発達心理学)の子安増生さんは、「『もっと構ってほしい』『さみしい』と、親にシグナルを発しているのです」と話す。親の愛情を独り占めできず、満たされない思いが、赤ちゃん返りという形で表れるのだという。
 甘えるだけでなく、わがままで反抗的な態度を取ることもある。おねしょをしたり、指しゃぶりを始めたり。
 また、スプーンで食事していたのが手づかみになるなど、それまでできていたことが、突然できなくなってしまうこともある。子どもが甘えてきたときに、「一人でできるでしょ」とはねつけると、余計に聞き分けがなくなる。
 子安さんは、「赤ちゃん返りは一過性のもの。甘えをしっかり受け止めて」という。子どもが困った行動をしても頭ごなしに叱らずに、「どうしたの?」と目を見て話しかけ、子どもの言葉に耳を傾ける。大切なのは、甘えたい気持ちを満たし、「見守られている」という安心感を子どもに与えることだという。
 ただ、授乳やおむつ替えなど下の子どもの世話に追われている中で、イライラが募る場合もあるだろう。
 そんなときは、一人で抱え込まず、パートナーや祖父母らに協力を求めるといい。わずかな時間でも下の子どもを見てもらい、上の子どもと向き合う時間を作るといい。就学前の子どもと親の交流の場を運営する、NPO法人ハートフレンド(大阪市)代表理事の徳谷章子さんは、「地域の子育て支援施設を訪れてみては。親子で家の外に出て遊べば、気分転換にもなります」と話す。
 赤ちゃん返りは、保育所や幼稚園への登園を嫌がるという形で出てくることもある。保育士や父母らでつくる全国保育団体連絡会(東京)副会長で、あかねの虹保育園(埼玉県所沢市)園長の牧裕子さん(72)は、「登園を渋る時期はそう長くは続きません。いったん登園したら、すぐに友達と遊び始める。心配し過ぎないで」と言う。
 最近きょうだいが少なくなったためか、牧さんは「上の子の赤ちゃん返りに戸惑う親から相談を受けることが増えた」という。
 牧さんは、妊娠中から上の子どもと一緒に新しい家族を迎える心の準備をすることを勧めている。「おなかを触らせて、『赤ちゃんが生まれてくるのを楽しみにしようね』『幸せだね』と伝えてあげて。兄や姉になった自覚を芽生えさせる声かけも大切です」と話している。

「赤ちゃん返り」に対応するコツ
 ・「甘えてくるのも当然」とおおらかに受け止める
 ・話しかける際は、なるべく優しい口調で、子どもの目を見ながら
 ・一人で抱え込まず、パートナーや祖父母らに下の子の面倒を見てもらう。地域の子育て支援施設などへ出かけ、上の子と遊ぶ時間を作る
 ・妊娠中から新しい家族が増えることを上の子と楽しみにする。誕生日などの節目を捉え、兄や姉としての自覚を育む

  (子安さん、徳谷さん、牧さんへの取材を基に作成)

子ども虐待する親をケア 民間団体がプログラム(2013年6月27日 読売新聞)

 子どもをたたいたり、無視したりしてしまう親たちの相談に乗り、気持ちをコントロールする方法を教える「MY TREE ペアレンツ・プログラム」(全13回)が、8月から東京都内で始まる。
 プログラムを主催するのは、児童養護施設を出た子どもたちの相談所を運営する民間団体「ゆずりは」(東京都小金井市)。読売光と愛の事業団「こども支援寄金」が助成する。
 このプログラムは、児童虐待が深刻化するのを防ぐ取り組みとして、10年ほど前から関西を中心に広がり、注目を集めている。専門家の指導の下で、親が子育てに関する悩みや不安を語り合い、子どもへの気持ちの伝え方や、怒りをコントロールする方法などを学ぶ。
 児童養護施設にいる子どもたちの約6割が、親から何らかの虐待を受けていると見られる。しかし、虐待をした親に対しては、ほとんど何のケアも行われていない。このため、施設を出た子どもたちが再び親との関係に悩み、非行に走ったり、心を病んだりするケースが多い。「親が変わってほしい」と、「ゆずりは」では、プログラムを始めることにした。
 8月下旬から12月半ばの土曜日午後に「ゆずりは」で開催。参加費無料。一時保育あり。参加希望者には事前に面接が行われる。問い合わせは「ゆずりは」(電話042・315・6738かメールacyuzuriha@gmail.com)へ。

<院長のつぶやき>
 今から15年ほど前の勤務医時代、虐待事例を扱った時、アメリカでは虐待した親向けのプログラムが存在し、それをクリアしなければ親権を剥奪されるという仕組みがあることを知りました。しかし当時の日本では虐待された子どもにしか目が行かず、加害者でもあり被害者でもある虐待者のケアは存在しませんでした。
 親のケアに目が向くまでに随分時間がかかりました。

ベビーカー 清潔お手入れ(2013年6月26日 読売新聞)

シート外して丸洗いも

ベビーカーの手入れ.jpg

 乳幼児が使うベビーカーは、汗や皮脂が付いたり、食べ物をこぼしたりして汚れやすい。しかし、シートなどが洗えることはあまり知られておらず、こまめに手入れしている人は少ないようだ。湿気や暑さも増す時期、ベビーカーの手入れの方法を知っておきたい。
 「ベビーカーのシートは洗えますか?」「シートにカビが生えて困っている。どうしたらいい?」
 ベビーカーを販売するメーカーには、この時期、利用者からのこうした問い合わせが増える。アップリカ・チルドレンズプロダクツ(大阪市)のPR担当、山辺わか奈さんは「シートなどは取り外して洗えるものがほとんどですが、知らない人も多いようです」と話す。コンビ(東京)が2010年に行った調査でも、半数がシートを洗濯したことや本体の手入れをしたことが一度もないと答えた。
 ベビーカーの各部に応じた手入れの方法がある=イラスト参照=。
 シートや、肩ベルトを覆う布のカバー、前面についているフロントガードの布カバーなどは取り外して、中性洗剤で洗う。素材を傷めないように、手洗いする。
 肩や腰のベルトや日よけなど取り外して丸洗いできない部分、ヘッドパッドなど洗えない素材は、汚れの種類に応じて表面の汚れを落とす。その際、漂白剤やカビ取り剤などは使わない。「赤ちゃんの口や肌に触れる部分に洗剤の成分が残ると危険です」と山辺さん。
 手入れの方法は、取り扱い説明書にも記載してある。説明書が手元にない場合は、メーカーのホームページや電話窓口を通して入手できる。
 ベビーカーの保管方法にも気を配りたい。コンビの広報担当、安藤文香さんは「汗や雨でぬれた時はすぐに折りたたまず、風通しのよい場所に置いて、できるだけ早く乾かしてください。こまめに手入れすれば、清潔を保てます」と話す。最近は、洗濯機で丸洗いできるシートや、通気性、速乾性に優れたシートのベビーカーも登場している。
 頑固な汚れには、専門のクリーニングサービスもある。アップリカが昨年12月、東京や埼玉などで始めたクリーニングサービスでは、車体や布部分の清掃に加え、車輪に油をさすなどメンテナンスも行う。1台6000円(送料込み)。コンビも、相談窓口を通して、メンテナンスに応じている。

嫌がる洗髪 手早く楽しく(2013年6月15日 読売新聞)

泡状シャンプー・おもちゃで

 汗をかきやすい季節がやってきた。毎日お風呂で髪を洗おうとしても、嫌がる子どもは多い。どうすれば、気持ちよく洗ってやることができるだろう。
 「水が目に入って嫌だよ」
 東京都内の30代の母親は、髪を洗うたびに長女(3)に泣かれて、気が重くなるという。「最近はお風呂に行くこと自体を娘が嫌がるようになって困っている」と打ち明ける。
 こうした悩みを抱える親は多い。ベビー用品会社「ピジョン」(東京)によると、洗髪に関する母親の悩みのトップ3は「嫌がって泣く」「頭のにおいが落ちない」「髪が絡まりやすい」だという。
 「洗髪を嫌がるときは、とにかく手早く済ませることが大事です」。同社商品開発部の青木皓平さんは、そうアドバイスする。
 洗髪には、子ども用のシャンプーを使う。目にしみにくく、素早く泡が流れ落ちるよう工夫されているという。手のひらで軽く泡立ててから子どもの頭全体になじませ、指の腹で優しくマッサージするように洗ってやる。
 「シャンプーを多く付けすぎると、すすぎに時間がかかってしまう。泡が薄く髪全体に行き渡っていれば大丈夫。適量を心がけて」と青木さん。容器から泡状で出てくるシャンプーなら、泡立てる手間もかからない。
 中には大人用シャンプーを子どもに使う人もいるが、刺激が強いうえに、頭皮の皮脂を奪い過ぎてしまう恐れがある。また、せっけんで洗うと、髪の表面のすべりがわるくなり、髪の長い子どもの場合、絡まりやすくなることも。
 「楽しい雰囲気を作り、子どもを喜ばせて」と勧めるのは、野村皮膚科医院院長の野村有子さんだ。
 小さいうちは、シャワーが頭に当たるときの水圧が苦手な子や、水の音が怖いという子もいる。そんなときは、遊びを取り入れるといい。例えば、子ども用じょうろでそっと頭を洗い流したり、美容院ごっこをしてみたり。お気に入りのおもちゃを持たせるのもお勧めだ。楽しみながら、洗髪に慣れさせることが大事だという。
 洗髪後は、タオルでしっかりと水気を拭き取り、ドライヤーで軽く乾かす。髪がぬれたまま寝ると、むれてかゆみにつながりやすい。
 野村さんによると、最近はあせもやアタマジラミで受診する子どもが少なくない。あせもは頭皮にもできる。多く汗をかいたときには、ぬれタオルで頭の汗をしっかり拭き取る。夜の入浴以外でも、水浴びなどで汗を洗い流すことが大切だ。また、アタマジラミは、毎日丁寧に髪を洗っていれば、ある程度防げるという。
 「思うように子どもの髪を洗えないと、ついイライラしたり焦ったりしてしまいがち。ぜひ時間と心にゆとりを持ってお風呂に入り、親子でコミュニケーションを楽しみましょう」と野村さんは話している。

■子どもの髪を洗う際のポイント
 ▽手早く済ませることを心がけ、シャンプーは適量に。シャンプーは子ども用を使う。
 ▽シャワーの水圧や音を嫌がる場合もある。水を弱めてみたり、おもちゃのじょうろを使ってみてもいい。
 ▽目に水が入るのを嫌がる子には、乾いたタオルを渡し、両目を覆わせておく。不安を和らげることができる。
 ▽アタマジラミやあせもを防ぐためにも、毎日洗髪し、清潔を心がける。

 (野村さんなどの話をもとに作成)

転落招く 大人の油断(2013年5月31日 読売新聞)

ソファの上でも目を離すと…

 子どもの事故の原因で目立つのが階段やベッドなどからの転落。保護者らの油断が重大な事故につながりかねない。転落防止のための対策と、万一の時の応急処置を知っておきたい。
 東京都内の男性会社員(39)は4月、生後11か月の長男をソファの上に寝かしていてヒヤリとした。その場を離れ、台所で食器を洗っていると、ドスンという音。あわてて見に行くと、長男が高さ約30センチのソファの座面から落ちて泣いていた。ソファの下に座布団があり、ケガはしなかったが、「頭から床に直接落ちたらと思うとぞっとする」と話す。
 東京消防庁は2011年に、日常生活の中でケガをした0~4歳の子ども7890人を救急車で医療機関に搬送した。その中で最も多かったのが転落事故で28・4%。階段やベッド、ソファ、椅子、自転車などから転落する事故が目立った。中には、自宅2階のベランダで、エアコンの室外機の上で遊んでいた2歳の男児が地上に転落して重症のケガを負う事故もあった。
 「子どもの転落事故は、保護者のちょっとした心がけや対策を実施することで減らせる」と、NPO法人「子どもの危険回避研究所」(東京)所長の横矢真理さんは話す。
 その対策として、

〈1〉乳幼児をソファや柵のないベビーベッドに寝かせない
〈2〉階段に転落防止用の柵を設け、子どもが一人で階段を使えないようにする
〈3〉ベランダに、転落につながる椅子など踏み台となるものを置かない
〈4〉子どもを自転車に乗せたまま駐輪し、その場を離れない

――などを横矢さんは挙げる。
 横矢さんは、「前日できなかったつかまり立ちが、突然できるようになるなど、子どもの成長は早い。成長段階の特徴を踏まえ、家庭に応じて対策を考えてほしい」と話す。
 一方、転落事故が起きてしまった場合の応急処置を知っておくことも大切だ。
 「大きなケガをして出血していたり意識がなかったりした時は、救急車をすぐに呼ぶ」。東京都墨田区の鈴木こどもクリニック院長の鈴木洋さんはそう話す。保護者などが事故を目撃していたら、どこからどのように落ち、どの部分を打ったのかを医師に説明すると、診断の役に立つという。
 頭や背中、胸など、強く打ち付けた場所によって、救急車が来るまでに寝かせておく体勢も異なる=イラスト=。意識があって呼吸できているのに、体が動かないときは、脊髄を損傷している恐れがある。抱き上げたり、慌てて動かしたりしない。無理に動かして損傷を大きくしてしまうことがあるからだ。

転落事故時の姿勢.jpg

 転落直後は何事もなかったように遊んでいたのに、時間の経過とともに体調不良を訴えるケースもある。目に見えない体内を損傷している場合もあるので、事故直後は激しい遊びはやめさせ、静かに過ごさせるようにする。
 鈴木さんは、「子どもの様子を注意深く見守り、いつもよりも元気がないなど、気になることがあればすぐに受診してほしい」と話している。

 ★ 転落事故を防ぐための対策(鈴木さんや横矢さんの取材を基に作成)
 <ベランダや窓際>  子どもの踏み台になるような物を置かない
 <階段>  階段に入れないように柵を設置する
 <ベビーベッド>  転落防止用の柵を使い、子どもの成長に合わせて高さを調整する
 <自転車>  子どもを自転車に乗せたまま駐輪しない。ヘルメットを着用させる

保育所 定員超過が深刻化(2013年5月4日 読売新聞)

ベネッセ研調査 幼稚園は定員割れ

 保育所の入所待ちをする「待機児童」が問題になる中、全国の保育所で定員超過が深刻化していることなどが、ベネッセ次世代育成研究所の調査でわかった。
 調査は昨年10月から12月にかけ、全国の公立と私立の認可保育所、幼稚園などに実施、5221園から回答を得た。
 認可保育所に、昨年9月時点の0~2歳児の定員充足率を聞いたところ、私立では定員を超過して受け入れている保育所が全体の61・8%に上り、4年前の前回調査より3・4ポイント増加した。125%以上の定員超過は24・1%を占め、前回調査より3・6ポイント増加、150%以上の超過施設も7・5%あった。
 一方、私立幼稚園で定員割れをしている園が79・4%に上り、このうち定員の半数に満たない園も14%あった。公立幼稚園でも94・2%が定員割れをしていた。
 子育て関連新法では、2015年度から認定こども園制度が拡充され、幼稚園から認定こども園への移行が期待されている。
 今回の調査では、私立幼稚園の36%が「条件によっては移行してもよい」と答える一方、「移行は考えていない」との回答も26・7%。また、「詳しい内容が分からないので判断できない」が22・4%だった。
 移行しない理由で多かったのは、「0~2歳は家庭での育ちを大切にしてほしい」「施設整備が対応できない」「地域に待機児童がいない」など。移行するかどうかの判断で重視する点は、「施設整備費の保障」が最も多かった。
 同研究所主任研究員の後藤憲子さんは、「保育所への入所希望が増加するなか、幼稚園は定員割れを起こしている。幼稚園の認定こども園への移行を促すには、施設整備費や人件費の充実などを進めることが必要」としている。

親が耳掃除 事故に注意(2013年4月19日 読売新聞)

 耳かき棒で子どもの耳の中を傷つけてしまう事故が少なくない。事故予防のための注意点と、正しい耳掃除の仕方を紹介する。

他の子 ぶつからないように

 「母親が1歳の娘の耳掃除をしていたところ、娘が頭を動かしたため、誤って耳の中を傷つけた」「3歳の娘の耳掃除をしていた母親の腕に、幼い息子がぶつかり、娘が耳の中にけがをした」
 東京消防庁によると、こうした「耳掃除中」のけがで救急搬送されたのは、2007年~11年の5年間で計383人。このうち0~5歳(42%)と、6~12歳(14%)を合わせると半数を超える。
 耳かき棒や綿棒を奥に入れすぎた事例や、耳掃除中に誰かに接触された事例が目立つという。中には、子どもが耳かき棒や綿棒を耳に入れたまま転倒したり寝ころんだりして、出血した事例もあった。
 このため、国民生活センターは、事故に注意するよう呼びかけている。

 〈1〉耳掃除中は、周囲の状況を十分に確認する
 〈2〉耳掃除をしている人を押したりしないよう、子どもに言い聞かせておく
 〈3〉耳かき棒は、乳幼児の手の届かない場所に置く

――などが大切だ。

綿棒は奥に入れすぎない

 耳掃除のこつも覚えておきたい。乳幼児の耳の穴はとても小さく、掃除しづらい。そのため、耳あかが残っていないか必要以上に気になり、丁寧に掃除しようとする親も多いという。
 しかし、国立成育医療研究センター(東京)の耳鼻咽喉科医長、守本倫子さんは、「掃除のしすぎは禁物」とくぎを刺す。「耳をのぞいて汚れが見えるようなら、綿棒で掃除してください」と助言する。

耳掃除はここまで.jpg
「耳掃除は、外からのぞいて見えるこの辺りまで」と耳の模型を指さす守本さん(国立成育医療研究センターで)

 乳幼児の耳の穴の皮膚は、大人の3分の1ほどの薄さだという。耳かき棒や綿棒で掃除しようと耳の中を度々こすっていると、かえって皮膚を傷つけて炎症を引き起こし、かゆみや痛みのもとになる。耳あかは自然と外に出てくるため、「掃除は月1回程度でもいいぐらいなんです」と守本さんは話す。
 道具は、硬くて太い竹製の耳かき棒よりも、先端が細めの綿棒を選んで使うといい。風呂上がりなら耳あかがしっとりとしていて取れやすい。子どもの頭をひざの上にのせ、汚れが見える範囲だけを1~2回、優しくぬぐい取る。欲張って奥の方の耳あかまで取ろうとしないことが大事。綿棒を奥に入れすぎることで、かえって耳あかを奥に押し込んでしまうこともある。ときには、鼓膜を傷つけてしまったりするケースもあるため注意が必要だ。
 カサカサとした粉っぽい耳あかが出る子どもには、あらかじめワセリンやベビーオイルなどを綿棒に薄く塗っておけば、耳あかが付着しやすい。
 守本さんは「半年に1度、耳鼻科で耳掃除をしてもらうのもお勧め」という。「申し訳ない」「恥ずかしい」と受診をちゅうちょする母親もいるが、「耳掃除も我々の仕事の一つなので恥ずかしがることはない」と話す。乳幼児は中耳炎など、耳の病気にかかることも多い。耳の定期健診のつもりで地域のクリニックを利用するのもよさそうだ。

子ども服 襟首ひも禁止(2013年3月29日 読売新聞)

消費者も危険性認識を

 子ども服の安全性に関する日本工業規格(JIS)について、経済産業省の有識者委員会が、「7歳未満対象の服は襟首部分のひもを禁止する」などとした素案を取りまとめた。フードについても窒息の危険性があることを、参考として記した。消費者にも、安全性を考慮して商品選びをする意識が求められそうだ。

JIS規格素案/より安全に配慮

 まとまったのは、規格の基となる素案。子ども服のひもやフードが遊具などに引っかかって起きる窒息などの事故を防ぐため、学者や消費者団体、メーカー関係者らが昨秋から検討。EU(欧州連合)規格を参考にした。素案をもとに経産省は新年度、JIS原案作成委員会を設け、規格内容を確定させる。
 JISは法律に基づく国の公的な規格。経産省環境生活標準化推進室課長補佐の永田邦博さんは「強制力はないが、企業が、製品の製造や販売、輸入する際の共通指標になる。JISに適合した製品が取引において求められることが一般的だ」と話す。現在、子ども服について、規格の認証機関がないことなどから、企業は、JISマークをつけず、広告や店頭表示で適合していることをアピールすることになる見込み。
 素案によると、規制の適用範囲は13歳未満を対象とした子ども服で、和装やマフラー、靴などは含まれない。襟首部分のひもは、開口部のサイズ調節や、飾りのために付けられているが、窒息などの事故の要因になるとして、長さや形状を規制。特に7歳未満は禁止とする。上着やズボンの腰回りに付けられるひもも、衣類にたるみがない状態で製品から出ている長さを14センチ以下に制限する。
 衣料品の業界団体は2008年、子ども服を対象に「襟首部分に引きひもを採用しないことが望ましい」などとする自主指針を定めている。その一つ、関西ファッション連合の糸井弘一さんは、「企業には消費者の安全を担保する責任がある。今回はひもの規制なので、企業にとってコスト増につながりにくい。受け入れられるのでは」と話す。
 一方、フードについては、EU規格で規制対象になっておらず、JIS本文には当面盛り込まれない見込みだ。しかし、企業の留意事項を挙げる付属書に、窒息の危険性があることなどを指摘し、「フードのデザインには注意することが望ましい」と記した。公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の田近秀子さんは、「フードの危険性が認められた。前進だと思う」と歓迎する。
 有識者委員会では、消費者の責任についても意見が交わされた。安全に配慮した子ども服が普及するには、消費者が服の危険性を認識し、かわいらしさだけにとらわれず商品を購入する姿勢が求められる。委員長で産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター長の持丸正明さんは「企業だけでなく、製品を選ぶ側、使う側も、安全な社会になるように努めてほしい」と話す。(岡安大地)

日本工業規格(JIS)
 工業標準化法に基づく国家規格。工業製品の品質を統一し、安全性を確保することなどが目的。2012年3月末現在、電子機器や一般機械、化学などの分野で、1万289件が制定されている。

おやつ 時間と量考えて(2013年3月23日 読売新聞)

 子どものおやつは、食事だけでは足りないエネルギーや栄養を補えて気分転換も図れる。ただし、欲しがるだけおやつを与えると、食習慣を乱しかねないので、与える量や時間などに配慮したい。

運動量や体調に配慮

 大阪市の女性会社員(35)は、保育所に迎えに行った長女(2)に、チョコレートをねだられて悩むことが多い。「つい、与え過ぎてしまい、その結果、娘が夕食をあまり食べず、寝る前になると空腹を訴えるので困っています」
 日本小児保健協会が2010年に1~6歳児5097人の保護者を対象に行った調査によると、50%がおやつの時間を決めて与えていたが、「欲しがるときに(与えている)」保護者は23%、「特に気をつけていない」保護者も22%いた。
 こうした状況を受け、日本小児歯科学会や日本小児科学会などのメンバーで構成する「小児科と小児歯科の保健検討委員会」は昨年2月、「子どもの間食」に関する見解をまとめた。そこでは、糖分や油脂を多く含む菓子や甘味飲料の過剰な摂取が虫歯や偏食の原因になりかねないと指摘。委員で東京医科歯科大名誉教授の高木裕三さんは「3食規則正しくとることがおやつを与える大前提になります」と話す。
 与えるタイミングは、「3時のおやつ」というように昼食と夕食の間が適している。食べる量が少ない2歳以下の子は、午前と午後の2回に分けて与えてもいい。20~30分で済ませ、夕食後は与えないようにする。「朝食を食べられなくなり、生活のリズムも崩してしまうからです」と高木さん。
 では、おやつの適量とはどの程度なのだろう。もちろん個人差はあるが、検討委員会の見解によると、1日に必要なエネルギー量の10~15%が目安。1~2歳児で100~150キロ・カロリー、3歳児~就学前なら140~240キロ・カロリーになる。
 栄養士らでつくる大阪市の一般社団法人「健康栄養支援センター」の平尾千文さん(37)によると、カステラ1切れ(50グラム)が約160キロ・カロリー、シュークリーム1個(60グラム)が約150キロ・カロリー。「果物や乳製品を取り入れれば、栄養のバランスもとりやすい」とすすめる。市販の菓子との組み合わせの例を教えてもらった=表=。
 ただし、量はあくまでも目安。その日の運動量や体調に応じて加減する。外で遊んだか、家でゆっくりと過ごしたかなど、子どもの様子を見守っておくことが大切だ。
 食べ過ぎ、飲み過ぎにならないよう、菓子や清涼飲料水は袋や容器ごとではなく、皿やコップに分けて与える。食べ物がのどに詰まったり、アメについた棒でのどを突いたりしないように注意することも必要だ。
 平尾さんは、長男の晴ちゃん(3)とおやつを手作りすることもある。「準備や後片づけも子どもと一緒にすると、手伝いの習慣も身につけられます」。さまざまな工夫をして、親子で楽しい時間を過ごしたい。

★ 200キロ・カロリーを目安にしたおやつの組み合わせの例
(括弧内の数字の単位はキロ・カロリー)
幼児用ビスケット5個(100)、バナナ1本(100)、お茶か水
ポテトチップス1/3袋・20グラム(110)、りんご1/4個(25)、牛乳100ミリ・リットル(65)
幼児用野菜せんべい4枚・16グラム(70)、枝豆85グラム(115)、お茶か水

バランス注意…自転車3人乗り(2013年2月21日 読売新聞)

重心上がり転倒しやすく

 川崎市で今月、母親と2人の幼児が乗った自転車が転倒し、幼児1人が亡くなる事故が起きた。「3人乗り」は安全基準に合った自転車なら認められている。ただ、幼児を2人乗せると自転車はバランスを崩しやすい。安全運転のポイントを確認しておきたい。
 神奈川県警幸署によると3人乗り自転車の母親が、対向の自転車を避けようと速度を落とした際に転倒。投げ出された幼児がトラックにひかれた。
 3人乗りは、強度、安定性などの安全基準を満たした自転車に6歳未満の子どもを同乗させる場合に限り認められている。川崎のケースは、基準を満たした自転車だった。
 一般社団法人自転車協会業務部次長の大久保薫さんは、「安全基準に合った自転車でも、幼児を2人乗せると転倒しやすくなることを知ってほしい」と話す。
 3人乗りができる自転車は従来型より重く、最初は操作に違和感を感じる人もいるという。同協会は、まず安全な場所で練習することを勧める。座席に子どもと同程度の重さの荷物を置いて練習するといい。
 乗車するときは、スニーカーなど、かかとの低い靴をはく。2人のうち小さい子を前部座席に、大きい子を後部座席に乗せるのが原則だ。乗せるときは「後部→前部」の順番、降ろすときは「前部→後部」の順番で。この際、ハンドルが左右に動くと自転車が転倒しやすいので、動きを抑えるストッパーをかけておくことを忘れずに。幼児の頭に合ったヘルメットを選び、座席のベルトを必ず装着させる。1歳未満の子どもは乗せない。
 駐輪中、所有者が知らないうちに自転車が転倒し、荷台や座席が自転車からはずれやすくなっていることも。「乗車前に座席などにねじの緩みや亀裂がないか確認して」と、大久保さん。荷台の揺れが大きいときや、きしむ音がしたときは、すぐに乗車をやめ、自転車店で安全を確認したい。
 幼児を2人乗せると重心が上がり、転倒しやすい。大久保さんは「人をよけるなどで速度を落とさなければならない場合はふらつく前に自転車を止め、降りて押してください」と話す。

ITツール 子育てに活用(2013年1月27日 読売新聞)

パソコン見て「通話」、赤ちゃんあやすアプリ

 ITツールを子育てに活用する親らが増えてきた。子どもの様子をカメラで確認したり、学校で配布されたプリントを外出先のパソコンで読んだりして、仕事との両立もしやすくしている。
 東京都の会社員、小林誠さん(35)は、インターネット経由で互いの生の映像を見ながら無料で通話ができる「スカイプ」を使い、週末に埼玉県の両親と連絡をとっている。3歳の長男の成長の様子を見せ、会話もしてもらう。
 「昨年秋に次男が生まれたばかりで外出しづらいこともあり、助かっています」と話す。出張の際にも、ノートパソコンで自宅にいる子どもたちとスカイプで通話を楽しむ。「仕事の張り合いになっている」という。
 スカイプを利用するにはマイク付きのカメラが必要。パソコン向けのカメラは、数千円で販売されている。スマートフォン(スマホ=高機能携帯電話)なら内蔵されたカメラが使える。

 福岡市の宮原礼智さん(41)は、様々なデータをネット上に保存できる「エバーノート」というサービスを利用し、高校1年から小学4年まで3人の子どもたちに学校が配布したプリントを読んでいる。
 子どもたちは帰宅後すぐ、パソコンにつないだスキャナーにプリントを読み込ませる。デジタル保存されたプリントを、宮原さんは仕事の合間に職場にある自分のパソコンで読むことができる。
 「1日に受け取るプリントが3人合わせて10枚以上の日もあり、子どもから受け取りそびれたり、ほかの書類に紛れたりすることがなくなりました」。エバーノートは1か月に保存するデータ量が60メガ・バイトまでは無料で利用できる。
 父親向け育児情報誌「FQ JAPAN」の発行人、清水朋宏さんは、「読者の中にもITツールを使いこなす人が増えています」と指摘。最近は、カラフルな画像とともに、「ガラガラおもちゃ」の音が出て赤ちゃんをあやすスマホのアプリなども登場しており、「ますます便利になりそう」と話している。

肌の乾燥、早めに対処(2013年1月26日 読売新聞)

 空気が乾燥し、肌の手入れが気になる季節。子どもの肌は大人よりも敏感なため、保湿など、日々のスキンケアに気を配りたい。
 「娘の背中や腕が、粉を吹くぐらい、かさついてしまう」。京都市の女性会社員(43)はここ数年、冬になると小学4年の長女の肌トラブルに悩まされてきた。
 他の季節は特に問題がないが、この時期、長女が「夜、かゆくて眠れない」と訴えることもあるという。「保湿用のクリームを塗るといったん治まりますが、しばらくすると、またかゆがり始める。乾燥を防ぐコツがあればいいのですが」と話す。
 ユースキン製薬(川崎市)広報担当の高橋千明さんは「子どもの肌はスベスベと思うかもしれませんが、とても乾燥しやすい。子どもは自分で適切に対処できないので、大人の目配りが必要」と話す。
 同社によると、1歳頃から思春期前までの子どもは、刺激から肌を守る「角質層」の厚みが大人の3分の1~2分の1程度しかない。また、乾燥を防ぐために角質層を覆うなどの役割を担っている「皮脂」の分泌も少ないという。
 東京都立小児総合医療センターでアレルギー科部長を務める赤沢晃さんは「入浴時などに子どもの肌をよく見て、かさつきに気付いたら放置しないことです」と訴える。
 肌がかさついたり、白っぽくなっていたりするのは、皮脂が足りなくなっているサイン。皮膚の細胞と細胞の間にすき間ができ、そこに細菌やほこりなど、かゆみの原因となる刺激物が入り込みやすくなるという。
 「かゆみが我慢できなくなると、かいたりこすったりしてさらに皮膚が傷つく。悪循環に陥ります」。長引くと、アトピー性皮膚炎を発症するきっかけにもなるといい、早めに対処しておきたい。
 赤沢さんは、スキンケアの基本は、肌を清潔にすることと肌の水分、油分を補うことの2本柱だと強調する。
 入浴時は、湯が熱すぎるとかゆみを感じる場合があり、38~40度とややぬるめにするのが望ましい。せっけんは、添加物の少ない低刺激のものを選ぶ。固形でも液体でもいいが、少量をしっかり泡立ててから、体につける。
 洗う時も、タオルでこするのではなく、指の腹でもむように汚れを落とすといい。「洗髪で頭皮をマッサージするようなイメージ」と赤沢さん。せっけんが残らないよう十分すすぐことも大切だ。
 入浴後はこすらず、タオルで体を押さえるようにしてそっとふき取り、時間をおかずに、気になる部分に保湿ローションやクリーム、ワセリンなどを塗る。赤沢さんは「冬場に乾燥するのが気になるという程度なら、特別なものは必要ありません。ただ、肌に対してなるべく刺激の少ないものを選んでください」と話している。

子どもの肌を守るための注意点> (赤沢さんの話を基に作成)
・体を洗う時は、ナイロンタオルなどでゴシゴシこすらない
・せっけんなどの成分は添加物の少ないものを。「天然成分」とされる植物性のたんぱく質が、肌を刺激することもある
・下着やパジャマは肌触りのいいものを。背中のタグがこすれるようなら、切り取る
・食べこぼしを口の周りにつけていると、かゆみのもとになるので、すぐにふき取る

阪神大震災から18年 必需品備えわが子守る(2013年1月24日 読売新聞)

 阪神大震災から18年。当時、乳幼児を抱えて被災した母親は、ミルクやおむつの確保、避難所での夜泣きなどに悩まされた。一昨年の東日本大震災でも同じ苦労をした女性は多い。首都直下型地震や南海トラフ地震への備えの重要性が叫ばれる今、地震から赤ちゃんや幼い子どもをいかに守るのかを探った。

粉ミルク、おむつ…安否確認「家族の写真」

 「激しい揺れで身動きが取れず、必死で手を伸ばして娘の頭を覆いました」。神戸市北区の写真家、井上理絵さん(40)は、当時住んでいた兵庫県芦屋市の自宅で就寝中に阪神大震災に遭遇した。長い揺れの後、生後2か月の長女を見ると、頭のすぐ近くにテレビが落ちていた。
 家屋の倒壊は免れたが、電気、水道、ガスが止まった。中身が飛散した粉ミルクの缶の底から残りをかき集め、近所の酒店に水を分けてもらい、新聞紙を燃やして、鍋でミルクを温めた。布のおむつは母が川で洗ってくれた。
 夜泣きに気を使いながら、1か月の避難所生活。長女の首回りが肌荒れで出血し、1時間以上歩いて自衛隊の仮設風呂に通ったこともある。「子連れだからと親切にしてくれる人も多く、つらいばかりではなかったんですが。寝てる時も一緒じゃないと、わが子を守れないと痛感しました。予備のミルクなどの備えも足りなかった」と振り返る。

災害時のまとめ.jpg

 こうした体験を踏まえ、子連れでの防災を考える取り組みが各地で行われている。
 昨年12月、大阪市天王寺区で市女性協会が開いた「子育てファミリーのための防災講座」では、幼い子を持つ母親らを前に、講師の横浜市男女共同参画推進協会の常光明子さんが家具の転倒防止など、基本的な備えの重要性を強調。その後、参加者同士が「災害時に必要な物」について話し合った。
 懐中電灯や携帯ラジオなど、定番の防災グッズ以外に、紙おむつやお尻ふきも必需品に挙がる。「うちの子には、おしゃぶりが外せないなあ」との声も出た。
 常光さんは「自分たちの生活を見直して『何が必須なのか』を考える視点も必要。家族とも話し合って独自のリストを作ってみて」と話す。
 防災グッズは、袋にまとめる人もいるが、常光さんは「小さな子のいる家庭では、ポケットの多いベストに必需品を詰めておくといい」と勧める。羽織れば、移動時に両手が使えるからだ。
 大阪府豊中市などが市民に配布した「とよなか女性防災ノート」には、用意すべき品として「家族の写真」も紹介されている。ノートの作成に関わった「とよなか男女共同参画推進センター」の川畑真理子さんは「心の支えとしてだけでなく、はぐれた家族を捜すためにも使える」と説明する。
 川畑さんは、阪神大震災当時は兵庫県の女性問題カウンセラーとして様々な相談を受けた。その経験から言えるのは「力を借りられる人がいることが、何よりも心強い」ということ。日頃から近所付き合いがあれば、災害時にも手助けしてもらいやすい。「子どもがいるなら、周りに遠慮しすぎず、甘えることも大事」と訴える。(岡本久美子)

寝る時 着せ過ぎ注意(2012年12月7日 読売新聞)

 冷え込む冬の夜。子どもが布団からはみ出して寝ていると、風邪をひかないか心配になる親もいるだろう。布団や毛布を重ねて掛けてやるが、寝汗をかいて体を冷やしてしまうこともある。冬でも「温めすぎ」には気をつけたい。

重い布団や靴下 控えて

 大阪府堺市の主婦(35)は明け方、添い寝する1歳10か月の娘の寝相のひどさに驚くことが多い。「毛布をはねのけ、頭しか敷布団に乗っていない日も。体が冷えないか心配で安眠できない」と話す。母親仲間に薦められた腹巻きや「スリーパー」と呼ばれる全身を覆うベストのような寝間着も「着るのを嫌がります」。
 素材メーカーの東洋紡(大阪市)によると、体と衣服の隙間の温度・湿度で快適と感じる範囲は、成人で一般に31~33度、湿度が40~60%。体と寝具との隙間の適温の範囲は、それよりもやや高め、湿度はやや低めと推定される。
 幼児の場合はどうか。睡眠環境に詳しい東北福祉大感性福祉研究所(仙台市)特別研究員の水野一枝さんは「幼児は、代謝が活発で体温も高めなので、体と寝具との隙間の適温は成人の場合より低い可能性がある」と指摘する。
 水野さんが2007~09年に仙台市内の幼稚園児とその母親200組を対象に睡眠環境を調査したところ、寝室が一緒でも、子どもは季節を通じて母親よりも多く汗をかいていた。冬でも1割が汗をかき、全体の4割で布団を掛けずに寝ている時間があった。
 冬場に上から掛ける寝具については、約35%が「毛布、布団、羽毛布団」など3枚以上を使用。衣類もスリーパーや肌着の重ね着など、寝間着のほかに、3枚以上着込んだ子どもも約20%いた。
 「大人は自分の感覚で考えがち。冷え性な親ほど、子どもに厚着をさせやすい」と水野さん。「布団は子どもでもはねのけられるが、衣服は簡単に脱げない。着せ過ぎに注意し、布団や毛布も重くならないように気をつけてほしい」
 また、足は熱を逃がして体温を調節する役割がある。寝室が暖かく保たれていれば、寝る時に靴下を履かせるのは控えた方がいいという。
 寝汗は、蒸発する際に体を冷やす。発汗しやすい寝入りばなに頭や首筋に触れてみて、汗ばんでいたら軽く拭き、半袖をランニングに替えたり、肌着や寝間着の枚数を減らしたりする。「枚数の調節は衣服、寝具の順でしましょう」
 大阪小児科医会理事の福井聖子さんは、3人の子を育てた経験を踏まえ、「温度など客観的なデータにとらわれ過ぎず、その子に合った環境を整えたい」と呼びかける。
 「体をくすぐったり抱っこや手遊びをしたり、スキンシップを楽しみながら、唇や頬の色を見て、手や足が冷たくないか、汗ばんでいないかを触って確認してみてください。日頃から情報を得ておけば、的確に判断しやすくなります」
 なるべく外でも遊び、適度な寒さを体験することも大切だ。体温調節をつかさどる自律神経の発達を促し、スムーズな眠りにつながるという。「子どもは風邪をひきながら育っていく。体を冷やすことを過度に恐れないでください」と福井さんは話している。

冬の快眠のための留意点
・大人の感覚で暑さ寒さを判断すると、着せ過ぎになりがち
・子どもが汗をかいているようなら、衣類、寝具の順で見直す
・布団や毛布を何枚か使う時は、重くなり過ぎないようにする
・顔色をみたり、体に触れたりし、子どもの適温をみつける

(水野さん、福井さんへの取材を基に作成)

我が子守る 防災サイト(2012年11月27日 読売新聞)

 幼い子を持つ親を対象に、災害への備えを紹介するホームページ「ACTIVE防災 for Women」が開設された。
 このホームページは、東日本大震災で被災した母親への聞き取りをもとに、幼い子を持つ母親らで作る「ママプラグ」(川崎市)が作成。これまでも子育て支援グッズを開発したり、親子向けの防災講座を開いたりしている。
 ホームページでは「家庭の防災 基礎知識」「防災のコツ」など、役立つ情報を掲載。例えば、「小さな子どもと避難する、3つの心得」として「ベビーカーで避難しない」「歩ける子どもも基本は抱っこ」「避難中にはぐれることも想定」を挙げる。いずれも被災者の経験に基づいている。
 ほかに、「防災グッズ試してみました」というページもあり、100円ショップで購入したレインコートについて「用を足す際や着替えのときなど、いろいろな場面で使える」とメンバーの母親の感想を紹介。
 倒れそうな家具の場所などを記した自宅の間取り図を作り、家族で「防災会議」を開くことも促しており、一般的な解説本では触れる機会の少ない防災情報を入手することができる。

歩行器は目の届く所で(2012年11月9日 読売新聞)

 赤ちゃんに歩行器を使わせる家庭は今も多い。かつて流行したが、親がいっとき子どもから手を離せることから、根強い需要があるようだ。一方、転倒や転落などの事故も相次いでおり、専門家は「親がいる所で使い、長時間の利用は避けて」と呼びかけている。

人気再燃 事故相次ぐ

 歩行器は、歩き始めの赤ちゃんに使う車輪付きの育児用品。中で立たせて歩行を補助する。
 東京都練馬区の主婦(56)は9月から、近くに住む孫(1)のため、歩行器を3か月間レンタルした。孫はつかまり立ちを始めた生後8か月から自宅で使っており、祖母宅でも使えるようにしたという。「大人はちょっと赤ちゃんから手を離せる。娘も家事が忙しい時やトイレに行く時などに重宝しているようです。短期間しか使わないので、私の家ではレンタルにしました」
 保育ママとして乳幼児を預かる東京都内の女性(56)も、歩行器をしばしば使う。現在預かっている2歳児と9か月児2人を遊ばせる際、双方に危険がないよう、生後9か月の赤ちゃんを歩行器に入れるという。
 1歳前後の赤ちゃんは、つかまり立ちや伝え歩きをしながら歩く練習をするが、足元がおぼつかなく、転んだりぶつかったりして目が離せない。歩行器を使うことで親は少しの間、手を離すことができる。
 ベビー用品のレンタルを手がける愛育ベビー(埼玉県和光市)では毎月100台前後の貸し出しがあり、「5、6年前に比べて6割増」という。同じくレンタル業のホクソンベビー(同川口市)も、同じ頃に貸し出し依頼が急増し、品ぞろえを増やした。テーブル部分に知育玩具が付くなど、商品の印象が変わり人気が上がったという。
 歩行器は、1970年代に流行したが、長時間入れたままにすると歩いたり転んだりする練習が不十分になり、赤ちゃんの発達に支障を来すといった負の面が注目され、人気が薄れた。都内の育児用品メーカー担当者は「この10年から20年で、商品数も取扱量も減った」と言う。ただ、割安で不要になったら返却できるレンタルは、根強い需要があるようだ。
 歩行器による転落・転倒事故も相次いでいる。
 消費者庁は10月、子育て中の親などに配信する「子ども安全メール」で、歩行器の事故について注意を促した。2010年12月~12年9月に、玄関の段差から落ちる、階段から落ちるなどして顔や頭の打撲、挫傷、擦過傷を負うなど、医療機関を通じて16件の事故情報が寄せられたという。頭部を骨折した事例も3件あった。
 こどもの城小児保健クリニック医師の村田光範さんは「1人で子育てしなければならない親が多く、歩行器の使用も仕方がない」としつつも、「歩行器に入ると下半身が固定された状態になり、転倒・転落すれば頭から落ちてしまい、非常に危険。大人の目が届く範囲で使用して」とアドバイスしている。

★ 歩行器の使用のポイント
・大人の目が届く範囲で、一緒に遊ぶ道具として使う
・しっかりお座りができるようになってから使う
・長時間入れたままにしない
・歩くのが上手になったら卒業する

(こどもの城小児保健部保健師の宮沢純子さんと村田光範医師のアドバイスから)

乳幼児 歯ブラシ事故増加(2012年11月7日 読売新聞)

 乳幼児が歯磨き中に転倒するなどし、歯ブラシで口の中をケガする事故が増えている。歯ブラシの危険性に対する認識が保護者に薄いことに加え、子どもが居間や寝室でも歯磨きするようになったことも事故発生の背景にあるようだ。

くわえ歩いて転倒 口をケガ

 喉を突いてケガをしないよう安全プレートをセットできる乳児用歯ブラシも販売されている
 今年1月、歯磨き中に歯ブラシをくわえたままソファから転落した男児(4)が東京の医療機関に運び込まれた。居間にあるソファのひじ掛け部分(高さ約50センチ)に立って歯ブラシをくわえていたところ、床に落ちたらしい。口の中に刺さった歯ブラシを母親が引き抜いたが、途中で折れていて先端が見つからない。頭部の精密検査で喉の奥にプラスチックの柄の先端部分(約2・5センチ)が刺さっているのが見つかり、摘出手術を受けた。
 2月にも、男児(1)が右頬内側に歯ブラシを突き刺して口内の皮膚が破れ、病院で縫合手術を受けた。歯ブラシをくわえたまま、夕食の後片付けをしていた母親の背中に勢いよく抱きついたという。
 いずれのケースも命に別条はなかったが、日本小児科学会「こどもの生活環境改善委員会」は今年9月、こうした歯磨き中の歯ブラシ事故が相次いでいるとして学会誌で事例を紹介して警鐘を鳴らした。

 実際、子どもが歯磨き中に歯ブラシでケガをする事故は増えている。消費者庁などが全国13の医療機関から消費生活上の事故情報を収集する「医療機関ネットワーク」によると、子ども(1~6歳)が歯磨き中に歯ブラシでケガをして病院へ運ばれた事故は、2010年に1件だったが11年に15件、12年は9月までで17件と急増。東京消防庁の調査でも、07~11年の5年間で229人(0~5歳)が歯ブラシの事故で救急搬送された。

 明海大学歯学部教授(口腔小児科学)の渡部茂さんによると、子どもは立って歩きまわるようになる1歳前後から、行動が活発になる3歳前後の間に、転倒による歯の外傷事故が増える。「歯ブラシに鋭利な部分がないため、危険性を認識していない保護者が多い。しかし、くわえたまま全身の体重が加われば簡単に刺さって脳に達する危険もある」と渡部さんは注意を促す。
 こうした事故が起きる背景には、子どもの歯磨き習慣の変化もあるようだ。渡部さんは「子どもが歯磨きをする際、親が仕上げ磨きをしてやることが習慣化して、洗面所以外で歯磨きをすることが当たり前になっている」と指摘する。
 「歯ブラシ事故はまれなことではなく、身近に起きることを知ってほしい。その上で、洗面所から移動して磨く時は周囲の大人が十分に注意し、歯ブラシをくわえたまま歩き回ることは絶対にやめさせましょう」と話している。

折れていたら破片確認して

 万が一、子どもが歯ブラシを口に入れたまま転んだ場合は、どんなことに気をつけたらいいのか。渡部さんは、まず口の中のケガの状態を確認した上で
〈1〉歯ブラシが元の形状のままかどうか確かめる
〈2〉折れていた場合、破片をのみ込んだのか、周囲に落ちているのか調べる
〈3〉破片が見つからなければすぐに病院へ連れて行く――ことなどを勧める。

■ 白玉や団子 子どもに注意、窒息事故相次ぐ(2012年9月5日 読売新聞)

 1~2歳の子どもが白玉を喉に詰まらせて死亡する事故が、今年に入って東京都、栃木県内の保育所で相次いだ。食品の窒息事故については家庭でも注意が必要だ。専門家は「子どもの発達に合わせて、細かく切るなどの工夫を」とアドバイスしている。
小さく切って/「よくかむ」促そう

ハイムリッヒ返報.jpg

 今年7月、栃木県栃木市の保育所で2歳の園児が白玉を喉に詰まらせ、約1か月後に死亡する事故があった。同市は保育所の献立の見直しをしているという。また東京都あきる野市の保育所でも今年2月に白玉を詰まらせて1歳児が死亡しており、8月になって東京都に報告があった。
 窒息事故に詳しい昭和大歯学部教授の向井美恵さんは、「1、2歳は好奇心も旺盛で、手づかみして食べたい頃。ただ、奥歯はまだ生え始め。かみ合わせが不十分なので、団子などは丸のみする恐れがある」と指摘する。
 このため、餅や白玉、ナッツ類、かみ切りにくいキノコ類などは、奥歯の生えそろう3歳をめどに与え始める方がいいという。コンニャク入りゼリーやミニトマト、ウズラの卵、ブドウなども、ふとした拍子にのみ込んでしまう恐れがある。6、7歳頃の前歯が生え替わる時期も、うまくかみちぎることができないため、気をつけたい。
 こどもの城(東京)小児保健部の管理栄養士、太田百合子さんは、「かむ力やかみ方には個人差があります。年齢だけで判断せず、食事のときの口の動きをよく見てみましょう」とアドバイスする。
 「3歳以降でも、調理に工夫をし、しっかり見守りながら、様々な食事を体験させてほしい。危ないから食べさせない、ということでは食の幅は広がりません」と話す。
 秋のお月見団子など、白玉は行事食として楽しむことも多いもの。白玉を手作りする場合は、水の代わりに豆腐を加えるアイデアを紹介する。粘りが少なく、歯切れが良くなるという。また、丸ごとのみ込んで喉に詰まりそうな一口サイズの食べ物は、細長く切る、小さく切るなどの配慮をする。
 横浜市の小児科医、山中龍宏さんは、「食事の際の行儀も大事。寝ころんだり、食べ物を放り投げて口に入れたりしないように大人が見守り、きちんと座って、よくかんで食べるよう促そう」と話す。
 東京消防庁によると、2007~11年に、食べ物を詰まらせたり異物を誤飲したりして救急搬送された0~5歳児は計5739人。食品を詰まらせたケースが最も多く857人だった。
 日本赤十字社東京都支部によると、万一、食品が喉に詰まったときは、まずせきをさせてみる。出てこなければ119番通報するとともに、子どもの背中をたたくなどして、詰まっているものをはき出させる=イラスト=。例えば、乳児の場合は、赤ちゃんのあごを片手で押さえながら、腕に赤ちゃんのおなかを乗せるようにして支え、もう一方の手で背中をたたく。幼児の場合は、ももに子どもを乗せて頭を低くし、背中をたたく方法などがある。(小坂佳子、内田淑子)

ベビーカー 実力主義(2012年8月22日 読売新聞)

振動吸収、遮熱、ブレーキ

 赤ちゃん連れでも外出を楽しみたいというご夫婦に、機能性を重視したベビーカーを紹介しよう。赤ちゃんの大切な頭部を守ったり、階段や坂道にも強かったりと、かなりの実力派ぞろいだ。
 育児工学が専門という東京未来大の小谷博子准教授は「ベビーカーを使って街に出よう」と勧める。家にこもらないで、ベビーカーで赤ちゃんを連れて外出すれば、お母さんも気分転換になり、「産後うつ」の対策にもなるそうだ。
 ただ、赤ちゃんの脳は衝撃や揺れに弱い。体温の調節機能も未発達なので、小谷さんは「安心して出かけるには、赤ちゃんをしっかり守るベビーカーを選ぶ必要がある」と指摘する。

卵が割れない

高機能ベビーカー.jpg

 最近は機能性が高く、首が据わる前の乳児でも安心して連れて歩ける商品も増えた。
 コンビは8月下旬、赤ちゃんの頭を移動時の振動から守る工夫を凝らした「コンビ ホワイトレーベル メチャカルファーストα
エッグショックBB―400」を発売する。
 側面に空気室を設けたタイヤと、卵を上から落としても割れないほどの振動吸収素材を採用して、赤ちゃんを振動から守るという。重量4・8キロ・グラムと軽量なので、坂や階段の多い場所で重宝しそうだ。

夏場に助かる

 アップリカが9月に発売する「ソラリア プレミアム」は、地面からシートまでの高さが50センチある。一般のベビーカーより高いので、夏場の路面の熱やホコリを避けられる。
 アップリカブランドを製造・販売する「アップリカ・チルドレンズプロダクツ」の実験では、気温が38・1度の時、地面からシートまでの高さが38センチの一般的なベビーカーと比べ、シートの部分の温度が約2度低くなったという。

リクライニング

 マクラーレンの「クエスト スポーツ」も夏の強い日差しを遮り、熱気を逃がす「メッシュウインドウ付き3Dフード」が付いている。シートの下にある買い物かごの底面には、地面からの放射熱を反射する素材も貼ってある。
 片手でシートのリクライニングを四つのポジションに調節できる。さらにシートやフードには水や油、汚れを防ぐ加工がされており、手入れも簡単だ。

イクメンの声

 「エアバギー ココ ブレーキモデル」は、「2010年度グッドデザイン賞」に選ばれた3輪ベビーカー「エアバギー ココ」に、ブレーキを付けて安全性を高めたモデルだ。安全や機能を重視する「イクメン」パパのリクエストが多かったためという。
 3輪構造とエアタイヤの採用で押し心地は軽く、狭い道路や人混みの中でもストレスが少なく使えそうだ。(経済部 伊藤剛)

赤ちゃんと外食楽しもう(2012年8月17日 読売新聞)

 子育てに追われる親にとって、外食はよい気分転換となる。子どもも楽しめて、周りにも迷惑をかけないよう、子どもの成長に合わせた工夫をしたい。
 東京都江東区のカフェで、毎月開かれているイベント「赤ちゃんとランチ」。先月19日には、1歳未満の子を連れた13人の母親が集まった。
 食事が始まると、主催する「赤ちゃんとの暮らし研究会」(東京)代表の渡辺玲子さんがテーブルの間を回って、母親たちに「おんぶすれば、赤ちゃんが落ち着き、お母さんも座って食事ができますよ」とアドバイス。5か月の長男を連れて参加した母親(29)は「息子が泣くのが心配で、外食する気になりませんでしたが、次はママ友とのランチに挑戦したい」と話していた。
 保健師として新生児訪問をしてきた渡辺さんは、産後間もない母親が、近所づきあいもなく孤立した状態で子育てをしている様子を心配し、2年前、この活動を始めた。「赤ちゃん連れで外食することで、いい気分転換になります」と話す。
 乳幼児連れで外食する場合、雰囲気を知っている店を選ぶよう渡辺さんは勧める。ベビーカーで入れる店か、幼い子どもでもOKかなど事前に情報を集めておくとよい。
 飲食店情報サイトを運営する「ぐるなび」(東京)は、ファミリー向けサイト「ベビなび」で、「お子様連れ歓迎」の全国の飲食店を紹介している。子ども用のメニューやイス、個室の有無などの条件から検索できるので便利だ。
 「子どもがぐずったら外に出てあやしたり、ビジネスマンのランチタイムを避けたりするなど、周りの人への配慮は必要。授乳する際は布などで隠して」と渡辺さんは助言する。
 さらに、外食に出る前に、ゆっくりスキンシップを取るなどして、子どもの欲求を満たしておくと、店ではおとなしくしていてくれることも。「外出直前に着替えやメークでバタバタするのではなく、前日やその日朝からしっかりスケジュールを考えて行動しましょう」
 外食は大人が楽しいだけでなく乳幼児にも良い影響を与える。子どもの食事に関する相談に応じる国立総合児童センター「こどもの城」の管理栄養士、太田百合子さんは「大人が楽しく食べている姿を見て、子どもは食べる楽しさを知ります」と話す。家では、食べなかったりぐずったりする子が、外食ではよく食べたり、おとなしかったりするケースもよくあるという。
 言い聞かせても、じっとしていることができない1~2歳の子がいる場合は、子連れが多いファミリーレストランやフードコートなどを選べばいい。「食事中、子どもを叱り続けなくても済みそうな店を選ぶのもコツ。外食は楽しいものだと感じさせてあげてください」
 また、最近は居酒屋などでも子連れ歓迎を掲げる店があるが、「夜の外食は、子どもの生活習慣を崩さないように気を付けて」と太田さんは話す。

★ 乳幼児連れの外食のコツ
【~8か月ごろ】母乳やミルクをあげられるよう準備しておく
【9か月以降】離乳食が1日3食になっていれば、一緒に食べる。うどん、茶わん蒸し、パン、温野菜などは親の食事を取り分けてもいい。味が濃いものは水や湯で薄めてあげる
【1~2歳】じっとしていられないので、周囲に気兼ねしなくてもいい店を選ぶ
【3歳以降】社会性が出てくるので、「食事中、大声を出したら恥ずかしいよね」などと言い聞かせながら楽しく食事をする
(渡辺さん、太田さんの話をもとに作成)

(2012年8月17日 読売新聞)

■ 教え方1つで乳児の語彙が豊富に(2013/07/11 提供元:Healthday News)

 言葉を覚え始めた赤ん坊の語彙を増やすには、絶えず話しかけることも大切かもしれないが、もう一つ重大な要素があることが新たな研究で示された。それは、子どもが単語の意味を把握できるように非言語的な手かがりを与えることだという。研究グループは、「言い換えれば、単に話しかけるだけでなく、単語とそれを用いる場面を関連付けることが不可欠である」としている。
 研究共著者の1人である米ペンシルベニア大学教授のLila Gleitman氏によると、学歴や語彙力にかかわらず、誰でもこの方法を用いて乳児に言葉を教えることができるという。「今、その場にあるものについて子どもに話をするよう努めていれば、子どもが単語の意味を学ぶうえで大きな効果がある」と同氏は述べ、語彙力が優れていると学業面や生活面でもうまくいくことが多いと指摘している。
 問題となるのは、単語や文法が通じない乳児期に、ヒトがどのように言語を身につけるのかということだ。最初は、親が「ネコ」「スプーン」など、物体とその名前を対にして教える必要があると、Gleitman氏は説明する。しかし、米イサカ大学(ニューヨーク)助教授のSkott Freedman氏によると、単にものを指差して単語を言えばよいわけではないという。例えば、空を指して「飛行機」と言っても、子どもにはそれが飛行機なのか、雲なのか、鳥なのかわからない。ここが親の腕のみせどころだという。
 今回の研究では、50人の親が乳児に話しかける場面を映したビデオを、ミュート(消音)状態で大学生218人に見せ、親が使っている単語を推測してもらった。これは、親が話しながら対象物を指差すなど、非言語的な背景を提示していれば、学生は多くの単語を見抜くことができるという理論に基づいている。3年が経過した後、小児(研究開始時点で生後14~18カ月)の語彙を分析した結果、学生が多くの単語を判読できた親の子は語彙が豊富であることがわかった。この傾向に、親の学歴や収入による影響はみられず、親の語彙力は無関係であることが示唆される。
 この結果から、「子どもにどれだけ話しかけるかではなく、どのように話しかけるかが重要であることがわかる」と、Freeman氏は述べている。Gleitman氏は、子どもに話しかけるときは対象物に注目させ、「見て、イチゴだよ。今食べているのは豆だね。小さなかわいい豆だね」というように話すのがよいと助言し、この簡単な方法が大きな違いをもたらすとしている。今回の研究は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」オンライン版に6月24日掲載された。

<院長のつぶやき>
 ジェスチャーゲームをするつもりでやると、よいかもしれません。

■ 乳児への固形食いつ始める? 早くても遅くても1型糖尿病2~3倍に[2013年7月9日]

米DAISY研究で判明

 米コロラド州立大学のBrittni Frederiksen氏らは,遺伝子型や家族歴など1型糖尿病発症の遺伝的リスクを持つ小児を対象としたDiabetes Autoimmunity Study in the Young(DAISY)研究の参加者を分析し,1型糖尿病の発症リスクは,乳児期における固形食(離乳食,原文はsolid foods)の開始が早い場合約2倍,遅ければ約3倍に上昇することを突き止めた。JAMA Pediatr 2013年7月8日オンライン版で公表された。

遺伝的高リスク児を追跡,電話で食事内容を調査

 1型糖尿病は特に5歳未満の発症が増加しており,出産形態,出生体重,母親の年齢,新生児黄疸など,周産期の因子が関与する。一方,幼少期の食物について盛んに研究が行われているが,固形食の開始時期が影響を与えるかどうかについては報告内容が一致していない。
 DAISYは,1994〜2006年にコロラド州デンバーで行われた前向き観察研究で,1型糖尿病の遺伝的リスクを持つ2つのグループを追跡。1つ目のグループは,デンバー市内の病院で実施したヒト白血球抗原(HLA)検査で糖尿病発症リスクの高いHLA遺伝子型が同定された小児,2つ目のグループは,デンバー都市圏の中で1型糖尿病患者の父,母あるいは兄弟を持つ小児。3,6,9,12,15カ月に電話で食事内容の調査を行った。
 追跡中に1,835人中53人が1型糖尿病を発症した。発症者は非発症者に比べてHLA-DR3/4,DQB1*0302の遺伝子型を持つ割合,父親,兄弟が1型糖尿病に罹患している割合が有意に高かった。困難な経腟分娩(骨盤位分娩,鉗子分娩,吸引分娩など)は,そうでない経腟分娩と比べて,1型糖尿病の発症リスクが高かった(ハザード比1.93,95%CI 1.03~3.61)。出生体重,9カ月と2歳時の体重,妊娠中の喫煙,出生の季節と1型糖尿病の間に関連はなかった。

早めの果物,遅めの米・オート麦で顕著なリスク上昇

 固形食開始が月齢4カ月未満(早期群)と6カ月以上(遅延群)の場合について,4~5カ月(対照群)と比較したところ,HLA-DR,1型糖尿病家族歴,母親の教育,出産形態で調整後の1型糖尿病発症のハザード比(HR)は,早期群1.91(95%CI 1.04~3.51),遅延群3.02(同1.26~7.24)となり,それぞれが有意なリスク上昇を示した。
 食品別に見ると,果物(果物ジュースを除く)の早期開始はHR 2.23(95%CI 1.14~4.39),米・オート麦の遅延開始はHR 2.88(同1.36~6.11)で,リスク上昇は顕著だった。これに対し,果物の遅延開始,米・オート麦の早期開始については有意なリスク上昇はなかった。小麦・大麦や野菜,肉の開始時期と1型糖尿病リスクの間に有意な関連はなかった。
 一方,小麦・大麦開始時に母乳を継続していた場合,母乳をやめていた場合と比べた1型糖尿病発症のHRは0.47(同0.26~0.86)と,大きく低下した。

固形物の導入は4~5カ月が安全

 固形食導入で最も一般的に用いられる食品である米・オート麦を6カ月以降に開始した母親は,より年齢が高く,高学歴で,1型糖尿病の罹患が多く,母乳育児をより長く続ける傾向があった。なお,遅延群の42%(71人)は,6歳の誕生日に開始しており,この71人を遅延群から除外し,4~5カ月の対照群に含めて再解析したところ,遅延群のHRは4.28(95%CI 1.90~9.66)とさらに上昇した。
 これらの結果からFrederiksen氏らは,1型糖尿病予防の観点から「固形物の導入は4~5カ月くらいが安全であり,新しい食物を取り入れる際,母乳を継続していることが予防につながる」と結論。この時期は,米小児科学会(AAP)の固形食開始の推奨と一致する。最近,AAPの母乳育児部会が6カ月間,母乳だけの育児を再主張していることについては「どちらが良い方法なのか混乱を招く可能性がある」と指摘している。
 固形食の開始時期が1型糖尿病を引き起こす理由については,早期開始では未発達の腸免疫システムにおける食物への異常反応などが考えられ,遅延開始では初回に多く摂取させてしまったり,母乳だけでエネルギーを補えず,栄養不足が起きていたりすることが影響しているのではないかと考察している。

■ 宋美玄のママライフ実況中継(2011年11月〜読売新聞)

宋 美玄> (そん・みひょん) プロフィール
  産婦人科医、性科学者。1976年、神戸市生まれ。
 2001年、大阪大学医学部卒。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院(胎児超音波部門)留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。
 主な著書に、「産科女医からの大切なお願い 妊娠・出産の心得11カ条」(無双舎)、「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)、「幸せな恋愛のためのSEXノート」(ポプラ社)、「ずっとずっと愛し合いたい セックスしつづける男と女のルール」(幻冬舎)。

公式サイト。 公式モバイルサイト「女医 宋美玄の相談室」も展開中。

そろそろ臨月の産婦人科医です

 はじめまして。産婦人科医になって10年目の宋美玄と申します。この度ヨミドクターで記事を書かせていただくことになりました。
 私の名前を見たことのある方の中には「ああ、あのセックスについて雑誌やテレビで語っている女医さんね」と思う方が多いと思うのですが、実際の臨床医の仕事内容は99%、一般産婦人科医です。その中でも専門は周産期、つまり産科です。
 そんな産科女医の私は35歳にして妊娠し、現在は臨月も間近という状態です。何千という妊婦さんやお産を見てきましたが、自分で経験するのは初めて。普通の初産婦さんに比べて知識だけは沢山ある「知りすぎた女」である私が、実際の自分のマタニティライフを実況中継しつつ、妊娠出産について語っていきます。

知りすぎた女が35歳で初妊娠

 35歳以上の高齢出産は、このご時世珍しいものではありませんが、同時にリスクについてもいろいろ叫ばれています。私は25歳で産婦人科医になりましたから、そのリスクについては充分知っていました。自分の人生において子供を持ちたいなと考えてきましたし、医学的には早い方がいいからそうしたいとも思っていました。
 ところが、思い通りにいかないのが人生というもの。産婦人科の研修医生活は多忙で、お産の何たるかを学ぶには昼間だけ働いても身に付きません。労働だけではなく研修としても高頻度の夜間勤務をこなさなくてはいけませんでした。専門医を取得し研修医を卒業したのは30歳。その頃からようやく「自分は医師として、個人として、何がしたいのか」を考える余裕が出てきました。
 世界中の大自然を旅してカメラに収めたい! ロンドンに留学もしたい!
 勤務医として社会生活を送りつつ、時間を作って自分のオンとオフを充実させようと思うと、時間はあっという間に過ぎてしまいます。それでも「いつかは子供が欲しい、そしてそれはそんなに遠い未来であってはいけない」ということは常に心の中にありました。

誰の子を産むか

 女性にとって「子供を産むか産まないか」という命題の次に来るのは「誰の子供を産むか」ということだと思います。私は産婦人科医の臨床経験から、出産は命がけの大仕事だということや、心身ともに健康な子供が授かるとは全く限らないということをよく理解していました。しかも、先に母親になった妹たちや友人たちを見て、子育てが楽なものでも思い通りになるものでもないということも知っていました。
 ですから、普段から女性に向けて「この男性の子供を産むためなら死んでもいい、と思えるような男性の子供しか妊娠してはいけません」と啓蒙してきました。妊娠・出産・子育てはそれだけ覚悟のいることだと思うからです。
 自分自身においても、「誰の子を産むか」ということは大きな問題であったと思います。後戻りは出来ませんからね。とても幸いなことに「この男性の子供が欲しい。一緒に育てていきたい」と思える男性に出会うことができました。今までにたった一人ですが、一人で必要十分ですよね。人並み程度の紆余曲折はありつつですが。夫と私の二人の子供を前向きに望むことが出来て、とても嬉しいです。
 というわけで、のんびりしているつもりはなかったのに、35歳での妊娠となってしまいました。本当に月日が経つのはあっと言う間です。
 高齢出産のリスクはいろいろ言われていますが、その一番の関門は「妊娠できるかどうか」というところだと思います。次回は妊娠成立までの道のりについてお話しようと思います。

妊娠までの道のり

 みなさんこんにちは。現在、妊娠35週、間もなく妊娠10か月に突入するマル高妊婦の産婦人科医・宋美玄です。
 妊娠9か月に入ったころから、妊娠を表す「身重」という言葉の意味を実感しています。本当に身軽の反対で、何をするのもトロトロとしてしまいます。幸い実家に里帰りしてきて、上げ膳据え膳生活を送っているので、トロくても差し支えないのですが。

最大の難関は「妊娠できるか」

 さて、35歳で初妊娠をした私ですが、高齢出産の最大の難関は「妊娠できるかどうか」だと思います。よく、「妊娠出来る体かどうか診てください」と婦人科を受診される方がいらっしゃいます。ですが、排卵しているか、子宮筋腫など婦人科疾患がないか、卵管が閉塞していないか、などは検査可能でも、妊娠できるかどうかは妊娠するまで分からないのが現実です。なので、「自分が子供を授かれるかどうか早くトライしたい」と思っていました。
 諸々の事情でトライできない間も、できることはしていました。当分は無理だと思っていた頃は、無駄に排卵しないよう低用量ピルを飲んでいました。ピルをやめた後は、排卵しているかどうか同僚の女医さんに超音波で時々見てもらい、子宮頚癌検診とクラミジア検査を受けていました。
 34歳の時には、子宮卵管造影検査※ を受けました。不妊歴もないのに普通はそこまでしないのですが、「この先、子作りを始めてみたもののなかなか出来なかった場合、その時点で検査して卵管が閉塞していたら、時間を無駄にすることになる」と思って、同僚の女医さんにやってもらいました。恵まれた職場だと思います。
 それだけビビッていろいろ検査をしていた割に、子作りをトライしてからは、幸いすぐに妊娠したのですが、忙しい生活の中でタイミングが合ったのはまさに「惑星直列」と言えます。
 それでもやはり、欲しいなと思ってトライし始めてから月経が来たときには、がっかりしていましたね。不妊治療中の患者さんの気持ちが少し分かりました。月経を「いや、もしかしたら着床出血かも」と思って、念のため市販の妊娠反応薬で検査して、やっぱり陰性で落ち込むという。

結構、干渉してきますね

 それにしても世間の人たちは、子供を作る・作らない、というプライベートかつデリケートな問題に関して、結構、干渉してきますね。私は産婦人科医として客観的に、妊娠や出産についての知識をブログなどを通じて啓蒙してきたのですが、時々「先生は子供作らなくていいんですか?」とか「産んだことのない人が言っても説得力がない」などと言われることがあり、ちょっと脱力させられました。
 子供のいない人が、子供を欲しくないのか欲しいけどまだ授かっていないのかは分からないし、気軽に踏み込んでいいことだとは思いません。そして、産んだ経験があれば妊娠出産についてすべてが分かるというものでもありませんし。
 また、「子供を産んでこそ女は一人前よ」とか「子供って可愛いわよ、これこそが幸せよ」などと価値観を押し付けられることも珍しくありません。多くの女性たちと「ほんと、放っておいてほしいよね」と共感し合ってきたので、子供を持つ立場になってからもそういった妊娠する前の気持ちを忘れたくないと思い、ここに記しておきます。

 と言う訳で、非常にラッキーなことに望んで妊娠することが出来ました。臨月も迫り、腰痛、坐骨神経痛、こむら返り、頻尿、腹圧性尿失禁、胃の圧迫感など数々のマイナートラブルに悩まされていますが、「好きで妊娠したんだから」と頑張って耐えています。10年早く妊娠したら、もっと楽だったのかなあと思いながら・・・

 ※ 子宮卵管造影検査 卵管が詰まっていないか確認するため、子宮から卵管に向けて造影剤を流し、管の通りをレントゲンで見る検査。

8人に1人、に入ってしまいました …妊娠糖尿病の闘病記

 みなさんこんにちは。街を歩くとあちこちからクリスマスソングが聞こえてきますね。私はとうとう臨月に入り、ますます動きがもたもたしてきました。
 お腹も見事なくらいに大きくなってきたので、「産まれる前に、このお腹をカメラに収めておこう」と思い、鏡の前でべろんと服をめくると、お腹にはいくつもの青タンが…。
 これは決してDVに遭っているのではありません。実は、妊娠糖尿病と診断され、血糖値をコントロールするために毎食前にインシュリンを自分でお腹に打っているのです。

妊娠糖尿病とは

 妊娠糖尿病という病気の名前を聞きなれない方が多いかも知れませんが、昨年、診断基準が改定されて厳しくなり、全妊婦の12%が妊娠糖尿病に該当すると言われています。つまり8人に1人の割合です(施設によってスクリーニングの方法にばらつきがあり、診断されていない「隠れ妊娠糖尿病」は結構いると思われます)。
 なぜ、そのような病気になるかと言いますと、妊婦は胎児に優先的にブドウ糖を送るために胎盤からhPL(ヒト胎盤性ラクトゲン)というホルモンが出て、母体の糖の代謝が悪くなります。その中で、基準を超えて血糖値が高い人は妊娠糖尿病と診断されるというわけです。
 血糖値が高い状態が続くと、赤ちゃんが大きくなりすぎたり、羊水が増えすぎたりして、早産や難産のリスクが増すだけでなく、お腹の中で赤ちゃんが低酸素の状態になることもあるため、診断されると血糖値をコントロールする必要があります。

お腹に青タンのわけ

 私の場合は、妊娠7か月の時にGCT(グルコースチャレンジテスト)というスクリーニング検査を受けました。それでひっかかったため、今度はOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)という精密検査を受け、妊娠糖尿病と診断されて大学病院を紹介されました。
 そして、食事指導を受け、食前と食後2時間の血糖値を自分で測定していたのですが、妊娠9か月に入ってから食後の血糖値が上がってきたのでインスリンを導入しました。なので、毎日、手の指に針を刺して血を絞っては血糖値を測り、毎食前にお腹に針を刺してインスリンを打っています。
 最近の医療機器の進歩は目覚ましく、針がとても細くなっているので、当たり所によっては痛みを感じますが、基本的にあまり痛くはありません。でも、お腹が大きくなって下腹部がよく見えないので、時々血管に当ててしまうようで、青タンがいくつか出来ています。
 幸い、今のところ赤ちゃんの発育は平均よりは大きめですが標準範囲内で、週に2回行っている胎児心拍モニターでも、毎回元気ピチピチです。糖尿病内科の先生と相談しながらインスリンを打っているので、血糖値のコントロールも良好です。通っている大学病院の産婦人科の管理はおそらく日本一厳しいのですが、赤ちゃんに少しでもいい子宮内環境を提供するべく頑張っています。

赤ちゃんのためカロリー摂取

 決して珍しくないはずの妊娠糖尿病ですが、正しい理解が広まっているとは言えないなあと実感しています。
 「妊娠糖尿病の原因は食べ過ぎや不摂生である」「妊娠糖尿病になったらご飯を減らさなくてはいけない」と思っている人が多いのですが、必ずしもそうではありません。
 私も、周囲から「食べ過ぎのせいでしょ」「美味しいものが好きだから」と生活習慣のせいにされ、食事療法の一環でパンを食べていると「食べちゃだめだよ!」と言われる始末。(しかも、これ全部、専門家のはずの産婦人科医と助産師に言われたもの!!)
 確かに肥満はリスク因子ですが、私はもともと痩せ型の体型で、妊娠してからも体重が思うように増えず、正常下限を下回っているので(それはそれでだめなのですが)、少なくとも「食べ過ぎ」であろうはずがないのです。
 私には母方の祖父が2型糖尿病だったという家族歴があり、医学生のころから糖負荷試験で軽い耐糖能異常が見られていたので、遺伝的・体質的に「妊娠したら妊娠糖尿病になるだろうな」と分かっていたのです。そこに更なるリスク因子「高齢出産」というのが加わって、「やっぱり」という感じで発症してしまったのであります。
 妊娠糖尿病と普通の糖尿病の違いは赤ちゃんがお腹にいること。赤ちゃんが飢えたりしないように、ある程度のカロリーは摂取しなければいけません。私の場合は1日約1900キロカロリー。毎日インスリンを打って、頑張って食べています。私は普段から「美味しいもの大好き」キャラで通っているので、みんな「食べちゃだめ!」ってからかうのが楽しいんだろうなあと思いながら。

参考:日本糖尿病・妊娠学会のホームページのQ&Aコーナーはこちら

妊娠して分かることって?

 師走も半ばを過ぎ、一年で一番慌ただしい季節ですね。そんな中、妊娠37週で曜日感覚もなくすごしている私は、なんだか世間から切り離されているようです。世界一、歩くのが早い街と言われている大阪をのたのた歩いていると、厚着で後ろ姿では妊婦とは分かってもらえず、後ろから「チッ」っという感じで大勢の人に追い越されていくので、ますます寂しくなります。

「経験すると全然違う」のでしょうか

 この数日で寝ている間にお腹が張って目が覚めたり、ちょっと動くだけで息切れがしたり、胸が苦しくなったりするようになってきました。
 そんなことも一つ一つ私にとっては初めての体験なのですが、妊娠してからよく聞かれることがあります。「色んな妊婦さんを診てきたと思うのですが、自分が妊娠してみて初めて分かることってありますか?」ということです。
 恐らく、「やっぱり自分で経験してみると全然違います!」という返答を期待しての質問だと思うのですが、正直なところ「今までの私は妊娠についての理解が不足していた」と思うほど目から鱗が落ちる出来事や、「自分で妊娠してみてこんなに考え方が変わった」と思うほど意外な事はありません。
 あまりに多種多様な妊娠経過を見てきたため、想定の範囲が広すぎて、自分の妊娠でそこから外れたエピソードというのがないのです。

「女医ならわかってくれる」のでしょうか

 もちろん、実際に経験してみると、健診では特に問題視されないマイナートラブル=足が攣(つ)る、頻尿、腰痛、胎動で眠れないなど=が毎日続くと結構辛いなあ、と実感することがありますが、あくまでも n=1(個人の経験)であって妊娠の全てが分かるわけではありません。
 例えば、妊娠9か月の半ばに、健診にきた妊婦さんが自分と全く同じ分娩予定日だったので、「腰が痛くないですか?」と共感をこめて言ったところ、「いや、腰は全然痛くないんですけど」とあっさり言われました。続けて、「それよりお腹が張ります」と言われたのですが、私はお腹が全然張っていなかったので、当たり前だけど一人一人全然違うなあ、と思いました。
 個人の経験によって分かることもあれば、逆に思い込みがついてしまって見えなくなることもあるので、臨床医にとって必ずしもプラスかどうかは疑問です。上手く活かせれば一番いいと思いますが、妊娠出産だけでなく産婦人科全般において「女医なら分かってくれる」とか「出産したことのない医者には分からない」などと医師の個人経験を問題にするのはナンセンスだと改めて感じます。

「やせている方がいい」のでしょうか

 妊娠してみて初めて分かったことを強いてあげるとすれば、それは産婦人科医療従事者が妊娠出産を「正直なところどのようにみているか」ということです。
 これについてはいろいろと興味深い出来事がありました。まず、助産師は結構な割合で「体重は増えなければ増えないほど良い」と思っているということです。
 前回の記事でも少し書きましたが、私はもともと痩せ型であるにも関わらず、体重が思ったように増えていません。妊娠前は女性にしては結構な健啖家だったのですが、つわりを機に食事量が激減。つわりが終わったら食欲が戻るかと思いきや、子宮のせいで胃が膨らめないためかすぐにお腹がいっぱいになってしまって、結局はたいしたカロリーを摂取できないという日々でした。
 妊娠前の体型からすると最終的に9kg は太らないといけないところを、今のところ5kg しか増えていなません。プロならば「もっと太らないと」とアドバイスするべきだと思うのですが、仕事や健診で接する助産師の大半は、「頑張ってるね」「自己管理出来てるね」ととっても肯定的かつ好意的なのです。確かに太っている妊婦さんのお産は産道に肉がついていて難渋することも珍しくなく、助産師が太りすぎを忌み嫌う気持ちは分かるのですが、中庸と言うものがあるでしょ、と。

助産師のアドバイスは…

 ついでに書くと、助産師は医師に比べると科学的根拠に乏しいアドバイスをしてくれることが多いです。
 例えば、夏場に素足にサンダルで働いていたら、「足を冷やすと陣痛が弱くなるよ!」と再三言われたので、「うちの妹は足を常に温めていたけど微弱陣痛だったんだけど」と言ってみると、「それは目と頭を使っていたからよ」と言われました。目と頭を使って微弱陣痛になるなら、現代の妊婦は全員が微弱陣痛になるんじゃないかなあと思ったり…。
 周りの助産師たちについていろいろ書いてみましたが、産婦人科医師の妊婦に対する本音については次回書かせていただきます。それまでに陣痛が来ないといいなあ。

医者のホンネ ~予定日まで10日切りました~

 クリスマスも終わり、今年も残すところわずかとなりました。私は妊娠38週。分娩予定日まで10日を切っています。夜にお腹がキューッと張って何度も目覚めたり、ちょっと食べ過ぎると吐き気がしたり、「もう、陣痛が来てくれていいんですけど」という状態です。
 自宅で朝晩、測っている血圧がちょっとずつ上がってきて、下が正常上限に近づいているので、主治医には「いよいよ高くなったら誘発分娩するから入院の準備をしてきてね」と言われています。
 でも、まだ子宮口は硬く、全然お産の準備が出来ていないので、今誘発してもうまくお産が進まない公算も高いのです。なるべく帝王切開にならなくてすむようにと思い、血圧が上がらないよう自宅でやや安静にしています。

「女医を前面に出しているのに…」

 前回の記事で、「実際に妊娠してみて、産婦人科医療従事者の本音が分かった」と助産師たちのお話を書きましたが、今回は産婦人科医について書いてみようと思います。
 コメント欄に女医さん方からいろいろご意見をいただきました。その中に、前回の記事で「医師を判断するに当たって、女医であるとか出産の経験があるとか個人の経験を問題にするのはナンセンス」という趣旨の箇所があったのですが、私の著書は「女医」であることを結構前面に出していることに矛盾を感じるというコメントをいただきましたので、この場でちょっと触れたいと思います。
 前回の記事で言いたかったのは、実際の産婦人科診療において医師の性別を問題にすることはナンセンスであるということです。もちろん人間同士ですから相性があるのは当然ですが、男性医師だから月経のことは分からないとか、出産経験のある女性医師だから分かってくれるとか、そういう判断は無意味だということです。(もちろん、ローティーンの患者さんや強姦後診察など、女性医師が対応する方がよいと思う事例もありますが)。
 臨床とは別に、私は啓蒙を目的として著書を何冊か出版しており、テーマは大きく分けて妊娠・出産に関するものと性に関するものがあります。
 妊娠・出産に関するものについてはおそらく男性産婦人科医が書いても内容に大きな違いはないと思いますし、「男には分からない!」というようなことも書いていません。タイトルのみ手に取りやすいように(特に若年女性に)「女医」という言葉が入っています。
 性に関するものについては、産婦人科医であるなしに関わらず、女性が発信しているということにそれなりの意味があると感じています。

飛行機に乗ってもいいですか?

 さてさて、妊婦さんを妊娠初期から出産後まで管理するのは主に助産師と産婦人科医ですが、最終的に責任を取るのは産婦人科医です。そのため、管理が慎重になりやすい傾向にあると思います。
 例えば「飛行機に乗ってもいいですか?」ときかれたとします。まあ十中八九は(本当はもっと)大丈夫だろうと思うわけですが、何事も100%安全とは誰にも言えないわけです。
 妊娠というものは終わるまで何が起こるか分かりません。ある一定の確率で流産や早産になってしまうことはありますし、出血したりお腹が痛くなったりするくらいなら結構な頻度で起こります。それが「たまたま」飛行機の搭乗前後に起こらないとは限らないわけです。
 もし起こってしまって、飛行機がどこかの空港に緊急着陸という事態になってしまって、「ドクターが大丈夫って言ったのに!」ということになったら…ということまで頭をよぎる訳です。ドクターによっていろいろな返答があると思いますが、「不要不急なら飛行機に乗るのはおすすめできない」という答えは少数派ではないと思います。このように産婦人科医にとっては、妊婦さんに「○○してもいいよ」というには責任と勇気が必要で、「○○はやめといてね」というのが無難なのです。

私には「38週まで来い!」

 でも、専門知識を持ち、自己責任で行動する身内となると話は別です。例えば妊娠中に一緒に食事に行って、「適量」の飲酒に最も寛容だったのは産婦人科医たちでした。私の場合は非常に恵まれていたので、妊娠してすぐに夜間勤務を外してもらえましたが、根を上げるまで当直をさせられている妊娠中の産婦人科女医はたくさんいるはずです。
 私は週に一回、遠方の大学病院で外来をしていて、飛行機か新幹線で通っていたのですが、つわりの時期を除いて安定期は頑張って通っていました。家族には「まだ行かないといけないの?」「体に負担になるなら休ませてもらったら?」と言われていましたが、自分で無理だと思う時までは頑張ろうと思い、体調の許す範囲で通っていました。
 新幹線は乗車時間が長いので腰が痛すぎて耐えられず、飛行機を利用していたのですが、空港が不便な場所にあって大変でした。
 32週の時に、血糖コントロールが悪くなってきて、主治医から無理はよくないからやめるようにと言われたのですが、上司に言ったら「そんなの許さん、38週まで来い! なんかあったらここで入院してそのまま産んだらいいじゃないか」と言われました。「先生は自分にかかってる妊婦が同じことをしてたら止めないんですか?」と言うと「止める、でも部下には言う!」とのこと。半分冗談だったのだと信じたいですが、半分でも本気なところが恐ろしい。(普段は人徳があっていい先生であるだけに余計恐ろしい)。
 このように、専門知識をもって自己責任で行動する「自分にかかりつけでない」妊婦には「○○しちゃいけない」どころではないのです。
 なので、専門家にかこまれていても、自己管理能力とNOと言える勇気が、安全な妊娠生活には必要だったのでした。産後もそういう意味では何かと心配です・・・。

生まれちゃいました! 2882gの女の子です

 もうすぐ2011年が終わろうとしている大晦日の夜にこれを書いています。今朝方からお腹が痛くなってきました。正期産(37週)に入ってから夜になるとだいぶ子宮が張ってくるようになっていたのですが、硬くはなるけれど痛いという程ではなかったのです。それが今朝からの痛みは、まさに生理痛。「いたたたた」という感じです。折しも今日は病院に受診する日でした。「え、大晦日に外来やってるの?」と思われると思いますが、ハイリスク妊婦は週に2回赤ちゃんが元気かどうか胎児心拍モニター検査をしなくてはいけないため、お正月休みの間に最低1日は外来を開ける産婦人科が多いと思います。という訳で片道2時間弱かけて公共交通機関で大学病院まで行ってきました。病棟医長と私の主治医の先生が外来をされていて、ほんま大晦日にお疲れさまでございますって感じでした。
 採尿の時にちょこっと出血していたので、「おお、産徴!?」と思ったのですが、羊水量を確認すべくエコー検査をしたところ、「赤ちゃんの頭はまだぷかぷか浮いているから、まだまだちゃう?」と言われ、赤ちゃんが元気で血圧等も正常だったので帰って来ちゃいました。予定日が迫ってきて、インスリンの必要量は増えてきたし、血圧もぎりぎりになってきたので遅くとも1月4日には入院する予定になっています。でも、夕方から不規則に張って来ました。でも、「前駆陣痛」といって収まってしまうことも多いので、「どうなるんやろ!?」とドキドキしながらすごしています。些細なこだわりなんですけど、自分と同じ「辰年」「一月」生まれがいいなあ、と思っていたのでそれはかないそうです。
 今日は主治医と誘発分娩になった場合の話をしました。医療者からすると、母子の安全と健康が最も重要視され、次に分娩様式(経腟分娩か、帝王切開かなど)で、夫の立会いの都合などはもっとも後回しに考えてしまうのですが、自分の立場になると、もちろん母子の安全と健康は第一なんだけど、誘発の方法がちゃんと子宮頚管をじっくり開かせてくれるかとか、日程はだんなさんに都合がいいかとかやっぱり気になってしまうんですよね。まあでも、ここまで来るとなるようになるしかありません。

元旦の9時8分に誕生

 という文章を大晦日の22時ごろに書いていたのですが、年が明けた頃から陣痛が来はじめ、元旦の9時8分に生まれちゃいました!2882gの女の子です。
 痛み出した当初は10分から15分間隔で、こんな元旦の未明に高齢初産婦が大騒ぎしていって、全然まだまだだったりしたら迷惑だろうなと思いつつ、スマートフォンに陣痛の持続時間と間欠期を記録するアプリをダウンロードして、様子をみることにしました。
 午前2時半頃より10分間隔を切り始めましたが、夜中になるべくいろんな人を起こしたくなくて(このあたりが医療者目線)、頑張ろうと思ったのですが、5時から陣痛が2~3分おきに来はじめて、声が漏れるくらい痛くなってきたので、6時頃病院に電話して向かいました。

ずっと痛く、全力でいきむ…経産婦のようなスピードで出産

 病院に着いたらまだ子宮口3cm(全部開くと10cm)だったのですが、そこから陣痛がめちゃくちゃ強くなり、すごいスピードで全開。陣痛と陣痛の間の休みもほとんどないように感じられ、ほんまずっと痛かったです。早くお産を終えたい一心で、全力でいきみまくり。すごい形相だったと思います。というわけで、経産婦かというスピードで、無事出産しました。早い分、痛みが凝縮していたような。でも、短時間ですんですごくよかったです。赤ちゃんもすぐに泣いて元気でした。
 ほんとに心にはなんの余裕もなくて、胎児心拍モニターも全然見てないし(まあ妊婦本人が見なくてもいいんですが)、逃さないといけないとこでもいきんでしまうし、とにかく自宅で頑張ってるときから病院で産むまで「まじでこんなに痛いの!?」という感じでした。
 ああでも無事に終わってほっとしました。まだあちこち痛いですが、仕方ないですね。ちなみに急すぎて夫は立ち会えませんでしたが、それで良かったような気がします・・・。

恐るべき母乳スパルタ病院

 元旦早々に出産したという先週の記事に、おめでとうのコメントをくださった方々、ありがとうございました! 特に、かつて出産を担当させてもらったお母さんたちにおめでとうと言っていただけるなんて、産科医というのは幸せな職業だなあと思いました。先週の記事を読み直してみると、大分、日本語が変ですねえ。「まさに実況中継」ということにしておいてください。
 ところで、今まで「マタニティ実況中継」というタイトルでブログを書いてきましたが、妊娠が終了したので「ママライフ実況中継」に変更したいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

「ママライフ」の始まり

 さて、「本当は経産婦だったのでは?」と面会に来てくれた医局の人たちにネタにされるほど安産だった私ですが、それでめでたしめでたし、ではなかったのです。出産は大きな関門ですが、終わりではなく区切りでしかありません。出産であちこち傷んだ体で育児が始まります。高齢出産だからということもあるかも知れませんが、安産だったとはいえ、骨盤が緩んで足腰が痛むし、産道の傷は痛むし、上体を起こすとふらふらするし、満身創痍でした。
 産院によりますが、出産当日は疲れを取るために赤ちゃんを預かって、お母さんをゆっくり休ませてあげるところが多いと思います。少なくとも私が今まで働いたことのある病院はそういった方針でした。
 ところが、私が出産した病院は、母乳育児の早期確立が何よりも優先される「母乳スパルタホスピタル」だったのです。(以前その病院に勤めていた時は今のような方針ではなかったのですが、知らぬ間に変貌していました・・。)

3時間毎に授乳、でも母乳が…

 出産直後からスパルタ教育ははじまりました。カンガルーケアで授乳した後、出産当日から母児同室で3時間毎に授乳するという方針だったのです。
 母児同室に関しては、体中が痛くて、横になった姿勢から起き上がるだけでもやっとで、寝返りにも時間がかかるという状態だったので、赤ちゃんと二人きりにされても赤ちゃんの状態まで把握する自信がなく、授乳と授乳の間は預かってもらえました。でも、3時間に一度の授乳は絶対にさせられ、ゆっくり眠ることは産後一度もかないませんでした。(現在に至るまでです・・・。)
 しかも大部屋なので、誰かの赤ちゃんが泣けば全員起きるという。

赤ちゃんの体重減少

 授乳といっても、初産なのに初日から母乳が出るはずはありません。赤ちゃんに吸ってもらうことで少しでも母乳が早く出るように、頻回に授乳をするようにということなのですが、赤ちゃんからすれば絶飲食状態です。母乳が満足に出るまでの間は粉ミルクか糖液を赤ちゃんに飲ませてくれる産院が多いのですが、何も与えてくれません。
 お腹が減って赤ちゃんは昼も夜も頻繁に泣き続け、かわいそうに体重がどんどん減ってしまい、私はほとんど眠れませんでした。
 赤ちゃんはみな、生理的体重減少といって生後3~4日間で出生時より体重が減ります。出生体重の10%くらいまでが正常範囲とされています。私の赤ちゃんは出生3日目に10%体重が減少し、ボーダーラインになってしまいましたが、やはりミルクも糖水も与えてくれません。
 確かに、よく引用されるWHOの「母乳育児を成功させるための10か条」に「医学的に必要がないのに母乳以外のもの、水分、糖水、人工乳を与えないこと」とあります。でも、10%も減っていれば「医学的に必要」だと思うのです。ちなみに、退院してから助産学校の教科書を2冊、見直してみましたが、体重が7%減少すればミルクなどを足すべしと書いてありました。
 結局、翌日に11%減少した時点でミルクを足す許可が出て、赤ちゃんはそれなりに眠ってくれるようになり、私も少しは睡眠が取れるようになりました。
 そして、初産婦として平均的なことに、ようやく母乳が出始めてくれました。翌日から体重は増加に転じました。

母乳育児支援は助産婦さんに

 ちなみに、産婦人科医は妊娠・出産は専門ですが、母乳育児支援については助産師にお任せというのが多数派だと思います。私も今までいくつかの病院に勤務しましたが、母乳についての方針はいろいろあるんだなあと、半歩離れて見ている状態でした。私が出産した病院では、母乳については新生児科と助産師が担当していて、産婦人科医は口を出していないようでした。助産師もみなが同じ考えという訳ではないようでしたが。
 私の場合は、いろんな方針の病院があることを知っていたので、「ああ、ここは母乳スパルタ病院なんだな。従うしかあるまい」と思っていました。だから、体力は消耗したものの、「私は母親としてやっていけるだろうか」などと育児不安に陥ることはなかったのですが、うまく母乳の出ない一般のお母さんは、3日目くらいから精神的に追い詰められて、しくしく泣き始めるのだそうです。出産で体にダメージを受けた上に、連日の睡眠不足が重なれば、精神も弱りやすくなって当然ですよね。
 たくさんのお母さんたちを見てきましたが、母乳の出始める時期や量には大きな個人差があり、全く出ない人もいます。ましてや全員が完全母乳にできるわけではありません。ただでさえ育児は大変なものなので、さらにハードルを上げるというのはどうなのかなあと思いました。もちろん、赤ちゃんのことを考えてのことなのでしょうけど。

産後5日目に退院

 高齢出産でボロボロになった後、慣れない授乳に悪戦苦闘し、非常に長く感じられた入院生活でしたが、母児ともに健康な状態で産後5日目に退院しました。自宅からは遠かったけれど、人手不足のこのご時世に贅沢な体制が整っていて、見知ったスタッフが多くいる古巣の病院で大事な時期をすごすことができて、本当に恵まれていたと思います。
 せっかくスパルタに耐えたので頑張って母乳を与えつつ、足りなければミルクも足して、赤ちゃんがすくすく育つように試行錯誤していこうと思います。

女の敵

 昨日は1月17日、阪神・淡路大震災の日でした。神戸生まれ神戸育ちの私にとっては、何年経っても特別な日です。
 あれから17年。神戸をはじめ、阪神間の街は震災があったことなど全く分からないくらい復興しているように見えますが、実際にはまだまだ問題を抱えているところもあるようです。この17年間、日本は不景気に見舞われるなどあまり元気ではなく、それは被災地の復興にも響いたと言えます。阪神間がここまで復興してきたのは、全国の支援のおかげでもありますが、地元の努力と忍耐も大きかったと思います。
 よもや生きている間に、日本にあれより大きな災害が起こるとは思っていませんでしたが、昨年は東日本大震災がありました。阪神大震災とは性質の違う被害も大きいので同列には語れませんが、やはり復興のためには日本全体の活気が必要だと思います。一人一人にできることとして、継続的に被災地と日本の経済、そして地域医療に貢献していこうと思います。

ダメージから回復してきた

 産後二週間余りが経過しました。ようやく、出産のダメージから回復してきたと自覚できるようになりました。
 まず、退院からしばらくして、乳房がカンカンに張りはじめ、少なくとも赤ちゃんが欲しがる量を賄うくらいは出るようになりました。満足した赤ちゃんは、授乳後3時間近くまとまって寝てくれるようになり、私も休めるようになりました。
 元々産科医として10年以上、当直三昧の生活を送ってきており、連続当直も当たり前だったので、夜中に2~3回起きて授乳したり、オムツを交換したりするくらいなら大した負担ではありません。
 授乳時間が空くようになって、悲鳴を上げていた乳頭の傷もすっかり治りました。
 それだけでなく、産道の傷の痛みや骨盤底の機能も徐々に回復してきて、精神的な不安も軽減しました。骨盤底の機能は、排尿や排便など生活の質に大きく関わりますからね。肩こりや腰痛も落ち着いてきました。まだまだ本調子というには程遠いですが、トンネルの向こうに光が見えた気分です。

コメントをありがとうございます

 先週の母乳の記事は、思いのほか反響が大きかったです。コメントもたくさんありがとうございました。
 「データ上は、90%の人は母乳育児を確立できるはず」というコメントがあれば、「それはつまり、残りの10%の人はできないということなんです」というコメントもありました。
 また、「3時間おきの授乳のおかげで完全母乳にできた」、「出生直後から粉ミルクをたくさん飲まされたので、母乳を飲んでくれなくなった」、「いろいろ努力したけれど、ほとんど母乳は出なかった」など、体験談を書いてくださった方が多かったです。
 その中に「出産までは出産だけに目が行きがちですが、出産後の母乳育児の推奨の程度とか、赤ちゃんのことを自分と同じ考えでみてくれる病院なのか、病院を選ぶ際に母親として知っておくべきなんでしょうね」というコメントがあったので、それについて触れたいと思います。

産院ごとフレキシブルな指導を

 「産科医不足」「産科医療崩壊」などが叫ばれて久しいので、妊娠・出産に関心のある層の人には言うまでもないことだろうと思いますが、今の日本では出産する施設はそんなに「選び放題」ではありません。
 東京の中心部で、妊婦自身がローリスクの場合なら、自宅から通える範囲に多数の分娩施設があるのかも知れませんが、それなりの都市部(神戸市)にある私の実家近くでも、「ここなら安心してお任せできる」と思える産院はそういくつもありませんでした。ましてや、合併症があって大学病院に紹介されたので、選択の余地などありませんでした。(そしてそれがベストの選択でした)。これが地方に行けばもっと選択枝は狭まるでしょう。
 だからこそ、産院ごとにフレキシブルな母乳育児指導を行って欲しいと思うのです。
 一人一人のお母さんの努力可能な範囲内で母乳育児が確立できるならいいのですが、各人の体も赤ちゃんも家庭の事情も人それぞれです。「母乳育児は努力すればできるはず」という根性論や「母乳で育てることこそが母親の愛」という偏見でお母さんたちを苦しめないでほしいと思います。

体験談は参考程度に

 また、妊娠・出産もそうですが、子育てにおいても、自分の体験というものは「n=1」、たった一例にすぎないということを自覚するべきだと思います。
 たとえ数人子供を産んだとしても、「私はこうだった」という体験だけからは何の法則も導くことはできないので、他人に体験談を語るときはあくまでも参考程度という前提ですべきだと思います。「私はこうだったから、こういうものよ」という決めつけや、「私もやったんだから、あなたがやらないのは甘えよ」という押し付けに悩んでいる女性たちの声が、実際に臨床の現場でよく聞かれるのです。
 これが「女の敵は女」という構図を昔から作ってきたのではないでしょうか。
 育児不安から精神を病む人もいますし、虐待につながることもあるので、少し相手の立場に立って発言すればよいのに、と思います。言われる側も、受け流すという術を身に着けるのもいいのかも知れません。

助産師さんからの電話、心強い

 退院してから、入院中に担当だった助産師さんが、母乳育児が出来ているか確かめるために、何度か電話をくれました。自分では出来ていると思っても、初めてで自信がない部分もあるので心強いです。今のところ大きな問題はないみたいなので、引き続き実家に籠って授乳の日々を送ります。

赤ちゃんに愛着が湧いた日

 産後3週間が経ちました。体調がだいぶ回復して来て、生活で不自由を感じることはほとんどなくなりました。
 体重が早くも妊娠前に戻り、妊娠前に着ていた洋服が着られるようになりました。退院してからずっと実家に引きこもっているので、運動量は少ないはずなんですけど、おそらく赤ちゃんが吸い取ってくれているのではないかと思います。
 母乳の分泌量が増えてきたからか、母乳をたっぷり飲んだ後によく寝てくれます。今のところ完全母乳でいけていて、授乳後3時間以上寝ている時も多く、生きているかどうかそっと確認したり。そして、赤ちゃんは先週ようやく出生体重にもどりました。このまま大きくなっていって欲しいです。

育児だけの日々に耐えられる?

 出産前に不安に思っていたことの一つに、ずっと家に籠って育児に明け暮れる日々に耐えることができるのか、ということがありました。妊娠前に散々「子供を産んだら自分の時間はなくなるよ」「仕事にはオフがあるけど、子育てに休みはないよ」と言われていたからです。
 そのため、「子供はいつか欲しいけど、俗世間に未練があったら耐えられなさそう。その前にあれもこれもやっておかなくては」と、オンもオフもかなりアクティブに過ごしてきたので、ますます子育て生活とギャップが出来てしまうという始末だったのです。
 ところが、実際に出産してみると全然苦ではありません。少なくとも今のところ。先週も書いた通り、当直で夜中に何回か起きるという生活に耐性があるということもありますが、何と言っても赤ちゃんがかわいいのです。かわいいというのは美醜の問題ではなく、愛着が湧いているという意味です。よく言う「自分の子供はかわいい」といいますが、そんな感じでしょうか。ここで親バカぶりを炸裂させても痛々しいので自粛しますが、自分がいつ頃、赤ちゃんに愛着を抱いたか振り返ってみたいと思います。

においをずっと嗅いでいたら

 妊娠中に胎動を感じたり、胎児超音波検査で赤ちゃんの姿を見たりした時に、確かに愛着が湧きました。でも、今から思えばほんの少しです。
 出産した直後に赤ちゃんの顔を見て、胸に抱いたときには、「これが私の赤ちゃん!」とは思いましたが、出産が痛すぎて正直なところそこまで感動する余裕はなかったです。「お腹を痛めた子」という表現があり、陣痛に苦しむことで愛情が芽生えるという偏見がありますが、私の場合は痛みが母子愛着形成にプラスに働いたとはとても思えませんでした
 明らかに赤ちゃんを「愛おしい」と思うようになったのは、産後1日目の晩にベッドで添い寝をして、顔と顔をくっつけて赤ちゃんの匂いをずっと嗅いでいた時です。それ以来離れたくなくなってしまいました。その意味では、母児同室の2晩目は意義があったと言えます。
 その後、授乳中におっぱいに一生懸命吸い付いている姿を見て、ますます愛着が湧きました。乳頭刺激によって愛情を司るホルモンであるオキシトシンが下垂体から分泌されるのですが、そのせいもあるのかもしれません。

カンガルーケア

 つらつらと自分のことを書きましたが、今出てきた、胎動、胎児超音波、母児同室、母乳育児、というのはどれも母子間の愛着形成に良いとされているものです。
 カンガルーケアも私は体験しましたが、事故例が報道されるなど時々問題になっていますね。カンガルーケアは、裸のままの赤ちゃんをお母さんの胸の上に抱くスキンシップで、1979年に南米・コロンビアの病院の新生児治療室で、保育器などの器材とスタッフ不足による感染症や新生児死亡、早期からの母子分離による育児放棄に対処するために導入され、注目されるようになりました。
 当初は極低出生体重児(出生体重1500グラム未満)の哺育法としてWHO(世界保健機関)が発展途上国に推奨していましたが、1996年にはWHOより「正常出産のガイドライン」が出され、早期の母子接触・母乳哺育推進のための出産直後のカンガルーケアが推奨されるようになりました。
 ところが、カンガルーケア中に、赤ちゃんが呼吸・心肺停止となり死亡や神経学的後遺症が懸念される例が度々報告され、訴訟に発展する例も出てくるようになりました。それにより、カンガルーケア自体の是非が問われることもあるようです。

中止になったら残念

 個人的には、母子愛着の確立に効果のあるとされるカンガルーケアを、全国の分娩施設が将来、中止するようなことになれば、とても残念だと思います。
 事故のほとんどは、医療スタッフが母子から目を離している間に起こっています。
 カンガルーケアの実施の有無にかかわらず、生まれたてで肺呼吸を始めたばかりの赤ちゃんは、呼吸・循環とも非常に不安定な状態です。お母さんは出産という大仕事を終えて疲労している上、弛緩出血などの急変のリスクを抱えているため、赤ちゃんの観察を一任するには無理があります。なので、出生直後の母児は、共によく観察されるべき存在だと言えます。
 ガイドラインなどを参考に十分な説明・観察のもと行われれば、メリットのあるケアだと思いますので、「カンガルーケアは危ない」「事故や紛争のもとだからカンガルーケアはやめておこう」という風潮にならないといいなと思います。
 かわいい、かわいい赤ちゃん。この気持ちを忘れないで子育てを続けていきたいと思います。

【参考リンク】
日本産婦人科医会の寺尾俊彦会長「出生直後におこなう『カンガルーケア』について
日本産婦人科医会幹事の鈴木俊治・葛飾赤十字産院副院長の発表資料
出生直後におこなう『カンガルーケア』について

出産は「始まり」でしかない

 早くも2月になりました。冷え込む日が続くので、娘のいる部屋を断続的にガスファンヒーターで暖めているのですが、ひどく乾燥して娘も私も肌がカサカサです。沐(もく)浴の後にベビーローションとオイルを塗っているのですが、追いついていない様子。私も軽く鼻風邪を引いたようです。体調管理の難しい季節ですね。

保健師さんが来てくれた!

 生後4週間が経過し、娘は「新生児」から「乳児」になりました。
 先週、区役所の子育て支援係から保健師さんが訪問してくれました。大きくなっているか計測してもらったところ、体重が3200g くらいに増えていました。出生体重と比べると300g そこそこしか増えていないのですが、先々週ようやく出生体重に戻ったことを考えると、その後はとても順調に大きくなっています。
 母乳も授乳1回当たり60~80ml 出ていたし、新生児用のオムツもちょっとずつパツパツになってきているので、それほど心配してはいませんでしたが、保健師さんに「大丈夫」と言ってもらえると安心できます。

産後うつ病のチェック

 そして保健師さんから私には3つの問診票がわたされました。「育児支援チェックシート」「エジンバラ産後うつ病問診票」「赤ちゃんへの気持ち問診票」です。
 「育児支援チェックシート」は産後うつ病の危険因子、育児を困難にする背景や要因のチェックするためのものです。「エジンバラ産後うつ病問診票」は産後うつ病のスクリーニング票として英国で開発されたもので、母親の抑うつ感や不安を評価するためのものです。「赤ちゃんへの気持ち問診票」は育児の負担や赤ちゃんへの様々な気持ちを評価するために開発されたもので、赤ちゃんへの否定的な気持ちの有無、虐待の危険性の有無をチェックするためのものです。
 ちょうどこれらは、私が研究に使っているものなので、なじみ深いものでした。自分で答えたのは初めてでしたが、元々ポジティブな性格で、実家で上げ膳据え膳の不自由ない生活を送っていて、赤ちゃんがかわいくて仕方ないという私は、スクリーニングに引っかかりませんでした。

大切な育児環境の確認

 家庭を実際に訪問して母親と面談し、赤ちゃんの発育具合や育児援助者の有無などの家庭環境をチェックしてくれる保健師の訪問制度はとても重要だと思います。
 以前、割と社会的にリスクの高い妊婦さんが多い地域の総合病院に勤めていたことがあったのですが、出産の入院中から助産師たちが積極的に母親に関わりをもち、リスクがないかチェックし、赤ちゃんを受け入れ、育児不安を解消するように努めていました。(残念ながら忙しくて母親の育児環境などのバックグラウンドまでスタッフが踏み込めていない産院も多いようです)。
 リスク因子とは具体的に、シングルマザーや経済的に困っている家庭、若年妊娠や望まぬ妊娠、また妊娠・出産の経過に異常があった、または赤ちゃんに病気などの問題があったケースなどで、場合によっては病院から保健師に連絡するなど行政と連携して育児支援をするというものです。
 現時点ではスクリーニングに引っかかっていない私ですが、夜中に娘が延々と泣いて、オムツを変えてもお乳をあげても泣き止まず、娘をゆさゆさとゆすりながら部屋の中をうろうろ歩き回っている時には、環境が整っていない中での育児は大変だろうなあ、とふと思います。
 産後うつ病は10~20%の母親に起こると言われ、決してまれではありません。児童虐待の死亡事例の4割が0歳児です。母子の健康のためには、病院と行政の両方のスクリーニングと相談窓口がしっかり機能することが大切だと思います。

出産は「始まり」でしかない

 産婦人科医になりたての頃は、とにかく母児共に健康に出産を終えることに重点を置いて診療していました。でも、年月が経つにつれ、それは始まりでしかなく、サポートすべきことがたくさんあることに気づかされました。
 今、自分が大勢の人に支えてもらいながら順調に育児を始めることが出来たことに感謝して、復帰したら診療に生かせるといいなあと思います。

ほっとしました 1か月健診

 早くも1月が終わり、2月になりましたね。全国的に寒い日が続いているようですが、ほとんど家の中ですごしているのであまり寒さを実感しません。

4月から当直?

 先日、このブログの「医者のホンネ ~予定日まで10日切りました~」という記事で「38週まで働け!」と言った上司から用事で電話がかかってきたのですが、その際に「僕、ヨミドクターで悪者になってるやん!」と言われました。ヨミドクターはとてもメジャーなサイトなんですね。一応フォローを入れておいて良かったです。
 そしてその直後に、なんと「4月から当直してくれない?」と言われました。こんな小さな乳飲み子を抱えた私に当直しろとは!
 「小さな赤ちゃんがいるんですけど」と言うと「親に預けたらいいやん」と言われ、「お乳が枯れるんですけど」と言うと「搾乳してNICU(新生児集中治療室)の冷蔵庫に冷やしとけばいいやん」と言われました。「産後4か月でもう当直させられるなんて、研修医の女の子が誰も産婦人科に入局したいなんて思わないですよ」とも言いましたが、あまり効果はありませんでした。
 異動などで4月から人手不足に拍車がかかるみたいなので、気持ちは分からなくもないんですが、私にとってはとても非現実的なお話なので断固お断りしようと思います。どうです? 恐ろしいでしょう、人手不足の産婦人科医の世界は・・・。

娘の1か月健診

 先週、娘の1か月健診に行ってきました。生まれて初めての外出だったので、しっかり厚着をさせて大学病院へ。大阪でも雪が積もったとても寒い日でした。娘のほかにも同時期に産まれた赤ちゃんが数人健診を受けに、母親に連れられて来ていました。
 計測すると、身長は出生時47.5cm だったのが50.5cm に伸びていました。体重は出生時2882g だったのが3372g に増えていました。
 その後、小児科ドクターの診察室に呼ばれました。発育について、身長はともかく、体重は1日あたり25g 増で標準ギリギリと言われました。それもそのはず、出生体重から11%減ってしまった後、母乳が出始めてから回復するのに時間がかかり、出生体重に戻ったのが2週間前だったのです。
 その後、母乳は赤ちゃんが飲みきれないくらい出るようになり、この2週間ではそれなりに増えているので、OKをもらいました。
 退院時に受けたガスリー検査という先天性代謝異常等の検査の結果が出ていて、問題なしと告げられました。そして、いろんな色の便の写真を見ながら、赤ちゃんの便の色を聞かれました。胆道疾患がないかチェックされているのでしょうね。
 一通り診察してもらった後、「肌が乾燥してガサガサになったので、沐(もく)浴後にオイルを塗ってますがいいですか」とか「ゲップが上手く出なくてぐずるときがあるのですが大丈夫ですか」など、細かいことではあるけど、小児科ドクターに良いと言ってもらえるとほっとできることを質問し、1か月健診は終了となりました。

複雑な予防接種システムに不安

 1か月健診は原則として出生した分娩施設で行われますが、以後、乳幼児健診は自治体ごとに集団実施されます。3~4か月児健診、1歳6か月児健診、3歳児健診があり、この他に自治体によっては6か月児、10か月児、1歳児、5歳児健診などがあるそうです。
 これらによって身体発育のチェック、発達神経学的診査、視聴覚診査などが行われ、予防接種も同時に行われたりするそうなので、とても重要です。1歳6か月児健診では発達障害などが早期発見されたりすることもあるそうなので、とても気になります。
 ところが、病院で受ける妊婦健診と違って、都合のいい時に予約すればいいというものではないようです。自治体の広報紙などをチェックして連れて行くようにと、訪問してくれた保健師さんに言われました。広報紙なんて今まで目を通したことがないので、ぼんやりしていると乳児健診に行きそびれそうです。
 そして、もっと不安なのが複雑な予防接種のシステム・・・。自治体のホームページを見てもよく分からないし。これは同じ地域に育児仲間を作ってコミュニケーションし、情報を交換し合いましょう、ということなのでしょう。幸い私は同じ自治体に二児の母である妹が住んでいるので、いろいろ教えてもらおうと思います。

今週は私の1か月健診

 さて、今週は私の1か月健診があります。これでOKが出ればようやくバスタブに浸かることが出来ます。娘と一緒にお風呂に入るのが楽しみです。

忍び寄るセックスレスの影

 昨日はバレンタインデーでしたね。仕事をしている時のバレンタインデーは、職場に大量のチョコレートを持っていかないといけないので大変ですが、今年は外出すらままならなかったので、自分や家族の分も含めてひとつもチョコレートを買いませんでした。大変節約になりましたが、ちょっとさみしかったです。

産後のバスタブ禁止、科学的根拠は?

 先週は私の1か月健診のため産婦人科を受診してきました。体型はお腹がぽよんとなっていますが、体重はほぼ妊娠前と同じになっており、血圧や尿検査は正常でした。そして内診で全く問題なしとのことでした。
 出産の際に赤ちゃんの頭が急激に下がって心拍が取れにくくなったため、会陰切開がちょっと入っていたのと、左側に自然裂傷ができて、どちらも同じくらい痛かったのですが、もうどこに傷があるか分からないくらいきれいに治っているとのことでした。
 そのため、めでたくバスタブに浸かってOKと主治医に言われました。「やったー」と喜ぶと、「とか言いながら、もう浸かってたんやろ?」と言われました。ちゃんと我慢していたのに。だって、万が一傷がふやけて開いたら嫌ですもん。
 しかし、主治医によれば、欧米人はバスタブに浸かるという文化がないため、産後1か月はバスタブに浸かってはダメといわれることもないそうです。そればかりかアメリカの教科書には「会陰の傷がむくんで痛いときにはお湯に浸かるべし」と書いてあるそうです。主治医の奥さんは産後2週間でバスタブに浸かっておられたそうで・・・。なんだ、私も入れば良かった。
 そして早速、入浴剤を倍量入れて入浴しました。寒い冬はお風呂で温まるに限ります。

骨盤底筋群も骨盤も緩んだ

 出産では、表面に傷を負っただけでなく、骨盤底筋群(※1)も傷ついて緩みましたし、骨盤そのものも緩んでガタガタになりました。
 出産後に体型を気にされる女性は非常に多いのですが、私にとっての関心事はQOLに大きく影響する骨盤機能でした。産後すぐに骨盤をベルトで締めた方がいい、産後に広く使われるドーナツ型クッションは圧がかかって骨盤臓器脱になりやすいからやめた方がいい、と聞いていたのでそれらを守りました。
 それほど大きな赤ちゃんではなく、全く難産ではなかった私ですが、それでも産後はいろいろとトラブルがありました。尿意が分からなくなって溢流性尿失禁(※2)になったり、肛門括約筋(※3)が思うように動かなくなったり。出産後すぐにはよくあることだと知りつつも、改善する保証は全くなかったので不安でした。
 肛門をきゅっと締めるような運動を繰り返す骨盤底筋体操を産後すぐから試みたのですが、感覚が鈍くなっていてどの筋肉に力が入っているか分からないので、うまくできませんでした。今では8割9割調子が戻ってきましたが、産前と同じ状態に戻すべく体操にいそしんでいます。
 産後にお腹を引っ込めるためにコルセットなどでお腹をしめる方も多いと思いますが、骨盤底筋群保護の観点からは勧められません。まずは骨盤底筋を鍛えなおしましょう。

「この世にセックスなんてあったの?」

 そして、骨盤機能と言えば性機能について触れざるを得ませんね。1か月健診で特に問題がなければ、夫婦生活についてもOKが出るのが一般的です。ただ、子育て真っ最中のお母さんたちにそう伝えても、「いやもう、それどころじゃないんで」という反応が多いです。そして私もご多分に洩れず、全くそんな気になれないという。
 まだ里帰り中なのでいずれにしてもそれどころではありませんが、遠路会いに来た夫と娘と3人で過ごしていると、完全に「赤ちゃんのパパとママ」という感じです。愛くるしい我が子と一緒に居るのに男女の雰囲気になるのははばかられるというか、「この世にセックスなんて行為があったの?」というくらい遠い世界のものに感じられているというのが正直なところです。授乳中に出ているプロラクチンというホルモンに、性欲を抑制する作用があるせいかもしれませんが、それだけが原因でもなさそうです。
 私は性に関するカウンセリング外来をしているのですが、そちらで一番多い相談は性交時痛で、次がセックスレスなのです。今まで「出産を機になんとなくセックスレスになってしまい・・」という10年来のセックスレスの方や、二人目の妊娠希望の方などの相談を何人受けたことか。いずれも「その時はセックスなんてどうでも良かったが、今はレスで苦しんでいる。なんとかしたい」というものなので、私も今はかなりどうでもいいですが、このままじゃ良くないだろうなと思います。
 つい最近、セックスレスを予防、解消するための具体的な方法をたくさん書いた本(「ずっとずっと愛し合いたい-セックスしつづける男と女のルール」、幻冬舎刊)を出版したところで、こうすれば良かろうということは解るので、それを実践しなくては、と思います。
 そんなことを言いつつ、今年のバレンタインデーには夫用のチョコレートを買っていなかったことに気づきました。この先大丈夫なんでしょうか・・。

 ※1 骨盤底筋群(こつばんていきんぐん) 骨盤の底で子宮や膀胱を支えている筋肉の集まり。出産や加齢でこの筋肉が弱まると、尿漏れや膣の緩みの原因にもなる。
 ※2 溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん) 膀胱内に尿が常にいっぱいたまり、少しずつ漏れてしまう症状。出産のほか、前立腺肥大症などが原因で起こることが多く、高齢男性でよく見られる。
 ※3 肛門括約筋(こうもんかつやくきん) 排便の際などに使う、肛門を締めたり緩めたりする筋肉。便やガスの漏れの原因となることもある。

明るい家族計画

 相変わらず寒い日が続きますね。娘は少しずつ昼間に起きている時間が増えてきました。実家の近所に梅の名所があるので、娘を連れて見に行きたいのですが、風邪を引かせては悪いので出かけられずにいます。日本各地で豪雪に悩まされているというニュースも見ますし、そろそろ暖かくなってほしいですね。
 先週の記事に、外国で出産された方々からコメントを頂き、産後の外陰部の傷はお湯につけると痛みがとても和らぐということを知りました。おそらく日本ではほとんどの産後のお母さんたちが、バスタブに浸かれずに凍えていると思うのですが、日本でも1か月健診の前にお湯に浸かっていいようになれば良いのにと思いました。

「社会保障と税の一体改革」

 ところで、今来る日も来る日も家でテレビを見ているのですけど、報道番組では「社会保障と税の一体改革」がずっとトピックに上がっていますね。
 個人的には消費税を上げるよりも社会保障費を削らないと財源が追いつくわけがないと思うのですが、50年後には今よりも高齢化社会がすすむようで、今生まれてくる子供たちは私たちの世代よりもたくさんの老人を支えないといけなくなるというのです。日本の未来のためには子供を産んだ方が良いのでしょうけど、生まれてきた娘は果たして幸せなのか、この子のために私がしてあげられることは何なのか、と考えてしまいます。
 そこで、出産を終えた私に現れたのは二人目を産むかどうか、という命題です。

2人目をどうするか

 とは言っても、まだ初めての育児を始めたばかり。娘がどのように成長していくのか、自分が育児をこなしていけるのか、未知数なことが多いです。本来なら育てながら考えていきたいところですが、私は現在36歳。そんなにゆっくり考えている余裕はありません。
 ちなみに1か月健診の時に主治医には、次に子作りを始めるまでにはだいたい1年半空けるといいと言われており、それより早く妊娠すると、早産や低出生体重児(2500グラム未満)が生まれる確率が約1.5倍になると言われました。一般的に早産が起こるリスクは全体の5%なので、それが約8%になるということです。私の場合は今回が正期産だったので次回の妊娠で早産する確率は5%より低いですが。
 主治医には「期間を空けた方が良いと言っても、年齢のこともあるから旦那さんとよく相談してね。でも2年経ってもまだ38歳か。まあ、大丈夫じゃない?」と言われました。 
 「まだ38歳」って言ってもらえるなんて、嬉しくなってしまいました。やはり大学病院は高齢出産の方がとても多いから38歳でも若く感じられるのでしょうか。まあでも、二人目を作るなら早い方が良いのは当然なのですけど。

授乳中も妊娠の可能性

 産後に母乳育児をしていると、しばらく月経が来ないことが多く、排卵も抑制されます。しかし、これは「排卵しない」ということではありません。私の母はバシバシ排卵する体質のようで、私が一歳の誕生日を迎えた時にはもうすでに妹が生まれていました。そして、その14か月後にはもう一人妹が生まれました。授乳中でも排卵するという実例です。
 つまり、授乳中でも妊娠する可能性があるため、子供が欲しくない場合はコンドームで避妊する必要があります。
 ピルに含まれているエストロゲンは母乳の量と質を低下させると言われており、授乳中に飲むことは勧められていません。エストロゲンが含まれていないミニピルなら授乳中に内服できますが日本では認可されていないので、授乳中はコンドームもしくは子宮内避妊器具で避妊するのが一般的です。

兄弟はいた方がいいのかなぁ

 子供が出来ると世帯収入が減り、逆に支出は増えますよね。子供が二人となると、ますますそうなります。でも、一人っ子だと両親に何かあった時に一人で負担を背負い込まないといけないし(極力負担はかけたくないですが)、子供にとっては将来的に兄弟がいる方がいいのかなぁとも思います。
 私自身は姉妹がいて、とても仲良しなのですが、友人には一人っ子で良かったという人や、兄弟がいて良かったと思ったことがないという人もいます。悩ましいですが、今のところ娘の世話で精いっぱいなので、二人目問題は今のところ保留になりそうです。でも、気づいたら4年も5年も経っていたということにならないようにしなくてはいけないですね。

母乳育児のメリット、デメリット

 あっと言う間に2月も終わりで、明日で娘は生後3か月目になります。最近、心なしか昼夜の区別がついてきたようで、昼間はたくさん母乳を飲んだ後も起きていていることが多く、夜は5時間くらいまとめて寝てくれる時もあります。
 起きている間はぐずぐずと断続的に泣き、その度に抱いてあやしているので、なかなか両手が空く時がありません。こちらが食事中の時に娘が泣くと、片手で抱きながら食べなくてはいけないので、スパゲティなどは食べるのに技術が要ります。

授乳が足りない?

 まさに娘専属の授乳マシーン兼あやしマシーンという日々なのですが、時々、母乳が満足に出ているのか気になることがあります。授乳後に寝ついたと思ったらすぐに起きてしまったり、あやしてもあやしても泣き止まなかったりする時です。
 何をしても泣き止んでくれず、どんどん顔を真っ赤にして喉も裂けよとばかりに大声で泣かれた時にミルクを飲ませたら、嘘のように眠りこけたりすると、ああ母乳が足りないのかなあ、と思ってしまいます。おむつやベビー服がだんだん小さくなってきて、おしっこやうんちがたくさん出ているので、足りていると判断していたのですが、なかなか泣き止んでくれないことが続くと、本当はもっと飲みたいのかなあと不安になるのです。

「いいおっぱいです」

 子育て中の友達2人が助産師によるマッサージで母乳の出が良くなったと言うので、ものは試しと思い、友達が通っていた助産師さんのところに行ってみました。
 そのマッサージはなかなかの超絶技巧で、ピューピューと母乳を飛ばしながら、「産後2か月目にしてはとてもいい状態です。時間が経ってもあまり張らないけど、赤ちゃんが吸うと母乳がたくさん出てくる、いいおっぱいです。」と言われました。状態を評価してそう言ってもらえると、母乳が足りない訳じゃないからミルクを足さなくても大丈夫なんだと自信が持てました。
 両側の乳頭の先に常に水疱が出来ていて、授乳する度に剥き出しになった神経を刺激されたかのような激痛が走るのですが、それは母乳が勢いよく出てむせてしまうために娘が浅めに吸着するのが原因だと分かりました。出初めが勢いよく出るので少し手で搾乳してから吸わせるといいと言われたのですが、いろいろ試してみても一向に良くならず、ラノリン(羊の脂)を乳頭に塗ってラップをしています。特に悪化した時は搾乳してから哺乳瓶であげています。電動と手動の両方の搾乳器を買ってしまいました。

母乳育児のメリット、デメリット

 母乳育児にはメリットとデメリットがあります。メリットについては利便性や経済性についてよく語られることが多いですが、その他にもオキシトシンが分泌されて産後出血が減り、エストロゲン分泌が抑制されるため閉経前の乳がんが減り、卵巣がん、子宮体がんも減るとされています。
 また母乳を通して母親が食べたものの匂いと味を学習し、食育につながり、乳頭・乳輪を吸うことで顎や顔面が適切に発達し、SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防につながると言われています(母乳が出なくても吸わせるだけで効果があるそうです)。
 デメリットとしては、黄疸が長引きやすい、乳房・乳頭のトラブル、授乳するのに場所を選ぶ、などがあります。
 母乳育児にメリットがあることに異論は少ないと思いますが、すべての母親が完全母乳育児を目指すべきかと言うと、私はそうは思いません。
 母乳の出方も家庭の事情も個人の性格も人それぞれです。例えば「乳頭の刺激によってプロラクチンという母乳を分泌させるホルモンが出るので、夜中でも3時間毎に赤ちゃんを起こして吸わせましょう」とよく指導されます。それは理論としては正しいのですが、そんなことをしなくてもあふれるほど母乳が出る人もいれば、実行しても分泌が悪く自分を責める人もいます。母乳育児が思うようにいかなくて悩んだことのある人が実はかなりいることを、出産後に知りました。

「良い出産」と「その他の出産」

 母乳に限らず育児については、「母親なのだから」を枕詞に「~すべき」とか「~してはいけない」とか言われたり、「甘えている」とか「ふさわしくない」など当事者以外からいろいろ批評されたりしがちです。
 しかし、ビジネス戦略や受験などと違って、「母親のあるべき姿」というものは一部の幸運な人だけが達成できるものであってはならないと思うのです。もう子供を産んでしまった後に一部の人しか越えられないハードルを課してしまえば、脱落した母親とその子供はどうなってしまうのかと思います。
 同じことが出産にも言えると思います。全員が出来るはずのない出産(例えば医療介入のない出産や傷のない出産)を「良い出産」とし、その他の出産をけなす人がいますが、「良い出産」とは選ばれた一部の人だけのものであってはいけないと思います。(これについては語りだすと長いのでまたいずれ取り上げさせてください)
 日本人は真面目なので、あれこれ言うと一人で抱え込んで追い詰められてしまう人も多いと思います。それでメンタルヘルスに支障をきたした人が、「それなら初めから産むな」とまで言われてしまうことも。
 完全母乳でも、混合でも、人工栄養でも、母親が笑っているのが一番ですよ、と患者さんに言ってきました。その言葉にほっとして涙を流したお母さんは1人や2人ではありません。
 もっと気楽に育児が出来るよう、「母親のあるべき姿」のストライクゾーンを広げた方が、多くの母親と子供が幸せになると思うのですけどねえ。

参考 : 産婦人科治療2009 vol.99 No.4 母乳育児のすすめ(水野克己)

3.11から変わったもの、生まれるもの

 今度の日曜日で東日本大震災のあの日から、間もなく一年経ちますね。亡くなられた方々のご冥福と残された方々の心の平安を改めてお祈りいたします。
 私は17年前の阪神大震災の時、神戸市東灘区の自宅で被災しました。見慣れた街並みが一夜にして変わり果てた姿になり、多くの方が亡くなりました。そして悲しみから少しずつ立ち直り、地元を愛する人の手によって何年もかけて元とは別の魅力的な街に復興しました。阪神大震災以外にも地震、台風、火山の噴火などの自然災害が、過去に度々日本を襲い、その度に力をあわせて復興してきました。

覆されたゼロリスク信仰

 しかし、東日本大震災は被害の大きさもさることながら、日本人の価値観をそれまでのものから大きく変えてしまったという点で、他の自然災害と異なるものだと思います。
 それまでの日本では知らず知らずのうちに「ゼロリスク信仰」が浸透していました。つまり「食べ物も乗り物も建物も安全で当たり前。そうでなかったら誰かが責任を取って、安心して暮らせる状態にしなければならない」という考えの人が大多数だったということです。
 ですが、今回の震災と福島第一原発の事故でそれが覆ってしまいました。
 発生当初は混乱もありましたが、1年が経過し、多くの人が今の「安全が当たり前ではない日本」をそれなりに受け入れて暮らしているように見えます。もしも「安心して暮らせる日本」に戻れるのならそう願いますが、戻せるものとそうでないものがありますし、かかるコストや代償についても広い視野を持って日本全体の幸せを考えなくてはいけないと思います。
 よく使われる表現である「安心して暮らせる」ということは、言い換えれば、それが安全なのかどうか無関心のまま暮らすことが出来る、ということではないでしょうか。しかし、もうエネルギーや食糧問題などに無関心のまま、安心して暮らすということは許されなくなったと思います。
 安心して暮らすなどということが出来たのは、恐らくここ数十年の日本人、もしくは先進国の一部の人たちだけで、もともと有史以来、地球上に暮らすすべての生き物にとって生きるということは生き延びるということでした。

産科医療も「不確実」

 近年、「安全が当たり前」と思われているのは食べ物や乗り物だけでなく、医療も当てはまると思います。病院に行きさえすれば助かる、命が救われなければ何かミスがあったのではないか、という風に思っている人も多いのではないでしょうか。
 その最たるものが妊娠出産です。妊娠出産は病気じゃない、自然にしていれば母子ともに健康に出産を終えることができる、と多くの人が実際に思っています。もちろんこのブログの読者の方々は、現実はそうではないことをご存じだと思いますが。
 不確実な産科医療を生業とする私にとって、「もういちど安心して暮らせる日本に戻して私たちをその上に置いてね、それがお上の務めでしょ」というのは、「出産は安全だから自宅で産んでも大丈夫よね、何かあったら救急車が迅速に病院に連れて行って助けてくれるよね、それが医者の務めでしょ」というのと一緒で、無理な相談だと思います。
 何も考えずにいられるほど安全なものなんて、実際のところこの世にそう滅多にありません。震災と原発事故の爪痕はいまだ大きく復興と収束の道のりは長いですが、ゼロリスク信仰が浸透していた日本人にもう一度足元を見つめなおすきっかけとなったと思います。

あの日から

 3.11当初、妊婦さんたちは、妊娠を継続し子育てしていくことに強い不安を訴えていました。しかし、それも数か月で落ち着いていたように感じます。特に、ゼロリスク神話の崩れた日本で子育てすることを受け入れて、3.11後に妊娠した人たちは、なんだか肝が据わっているように思いました。
 3.11で変わったもの、失われたものは多いですが、覚悟ある親たちから新しい命が生まれ続けています。
 私の娘もその一人です。娘にはこれからどんな日本になっても生きていけるように、生き延びる能力を身につけさせてあげたいと思っています。生まれつき安全が当たり前でない日本に生まれた子供たちが、日本列島をさらに魅力あるものに継いでくれますように。

予防接種デビュー

 先週末にかけて寒の戻りがあったため親子で風邪を引いてしまい、娘は鼻がつまって苦しそうにしています。おっぱいを飲むときに口が塞がると苦しいのか、いつもより浅く吸い付くので私の乳首はボロボロに。しかも娘は眠りが浅く、夜中に何度も泣くので、私も眠れません。苦しそうにしているのでかわいそうです。

 娘が生後2か月になって、予防接種を受けさせるという重要なミッションが浮上しました。区役所で母子手帳と一緒に予防接種のクーポンをもらったのですが、定期接種のものしかついていなかったので全貌がよく分かりませんでした。
 私は主に総合病院で勤務してきたので、生後1か月を過ぎた赤ちゃんは小児科の先生が診てくれ、産婦人科医が診ることはありませんでした。そのため、予防接種についての知識がお世辞にも十分だとは言えず、恥ずかしながら妊娠してから勉強し始めました。

ワクチンで防げる病気

 予防接種には定期接種と任意接種のものがあり、定期接種は無料で受けられますが、任意接種は接種費用を自己負担しなければなりません(自治体によって補助が出ることもあります)。また、ワクチン接種後に重篤な有害事象が起きた場合に任意接種だと十分な補償が受けられません。
 このように主に経済的な違いがありますが、「任意」接種は別に「受けさせなくてもいい」というものではありません。ワクチンで防げる病気(VPD:Vaccine Preventable Diseases)は数多くあり、定期接種も任意接種も物言えぬ我が子のために漏れなく受けさせてあげることが親の責務のようです。

スケジュールが大変

 ワクチンの種類はたくさんあり、複数回接種しないといけないものも多いので、スケジュールを組むのが大変に思えますが、日本小児科学会の推奨するスケジュールがあるので参考になります。複数のワクチンを同日に接種する同時接種をしてくれる小児科でないと、このスケジュールはこなせないので、小児科医で作る「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろう。」の会のホームページに載っていた近所の小児科で打ってもらうことにしました。
 肺炎球菌ワクチン、インフルエンザ菌ワクチンを含むワクチン同時接種後の乳幼児において複数の死亡例が報告されたため、一時ワクチンの接種が控えられたり同時接種を恐れる風潮ができたりしたようですが(報道のされ方にも問題があったと思います)、因果関係があるとは言えず日本小児科学会は同時接種を推奨しています。
 ワクチンの種類が増えたので、実際のところ同時接種にしないとワクチンをすべて受けることが難しくなっています。

娘のファーストワクチン

 生後2か月の娘のファーストワクチンは、インフルエンザ菌、肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルスのワクチンでした。すべて任意接種ですが、インフルエンザ菌と肺炎球菌のワクチンは神戸市が全額補助してくれました。この2つの菌で小児の細菌性髄膜炎の約4分の3を占めるため、ぜひとも受けさせたいワクチンですが、高額なのでとても助かります。
 B型肝炎とロタウイルスのワクチンは自費で、合わせて2万円ほどでした。子供手当など一瞬で吹き飛びますが、意味のある出費です。小さい子供たちは遊ぶときに舐めたり噛んだりして感染する可能性もあるので、B型肝炎のワクチンは打っておいた方が良いと小児科医の同級生に言われました。娘がワクチンを受けた小児科ではB型肝炎のワクチン製剤は事前に言って取り寄せてもらう必要がありましたが、そのようなところが多いようです。
 ちなみに私の大学では臨床実習が始まる前にB型肝炎のワクチンを打ってくれたので私は抗体を持っています。

産前に情報提供を

 予防接種はシステムもスケジュールも簡単とは言えず、出産後に育児に明け暮れながら情報を集めるのは負担が大きいと感じました。出産前に、妊婦健診の際にでも情報が与えられるといいと思うのですが、前述のように産婦人科医の私も自分が妊娠するまであまり詳しく知りませんでした医師が診療時間内に説明するのは物理的に難しいと思いますが、何らかの形で産前に情報提供するべきだと思います。

 ロタウイルスのワクチンは飲むワクチンでしたが、他はすべて注射だったので、娘は大泣きでした。
 次は生後3か月になったら肺炎球菌、インフルエンザ菌、B肝、ロタウイルスに加えて3種混合です。まだ時間はありますが、それまでに風邪を治さなくてはいけませんね。

妊娠中の旅行 大丈夫?

 先週、初めて娘を連れて3日間ほど東京の家に帰ってきました。新大阪から新幹線で帰ったのですが、N700系のぞみには11号車に授乳やおむつ交換ができる多目的室があり、子連れの乗客は11号車を選んで乗っているようです。新大阪―品川間はおよそ2時間半なのですが、出発してすぐに授乳した後、品川に到着するまでずっと寝てくれ、とても楽でした。ビギナーズラックというところでしょうか。
 小さい子供を連れて遠出をすると、授乳できる場所、おむつが換えられる場所を気にしなくてはならないし、公共の場で泣いたりすると「静かにさせなくちゃ」と焦ってしまうので何かと大変です。そのため、子供が生まれる前、つまり妊娠中にお出かけしておきたいと考える人も少なくないようです。誰が作った言葉なのか知りませんが、「マタ旅」という言葉も生まれ、妊娠中の旅行を勧める動きもあるようです。

「マタ旅」の注意点

 妊婦健診をしていると、「今度旅行に行ってもいいですか」と妊婦さんに質問されることがしばしばあります。産婦人科医同士で話していると、医師もしくは助産師によって答え方にばらつきがあるようです。以前「医者のホンネ」という記事にも書きましたが、私自身が旅行好きということもあり、妊娠中だからといって旅行に行ってはいけないという指導は基本的にはしていません。
 ただ、積極的に妊娠中の旅行を勧める風潮には少し抵抗を感じます
 「マタ旅」は商業的な理由で勧められていることが少なくありません。いわゆるマタニティ雑誌は商業誌ですから多くの雑誌や書籍と同様に「売れてなんぼ」なので、読者受けし、広告主が付きやすい紙面を作ることが求められます。その結果、読者が煙たがるような硬い内容や怖がるようなリスクに関する記事は敬遠され、ワクワクするような楽しい記事が誌面を賑わせるようになるのです(もちろん真面目な読者も多いですからためになる内容もあります)。
 妊娠中に来てもらい、子供が生まれてから再訪してもらおうという考えもあってか、マタニティ雑誌に広告を出すレジャー施設もあるため、そこへ遊びに行くことを妨げるような記事は当然書かれません。結果として妊娠中に旅行することにリスクがあることが読者には伝わらないことになるのです。

安定期=ノーリスクではない

 「安定期だから」「妊婦健診で特に異常だと言われていないから」と言って、旅行に行っても絶対に大丈夫、という訳ではありません。安定期という言葉はよく誤解を生むのですが、安定期=絶対に何も起こらないということではありません。
 母子手帳や検査データなどを常に携帯すること、旅先で何かあった場合にかかりつけ以外の妊婦を24時間体制で診てくれる産婦人科があるかどうか確認しておくことなどは当然のことです。ローリスクであることは絶対安全(=ノーリスク)とは大きく違うのですが、そこを理解している妊婦さんはそれほど多くない印象です。

妊婦さんは全てに優先か

 以前、日本新生児・周産期医学会で「東京近郊の巨大テーマパークからの産科緊急症例についての検討」についての発表がありました。ある巨大テーマパークからの救急搬送を一手に引き受けている病院からの発表で、多くの参加者が興味を寄せていました。テーマパークというのは立ちっぱなしで並んだり歩き回ったりしないと楽しめない施設なので、体調に影響したり切迫早産徴候が出たりしやすいとも言えます。
 妊婦さんを優先し、並ばなくても乗り物に乗れるようにするべきだと考える人もいるようです。他の公共の場では妊婦さんは優先されるべき存在であることに異論はないと思いますが、テーマパークにおいてはどうでしょうか。子連れの客も多い中、妊婦さんだけが優先されるというのは、個人的には不自然に感じます。妊娠しているからと言って自宅と産院周辺から出てはいけないというのは極端だと思いますが、妊婦だからどんな場でも優先されて当然というのはおかしいですよね。

 リスクを理解した上で転ばぬ先の杖を持って自己責任ですれば、妊娠中の旅行は構わないと思います。何事も要は常識とバランスです。巨大テーマパークを妊婦さんに楽しんでもらうためには近隣の病院のバックアップが欠かせません。その病院の医療従事者たちが気持ちよく搬送を受けられるために、テーマパーク側から配慮があるといいのですけどねえ。

なぜ「虐待」が起こるのか

 早いもので4月に入りました。元旦生まれの娘は生後3か月になりました。桜はまだですが、暖かくなってきたので、娘を連れて時々外出しています。

ベビーカーと春の町へ

 外出する時には、オムツを換えたり授乳したりする場所を常に思い浮かべておかなくてはいけません。また、ベビーカーでスムーズに行けるよう、段差がなくエレベーターが設置してあるルートを先回りして考えておかなければなりません。駅や地下街など、街には階段を使わないと移動できない場所がしばしばあることに、ベビーカーを押してみて初めて気づかされます。
 そして、ベビーカーは思ったよりも小回りがきかず、混雑している場所で迷惑にならないようにさばくのはなかなか大変です。他の人から見れば、急いでいる時に自分の前でベビーカーがもたもたしていれば邪魔なことは分かるので、「すみません」と謝ってばかりです。

泣いた時どうする?

 そして、何よりも神経を使うのは、子供が泣いた時ではないでしょうか。抱いたりあやしたりして泣き止む場合もありますが、効果なくどんどん大きな声で激しく泣き出しても、伝家の宝刀である「おっぱい」は外出先では使える状況ではないことがほとんどです。
 外出先のみならず自宅でも、子供が泣きやまないという状況は母親にとってストレスフルなことですよね。家族をはじめ、周囲から「泣き止ませろ」という目で見られてはなおさらでしょう。

3か月の子に平手打ち

 先日、生後3か月の赤ちゃんが泣き止まないので、母親が平手打ちをし、首を締めたという痛ましいニュースがありました。普通に考えて、生後3か月の赤ちゃんに平手打ちをしたからといって泣き止むとは思えません。お腹が減った、ゲップが上手く出ないなど何か不快な思いをして泣いていたであろう赤ちゃんが、そんな目に遭ってしまったとはかわいそうでたまりません。
 母親は悪意があってそのような行為に及んだのでしょうか。悪意というより自分を制する余裕を失ったのではないかと私は推測します。痛ましい事件が繰り返されないために有効なのは、母親を責め、罰することなのでしょうか。虐待事件が起こると、母親に非難が集中し犯罪者として報道されます。そんな奴は親になる資格なんか無かったのに、ちゃんと育てられないなら妊娠などしなければ良かったのに、と。

なぜ「虐待」が起こるのか

 実際に望まぬ妊娠は、妊婦健診を受けていなかったケースや自分自身が虐待を受けていたケース同様虐待の危険因子なので、子供の立場に立てば責任を持って育てる覚悟がなければ妊娠すべきでないと思います。また、女性自身にとっても、自主的に望んで妊娠すべきだというのはウィメンズヘルス(女性の健康)の大原則です。
 しかし、望んだ妊娠であれば虐待しないということではありません。不妊治療により授かった子供が虐待されやすいということも言われています。危険因子の有無はあれど、妊娠する前に子供を虐待する女性を判別するのは不可能です。それは父親となる男性も同じです。
 労働政策研究・研修機構の調査によれば、母親の8人に1人は自分が虐待しているのではないかと思い悩んだことがあるそうです。育てやすい子供ばかりではありませんし、子育ての向き不向きもあると思います。
 産んだからと言って無条件に子供がかわいいと思えるとは限りません。母親の約3割が子供をかわいいと思えないと悩んだことがあり、1割以上が産後うつ病になると言われています。赤ちゃんを出産すれば自然と「母性」が湧いてきて、どんな苦しみにも耐えられるようになるというのは幻想です。

母親1人に

 虐待の背景には社会的なものをはじめ様々な要因があると思いますが、母親が余裕を持って子供に接することが出来るように、父親をはじめとした家族や周囲の人たちが積極的に育児に参加することが、予防につながるのではないでしょうか。そして、それを補う公的な育児サポートがあれば良いと思います。
 母親1人に育児を負担させ、責任を負わせることが虐待を生むと思えてなりません。理解のない批判は孤立を産み、しわ寄せは罪のない子供に来ます。虐待のニュースに触れた人たちが、非難だけで終わらせないことを願います。

家族に感謝!

 かく言う私も、娘が寝ている隙に毎週原稿を書きながら、娘の泣き声に何度も中断され、いつもびくびくしています。そんな時、娘をあやしてくれる人がいなければイライラしてしまうと思います。育児を楽しいと思えているのは家族の協力があるからです。
 幸運なことだと思いますし、本当に感謝しています。というわけで、娘とお風呂に入ってきます!

働くのは母親のわがままか

 関東で桜が咲き始めた、と思ったら一気に満開になりました。週末に娘を抱っこして家族で花見に行きました。何歳くらいになったら桜の季節の素晴らしさが分かってくるのでしょうね。

東京に帰ってきました

 今月初めに小児科に行き、ヒブ、肺炎球菌、ロタ、B型肝炎の2回目と3種混合の1回目の予防接種を受けたあと、里帰りを終えて東京の自宅に帰ってきました。ベビーベッドが届いて、自宅はすっかり子育て仕様です。
 夫の帰りが早い時は夕飯を作ってもらったり、一緒に娘をお風呂に入れたりして何とかこなせているのですが、帰りが遅い時は1人で全部しないといけないので、もともと家事能力の低い私には大変です。ごみ一つ捨てに行くのに娘を置いて行くわけにはいかないので、すんなりと行きません。慣れると何とかなるものだと信じたいです。

初めての保育園

 里帰りの終わりと共に、少しずつ社会復帰しています。大学院に通ったり診療をしたりですが、娘をみてもらう人を確保するのが懸案です。今のところ実家の母にみてもらったり、クリニックの院内保育園に入れたりしています。
 里帰り中に娘を実家の母に預けて出かけることはありましたが、知らない人に預けるのは初めてでした。そのクリニックの院内保育園はスタッフの子供が数名いるだけなのですが、復帰初日に他の子供達が病児保育の方に行ってしまっていたので、ベテランの保育士さんが1対1でみてくれました。昼休みに授乳に行くこともでき、娘はずっとご機嫌でした。
 しかし、このような恵まれた条件の職場ばかりではないので、家の近くの保育園に入れるようにならないと全面復帰とはならず、それは少し先になりそうです。
 両親が働いている子供のための保育園ですが、保育園に入れない待機児童の多さが常に社会問題となっています。おびただしい数の子供達が保育園に入れず、母親たちは働くことができずにいるそうです。国は少子化の解消が急務だと言いながら、改善の兆しがないのはなぜなのでしょう
 同時期に妊娠した近くに住む友達が保育園についていろいろ調べて教えてくれたので、自分ではあまり勉強することのないまま、結局その友達の子供と一緒に近所の認可外の保育園に入ることになりました。区立や認可の保育園に比べると少し高めなのですが、自宅から非常に近いところにあるので助かります。
 かわいい娘を預けて働くことに抵抗もありましたが、すでに子供を預けて働いている女医さん達から「保育園は、家庭では作ることのできない環境を子供に与えてくれる」「保育園は素晴らしいところだよ」という話を聞き、少し安心しました。

「預けるなんてかわいそう」

 しかし、一世代上の人たちは特に、「子供は母親といるのが幸せ、預けるなんてかわいそう」という考えが根強いようです。最近仕事で出会った人に「子供を預けて働くのは、母親のわがままであって、子供は被害者だ」というようなことを言われました。その人に頼まれた仕事のために私は子供を預けることになっていたので少し驚きましたが、その人は正直に言っただけで、そのように考えている人は少なくないと思います。
 子供を預けて働く人には、みなそれなりに理由があると思います。経済的な理由はもちろん、キャリアややりがいを失いたくないということもあるでしょう。医師になったということは医師になりたかった誰かを1人蹴落として医師になったということですから、働くことが社会に対する責務であると私は考えています(もちろん本人の意思に反して他人に強制される謂れはありません)。
 母親が働くことを単なるわがままとみなすのはあまりに一面的だと思います。
 私の印象に強く残っているエピソードが一つあります。ご両親が共働きだった先輩の結婚式の花嫁の手紙で、「お母さんは忙しくていつも参観日に来ることはできなかったけれど、私はそれが誇らしかった。私もお母さんみたいにずっと働きたい」と先輩が言っておられたのです。ずっと一緒にいてあげられなくても、娘の憧れとなるなんて、なんとかっこいいお母様でしょうか。

愛情だけは伝わりますように

 私にとっては、子育ても子供を預けて働くことも初めてのことで、娘にとって何がベストなのか分からないし、自分の選択に自信があるわけではありません。将来娘に「もっと普通のお母さんのもとに生まれたかった」と言われたらどうしようと、実は妊娠中から思っていることです。でも、こればかりは分からないので、手探りで頑張るしかありませんね。どうか愛情だけは伝わりますように・・・。

「自然出産」を礼賛するメディアの背景

 先週末、日本産科婦人科学会が開催されました。幸運にも実家のある神戸で開催されたので、娘を預けて参加してきました。託児所があるので子連れのドクターも多く、中には子連れで講演を聴いている方もいました。出会う人皆からお腹に視線を注がれたのですが、まだたるんでいるのであまり見ないで欲しかったです。

 先日、用事があって、ある新聞社に行きました。娘を連れて行ったので編集部の人たちと出産話に花を咲かせていると、そのうちの1人の方が自然出産信仰で有名な「産婦人科医のいる助産院」のような施設でお産をされたことが分かりました。私は興味津々だったのでいろいろ話を伺いました。

自然出産のてん末

 その施設のドクターは非常に「自己管理(特に体重と運動)」に厳しく「そんなんじゃ自然出産できないよ!」と度々叱責されるそうです。その方はそれが辛くて分娩場所を変えようかと考えたこともあったらしいのですが、同じく新聞社に勤めるご主人がその施設に心酔していたため、結局そこで産むことになったそうです。
 陣痛が来てから37時間かかってなんとか経膣分娩されたそうなのですが、もの凄く大変な思い出になったそうです。会陰保護にこだわったせいだと推測するのですが、赤ちゃんの頭が出かかった状態で長く留められたため、会陰は裂けずに済んだものの産後に感覚が麻痺して尿もれが激しくて大変だったそうです。
 その方は、「年齢のこともあるし、大変な思いをしたので出産はもう考えられない。自然分娩によって、子どもへの愛着が特別に増したとは思えない。自然分娩であってもなくても、子どもへの愛情は変わらない」と話していました。

追記 : その方は、辛いこともあったけれど、その産院で産んだことは後悔しておられず、厳しい指導のおかげで妊娠中はずっと健康でした。生まれた子どもも病気知らずで感謝されているとのことです。

自己管理指導の落とし穴

 多くの助産院や自然出産を謳う分娩施設では、安産を達成するために厳しく自己管理を指導される事が多いようですが、それには落とし穴があると思います。
 まず、自己管理したからと言って安産できる訳ではありません。骨盤の形や陣痛の強弱、赤ちゃんの回り方は自己管理によって変えられるものではなく、皆が医療介入を必要とせず経膣分娩できるという訳ではありません。
 逆に、特別自己管理らしいことをしなくても、出産の約9割は医療介入を必要とせず自然に産まれるため、安産だったからといって自己管理のおかげとは言えないのです。
 もちろん妊娠中の健康的な食生活と適度な運動は良いことですが、それによって「出産は自己管理でコントロールできる」という間違った全能感を持つことは危険だと思います。出産に続く子育ては親の思い通りにコントロールすることは出来ませんし。

帝王切開は「敗北」か

 安産は自己管理で得られるという考えを持ってしまうと、帝王切開は「敗北」になってしまいます。その方によれば、病院に搬送されてしまって帝王切開になった方はその施設の集まりなどには来なくなってしまうそうです。
 私が臨床で出会う限りでも、「前の出産で下から産めなかったから」とVBAC(帝王切開後経膣分娩、約100人に1人子宮破裂が起こる)を希望する人は後を断ちません。緊急時の体制が整った施設でのVBACは、もう一度帝王切開をするよりも母体への負担が少ないというメリットもありますが、赤ちゃんにはリスクを負わせることになります。
 また、昨今の産科医不足によりそのような施設は激減しています。
 しかし、助産院や「産婦人科医のいる助産院」の中には体制が整っていないのにVBACを扱っているところもあり、緊急時に搬送を受け入れる高次医療施設では問題となっています。そのような施設でVBACをするということは、安全性より産み方にこだわっているということなのでしょうか。それとも危険性を甘く見ているのでしょうか。

マスコミ業界に多い助産院分娩

 助産院での分娩や自宅出産は分娩全体の約1%しかないはずなのに、その新聞社の社内には他にも助産院や自宅で出産した人たちの名前が上がっていました。他にも、取材などでマスメディアに関わる方とお話していると助産院分娩をされた方の話を聞く機会が時々あります。しかも、キャリアを積んでから高齢という危険因子を持ちながら助産院分娩をする人が多いようです。
 何故その業界の人たちが一般にはあまり選ばれない分娩施設を選ぶ傾向にあるのかはっきりとは分かりませんが、何かを表現する職業なので「普通じゃつまらない」、「私らしく」というこだわりを持たれるのかも知れませんね。マスメディアから流れてくる情報に、病院不信と自然出産賛美の匂いを感じることは度々あるのですが、その背景を垣間見たような気がしました。

医療介入は最小限がいいけど

 多くの産科医が医療介入は必要最小限にすべきだと考えていますし、私も自然経過に任せたお産やリラックスできる雰囲気は好きです。いろんな病院に勤めてきましたが、出産の管理や雰囲気は病院によって様々です。多数派だからと言って病院のお産が完璧だとは思いません。
 妊婦さんに満足してもらえるケアには人手やコストがかかるのは事実ですが、人手不足を言い訳に1人1人のお産をなおざりにしてはいけないし、病院助産師も分娩介助の技術をもっと磨いて、仰向け以外の姿勢で出産できるといいと思います。ですから、病院での出産に不必要な医療介入をされるのではないかという不信感や出産の多様性を認めてほしいという希望は理解しているつもりです。
 ただ、独立した助産院は何かあった場合に高次医療施設へ搬送するのにタイムラグが生じ、搬送先へも負担がかかります。なので、院内助産院のような体制が望ましいです。

すべての出産を肯定してほしい

 ただ、ペンという力を使って「自然出産」や助産院のような施設を賛美し、病院での出産を暗にけなすことはすべきでないと思うのです。どんな出産になっても、子供を産めば母親となって子育てをしなくてはなりません。ごく一部の出産を理想として礼賛し、一般の方に刷り込むよりは、すべての出産を肯定する方が多くの人が救われるペンの使い方ではないでしょうか。
 ということを、その新聞社で熱く語ってきてしまいました。互いに批判し合うことの多い医療業界とマスメディアですが、お互いに顔が見えるようになれば関係性が変わるかも知れないと思っています。双方とも皆の健康を願っているのは同じでしょうから。

出産方法は誰が決める?

 今週に入ったあたりからかなり暖かくなってきたので、ベビーカーに取り付けていたフットマフ(ベビーカー用のおくるみ)を外しました。娘は日増しにぷくぷくしてきて、新生児の時にぶかぶかだった洋服がとうとう着られなくなり、ワンサイズ大きいものを着るようになりました。初めの1か月、娘が見た目に大きくなっておらず、母乳が出ているか不安な日々を過ごしていたことが懐かしく思い出されます。

 前回の自然出産に関する記事には多くの反響をいただきました。いただいたコメントにお答えする意味でも、もう少し掘り下げたいと思います。

帝王切開か、経膣か

 いただいたコメントの中にもご意見がありましたが、帝王切開で産むか経腟分娩を試すか、自分の出産方法は自分で決めたいと思っておられる方は少なくないかもしれません。
 例えば、赤ちゃんが大きめだと言われていて、体力に自信がないなどの場合に「陣痛が来る前に帝王切開をしてもらいたいです」という妊婦さんもおられますし、陣痛が来たものの出産が長引いてバテてしまい「もうお腹を切って出してほしい」という妊婦さんもいらっしゃいます。
 こういった妊婦さんには希望通り帝王切開をするべきでしょうか。答えはイエスかノーではっきりと答えられるものではありません。帝王切開は原則的に赤ちゃんを救うための手術ですが、経膣分娩より母体には負担がかかります。経膣分娩と比べて出血量が多くなり、死亡率は予定帝王切開で約2倍、緊急帝王切開で約4倍になります。産後の感染症の頻度は約8倍、血栓症の頻度は7~10倍となります。
 いくら帝王切開が安全になったとは言え、経膣分娩に比較した合併症の多さを考えると、できるなら経膣分娩の方が母体に優しいということが理解していただけると思います。母体にこれだけリスクを伴う手術を、医学的適応がないのに妊婦の希望だけで行なうことは適切とは言えません。

医師の間でも割れる意見

 医師も水晶玉を持っている訳ではないですし、出産というものは終わるまではどういう結果になるか誰にもわかりません。妊婦が帝王切開を希望した時にはその通りにしなかったけれど、後に結局帝王切開になってしまうことや、経腟分娩に至ったものの裂傷が非常に大きくて後遺症が残ったり、赤ちゃんが元気に産まれなかったりするケースもあります。そうなった場合、医療側と妊婦さんの信頼関係が揺らぎかねません。
 昨年の日本産科婦人科学会で若手医師が企画した討論会で、医学的に適応のない妊婦の帝王切開希望例はどうするべきかというテーマがありました。
 主に大学病院などの大病院の医師たちは、「本人が希望しているという理由だけで、帝王切開を行うべきではない」と考え、個人開業の先生方は「希望に沿わないで何かあった場合、大病院なら患者は納得してくれるかもしれないが、小さな施設ではそうはいかない」という意見が多かったようでした。このような社会的背景もあり、産科医の意見も1つではないのです。

妊婦さんの希望と異なる場合

 逆のケースで、医学的に帝王切開が必要なのに妊婦さんが経腟分娩を希望する場合もあります。胎児心拍が危険なパターンを示しているのに、「まだたくさん子供を産みたいので、帝王切開は嫌です。今回の赤ちゃんのことはもういいのでお腹を切らないでください」という妊婦さんも実際にいます。
 妊婦の同意を得ずに帝王切開をする訳にはいきませんが、赤ちゃんを見殺しにするわけにもいかないので、帝王切開を受け入れてもらえるよう説得することになります。VBAC(帝王切開後経膣分娩)や骨盤位(逆子)については施設や担当医によって方針が違うこともあり、個別の意思疎通が必要となります。
 産科医療者はしもべでも、ボタンを押せばその通りに動く機械でもありません。医学的に適切な方針と妊婦さんの希望が異なった場合は、最終的に医学的に妥当で妊婦本人も納得できる出産になるように密にコミュニケーションを取っていくのがプロフェッショナルだと思います。

 「分娩方法を自分で選ぶということ」について書いてみたところ、思ったより長くなってしまいました。お産というものは奥が深く、簡単に語り尽くせるものではありません。逆に、シンプルな言葉でまとめてあるものは疑ってかかってよいと言えます。
 「リスクを理解していればどんなお産を選んでもよいか」ということについても書きたかったのですが、次回書かせていただきます。

リスクに納得すればどこで産んでもよいか

 日本全国、大型連休ですね。実家から東京に帰るために、娘を連れて新幹線に乗っていたら、同じ車両のデッキで倒れた乗客がいて、「お医者さんはいませんか」とコールがかかりました。娘を抱いていたので迷いましたが、「産気づいた妊婦かも知れぬ」と駆けつけました。
 倒れた方はおじいさんで、男性の患者さんを全く見たことがない私は戸惑いましたが、大事には至らず結果的には良かったです。
 連休中で子連れの乗客が多く、みんなそれなりに音を立てているので、普段の平日ほど「静かにしなくては」と気を張らずに済みました。

 このところ連続して出産というテーマについて書いていますが、今日は先々週の「自然出産を礼賛するメディアの背景」という記事にいただいたコメントにもあった、「リスクを理解し納得していればどんな施設で産んでも良いか」ということについて掘り下げてみたいと思います。自分で納得すれば、産科医がいない開業助産院のような施設や自宅を分娩場所に選んでも良いのでしょうか。

何が起こるかわからない「出産」

 言うまでもないことですが、健康で妊娠経過に問題のない人でも何が起こるか分からないのが出産です。
 へその緒の圧迫などが原因で、急に赤ちゃんが元気とは言えない状態になることや、無事に赤ちゃんが生まれた後に母体が大出血することは、それなりに分娩数がある病院に勤めていれば日常茶飯事です。
 このようにスムーズに行っていたはずが急変した場合、その場で対処できないとなると、母子の生命と健康を守るためには対処できる病院に搬送しなくてはいけません。搬送というステップを経ることで、必ず医療介入にタイムラグが生じます。受け入れ病院がすぐに見つかって、救急車がすぐに出動してくれたとしても、搬送先の診察台に移るには何十分もかかります。
 実際は、搬送しなくてもいけるんじゃないかと迷ってしまったり、受け入れ病院がすぐに見つからなかったり、救急車が出払っていたりして(軽微な症状でのタクシー代わりの利用は控えていただきたいです!)、時間はもっと無情に過ぎていきます。このタイムラグはしばしば、後遺症が残ったり命を失ったりする分かれ目となります。

胎児が危険にさらされても…

 リスクを納得した上で、「それでも私はそこで産みたい」ということは許されるでしょうか。がん患者が「死んでも構わない、手術は嫌だ」と言うのと異なるのは、自分1人の体ではなく、お腹の赤ちゃんを巻き込んでいることです。
 私個人の感覚では、赤ちゃん自身がこの世に生を受けることを望んだのではなく、親たちのエゴで自分のお腹に宿したのだから、可能な限り守ってあげることが母親の責務であるように思います。
 しかし、日本の法律上、胎児は一人前の人権を持っていないのです
 例えば、胎児を死に至らしめても刑法上は殺人罪ではなく母体に対する傷害罪となります。母体と胎児の両方が命の危険にさらされた時、我々産科医療者は母体を優先するのが不文律です。赤ちゃんは母体の外に出るまで一人前の生存権を持ってはいないのです。従って、母親が胎児を危険にさらしてもそれを止める権限をもつものはありません。ですから、母親が望めば危険な場所で出産してもよいと言うこともできなくはないのです。

「成功者」ばかりではない

 「リスクには納得するから、好きな場所で産みたい」という人の中には、「出産で死ぬのなら、それが赤ちゃんの運命だから納得できる」と考えている人よりも、なんとなく自分は大丈夫だろうと考えている人の方が多いのではないかと思います。周囲に数人の幸運な成功者がいれば、ますますそのように考えてしまうでしょう。
 実際には、母児共に無事に出産を終えられなかった人はその体験を語る気になれない人も多いでしょうから、成功した人の話が耳に入りやすいということもあるのですが。100個に1個「当たり」が入っているくじも、1度引くだけなら当たる気がしないものです。それを毎日何個も引いている産科医は年に何回か当たりますから、一生に数回出産するだけの方とは感覚が違うのが当然かも知れません。

院内助産院をすすめたい

 出産は文化的な側面もあり、思い入れやこだわりは各人あって当然だと思うので、私は出産の多様性を大事にしたいと考えています。だから安全性もある程度クリアした院内助産院というシステムが良いのではないかと思っています。実際にそれを運営している病院に勤めていたこともありました。
 もし、院内助産院じゃだめだ、建物が独立した助産院じゃないとだめだという人がいるなら理由を聞いてみたいものです。

卵子が老化するなんて

 生後6か月になり、離乳食をぼちぼち始めています。おかゆをすりつぶして食べさせているのですが、そんなにたくさん食べるものではないですね。親たちが食べているものには手を伸ばすのですけど。毎日作るのは大変なので一度に作って小分けにして冷凍していますが、徐々に量と種類を増やしていかないといけないので今後はさらに手間がかかりそうです。
 真面目な友人が、本に書いてある通りいろんな食材を手間暇かけて与え続けたにもかかわらず、子供がすごく偏食になった、ああいうのは親のせいではなくその子のもつ性質だ、と言っていたので、あまり気張らず行こうと思います。

 今年になってNHKの「クローズアップ現代」や「NHKスペシャル」で、卵子は老化する、年齢が上がると妊娠しづらくなるということが放映され、ものすごい反響だそうです。その事実に衝撃を受けた人が多かったそうですが、産婦人科医の私からすれば、そんなごく当たり前のことで衝撃を受ける人がそんなに多いとは、そちらのほうが衝撃でした
 しかし、聡明で教養のある医療関係者ではない友人にきいてみたところ、「確かにそのような事実を知る機会はないし、芸能人が40歳前後で妊娠したというニュースを見聞きしていれば、40歳でも普通に妊娠できると思ってしまっても無理はない」とのことでした。確かにそうかもしれません。人間というものは自分にとって都合のいい情報が頭に残るものですから、「私はまだまだ大丈夫」と思っても仕方がないかも知れません。

妊娠可能年齢に限りが

 高齢出産のリスクについては以前から世間の関心を集めていましたが、「出産が大変」「先天異常児が増える」ということばかり言われていて、どうもずれていると感じていました。確かに体力低下と共に分娩する力は弱まりますし、染色体異常も増えますが、出産は医療の力を借りればなんとかなることがほとんどですし、染色体異常の確率も40歳で約80分の1ですから80分の79は正常なのです。それよりも高い流産率と(40歳で約4割)、妊娠できにくくなることの方が問題であると訴えてきました。(妊娠前には「あなたはどうなの?」と言われながらでしたが)
 「妊娠可能な年齢には限りがある」ということを言うと、必ず「私の知り合いは○歳で妊娠しました」のように言う人がいるのですが、現実に50代でも妊娠する人はいます。それは非常に稀な例であってその陰には妊娠したくてもできない同じ年齢の女性がたくさんいるのです。それは表に出てこないので知られないだけです。
 40代前半くらいまでなら実際に妊娠している人も珍しくないのでまだしも、50代の患者さんと子宮筋腫の治療について話している時に「子供はもう要らないんですけど」と言われたりして、「え、今でも望めばできると思っているの?」と心の中で驚くことがしばしばあります。「月経がある」=「妊娠できる」だと思っている人も多いです

ラインを引くなら「35歳」

 番組では「誰も教えてくれなかった!」と言っている女性が出てきたのですが、高齢でも不妊治療に望みをかけている人を傷つけたくないという気遣いもあり、卵子の老化は言いにくい話題であったのは事実だと思います。ただ、そのせいで次の世代の女性が「もっと早く教えてほしかった」と後悔するようなことになって欲しくないので、「いつかほしい」といつまでも先送りにしないで欲しい、どこかにラインを引くならやはり35歳、それまでに人生において子供を望むか望まないか決めてほしい、ということを、声を大にして言っていきたいです。
 ただ、卵子が老化するということを知りつつも妊娠できる環境が整わないために年を重ねてしまうという女性の方が多いと思います。私自身もその一人でした。ただ「早く産まないと」と言われても、「分かってるって!」と思うだけです。仕事のこと、経済的な事情などありますが、自分や患者さんたちの例をみても、男性の腰が重いというのがネックになっていることが珍しくないです。妊娠というと女性の問題のように扱われがちですが、男女の問題です。世の男性たちには、子供を持ちたいと思っている30代女性とその気もないのにお付き合いしないで欲しい、自分のライフパートナーとはできるだけ早くその問題について意思疎通を図ってほしい、と強くお願いします。

 自分でやってみて、高齢出産には心に余裕を持って育児ができるという良い面もあると感じています。これが十年前に妊娠していたら、経済的に苦しくキャリアへの焦りで今のように育児を楽しんだりはできなかったと思います。だから早ければ早いほど良いとは思いません。しかし、妊娠できなければ始まらないので、最低でも知識は持っておいた方がいいと思います。

カンガルーケア、誤解しないで

 先日、周産期新生児学会の学術集会があり、参加してきました。初日に柳田邦男さんの講演があって聴きたかったのですが、学会場の託児所はすでにいっぱいで、日曜日で他に子供を預けるところがなく断念しました。翌日から参加したのですが、抱っこひもで赤ちゃん連れで参加している人もちらほらいました。
 いろんなセッションを聴いて、周産期医療に関わる人たちは一人でも多くの赤ちゃんを少しでも良い状態で助けたいと日々努力し、学会のような場で情報共有しコンセンサスを図っていることを改めて感じました。時々、出産において医療は邪魔者扱いされるので、私たちはお節介なことをしているのではないかと思わされることがあります。また、産科医療は訴訟が多いから、防衛的に医療介入をされてしまうのだと言われることもあります。しかし私たちの根幹は、純粋に一人でも多くのお母さんと赤ちゃんを救いたくて医療をしているということなのだと再確認しました。

同名のケアと混同されることも

 今回の学会で話題になっていたことの一つが、早期母子接触(early skin to skin contact)です。出産後すぐに母親の胸元で皮膚と皮膚を触れ合わせることですが、「カンガルーケア」という表現が使われることが多く、NICUでの同名のケアと混同されることがあります。
 また、赤ちゃんをタオルで巻いたままだったり、赤ちゃんをコット(新生児用のベッド)に寝かせてお母さんの隣に置いただけでも「カンガルーケア」と呼んでいる施設もあり、用語や意味合いが混乱しているようです。読者の皆さんはおそらく報道でこの用語を目にしたことがあるのではないかと思います。
 早期母子接触は、母親が赤ちゃんに愛着が湧く、育児に自信が持てる、完全母乳栄養率が高くなるというデータがあるのですが、昨今の「カンガルーケア中の事故」などの報道でマイナスイメージを持っている人も少なくないと思います(以前にこちらのブログでカンガルーケアを取り上げた時も賛否両論のコメントをいただいたように思います)。

新生児の急変は同じ確率

 しかし、以前の記事の繰り返しになりますが、誤解しないでいただきたいのは、生まれて間もない新生児は呼吸や血液がめぐる臓器の順番が大きく変化するので、もともと不安定なのです。早期母子接触をしてもしなくても新生児のその後の状態は同じで、つまり早期母子接触をしなくても同じ確率で新生児の急変が起こっているのです
 最近、「カンガルーケアの最中に赤ちゃんの呼吸が止まり、死亡するケースも出ているので、学会が安全対策を徹底するよう促した」と報じるニュース番組がありました。この報道によって、カンガルーケア自体が危険で、ケアさえしなければ死亡するケースはないかのように誤解されるのではないかと、学術集会でも話題になりました。
 私もそのニュース番組を見ましたが、確かにそれだけを見ると「カンガルーケア」が原因で赤ちゃんが急変したように受け取られると思います。問題は本来不安定な新生児をちゃんと観察し続ける体制でなかったことなのに、ケアそのものが危険だと誤解されるのはとても悲しいことです。学会ではカンガルーという単語が「本来安全なもの」というイメージで誤解を招く、用語を検討しなければいけない、と意見交換がなされていました。

出産後24時間は特に注意

 私自身の経験でもそうでしたが、出産直後というのは非常に疲れており、赤ちゃんを胸に抱っこする力がなかなか出ないという人も多いと思います。「ぜひ早期母子接触がしたい」と言う人もいれば、「疲れているのに産院からおしつけられて嫌だった」という人もいます。今後、出産する方は、ケアの間ちゃんと母子を観察してくれるかどうかなど十分に説明を受けてから、自分が希望するかどうか決められるといいと思います。ただ、出産後に気持ちが変わる可能性もあると思うので、事前に決めきれないとも思うんですよねえ。
 とにかく、出産は産まれて終わりではなく、母体も赤ちゃんも直後から24時間くらいは急変することが十分あり得るということを知っておいていただけたらと思います。

ベビーカー 電車では畳むべき?

 梅雨が明けて暑い日が続きますね。猛暑の夏は、私が最も恐れていた季節です。赤ちゃんは汗を大量にかくので汗疹や湿疹で肌状態は良くないし、脱水や熱中症などになっていないか体調管理に気を使います。
 母乳だとどのくらいの量を飲んでいるか分からないので、子ども用の麦茶を持ち歩いていますが、あまり「くいつき」がよくありません。ものを言わないので状態の把握が難しく、子育て一年生としてはいろいろと不安です。
 日が照っている時間はアスファルトがやけどするくらい熱くなっているので、ベビーカーだとこちらの体感温度よりも子供は暑いのではないかと思い、なるべく抱っこひもで出かけるようにしています。抱っこだと私の体と密着するのでお互い暑いとも思うのですが、顔が見えるので観察しやすいし、子供の背中のポケットに保冷剤を入れたりして調節しています。
 ただ、荷物が多い時は全体がかさばるし、肩が抜けそうになります。また、トートバッグに入れた携帯電話を探すだけでも一苦労。抱っこひもで子供と荷物を抱えて外出する時は、顔から必死感がにじみ出ているのか、電車でよく席を譲っていただきます。とてもありがたいことです。現代社会は子連れに冷たいとよく言われますが、実際に子連れで出かけると優しくしてもらえることも多いです。

「畳むのが当然」に驚き

 インターネットの掲示板やツイッターで、よく子育てのマナーについて議論になっているのを見かけます。外食や電車内でのマナーに関するものが多いようです。よく見かけるのが、ベビーカーで電車に乗る時のマナーについてです。畳むべきかどうかが議論の的になっているのを見かけるのですが、ある有名掲示板では「迷惑にならないように畳むのが当然」ということになっているようです。
 しかし、自分しか大人がいない場合、まずベビーカーが反り返らないようにかけてある荷物を肩にかけ、子供を抱っこし、ベビーカーを畳むことになるのですが、私の使っている機種のベビーカーではその動作を大人一人で行うのは非常に困難であり、子供の腹部を抱きつぶしてしまいそうになるのです。私は混雑時には基本的に電車に乗らないこともあり、今までずっと畳まずにそのまま乗車していましたし、車内でみかける子連れの人たちもみんなそのままだったので、その掲示板で畳むのが常識とされていたことに驚きと焦りを感じました。

昔と今で違うマナー

 調べてみたところ、昔はベビーカーを畳んで乗るのが鉄道各社の決めたマナーとされていたそうなのですが、今では多くの会社が、赤ちゃんの安全性から、混雑していない時は畳まなくてよいとしているようです。
 それをツイッターでつぶやいたところ、子育て中の皆さんは賛同の反応でしたが、若い女性と思われる方で「今は畳まなくてよくなったんですね、昔のお母さんは頑張っていたのです」とコメントされた方がいました。
 非混雑時にベビーカーを畳まずに乗るのは今の規則に則った行為であり、「ベビーカーを畳まない=怠惰」「今のお母さんは頑張っていない」ということではないと思うのですけれどね。また、子育てを終了されたと思われる方で「ベビーカーは邪魔でしかありません!今の母親は優遇され過ぎ」というご意見の方もおられました。子育て中の人とそうでない人の意見の相違が目立っていたのです。

今の世代は優遇されすぎか

 昔(十数年前から数十年前)はベビーカーが普及していなかったり、今ほどバリアフリーでなかったりしたため、移動が大変だったのだと思います。また、今は少子化が社会問題となり、子育て支援や父親の育児参加を推進する声もありますが、一昔前は今よりももっと母親に子育ての全てが押しつけられ、父親はそれを当然と思っていたのかも知れません。
 そんな訳で子育てを終えた世代の中に、今の子育て世代を優遇されていると感じ、快く思わない人がいるのかも知れません。また、身近に小さな子供がいない人は子供という存在に免疫が無く、厳しい見方をする人が多いのかもしれません。

身動き取れない時も

 人は自分の主観を通してしかものを見ることができません。子育て中の人もそれを批判する人も、他の立場を思いやる余裕がなければ堂々巡りの議論になってしまうと思います。また今の世の中は、楽しげで余裕ありげな人の揚げ足を取る傾向にあり、「親なんだから我慢しろ、楽をするな」という意見も根強くあります。
 私自身は、なるべく迷惑はかけたくないと思い、子連れOKのお店以外は行かないし、公共の場でも気を使っているつもりです。
 でも、必要に迫られて移動していて身動きが取れない時に、大きな声で泣き出して、すぐには泣きやまない場合もあります。普段は育児を楽しいと思っていても、そんな時は思考が停止して余裕を失ってしまいます。しかし、その時に周りから見ればマナーを守っていない非常識な母親と思われているかもしれません。マナーを守らない親がいるから子連れに対して冷たい目線が直らない、とよく言われますが、とにかく必死で余裕がない親も多いと思います。

鈍感になろうよ

 自分で子供を産んでみて、こんな幸せがあったんだ、と日々感じている私としては、子供を欲しいと思っている人が「子育てで迷惑をかけたくない」「大変そう」と子供を産むのを躊躇してしまうのは悲しいことだと思います。
 子供のいる人もいない人も、もっと心に余裕が持てればいいのですが。全体の余裕が増えないなら、人にかける迷惑とかけられる迷惑の両方にもう少し鈍感になってみるというのはいかがでしょうか。他人に迷惑をかけないで生きている人はいないのですから。

ベビーカー畳む? 私なりの電車マナー

 ロンドンオリンピックが始まって、いつもよりテレビを見る時間が長くなりました。日本よりかなり涼しいのだろうなと画面の向こうのレポーター達が羨ましく思われます。

 先週の記事「ベビーカーは畳むべき?」にたくさんのコメントをありがとうございました。匿名のコメント欄のため、記事を斜め読みして反射的に書いたコメントもあったようですが、どれも興味深く読みました。
 「畳むべきか」と疑問形のタイトルでしたが、東京都の交通局が作成したポスターには、混雑していない時は畳まなくてよいと明示されています。恐らく混雑時も畳まなくてよいという考えの人はほとんどいないでしょうから(止むを得ない事情でそうする方もいるでしょうが、マナーから逸脱すると思います)、「混雑時は畳む」「混雑時に公共交通機関を使って不要不急の移動をしない(必要な場合もあるでしょう)」「人にぶつけないなど注意を払う」などを守ってベビーカーで外出すればよいということでしょう。

妊娠前、私はどう思ったか

 コメントの中には「最近の母親はマナーが悪い」「優先されて当たり前という態度は不愉快」というようなものも目立ちました。子育て中の人と現在子育てに無縁な人とで意見がかなり分かれたので、やはり互いに違う立場について想像したり思いやったりする余裕がないのだな(少なくともネット上では)と感じたのですが、読みながら自分が妊娠する前に子育て中の人のことをどう思っていたかを思い出しました。
 私は高齢初産だったので、かなりの数の友人、知人、妹達が先に子供を産み育てていました。大多数は普通だったのですが、中には忙しいためか子供を産むなり疎遠になった人がいたり、「宋ちゃんも早く産まないとね」「女は子供を産んだが勝ちよ」と急に下に見られたり、「いいよね、子供がいない人は気楽で」と言われたり、SNSで度を超した親バカぶりに付き合わされたり、正直不愉快な思いもしました。
 中には「○○で優先してもらえなかったけど、日本の少子化対策はどうなっているのかしら」と、お国のために産んでやっていると言わんばかりの人もいました。もしかすると、子育てで大変なのに夫や家族に思うように評価されたり関わりを持ってもらえなかったりして、不満のはけ口となっていたのかも知れません。
 私は、「カップルの間で子供が欲しいから産むというのが本質であって、他人に対して社会貢献していると言うのは思い上がりではないか。せめて子供をタックスペイヤー(納税者)に育て上げてから言って欲しい」と当時から思っていました。ですから、子持ちの人に対してネガティブなイメージを抱いている人がいるのは分かります。

子育てする側になって

 自分が子育てをする側になって、親バカはつい滲み出てしまうものだということは分かりましたが、優先されて当然という気持ちはあまり分かりません。ただ、一人で子供を連れて外出する時は、思ったより余裕がないことが分かりました。すなわち、「優先されて当然という態度」に見える人の中には単に余裕がないという人も多いのではないかと思っています。

ベビーカーだけが迷惑か

 ただ、マナーが悪い親は確実にいるとの声もあり、実際に迷惑をかけられている人もいると思います。しかし、非常識な人は子育て親でなくてもいますし、臭いのきつい人やいびきをかいて寝ている人、酔っ払いなど公共の場で迷惑なのは子連ればかりではありません。かさばるスーツケースや楽器を持った人もです。「近頃の親のマナーはなっていない」とひとまとめに言うのはあまりにも乱暴だと思います。
 子連れの親たちが公共の場で守るべきマナーがあるように、そうでない人たちが子連れに対して取るべきマナーもあるのだと思います。双方とも「自分が不愉快・不便な思いをしたくない」という思いから「いつでも優先しろ」だとか「すいていてもベビーカーを畳め」「外出するな」という極端な要求を事情も知らない他人にするのはそれこそ公共心が欠けていると思います。

私なりの6つのマナー

 私なりの電車でのマナーは、
(1)特にこの季節はなるべく抱っこひも
(2)ベビーカーで電車に乗るときは入り口で軽く頭を下げる
(3)車内ではとにかく子供の目を見て泣いたらいつでもあやせるようにする
(4)邪魔にならなさそうな場所にいる
(5)何かあればとにかくすまなそうにする
(6)携帯電話は極力いじらない、
です。それほど冷たい目で見られることはなく、むしろ優しい人が多いと感じているのですけどねえ。
◇  ◇  ◇
 とうきょう子育てスイッチの「みんなで赤ちゃんを守ろう」鉄道での安全なベビーカー利用に関するキャンペーン2012

アレルギーと離乳食のタイミング

 先週後半から週末にかけて島根県松江市でアジア・オセアニア性科学学会が開催されたので参加してきました。ヨミドクターで連載されている北村邦夫先生と小堀善友先生にお会いし、「どうも、ヨミドクターでご一緒いたしております」とご挨拶しました。かの有名な北村先生はとってもエネルギッシュで、初対面の私にもフレンドリーに接して下さいました。小堀先生のセミナーは抱腹絶倒で、大変勉強になりました。
 関東の方々にとって松江は遠く、行かれたことにない方も多いかも知れませんが、美味しいものが多く、出雲大社や質のいい温泉など魅力の多い土地なので、是非機会を作って訪れてみて下さい。

 8月に入り、娘は満7か月を迎えました。ずり這いと寝返りでかなりのスピードで動き回るので、自宅のリビングはすっかり赤ちゃん仕様になり、大人たちはすみっこに生息しています。
 6月は3回熱を出した娘ですが、先月は保育園で毎日プールに入ってご機嫌で調子がいいなあと思っていたら、月半ばに発熱しました。集団生活をしているので仕方ありません。38.8度の熱でぐったりと眠そうだったので、その晩はお風呂に入れずに寝かせたところ、治まっていた娘の乳児湿疹がぶり返してきました。

湿疹がぶり返した!

 後日、小児科の先生に、子供は汗をたくさんかくから、発熱していてもシャワーで流してあげないといけないと言われました。あせもなのかどうかはよくわかりませんが、かゆくてかいているので首回りがひどい状態になってしまいました。ちゃんと洗ってあげればよかったと後悔です。
 翌日、熱が下がったので離乳食の十倍粥とゆでて灰汁を抜いてすりつぶしたほうれん草を食べさせたところ、嫌がってほとんど食べなかったにも関わらず、その後に顔と首回りの赤みが増してとてもかゆがりました。お風呂に入れて保湿したのですが、かゆくて眠れないみたいで、ずっとかきむしっていて心が痛みました。
 手にかぶせる赤ちゃん用のミトンをはめてみたのですが、指がしゃぶれなくて大泣きしたので外しました。大人でもかいてしまうのに、赤ちゃんにかくなといっても無理な話ですよね。
 このまま保湿だけで治るのは難しいと判断し、いざという時のためにもらってあった弱いステロイド軟膏をクリームで薄めて首回りに塗りました。すると一晩でだいぶ良くなり、朝にはご機嫌でけらけら笑っていました。ほとんど湿疹がなくなったので2日程で量を減らしつつ中止したのですが、その後は汗が溜まる部位に汗疹が出来てしまうので、1日2、3回のシャワーと保湿でなんとかやっています。
 その後、小児科医に相談し、1週間ほど間を空けて体調の良い日に再びほうれん草を食べさせたところ、今度はよく食べ、何の症状も出ませんでした。

離乳食始める時期 いくつもの「流派」

 今回のことを友人知人に話したところ、何人かに「食物アレルギーにならないためには、離乳食を食べさせるのは遅いほどよい」と言われました。いわく「腸ができあがっていないうちに異物を口から入れると、アレルギー源として体が認識して覚えてしまいやすい」のだそうです。出典は人によってまちまちでしたが、離乳食を遅く始めた方が良いという「流派」がいくつかあるようです。それを信じて実行している人が友人知人だけでも3~4人いました。

早すぎても、遅すぎても

 離乳食は母乳の栄養が落ち始める生後5~6か月頃から始め、植物性のものなど、体が異物と認識して抗体を作り出す性質の低いものから徐々に食材を増やして行くのが良いとされています。一部の流派は独自の理論で既存の医療への不信を煽り『1歳まで離乳食は与えない方がアレルギーにならない』などと言っているようですが、最近の研究では早すぎるのはよくないが、遅すぎてもアレルギー源として体が認識しやすくなってしまい、およそ4~7か月の間に開始するがよいと言われています。
 離乳食をはじめなくても母乳だけでアレルギーになる子供もいますが、だからと言って母親が食物制限を行ったり、子供に予防的に食物制限を行ったりすることは逆に、アレルギー源として認識する作用を助長してしまう可能性があります。
 その他にも食物アレルギーに関しては母乳栄養や腸内細菌、分娩様式や喫煙などが関与していることが分かってきていますが、まだはっきりしていないことも多いです。それが様々な流派を生んでいる原因なのでしょう。

不安につけこむ民間療法

 同じような流派はアトピー性皮膚炎に関してもあるようです。アトピー性皮膚炎の子供を持つ親がステロイド剤を恐れる気持ちを利用した民間療法が無数にあり、中には高額なものや危険なものもあるようです。魑魅魍魎(ちみもうりょう)な世界に飲み込まれないように注意が必要です。
 ステロイド剤は怖いというイメージを持っている人はやはり多いようで、ひどい湿疹で子供がかゆがって眠ることすらできなくても絶対に使わないという人もいますが、さじ加減を守れば危険ではなく有益な薬だと思います。今回の乳児湿疹とあせもの件を皮膚科医に相談したところ、かゆみ止めの飲み薬とステロイド剤と保湿剤を上手く使い分ければ乳児期を乗り切れると言われたので、毎日朝晩、状態を評価しつつ、現在は保湿剤を使い分けることで対応しています。

乳児期の栄養不足は弊害も

 乳児期は人生最大の成長期です。その時期にエネルギーや栄養素が不足すると弊害があるのではないでしょうか。子育ての一番の目的が他人に迷惑をかけないことではないように、乳児の摂食の本来の目的はアレルギーを持たないようにすることではないと思います。あふれる情報を取捨選択しながら、娘をすくすくと育てていければと思っています。

参考文献:周産期医学 2011.5 vol.41 No.5 「アレルギー疾患とは」 伊藤良子

■ 臍ヘルニア(でべそ)の原因と治療

(2011.12.20 all about:清益 功浩先生)

 臍ヘルニアは、俗に「でべそ」です。おへそが膨らんでいる状態で、新生児から乳児に多く、自然に治ることが多いです。見た目で気になる「でべそ」について説明したいと思います。

臍ヘルニアのできるメカニズム

 赤ちゃんがお腹に居る時に母親とつながっているのが臍帯(さいたい)です。臍帯には赤ちゃんと母親をつなぐ血管があります。臍帯はへその緒と言われ、産まれた時に、切ります。そして、臍帯から出血しないように止めておきます。すると、徐々に臍帯が小さくなり、乾燥して、へその緒として「桐の箱」に入れて渡されることが多いと思います。臍(へそ)には、皮膚、筋肉などがくっついていきますので、一度、へこんでいきますが、くっつかない時に、腸がそこから出て、臍ヘルニア、つまり「でべそ」になるわけです。従って、生後1カ月頃から3カ月程度の間に膨らんできます。
 この臍ヘルニアは5~10人に1人の割合でみられますので、比較的よく見られます。

臍ヘルニアの症状

 臍が出た部分には腸が入っているので、触れると柔らかく、少し押さえるとグジュグジュとした感じがして、お腹の中に戻っていきます。しかし、泣くと、お腹の圧が高くなり、また、腸が出た臍ヘルニアになってしまいます。このように、出たり引っ込んだりしています。破れそうに見えても破れることはないです。

臍ヘルニアの経過

 生後3カ月頃までは大きくなりますが、ハイハイやお座りなどができると、お腹の筋肉がついてきます。すると、筋肉で臍ヘルニアは治ってきます。95%以上の子供が1歳までに自然に治ります
私自身もよく外来で診察していますが、基本は何もせず様子見るように言っています。祖父母に言われて受診される人もいますが、昔からの言い伝えが正しいとは限りません。

臍ヘルニアの治療

 自然に治るので、基本的には、治療を必要としません。よく5円玉(なぜ5円玉)をガーゼに包んで押さえたり、ガーゼを貼ってテープで押さえたりことがありましたが、基本的にはお勧めできません。赤ちゃんの皮膚はデリケートなので、すぐにテープでかぶれますし、臍がジクジクしたりして、感染を起こす危険があるからです。祖父母が言っても、決してお金で臍を押さえないようにしてください。

ただし、治療を要する臍ヘルニアがあります。

 1歳過ぎても、全く良くならない場合と治っても皮膚が余った感じになった場合は、小児外科にて手術して、臍の形成術を行います。ただ、形のいい状態にするのは難しく、子供には成長もあるので、手術するかどうかは、小児外科で相談した方がいいでしょう。
 その意味では、もし、臍ヘルニアは気になったら、1歳までなら小児科か小児外科、1歳過ぎたら小児外科に受診してもいいと思います。

■ 赤ちゃんでべそ 2歳過ぎて気になるなら手術も

(2011年12月8日:朝日新聞)
赤ちゃんのおへそ.jpg
<赤ちゃんのおへそ、気になる症状は?>

 おなかの真ん中にあるへそ。思春期のころ、自分のおへそが「でべそ」だと、悩んだ人も多いかもしれない。
 生まれたばかりの赤ちゃんのへその緒は、しばらくすると、根元から自然に落ちる。表面を皮膚で覆われたくぼみが「へそ」だ。
 赤ちゃんのでべそは、へその緒がとれたあと、生まれて数週間すると目立ち始める。へそが、ピンポン球のように、2、3センチ飛び出したり、泣くたびに出たり入ったりすることもある。これは「臍(さい)ヘルニア」といって、出生体重が2千~2500グラムの赤ちゃんの場合5人に1人にみられる症状だ。
    ◇
 生後間もない赤ちゃんは、へその下の腹壁がまだ閉じていない。へその下には、脂肪や筋肉の組織もないため、腹圧がかかると、おなかの中の臓器が皮膚を押し上げて、へそが出っ張る。
 ただ、順天堂大学小児外科の山高篤行教授によると、幼いころの臍ヘルニアは、1~2歳までに9割ほどが、自然に解消するという。腹筋が発達してへその下の腹壁が閉じ、内臓が飛び出さなくなる。へその輪も縮んで、くぼんでいく。「ばんそうこうで押さえるなどの、特別な処置はいりません」と、山高さんは話す。
 腹壁がなかなか閉じないと、2歳をすぎても臍ヘルニアが残る。腹壁は閉じても、皮膚が余って、へそが出っ張ってしまうこともある。山高さんは「でべそは病気ではないけれど、いじめられたり、自分で引っぱって遊んだりすることもある。2歳を超えても残る時は、手術をお勧めします」。
 手術は全身麻酔で、30分から1時間ほどで終わるという。
 一方、赤ちゃんの場合、へその緒がとれてから、なかなか皮膚が閉じないときは、注意が必要だ。
 じくじくした状態が続く場合は、きれいに洗って清潔に保つ。数カ月たっても症状が続いたり、へその周りが赤く腫れたりする場合は、病院を受診した方がいいという。感染や炎症が起きている可能性がある。まれに、へそが膀胱(ぼうこう)や腸とつながっていて、手術が必要になることもある。
    ◇
 大人になって「でべそ」が気になる場合は、形成外科に相談するとよい。昭和大学形成外科の清水祐紀准教授によると、悩みの大きさは、おへその大小とは関係ないそうだ。直径が1センチほどの一見「普通」のおへそでも、「でべそだから治したい」と訪ねてくる女性もいるという。清水さんは「体の健康には、精神的な健康も大切。気になるようならば、相談を」と話す。
 大人の場合、局所麻酔を使った日帰り手術は30分ほどですむ。自費診療の場合、費用は15万円前後という。臍ヘルニアなら保険診療で治療を受けることもできるそうだ。

◆相談ナビ◇
 子どもの臍(さい)ヘルニアの基礎知識については、日本小児外科学会のウェブサイト「小児外科で治療する病気」のコーナーが参考になる。日本形成外科学会は、学会が認定した専門医を、ウェブサイトで公表している。

■ 乳児のうつぶせ寝減少で,今度は“絶壁頭”が問題に―米国学会が予防の手引き

(2011.12.7:メディカルトリビューン)
 米国小児科学会は先月末、「乳幼児の仰向け寝による頭蓋骨変形症の予防と管理」と題する手引きを、米医学誌「Pediatrics」(2011; 128: 1236-1241)に発表した。米国では1990年代初頭から、後頭部の一方が平らになる、いわゆる“絶壁頭”(斜頭症)の子供を診察する機会が増えているという。同学会は乳幼児突然死症候群(SIDS)予防のため、うつぶせ寝をさせないよう勧告しており、これが頭蓋(ずがい)骨変形例の増加につながっているとの見方を示している。

腹ばいで遊ぶ時間を設ける、頭の向きを毎晩変える…

 多胎や寝るときの体勢などが原因で起こる斜頭症は、頭蓋骨癒合症を除いては良性であることが一般的と同学会。小児科医やかかりつけ医は良性と悪性の鑑別を行う必要があるほか、保護者にあらかじめ斜頭症の進行を予防できる方策のアドバイスや、必要に応じて専門医を紹介することが求められるとしている。
 米国小児科学会の手引きによると、予防策としては
・生後すぐから毎晩頭の向きを入れ替えて寝かせること、
・腹ばいで遊ぶ時間を一定時間設けること
 などが示されている。頭蓋骨が最も変形しやすい生後2~4週までに、保護者は斜頭症予防に関するカウンセリングを受けるべきという。
 また、斜頭症と診断された場合、原則として手術やヘルメットなどによる治療は不要で、基本的には平らになっていない側の頭を下にして寝かせる、おむつ替えの際にできる首のストレッチなどを行うことが勧められている。
 一方、これらの方法を行ってもなお改善が見られない場合は、小児神経外科や脳顔面頭蓋の形成異常を専門とする医師などの専門家らと相談の上、ヘルメットなどの機械的な補正法を試してもよいとしている。ただし、同学会はヘルメットなどに関して「エビデンス(根拠となる研究結果)はまだない」との見解を示している。

■ 4カ月以上の母乳育児で問題行動リスクが低下(2011年6月16日:MTPro)

〔ロンドン〕オックスフォード大学(オックスフォード)のKatriina Heikkilä氏らは,母乳で育てられた児では,調製粉乳で育てられた児に比べて5歳を迎えた時点で問題行動が見られる割合が低いとする研究結果をArchives of Disease in Childhood(2011; オンライン版)に発表した。

1万組超の母子データを解析

 これまで,乳児期の栄養と小児期の行動との関連について検討した大規模研究は少なく,これらの研究からも一致した結果は得られていない。調製粉乳で育てられた小児に比べて母乳で育てられた小児では,行動に問題のある割合が低いとする研究がある一方,社会経済学的要因などの交絡因子を考慮した場合,その関連性は否定されるとする研究もある。
 Heikkilä氏らは今回,エセックス大学(コルチェスター),ヨーク大学(ヨーク),ロンドン大学の研究者らと共同で,乳児期の栄養と小児期の行動との間に関連性があるか否かを明らかにするために大規模コホート研究を行った。
 研究には,英国のミレニアムコホート研究に登録された白人の母子1万37組のデータを用いた。同研究は,同国で2000~01年に生まれた児を対象としたもので,生後9カ月時点に面接調査が行われ,さらに2年ごとに再調査が行われた。乳児は9,525人が正期産児,512人が早産児であった。
 児が5歳の時点で,保護者に対して攻撃的行為,多動,情緒,仲間関係,社会性の5分野,計25項目から成る「子供の強さと困難さアンケート〔Strength and Difficulties Questionnaire(SDQ)〕」を行い,児の行動を評価した。

正期産児のみでリスク低下

 その結果,正期産児の29%,早産児の21%が4カ月以上母乳を与えられていた。SDQスコアで「行動に問題あり」と評価された小児の割合は,調製粉乳を与えられた児(16%)に比べて,母乳を4カ月以上与えられた児(6%)で低かった
 正期産児のうち,母乳のみで育てられた小児では,社会経済学的要因や親の要因など他の影響を考慮した場合もSDQスコアで評価した問題行動リスクは低かった。これに対して早産児では,母乳育児と問題行動との関連を示す明確なエビデンスは得られなかった。
 この結果について,Heikkilä氏らは「母乳には脳と中枢神経系の発達や機能に重要な役割を果たす必須長鎖多価不飽和脂肪酸,成長因子,ホルモンが多く含まれていることが影響している可能性がある」と考察している。なお,調製粉乳メーカーは,ここ10年間で調製粉乳に必須脂肪酸の添加を始めたばかりで,その効果は不明であるとしている。
 さらに,今回の結果に影響したと考えられる他の要因として,母乳育児の場合,授乳行為を通じた母子の関係強化が,望ましい行動を身に付けることや問題行動を減少させることに寄与している可能性を示している。
 同氏らは「今回の結果から,調製粉乳との混合栄養か完全母乳かを問わず,母乳を与える期間が長いほど,小児期の問題行動が減少することが示された」と結論付けている。

■ 幼少期の食生活が8歳半時のIQを左右する?(2011年2月15日:MTPro)

英コホート研究,食事の「質」によりIQに差

 これまで幼少期の食習慣が知能の発達に与える影響についてはあまり知られていなかった。しかし,このほどJ
Epidemiol Community Health2月7日オンライン版に掲載された研究報告によれば,幼少期に加工食品や脂肪分および糖質の多い食事を取っていた児童と,サラダや米,魚や果物など栄養バランスの取れた食事を取っていた児童とでは,8歳半時点でのIQに差があったことが判明した。

加工食品より栄養バランスの取れた食生活にわずかな有意性

 母乳で育てられたり,幼少期に充分な栄養を摂取したりしていることが知能指数を高めることは既に知られている。しかし,幼少期の食生活が後々,長期にわたり一般知能の発達にどのような影響を与えるかは,あまり知られていなかった。
 今回の研究は,ブリストル大学のAvon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)が集計したデータを基に行われた。ALSPACは,1991年と92年に生まれた1万4,000人の児童の健康と生活についてデータを集めている長期大規模研究プロジェクト。
 まず,児童たちの3歳,4歳,7歳,8歳半の各時点における食物頻度アンケートを親たちに実施。食生活のパターンと頻度別をポイント化し,標準偏差(SD)を導き出した。食生活を
(1)高脂肪・高糖質中心の「加工食品生活」,
(2)肉・野菜中心の「伝統的食生活」,
(3)サラダ・米・パスタ・野菜・果物を均等に取る「健康的食生活」
—の3パターンに分類し,彼らが8歳半を迎えた時点でウェクスラー児童知能検査(WISC)を行った。最終的に各段階で確実なデータが得られた児童は合計3,966人。
 その結果,各種因子を補正後も,3歳時の「加工食品生活」は8歳半時のIQと負の相関を示し,同食生活パターンのスコアが1SD増加するごとにIQは1.67点有意に低下した(95%CI −2.34〜−1.00,P<0.0001)。一方,3歳時の「健康的食生活」は8歳半時のIQと正の相関を示し,同食生活パターンのスコアが1SD増加するごとにIQは1.20点有意に上昇した(95%CI 0.52〜1.88,P<0.001)。4~7歳時では食生活パターンが8歳半時のIQに与える影響は見られなかった。
 研究者たちは「現代英国の児童を対象にした今回の研究によって,幼少期に加工食品を摂取してきた児童と,栄養バランスの取れた食生活を送ってきた児童とでは,8歳半時点におけるIQにわずかではあるが差が生じていることが分かった」としながらも,「幼少期の食生活の何が知能発達に影響を与えているのかを探るためのさらなる研究が必要」とまとめている。

<参考HP>

■ 「子どもの間食
・「イオン飲料とむし歯」に関する考え方
・「母乳とむし歯-現在」の考え方
・「おしゃぶりについて」の考え方
・「指しゃぶりについて」の考え方
・ 歯からみた幼児食の進め方
・ 子どもの歯みがき
・「子どもの間食」に関する考え方

(小児科と小児歯科の保険検討委員会、2012年)