夜尿症

 幼児が夜寝ている間におもらしすることを「おねしょ」といいますが、いつから病気とは考えるべきでしょうか。
 小学校に入る頃になってもおねしょが続くと心配になり、相談に来る方が増えてきます。そして夜尿の程度により治療を考えるのが一般的です。
 治療は生活上の注意に始まり、必要に応じて薬物療法(〜最近話題のアラーム療法)を行います。しかし、皆さんが期待するほどすぐに治るというものではありません。根気よく治療を続けても半年〜数年かかります。
 いずれは成長に伴って消えていくものですが、治療によりその時期を早くすることが期待できます。
 基本的なことをまとめましたので、ご参考にしていただければ幸いです

Q. おねしょは病気なの?

 おねしょは、夜眠りに入ってから朝目覚めるまでに作られるオシッコの量が膀胱のキャパを超えてあふれてしまう現象です。
 ご存じの通り、赤ちゃんは昼夜関係なくおむつにオシッコを出していますね。それが発達・成長とともに「尿意を感じて自分で出す」ことが可能になってきます。
 一方、寝ている間は「抗利尿ホルモン」というオシッコを濃くして量を減らすホルモンがたくさんでるようになり、だんだんおねしょの回数や量が減ってきます。

年齢

夜尿のある子ども

3歳 50%
4歳 35%
5〜6歳 20%
7歳 8%
12歳 5%
13〜15歳 1〜3%
18~65際 0.5%

 3歳では50%の子どもがおねしょをします。まあ、あってもいいか、くらい。
 4歳では35%。
 年長さん(5〜6歳)では20%程度に減ってきて、どちらかというと少数派。このうち、毎晩おねしょしている子どもは3%くらい。この頃から親御さんは気になり出します。
 その後も1年間で10人に1人程度おねしょが自然に無くなっていきますが、12歳でも5%の子どもに残ると報告されています。
 つまり、おねしょは成長・発達の過程で無くなっていく現象
 では、どこで正常と異常(病気)の線を引くか・・・悩ましい問題です。
 一般には、小学校入学時点で「夜尿症」と名前をつけて治療対象とすることが多く、このあたりで病的と捉える傾向があります。表の数字を見ておわかりのように、小学校入学後の自然軽快率はそれほど高くないことを認識する必要があります。

Q. 夜尿症は心の病気? 育て方の問題?

 前述のように、夜尿は成長・発達過程で消えていくものであり、当然ながら成長・発達には個人差がありますから、部分的な発達の遅れと捉えるべきです。
 以下に列挙したものは思い込みや誤解であり「医学的に正しくないこと」なのでご安心ください。
「親の育て方が悪い」「心の病気」「排尿をがまんすることは体によくない」「感覚が鈍い」「自覚する能力が無い」
 なお、夜尿は感覚・自覚と関係なくしているものであり、オムツの使用と夜尿の自立には関係がありませんので、夜は本人の望む方法で寝かせてあげましょう。

Q. 夜尿症は治療すると治るの?

 小学校入学時点で1週間に1〜2回程度残っている状況なら自然に消えていく可能性が大。
 しかし、週の半分以上夜尿がある場合は治療対象と考えましょう。
 治療により、治るまでの期間が短くなることが期待されます。ゴールを治療により近くに引き寄せるイメージでしょうか。
 また、宿泊の行事の際、対応策を練ることも可能です。
 治療効果は次に述べる夜尿症のタイプにより異なります。すぐに消えてしまう子どももいれば、何年もかかる子どももいます。

Q. 夜尿症のタイプについて教えてください。

 夜尿症は最初に書いたように、膀胱にためられるオシッコの量を、睡眠中に作られるオシッコの量が上回る現象です。医学的には次の3つ(最近は4つ)に分類されます;

夜尿症のタイプ 内容 その他の特徴
 多尿型 夜間尿が多い

背が低い

2次性徴遅延

がぶ飲みのクセ

膀胱型 膀胱容量が少ない

頻尿

昼間のお漏らし

冷え症

(解離型)

夜間だけ膀胱機能

が不安定


 混合型

上記の要素が複数

あるもの



 なぜ分類するかというと、タイプにより生活指導・治療方法が異なるからです。

夜尿症タイプ分類の方法・・・「夜間尿量」と「がまん尿量」

 家庭での観察・計測と、病院での検査で夜尿症のタイプが決まります。
 「夜間尿量」「がまん尿量」は家庭で計測し、「尿の濃さ」は病院で検査します。

夜間尿量:睡眠中に作られる尿量

方法1:夜起こす方法
① 寝る前にトイレでオシッコをして膀胱を空っぽにする。
② おねしょをしそうな時間帯の前に起こしてオシッコをさせ尿量をはかる。
③ 朝起きてすぐオシッコをさせ尿量をはかる。
 ・・・②+③の合計が「夜間尿量」となります。
※ 起こすのを失敗しておねしょになってしまったら、翌日再度トライしてください。

方法2:オムツを使用する方法
① 寝る前にトイレでオシッコをして膀胱を空っぽにする。
② 紙オムツの重さを量ってから、そのオムツを当てて寝る
③ 朝起きたとき、濡れたオムツの重さをはかる。
④ 朝起きてすぐオシッコをさせ尿量をはかる。
 ・・・③+④の合計が「夜間尿量」となります。

がまん尿量:膀胱にためられる量

 シンプルな方法ですが、自宅で子どもがオシッコをしたくなったとき、限界までガマンさせてから排尿させて量をはかります。

正常値とタイプ分類

このようにして得た尿量の年齢別目安を示します;


夜間尿量 がまん尿量
小学1年生 200ml以下 150ml以上
小学2年生 200ml以上
小学3年生

250ml以上

小学4年生以上 250ml以下

これを参考にして、
夜間尿量が多いタイプを「多尿型
がまん尿量が少ないタイプを「膀胱型
両方の要素がある場合を「混合型
と分類しています。

標準的膀胱容量
□ 日本人:(年齢+2)×25ml(12歳以上は350ml)。
□ 欧米人:(年齢+2)×30ml

特殊なケース
尿管異所開口・・・女児でオシッコの出口が本来とは違うところにあり、少しずつ漏れてしまう・・・「一日たりとも昼も夜も漏らさない日がない」「いつみてもパンツが濡れている」「オムツを今替えたばかりなのに、もう濡れている」などの訴えから疑います。
てんかん・・・夜睡眠中にけいれん発作を起こし、その際に失禁してしまうことを反復。親戚の子どもが泊まりに来て一緒に寝て様子がおかしいのに気づいた、という実例を聞いたことがあります。

Q. 病院ではどんな検査をするの?

身体計測・バイタルサイン(血圧他)
② 尿検査:オシッコの濃さ(比重、浸透圧)を評価したり、腎臓や全身の病気がないかどうかチェックします。

早朝尿の尿比重・浸透圧の正常値
 尿比重:1.022以上、浸透圧:850mOsm/L以上

血液検査:全身の病気が隠れていないかどうかチェックします。

必要に応じて行う他の検査(総合病院紹介):
 ・・・成長・発達の部分的遅れだけでは説明できない症状・所見があるときに追加検査を行うことがあります。
超音波検査:腎臓・膀胱の形や大きさをチェックします。
レントゲン検査:腰の骨に異常がないかどうか(二分脊椎症・・・仙骨部に多毛があると疑わしい)チェックします。
頭部CTやMRI:抗利尿ホルモンを分泌する脳の下垂体に異常がないかどうかチェックします
脳波検査:けいれんが疑われるとき検査します

Q. 日常生活で注意することは?

 以前から「生活の”3ない”原則」が有名ですね:

夜尿症の”3ない”原則
起こさず:無理やり起こさない・・・抗利尿ホルモンは夜間ぐっすり眠っているときにたくさん分泌され、尿を濃くして尿量を減らす役割を持っています。無理に夜中にトイレに起こすと、抗利尿ホルモンの分泌が減ってしまい、夜尿が固定・悪化すると云われています。
あせらず:まわりが焦ってせかさない・・・夜尿に対するマイナスイメージを植え付けて子どもの性格が消極的になりがちです。
おこらず:夜尿しても叱らない・・・同上

 他にも以下のような注意が必要です:
規則正しい生活:自律神経を整える目的。夜更かししないで睡眠をしっかりとりましょう。

夜尿症と自律神経の関係
 夜尿症児は覚醒時・睡眠時ともに副交感神経活動優位の心血管系自律神経活動の生活リズムを示し、治癒すると正常化(覚醒時は交感神経活動優位、睡眠時は副交感神経活動優位)すると報告されています(藤原順子、2001年)。
 夕食時に過食し、寝る前に水分を多量に摂取することは、胃腸の活動が活発となり副交感神経優位状態が続くことになり、夜尿症治療の視点から不利に働きます。

寒さ対策:冬悪化する子どもは腹巻きや電気毛布を使いましょう(それだけで夜尿がなくなった子どももいました)。

さらに、タイプ別の生活上の注意点があります;
多尿型」は夕方からの水分摂取制限:朝・昼は制限の必要はありません。夕方から水分摂取を制限し夕食は早めに薄味で喉が渇かないように心がけます。家族の生活習慣病対策にもなりますね。

水を飲んでから尿になるまでの時間
 水分を摂ってからどのくらいの時間で尿になるか・・・という研究報告があります:夕食終了後、1時間で20%、2時間で60%、3時間で80%、とのこと。

夜間尿量減少の限界
 通常の塩分、タンパク質の摂取量で減らせる尿量は最大に濃縮された尿(1400mOsm/L)でおおよそ0.5ml/kg/hrであり、30kgの子どもで睡眠時間が10時間とすると、最小の夜間尿量は150mlとなり、これ以上がんばりすぎると「脱水症」になってしまいます。「おねしょのおしおき」の様な雰囲気にならないよう、気をつけてください。

膀胱型」はオシッコのがまん訓練(がまん尿量測定の方法と同じ)
 ・・・有効な方法ではありますが、一生懸命やり過ぎるとまれに膀胱炎になったり、膀胱の壁が厚くなったりする事例が報告されていますので、ほどほどの習慣づけくらいに考えましょう。

昼と夜の膀胱容量の違い
 一般に、がまん尿量(機能的膀胱容量)は健康小児では昼間より夜間睡眠中は1.5〜2倍に増えると考えられています。

Q. どんな治療をするのですか?

 治療の目的は「夜間尿量の減少」と「がまん尿症の増加」です。単純に考えて、

(夜間尿量)>(がまん尿量)→ 夜尿あり
(夜間尿量)<(がまん尿量)→ 夜尿消失

 となります。
 治療方法は大きく「生活指導」「薬物療法」「アラーム療法(次項で扱います)」の三つに分けられます。
 薬物療法の分野では、日本では長らく抗うつ薬が主に使用され一定の効果が得られてきましたが、有効率は決して高くはありませんでした。その後、抗利尿ホルモン療法や抗コリン薬が導入され、単独あるいは組み合わせて使用されるようになり、近年アラーム療法を導入する施設も出てきました。
 一方、欧米では以前から抗利尿ホルモン薬とアラーム療法が中心となっています。
 効果の点では、「多尿型」では水分制限や抗利尿ホルモンが有効で治療効果が得られやすい傾向があります。「膀胱型」では、膀胱訓練に励み抗コリン薬を使用しても膀胱容量がすぐに増えるわけではなく、治癒までに数年かかることも多い印象があります。

生活指導

膀胱訓練:方法はがまん尿量測定と同じです。学校から帰宅後、1日1回行うよう習慣づけましょう。

対象:「膀胱型
有効率:60〜70%
・治癒25%、有効例67%であり、薬物療法と比較しても同等(山西友典、2008年)

水分制限:方法は「生活上の注意点」参照。

対象:「多尿型
有効率:37.8%(特に就寝前3時間で有効率アップ)(相川務、2008年)

薬物療法

抗利尿ホルモン薬(商品名:デスモプレシン・スプレー):

 もともとヒトの体にある抗利尿ホルモン(バゾプレシン)を外から補充する薬です。尿を濃くして尿量を少なくする作用があります。使用上の注意として、水分制限(投与2〜3時間前から翌朝までの飲水を極力避ける)が必須です。
 鼻から吸入する「点鼻薬」であり、風邪を引いたり花粉症で鼻づまりがあるときは効果が落ちるので対策が必要です。
 有効率は高い一方で、再発率も高く、治療中止方法については一定の見解がないのが現状です。
 無効例には膀胱容量の小さい例が多いことが報告されています。

対象:「多尿型
有効率
・日本の報告:39.4%
・海外の報告:60〜80%、再発率40〜100%
副作用:水中毒(尿量を減らす治療法なので、がぶ飲みして使うと身体に水がたまりむくみます)

抗コリン薬:(商品名:ポラキス、バップフォー)

 膀胱の緊張をやわらげ、膀胱機能を安定させて尿をたくさんためられるようにします(がまん尿量の増加)。
 有効率はあまり高くありません。膀胱容量の小さい子どもでは、抗コリン薬を使用しても膀胱容量は期待するほど増加せず、標準量まで達するまで長期間を要し、治療に難渋する傾向が見られます。

対象:「膀胱型
有効率:9.7〜24%
副作用:便秘、口渇、中枢毒性(学習障害など)

三環系抗うつ薬(商品名:トフラニール、アナフラニール、トリプタノール):

 うつ病の薬がなぜ夜尿症に効くの?と疑問に思われるかもしれませんが、日本では近年までこの薬が中心でした。抗利尿ホルモンの分泌を促す作用と、抗コリン作用を併せ持ちます。

対象:「多尿型」「膀胱型
有効率:短期では43.1%(日本)、50%(欧米)、長期では17〜23%、投与中止後の再発率は高い
副作用:食欲不振、悪心、嘔吐、不眠(アナフラニールで多い)など
※ 欧米では心毒性など重篤な副作用報告があり、第一選択薬としては勧められていません。

その他の治療

漢方薬

 単独で治癒するほど効きません。私は軽症例に補助的に使用しています。特に風邪を引きやすいなど虚弱傾向があり、お腹を触ると冷えている子どもに小建中湯を飲んでもらうと夜尿症への効果より全体的に元気になったと喜ばれ、評判はまあまあです。

小建中湯と白虎加人参湯の成績(岩間正文、2009年):
 痩せて冬に悪化する膀胱型に小建中湯(有効率:25%)、体力があり口渇を訴え夏に目立つ多尿型に白虎加人参湯(有効率:27%)。小建中湯では膀胱容量の増加、白虎加人参湯では夜間尿量の減少を認めた。

小建中湯:芍薬6.0;桂枝・大棗・生姜各3.0;甘草2.0;膠飴20.0 ・・・小児の虚弱体質の基本処方。芍薬は膀胱筋肉のれん縮を抑え、膀胱容量を増やし、桂枝と生姜は血行を促し身体を温める作用があります。
白虎加人参湯:石膏15.0;粳米8.0;知母5.0;人参3.0;甘草2.0 ・・・清熱作用があり、口渇・多飲を癒す。夏に暑がって冷水をがぶ飲みする子どもには試す価値があります。

鍼治療

有効率:47%(赤司俊二、2005年)

Q. 最近よく耳にする「アラーム療法」はどんなもの?

 夜尿アラームとは、おねしょの水分をセンサーが感知して警報が鳴る装置を指します。
 アラームが鳴った際、子ども自身が気づいて目を覚まし、着替えてトイレに行くことを指導しますが、多くの場合アラームが鳴っても本人は目を覚まさず、親が起こす羽目になります。このため、親が夜に家にいる、同じ部屋か少なくとも隣の部屋に寝る、などの環境が必要です。また毎晩子どもを起こすことが数ヶ月上続きますので根気と覚悟も必要です。
 初めて報告されたのが1938年と歴史は古く、欧米では積極的に取り入れて現在は第一選択の治療法となっています。一方、日本ではまだ一般的と云うほど普及していません。理由として「夜尿児は夜起こさない方がよい」という従来の日本の生活指導と矛盾する点も指摘されています。
 メカニズムは睡眠中の膀胱容量が増加することで朝まで排尿せずに持つようになると云われています。
 有効率は従来の薬物療法より高く、期待される治療法です。
 無効例は、昼間の遺尿を合併するもの、膀胱容量が小さいものが多いと報告されています。
 開始年齢は8歳頃が適当とされています。理由は、本人のモチベーションと家族の協力(アラームが鳴ると子どもを起こす)が得られる環境が必要だからです。
 ただし保険適応はなく、医療器具としては未認可なので、アラーム機器は自費で購入する必要があります(1〜2万円程度)

対象:「多尿型」「膀胱型」(タイプを選ばず)
有効率:62〜78%(メタアナラシスによる)、
 治療中止後の再発率は15〜30%
※ 治療中断率:10〜20%
副作用:なし

アラーム療法の行い方(夜尿症ガイドラインにも掲載されています)
・治療意欲のある患者および家族に対して用いる。
・少なくとも3ヶ月間行う。
・通常は患者はアラームのみでは起きないので、家族が起こしてやる必要がある。
・多くの場合、尿意覚醒をせずに朝まで持つようになり、夜尿が消失する。
・一晩に複数回夜尿がある場合は、最初の1回目のみアラームを使用する。
・起こすときに完全に目を覚ませることが不可能なら、その必要はない。

※ なぜ効くのかわからないアラーム療法?
 アラームが鳴ることにより夜尿直後に覚醒させるので「膀胱に尿がたまったときに尿意を感じて目が覚める」ようになり夜尿が改善する、と思いがちですが実際はそうではありません。尿を朝までためられるレベルに膀胱容量が増えるのです。なぜ、夜尿アラームにこのような作用があるのか、現時点では十分に解明されていません。
 一つの学説を紹介します;
 Forsytheらはアラーム療法の原理は「膀胱充満感を排尿へのシグナルから覚醒と排尿抑制へのシグナルに変えること」と述べ、以下の3要素が重要であるとしています(1989年):
① 膀胱充満感とアラームが結びつけられることで膀胱括約筋と覚醒の両者が膀胱充満感に対する条件付け反応として出現する「古典的条件づけ」、
② アラーム音という嫌悪刺激を膀胱括約筋の収縮と覚醒によって回避する「回避行動学習」、
③ 夜尿を治すという目的の下、成功したときは保護者が褒めるというような「正の強化」を中心に行う「オペラント条件づけ」
 ・・・ウ〜ン、ちょっと難しくてわかりませんね(苦笑)。

現在販売されている夜尿アラーム(2011年2月)
□ 「ちっちコール3」7000円(石黒メディカルシステム)
□ 「ウエットストップ3」11000円(MDK)
□ 「バイウェット」18900円・・・コードレスタイプ(MDK)
□ 「おねしょアラーム」9000〜18000円(メディカル・プロジェクト)
・・・各社ホームページあり(下の「参考HP」)。

院長のつぶやき)夜尿アラームが市販されていると云うことは・・・一番有効な治療法を受けるのに病院へ行かなくて済むことを意味します(お金はかかるけど)。ある意味、画期的です。

Q. 世界共通の治療ガイドラインはあるのですか?

 あります。
 国際小児尿失禁学会(International Children's Continence Society, ICCS)が2010年に診療ガイドラインを発表しています。まだわかりやすい日本語訳は出ていないようです。
 それ以前、2004年に各国の専門家が集まり作成した論文のポイントを紹介します。

夜尿症の世界的治療戦略

(世界の12カ国から専門家が集まり検討した論文:2004年)
1.「夜尿アラーム」または「デスモプレシン」のどちらかを第一選択として使用する。
2.「夜尿アラーム」が無効なら「デスモプレシン」、「デスモプレシン」が無効なら「夜尿アラーム」を使用する。
3.両者とも単独で無効なら、「夜尿アラーム」と「デスモプレシン」を併用する。
4.両者の併用が無効なら、併用療法に抗コリン薬を追加する。
5.1年以上治療して効果がないなら、小児泌尿器専門医で膀胱機能や下部尿路を精査する。

 参考に世界各国の夜尿症頻度の報告を見つけましたのでどうぞ。

<参考> 夜尿症の発生頻度の国際比較(渡邉 泱、2008年)

 6〜12歳の報告を比較したところ、アジアで低く、中東・アフリカ諸国で高く、コーカサス諸国ではその中間。
アジア:平均6.5±2.2%
 ・・・3.5(香港)〜10.7(韓国)
コーカサス:平均12.4±4.2%
 ・・・6.0(イタリア)〜18.9(オーストラリア)
中東・アフリカ:平均14.9±3.0%
 ・・・11.5(トルコ)〜21.3(ナイジェリア)

Q. 各治療法の治癒率を教えてください。

 主に日本夜尿症学会雑誌に報告された論文から抜粋しました。

【薬物療法】

 主に保存療法(生活指導+薬物療法)による各施設の治療成績を抜粋しました(個々の薬剤については治療の項を参照)。
■ 薬物療法中心に行っていた時期の治療期間(羽田敦子、2007年);
 8歳:3年、10歳:2年、12歳:1年
■ 1年間で17%の治癒率、治癒まで平均1年、夜尿回数が月5回以下になるまで平均10ヶ月が必要(羽田敦子、2008年)。
■ 保存療法(生活指導・膀胱訓練・薬物療法)、平均年齢8歳の79人のうち、治癒16例(20%)、改善22例、難治18例(網谷兆康、2008年)

【アラーム療法】

アラーム療法単独の成績(羽田敦子、2007〜2008年):
 7ヶ月間で87%が完治または改善し、不変例ではアラームの使用法に問題を認めた。1年以内の治癒が38%し、有効例では平均5ヶ月で夜尿が月5回未満となった。
アラーム療法と抗利尿ホルモン療法の比較(内藤泰行、2008年)
① アラーム療法の有効率:54%
② 抗利尿ホルモン療法有効率:52%
※「アラーム療法無効例(46%)」と「抗利尿ホルモン療法無効例(48%)」に対する入れ替え療法の効果比較
①’「アラーム療法無効例」に抗利尿ホルモンを投与したところ、有効率:53%
②’「抗利尿ホルモン無効例」にアラーム療法を行ったところ、有効率:33%
→ 考察として「まずアラーム療法で有効に至らずとも、睡眠中の膀胱容量が増大し、その後に抗利尿ホルモンを使用したことにより効果が発揮されたのではないか」とコメントされています。
各病型とアラーム療法の有効率(河内明宏、2009年):
 多尿型:61%、膀胱型:56%、混合型:50% ・・・どの病型でも有効。

Q. お泊まり対策のポイントをおしえてください。

 「備えあれば憂いなし」、夜尿があるからといって消極的にならずに、本人を励まして積極的に参加しましょう。うまくいけば大きな自信になります。

夜中にそっと起こしてもらうこの時に限り、起きてトイレでオシッコをさせます。
朝、早めに様子を見てもらう夜尿が出ていたらみんなに気づかれないよう着替えさせてもらいます。
一番よく効いた薬を持っていく持っているだけでも安心。
夕方からのがぶ飲みに注意楽しい雰囲気につられてジュースなどをたくさん飲んでしまいがち。

アラーム療法の実際

使用方法

・夕食後は水分を控え、寝る前に排尿し、「夜尿アラーム」を装着します。
※ 各アラーム機器の説明書に従ってください(例:ウェットストップ3)。
・アラームが鳴り本人が目覚めたら、残りはトイレで排尿させましょう。
・眠りの深い子は自分で起きられないので、保護者が起こしてください(※1)。
・一晩に複数回夜尿がある場合は、初回のみの使用でもOKです。
・毎晩必ず装着させ、土日も中断しないでください。
・最低6週間、できれば3ヶ月は続けましょう。

(※1)アラームが鳴ったら速やかに子どもを起こし、残りはトイレで排尿させ、時間帯と尿量を測定して記録してください(記録用の「夜尿日記」は当院で配布しています)。
 アラームや保護者の呼びかけにまったく反応しない場合もありますが、完全に目覚めさせることが成功率を上げるわけでもなく、必ずしも完全覚醒させなくても大丈夫です。
 はじめて2〜3週間しても全く起きることができない場合、家族の負担や本人の自信喪失を避けるためにも、一旦中断して半年後に再チャレンジすることも検討すべき、という意見もあります。

良い徴候

・夜尿量が減ってきた
・アラーム音に反応し目が覚めるようになった
・アラームが鳴る時刻が朝方にずれてきた
・一晩のアラーム作動回数が減ってきた
・夜尿日数が減ってきた

終了時期・方法

・個人差がありますが、効果は4週間後くらいに実感できることが多いようです。
・夜尿回数が減ってきたら、最低14日間連続で夜尿が消失するまで続けてください。これを達成するには3〜4ヶ月(5〜24週間)を要します。
・14日間夜尿が消失後、就寝前の水分制限を解除しても1ヶ月間再発しないことを確認してからアラーム療法を終了しましょう(オーバーラーニング)。

<夜尿アラーム機器>

製品名 参考価格 備考
ウェットストップ3 7776円
有線式、装着型、バイブつき
ちっちコール4 7200円
有線式、装着型、バイブなし
ピスコール 19440円 無線式、枕元置き型、バイブつき
パッド30枚セット(パッド90枚セットもあります) 

<夜尿アラーム販売会社HP>

「ウェットストップ3」(使い方)・(株)MDK
「ちっちコール4」(株)石黒メディカルシステム
「ピスコール」オンラインストア(株)アワジテック

<夜尿症関連ニュース>

 夜尿症関連記事の拾い読み。

■ 児童の夜尿症 対策法は(2014年5月22日:朝日新聞)

◆小児科医・岩間正文さんに聞く 夜寝ているときに、おねしょをしてしまう夜尿(や・にょう)症。全国に50万人いるとも言われている。これから小学校での宿泊体験が始まる季節。三菱名古屋病院(名古屋市熱田区)の小児科医師岩間正文さん(71)に、対処方法などを聞いた。◆原因調べ 焦らず治療

 ――夜尿症とおねしょの違いは。

 4歳半から5歳ごろで、通常は排尿の仕組みが完成する。そのため4歳ごろまでは生理的なおねしょ、5歳ごろからが夜尿症になる。6歳の小学校入学時でも、10人に1人いる。でも、だんだん年齢と共に減ってくる。それでも小学校5、6年生で5、6%ぐらい。男女比では、男児が女児の2倍になる。

 ――夜尿症の原因は。

 排尿の発達の仕組みが遅れているのが主な原因。体が大きくなるに連れて、普通は膀胱(ぼう・こう)の容量が増える。また、脳から分泌されるホルモンが少ないため尿の量が多くなる場合や、眠りが深くて起きないという要因もある。

 ――どのように治療したらいいのか。

 まずは原因を調べなければいけない。それに応じて薬を出したり、生活指導をしたりする。生活指導では、(1)夜に起こさない(2)怒らない(3)治療には2、3年かかるので焦らない――といったことが大切。夕方からは、なるべく水分をとるのを控える。原因によっては、1日1回、おしっこをしたくてもぎりぎりまで我慢する。そうすると膀胱のためる力が大きくなってくる。最近は夜の尿量を抑える新薬が開発され、膀胱の容量を増やす療法も普及した。治療をすれば1年で4割、2年で7割が治る。

 ――どんな場合に、医者に診てもらった方がいいか。

 小学校に入学後、週に3回以上、おねしょをする児童は医者に行ったほうがいいと思う。全国50万人のうち、受診する子どもは2割だけ。そのうち治ると思い、何も対策をしない親が多いが、早めに受診してほしい。治った子どもは明るい表情になる。(森直由)

■ 夜尿症は病気 適切な治療と正しい生活リズムを(2014.5.6:産経新聞)

 夜、寝ている間におしっこを漏らしてしまう夜尿症。おねしょと混同しがちだが、おねしょは生理現象で、夜尿症は病気だ。小学生になっても「お漏らし」が続く場合、医療機関で治療を受ける。規則正しい生活リズムを守ることも重要となる。(竹岡伸晃)
                   ◇

 3つのタイプ

 東京都内に住む小学3年生の女児(8)はほぼ毎晩、おしっこを漏らすという。昼間は普通にトイレに行くが、就寝中は眠ったままおしっこをしてしまうため、紙おむつが欠かせない。母親は「本人はあまり気にしていないようだが、学校で泊まりがけの行事がある高学年になるまでには何とかしたい」と話す。 「おねしょは5歳未満の子供に見られる生理現象。5歳を過ぎても週に2、3日以上、夜中におしっこを漏らす場合、夜尿症の可能性が高い。慢性の病気なので放置しないでほしい」。兵庫医科大(兵庫県西宮市)小児科学教授の服部益治さんはこう説明する。 服部さんによると、小学校入学時点で10~15%、中学校入学時点で5%程度、高校入学時点でも3%程度の子供が夜尿症に悩んでいるという。「恥ずかしさもあり、周囲に相談しにくい病気。子供のプライドは傷つき、後片付けなどにストレスを感じる母親も多い」 夜尿症は、夜間の尿量が多い「多尿型」▽尿量は少ないが膀胱(ぼうこう)が小さい「膀胱型」▽これらが合わさった「混合型」-の3タイプに分けられる。多尿型は夜間、抗利尿ホルモン(尿を濃くして尿量を少なくするホルモン)の分泌が不足することなどが、膀胱型は膀胱が小さく尿をためる力が弱いことなどがそれぞれ要因。夜遅い時間に飲食するなどの生活の乱れやストレスなども原因となる。

 怒らないで

 夜尿症は成長とともに治るケースもあるが、小学校入学後も頻繁に漏らすようなら早めに小児科や泌尿器科で受診する。「治療には専門知識を要するため、事前に診療の可否を確認した方がいい」(服部さん)。夜尿症に関する情報をまとめたウェブサイト「夜尿症(おねしょ)ナビ」(http://www.kyowa-kirin.co.jp/onesho/)にも専門医が掲載されている。 治療の際は夜間尿量を測定して夜尿症のタイプを見分けるほか、尿検査で尿の濃さや基礎的な疾患の有無なども調べる。必要に応じて残尿や腎臓、膀胱の奇形の有無を調べる腹部超音波検査なども行う。 そのうえで、まず行われるのは生活指導(家庭での対策)だ。夜更かしや不規則な生活は症状を悪化させるため、「早寝・早起き・朝ご飯」という規則正しい生活が不可欠。水分の取り方にも注意が必要で、朝食・昼食時はしっかり取り、夕方以降は減らす。夕食は就寝の2、3時間前までに済ませ、その後は水分摂取は控える。「喉が渇いたら氷を2、3個なめる」(服部さん)。入浴などで体を温めることも有効だ。 生活スタイルを見直すだけで約2割が改善する。改善しない場合は生活指導に加え、抗利尿ホルモン薬などによる薬物療法や、パンツに水分を感知するセンサーを取り付けるアラーム療法が行われる。服部さんは「漏らしても怒らないでほしい。焦らず治療を続け、漏らさなかった朝はしっかり褒めてあげて」とアドバイスしている。
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家庭での対策
 ・規則正しい生活をする
 ・水分の取り方に気をつける
 ・食事の塩分を控えめにする
 ・就寝前にトイレに行く
 ・夜中、無理にトイレに起こさない
 ・体や布団を温める
 ・褒める、怒らない、他の子供と比べない、焦らない
(服部さんの話を基に作成)

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■ 小学生になっても続く「おねしょ」 ストレス軽減へ早め受診を(2014年4月29日:東京新聞)

 「たかがおねしょ」と言うなかれ。小学一年生になっても続いている場合は「夜尿症」と呼ばれ、病気が隠れているかもしれない。いじめの原因になるなど、親子で悩むケースも少なくない。かかりつけ医に一度診てもらうのがお勧めだ。 (砂本紅年) 
 「最近少しずつ改善してきました」。小学二年の三男(7つ)のおねしょに悩む都内の母親(35)は、昨秋から通院を続けている。「周りからは病院に行くほどではないと言われましたが、来てよかったです」
 医師の指導で毎朝おむつの重さを量り、尿量などを記録。受診一カ月後からは薬を飲むようになり、徐々に尿量が減ってきたという。
 担当の大友義之医師(51)は、順天堂大練馬病院小児科の先任准教授で、武蔵村山病院など東京都内の三病院で夜尿症の専門外来を担当。「放っておいていいケースもあるが、早めに介入した方がいいケースもあることを知ってほしい」と呼び掛ける。
 おねしょが五、六歳以降も月に数回以上ある場合は「夜尿症」と診断され、日本では五~十五歳の6・4%と約八十万人に上る。一般的には、宿泊行事を控えた小学校高学年から受診させる親が多いが、「小学一年になった時点でおねしょがあれば、一度診察を受けた方がいい」と大友さん。
 一つには、夜尿症が子どもの自尊心を低下させる可能性があるためだ。一九九八年のオランダの調査では、夜尿症の与える心理的な負担は「両親の離別」「両親の争い」に次いで三番目。いじめの経験より深刻だった。大友さんによると、日本の調査でもほぼ同じ傾向が報告されており、ひきこもりやいじめの原因になることもあるという。
 親が周りから「しつけ」の問題と責められて悩むケースも。夜尿症は放っておいても一年間で10~15%は自然治癒するが、積極的に治療をすれば半数程度が一年以内に治るとされ、親子のストレス軽減のためにも早めの対応が望ましい。
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 本来、夜間は脳の下垂体から出る「抗利尿ホルモン」の働きで尿量が減り、膀胱(ぼうこう)もリラックスして多く尿をためられる。だが夜尿症の七割は、就寝中のホルモンの分泌が不足し、尿量が多い。尿量と膀胱のサイズのバランスの悪さが原因で尿が漏れてしまう。
 睡眠と覚醒のリズムの発達が遅れて尿意に気づかない、ひどい便秘で膀胱が圧迫されている、もともと膀胱が小さいなどのケースも。さらに夜尿症の5%弱には、腎臓病や糖尿病などの病気が隠れているという。
 治療は生活指導から。寝る前に水分や塩分をとりすぎず、体が冷えないよう気を付ける。こうした見直しで二割程度の子がおねしょをしなくなる。よくならない場合は薬が処方される。二年前に日本に導入された新しい飲み薬では、半数程度が改善される。パンツに小さなセンサーをつけて漏れたら音で知らせる「アラーム療法」(保険適用外)もあり、自分で気づいて尿を我慢する習慣をつける。
 夜尿症の三割は、昼間もおもらしをしてしまう「遺尿症」にも悩んでいる。夜のおねしょだけのケースより深刻だ。膀胱などが未熟で尿をがまんできない「過活動膀胱」などの病気が隠れている可能性が高い。治療に時間がかかるため、早めに相談したい。
 今春、全国の小児科や泌尿器科の専門家が中心となり「おねしょ卒業!プロジェクト」が発足。大友さんは「近所のかかりつけ医で診てもらえるよう理解を広げていきたい」と話している。

■ 女性に多い成人のおねしょ、適切な治療で大抵は改善(2012年05月15日:メディカルトリビューン)

 夜尿症、いわゆるおねしょは子供の病気と思われがちだが、大人にもある。高齢者を除いた成人の0.1%弱に見られると推定されている。治らない夜尿症はないので、適切な治療を受けた方がよい。

ストレスや基礎疾患などが原因に

 夜尿は、睡眠中に作られる尿量と、膀胱(ぼうこう)がためられる容量のバランスが崩れると起こる症状。ほあし子どものこころクリニック(東京都)の帆足英一院長は、次のように説明する。
 「夜尿症が自然に治るのは小学校低学年で10%以下、高学年で約10%、思春期前後では15%程度と考えられています。放置しておくと治らないケースもかなりあります。子供の頃に夜尿症でなかった人が、成人した後にストレスなどで発症する心因性のケースや、泌尿器系や糖尿病などの基礎疾患があって夜尿症になる人もいます」
 総じて思春期以降の夜尿症は女性の方が多い。特に結婚を意識している女性の悩みは深刻なようだ。

一人で悩まないで

 「中にはうつ病を合併したり、自殺を考えたりしたという患者さんもいます。しかし、治らない夜尿症はないので、一人で悩まずに泌尿器科や夜尿症を専門にしている小児科を受診して原因を究明すべきです」(帆足院長)
 原因が分かれば、それに即した治療が受けられる。帆足院長は「最も多いのは、夜間の睡眠中に抗利尿ホルモンの分泌が不足し、尿量をコントロールできないケースですが、この場合は点鼻療法で抗利尿ホルモンを補充することで改善します」と説明する。
 一方、基礎疾患がある場合は、その治療を優先する。成人後に飲酒などで水分を取り過ぎて夜尿症になった人は、生活習慣の見直しが必要だ。

<参考HP>

夜尿症診療のガイドライン(同PDFファイル)
(日本夜尿症学会作成)

夜尿症診療ガイドライン2010(英語です)
国際小児尿失禁学会(International Children's Continence Society, ICCS)

 夜尿症治療の第一人者赤司俊二先生のHP

 「おねしょ博士」の帆足英一先生のHP

夜尿症ナビ
(協和発酵キリン株式会社)

「おねしょ」が治らない
(日本泌尿器学会)

 相川ステーションクリニック(新潟市)のHP