予防接種・ワクチンについて

(2009年4月 初掲載・・・2011年11月 最終更新)

 ワクチンは治療法がなく、ときに重い合併症に苦しめられる病気に立ち向かってきた人類の知恵の結晶です。「やれといわれたから受けた」ではなく、実際に病気に罹ったときと予防接種を受けたときのメリット・デメリットを比較して十分理解し、自分の子どもの健康を守るという視点で接種すべきかどうかを考えていただきたいと思います。

■ 予防接種を受けたくない人へ

 予防接種は面倒だし、接種しても100%効くわけでもないし、任意接種はお金が高いし・・・できればやりたくない! という方へ。

■ 予防接種を受けるより自然にかかる方が良いのでは?

「自然にかかること」=「最強かつ最も危険な予防接種を受けること」

 自然にかかると確かに一生免疫はもちますが、脳炎・脳症などの合併症で命を落としたり、後遺症で悩むことがあります。
 あなたのお子さんが元気に治るという保障は何もありません。
 現在のワクチンの副反応はゼロではありませんが、実際にかかった時の合併症と比較すると頻度は低く抑えられています(多かったら国が認可しません!)。

■ もし予防接種がなかったら・・・

 日本では予防接種の対象となっている伝染病の怖さを実感できませんが、これは涙ぐましい先人たちの努力の恩恵によることを忘れてはなりません。世界を見回すと発展途上国では伝染病で命を落とす子どもがまだまだ多いという現実があります。
 以下にいくつか例を挙げます。

【ポリオ】
 日本でも1960年には年間5000人以上の患者が発生しました。後述するようにその数%は重症化して命を落としたり後遺症として麻痺が残ったりしたのです。予防接種の普及により1980年に発生した患者さんが最後となりました。

【百日咳】
 1950年以前の日本では年間10万人の患者が発生し、そのうち約10%が死亡していました(ほとんど乳児と思われます)。医師の私でも想像しがたい状況ですね。
 予防接種の普及により患者数は激減していますが完璧に押さえられているわけではなく、近年成人の百日咳が社会問題となり追加接種方法の再検討が必要ではないかと議論されています。
 全世界では年間2000万〜4000万人が発祥し、20万〜40万人が死亡しています。

【日本脳炎】
 日本では1966年に2000人以上患者が発生していました。死亡率は約30%!という恐ろしい病気です。その後予防接種の普及により1992年以降年間患者数は10人以下に抑えられています。
 「日本脳炎」は日本だけに存在する病気ではありません。現在もアジア中心に発生しています(年間3〜4万人)。

■ うちの子は元気で病気知らずだから予防接種を受けなくても良いのでは?

 ふだん元気でも、その病気にかからない保障はありません。
 そして肺炎や脳炎などの合併症を起こさないという保障ももちろんありません。
 自然にかかるとまわりの子(まれにご両親)にうつしてしまいます。「うちの子」が治っても「うつされた子」に重い合併症が出ない保障はありません。

■ 予防接種はその病気にかかりたくないひとだけが受ければ良いのでは?

 それでは病気の流行は防げません。
 また、予防接種を受けたくても病気や年齢などの理由で受けられない人たちもいます。そのような人たちを守るためにも多くの人が予防接種を受ける必要があります。

■ 予防接種を受けても100%効くわけではないんでしょう?

 予防接種の効果は確かに100%ではありません。発症阻止率は80%程度です(※1)。残りの20%はかかってしまいますが症状は軽く済みます。
 また、ワクチンを接種後5〜10年経過すると免疫が弱くなりその病気にかかってしまうこともあり得ます(これも軽く済みます)。このため、2006年から麻疹・風疹ワクチンは2回接種へ変わりました。

予防接種の原点は「危険な病気から子どもを守る」という発想です。ワクチンは特効薬のない病気に対する人類の智恵の結晶です。我が子に予防接種を受けさせることは「親の責任」であり、また自分が感染源となって他人にうつすことのないよう「社会人としての責任」も問われているのです(※2)。

※1 インフルエンザワクチンのみ有効率が低い傾向があります。
※2 実際に米国では予防接種をスケジュール通り済ませていないと小学校へ入学できません。また、規定の予防接種を済ませるまで登校できないそうです。

院長のつぶやき)先日、アメリカで生活している方が受診されました。話を聞くと、小学校入学前の予防接種を受けに行ったところ7本の注射をブスブスブス・・・と打たれてビックリしたと。
 アメリカでは医療費が想像以上に高く、また時間も待たされるので、ワクチンで予防可能な病気は予防接種するもの、と自然に考えるようになるそうです。
 日本のフリーアクセス・子どもの医療費無料もメリットばかりではないのかもしれません。

 いかがでしょうか。ここまで読んできてどのように感じましたか?
 予防接種は強制されるものではありません。でも一人一人が予防可能な感染症に対してどういうスタンスをとるべきか、日本人はより理解を深めて考えるべきだと思います。
しかし日本人には

子どもが自然感染で死亡したり重篤な後遺症が残っても仕方ないと考えるが、予防接種によりそのような状態になるのは許せない。

 という考え方が根底にあるような気もします。
 ここまで来ると「国民性」ということになりましょうか。
 ワクチンの意義についてもっと知りたい方は、下記ホームページをご覧ください。

■ ワクチンを接種すると病気に罹らない?

 残念ながら、ワクチンの効果は100%ではありません.

 接種したにもかかわらず十分な抗体ができなかった場合を一次ワクチン効果不全primary vaccine failure, PVF)と呼びます。
 例えば、麻疹ワクチンによる抗体陽性率は約95%で、残りの数%は抗体ができません。インフルエンザワクチンでは約50〜70%(乳幼児では20〜30%)と他のワクチンよりも効果が低く問題視されています。

 残念ながら、一度できた免疫も一生持続しません。

 この答えは、生ワクチンと不活化ワクチンでちょっと異なります。

【生ワクチン】

 近年までは、生ワクチンで一度獲得した免疫は一生持つと考えられてきました。ところが、そうは問屋が卸さないことが判明しました。記憶されている方も多いと思われますが、2006〜7年の大学生を中心とした麻疹流行です。罹った人の内訳はワクチン未接種の人が多かったのですが、一部ワクチン接種済みの人も含まれていました。
 一度できた抗体が一定期間が過ぎると無くなってしまうことを二次ワクチン効果不全secondary vaccine failure, SVF)と呼びます。
 この”一定期間”はワクチンが標的とする病気の流行状況により左右されます。
 例えば、麻疹ワクチン接種により抗体ができても、流行が全くない状態では体が「必要ないのかなあ」と勘違いして抗体産生をさぼってしまうのです。時々小流行があると「あ、やっぱり必要なんだ」とせっせと作り始めます(これを「ブースター効果」と呼びます)。
 今までは自然感染によるブースター効果がありましたが、流行が制圧されると追加接種によるブースター効果が必要になるのですね。

※ 日本では2006年6月から、それまで1回だった麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)が、SVF対策として2回接種へ変更されました。

【不活化ワクチン】

 こちらは免疫が長持ちしないことが初めからわかっています。そのために約5年間隔で追加接種が必要とされています。
 ADEM騒ぎの後、どさくさにまぎれて日本脳炎ワクチンの3期が無くなりましたが、私はその措置を疑問に思っています。

※ 今から20年ほど前に勤務した病院では、農家の方対象に破傷風ワクチンの出張予防接種をしていました。5年間隔でずっと一生続けるのです。しかし、野良仕事が終わって一風呂浴びて一杯引っかけてから会場に集まるので、アルコールが入った体にワクチンを打ってよいのかどうか悩みました・・・。

(「小児の感染症診療の落とし穴」南江堂、2011年発行、より)

■ 罹った病気と同じワクチンを打って問題ない?

 事情によりこのような状況が発生することがありますが、基本的に「問題ありません」。
 免疫が強くなるだけで、副反応の頻度や程度には影響しません。
 自然感染しても十分免疫ができない病気(ヒブ、肺炎球菌、破傷風菌)では、むしろ積極的にワクチンを接種する必要があります。
 注意すべきワクチンはBCG。結核に罹った人に接種すると普通の局所反応より早く変化が現れ(コッホ減少)、これがきっかけになり結核感染が判明することがあります。

(「小児の感染症診療の落とし穴」南江堂、2011年発行、より)

■ 定期接種と任意接種は何が違うの?

 なんとなく「定期」は重要で、「任意」は重要でないと思いがちですが、そのようなことはなく、社会へのインパクト度と予算の都合で政府が仕分けしているだけです。
 平たく言うと「無料」と「有料」の違いですが、世界を見回すとこのような区別をしている国はまれで、有用なワクチンはすべて公費負担で行うのが理想です。

 上記の他に、ワクチンの副反応による健康被害が発生し認定された場合に補償の金額が異なります。
 また、定期接種に指定されているワクチンでも、対象期間を過ぎてしまうと任意接種扱いとなりますので注意が必要です。

■ 風邪を引いた後はどれくらい空ければ接種できますか?

 いわゆる「風邪」は医学的にいうと「呼吸器・消化器の一過性の軽症ウイルス感染症」と定義されます。経過が特徴的で名前がつく下記の感染症は罹患後から予防接種まで開ける間隔が決められています。

治癒後  4週間・・・麻疹
治癒後2〜4週間・・・風疹・水痘・おたふくかぜ
治癒後1〜2週間・・・突発性発疹・手足口病・リンゴ病

※ 期間の設定は「発症後」ではなく「治癒後」であることにご注意ください。

Q. それでは、ふつうの風邪の後はどれくらい空ける必要がありますか?
A. 予防接種ガイドラインには「重篤な急性疾患にかかっていることが明らかなものは接種不適当
」という文章があります。また、補足説明には「急性疾患であっても軽症と判断できる場合には接種を行うことができる」とあります。
 これをどう解釈するかにより異なる考え方が発生します。
 私は「重篤でなければ可能」と解釈して、鼻風邪や風邪の治り際で診察所見に問題がなければ接種する方針です。高熱が出た場合は解熱後1週間空けて体力の回復を待ちます。
 しかし、「急性疾患は避ける」という文言を重視すると「風邪薬を飲んでいる間はやらない」という考えも成り立ちます。
 どちらが正しい・間違いというわけではありません。その医師のスタンスということでご理解ください。

 さて、海外ではどうなっているでしょうか。いくつかご紹介します;

アメリカ】有熱・無熱にかかわらず下痢症や上気道炎罹患、急性疾患の回復期は禁忌ではない。
カナダ】上気道炎、かぜ、中耳炎、下痢症などはワクチンの免疫反応に干渉せず禁忌とはいえない。感染症回復期や39.5℃以上の熱を伴う急性期であってもワクチン応答への影響もワクチン後の副反応のリスク増大もない、と断言している。
イギリス・オーストラリア・ニュージーランド】38.0℃または38.5℃を超える発熱時は解熱するまで延期する。

 というわけで、日本より積極的な国が多いですね。

■ 生ワクチンと不活化ワクチンの違い(ちょっと詳しく)

 ワクチンは感染症を予防するもので、治療薬ではありません(念のため)。
 ワクチンには、毒性を弱めた病原体や、病原体の一部などを接種することで、ヒトの体に免疫を作らせ、感染症を未然に防いだり、感染後の症状を和らげたりする効果があります。

■ 液性免疫と細胞性免疫

 生ワクチン接種により強力な獲得免疫が得られるのは、液性免疫と細胞性免疫の二種類の免疫機構が働くためです。
 病原体が体内に侵入すると、Bリンパ球(B細胞)が病原体をターゲットとした抗体を血清中に産生し、この抗体が病原体にくっつくことにより活動性を失います。これを「液性免疫」と呼びます。
 病原体を記憶したBリンパ球の一部は「免疫記憶細胞」となり、病原体が去った後もリンパ節に残り、次に同じ病原体が侵入してきたときにすばやく抗体を産生するBリンパ球を作り出すことができるようスタンバイしています。
 さらに感染が進むと、ウイルスはヒトの体内の細胞内に侵入します。しかし、B細胞は細胞内に侵入したウイルスに対しては無力です。そこで活躍するのがTリンパ球(細胞障害性T細胞)です。細胞内で複製・産生されたウイルス蛋白の一部は細胞表面にあるMHC(主要組織適合抗原)に提示され、生体内で「感染した細胞」と認識され、細胞障害性T細胞により攻撃されます。これを「細胞性免疫」と呼びます。細胞障害性T細胞は、相手が自己の細胞であっても感染細胞と正常細胞を区別し、感染細胞のみ攻撃・排除してくれます。そしてB細胞と同様に、ウイルスタンパク質の一部(抗原)を覚えたT細胞の一部は「免疫記憶細胞」となります。

■ 生ワクチン → 「液性免疫&細胞性免疫」を獲得

 生ワクチンは病原性の弱い病原体に感染させることで、不快な症状を与えることなく、実際に感染したのと童謡の免疫効果(液性免疫&細胞性免疫)を与えようとするものであり、これにより免疫記憶が生まれ、長期にわたって同じ病原体の感染から逃れることができます。ただし、病原性が弱いとはいえ生きた病原体ですから、目根気力が弱いヒトの場合、まれに副作用が出ることがあります。

■ 不活化ワクチン → 「液性免疫」のみ獲得

 化学薬品(例:ホルムアルデヒド)などで不活化させた病原体の一部を元に作成したものであり、感染力はありません。感染が起こらないので細胞内に病原体が侵入することもなく、液性免疫は発動しますが細胞性免疫は誘導されません。そのため、ウイルス感染の際、細胞内に侵入した感染細胞に対して無力です。よって生ワクチンより副作用が少ない反面、効果が不十分となり、複数回の接種(基礎免疫&追加免疫)が必要になります。

(2009年12月掲載)

参考資料:ブルーバックス「インフルエンザ・パンデミック」(河岡義裕 著)

■ 卵アレルギー児への予防接種

(2010年1月掲載)

「アレルギー体質=予防接種が危険」というわけではありません

 アレルギー体質があると「予防接種はアレルギー性副反応が起こりやすいのではないか?」と心配になりますね。しかし「アレルギー体質があるから全て危険である」と考えるのはアバウト過ぎます。正しい知識を持って対応しましょう。
 「定期予防接種実施要領」には以下のように書かれています;

気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、じんましん、アレルギー体質などといわれているだけでは、予防接種不適当者にはならない

 ではどういうヒトが問題になるのか?
 それは「ワクチンに含まれる成分に対してアレルギーを有する場合」です。
 この「ワクチンに含まれる成分」とは?
 答えは以下の通り;

安定剤(ゼラチンなど)や培養液成分に含まれるタンパク質(鶏卵など)
抗生物質(カナマイシン、エリスロマイシン)
チメロサール

 等を指します(ワクチンの種類により含有成分は異なります)。
 これらの成分が体に入るとショックを起こしたことがある人は、それを含むワクチンを当然接種できません。
 抗生物質を飲んだときにじんま疹が出たなど副作用が疑われるヒトは問診票にしっかり記載してください。
 接種後の局所の腫れが目立つ(肘を超えて腕全体)例では、チメロサールの皮膚テスト陽性者が多かったという報告を読んだことがありますが、重篤な全身反応は極めて希だと思います。
 実際に問題になるのは、やはり卵アレルギーですね。以下にそれについて述べてみます。

卵アレルギーと麻疹ワクチン

 しばらく前までは、麻疹ワクチン接種に伴う副反応は卵アレルギーのよるものと考えられていましたが、現在は関係ないことが証明されています。
 麻疹ワクチンを作るときに用いられるのは「ニワトリ胚細胞」というもので、何となく「=鶏卵」と同じようなイメージで捉えられてきたことが誤解の始まりです。
 実はニワトリ胚細胞に卵白成分が含まれる可能性は理論的にありません。増殖後のウイルスを精製する技術の進歩と相まって、実際のワクチン液の中に卵たんぱくは検出されないのです。
 そのためWHO(世界保健機関)の勧告や、日本のMRワクチン添付文書には卵アレルギー児に対する特別な注意勧告は記載されていません。

ゼラチンアレルギーと麻疹ワクチン

 1990年代に麻疹ワクチン接種後にじんましんやアナフィラキシーなどのアレルギー性副反応の報告が目立った時期がありました。前述の誤解から当初「卵アレルギー」が怪しいと考えられていましたが、その原因を解析したところ、安定剤として添加されていたゼラチンの増量と時期が一致していることから疑われ、1997年からゼラチンを含まないワクチンに順次切り替えられました。するとアレルギー性副反応の報告が激減!、結果的に犯人はゼラチンであることが判明しました。
 しかし、「卵アレルギー児に麻疹ワクチンは要注意」という思い込み・誤解はすぐにはなくならず、今でも接種する医師の間に亡霊のように根強く残っているのも事実です。

<(幻の)ゼラチンアレルギー>
 ところで「ゼラチンアレルギー」って最近はあまり聞きませんね。なぜ昔は話題になるほど患者さんがいたのか?実は、予防接種でゼラチンアレルギー患者を作っていたらしいのです。3種混合ワクチン(DPT)にも以前はゼラチンが含まれていました(今は除去されています)。それを繰り返し接種することにより、皮肉にもゼラチンに過敏なアレルギー体質が作られてしまった!そしてダメ押しが麻疹ワクチンの役回りだったわけです。
・・・つまり「医原病」ということ。

鶏卵成分を含むワクチン

 ウイルス増殖の際に発育鶏卵が使用されるのはインフルエンザワクチン黄熱ワクチンの2つのみ。おたふくかぜワクチンはニワトリ胚細胞を用いるので、麻疹ワクチン同様鶏卵成分は無視できます。
 報告によると、日本のインフルエンザワクチンに残存する卵白成分(オボアルブミン濃度)は0.83〜10.3ng/mLです(アメリカ製品:20〜1200ng/mL、ヨーロッパ製品:20〜650ng/mL)。
 実際に注射されるワクチン液量に換算しても、注入される卵白アレルゲン量はナノグラム単位であり、アレルギー反応を惹起する可能性は極めて低い微量に過ぎません。

 アレルギー反応を起こすには・・・
 「mg」単位レベルの量が必要です。
 「μg」でもリスクはゼロではありません。
 「ng」レベルは無視できるとされています。

注)
1g の1000分の1→1mg
1mgの1000分の1→1μg
1μgの1000分の1→1ng

卵アレルギー児にインフルエンザワクチンは接種可能か?

 というわけで、理論的には麻疹ワクチンもインフルエンザワクチンも問題なく安全に接種できそうです。
 「では実際のところどうなの?」 
 という疑問に対する厚生労働省が用意した答えは以下の通り;

小児(任意接種):「予防接種ガイドライン等検討委員会」では「卵白RASTスコア5〜6、あるいは卵摂取後のアナフィラキシー」児では接種前皮膚テスト(ワクチン希釈液を少量皮内注射し安全であることを確かめる方法)を推奨しています。つまり「注意しながらやって良し!」とのスタンスです。
高齢者(定期接種):「卵アレルギーが明確な者に対しては接種を避ける」とのスタンスです。

・・・なんと、小児と高齢者では基準が異なるのです!?

(院長のつぶやき)このダブルスタンダード状態・・・混乱の一因ですね。ご存じのように、定期接種は厚生労働省が責任を持ちますが、任意接種(小児に対するインフルワクチン)は「やるのなら自己責任でどうぞ」という及び腰の日本のワクチン行政が見え隠れします。
 まあ、10年前は一律「卵アレルギーは麻疹・おたふく・インフルエンザワクチン禁」でしたから、牛歩のスピードで世界標準に近づいてはいるようですが・・・。

最後に上記を踏まえた当院の方針を;

 卵を食べてアナフィラキシー・ショックの経験のある(あるいは予想される)子どもには、接種前に皮膚テストを行っています。
 卵を食べてもじんま疹や湿疹など皮膚症状だけの場合は、そのまま他の子どもと同じように接種しています。

■ ワクチンの緊急接種(患者と接触した際の発症予防)

 麻疹、風疹、水痘、ムンプスなどの感染症は症状が出る数日前から感染力があるので、診断された時点から隔離してもすでに感染していることが多く、意味がありません。しかし、これらの感染症にはワクチンがあり、ワクチンを接触後早期に接種することにより発症を防いだり、発症しても軽症で済ませることができます。
 下の表は「小児感染症マニュアル2007」(日本小児感染症学会編集)から抜粋したものです。


麻疹 水痘 風疹 おたふく
暴露後接種 有効 有効 有効? 無効
タイムリミット 72時間 72時間 (理論上) 当日(※)

(※)家族内暴露当日の有効率は57%

<参考> 暴露後接種に関する追加情報


麻疹 水痘 風疹 おたふく
副反応出現 7〜10日 14日〜 7〜14日 18〜21日
細胞免疫獲得 7〜10日 5〜13日 10〜14日 10〜14日
(潜伏期間) (10〜14日) (14〜16日) (16〜18日) (16〜18日)

■ ワクチンを間違って接種してしまったら

※ 「より安全な予防接種を目指して」岡田賢司先生(国立病院機構福岡病院統括診療部長)、アステラス製薬制作、より抜粋

 ワクチン接種に関しては各医療機関が万全を期してトラブル対策をしていることと思われますが、未だに「間違い接種」のニュースが後を絶ちません。「ヒトは間違いを犯すもの」という前提でチェック体制を築く必要がありますが、それは各施設にお任せするとして・・・実際に間違った場合の対応方法が記載されている小冊誌を見つけたので、ポイントを抜粋しました。

新聞記事に見る予防接種関連ミスの件数
1.医療関係者
 ・有効期限切れ(25%)
 ・ワクチンの種類間違い(19%)
 ・接種量の間違い(15%)
 (例1)DTトキソイドを0.5ml接種(本来は0.1ml)
 (例2)3歳未満児に日本脳炎ワクチンを0.5ml接種(本来は0.25ml)
 ・接種方法の間違い(9%)
 ・対象外接種(4%)
2.市町村職員・・・対象外通知ミス(23%)
3.保護者・・・思い違い(5%)

<誤接種時の医療上の対応>

過量接種

不活化ワクチン:局所反応の頻度や程度などが強くなる可能性があります。
生ワクチン:医学的に問題になることは少ないとされています。

過少接種

(例)注射針が外れた場合など
不活化ワクチン:1回目、2回目であれば不十分と考えられる量をすぐ再接種、3回目以降の追加免疫であれば原則として再接種の必要はありません。

有効期限切れワクチンの接種

 保存状態に問題がなければ、生ワクチンでは生存ウイルス量の減少に伴う力価の低下があってもその他の品質が急に劣化して重篤な副反応が発現することは考えにくいとされています。
 有効性の確保の観点からは、生ワクチンでは6週間後、不活化ワクチンでは基礎免疫終了後(DPTでは1期3回接種後、日本脳炎では2回または3回接種後)に抗体検査を行い、低い抗体価であれば再接種を考慮します。

接種間隔の誤り

・不活化ワクチン同士を規定の間隔より短い期間で接種した場合は、期待する抗体価が得られない可能性があります。この場合、次回の接種間隔を遵守して接種します。
・不活化ワクチン同士を規定の間隔より長い期間で接種した場合は、間隔にかかわらず気づいた時点で接種を行い、規定回数を確保することが重要です。
・生ワクチン接種後27日未満に不活化ワクチンを接種した場合は、干渉作用はなく有効性については医学的に支障はないと考えられます。
・生ワクチン同士を27日未満に接種するとワクチンウイルス増殖後の干渉作用により免疫を獲得できない場合もあります。kの場合、抗体価を確認し、必要に応じて再接種を考慮します。

<参考ホームページ>

KNOW-VPD!VPDを知って、子どもを守ろう

■ スマホ対応の「予防接種スケジューラーアプリ」(無料)

VPDがつくった優れもの。

国立感染症研究所:感染症情報センターのHP。

小児科医のタネ本です(2015年版)。

麻疹合併症であるSSPEのHP。

1/1000人と云われるおたふくかぜの合併症。

様式第一(予防接種台帳)
様式第二(定期接種予診票)
様式第三(HPVワクチン予診票)
様式第四(HPVワクチン予診票-2)
様式第五(高齢者用インフルエンザワクチン予診票)
様式第六(コッホ現象事例報告書)