Q. おねしょは病気なの?
おねしょは、夜眠りに入ってから朝目覚めるまでに作られるオシッコの量が膀胱のキャパを超えてあふれてしまう現象です。
ご存じの通り、赤ちゃんは昼夜関係なくおむつにオシッコを出していますね。それが発達・成長とともに「尿意を感じて自分で出す」ことが可能になってきます。
一方、寝ている間は「抗利尿ホルモン」というオシッコを濃くして量を減らすホルモンがたくさんでるようになり、だんだんおねしょの回数や量が減ってきます。
| 年齢 |
夜尿のある子ども |
| 3歳 | 50% |
| 4歳 | 35% |
| 5〜6歳 | 20% |
| 7歳 | 8% |
| 12歳 | 5% |
| 13〜15歳 | 1〜3% |
| 18~65際 | 0.5% |
3歳では50%の子どもがおねしょをします。まあ、あってもいいか、くらい。
4歳では35%。
年長さん(5〜6歳)では20%程度に減ってきて、どちらかというと少数派。このうち、毎晩おねしょしている子どもは3%くらい。この頃から親御さんは気になり出します。
その後も1年間で10人に1人程度おねしょが自然に無くなっていきますが、12歳でも5%の子どもに残ると報告されています。
つまり、おねしょは成長・発達の過程で無くなっていく現象。
では、どこで正常と異常(病気)の線を引くか・・・悩ましい問題です。
一般には、小学校入学時点で「夜尿症」と名前をつけて治療対象とすることが多く、このあたりで病的と捉える傾向があります。表の数字を見ておわかりのように、小学校入学後の自然軽快率はそれほど高くないことを認識する必要があります。
Q. 夜尿症は心の病気? 育て方の問題?
前述のように、夜尿は成長・発達過程で消えていくものであり、当然ながら成長・発達には個人差がありますから、部分的な発達の遅れと捉えるべきです。
以下に列挙したものは思い込みや誤解であり「医学的に正しくないこと」なのでご安心ください。
「親の育て方が悪い」「心の病気」「排尿をがまんすることは体によくない」「感覚が鈍い」「自覚する能力が無い」
なお、夜尿は感覚・自覚と関係なくしているものであり、オムツの使用と夜尿の自立には関係がありませんので、夜は本人の望む方法で寝かせてあげましょう。
Q. 夜尿症は治療すると治るの?
小学校入学時点で1週間に1〜2回程度残っている状況なら自然に消えていく可能性が大。
しかし、週の半分以上夜尿がある場合は治療対象と考えましょう。
治療により、治るまでの期間が短くなることが期待されます。ゴールを治療により近くに引き寄せるイメージでしょうか。
また、宿泊の行事の際、対応策を練ることも可能です。
治療効果は次に述べる夜尿症のタイプにより異なります。すぐに消えてしまう子どももいれば、何年もかかる子どももいます。
Q. 夜尿症のタイプについて教えてください。
夜尿症は最初に書いたように、膀胱にためられるオシッコの量を、睡眠中に作られるオシッコの量が上回る現象です。医学的には次の3つ(最近は4つ)に分類されます;
| 夜尿症のタイプ | 内容 | その他の特徴 |
| 多尿型 | 夜間尿が多い |
背が低い 2次性徴遅延 がぶ飲みのクセ |
| 膀胱型 | 膀胱容量が少ない |
頻尿 昼間のお漏らし 冷え症 |
|
(解離型) |
夜間だけ膀胱機能 が不安定 |
|
| 混合型 |
上記の要素が複数 あるもの |
なぜ分類するかというと、タイプにより生活指導・治療方法が異なるからです。
夜尿症タイプ分類の方法・・・「夜間尿量」と「がまん尿量」
家庭での観察・計測と、病院での検査で夜尿症のタイプが決まります。
「夜間尿量」「がまん尿量」は家庭で計測し、「尿の濃さ」は病院で検査します。
夜間尿量:睡眠中に作られる尿量
<方法1:夜起こす方法>
① 寝る前にトイレでオシッコをして膀胱を空っぽにする。
② おねしょをしそうな時間帯の前に起こしてオシッコをさせ尿量をはかる。
③ 朝起きてすぐオシッコをさせ尿量をはかる。
・・・②+③の合計が「夜間尿量」となります。
※ 起こすのを失敗しておねしょになってしまったら、翌日再度トライしてください。
<方法2:オムツを使用する方法>
① 寝る前にトイレでオシッコをして膀胱を空っぽにする。
② 紙オムツの重さを量ってから、そのオムツを当てて寝る
③ 朝起きたとき、濡れたオムツの重さをはかる。
④ 朝起きてすぐオシッコをさせ尿量をはかる。
・・・③+④の合計が「夜間尿量」となります。
がまん尿量:膀胱にためられる量
シンプルな方法ですが、自宅で子どもがオシッコをしたくなったとき、限界までガマンさせてから排尿させて量をはかります。
正常値とタイプ分類
このようにして得た尿量の年齢別目安を示します;
| BiND LOVES DESIGN | 夜間尿量 | がまん尿量 |
| 小学1年生 | 200ml以下 | 150ml以上 |
| 小学2年生 | 200ml以上 | |
| 小学3年生 |
250ml以上 |
|
| 小学4年生以上 | 250ml以下 |
これを参考にして、
夜間尿量が多いタイプを「多尿型」
がまん尿量が少ないタイプを「膀胱型」
両方の要素がある場合を「混合型」
と分類しています。
【標準的膀胱容量】
□ 日本人:(年齢+2)×25ml(12歳以上は350ml)。
□ 欧米人:(年齢+2)×30ml
<特殊なケース>
・尿管異所開口・・・女児でオシッコの出口が本来とは違うところにあり、少しずつ漏れてしまう・・・「一日たりとも昼も夜も漏らさない日がない」「いつみてもパンツが濡れている」「オムツを今替えたばかりなのに、もう濡れている」などの訴えから疑います。
・てんかん・・・夜睡眠中にけいれん発作を起こし、その際に失禁してしまうことを反復。親戚の子どもが泊まりに来て一緒に寝て様子がおかしいのに気づいた、という実例を聞いたことがあります。
Q. 病院ではどんな検査をするの?
① 身体計測・バイタルサイン(血圧他)
② 尿検査:オシッコの濃さ(比重、浸透圧)を評価したり、腎臓や全身の病気がないかどうかチェックします。
【早朝尿の尿比重・浸透圧の正常値】
尿比重:1.022以上、浸透圧:850mOsm/L以上
③ 血液検査:全身の病気が隠れていないかどうかチェックします。
※ 必要に応じて行う他の検査(総合病院紹介):
・・・成長・発達の部分的遅れだけでは説明できない症状・所見があるときに追加検査を行うことがあります。
・超音波検査:腎臓・膀胱の形や大きさをチェックします。
・レントゲン検査:腰の骨に異常がないかどうか(二分脊椎症・・・仙骨部に多毛があると疑わしい)チェックします。
・頭部CTやMRI:抗利尿ホルモンを分泌する脳の下垂体に異常がないかどうかチェックします
・脳波検査:けいれんが疑われるとき検査します
Q. 日常生活で注意することは?
以前から「生活の”3ない”原則」が有名ですね:
<夜尿症の”3ない”原則>
◆ 起こさず:無理やり起こさない・・・抗利尿ホルモンは夜間ぐっすり眠っているときにたくさん分泌され、尿を濃くして尿量を減らす役割を持っています。無理に夜中にトイレに起こすと、抗利尿ホルモンの分泌が減ってしまい、夜尿が固定・悪化すると云われています。
◆ あせらず:まわりが焦ってせかさない・・・夜尿に対するマイナスイメージを植え付けて子どもの性格が消極的になりがちです。
◆ おこらず:夜尿しても叱らない・・・同上
他にも以下のような注意が必要です:
◆ 規則正しい生活:自律神経を整える目的。夜更かししないで睡眠をしっかりとりましょう。
<夜尿症と自律神経の関係>
夜尿症児は覚醒時・睡眠時ともに副交感神経活動優位の心血管系自律神経活動の生活リズムを示し、治癒すると正常化(覚醒時は交感神経活動優位、睡眠時は副交感神経活動優位)すると報告されています(藤原順子、2001年)。
夕食時に過食し、寝る前に水分を多量に摂取することは、胃腸の活動が活発となり副交感神経優位状態が続くことになり、夜尿症治療の視点から不利に働きます。
◆ 寒さ対策:冬悪化する子どもは腹巻きや電気毛布を使いましょう(それだけで夜尿がなくなった子どももいました)。
さらに、タイプ別の生活上の注意点があります;
◆「多尿型」は夕方からの水分摂取制限:朝・昼は制限の必要はありません。夕方から水分摂取を制限し夕食は早めに薄味で喉が渇かないように心がけます。家族の生活習慣病対策にもなりますね。
<水を飲んでから尿になるまでの時間>
水分を摂ってからどのくらいの時間で尿になるか・・・という研究報告があります:夕食終了後、1時間で20%、2時間で60%、3時間で80%、とのこと。
<夜間尿量減少の限界>
通常の塩分、タンパク質の摂取量で減らせる尿量は最大に濃縮された尿(1400mOsm/L)でおおよそ0.5ml/kg/hrであり、30kgの子どもで睡眠時間が10時間とすると、最小の夜間尿量は150mlとなり、これ以上がんばりすぎると「脱水症」になってしまいます。「おねしょのおしおき」の様な雰囲気にならないよう、気をつけてください。
◆「膀胱型」はオシッコのがまん訓練(がまん尿量測定の方法と同じ)
・・・有効な方法ではありますが、一生懸命やり過ぎるとまれに膀胱炎になったり、膀胱の壁が厚くなったりする事例が報告されていますので、ほどほどの習慣づけくらいに考えましょう。
<昼と夜の膀胱容量の違い>
一般に、がまん尿量(機能的膀胱容量)は健康小児では昼間より夜間睡眠中は1.5〜2倍に増えると考えられています。
Q. どんな治療をするのですか?
治療の目的は「夜間尿量の減少」と「がまん尿症の増加」です。単純に考えて、
(夜間尿量)>(がまん尿量)→ 夜尿あり
(夜間尿量)<(がまん尿量)→ 夜尿消失
となります。
治療方法は大きく「生活指導」「薬物療法」「アラーム療法(次項で扱います)」の三つに分けられます。
薬物療法の分野では、日本では長らく抗うつ薬が主に使用され一定の効果が得られてきましたが、有効率は決して高くはありませんでした。その後、抗利尿ホルモン療法や抗コリン薬が導入され、単独あるいは組み合わせて使用されるようになり、近年アラーム療法を導入する施設も出てきました。
一方、欧米では以前から抗利尿ホルモン薬とアラーム療法が中心となっています。
効果の点では、「多尿型」では水分制限や抗利尿ホルモンが有効で治療効果が得られやすい傾向があります。「膀胱型」では、膀胱訓練に励み抗コリン薬を使用しても膀胱容量がすぐに増えるわけではなく、治癒までに数年かかることも多い印象があります。
生活指導
■ 膀胱訓練:方法はがまん尿量測定と同じです。学校から帰宅後、1日1回行うよう習慣づけましょう。
◇ 対象:「膀胱型」
◇ 有効率:60〜70%
・治癒25%、有効例67%であり、薬物療法と比較しても同等(山西友典、2008年)
■ 水分制限:方法は「生活上の注意点」参照。
◇ 対象:「多尿型」
◇ 有効率:37.8%(特に就寝前3時間で有効率アップ)(相川務、2008年)
薬物療法
① 抗利尿ホルモン薬(商品名:デスモプレシン・スプレー):
もともとヒトの体にある抗利尿ホルモン(バゾプレシン)を外から補充する薬です。尿を濃くして尿量を少なくする作用があります。使用上の注意として、水分制限(投与2〜3時間前から翌朝までの飲水を極力避ける)が必須です。
鼻から吸入する「点鼻薬」であり、風邪を引いたり花粉症で鼻づまりがあるときは効果が落ちるので対策が必要です。
有効率は高い一方で、再発率も高く、治療中止方法については一定の見解がないのが現状です。
無効例には膀胱容量の小さい例が多いことが報告されています。
◇ 対象:「多尿型」
◇ 有効率:
・日本の報告:39.4%
・海外の報告:60〜80%、再発率40〜100%
◇ 副作用:水中毒(尿量を減らす治療法なので、がぶ飲みして使うと身体に水がたまりむくみます)
② 抗コリン薬:(商品名:ポラキス、バップフォー)
膀胱の緊張をやわらげ、膀胱機能を安定させて尿をたくさんためられるようにします(がまん尿量の増加)。
有効率はあまり高くありません。膀胱容量の小さい子どもでは、抗コリン薬を使用しても膀胱容量は期待するほど増加せず、標準量まで達するまで長期間を要し、治療に難渋する傾向が見られます。
◇ 対象:「膀胱型」
◇ 有効率:9.7〜24%
◇ 副作用:便秘、口渇、中枢毒性(学習障害など)
③ 三環系抗うつ薬(商品名:トフラニール、アナフラニール、トリプタノール):
うつ病の薬がなぜ夜尿症に効くの?と疑問に思われるかもしれませんが、日本では近年までこの薬が中心でした。抗利尿ホルモンの分泌を促す作用と、抗コリン作用を併せ持ちます。
◇ 対象:「多尿型」「膀胱型」
◇ 有効率:短期では43.1%(日本)、50%(欧米)、長期では17〜23%、投与中止後の再発率は高い
◇ 副作用:食欲不振、悪心、嘔吐、不眠(アナフラニールで多い)など
※ 欧米では心毒性など重篤な副作用報告があり、第一選択薬としては勧められていません。
その他の治療
漢方薬
単独で治癒するほど効きません。私は軽症例に補助的に使用しています。特に風邪を引きやすいなど虚弱傾向があり、お腹を触ると冷えている子どもに小建中湯を飲んでもらうと夜尿症への効果より全体的に元気になったと喜ばれ、評判はまあまあです。
・小建中湯と白虎加人参湯の成績(岩間正文、2009年):
痩せて冬に悪化する膀胱型に小建中湯(有効率:25%)、体力があり口渇を訴え夏に目立つ多尿型に白虎加人参湯(有効率:27%)。小建中湯では膀胱容量の増加、白虎加人参湯では夜間尿量の減少を認めた。
※ 小建中湯:芍薬6.0;桂枝・大棗・生姜各3.0;甘草2.0;膠飴20.0 ・・・小児の虚弱体質の基本処方。芍薬は膀胱筋肉のれん縮を抑え、膀胱容量を増やし、桂枝と生姜は血行を促し身体を温める作用があります。
※ 白虎加人参湯:石膏15.0;粳米8.0;知母5.0;人参3.0;甘草2.0 ・・・清熱作用があり、口渇・多飲を癒す。夏に暑がって冷水をがぶ飲みする子どもには試す価値があります。
鍼治療
◇ 有効率:47%(赤司俊二、2005年)
Q. 最近よく耳にする「アラーム療法」はどんなもの?
夜尿アラームとは、おねしょの水分をセンサーが感知して警報が鳴る装置を指します。
アラームが鳴った際、子ども自身が気づいて目を覚まし、着替えてトイレに行くことを指導しますが、多くの場合アラームが鳴っても本人は目を覚まさず、親が起こす羽目になります。このため、親が夜に家にいる、同じ部屋か少なくとも隣の部屋に寝る、などの環境が必要です。また毎晩子どもを起こすことが数ヶ月上続きますので根気と覚悟も必要です。
初めて報告されたのが1938年と歴史は古く、欧米では積極的に取り入れて現在は第一選択の治療法となっています。一方、日本ではまだ一般的と云うほど普及していません。理由として「夜尿児は夜起こさない方がよい」という従来の日本の生活指導と矛盾する点も指摘されています。
メカニズムは睡眠中の膀胱容量が増加することで朝まで排尿せずに持つようになると云われています。
有効率は従来の薬物療法より高く、期待される治療法です。
無効例は、昼間の遺尿を合併するもの、膀胱容量が小さいものが多いと報告されています。
開始年齢は8歳頃が適当とされています。理由は、本人のモチベーションと家族の協力(アラームが鳴ると子どもを起こす)が得られる環境が必要だからです。
ただし保険適応はなく、医療器具としては未認可なので、アラーム機器は自費で購入する必要があります(1〜2万円程度)。
◇ 対象:「多尿型」「膀胱型」(タイプを選ばず)
◇ 有効率:62〜78%(メタアナラシスによる)、
治療中止後の再発率は15〜30%
※ 治療中断率:10〜20%
◇ 副作用:なし
☆ アラーム療法の行い方(夜尿症ガイドラインにも掲載されています)
・治療意欲のある患者および家族に対して用いる。
・少なくとも3ヶ月間行う。
・通常は患者はアラームのみでは起きないので、家族が起こしてやる必要がある。
・多くの場合、尿意覚醒をせずに朝まで持つようになり、夜尿が消失する。
・意図板に複数回夜尿がある場合は、最初の1回目のみアラームを使用する。
・起こすときに完全に目を覚ませることが不可能なら、その必要はない。
※ なぜ効くのかわからないアラーム療法?
アラームが鳴ることにより夜尿直後に覚醒させるので「膀胱に尿がたまったときに尿意を感じて目が覚める」ようになり夜尿が改善する、と思いがちですが実際はそうではありません。尿を朝までためられるレベルに膀胱容量が増えるのです。なぜ、夜尿アラームにこのような作用があるのか、現時点では十分に解明されていません。
一つの学説を紹介します;
Forsytheらはアラーム療法の原理は「膀胱充満感を排尿へのシグナルから覚醒と排尿抑制へのシグナルに変えること」と述べ、以下の3要素が重要であるとしています(1989年):
① 膀胱充満感とアラームが結びつけられることで膀胱括約筋と覚醒の両者が膀胱充満感に対する条件付け反応として出現する「古典的条件づけ」、
② アラーム音という嫌悪刺激を膀胱括約筋の収縮と覚醒によって回避する「回避行動学習」、
③ 夜尿を治すという目的の下、成功したときは保護者が褒めるというような「正の強化」を中心に行う「オペラント条件づけ」
・・・ウ〜ン、ちょっと難しくてわかりませんね(苦笑)。
※ 現在販売されている夜尿アラーム(2011年2月)
□ 「ちっちコール3」7000円(石黒メディカルシステム)
□ 「ウエットストップ3」11000円(MDK)
□ 「バイウェット」18900円・・・コードレスタイプ(MDK)
□ 「おねしょアラーム」9000〜18000円(メディカル・プロジェクト)
・・・各社ホームページあり(下の「参考HP」)。
Q. 世界共通の治療ガイドラインはあるのですか?
あります。
国際小児尿失禁学会(International Children's Continence Society, ICCS)が2010年に診療ガイドラインを発表しています。まだわかりやすい日本語訳は出ていないようです。
それ以前、2004年に各国の専門家が集まり作成した論文のポイントを紹介します。
【夜尿症の世界的治療戦略】
(世界の12カ国から専門家が集まり検討した論文:2004年)
1.「夜尿アラーム」または「デスモプレシン」のどちらかを第一選択として使用する。
2.「夜尿アラーム」が無効なら「デスモプレシン」、「デスモプレシン」が無効なら「夜尿アラーム」を使用する。
3.両者とも単独で無効なら、「夜尿アラーム」と「デスモプレシン」を併用する。
4.両者の併用が無効なら、併用療法に抗コリン薬を追加する。
5.1年以上治療して効果がないなら、小児泌尿器専門医で膀胱機能や下部尿路を精査する。
参考に世界各国の夜尿症頻度の報告を見つけましたのでどうぞ。
<参考> 夜尿症の発生頻度の国際比較(渡邉 泱、2008年)
6〜12歳の報告を比較したところ、アジアで低く、中東・アフリカ諸国で高く、コーカサス諸国ではその中間。
① アジア:平均6.5±2.2%
・・・3.5(香港)〜10.7(韓国)
② コーカサス:平均12.4±4.2%
・・・6.0(イタリア)〜18.9(オーストラリア)
③ 中東・アフリカ:平均14.9±3.0%
・・・11.5(トルコ)〜21.3(ナイジェリア)
Q. 各治療法の治癒率を教えてください。
主に日本夜尿症学会雑誌に報告された論文から抜粋しました。
【薬物療法】
主に保存療法(生活指導+薬物療法)による各施設の治療成績を抜粋しました(個々の薬剤については治療の項を参照)。
■ 薬物療法中心に行っていた時期の治療期間(羽田敦子、2007年);
8歳:3年、10歳:2年、12歳:1年
■ 1年間で17%の治癒率、治癒まで平均1年、夜尿回数が月5回以下になるまで平均10ヶ月が必要(羽田敦子、2008年)。
■ 保存療法(生活指導・膀胱訓練・薬物療法)、平均年齢8歳の79人のうち、治癒16例(20%)、改善22例、難治18例(網谷兆康、2008年)
【アラーム療法】
■ アラーム療法単独の成績(羽田敦子、2007〜2008年):
7ヶ月間で87%が完治または改善し、不変例ではアラームの使用法の問題を認めた。1年以内の治癒が38%し、有効例では平均5ヶ月で夜尿が月5回未満となった。
■ アラーム療法と抗利尿ホルモン療法の比較(内藤泰行、2008年)
① アラーム療法の有効率:54%
② 抗利尿ホルモン療法有効率:52%
※「アラーム療法無効例(46%)」と「抗利尿ホルモン療法無効例(48%)」に対する入れ替え療法の効果比較
①’「アラーム療法無効例」に抗利尿ホルモンを投与したところ、有効率:53%
②’「抗利尿ホルモン無効例」にアラーム療法を行ったところ、有効率:33%
→ 考察として「まずアラーム療法で有効に至らずとも、睡眠中の膀胱容量が増大し、その後に抗利尿ホルモンを使用したことにより効果が発揮されたのではないか」とコメントされています。
■ 各病型とアラーム療法の有効率(河内明宏、2009年):
多尿型:61%、膀胱型:56%、混合型:50% ・・・どの病型でも有効。
Q. お泊まり対策のポイントをおしえてください。
「備えあれば憂いなし」、夜尿があるからといって消極的にならずに、本人を励まして積極的に参加しましょう。うまくいけば大きな自信になります。
・夜中にそっと起こしてもらう:この時に限り、起きてトイレでオシッコをさせます。
・朝、早めに様子を見てもらう:夜尿が出ていたらみんなに気づかれないよう着替えさせてもらいます。
・一番よく効いた薬を持っていく:持っているだけでも安心。
・夕方からのがぶ飲みに注意:楽しい雰囲気につられてジュースなどをたくさん飲んでしまいがち。
<夜尿アラーム製品のHP>
・「ウェットストップ3」・(取説)・(口コミ)(株)MDK
・「バイウェット」・(取説)・(口コミ)(株)MDK
・「ちっちコール3」(株)石黒メディカルシステム
・「おねしょアラーム」(株)メディカル・プロジェクト

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