予防接種について

(2009年4月 初掲載・・・2010年7月 最終更新)

 ワクチンは治療法がなく、ときに重い合併症に苦しめられる病気に立ち向かってきた人類の知恵の結晶です。「やれといわれたから受けた」ではなく、実際に病気に罹ったときと予防接種を受けたときのメリット・デメリットを比較して十分理解し、自分の子どもの健康を守るという視点で接種すべきかどうかを考えていただきたいと思います。

<従来からあるワクチン>

■ 日本脳炎ワクチン

 2005年6月に、国から全国の市町村長宛に「日本脳炎の予防接種が原因と思われる重篤な急性散在性脳脊髄炎(ADEM:アデム)の副反応が発生したため、当分の間、日本脳炎ワクチンの積極的な勧奨を差し控える」という内容の通知が出されました。「健康なヒトを守るために接種する予防接種で、重篤な副反応を起こしてはならない」という慎重な立場に立った行政判断に基づくものです。

 現行の日本脳炎ワクチンはマウス脳を使用して作成されており、一方、より副反応のリスクが低いと期待される組織培養法によるワクチンが開発中であることから、新ワクチンを供給できる体制ができたときに接種勧奨を再開する予定、とのことでした。しかし、1年くらいで供給できる予定であったこの新ワクチンの開発は足踏み状態で、認可は未定です(→2009年に再開されました)。 
 日本脳炎にかかった場合と現行のワクチン接種した場合の情報を比較しました。

自然に罹患した場合
 感染経路:ウイルス性の病気で蚊に刺されて感染。ヒトからヒトへは伝染しない。
 感染者の1000〜5000人に1人が脳炎発症。死亡率:32%、後遺症:14%
 症状:突然の高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなど。
 最近は年間10人程度が発症する。
 かつては小児が好発年齢であったが、予防接種の開始以後は小児は減り高齢者が中心。

ワクチンを接種した場合
 有効率:約80%
 副反応:発熱:1.9%、発疹:0.3%、接種部位の発赤・腫脹:8.9%、
     急性散在性脳脊髄炎(ADEM)・・・70万〜200万接種に1回
      → 自然罹患の脳炎発症率の約1/1000(1/140〜2000) 

 なお、インターネット上で公開されている「日本脳炎ワクチンQ&A」にさらに詳しく解説されていますのでご参照ください。

 現行ワクチンは「勧奨」されなくなりましたが、保護者が希望する場合は従来どおりの予防接種法による定期接種が可能です。新ワクチンができても、定期接種年齢を過ぎている子どもは任意接種になります。その場合「自費負担」かつ「副反応発生時の補償金額は減額」となってしまいます。

2009年6月「新」日本脳炎ワクチン開始

 上記のごとく、色々ありましたが新ワクチンが接種可能となりました。

■ 新・日本脳炎ワクチン

 旧ワクチンで問題となった副反応:アデム(ADEM、急性散在性脳脊髄炎)発生率減少を目的に開発された細胞培養法による新ワクチンが当院でも接種可能になりました。
 下記Q&Aを参考にしていただき、不明な点は各自治体窓口(下記に連絡先記載)にお問い合わせください

<自治体問い合わせ先一覧>
 館林市(健康推進課)  0276(74)5155
 板倉町(保健センター) 0276(82)3757
 明和町(健康づくり課) 0276(84)3111
 千代田町(保健センター)0276(86)5411
 大泉町(保健センター) 0276(62)2121
 邑楽町(保健センター) 0276(88)5533
※ (カッコ)内は担当部署の名前です。

追記:2010年5月に「積極的勧奨再開」予定と発表されました。

<日本脳炎という病気について>
 日本脳炎はアジアで広く流行している病気で、毎年、3万5000~5万人の患者が発生しており、1万~1万5000人が死亡していると推定されています。日本でも、かつては患者が多くみられましたが、予防接種が開始されて、患者数は著しく減少しました。
 感染した人のうち、100人から1000人に1人の割合で発病するといわれています。通常6-16日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔気、嘔吐がみられます。次いで、意識障害、けいれん、異常行動、筋肉の硬直などが現れます。重症例のうち50%が死亡するといわれ、生存者の30~50%に精神障害や運動障害などの後遺症が残るといわれています。
 特別な治療法はなく、対症療法が行われます。
※ より詳しくは以下のホームページをご覧ください。
◆ 厚生労働省検疫所 「日本脳炎」
◆ 国立感染症研究所 「日本脳炎 Q&A」

■ おたふくかぜワクチン

 おたふくかぜは次項の水ぼうそう(水痘)とともに幼稚園・保育園を中心に流行を繰り返しています。予防するワクチンがあるのですが任意接種(有料)のため接種率が約30%と低迷し、残念ながら流行を抑えるほど普及していません(流行を抑えるには75〜86%のワクチン接種率維持が必要です)。
 おたふくかぜワクチンはWHO推奨ワクチンのひとつであり、1回定期接種している国では年間に発症するおたふくかぜ患者が90%減少し、2回定期接種している国では年間患者数が99%減少しています。日本でも定期接種として導入することが望まれるワクチンであり、その際は2回接種の設定が望まれます。

 実は日本でも1989年にMMRワクチン(麻疹・おたふく・風疹)という混合ワクチンとして登場したのですが、無菌性髄膜炎の副反応が予想より多く発生し、1993年に中止された経緯があります。その後MMRはおたふくを除いてMRワクチンとして復活し現在に至ります。
 無菌性髄膜炎は後遺症が心配ないタイプの軽症感染症です(ヒブ/肺炎球菌による細菌性髄膜炎とは別物と考えてください)。下に示すようにワクチンの副反応としても0.05%発生しますが、自然感染では3〜10%発生し、100倍も多いのです。ですから無菌性髄膜炎を心配して接種を控えることが正しい判断とは云えないと思います。

 合併症のリスクや出席停止措置などを考えると、集団生活がはじまる前に済ませた方が望ましいと当院では考えております。特におたふくかぜの合併症である「ムンプス難聴」は従来考えられてきた頻度より多く発生することが判明し、かつ治療法が無いため、近年問題視されるようになりました。

ムンプス難聴
 近年の調査では、おたふくかぜに罹った後に難聴を残す頻度は1/400〜1/1000であり、成人ほど頻度が増加します。年長者では難聴発症時にめまいを合併します。片側性がほとんどですが、まれに両側難聴となることもあります(1/160000以下)。
※ 参考ホームページ ムンプス難聴のお部屋(Macでは画面構成が乱れます)

 自然罹患とワクチン接種のメリット・デメリットを比較してみました。ワクチンの副反応はゼロではありませんが、かかった場合の合併症より少ないことがわかります。
 ぜひ家族で比較検討し、接種すべきかどうか考える材料にしてください。

■ おたふくかぜ

自然に罹患した場合
 症状:有痛性耳下腺腫脹が7〜10日間。
 隔離期間:「耳下腺腫脹が消失するまで出席停止(平均9日間)」(学校保健法)
 → 2012年4月に「耳下腺腫脹後5日間」へ変更されました。
 感染期間:症状出現前後約1週間はウイルスの排泄があり流行阻止は困難。
 合併症無菌性髄膜炎(3〜10%)
     脳炎(0.02〜0.3%)・・・重症
     睾丸炎(思春期以降:20〜30%)・・・不妊症になることは少ない
     乳腺炎(思春期以降:15〜30%)・・・回復良好
     卵巣炎(思春期以降:5%)・・・回復良好
     難聴(0.1〜0.5%)罹患後1ヶ月以内に発症し治療法はない

ワクチンを接種した場合
 任意接種(自費)
 対象:1歳以上の未罹患者
 有効率: 80%(残り20%は罹っても軽く済む)
 ※ 重症の卵アレルギーは皮膚テストが必要
 副反応無菌性髄膜炎(0.05%・・・自然罹患の1/100の確率)
     一過性の耳下腺腫脹と発熱(数%)
     難聴(1/600〜800万=0.000017%)

■ 水痘ワクチン

 水痘ワクチンは任意接種(有料)のため、接種率が30〜40%と低迷し、現在でも保育園・幼稚園中心に小流行を繰り返しています。
 自然に感染した際の合併症と、ワクチン副反応を比較検討してみてください。

自然に罹患した場合
 症状:発熱&全身の水疱性発疹症。
 隔離期間:「全ての発疹が痂皮化するまで出席停止(平均7日間)」(同上)
 治療:アシクロビル内服(商品名:ゾビラックス、ビクロックス他)
 合併症:米国では細菌二次感染や肺炎の合併症で年間約100人死亡の報告あり。
  帯状疱疹(体力低下時の再活性化)
  帯状疱疹後神経痛(50歳以降の10%):
   高齢者では帯状疱疹治癒後に長期間痛くてつらい思いをする。

ワクチンを接種した場合
 任意接種(自費)
 対象:1歳以上の未罹患者
 有効率: 80%(残り20%はかかっても軽く済む)

※ 近年「水痘ワクチンは帯状疱疹予防に有効」であることが証明され、高齢者に接種が推奨されるようになりました。

水痘ワクチンの意義

 現在世界中で使用されている水痘ワクチンは、日本で発明された株です。
 1974年に大阪大学微生物研究所の高橋理明博士らにより開発され、抗ウイルス薬の無かった当時、白血病や悪性固形腫瘍などの免疫不全患児にとって致命的な感染症であった水痘から子ども達を守ったのでした。
 現在でもやはり医原性免疫不全者(白血病や悪性腫瘍の他、臓器移植、膠原病、ネフローゼ症候群など治療に各種免疫抑制薬使用)の重症化が医療分野で問題視されています。医原性免疫不全患児が入院している小児一般病棟にたまたま肺炎や脱水で入院した子どもが入院中に水痘を発症すると医師達の顔から血の気が引きます。免疫不全患児が命の危険にさらされるからです。そのため入院患者は病院中に分散され、数週間は病棟閉鎖状態として新たな水痘患者が発生しないことを確認する必要が出てきます。これを繰り返すと病棟運営に支障が出てしまい、関係者からは悲鳴が聞こえてきそうです。
 現在では世界80ヶ国の1600万人が恩恵を受けています。一方、日本では任意接種の設定で接種率は低いまま流行が散発している寂しい状況です。
 水痘ワクチンは経済効果に優れ、自然感染でかかる医療費とワクチン費用を比較すると、ワクチンの法が1/5で済むと試算されています。
意外なことに水痘ワクチンはWHO推奨ワクチンには入っていません。

水痘ワクチン接種後罹患と2回接種の必要性

◆ (付録)おたふくかぜ罹患により難聴となった患者さんの声

ある小児科医に届けられた女子高生からの手紙です。彼女は小さい時におたふくかぜに罹患して難聴になりました。他の仲間を励まそうと書いた文章を公開していい(たくさんの人に知ってもらいたい)と言ってくださったので、ここに紹介させていただきます。

私は現在高1で、5歳の時、おたふく風邪にかかりムンプスウイルスによって左耳が難聴となりました。

難聴になった年齢が低かったせいもあり、最初はほとんど気にしてませんでした。
(自分は聞こえなくなったんだ、という自覚はありましたが。)
でも、学年があがるに連れ友達との会話で何度も聞き直したり無視してしまうことが何度もあり、すごく難聴であることが気になり始めました。

気にすることじゃないと思っていても、やはり
(何で聞こえないんだろう)
(何で自分なんだろう・・・どうして?)
そんなことばっかり考えていました。

正直、難聴になって10年たつ今でも考えています。

私は今までいろいろな経験をしてきました。
周りのひとの声を無視してしまったことはもちろん
聞こえないことを知っている友達や先生に裏切られたことや
陸上部に所属していたのですが、リレーの大会で雑音が混じりチームの人の声が聞こえずバトンを落とし失格になったこと。
音楽のとき左側のひとの声が聞こえないこと辛くて泣いたこと・・・

もし私が難聴にならなかったら
数えきれないぐらいの「辛い」がなかったんじゃないか、
こんなに悩むことなかったんじゃないかって思います。

でも、難聴になって感じたことがあります。

ひとつは絶対に自分のことを理解してくれるひとがいることです。
中学時代、聞こえないことで悩んでいたとき相談にのってもらった先生が
「聞こえないことはハンデではなくて君の個性なんじゃないかな。まずはその個性を自分がどう受け止めるかだと思うよ。」
と言ってくれました。
すごく親身になって聞いてくれ、とても心強くて励まされました。

また、すべてとは言えないけど、障がいのある人の気持ちが少しは理解することができると思います。他人を傷つける言葉が繊細に分かると思います。

ほかにもたくさん、視点を変えたらマイナスからプラスになることがあるかもしれません。

私は将来、聴導犬訓練士になりたいと考えています。
すごくマイナーな仕事でちっぽけな夢かも知れません。
笑われたこともあります。ですが私はこの夢を絶対に叶えたいんです。
聴覚障がいのある方に携わりたいです。
この夢は、難聴でなければ抱けなかった夢だと思います。

難聴は本当に辛いです。

片耳難聴は言いかえれば、「片耳は聞こえる」ということで理解してもらえないことの方が多く
どこかで
(難聴だから仕方ない)
という一線を自分自身で引いてしまいます。

だけど、悩んで自分を閉じ込めるのも悩みながらも進んでいくのも自分次第だと思います。
きれいごとかもしれません。
でも、自分自身を含めて、難聴の方に前を見てほしいです。

同じように悩んでいる方々、

聞こえないから・・・
ではなく、聞こえないからこそできることを見つけませんか。

以前同じように難聴である人に
「失ったものにこだわるのか、残されたものを活かすのか」
という言葉をことを教えていただきました。

辛いことも必ずあると思います。

でもそれを経験し、何かを得ることができたとしたらそれは私たち難聴を抱える人にしかわからないことだと思います。
辛いけど誰にも話せないときは、インターネットで難聴者の声が載っている掲示板などを探してみてください。

きっと勇気がもらえると思います。

また、そのご家族の方、必要以上には悩まなくていいと思います。
ただ難聴のことを知りたがったり、何か助けをもとめられたらその時はゆっくり話を聞いて、支えてあげてください。

最後にお医者さんや健常者の方に難聴者の声をひとつでも多く聞いてもらえることを願います。

ムンプス難聴
 おたふくかぜ罹患後に20,000 例に1例程度(近年数千例に一人とのデータもあり)に難聴を合併すると報告されており、治療法が無く永続的な障害となります。
 おたふくかぜに罹らなければ、当然合併症の難聴も発生しませんので、ワクチンによる予防をお勧めします。
参考ホームページ
・「ムンプス難聴にかかった方および子どもたちの保護者からのメール
・「 ムンプス難聴のお部屋

■ ポリオワクチン

■ ポリオという病気について

・別名「小児麻痺」
・感染様式:経口感染
・潜伏期:約5日間
・症状:感染しても発症する(症状が出る)のは10%以下。
1)不顕性感染型(90〜95%):全く症状が出ない
2)不全型(5%):軽度の発熱、不快感、頭痛、眠気、咽頭痛
3)髄膜炎型(1〜2%):発熱、嘔気・嘔吐、項部硬直(首がこわばり痛がる)、四肢痛
4)麻痺型(0.1〜2%):足または手の弛緩性麻痺(力が入らない・動かせない)を生じ、後遺症として運動障害を残します。呼吸麻痺を起こすと死亡することもあります。

■ ポリオワクチンについて

・生ワクチン:ポリオウイルスの病原性を弱めて、症状を出さずに免疫だけつける方法
・接種回数:2回(海外では3回以上)
・副反応:
 下痢(接種後2日まで):4.1〜4.9%
 嘔吐(接種後2日まで):1.0〜1.3%
 発熱(接種後1〜3日):1.3〜1.7%(<38.5℃)、1.7〜2.0%(>38.5℃)
 麻痺:接種後4〜35日(平均15日)に弛緩性麻痺を生じる確率が1/450万接種

接触者感染(排泄されたワクチンウイルスの感染により発症)は1/550万接種
※ 接種を受けた子どもの便中には1ヶ月程度ワクチンウイルスが排泄されます。

■ ポリオ流行とポリオワクチンの歴史

 昭和35年(1960年)の北海道より始まったポリオの大流行を機にポリオワクチンの要望が高まり、輸入ワクチンによる緊急接種が行われて流行は急速に沈静化されました。
 引き続き昭和39年(1964年)には国産のポリオワクチン接種が始まり、患者発生数は激減しました。 さらに1970年代になるとポリオによる麻痺患者はほとんど見られなくなり、流行は完全に制圧されています。
 WHO(世界保健機関)によるポリオワクチン接種強化活動により、平成12年(2000年)には日本を含む西太平洋地域で、平成14年(2002年)にはヨーロッパ地域にてポリオ根絶宣言が出されました。
 しかし、アフリカ、東南アジアの一部では依然としてポリオが発生しているのが現状です。平成17年(2005年)にはインドネシアでポリオの流行が認められました。
 よって、全世界で根絶宣言が完了するまでポリオワクチン接種は今後も続けていく必要があります。

<予防接種のニューフェイス>

(厚生労働省2013年6月発表のQ&A)

子宮頸がん予防ワクチン Q&A

【子宮頸がんについて】

Q1.子宮頸がんとは何ですか?

「子宮頸がん」とは、女性の子宮頸部にできるがんのことです。子宮は、 胎児を育てる器官で、全体に西洋梨のような形をしています。また、子宮頸部は、腟へと細長く付き出た子宮の入り口部分(腟の方から見た場合には、 奥の突き当たり部分になります。)のことを言います。

Q2.何が原因で子宮頸がんになるのですか?

子宮頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)と呼ばれるウイルス が関わっています。このウイルスは、子宮頸がんの患者さんの 90%以上で見つかることが知られており、HPVが長期にわたり感染することでがんになると考えられています。なお、HPV は一般に性行為を介して感染することが知 られています。

Q3.子宮頸がんにかかるとどのような症状が現れますか?

子宮頸がんは初期の頃にはほとんど症状のないことが多いですが、生理のとき以外の出血や性行為による出血、おりものの増加などが見られることがあります。また、進行した場合には、足腰の痛みや血の混じった尿が見られることもあります。このような症状がみられた際には、ためらわずに医療機関を受診してください。

Q4.子宮頸がんは、どれくらい重い病気ですか?

子宮頸がんは、早期に発見されれば、治療により比較的治癒しやすいがんとされています。ただし、他のがんと同様、少しずつ進行していくものですから、発見される時期が遅くなると治療が難しくなります。

Q5.子宮頸がんの患者さんはどれ位いるのですか?

子宮頸がんの患者さんは、年間 10,000 人程度(2008 年)と報告されていま す。年代別にみた患者さんの数は、20 代後半から増えていき、40 代以降は概 ね横ばいになります。しかし、最近では、特に若い年齢層(20~39 歳)で患 者さんが増えています。


Q6.子宮頸がんで亡くなる方はどれ位いるのですか?

子宮頸がんで亡くなる方は、年間 3,000 人程度(2011 年)と報告されていま す。年代別に見ると、30 代後半から増えていく傾向にあります。

Q7.ヒトパピローマウイルスとは何ですか?

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、皮膚や粘膜に感染するウイルスで、100 以上の種類があります。粘膜に感染する HPV のうち少なくとも 15 種類が子宮 頸がんの患者さんから検出され、「高リスク型 HPV」と呼ばれています
これら高リスク型 HPV は性行為によって感染しますが、子宮頸がん以外に、 中咽頭がん、肛門がん、腟がん、外陰がん、陰茎がんなどにも関わっていると考えられています。

Q8.ヒトパピローマウイルスはどれ位感染しやすいものですか?

子宮頸部の細胞に異常がない女性のうち、10~20%程度の方がヒトパピロ ーマウイルス(HPV)に感染していると報告されています。また、海外では性行為を行う女性の 50~80%が、生涯で一度は HPV に感染すると報告されてい ます。

Q9.ヒトパピローマウイルスに感染すると必ずがんになるのですか?

ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しても、90%以上の場合、2年以内 にウイルスは自然に排出されるとされています。しかし、ウイルスが自然に 排出されず、数年から数十年にわたって持続的に感染した場合には、がんになることがあると報告されています。

【検診、予防・予防ワクチンについて】

Q10.子宮頸がんを予防する方法はありますか?

子宮頸がんの予防法としては、子宮頸がん予防ワクチンを接種することで、 ヒトパピローマウイルスの感染を予防することが挙げられます。また、子宮頸がん検診を定期的に受けることで、がんになる過程の異常(異形成)やご く早期のがんを発見し、経過観察や負担の少ない治療につなげることができ ます。

Q11.子宮頸がん検診はどのようなものですか?

20 歳以上の女性は、2 年に 1 回の頻度で子宮頸がん検診を受けることが推 奨されています。一般的に、子宮頸部の細胞を採取して、細胞に何らかの異 常がないか検査する「子宮頸部細胞診」が行われています。検診を受けられる場所など詳細については、お住まいの市区町村にお問い合わせください。

Q12.子宮頸がん予防ワクチンの接種場所など、必要な情報はどこに問い合わせた らよいですか?

法に基づくワクチンの接種は、地域の実情に合わせて各市区町村が実施しています。お住まいの地域での実施方法や、接種の詳細などについては、お住まいの市区町村の予防接種担当課にお問い合わせください。

Q13.子宮頸がん予防ワクチンは絶対に受けなければならないものですか?

法に基づくワクチンの接種は強制ではありませんが、一人一人が接種することで、社会全体を守るという側面があるため、対象者はワクチンを接種するよう努めなければならないとされています。
実際に予防接種を受ける際は、ワクチンの有効性とリスクを十分に理解した上で、受けるかどうかご判断ください。

Q14.子宮頸がん予防ワクチンは何回接種すればよいですか?

子宮頸がん予防ワクチンは、3 回の接種が必要です。
法に基づく標準的な接種は、中学 1 年生となる年度に、以下のとおり行うこととなります。
・サーバリックスについては、1 回目の接種を行った 1 か月後に 2 回目を、 6 か月後に 3 回目の接種を行います。
・ガーダシルについては、1 回目の接種を行った 2 か月後に 2 回目を、6 か 月後に 3 回目の接種を行います。
また、通常、予防接種は一定の間隔をあけて受けるものです。ワクチン接 種 1 か月以内に何らかの予防接種を受けた方は、いつ、どのようなワクチン を接種したか、担当の医師に伝えてください。

Q15.子宮頸がん予防ワクチンはどれ位効くのですか?

子宮頸がん予防ワクチンは、子宮頸がん全体の 50~70%の原因とされる 2 種類のヒトパピローマウイルス(16 型と18 型)などに持続感染等の予防効果をもつワクチンです。現在、サーバリックスとガーダシルの 2 種類のワク チンが販売されており、これまで、16 型と18 型の感染やがんになる手前の異常(異形成)を 90%以上予防したと報告されています


Q16.子宮頸がん検診と子宮頸がん予防ワクチンは両方受けなければいけませんか?

子宮頸がん検診、ワクチンともに有効な予防方法ですが、ワクチンは 16 型 18 型以外の高リスク型 HPV が原因となる子宮頸がんを予防できないため、 子宮頸がん検診も受診し、子宮頸がんに対する予防効果を高めることが大切です。特に 20-30 歳代で発症する子宮頸がんを予防するためにはワクチンの 効果が期待されています。

Q17.子宮頸がん予防ワクチンについて、がんを予防する効果は証明されていない と聞きましたが、本当ですか?

子宮頸がんは、数年から数十年にわたって、持続的にヒトパピローマウイ ルス(HPV)に感染した末に発症するとされています。子宮頸がん予防ワクチ ンは、新しいワクチンなので、子宮頸がんそのものを予防する効果はまだ証明されていません
しかし、持続的な HPV の感染やがんになる過程の異常(異形成)を予防する効果は確認されており、これらに引き続いて起こる子宮頸がんを予防する 効果が期待されています。

Q18.子宮頸がん予防ワクチン接種後に副反応はありますか?

子宮頸がん予防ワクチン接種後に見られる主な副反応として、発熱や接種した部位の痛みや腫れ、注射による痛み、恐怖、興奮などをきっかけとした失神などが挙げられます。

【子宮頸がん予防ワクチン接種後の主な副反応】

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また、ワクチン接種後に見られる副反応については、接種との因果関係を問 わず報告を収集しており、定期的に専門家が分析・評価しています。その中に は、稀に重い副反応の報告もあり、具体的には以下のとおりとなっています。

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Q19.子宮頸がん予防ワクチンの安全性に関する報道をよくみかけますが、何が問題になっているのですか?

子宮頸がん予防ワクチン接種後に、複合性局所疼痛症候群(CRPS)※などの 慢性の痛みを伴う事例や、関節痛が現れた事例などの報告があり、緊急に専門家による検討を行いました。子宮頸がん予防ワクチンの副反応の発生状況 については、ワクチン接種の有効性との比較考量の中で、定期接種の実施を 中止するほどリスクが高いとは評価されませんでした。
しかし、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛が子宮頸がん予防ワクチン接種後に特異的に見られたことから、同副反応の発生頻度等が より明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではないとされました。今回の措置は、あくまで一時的な措置であり、より安心して接種を受けて頂くためのものです。厚生労働省で は、早急に調査すべきとされた副反応等について可能な限り調査を実施し、 速やかに専門家による評価を実施する予定としております。(2013年6月現在)。
※ 複合性局所疼痛症候群は、骨折・捻挫などの外傷をきっかけとして生じる、原因不明の慢性の疼痛症候群です。

Q20.子宮頸がん予防ワクチンを受ける際に注意することはありますか?

次のいずれかに該当する方は、特に、健康状態や体質などを担当の医師にしっかり伝え、予防接種の必要性、リスク、有用性について十分な説明を受け、よく理解した上で接種を受けてください。

○ 血小板が減少している、出血した際に止まりにくいなどの症状のある方 ○ 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害などの基礎疾患のある方
○ 予防接種で接種後 2 日以内に発熱のみられた方
○ 過去にけいれんの既往のある方
○ 妊娠又は妊娠している可能性のある方 また、接種部位には主に、腕の肩に近い外側の部分(三角筋)が選ばれるので、接種当日はこの部分を露出しやすい服装にしてください。

Q21.子宮頸がん予防ワクチン接種後に注意をすることはありますか?

針を刺した直後から、強い痛みやしびれが生じた場合は、担当の医師にすぐに伝えて、針を抜いてもらうなどの対応をしてもらって下さい。また、その後の対応についても相談してください。
予防接種直後に、注射による痛み、恐怖、興奮などをきっかけとした失神が現れることがあります。失神し、倒れて怪我をする例も報告されているため、接種後の移動の際には、保護者の方が腕を持つなどして付き添うようにし、接種後 30 分ほどは体重を預けられるような場所で、なるべく立ち上がる ことを避けて待機して様子を見るようにしてください。
その他、予防接種一般に言えますが、予防接種当日は激しい運動や入浴は避け、接種部位を清潔に保ち、また、接種後の体調管理をしっかり行ってください。接種部位の異常や体調の変化、さらに高熱、けいれん、長期間持続する激しい痛みなどの異常な症状を呈した場合は、すぐに医師の診察を受けてください。

Q22.予防接種の安全性はどのようにチェックしていますか?

安全性については、その他の医薬品と同様に、製品化までに安全性に関する承認審査を行っている他、ワクチンはウイルスや細菌など生物をもとに作っていることもあり、その後も製品(ロット)ごとに国による検定を行っています。
また、予防接種後に健康状況の変化が見られた事例を、予防接種との因果関係の有無に関わらず収集し、随時モニタリングしています。さらに、収集したこれらの情報について、定期的に専門家による評価を実施して安全性の評価を行っています。

Q23.予防接種を受けた後に体調が悪くなり、医療機関を受診しました。補償など はありますか?

定期の予防接種によって引き起こされた副反応により、医療機関での治療が必要になったり、生活に支障が出るような障害を残すなどの健康被害が生じたりした場合には、法に基づく補償を受けることができます。
給付申請を検討する場合には、診察した医師、保健所、お住まいの市区町村の予防接種担当課へご相談ください。

※なお、補償に当たっては、その健康被害が予防接種によって引き起こされたものか、別の 原因によって起こったものなのか、専門家からなる国の審査会で、因果関係についての審 議が行われます。

参考情報
厚生労働省:子宮頸がん予防ワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンのページ
独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター
予防接種健康被害救済制度
重篤副作用疾患別対応マニュアル(アナフィラキシー)
重篤副作用疾患別対応マニュアル(ギラン・バレー症候群)
重篤副作用疾患別対応マニュアル(急性散在性脳脊髄炎)


■ ロタウイルスワクチン

(2012年5月記載)

ロタウイルス感染症

・1973年にはじめてウイルスが分離された。
・乳幼児の重症急性胃腸炎の45%を占める病原体であり、世界中で年間約52万人の5歳未満の子どもがこの感染症により死亡している(2004年)。米国ではロタウイルス感染症により年間60人近くの死亡者と55000人の入院患者、20万人の救急外来受診者を認めている。日本では5歳までに15〜50人に一人の割合でロタウイルス胃腸炎による入院例が認められている。
・ロタウイルスは環境中でも安定で、しかも体内にウイルスが10個侵入するだけで感染が成立するため、感染力が非常に強く感染予防は困難を極める。患者の便1g中には10-100億個のウイルスが存在する。
・生後6ヶ月〜2歳をピークに、5歳までに世界中のほぼすべての児がロタウイルスに感染し、胃腸炎を発症する。ノロウイルスより発熱を伴う場合が多く重症度が高い。
・ロタウイルスの再感染は、血清型が異なればより起きやすいが、同じ血清型でも起こり、幼児から成人まで複数回認めるが、症状は獲得される免疫力により再感染ごとに軽症となり、2歳以降症状はほとんど認めない

ロタウイルスワクチン

概要

 現在世界的に2種類のワクチンが認可、承認されている。いずれのワクチンもその高い有効性と安全性から、合わせて100ヶ国以上の国で小児の定期接種として採用されている。


ロタリックス

Rotarix®

ロタテック

RotaTeq®

ウイルス株 ヒトロタウイルス ウシ-ヒトロタウイルス弱毒生リアソータント
G1P[8] G1, G2, G3, G4, P[8]
単価 5価
必要接種回数 2回 3回

有効率

(規定回数接種後)

重症化の防御効率:85-96%

入院に対する有効率:85-100%

重症化の防御効率:98%

すべてのロタウイルス下痢症:74%

標準的接種スケジュール

2、4ヶ月

2、4、6ヶ月

他のワクチンとの同時接種

他のワクチンとの同時接種について

 3種混合ワクチン(DTaP)、Hibワクチン、不活化ポリオワクチン(IPV)、B型肝炎ワクチン、小児肺炎球菌ワクチン(PCV)も関して、いずれのロタウイルスワクチンと同時接種を行ってもお互いの抗体価への影響はないと報告されている。
 経口生ポリオワクチンとの同時接種に関しては、Rotateq®で若干ロタウイルスの血清IgA抗体価の上昇が抑制されるという結果が出ているが、ロタウイルスワクチンの効果に影響を及ぼすほどの結果ではなく、現時点では安全性を含めて問題ないとの見解である。

副反応

Rotashield®の教訓〜腸重積症

 現在の2つのワクチン以前、1998年に世界で初めて実用化されたロタウイルスワクチン Rotashield®は、サルロタウイルスであるRRV株(G3)をベースとして、ヒトロタウイルス(G1, G2, G3)のVP7遺伝子を組み込んだ単一VP7遺伝子リアソータントの混合物であった。
 重症下痢症に対して70-100%、下痢症全体でも48-68%の防御率を認めたが、接種後に高頻度に腸重積症が出現したため1999年に市場から撤退した。
 この経験から現行2つのワクチンは10万人規模の知見が行われたが、張従正症の発生頻度に変化はなかった。
 1回目のワクチン接種の期間を定めているのは、Rotashield®では生後90日以降に初回接種が行われた児に腸重積症の発症リスクが高かったためである。

腸重積以外の副反応

 ワクチン接種7-8日後から嘔吐(15-18%)、下痢(9-24%)、不機嫌(13-62%)、発熱(40-43%)と報告されたが、これらはプラセボと比較して有意に高くはない。

参考文献
・小児科診療 Vol.75 No.4 2012年4月号「ロタウイルスワクチンー期待される効果と課題」(神谷元:国立感染症研究所感染症情報センター)
・小児科 Vol.52 No.3 2011年3月号「わが国のロタウイルス感染症とロタウイルスワクチン」(神谷元)

■ B型肝炎ワクチン(HBワクチン)

(2012年5月記載)

概要

 日本では1986年から母子感染予防としてHBs抗原陽性母体から出生した児にのみHBワクチンが接種されてきたが、水平感染対策は行ってこなかったため、近年、成人で性感染症としてHBV(B型肝炎ウイルス)感染が拡大しつつある。
 一方、世界では179ヶ国で全出生児に対してHBワクチン接種(ユニバーサルワクチネーション)が導入されている(2010年)。
 日本でもHBワクチン接種の目的を母子感染予防から全国民をHBV感染から守ることに転換する必要性が高まっている。

B型肝炎ウイルス感染症

 HBV感染が6ヶ月以上持続するとキャリアと呼ばれ、そのうち肝機能以上を伴うと慢性肝炎と診断される。慢性B型肝炎の約10%が肝硬変や肝癌に進展する。
 HBV感染には一過性感染と持続感染があり、成人で持続感染することは少ないが、小児期に感染すると高い確率でHBVキャリア化する。WHOによると、キャリア化する割合は、1歳未満で90%、1-4歳では25-50%、5歳以上になると1%以下とされている。
 HBVにはA-Jの遺伝子型があり、それぞれの遺伝子型により病態が異なる。たとえば、欧米に多い遺伝子型AによるHBV急性肝炎は持続感染化しやすいため二次感染するリスクが高い。1990年以前の日本ではほとんど見られなかった遺伝子型A(とくにA2)の感染例が近年、日本全国に広がっていることが明らかになった(以前はBとCが多かった)。また、この遺伝子型Aの急性肝炎では成人感染にもかかわらず4%が持続感染を起こしていることも確認された。

 HBVに感染すると一過性・持続感染にかかわらず、長期間にわたり肝細胞内にはHBV遺伝子が残存し、生涯にわたって再活性化のリスクを負うことになると現在考えられるようになった。
 B型肝炎は治癒または沈静化して長時間経過した後にも、免疫抑制状態ではウイルス増殖が再活性化し、重症の肝炎を発症する。とくに悪性リンパ腫の治療にリツキシマブを使用した場合や、造血幹細胞移植後に重症肝炎をおこすリスクが高い。

HBワクチン

 不活化ワクチン。遺伝子組み換え技術を応用して公募で産生したHBs抗原を、アジュバントであるアルミニウム塩に吸着させて作成したもの。
 現在日本で市販されているワクチンは2種類;
ヘプタバックス®Ⅱ・・・チメロサール・フリー
ビームゲン・・・チメロサール含有量0.001w/v%(微量)

接種方法

接種量:1回に0.5ml、10歳未満では0.25ml
接種間隔・回数:4週間核で2回、さらに20-24週後に1回追加。

有効率

 接種効果はHBs抗体価により判定され、10mIU/mL以上が感染防止レベルである。
 抗体獲得率は年齢が若いほど高く、新生児・小児を含めて40歳未満95%、40-59歳90%、60歳以上63-70%。
 3回接種後の抗体価の持続には個人差があり、経年的に抗体価は低下傾向を示すが、感染防止効果は20年以上つづく。
 規定回数接種後にHBs抗体価が10mIU/mL以下に低下した場合も、顕性B型肝炎やHBVキャリアの発生はほとんど無く、現時点では一般集団における追加免疫の必要はないと考えられている。

副反応

 安全性に関する問題は少ない。
 5%以下の確率で発熱、発疹、局所の疼痛、かゆみ、腫脹、硬結、発赤や倦怠感などが見られることがあるが、いずれも数日で回復する。

HBVエスケープミュータント(中和抗体活性に抵抗性の変異ウイルス)問題:
 HBs抗体陽性にもかかわらずHBVキャリア化する場合があり、HBVエスケープミュータントによるとされる。ワクチン接種下でも自然感染下でも発生する。「ユニバーサルワクチネーションを行っている集団ではHBVエスケープミュータントが一定の割合で検出されるが、このような変異株が広がる兆候は見られない」というのが標準的見解である。

HBV母子感染予防

 妊婦がHBe抗原陽性で無処置の場合、主に出生時に産道で母体血に接触することにより出生児の85-90%がHBVに感染し、そのほとんどがキャリア化する。母親がHBe抗体陽性の場合には、一過性感染が6-8%起こり、重症化する場合がある。
 したがって、HBVキャリア妊婦からの出生児には感染予防を行う必要がある。下記スケジュールで予防を完了すると、母子感染を5%以下に抑えられる。
 日本では1986年から母子感染予防がはじまり、現在保険診療でカバーされるようになった。

接種スケジュール
日本】・・・ HBIG2回+HBワクチン3回
 HB免疫グロブリン(HBIG):出生時(12時間以内、遅くとも48時間までに)と生後2ヶ月時に筋注。
 HBワクチン:生後2・3・5ヶ月時に接種。
国際的】・・・ HBIG1回+HBワクチン3回
 HBIG:出生時のみ使用
 HBワクチン:出生時、生後1-2ヶ月時、生後6ヶ月時に接種。

ユニバーサルワクチネーション(定期接種)とは?

 すべての子どもにHBワクチンを接種し、水平感染も予防して社会からHBVを駆逐する世界標準の方法。1992年にWHOは加盟国に対してユニバーサルワクチネーションをすべきであると勧告し、2010年時点で世界179ヶ国が導入済み(残念ながら日本は未導入)。

目的
① HBVキャリア率を低下されることにより、HBV関連の肝癌や肝硬変などの慢性肝疾患を撲滅する(試算によるとそれぞれ1/5、1/8に減少)
② B型急性肝炎を減少させる
③ 再活性化のリスクを減らす

(導入効果の実例:アメリカ)
 1991年に新生児を対象にユニバーサルワクチネーションを開始、
 1994年に11-12歳、
 1997年に18歳未満に接種対象を拡大
 現在ではHBVキャリアのみならず、B型急性肝炎が82%も減少した。

 日本では家族内感染、性感染など水平感染対策が乏しく、今後のHBV感染の拡大が懸念される。小児期には現在以下のことが問題となっている;
① 父子感染など家族内感染が防止できない
② 保育所などでHBVキャリアの通園が問題となっており、集団感染の報告もある
 小児のHBV感染者は、本人の慢性肝疾患発症のみならず、高ウイルス量のため感染力が強く、症状の乏しい場合が多いので、長期にわたり感染源になりやすい。

参考文献
・小児科診療 Vol.75 No.4 2012年4月号「B型肝炎ワクチンーユニバーサルワクチネーションの必要性」(須磨崎亮:筑波大学小児科)

■ A型肝炎ワクチン(準備中)

<予防接種関連記事>

 ネットで見つけた予防接種関連ユースを拾い読み。

■ 『ボストン便り』からポリオ・ワクチンに関する記事を抜粋

略歴:細田満和子(ほそだ みわこ)
星槎大学教授。東京大学医科学研究所非常勤講師。博士(社会学)。1992年東京大学文学部社会学科卒業。同大学大学院修士・博士課程の後、02年から05年まで日本学術振興会特別研究員。コロンビア大学公衆衛生校アソシエイトを経て、ハーバード公衆衛生大学院フェローとなり、2012年10月より星槎大学客員研究員となり現職。『脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学』(青海社)、『パブリックヘルス 市民が変える医療社会』(明石書店)、『チーム医療とは何か』。現在の関心は医療ガバナンス、日米の患者会のアドボカシー活動。

vol.294 『ボストン便り』(第29回)ポリオの世界の今 (2011年10月20日)

●ゲイツ財団のポリオ撲滅キャンペーン

今年は夏の終わりから東京で過ごしましたが、9月下旬にワシントンDCに、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation、以下、ゲイツ財団)のワシントン支部を訪ねてきました。ゲイツ財団は資産規模として3兆円近くを誇り、100以上の国々で教育や保健衛生などの事業や研究に資金提供をしています。公衆衛生業界では、この財団の助成金を得ることに血眼になっていて、ゲイツ夫妻に読んでもらうためだけに本を書いて出版したというハーバードの教授さえいます。どんな財団なのかと、私もかねてより興味があったのですが、この度、慶応大学システムデザイン・マ ネジメント研究所の久能祐子教授のアレンジによって訪問が実現しました。

DCでも名だたる一等地の、セキュリティも万全な豪華ビルに財団はありました。職員の方は、「シアトルの本部は大きいのですがここは手狭で」とおっしゃるのですが、2フロアにわたる広々としたスペースに、モダン・アートがそこここに置いてある素晴らしいオフィスでした。
会議室に通され、職員の方にゲイツ財団の説明をしていただいたのですが、今最も力を入れているのは、「世界のポリオ撲滅」ということでした。過去20年間 で世界中でのポリオ発症は99%減少しましたが、なかなか撲滅とまではいかない「あと少し」の状況だというのです。そこでゲイツ財団は「ポリオ撲滅キャンペーン」を行っているというのです。そこでこのキャンペーンの一環として作成した、ふたつのプロモーション・ビデオを見せてくれました。ひとつは、サッ カー選手がゴールを決める姿が次々と映し出され、99%以上のゴールを目指そうというもので、もうひとつは世界各国の様々な人、大人から子どもまで、一般人から有名人までが、「あと少し」という言葉とジェスチャーを交えて訴えかけるというものでした。どちらも、とても洗練されたクールな出来栄えでした。

●ポリオ撲滅への日本の協力

ゲイツ財団は、ポリオ撲滅に関して日本政府を重要なパートナーとしています。2011年8月15日には東京で、JICA理事長の緒方貞子氏が、ビル・ゲイツ氏とパキスタンにおける「ポリオ撲滅事業」の業務協力協定を締結し、世界におけるポリオ撲滅対策等の強化に向けた戦略的パートナーシップを結ぶことを発表しました。そして同日、パキスタンのイスラマバードでは、大江博駐パキスタン日本国大使とパキスタンのアブドゥル・ワジッド・ ラナ経済・統計省経済担当次官が、ポリオ撲滅のために49億9,300万円を限度とする借款契約を締結することを発表しました。

どうしてパキスタンへの50億円近い円借款がゲイツ財団と関係するかというと、パキスタン政府がポリオ予防接種キャンペーンを着実に実施した場合、ゲイツ財団がパキスタン政府に代わって日本に対して円借款を返済する予定だからだそうです。ちなみにパキスタンでのポリオ撲滅事業の具体的内容は、ワクチンの調達をして、キャンペーンを実施し、5歳未満児の接種率を上げることです。そのために現在、世界銀行、ユニセフ、WHO、ロータリークラブなど様々な組織 が、いろいろな形で連携を進めています。

●日本でのポリオの現状

ポリオ蔓延国であるパキスタンでは、強固な免疫を付与するために経口の生ポリオ・ワクチンが使用されています。ただし先進国においては、ワクチン接種が功を奏して1970年代には強毒野生株の排除に成功しているので、生ワクチンではなく不活化ワクチンが使用されています。ちなみに韓国は既に不活化ワクチンに切り替えており、中国やインドも生ワクチンから不活化への移行中です。ところが日本では、ポリオ撲滅が宣言されているのにもかかわらず、未だに生ワクチ ンが使われています。これはどうしてなのでしょうか?

その理由は私にも分かりません。どう考えても不可解なのです。昨年末から、広域ボストン・ポスト・ポリオの会の例会にたびたびお邪魔させて頂いているのですが、ある時、「日本では生ワクチンを使っている」と言ったら、とても驚かれました。「日本はまだポリオ蔓延国なの?」と。

毒性の強い野生株がいまだ存在するポリオ蔓延国ならば、生ワクチンを接種して免疫をつけておく必要があります。しかし、既にポリオが撲滅されているような国では、実際にポリオを発症してしまう危険性もある強力な生ワクチンでなくても、安全性が確立されている不活化ワクチンで十分だ、というのが世界の常識なのです。ですから、日本で生ワクチンが使われているという事実は、世界の人たちの目から見たら非常に驚くべきことなのです。

●神奈川県の決断と政府の批判

このような中、10月15日に、神奈川県が不活化ポリオ・ワクチンを独自に輸入して、希望する県民に接種する方針を固め、年内に実施する予定というニュー スが飛び込んできました。神奈川県ではワクチン接種率が低下し、現在1万7000人が無接種者であるといいます。神奈川県知事の黒岩祐治氏は、中国の新疆 ウイグル地区で野生株由来のポリオの集団感染が報告されたことに危機感を持ち、無接種者にワクチン接種を促そうとして不活化ワクチン接種の実施を決断したのだといいます。

近年、ポリオの会や一部の小児科医の働きかけのおかげで、生ポリオ・ワクチンによって、毎年100万人に2~3名程度が実際にポリオに罹患してしまうこ と、それを避けるためには不活化ワクチンを接種すればいいことが、広く知られるようになってきました。それと共に、安全性の高い不活化ワクチンを子どもに受けさせたいと思う親御さんが増えてきました。不活化ワクチンは有料で、医療機関によっても異なりますが1回4,000円から6,000円で、3回受ける と12,000円から18,000円になります。生ワクチンなら公費で無料なのにもかかわらず、多くの親御さんが有料の不活化ワクチンを選んでいるので す。

しかし、不活化ワクチンを輸入して接種できる医療機関の数は十分とは言えません。また厚生労働省はホームページで、不活化ワクチンの導入は「可能な限り迅速に行いますが、早くても2012(平成24)年度中」と答えています。すなわち今現在の時点で、日本の子どもたちに不活化ワクチンが届けられる体制は、 全く整備されていないのです。

このような状況を解消するため神奈川県知事は、利用者に費用は請求しながらも、神奈川県立病院機構と協働して、不活化ワクチンを提供できる体制を準備することを宣言した訳です。ところが、厚生労働大臣である小宮山洋子氏は、10月18日の閣議後の記者会見において、神奈川県の対応を「望ましいと思っていない」と批判したそうです。「国民の不安をあおって、生ワクチンの接種を控えて免疫を持たない人が増える恐れがある」と。

●日本の子どもたちのために

確かに、ポリオ撲滅への道には1%の壁があるように、中国で集団感染が報告されるように、ポリオは未だ終わっていない世界の大問題ですから、日本の子どもたちがワクチン接種をしないでいたら大変なことが起きる、という小宮山氏の発言は大いにうなずけるものがあります。しかし、国内で野生株のポリオが撲滅されているにもかかわらず、ポリオを発症する危険性のある生ワクチンを接種すべきいうことは、どうしても理解できません。そして、万にひとつでも、生ワクチンでポリオを発症するようなことがあったら子どもに申し訳ないと思うがゆえ、不活化ワクチンを望む親御さんたちの気持ちは、とてもよく分かります。

私の場合、現在13歳の長女は乳幼児の頃、日本で生ワクチンを受けました。7歳の次女は、アメリカで不活化ワクチンを受けました。当時、ポリオ・ワクチンに関する私の知識は乏しく、生ワクチンの危険性を知ったのは、恥ずかしながらほんのこの2、3年のことでした。次女はアメリカにいたからラッキーでしたが、長女の時にはこんな危険性のあることをしたのかと思うと、何事もなくてよかったと胸をなでおろします。しかし、アメリカにいたからよかったと思うこと に、釈然としないものも感じてしまいます。どうして日本にいるというだけで、予防接種をしたがためにポリオに罹るかもしれないという心配をしなくてはならないのでしょうか。

日本政府は、本気でポリオ撲滅を志向しているならば、ゲイツ財団と組んでパキスタンを支援することも重要ですが、一刻も早く、日本において不活化ワクチンに切り替えて欲しいものです。

<参考資料>
1)ゲイツ財団のホームページ、2011年10月18日閲覧
http://www.gatesfoundation.org/Pages/home.aspx
2)「日本、パキスタンのポリオ撲滅支援:約50億円の円借款」、ヤフー・ニュース、2011年10月18日閲覧 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110817-00000001-indonews-int
3)「ポリオとポリオワクチンの基礎知識」、厚生労働省のホームページ、2011年10月18日閲覧
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/qa.html#q6

Vol.329 『ボストン便り』(第31回)謎に満ちた日本のポリオワクチン接種 (2011年12月 1日)

●ワクチン「拒否率」の上昇

現在日本においては、ポリオワクチンを巡る議論が社会的問題となってきています。すなわち、ワクチンによるポリオ麻痺(VAPP)を避けるために不活化ワクチンを求める親たちと、生ワクチン接種を推奨し続ける政府とのコンフリクトが起こっているのです。
その結果、何が起こっているかと言うと、ポリオワクチン接種率の低下です。都内で小児科を開業されている宝樹真理医師は、渋谷区や港区や世田谷区の接種率は、今や5割に低下していると言います。予防のためには90%がワクチンを接種している必要があるといいますから、この接種率50%というのは明らかに危機的なものです。
従来より現行の生ポリオワクチン接種に疑問を呈してきたテレビ制作者の真々田弘氏は、このワクチン接種率の低下を、「ワクチン拒否率」だといいます。親にとってみれば、安全性が確立されている不活化ワクチンがあって、諸外国ではすでに何年もルーティンで使われているのに、生ワクチンを打つことで我が子がポリオを発症してしまうことは、絶対に避けたいことなのです。
しかし、どういう訳か日本では、未だに生ワクチンなのです。アメリカで子育てすると、日本とアメリカで、予防接種の数と回数が全く違うのに驚きますが、一つ一つ調べていくといろんな疑問に出くわします。ポリオもその一つで、調べれば調べるほど、謎が出てきます。

●日本小児科学会の見解

ワクチン接種率の低下を懸念して、日本小児科学会の予防接種・感染対策委員会は、2011年11月14日に「ポリオワクチンに関する見解」をホームページ上に掲載しました。その冒頭では、こんな風に書かれています。

「世界的にはまだ野生株ポリオの流行が存在する中、わが国においてはポリオワクチン接種率を高く保つ必要があります。IPV(不活化ポリオワクチン:筆者挿入) が導入されるまでポリオワクチン接種を待つことは推奨できません。」

そして、生ワクチンによって実際にポリオに罹ってしまうことがあることを明記して、WHOのポジション・ペーパーを引用して、こんなことも書いています。

「世界保健機構(WHO)は生ポリオワクチンによるポリオ麻痺を予防するために、お母さんの免疫が残っている間に初回の接種をするように勧めています」

●WHOの見解

この日本小児科学会の見解を読むととても不思議な気がします。というのも、小児科学会が引用した実際のWHOのポジション・ペーパーの当該箇所を和訳すると、このようになります。

「母親由来の免疫がまだ残っている間に初回のOPV接種を提供することは、少なくとも理論的にはVAPPを予防するかもしれない。しかしながら、出生時接種の抗体出現割合のデータは非常なばらつきを見せている。低いところではインド(10-15%)、中間値のエジプト(32%)、高いところでインドネシア (53%)...」

すなわち、日本小児科学会は「WHOはお母さんの免疫が残っている間に初回の接種をするように勧めています」と書いているのですが、当のWHOは「母親由来の免疫がまだ残っているうちに初回の接種をすることは、少なくとも理論的には予防するかもしれません」と書いているのです。ここにはかなりのズレを認めざるを得ません。どうしてこのようにズレていることを、学会の見解として表明するのでしょう。とても不思議です。

●WHOとの違い

また、同じWHOのポジション・ペーパーには、生ポリオワクチンによるポリオの発症(VAPP)件数は、年間で100万人に4人と書いてあります。しかし、日本小児科学会の声明では、日本では100万人に1.4人と書いてあります。これも不思議で、日本小児科学会はいかなる根拠によってこのようなことを 書いているのでしょうか。
日本小児科学会の最大の不思議な点は、まだあります。WHOの世界ポリオ撲滅イニシアティブのスポークスマンであるオリバー・ローゼンバウアー氏は、生ワクチンによってポリオに罹ってしまうことはまさしく害悪なので、「ひとたびポリオの野生株の撲滅を達成できたら、経口ポリオワクチンをルーティンの接種で使用することは中止する必要があろう」と、2011年11月11日にオンラインのカナダ医師会誌で語っています。
これはいまさら新規に言われたことではなく、生ワクチンによって実際にポリオが発生する危険性は従来から言われていたからこそ、ポリオを撲滅した国(日本を除くほとんどの先進国)では次々に不活化ワクチンに切り替えているのです。それでは日本小児科学会は、このWHOの見解や、ポリオを撲滅した諸外国の状況を知らなかったのでしょうか。

●生ワクチンによる被害

現在、世界的にポリオを撲滅しようとする動きが活発で、ロータリー・クラブ、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、日本の外務省でさえ、莫大な資金を投入 して、キャンペーンをしたり、予防接種を普及させようとしています。そのおかげで、たとえばかつてポリオ蔓延国であったインドは、WHOの推奨するポリオ撲滅戦略を全面的に受け入れて、2011年1月に1人の患者が発生しただけで、以降、ポリオの発症例は報告されていません。
ところが日本では、2011年5月に発表されたように、生ポリオワクチンの接種によってポリオに罹ってしまった子どもがいるのです。どうしてこんなことが起きてしまうのでしょうか?ポリオ発症数をゼロにしたインドと未だにポリオ発症者のいる日本との違いはどこなのでしょう? インドはWHOの推奨を受け入れたからで、日本は受け入れていないからなのでしょうか?いったいどうして現在に至るまで日本では、ポリオが撲滅できないのでしょうか?
謎は深まるばかりです。

【謝辞】
ポリオワクチンに関する情報を提供して頂き、ご意見を聞かせて頂きました真々田弘氏、ポリオの会の皆様、宝樹真理氏に心からのお礼を申し上げます。また、感染症コンサルタントの青木眞氏のブログは大いに参考にさせて頂きました。ありがとうございました。

(参考資料)
1.日本小児科学会、予防接種・感染対策委員会による「ポリオワクチンに関する見解」。
http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_111114.pdf
(2011年11月19日にダウンロード)
2.WHOのポジション・ペーパー「撲滅前時代におけるポリオワクチンとポリオ予防接種」
WHO,Polio Vaccines and Polio Immunization in the Pre-eradication Era: WHO Position Paper, Weekly Epidemiological Record, No.23, 2010, 85, 213-228.
http://www.who.int/wer/2010/wer8523.pdf (2011年11月19日にダウンロード))
3.「WHOはポリオ集団発生と関連するワクチンの廃止を熟考する」、カナダ医師会誌、オンライン、2011年11月11日発行
WHO Mulls Phase Out of Vaccine Linked to Polio Outbreaks, Canadian Medical Association Journal(CMAJ),
http://www.cmaj.ca/site/earlyreleases/11nov11_who-mulls-phase-out-of-vaccine-linked-to-polio-outbreaks.xhtml

Vol.470 『ボストン便り』(第37回)「ポリオのアウトブレイク、危機は今」 (2012年4月27日)

●不活化ポリオワクチンへの9月切り替え

4月23日に、第3回不活化ポリオ検討会が国立感染症研究所で開催されました。それに先立つ4月20日に、小宮山洋子厚生労働相が「9月には接種開始できるよう準備を進めていきたい」と発言したからでしょうか、メディアがたくさん入り傍聴席もいっぱいでした。
最初に厚生労働省の担当者からいくつかの報告がなされました。まず、9月1日から全国一斉に生ワクチンから不活化ワクチンに切り替えての接種開始がアナウンスされました。当初は4月中に承認される見込みのサノフィパスツール社製の不活化ポリオワクチンの単独接種を使用し、やがて11月に承認見込みの4種混合(DPTと不活化ポリオワクチン)が加わる形になるという事でした。
不活化ワクチンの場合、接種は4回(生後3ヶ月から開始して、3週間ずつあけて2回目と3回目を行い、4回目は追加接種)とする事や、生ワクチンを2回受けている人はもう受けなくていい事、生ワクチンを1回受けている人は不活化ワクチンを3回受ける事なども報告されました。不活化ワクチンは、医療機関が個別にうつのでこれまでのような集団接種ではない事にも言及されました。

●この夏の流行期を乗り切れるか

この検討会には、座長(医師)と10人の構成員(医師、患者会代表など)、厚生労働省の職員が参加していて、不活化ワクチンの供給、ワクチンスケジュール、同時接種への対応などについて、報告や質疑応答などがされていました。
その中で、患者会代表の小山万里子氏は、「アウトブレイクの危機は、今ここにある」と発言されました。ポリオの流行期は夏であることが知られています。し かし今回、9月から不活化ワクチンが無料で受けられることになるので、多くの保護者はそれを待ってしまうことが予想されます。そこで小山氏は、不活化ワクチンを待つ子どもと、生ワクチンを打った子どもとの濃厚な接触があったらどうなるか、そこにはポリオ感染の危険があると危惧しているのです。
これは何も小山氏だけが心配している訳でなく、米国感染症専門医の青木眞氏も指摘しています。また多くの保護者達が、保育園などで感染することはないのか 心配する声をソーシャルメディア上であげたりしています。例えば2010年に神戸でポリオを発症した男児は、ポリオの予防接種を受けていた訳でなくても、 ポリオを感染してしまいました。原因は不明ということになっていますが、ワクチン接種者からの二次感染が疑われています。
感染症専門医の青木氏は、自らのブログに「たった1例でも、本来おこるはずのない感染症がおきたら『アウトブレイク』という」、と書いています。これは、 青木氏がアメリカの国立感染症研究所の実地疫学専門家養成コース(FETP)で学んだことだといいます。秋の不活化が始まるまで、ポリオ患者が発生しないよう祈る気持ちでカウントダウンしていると、青木氏もブログに記していました。

●「健康危機管理」という思想と実践

この国では、「アウトブレイク」という危機が起きないためには、祈るしかないのでしょうか。公衆衛生学の考え方の中には、ヘルス・リスクマネジメント、ヘルス・リスクアセスメントという概念があり、個人や集団に害のある影響を削減してゆくことは重要なことと考えられています。ポリオに関しては、ポリオワクチン接種に伴うワクチン関連麻痺型ポリオ (Vaccine-Associated Paralytic Poliomyelitis: VAPP)を防ぐことは、世界保健機構(WHO)のみならず各国が認識しており、いったんポリオ撲滅国となれば速やかに生ワクチンから不活化ワクチンへ変 更しています。
ポリオに関して第一人者である関場慶博氏は、4月中旬にインドを訪れ、インドではポリオの発症が1年3ヶ月も抑えられていて、あと1年9ヶ月続けると根絶国と認定されると報告しています。そして、インド都市部では既に不活化ポリオワクチンが有料で接種されていて、2014年には全国で無料で不活ポリオワクチン接種が可能となるともツイッターで書いておられます。ポリオ根絶後に直ちに生ポリオワクチンから不活化ワクチンに切り替えるインドのこうした対応は、 ヘルス・リスクマネジメントという観点からは、特に称賛される実践ではなくて、当たり前のことなのです。 
それではずいぶん前(2000年)にポリオ撲滅国になった日本で、どうして不活化ワクチンへの切り替えが行われなかったのでしょう。なぜ当たり前のことができなかったのでしょうか。

●数々の警告

実は日本でも従来から生ワクチンの危険性を指摘し、不活化に切り替えようとする動きはありました。
例えば、2005(平成17)年3月に出された厚労省の予防接種に関する検討会の中間報告では、「先進国の多くの国ですでにIPVが導入されており、ポリ オ根絶計画の進捗状況に鑑みれば、わが国でも極力早期のIPV導入が喫緊の課題となっている。IPVの早期導入に向け、関係者は最大限の努力を払うべきである」と書いてあります。また、国立感染症研究所感染症情報センターの発行する月報の2008年、「Infectious Agents Surveillance Report」においては、2007年末に北海道で男の子が生ワクチンによってポリオに罹患したケースを検討し、「今後、わが国におけるVAPPの発生リスクを抑えるため、不活化ポリオワクチンの早期導入が必要であると考えられた」と記されています。
日本医師会も20年前から不活化の導入を要求しています。2000(平成 12) 年 7 月、福岡県で発生した生ポリオワクチンによる副反応、および 2 次感染の事例を受けて、不活化ポリオワクチンの早期導入を強く要望する見解を公表し、その後も一貫して主張し続けてきたのです。
それならば、どうして不活化への切り替えが今日までできなかったのでしょうか。いろいろな理由が挙げられています。80年代から90年代のMMR (新3種混合)や日本脳炎のワクチン予防接種の被害に対する裁判を抱えていた事、国産ワクチンへのこだわり、不活化ワクチンに切り替えたことで生じるかもしれない問題への危惧など。しかし、既に生ポリオワクチンによるポリオ感染の危険性は専門家も行政も知っていたのですから、警告を発するだけで放置していた責任は重いと言わざるを得ません。

●動かない山を動かす

今回、ポリオワクチンに関わってきた中央政府や神奈川県の行政職員、保健所職員の方々にお話を聞く機会がありました。そして、従来の在り方を変えるということが、この国ではとても難しいこと、しかし、きっかけさえあれば変わるという感想をうかがいました。
ひとつの大きなきっかけは、昨年10月に神奈川県の黒岩祐治知事が、県内で不活化ポリオワクチンを打てる体制を整えることを宣言し、実施してきたことが指摘されました。国ができないのなら県がやるということで、神奈川県では県立病院の協力の下、県の保健福祉事務所を会場に、希望者に対して有料で不活化ポリオワクチン接種を2011年12月中旬から実施してきました。ある会場を訪ねましたが、ゆったりとしたスペースで、保護者の方が安心した様子でワクチンを赤ちゃんに受けさせていました。半数以上の方がカップルで来ていて、子どもの健康に父親も母親も一緒に取り組んでいこうとしている様子がうかがえました。
もうひとつの重要なきっかけは、小山万里子氏が代表を務める「ポリオの会」の活動でした。「ポリオの会」は、もう10年以上も前から不活化への切り替えを求めてきています。ある厚労官僚は「ポリオの会の活動がなかったら、誰もワクチンを変えようとは思わなかっただろう」とおっしゃっていました。検討会も医師会も問題意識はあり警告を発してきたわけですが、なかなか変えられない状況の中、患者団体が声を上げることで、やっと変わっていったことは特筆に値すると思います。

●患者会のちから

9月1日から不活化ポリオワクチンに切り替えをすることを報告した検討会が終わった後、小山氏は「これでやっと会の本来の活動に戻れる」とおっしゃっていました。「ポリオの会」はそもそも、ポストポリオ症候群に悩む患者たちが、病気や障害との付き合い方、治療法、社会保障の取得の仕方などを情報交換したり、会員間の交流を深めたりする患者会でした。ところが、生ワクチン由来でポリオになって会の門戸をたたく若い人が後を絶たないのに業を煮やして、声をあ げざるを得なかったといいます。そもそも障害や病いを抱えているのだから、身体的につらいので、闘いたくてやっているわけではないのです。
ポリオに関して9月から不活化ワクチンへの切り替えが決まったとしても、この夏をどう乗り切るのかという問題、未だ世界標準とは隔たりのあるワクチン全体 の問題も残っています。3ワクチン(子宮頸がん予防、Hib、小児用肺炎球菌)、4ワクチン(水痘、おたふくかぜ、B型肝炎、成人用肺炎球菌)はこれからどうなるのか。同時接種はどのように進められるのか。こうしたことを解決してゆく為に、ポリオの会に限らない、いろいろな患者会の力、いわば市民の力が必 要なのだろうと改めて思いました。

<参考資料>
1)ロハスメディカル 第3回不活化ポリオワクチン検討会 なぜ導入は9月なの? 
http://lohasmedical.jp/blog/2012/04/39.php
2)不活化ワクチン 秋まで祈りのカウントダウン
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/03f48b6e1e962366aa759f28a6fe1511
3)ポリオワクチン接種後に発症した小児の急性弛緩性麻痺の1例-北海道
(Vol. 29 p. 200-201: 2008年7月号)
http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/341/kj3413.html
4)日本医師会 社団法人 日本医師会
ポリオワクチンに対する日本医師会の見解について 平成23年11月16日
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20111116_21.pdf

Vol.553 『ボストン便り』(第40回)「不活化ポリオワクチンと日本のワクチン審査制度」 (2012年7月26日)

●不活化ポリオワクチン接種のスタート

2012年9月1日から、ポリオの予防接種は、それまでの生ポリオワクチンから、不活化ポリオワクチンに転換しました。今まで受けてきた、生/不活化ワクチンの数によって、今後受けなくてはならない不活化ワクチンの数は様々になります。さらに11月からは、不活化ポリオワクチンとDPT(ジフテリア、百日咳、破傷風混合ワクチン)を合わせた4種混合が導入されます。また、現在は任意接種のインフルエンザ菌b型(ヒブ)や肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルスな ども定期接種にすべきという意見も強くあり、自費で接種を希望される保護者も少なくありません。
このようにしてワクチン接種のスケジュールはますます複雑になってきますが、確実に予防接種が遂行されるようにと、各地の自治体は保護者に対する説明や広 報の活動を行っています。行政職員達の忙しさは容易に想像されますが、ただし、いままでも地方自治体は、生ポリオワクチンに対する危惧からの接種拒否や接種控えがおこり、接種率が低下するという問題に直面し、職員は対応に苦慮していました。
この背景は、いままでの「ボストン便り」で何度も触れたように、ポリオの会や一部の小児科医の働きかけによって、生ポリオワクチンにより100万人に 3~4名程度(公式には1.4人)が実際にポリオに罹患してしまうこと、それを避けるためには不活化ワクチンを接種するという方法がとられることが、広く知られるようになってきたからです。
こうして、安全性の高い不活化ポリオワクチンを子どもに受けさせたいと思う親御さんが増えたのです。一部の医療機関で個人輸入として使用されていた不活化 ポリオワクチンは有料で、医療機関によっても異なりますが1回4,000円から6,000円で、3回受けると12,000円から18,000円になります。生ワクチンなら公費で無料なのにもかかわらず、多くの親御さんたちが有料の不活化ワクチンを選んできました。
安全なワクチンを受けたいという当然の事を主張する保護者に対して、これまでほとんどの行政は、「生ワクチンを打ってください」とか、「もう少しで不活化になります」と苦し紛れで対応してきました。しかし、こうした事からやっと解放されると、忙しさの中で職員達はむしろ喜んでいるのではないかとも推察されます。
しかし、このような対応をせずに、不活化を希望する親御さんに対しては、それを提供できる体制を整えてきた自治体があります。神奈川県です。神奈川県では黒岩祐治知事の決断で、2011年末から、不活化ポリオワクチン体制を独自に整えてきました。これは国が不活化ポリオワクチンに切り替えたために2012 年8月31日をもって終了しましたが、ここではその動きを振り返ってみたいと思います。

●神奈川県知事の決断

神奈川県では従来、生ポリオワクチンの接種率は100%に近く、毎年約8万人が接種していました。ところが、2011年10月の時点で、1万7000人が無接種という事態に陥りました。黒岩氏はこの急激な接種率の低下を、生ポリオワクチンによってポリオに罹ることを恐れた親御さんたちの気持ちだと受けとめ ました。
さらに黒岩氏は、かつて厚生労働省の予防接種部会の構成員を務めたこともあり、世界の感染症状況にも関心が高く、当時、中国の新疆ウイグル地区で野生株由来のポリオの集団感染が報告されたことにも危機感を持っていました。ポリオは、世界で99%は解消されましたが、あと1%の壁がなかなか破れず、いまだ撲滅されていない感染症なのです。万が一にでもポリオが発生したら大変なことになってしまいます。そこで黒岩氏は、当時国内未承認であった不活化ポリオワクチン接種を、県独自の判断として実施することを決断したのです。
ところが、この黒岩氏の決断に対して、厚生労働大臣である小宮山洋子氏は、2011年10月18日の閣議後の記者会見において、「望ましいと思っていない」と批判しました。「国民の不安をあおって、生ワクチンの接種を控えて免疫を持たない人が増える恐れがある」と。こうして国と県とでワクチン政策に関する対立が起こった形になりました。
確かに、中国で集団感染が報告されるように、ポリオは未だ終わっていない世界の大問題ですから、ワクチン未接種の子どもたちがいたら大変なことが起きる、 という小宮山氏の発言は大いにうなずけるものがあります。しかし、ポリオを発症する危険性のある生ワクチンを接種すべきいうことは、どうしても理解できません。なぜなら、予防接種によってポリオに罹ることのない不活化ワクチンがあるからです。
どうして接種控えをしているのかというと、親は、万にひとつでも、生ワクチンでポリオを発症するようなことがあったら子どもに申し訳ないと思うからです。この不活化ワクチンを望む親御さんたちの気持ちは、黒岩氏には届いていても、小宮山氏には届いていないようでした。

●神奈川県職員の奔走

神奈川県が独自に不活化ポリオワクチンの接種をすると決めても、県職員の足並みは必ずしも揃っていたわけではありませんでした。当時の状況を良く知る方の話によると、当初、県立病院に入院している重症の子どもだけを対象に接種するということでお茶を濁そうとしていた職員もいたといいます。しかし、実務の担当者は、知事の熱意と「お母さん達からの心の叫び」に応えるために、急ピッチで準備をしました。ここでは、こうした県職員の方々へのヒアリングを基に、神奈川県における不活化ポリオワクチン体制について、ワクチンの確保、医師の確保、そして場所の確保という観点からみてみます。
まず、ワクチンの確保についてです。不活化ポリオワクチンは、当時は国の薬事承認や国家検定をまだ受けていない未承認薬でした。よって医師たちは「薬監証明」を取って、未承認薬の不活化ポリオワクチンを輸入し、子どもたちに接種していました。この「薬監証明」は、医師が個人でとることはできても、県がとって輸入するということは、制度上できないものです。
そこで、県の担当者は、厚生労働省の担当者と交渉した結果、解決策を見出しました。それは、神奈川県で接種に携わる医師の名簿を作成し、その医師がワクチンを使うということで厚生労働省から「薬監証明」を出してもらうという仕組みです。このエピソードから、厚生労働省は、表向きの制度論上は不活化ポリオワクチンに渋い顔をしていたものの、運用上は生ワクチンからの切り替えを容認していたことがうかがえます。
次に、医師の確保についてです。担当者は、神奈川県立こども医療センターと上足柄病院から、接種をしてくれる医師を出してもらい、県立病院機構に非常勤職員として所属してもらうことにしました。ただし県立子ども医療センターは、ここが最後の砦という感じの重症のお子さんがたくさんいらっしゃるので、なかなか医師を出してはくれませんでした。しかし、比較的高齢の医師達に非常勤で来てもらうということで、やっと最後には合意を取り付けることができました。この県立病院機構の非常勤の医師達が、不活化ポリオワクチンを輸入するということで「薬監証明」をとり、接種できる体制にしました。
最後に場所の確保についてです。予防接種の場所として、県の4か所の保健福祉事務所が使われることになりました。その際は、具体的な手順の調整が大変だったといいます。どんな順路にするか、エレベーターや階段は十分に行き来できるスペースがあるか、きょうだいを連れてくる人もいるだろうから、その子たちが待っている場所はどうするかなど。あらゆる可能性を考えて、接種場所の準備をしたということでした。
このようにして整備されてきた不活化ポリオワクチン接種体制ですが、接種価格についても議論になりました。その結果、安易に無料化しない、ということで1 回6,000円になりました。それは、神奈川県内で独自に不活化ポリオワクチンの接種を行っている医師達に配慮するためです。
医師達は補償などのことも含めて、自分でリスクを考えつつ、赤ちゃんのために不活化ワクチンを個人輸入してきました。そこに県が無料でポリオワクチンを接種する事にしたら、医師達は受診してくれる子どもたちを失うことになります。不活化ワクチンを有料で提供するのは、「県も独自にドロをかぶってやる」という県の姿勢を示すためにも必要だったのです。

●不活化ポリオワクチンの開始

不活化ポリオワクチンの予約は2011年12月15日から開始され、2012年3月31日で終了しました。この間に申し込みをした予防接種希望者は、 5,647人でした。申し込みの取り消しも3,033人いましたので、実際に接種をした数は2,614人でした。この2,614人の接種希望者が、不活化ワクチンを1回ないしは2回接種したので、合計の接種実施回数は4,036回となりました。
この4,036回の接種の裏には、さまざまなドラマがありました。不活化ポリオワクチンの接種は、2012年1月から始まりましたが、インフルエンザが大流行したので、1月と2月は1日に25人くらいしか接種できませんでした。その結果、4月の中旬の時点では、848人の接種しか終わっていませんでした。 そこで4月中旬以降は、7か所に接種場所を増やして、1日60人くらいのペースで対応してきました。
また、初めてのことなので接種前の問診は時間をかけてやったといいます。さらに接種した後も会場で30分は休んでもらうようにしました。もちろん小さな子が30分飽きずに待っていられるような遊び場も会場に設置しました。
4月のある日、平塚市の不活化ポリオワクチンの接種会場を訪ねました。ゆったりとしたスペースで、保護者の方が安心した様子でワクチンを赤ちゃんに受けさせていました。半数以上の方がカップルで来ていて、子どもの健康に父親も母親も一緒に取り組んでいこうとしている様子がうかがえました。

●独自体制の不活化ポリオワクチンを終えて

神奈川県の不活化ポリオワクチン提供体制の整備は、市町村や医師達にもさまざまな影響を与えました。
市町村は、国の意向に従って生ポリオワクチンを推進することになっていますから、神奈川県の独自の動きに対して戸惑いを隠せないことは明らかです。そこで神奈川県では、市町村に「迷惑がかからないように」気を付けてきたそうです。市町村の推奨する生ワクチンに不安のある方だけを対象に、その方々の受け皿として生ポリオワクチンを提供するという姿勢を貫き、市町村の保健行政を「邪魔しない」ことを示しました。
また、神奈川県内では、県が不活化を始めた事でやりやすくなったと考えて、民間の病院や診療所でも不活化ポリオワクチンを輸入して提供するところが増えてきました。この影響は、県の不活化ワクチンの体制に影響を及ぼしました。わざわざ遠い県の施設に行くまでもなく、近くのクリニックで受けられるようになったからと、予約のキャンセルが相次いだのです。すべてがこの理由という訳ではありませんが、最終的には、3,033人が申し込みの取り消しをしました。価格がほぼ同じならば、県の施設でも近くのクリニックでも同じという事で、保護者は利便性を選んだのでしょう。県の当初のもくろみ通り、民間の医療機関への配慮が生きてきた訳です。
一連の不活化ワクチン接種において、ワクチンの安全性が問題になったという報告や重篤な副反応の報告は1例もありませんでした。

●ワクチン問題は終わらない

今回、全国的に公費での不活化ワクチンが導入されることになりましたが、ワクチン問題はこれで終わったわけではありません。二つの点から指摘したいと思います。
ひとつ目は、予防接種の受け手の側の問題です。お母さんたちは、赤ちゃんのリスクを減らそうとして生ワクチンを避けて不活化ワクチンを求めましたが、せっかく予約をとったからといって、赤ちゃんに38度の熱があっても予防接種を受けにくるお母さんもいたといいます。担当者がいろいろ説明すると、「いいから打てよ」「ごちゃごちゃ言ってないで、黙って打てよ」などと言われることもあったといいます。体調がよくないのにワクチンを打ったとしたら、赤ちゃんに とってのリスクが逆に高まってしまうことが、なかなか理解されないのでしょう。
不活化ポリオワクチンが始まり、やがて4種混合が加わり、現在の任意接種も次々に法定接種化しそうな状況の中で、ワクチンや健康一般に対する保護者の持つ知識や情報は、限りなく重要なものになってきます。言われたことに従う、話題になっているから飛びつく、ということでは子どもの健康は守れません。親御さん達には、自分が守るのだという自覚を持って、ワクチンの効果もリスクも勘案した上で、判断できるようになる必要があると思います。これはヘルスリテラ シーといわれるもので、今後、保護者の方がヘルスリテラシーの重要性に気づき、学んでゆくことが課題になると思われます。
ふたつ目は、ワクチン行政の問題です。なぜ10年以上も前から、多くの感染症専門家が生ポリオワクチンから不活化ポリオワクチンへ移行すべきと表明してい ながらも、なかなか変わらなかったのか、ということを明らかにしなくてはなりません。その原因を放置していては、また同じことが起きるでしょう。また、国産の4種混合ワクチンが開発されたとのことですが、症例数が十分であったかなど、審査の経緯に対する疑問の声も上がっています。この点に関しては、機会を改めて検証してみたいと思います。

●地域から変わることへの期待

「行政や国の対応に、このやり方がベストというものはない」と、神奈川県の担当者はおっしゃっていました。また、「大変でしたけど、今となってはいい経験でした」とも。それは、これまで医療は国が音頭をとってすることが多いと思っていたけれど、地域でできる事も多い、ということが分かったからでした。
地域の住民に応えるためには、地域行政は独自に動くべきなのだ、という意識を行政職員が持つことはとても貴重だと思います。この方は、インタビューの最後にこのようにおっしゃっていました。
これ(不活化ポリオワクチン:筆者挿入)は『誰も反対できない話』なんです。みんな、早く不活化にするように思っているんです。それはお母さんたちの心の叫びだからです。この叫びの声に応えたいんです。神奈川は、知事がいたからできたんです。黒岩さんでなければできなかったでしょうね。すごい知事が来たもんで、部下はきついですけどね。
住民と近い場所にいる地域の行政が、住民の気持ちに沿った政策をすべきと声をあげて、自ら動いてゆくことで、国を動かすような大きな力となってゆくことがあるでしょう。これからの地域の動きへの期待は高まり、目が離せません。

謝辞:本稿の執筆に当たっては、神奈川県の職員の方々に貴重なお話をうかがい、資料提供をして頂きました。この場を借りて御礼を申し上げます。また、ナビタスクリニックの谷本哲也医師には、医学的な表記を監修して頂き、感謝いたします。

Vol.615 『ボストン便り』(第42回)「神奈川県不活化ポリオワクチン政策の顛末」 (2012年10月17日)

●不活化ポリオワクチン接種のスタート

2012年9月1日から、ポリオの予防接種は、それまでの生ポリオワクチンから、不活化ポリオワクチンに転換しました。今まで受けてきた、生/不活化ワクチンの数によって、今後受けなくてはならない不活化ワクチンの数は様々になります。さらに11月からは、不活化ポリオワクチンとDPT(ジフテリア、百日咳、破傷風混合ワクチン)を合わせた4種混合が導入されます。また、現在は任意接種のインフルエンザ菌b型(ヒブ)や肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルスな ども定期接種にすべきという意見も強くあり、自費で接種を希望される保護者も少なくありません。
このようにしてワクチン接種のスケジュールはますます複雑になってきますが、確実に予防接種が遂行されるようにと、各地の自治体は保護者に対する説明や広報の活動を行っています。行政職員達の忙しさは容易に想像されますが、ただし、いままでも地方自治体は、生ポリオワクチンに対する危惧からの接種拒否や接種控えがおこり、接種率が低下するという問題に直面し、職員は対応に苦慮していました。
この背景は、いままでの「ボストン便り」で何度も触れたように、ポリオの会や一部の小児科医の働きかけによって、生ポリオワクチンにより100万人に 3~4名程度(公式には1.4人)が実際にポリオに罹患してしまうこと、それを避けるためには不活化ワクチンを接種するという方法がとられることが、広く知られるようになってきたからです。
こうして、安全性の高い不活化ポリオワクチンを子どもに受けさせたいと思う親御さんが増えたのです。一部の医療機関で個人輸入として使用されていた不活化ポリオワクチンは有料で、医療機関によっても異なりますが1回4,000円から6,000円で、3回受けると12,000円から18,000円になります。生ワクチンなら公費で無料なのにもかかわらず、多くの親御さんたちが有料の不活化ワクチンを選んできました。
安全なワクチンを受けたいという当然の事を主張する保護者に対して、これまでほとんどの行政は、「生ワクチンを打ってください」とか、「もう少しで不活化になります」と苦し紛れで対応してきました。しかし、こうした事からやっと解放されると、忙しさの中で職員達はむしろ喜んでいるのではないかとも推察されます。
しかし、このような対応をせずに、不活化を希望する親御さんに対しては、それを提供できる体制を整えてきた自治体があります。神奈川県です。神奈川県では黒岩祐治知事の決断で、2011年末から、不活化ポリオワクチン体制を独自に整えてきました。これは国が不活化ポリオワクチンに切り替えたために2012 年8月31日をもって終了しましたが、ここではその動きを振り返ってみたいと思います。

●神奈川県知事の決断

神奈川県では従来、生ポリオワクチンの接種率は100%に近く、毎年約8万人が接種していました。ところが、2011年10月の時点で、1万7000人が 無接種という事態に陥りました。黒岩氏はこの急激な接種率の低下を、生ポリオワクチンによってポリオに罹ることを恐れた親御さんたちの気持ちだと受けとめ ました。
さらに黒岩氏は、かつて厚生労働省の予防接種部会の構成員を務めたこともあり、世界の感染症状況にも関心が高く、当時、中国の新疆ウイグル地区で野生株由 来のポリオの集団感染が報告されたことにも危機感を持っていました。ポリオは、世界で99%は解消されましたが、あと1%の壁がなかなか破れず、いまだ撲滅されていない感染症なのです。万が一にでもポリオが発生したら大変なことになってしまいます。そこで黒岩氏は、当時国内未承認であった不活化ポリオワクチン接種を、県独自の判断として実施することを決断したのです。
ところが、この黒岩氏の決断に対して、厚生労働大臣である小宮山洋子氏は、2011年10月18日の閣議後の記者会見において、「望ましいと思っていない」と批判しました。「国民の不安をあおって、生ワクチンの接種を控えて免疫を持たない人が増える恐れがある」と。こうして国と県とでワクチン政策に関する対立が起こった形になりました。
確かに、中国で集団感染が報告されるように、ポリオは未だ終わっていない世界の大問題ですから、ワクチン未接種の子どもたちがいたら大変なことが起きる、 という小宮山氏の発言は大いにうなずけるものがあります。しかし、ポリオを発症する危険性のある生ワクチンを接種すべきいうことは、どうしても理解できません。なぜなら、予防接種によってポリオに罹ることのない不活化ワクチンがあるからです。
どうして接種控えをしているのかというと、親は、万にひとつでも、生ワクチンでポリオを発症するようなことがあったら子どもに申し訳ないと思うからです。この不活化ワクチンを望む親御さんたちの気持ちは、黒岩氏には届いていても、小宮山氏には届いていないようでした。

●神奈川県職員の奔走

神奈川県が独自に不活化ポリオワクチンの接種をすると決めても、県職員の足並みは必ずしも揃っていたわけではありませんでした。当時の状況を良く知る方の 話によると、当初、県立病院に入院している重症の子どもだけを対象に接種するということでお茶を濁そうとしていた職員もいたといいます。しかし、実務の担当者は、知事の熱意と「お母さん達からの心の叫び」に応えるために、急ピッチで準備をしました。ここでは、こうした県職員の方々へのヒアリングを基に、神奈川県における不活化ポリオワクチン体制について、ワクチンの確保、医師の確保、そして場所の確保という観点からみてみます。
まず、ワクチンの確保についてです。不活化ポリオワクチンは、当時は国の薬事承認や国家検定をまだ受けていない未承認薬でした。よって医師たちは「薬監証明」を取って、未承認薬の不活化ポリオワクチンを輸入し、子どもたちに接種していました。この「薬監証明」は、医師が個人でとることはできても、県がとって輸入するということは、制度上できないものです。
そこで、県の担当者は、厚生労働省の担当者と交渉した結果、解決策を見出しました。それは、神奈川県で接種に携わる医師の名簿を作成し、その医師がワクチンを使うということで厚生労働省から「薬監証明」を出してもらうという仕組みです。このエピソードから、厚生労働省は、表向きの制度論上は不活化ポリオワクチンに渋い顔をしていたものの、運用上は生ワクチンからの切り替えを容認していたことがうかがえます。
次に、医師の確保についてです。担当者は、神奈川県立こども医療センターと上足柄病院から、接種をしてくれる医師を出してもらい、県立病院機構に非常勤職 員として所属してもらうことにしました。ただし県立子ども医療センターは、ここが最後の砦という感じの重症のお子さんがたくさんいらっしゃるので、なかなか医師を出してはくれませんでした。しかし、比較的高齢の医師達に非常勤で来てもらうということで、やっと最後には合意を取り付けることができました。この県立病院機構の非常勤の医師達が、不活化ポリオワクチンを輸入するということで「薬監証明」をとり、接種できる体制にしました。
最後に場所の確保についてです。予防接種の場所として、県の4か所の保健福祉事務所が使われることになりました。その際は、具体的な手順の調整が大変だったといいます。どんな順路にするか、エレベーターや階段は十分に行き来できるスペースがあるか、きょうだいを連れてくる人もいるだろうから、その子たちが待っている場所はどうするかなど。あらゆる可能性を考えて、接種場所の準備をしたということでした。
このようにして整備されてきた不活化ポリオワクチン接種体制ですが、接種価格についても議論になりました。その結果、安易に無料化しない、ということで1 回6,000円になりました。それは、神奈川県内で独自に不活化ポリオワクチンの接種を行っている医師達に配慮するためです。
医師達は補償などのことも含めて、自分でリスクを考えつつ、赤ちゃんのために不活化ワクチンを個人輸入してきました。そこに県が無料でポリオワクチンを接種する事にしたら、医師達は受診してくれる子どもたちを失うことになります。不活化ワクチンを有料で提供するのは、「県も独自にドロをかぶってやる」という県の姿勢を示すためにも必要だったのです。

●不活化ポリオワクチンの開始

不活化ポリオワクチンの予約は2011年12月15日から開始され、2012年3月31日で終了しました。この間に申し込みをした予防接種希望者は、 5,647人でした。申し込みの取り消しも3,033人いましたので、実際に接種をした数は2,614人でした。この2,614人の接種希望者が、不活化ワクチンを1回ないしは2回接種したので、合計の接種実施回数は4,036回となりました。
この4,036回の接種の裏には、さまざまなドラマがありました。不活化ポリオワクチンの接種は、2012年1月から始まりましたが、インフルエンザが大 流行したので、1月と2月は1日に25人くらいしか接種できませんでした。その結果、4月の中旬の時点では、848人の接種しか終わっていませんでした。 そこで4月中旬以降は、7か所に接種場所を増やして、1日60人くらいのペースで対応してきました。
また、初めてのことなので接種前の問診は時間をかけてやったといいます。さらに接種した後も会場で30分は休んでもらうようにしました。もちろん小さな子が30分飽きずに待っていられるような遊び場も会場に設置しました。
4月のある日、平塚市の不活化ポリオワクチンの接種会場を訪ねました。ゆったりとしたスペースで、保護者の方が安心した様子でワクチンを赤ちゃんに受けさせていました。半数以上の方がカップルで来ていて、子どもの健康に父親も母親も一緒に取り組んでいこうとしている様子がうかがえました。

●独自体制の不活化ポリオワクチンを終えて

神奈川県の不活化ポリオワクチン提供体制の整備は、市町村や医師達にもさまざまな影響を与えました。
市町村は、国の意向に従って生ポリオワクチンを推進することになっていますから、神奈川県の独自の動きに対して戸惑いを隠せないことは明らかです。そこで神奈川県では、市町村に「迷惑がかからないように」気を付けてきたそうです。市町村の推奨する生ワクチンに不安のある方だけを対象に、その方々の受け皿として生ポリオワクチンを提供するという姿勢を貫き、市町村の保健行政を「邪魔しない」ことを示しました。
また、神奈川県内では、県が不活化を始めた事でやりやすくなったと考えて、民間の病院や診療所でも不活化ポリオワクチンを輸入して提供するところが増えてきました。この影響は、県の不活化ワクチンの体制に影響を及ぼしました。わざわざ遠い県の施設に行くまでもなく、近くのクリニックで受けられるようになったからと、予約のキャンセルが相次いだのです。すべてがこの理由という訳ではありませんが、最終的には、3,033人が申し込みの取り消しをしました。価格がほぼ同じならば、県の施設でも近くのクリニックでも同じという事で、保護者は利便性を選んだのでしょう。県の当初のもくろみ通り、民間の医療機関への配慮が生きてきた訳です。
一連の不活化ワクチン接種において、ワクチンの安全性が問題になったという報告や重篤な副反応の報告は1例もありませんでした。

●ワクチン問題は終わらない

今回、全国的に公費での不活化ワクチンが導入されることになりましたが、ワクチン問題はこれで終わったわけではありません。二つの点から指摘したいと思います。
ひとつ目は、予防接種の受け手の側の問題です。お母さんたちは、赤ちゃんのリスクを減らそうとして生ワクチンを避けて不活化ワクチンを求めましたが、せっかく予約をとったからといって、赤ちゃんに38度の熱があっても予防接種を受けにくるお母さんもいたといいます。担当者がいろいろ説明すると、「いいから 打てよ」「ごちゃごちゃ言ってないで、黙って打てよ」などと言われることもあったといいます。体調がよくないのにワクチンを打ったとしたら、赤ちゃんに とってのリスクが逆に高まってしまうことが、なかなか理解されないのでしょう。
不活化ポリオワクチンが始まり、やがて4種混合が加わり、現在の任意接種も次々に法定接種化しそうな状況の中で、ワクチンや健康一般に対する保護者の持つ 知識や情報は、限りなく重要なものになってきます。言われたことに従う、話題になっているから飛びつく、ということでは子どもの健康は守れません。親御さん達には、自分が守るのだという自覚を持って、ワクチンの効果もリスクも勘案した上で、判断できるようになる必要があると思います。これはヘルスリテラ シーといわれるもので、今後、保護者の方がヘルスリテラシーの重要性に気づき、学んでゆくことが課題になると思われます。
ふたつ目は、ワクチン行政の問題です。なぜ10年以上も前から、多くの感染症専門家が生ポリオワクチンから不活化ポリオワクチンへ移行すべきと表明してい ながらも、なかなか変わらなかったのか、ということを明らかにしなくてはなりません。その原因を放置していては、また同じことが起きるでしょう。また、国 産の4種混合ワクチンが開発されたとのことですが、症例数が十分であったかなど、審査の経緯に対する疑問の声も上がっています。この点に関しては、機会を 改めて検証してみたいと思います。

●地域から変わることへの期待

「行政や国の対応に、このやり方がベストというものはない」と、神奈川県の担当者はおっしゃっていました。また、「大変でしたけど、今となってはいい経験でした」とも。それは、これまで医療は国が音頭をとってすることが多いと思っていたけれど、地域でできる事も多い、ということが分かったからでした。
地域の住民に応えるためには、地域行政は独自に動くべきなのだ、という意識を行政職員が持つことはとても貴重だと思います。この方は、インタビューの最後にこのようにおっしゃっていました。
「これ(不活化ポリオワクチン:筆者挿入)は『誰も反対できない話』なんです。みんな、早く不活化にするように思っているんです。それはお母さんたちの心の叫びだからです。この叫びの声に応えたいんです。神奈川は、知事がいたからできたんです。黒岩さんでなければできなかったでしょうね。すごい知事が来た もんで、部下はきついですけどね。」
住民と近い場所にいる地域の行政が、住民の気持ちに沿った政策をすべきと声をあげて、自ら動いてゆくことで、国を動かすような大きな力となってゆくことがあるでしょう。これからの地域の動きへの期待は高まり、目が離せません。

謝辞:本稿の執筆に当たっては、神奈川県の職員の方々に貴重なお話をうかがい、資料提供をして頂きました。この場を借りて御礼を申し上げます。また、ナビタスクリニックの谷本哲也医師には、医学的な表記を監修して頂き、感謝いたします。

■ 乳児の下痢 ワクチンで予防

国立感染症研究所情報センター長・岡部信彦(2012.1.31:産経新聞)
 赤と白いウンチは要注意! かつての小児科医はこんな言葉で乳幼児を持つ保護者に注意を呼びかけていた。赤いウンチは血液が混じっている便で、赤痢や腸管出血性大腸菌感染症は激しい血便が出る。時には外科手術が必要になる腸重積症も血便が特徴で、これらは今でも要注意だ。白いウンチの新生児は、胆道閉鎖症という難病のこともあるが、多くは冬シーズンにみられる嘔吐(おうと)と熱を伴う乳幼児の「白色便性下痢症」。激しい下痢のため、脱水症となって点滴などによる水分補給が必要になることが少なくなく、時には生命の危険もはらみ、当直小児科医は眠れぬ夜を過ごすことが多かった。
 白色便性下痢症の原因が「ロタウイルス」と分かったのは30年ほど前。ロタウイルスは世界中いたるところで見られ、乳児の死亡原因のトップクラス。2004年には世界で約52万人の小児がロタウイルス感染症によって死亡したと推計されている。その最大の原因は体内の水分不足「脱水症」。不思議なことにロタウイルスによる白い下痢便は、海外ではほとんど見られない。わが国では、「水分をこまめにとって脱水症にならないようにする」という対処法が広く理解されるようになって重症者が減少し、便の色も白くなくなってしまった。
 今の日本ではロタウイルスによる下痢はそれほど恐れる病気ではなくなったが、まれに急性脳症などを起こすこともあり、やはり注意は必要だ。途上国では、きれいな水が手に入りにくい▽医療機関へのアクセスが悪い▽水分を与える重要性が理解されていない-などから、ロタウイルスによる下痢は依然、子供の命にかかわる病気で、その対策は、重要課題となっている。
 そこに登場してきたのがロタウイルスワクチンだ。米国で導入した当初、ワクチン接種後に腸重積症が合併しやすいとの疑いから、一時使用中止となっていたが、安全性の高い新たなロタウイルスワクチンが2種類登場した。
 WHO(世界保健機関)はロタウイルスワクチンを子供の最重要ワクチンの一つに位置づけている。フィリピンでは来年から、国家のワクチンプログラムとして赤ちゃん全員にロタウイルスワクチンを接種させるという方針を最近表明した。ウイルスに感染する前に早く免疫をつくり、下痢を防ぐか軽くすませることによって、多くの子供を救い、入院患者を少なくすることができる。医療経済的にも助かることになる。
 日本ではどうか。ワクチンで予防できる病気は予防した方がいいのはもちろんであり、ロタウイルス感染症も国内でワクチンで防げるようになったのは良いニュースだ。ことに乳幼児を抱える共働き夫婦などにとってはメリットは高いといえよう。
 だが、国の予算が限られている中、より重要度の高いワクチンをより多くの人が利用しやすくすべきだという考えも必要になる。たとえば、水ぼうそう、おたふくかぜなどで重症化したり、合併症に悩む子供は少なからずおり、大人の重症者もいる。途上国におけるロタワクチンの強いニーズと、わが国のそれとはその質にかなりの違いがあるのだ。(おかべ のぶひこ)

■ ワクチン「重症化 9割抑制」 ロタウイルス、乳幼児に胃腸炎

 冬場に小さな子どもを中心に、激しい下痢や嘔吐(おうと)を引き起こす「ロタウイルス」による胃腸炎。重症化を防ぐワクチン接種が11月から始まった。海外120カ国・地域以上で使われているタイプで、ようやく国内でも認められたと歓迎する専門家も多い。ただ接種は任意で費用が高いほか、接種できる期間も限られている。注意点をしっかり把握することが重要だ。
 冬の感染症といえば、インフルエンザやノロウイルスがすぐに思い浮かぶが、ロタウイルスも流行する。主な時期は1~4月。生後6カ月~2歳の乳幼児に多く見られ、日本では5歳までにほぼ100%の子どもが感染するといわれている。大人も感染するが症状が表れないことも多いという。
 毎年約80万人の乳幼児が受診し、このうち約10%が入院している。死亡例もある。世界では、乳幼児の下痢の30~50%程度がロタウイルスが原因と推定されており、この比率はノロウイルスを上回っている。
 主な症状は激しい下痢や嘔吐と発熱。下痢はコメのとぎ汁のような白っぽい便が特徴で、1週間ほど続くケースが多い。ただ和田小児科医院(東京・足立)の和田紀之院長は「必ずしも白い下痢便が出るとは限らない」と話す。

感染力が強く

 治療ではロタウイルス自体に効く薬は今のところない。脱水症状になるのを防ぐため、こまめに水分を補給する。下痢や嘔吐を止める薬は、かえって回復の妨げになるので服用しない。
 感染を予防するのも難しい。ロタウイルスは吐いたものやふん便に直接・間接的に触れることで経口感染する。おもちゃにウイルスが付着していることもある。感染力は強く10個以下のウイルスが口に入るだけで感染する乾燥した状態ではウイルスが10日間ほど生き残ることもある。
 厄介なのは、せっけんや消毒用アルコールにも強いこと。塩素系漂白剤や哺乳瓶用の消毒液などでしっかり消毒し死滅させる必要がある。このため、「乳幼児がロタウイルスの感染を予防するのは事実上不可能」(和田院長)との声が上がっている。
 そこで、ワクチン接種による予防が重要になってくる。世界保健機関(WHO)は世界各国に対し、ワクチン接種によるロタウイルスの予防を推奨。これを受け、既に120カ国・地域以上でワクチン接種を実施している。米国ではロタウイルスによる胃腸炎の流行をワクチンでほぼ抑え込むことに成功している。
 国内でも今冬から接種できるようになったのが「ロタリックス」というワクチン。生きたウイルスの病原性を弱めて作った。飲むタイプで、生後6週以降に1回目、同24週までに2回目を接種する。接種間隔を4週以上空ける必要がある。
 製薬会社のグラクソ・スミスクラインによると、国内で実施した臨床試験(治験)では、ワクチンを期間内に2回接種するとロタウイルス胃腸炎の発症を約8割、重症化を9割以上抑える効果があった。接種後1カ月以内にみられる副作用には、刺激に反応して不機嫌になりやすい、下痢、せき・鼻水などが報告されている。
 注意点もある。まずは費用負担。現在は任意接種のため2回で3万円近くかかる。費用の一部補助を検討している自治体もあるので、問い合わせてみるのもよいだろう。
 接種期間も頭を悩ませる要因だ。生後6~24週間は3種混合(ジフテリア・百日ぜき、破傷風)やBCGなどのワクチンを定期接種する「ワクチンラッシュ」期にあたる。小児用肺炎球菌やインフルエンザ菌b型(ヒブ)など任意のワクチン接種もこの時期だ。これにロタウイルスのワクチンを追加すると、スケジュールをどうすべきか迷う保護者も少なくないだろう。

各種同時を推奨

 小児科医らでつくる「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろう。」の会は、各種ワクチンを忘れずに接種するよう同時接種を推奨している。ロタウイルスとヒブ、小児用肺炎球菌、3種混合ワクチンなどが同時に接種できるという。「かかりつけの医者と相談し、最善のタイミングで接種を受けてほしい」と日本赤十字社医療センター(東京・渋谷)顧問の薗部友良医師は話す。
 ただ、今年3月には肺炎球菌とヒブなどの同時接種後に、乳幼児が死亡した例が報告された。厚生労働省が調査した結果、接種と死亡との間に明確な因果関係はないとされたが、不安をおぼえた保護者らが同時接種を控える動きも出ているという。
 薗部医師は「同時接種を積極的に進めている米国や欧州のデータからもワクチンは安全だ」と強調する。同時接種が嫌だからといって、ワクチンを避けるのはかえってリスクを高めることになるという。小児科医らの団体などは、任意接種では保護者の所得によって子どもの健康に差が出るとして定期接種化を国に要望している。厚労省は今後、検討する方針だ。

■ 感染症 B型肝炎(2011年11月:朝日新聞の特集)

 日本では無視され続けてきましたが、B型肝炎はワクチンで予防可能な感染症なので、この項目に入れました。

1 9歳の時「怖いと思った」(2011年11月16日)

 今回も大丈夫だった――。九州地方に住む女性(33)は、福岡県久留米市の聖マリア病院で受けた肝機能検査の結果をみて、ほっとした。
 女性の体には、B型肝炎ウイルスが潜んでいる。いまも3カ月に1度、検査のため、この病院に通う。感染を知ったのは1987年。9歳のときだ。
 38歳だった母に、市役所から電話がかかってきた。「献血(時の検査)の結果、肝炎の疑いがあるので、精密検査を受けてください」
 県内では国立小倉病院(現小倉医療センター)が肝炎の治療実績があるとわかり、慌てて駆け込んだ。B型肝炎ウイルスによる慢性肝炎を発症しており、即入院が必要と診断された。
 確かに、母は「だるい」と、よくつぶやいていた。手をついて階段を上ることもあった。全身のだるさは、肝炎の典型的な症状だ。進行すれば、肝硬変や肝がんになる可能性もある。
 家族もすぐに病院で検査を受けた。母のウイルスは、出産の際に、女性と2歳上の姉にも感染していた。
 B型肝炎は、主に血液を介して感染する。母の主治医になった天ケ瀬洋正さんは、姉妹を呼んで言い聞かせた。「自分の血液で他の人に病気をうつさないように、管理に気をつけて」。詳しい病気の仕組みが分かったわけではないが、深刻さは伝わった。「私の血は怖い、凶器みたいなものなんだ」と思った。
 「なんであんただけ。どこで(ウイルスを)もらったんかね?」。入院することを実家に伝えに行くと、伯母が母に尋ねた。祖母も、2人の伯母からもウイルスは見つからなかった。母にも心当たりはない。ただ申し訳なさそうな顔をしていた。
 母の入院で、父と小学生の娘2人の生活が始まった。慣れないうちは週末も早朝に起き、登校や出勤に間に合うようにご飯とみそ汁を支度する「リハーサル」をした。その後、3人で病院へ母のお見舞いに行った。
 家族が顔を出すと、どんなにだるそうに寝ていても、母はうれしそうに起き上がった。帰りは必ず、エレベーターまで見送りに来てくれた。自分が生涯にわたり、同じウイルスに苦しめられるなんて、当時は考えもしなかった。

2 ふすま越しに母の泣き声(2011年11月18日)

 九州地方に住む女性(33)は9歳のとき、B型肝炎ウイルスへの感染を知った。母から出産で、女性と姉にうつっていた。母は幼いころの集団予防接種で感染したと考えられるが、1987年の献血の検査で分かるまで、それを知らずにいた。
 慢性肝炎と診断された母は、小倉医療センターに3カ月ほど入院し、炎症を抑えるインターフェロン治療を受けた。女性と姉は、肝炎は発症していないが、ウイルスが体内に潜み続けている状態だった。退院した母と一緒に、女性と姉も半年おきの血液検査が必要になった。
 小学校6年生のときだった。夏の暑い日、女性は母と姉と自宅を出て、検査に向かった。長い坂道を2人から少し遅れてトボトボと下りる。「ねえ、なんで私たちだけこんな検査を?」。母の背に投げつけた。
 母は振り返ったが、黙っていた。言葉が見つからないような悲しい顔だった。「しまった」。女性は後悔したが、引っ込みがつかなかった。「そんなこと言っても仕方ない。お母さん、気にせんと行こう」。姉の言葉に救われた。
 その夜。姉と並んで寝ていた女性が目を覚ますと、ふすまの向こうで母の泣き声がした。娘たちに聞かせまいと、声を押し殺していた。「私が起きていることを、気づかせちゃいけない」。音を立てないように、頭まで布団をかぶった。ドキドキと自分の鼓動が耳に響いた。
 「お母さんが困るから、病気の話はしない」。中学、高校と進んでも、自分の病気のことは友だちに話さなかった。カバンのポケットには必ずばんそうこうを忍ばせた。けがをするとすぐ、「ちょっと保健室に行ってくる」とその場を離れ、自分で処置した。ウイルスに感染した血液を友達に触れさせないように、という配慮だった。
 「なぜ私は、この病気になったんだろう」。頭のどこかにいつも引っかかっている一番の悩みを、親友にも相談できない。人間関係はいつもベール1枚を隔てたような感じだった。
 「心よ耐えろ、苦しむな かくも苦しみ重けれど」。図書館で見つけた詩集の一節に勇気づけられた。苦しいのは私だけじゃない。心に残った言葉を、ノートに書き写すようになった。

3 彼が受け止めてくれた(2011年11月19日)

 9歳のとき、B型肝炎ウイルスへの感染がわかった九州地方に住む女性(33)は、その悩みを友だちにも打ち明けられないまま、10代を過ごした。
 慢性肝炎の治療を終えた母は、抗ウイルス薬を飲みながら、定期的に病院に通っていた。主治医の天ケ瀬洋正さんが小倉医療センターから同じ北九州市内の三萩野(みはぎの)病院に移ると、母も転院した。姉と女性が半年おきに受ける検査結果も、毎回、「異常なし」が続いた。
 「うまくウイルスと付き合っていけそうだね」。家族でそんな話をしていた2001年、超音波検査で、母の肝がんが見つかった。52歳だった。
 がんは肝臓へ養分を運ぶ門脈という血管のそばにあった。「手術で取り除くのは厳しい場所にある。5年後は分かりません」と医師は説明した。がん細胞に養分を運ぶ血管を塞ぐ治療や、がんに直接エタノールを注射し壊死(えし)させる治療を受けることにした。自宅から通いやすい大規模病院に移り、がんとの本格的な闘いが始まった。
 母は、きちんと検査を受けてきたし、薬で免疫機能が弱っているからと、好きな刺し身も控えていた。それなのに……。少し前に祖母が亡くなったときの寂しさを思い出した。「家族が増えたらいいな」。結婚を、具体的に考えるようになった。
 母のがん闘病が始まった3年後、友人の結婚パーティーで彼(33)と知り合った。おっとりした、心の温かそうな人。自然と付き合いが始まり、ドライブに出かけるようになった。
 1カ月ほどして、デート帰りに自宅まで送ってくれた車の中で、女性は病気を打ち明けた。感染の危険性も伝えた。「よく考えて、交際を続けるか、決めてね」。緊張して彼の顔を見られないまま、車を降りた。
 「そうなんだ」。彼は自然に病気のことを受け止めた。インターネットで調べたり、免疫力がテーマの本を買ったりした。成人で感染するB型肝炎は、一過性で軽くすむ場合もあるという情報も、参考にした。
 数日後、女性に電話して伝えた。「自分なりに考えた。大丈夫だから」。次のデートで、免疫力の本を女性に贈った。「優しい人だな」。彼の心遣いを感じ、女性の心は温かくなった。

4 結婚の喜びもつかの間(2011年11月20日)

 九州地方に住む女性(33)は、大学を卒業してすぐ付き合い始めた彼(33)に、B型肝炎ウイルスへの感染を打ち明けた。彼は「大丈夫」と言ってくれた。ウイルスはあらかじめワクチンを打てば、ほぼ感染を防ぐことができる。しかし、そのときは医師からの説明もなく、ワクチンを打たなかった
 付き合って半年余りたった2004年秋、彼は急に体のだるさを感じた。食欲が落ち、黄色い尿が出た。「ネットで調べた通りの症状だ」。自宅近くの病院に行くと、急性のB型肝炎と診断され、入院が決まった。
 すぐに女性に電話した。「大丈夫だから。お見舞いもいいよ」。受話器ごしに彼女の動揺が伝わってくる。ようやく、これは大ごとなんだとわかった。
 「申し訳なさすぎて、合わせる顔がない」。女性は息苦しい気持ちのまま、受話器を置いた。会いに行きたかったが、自分で家族に説明したいという彼の気持ちを尊重した。
 彼は約1カ月後に退院した。何事もなかったかのように振る舞う彼の心の広さに、大きな安心感を覚えた。「彼に苦しみを一つ背負わせてしまった。私も彼の重荷を引き受けたい」
 2人が結婚の相談を始めた頃、女性の母がふと、見晴らしのいい公園を見に行きたいと言った。「いま付き合っている人が近くに住んでいるよ。お母さん、会ってみる?」
 彼が待ち合わせの公園に着くと母は大きく手を振っていた。「可愛らしいお母さんだな」。彼と母はすぐに打ち解けた。
 母は肝がんが見つかって以来5年間、入退院を繰り返していた。「早く孫の顔を見せてあげたい」。喜ぶことが一つでも増えれば母の病状もよくなると期待した。06年夏に結婚。披露宴ではシャキッと留め袖を着た母が新婦の手を取って入場した。
 翌年の秋、最後になるかもしれないと覚悟しつつ、家族全員で温泉旅行に出かけた。朝5時ごろ、母の容体が急変した。「先生を呼んでね」。そう言った後、母の呼吸が止まった。姉と2人で、必死に人工呼吸と心臓マッサージを繰り返した。「どうしよう、どうしよう。いかないで」。旅館から病院へと救急車で向かったが、母の意識は戻らなかった。

5 乗り越える姿 娘に示せた(2011年11月21日)

 B型肝炎から進行した肝臓がんで母親を失った九州地方の女性(33)は2008年、妊娠に気づいた。半年おきに受けていた検査では、女性の肝機能に問題はなかった。だが赤ちゃんへの母子感染を確実に防ぐため、近くの産婦人科医院から大きい病院へ行くように薦められた。
 紹介状を手に福岡県久留米市の聖マリア病院に行くと、産婦人科医の前田哲雄さん(48)が担当になった。女性の生真面目さを感じ取った前田さんは、「病気のことを必要以上に深刻に考えずできるだけ普通に出産を迎えてもらおう」と決めた。
 B型肝炎の母子感染は、生まれてすぐの赤ちゃんにウイルス抗体を含む免疫グロブリンを注射し、その後計3回、ワクチン注射を打てば、95%以上の確率で予防できる。
 出産をできるだけ素晴らしい体験として記憶してほしいと、前田さんは思った。「羊水が少ないと思うかもしれないけど、ちゃんと元気に育っているからね」。不安になりそうなことを先回りして説明してくれる前田さんに、女性は信頼を覚えた。
 11月、自然分娩(ぶんべん)で長女を出産した。助産師が胸元に抱かせてくれたが、女性は喜びもそこそこに「先生、早く注射を」と声をあげていた。「慌てなくて大丈夫」。前田さんは長女を新生児室へ連れて行き、お尻に免疫グロブリンを半量ずつ、2本に分けて注射した。
 長女は生後2、3、5カ月とワクチンを受け、1歳になった秋、近くの病院で感染を防げたことを確認した。「お母さん、もう解放されていいんですよ」という小児科医師の言葉に、体中の力が抜けたような気がした。翌年には2人目の女の子を出産。この秋の1歳児健診で、次女も抗体を確認できた。
 自分の代で、母子感染の鎖を断ち切れた。「お母さん、やっと止められたよ」。娘に病気をうつしてしまった母のつらさを思いやった。
 B型肝炎に感染してよかったとは絶対に思えない。母のように、いつ肝がんに襲われるかもしれない。ただ、この苦しみに絶望するだけでなく、乗り越えていく姿を、娘たちに見せておきたいと思う。「現実を恐れずに向き合う強さを、娘たちに授けたい」。

<参考ホームページ>

 あなたの市町村はどうなっているのかチェック!

 麻疹(はしか)の合併症であるSSPEの親の会によるHPです。

 切ないです。これを読めば「予防接種はお金がかかるから罹った方がマシ」という考えは無くなるはずです。

KNOW-VPD!VPDを知って、子どもを守ろう