溶連菌性咽頭炎

 のどがとても痛く、でも咳は目立たないでちょっと気持ち悪いとかお腹が痛くなると小児科医は疑います。
 家族内で蔓延することもあります。
 再発予防、合併症予防目的で、抗生物質による10日間の治療が必要です。

■ 溶連菌性咽頭炎

病気の解説HPIDWRメルクマニュアル横浜市衛生研究所
※ 溶連菌性咽頭炎の「IDSA Guideline(2012年版)」(英語です)

□ 原因 A群β溶血性連鎖球菌(略して溶連菌)という細菌。
疫学
・主に4〜15歳の小児に見られ、学童初期に最多。成人例もありますが、3歳未満にはまれ。
・無症候性保菌者(咽頭に保菌する健常者)が小児の5〜20%に存在します。無症候性保菌者からの伝播はほとんどありません。
□ 潜伏期間 2〜4日(2〜5日という記載も)・・・感染してから症状が出るまでの期間
□ 感染経路 飛沫感染(咳・鼻水・つばが飛んでヒトにうつります)、接触感染
※ 食材を介した流行もみられます(溶連菌による食中毒)。

【症状】  典型的な経過は以下の通りです(全て揃わないこともあります)。
 発症日: 悪寒を持って発熱し、のどが痛くなり、頭痛、吐き気、腹痛など。
 2日目: 皮膚に細かい赤い湿疹がでてかゆくなる。
 3日目: イチゴ舌(舌が赤くなり表面のブツブツが目立つ)
 1週間: 指先の皮がむけてくる。

・頚部リンパ節腫脹(30〜60%):下顎角や前頚部の圧痛を伴うリンパ節腫張
□ 治療
 この病気は抗生物質が著効し、飲み始めると翌日から症状が改善します。ペニシリン系の抗生物質を10日間内服します。途中でやめてしまうと病気がぶり返したり、下記合併症の危険が増えますので最後までしっかり飲ませましょう。
 なお、治療して一旦元気になった後に発疹が出た場合は抗生物質の副作用(薬疹・・・約5%)の可能性があります。薬を中止して当院にご相談ください。

※ ペニシリン系抗生物質アレルギーがある方は申し出てください。

□ 合併症
 治ってから1〜4週間後に下記合併症を疑わせる症状が出たら受診してください。
急性腎炎 : 血尿、乏尿、むくみ、頭痛 ・・・咽頭炎から発症まで1〜2週間(平均10日)、皮膚感染症からでは3〜6週間。
 急性腎炎になっていないかチェックする目的で当院では尿検査をしています。 
リウマチ熱: 発熱、関節痛、発疹、心炎・弁膜症、舞踏病(体の一部が勝手に動く)など ・・・咽頭炎から2〜3週間(平均18日)で発症、皮膚感染症ではみられません。 

登校・登園基準
 抗生物質内服開始後、下記の条件を満たせば登校・登園が可能です。
・熱がない場合 → 治療開始後24時間以降
・熱がある場合 → 解熱後24時間以降

溶連菌性咽頭炎はなぜ何回も罹るのか?
 溶連菌はM蛋白(細胞膜から細胞壁側へ突出する病原因子)により130以上に分類されます。
 感染すると4〜8週間でM蛋白に対する型特異的抗体が産生され、同型株による再感染は防御できるようになりますが、他の型による感染は防御できません。
 従って、小児は溶連菌性咽頭炎を繰り返すことになります。13歳になるまでに、一人当たり平均3回感染を繰り返すと言われています。

抗生物質(=抗菌薬)を長く飲むのは何のため?
・リウマチ熱の予防 ・・・咽頭炎発症から9日以内に抗菌薬を投与すれば予防可能。抗菌薬投与が急性糸球体腎炎の予防になるという証拠はありません。リウマチ熱の予防はペニシリン系ではデータがありますが、セフェム系での予防効果の報告はありません。
・化膿性合併症の予防
・症状の改善
・感染拡大防止

<新聞記事より>

 子どもの感染症に関する記事を拾い読み。

■ 米国感染症学会「喉の強い痛みの多くは抗菌薬無効」(2012.9.11:MT Pro)

A群溶血性連鎖球菌咽頭炎診療ガイドライン

 米国感染症学会(IDSA)は9月9日,A群溶血性連鎖球菌(GAS)咽頭炎の診療ガイドラインを前回2002年から10年ぶりに改訂したと発表(Clin Infect Dis 2012年9月9日オンライン版)。同学会のプレスリリースでは,改訂の背景について,GAS咽頭炎で時に見られる侵襲性感染症などの重篤な合併症を見逃さないための診断が重視されると説明。一方,急性咽頭炎の多くはウイルスによるものと考えられ,こうした症例に対する抗菌薬は無効との見解も示されている。

急性咽頭炎の多くはウイルス性,しかし全体の70%に抗菌薬

 GASによる咽頭炎は,喉の痛みを訴えて医療機関を受診する成人の5~15%,小児の20~30%に見られる,最も一般的な市中感染症。一方,米国で喉の痛みを訴えて受診する人の数は年間1,500万人に達し,その70%もの人が抗菌薬を処方されているとIDSA。ガイドラインによると,一部のまれな細菌性咽頭炎の原因菌を除き,GAS以外の病原体による急性咽頭炎への有効性が証明されている治療はないという。また,上気道感染症に対する抗菌薬の不適切使用が菌耐性化の大きな要因であることから,GAS咽頭炎の鑑別診断は極めて重要と強調している。
 IDSAは今回の改訂のポイントに,咳や鼻水,嗄声および口腔内の腫れなど,ウイルス性咽頭炎が強く疑われる症状を呈する成人,小児へのGAS検査は不要であることを挙げている。その理由としてGAS咽頭炎では上記の症状とは異なり,突然の喉の痛み,嚥下に伴う苦痛あるいは高熱が見られることがほとんどであるためと説明している。また,GAS咽頭炎が疑われる場合も,検査結果が陽性でない限り抗菌薬を使用すべきでないこと,迅速診断陰性の成人での追加検査(咽頭培養)は行わないこと,3歳以下の小児のGAS咽頭炎はまれなため,検査は不要であることなども勧告されている。

アレルギーなければペニシリンかアモキシシリンが第一選択

 GAS咽頭炎と診断された場合,薬剤アレルギーのない患者への第一選択薬としてペニシリンまたはアモキシシリンを推奨している。ガイドライン作成委員の1人Stanford T. Shulman氏(米Ann & Robert H. Lurie Children’s Hospital of Chicago)は「これらの抗菌薬に対するアレルギーのない患者では非常に有効かつ安全性の高い薬剤」と評価。ペニシリンアレルギー例への推奨薬としてセファレキシンやクリンダマイシンなどを挙げる一方,マクロライド系薬においては耐性株の増加や薬価の点から適応を厳格にすべきとの見解を示している。
 また,GAS咽頭炎を反復する小児患者への扁桃切除術は,閉塞性呼吸障害などの特別な事情がない限りは推奨しないこととされた。同氏は「米国ではリウマチ熱などの重篤な合併症は減少しつつあるものの,時に見られることからGAS咽頭炎の正確な診断が重要」と強調している。

■ 急性鼻副鼻腔炎の90%以上がウイルス性,「念のため」の抗菌薬はNG(2012.3.22:MT Pro)

IDSAが学会初の診療ガイドライン発表

 米国感染症学会(IDSA)は3月21日,同学会としては初の急性細菌性鼻副鼻腔炎(Acute Bacterial Rhinosinusitis;ABRS)の診療ガイドラインを策定したと発表。タイトルには「細菌性」との文言が含まれているが,同学会は急性鼻副鼻腔炎の90~98%はウイルスにより引き起こされるとしており,こうした症例に「念のために」と抗菌薬を使用すべきでないというのが最大のポイントのようだ。

第一選択薬はアモキシシリン・クラブラン酸,成人には鼻洗浄も推奨

 米国では毎年およそ7人に1人が急性鼻副鼻腔炎の診断を受けているほか,抗菌薬処方せん数全体に占める同病名の頻度は第5位の多さだとIDSA。
 「鼻感染症がウイルス性か細菌性かを簡単に判断する検査はないが,多くの医師が“念のために”と抗菌薬を処方している」とガイドライン作成委員長のAnthony W. Chow氏(ブリティッシュコロンビア大学名誉教授)。しかし,IDSAによると急性鼻副鼻腔炎の90~98%はウイルスが原因だという。
 同氏は「ウイルス性の鼻感染症に対する抗菌薬の使用はベネフィットがないばかりか,薬剤の耐性獲得,本来さらされるべきでない有害事象リスクや医療コストの増加につながる」と指摘している。
 今回のABRS診療ガイドラインはIDSAとしては初で,GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムに沿った評価が行われている。しかし,既存のガイドラインで参照されているランダム化比較試験(RCT)には感染症が細菌性かウイルス性か区別されていないものがあり,IDSAはそうしたエビデンスを用いることは最良の勧告につながらない可能性があるとの見解を示している。
 IDSAによる,今回のガイドラインのポイントは次の通り。

□ ABRS(小児,成人)のエンピリック治療における第一選択薬として,従来のアモキシシリン(AMPC)/単剤よりもアモキシシリン・クラブラン酸を推奨する
□ 広く用いられているアジスロマイシン,クラリスロマイシン,トリメトプリム・スルファトキサゾール(ST)合剤は,薬剤耐性の拡大が見られるためABRSへの使用を推奨しない

以下の項目があれば,ABRSとして速やかな治療を行うべき
・10日以上症状の改善が見られない場合(既存のガイドラインでは7日間経過観察とされている)
・38.9℃(102F)以上の発熱,鼻閉あるいは顔面痛が3~4日間続くなどの重度の症状が見られた場合
・新たな発熱,頭痛あるいは鼻閉の増悪など,ウイルス性上気道感染症後に典型的な症状がいったん改善傾向にあったにもかかわらず,5~6日続いている場合

□ 抗菌薬の使用期間を短縮する:ほとんどのガイドラインでは細菌性感染症に対し10~14日間の抗菌薬使用を推奨している。しかし,本ガイドラインでは薬剤耐性のリスクがなく十分な治療を行える期間として5~7日間を推奨する
□ ABRSに局所血管収縮薬や抗ヒスタミン薬を使用しない:鼻感染症が細菌性,ウイルス性のいずれであっても,これらの薬剤は症状を改善しないだけでなく,悪化させる可能性がある。アレルギー歴のある鼻感染症患者の場合,経鼻ステロイドは症状を緩和する可能性がある
□ 生理食塩水による鼻洗浄は有効な可能性がある:本ガイドラインではスプレーやドロップ,液体などによる鼻洗浄法について触れている。これらの方法によりある程度症状緩和が期待できる。しかし,本ガイドラインでは小児に対する鼻洗浄法は治療で生じる不快感の理由から,必ずしも症状緩和が期待できないかもしれないとしている

 また,ガイドライン共同著者の1人であるThomas M. File, Jr. 氏(ノースイーストオハイオ大学)は,鼻感染症の症状を緩和するために,痛みがあればアセトアミノフェンを服用,あるいは鼻洗浄を受けたり,水分をたくさん取ることを個人的に推奨するとのコメントを寄せている。
 IDSAは,今回のガイドラインは医師の決定を左右するものではないが,個々の患者の状況に合わせた意思決定過程をサポートするものとして利用してほしいとしている。米国では,医師が患者からの要望で抗菌薬を処方してしまう問題も指摘されている(関連記事)。

日本では2010年にガイドライン発行

 日本では2010年に「急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン」(編集:日本鼻科学会)が発行されている。同ガイドラインでは鼻処置を優先した上で,AMPCやセフェム系抗菌薬,レスピラトリーキノロン系抗菌薬などの投与を5日間から最長10日間まで推奨(関連記事)。AMPCは日本では副鼻腔炎への適応記載はないが,同ガイドラインでは適応菌種などの詳記により投与可能との見解が示されている。
 両ガイドラインの最大の違いの1つは,IDSAの治療アルゴリズムが1つであるのに対し,日本では小児,成人別に臨床症状および鼻腔所見から成るスコアリングに基づく重症度分類を実施,軽症から重症まで計6つの治療アルゴリズムが設けられている点だ。この背景には,もともと想定しているガイドラインのターゲットが一般医と専門医とで異なることがあると見られる。
 また,日本のガイドラインでは生理食塩水による鼻洗浄に関する記載は見当たらないが,鼻処置,自然口開大処置やネブライザー治療が有効との推奨がある。局所血管収縮薬の使用は一過性の鼻閉改善には有効との理由から「急性期3日に限り推奨」と記載。しかし「副鼻腔に薬剤が到達しないため副鼻腔粘膜の腫脹には無効」とされている。

■ マスクと上手につき合う(2012/1/25:日本経済新聞)

 風邪やインフルエンザの流行に、花粉症――。この時期、手放せないのがマスクだ。ただ、種類が多すぎてどれを選んでいいかわからないという人も少なくない。「うっとうしい」「化粧が落ちる」などと敬遠する人も。選び方から正しい着用法、意外な活用法まで、マスクのあれこれを調べてみた。
 マスクには様々な種類がある。どんな時にどんなタイプを使うのが適しているのか、健康関連商品のインターネット通販を手がける「ケンコーコム」に聞いてみた。
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マスクの正しいつけ方.jpg

 マスクには主に、一般マスク、機能性マスク、防じんマスクの3タイプある。風邪予防には不織布でできた使い捨ての一般マスクで十分だが、インフルエンザやノロウイルス、花粉症が流行しているときは、ウイルスや花粉対策用の機能性マスクを使ったほうがよい。新型インフルエンザが流行したような場合は、ウイルスを通さない防じんマスクが向く。
 マスク選びを間違えると、使いづらさに悩むことになる。話がしづらいようであれば、平らな形のものより立体構造タイプを選ぼう。耳が痛くなる場合は軟らかいゴム、丸い形状のゴムが付いたものを選ぶといい。耳ゴムのない特殊粘着タイプもお勧めだ。
 眼鏡が曇るなら、鼻当てワイヤ付きがいい。「日常的に使う予防用マスクは使い捨てにしたくない」という人は洗って陰干しできるタイプやガーゼマスクを使う手もある。サイズ選びや着用方法は図を参考にしてほしい。
 女性にとって気になるのがメークだ。東京医科歯科大学非常勤講師で美容ジャーナリストの宇山恵子さんは「ノーメークでは老けて見えるのでしっかりアイメークを。眉は太めに描くと元気な印象に。鼻から下も化粧するならメークが落ちにくいタイプのマスクを選ぶといい」と助言する。「メーク前に顔に合わせてマスクを成形し、鼻や肌を圧迫しないよう整えてヒダを伸ばしておくことも大切」
 マスク着用のマナーにも気をつけたい。マナーコンサルタントの西出ひろ子さんは「マスクはお互いの健康を守るうえで不可欠。敬遠せず、受け入れ合いたい。ただ、人と接するときは『マスクをしたままで失礼いたします』と一言添える配慮を」と話す。
 このとき、「ひどい風邪をひいているので」など、相手に不安感を与える説明は不要だ。かわりに「喉を痛めていまして」などと話すと無難だろう。接客業の人は「マスクをつけたまま○○させていただいてよろしいでしょうか?」と疑問文で声をかけると、よりソフトな印象になる。
 「目上の人に会う時は、予防のために着けているなら外すのがマナー。風邪などをひいているなら丁寧にことわり、深く一礼を」。周囲に不快感を与えない心配りも大切だ。「お茶を飲むときマスクを外す場合は、新しいものに着け替えると不潔感を与えない」(西出さん)
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 マスクといえば、「うっとうしい」と敬遠されがちだが、前向きに活用する方法もある。宇山さんは「紫外線を遮断し、肌や喉の乾燥を防ぐうえでも効果的。ついでにマスクで隠れる部分をお手入れし、“養生”しては」と提案する。マスクでパックをするつもりで美容液やリップクリームを多めになじませておく。
 「目力」を鍛えることもできる。西出さんは企業の接遇研修のとき決まってマスクを利用するそうだ。「マスクで口元を隠し、目の表情だけで『笑顔』を表現する。思いを込め、顔の筋肉を動かさなければ魅力的な目の表情は生まれない。鏡でチェックしながら練習してもらっている」
 マスク着用中はとかく無表情になりがちだが、口元が隠れていることを逆手にとり、このようなトレーニングをするのも一手だろう。
 ますます身近になっているマスク。基本をおさえたうえで自分流に活用しても楽しい。

(ライター 西川 敦子)

■ 「風邪」予防の常識・非常識 (2011/1/18:日本経済新聞)

 寒くなり、せきが出たり微熱が出たりする風邪がはやる季節になった。頻繁に使う言葉だが、「風邪」は医師が診断する病名ではない。一見同じような風邪の症状でも、原因や経過が異なる複数の病気に分かれていてそれぞれの病名で診断されるからだ。知っておきたい「風邪の常識」をまとめた。

マスクは病気が広がるのを防ぐのに役立つ

 昨年11月、東京都内在住の公務員、A子さん(29)は、体がだるくのどが痛いのに気がついた。頭痛もあり熱を測ると37度程度の微熱があった。近所の薬局で購入した漢方薬を服用した。平日はマスクを着けて仕事へ行き、休日は一日中家で寝ていたところ2~3日で楽になった。熱を測ると平熱に戻っていたので治ったと思い安心した。

病名でない風邪

 一般にせきやくしゃみ、軽い発熱などがあると「風邪」と言うことが多い。ただ、「風邪という病気はない」と永寿堂医院(東京都葛飾区)の松永貞一院長は説明する。
 風邪にはウイルスや細菌などの病原体の感染による「感冒」と、「寒い日におなかを出したまま寝ていた」といった寒さなどの生活環境による「寒冒」がある。ほとんどが前者で、そのうちの多くの原因がウイルスだ。
 風邪を引き起こすウイルスは少なく見積もっても250種類以上ある。通常、ウイルスに一度感染すると免疫ができて次に感染しにくくなるが、これだけたくさんの原因ウイルスがあるので何度も風邪を引くというわけだ。せきや発熱のような同じような症状でも季節によって流行するウイルスが異なり、冬は子供の気管支炎などの原因となるRSウイルスなどが多い。
 腹痛や下痢、嘔吐(おうと)などの症状があると「おなかの風邪」といわれることも。これは感染性胃腸炎と診断される。大腸菌などの細菌のほか、冬はノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスが原因になることが多い。
 これだけ多くの原因を持つ風邪。予防はどうするのか。
 まず予防接種をする。ただ1つのワクチンで防げる病原体は通常1種類。インフルエンザウイルス、肺炎を起こす肺炎球菌といった重い病気を引き起こす病原体に対するワクチンはあるが、ほとんどの風邪の病原体を防ぐワクチンはそろっていない。
 日常的にできる対策はやはり「マスク」「手洗い」「うがい」だ。普段からよく食べて睡眠をとるといった健康管理も欠かせない。それぞれ目的が異なるので、「何に役立つかを覚えておくと、周りで流行しているものに対して予防対策をとりやすくなる」(国立感染症研究所の安井良則主任研究官)。
 マスクは、せきやくしゃみなどで感染が広がるインフルエンザなどの病気が拡大するのを防ぐのに役立つ。手洗いは感染性胃腸炎を起こす病原体を洗い流して体内に入るのを防ぐ。
 うがいはのどや口の中にある病原体を洗い流したり、保湿をしたりする働きがある。ただ、「うがいだけではウイルス感染を防ぐことはできない」(安井主任研究官)ため、ほかの方法と組みあわせる必要がある。

3日続けば受診

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 風邪にかかってしまったらA子さんのように軽い症状の場合は、医療機関へ行かず、市販の薬を飲んだり自宅で療養したりしてよくなることもある。健康な人では、もともとの体の免疫の働きがウイルスなどを排除する。市販の風邪薬や解熱剤は鼻水や発熱など風邪のつらい症状を抑えるので、免疫を付けるのに必要な食事や休養をとりやすくなる。
 ただ、市販の風邪薬は原因のウイルスや細菌をやっつける治療薬ではないので注意が必要。症状が軽くても「3日たってよくならなかったら、すぐに医療機関へ行って」と松永院長は語る。
 風邪とあなどっていると、思わぬ合併症を引き起こすこともある。例えば、発熱やのどの痛みがある溶連菌感染症。早めに医療機関で抗生物質などの治療を受ければよくなるが、放っておくと腎炎などの重症になることもある。
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インフルエンザは高熱に

 先月、本格的なインフルエンザの流行期に入った。風邪と同じようにせきが出たり発熱したりするが、どのように違うのだろうか?
 インフルエンザは38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛などがある。風邪はのどの痛みやせき、鼻汁といった呼吸器の症状がメーンだが、インフルエンザは全身の症状があるのが特徴だ。また発熱もインフルエンザのほうが高くなる。
 特に高齢者や小児では悪化すると肺炎や脳症を起こすことがある。ただ健康な大人では、典型的な症状ではなく軽いこともあり多くの人では特に治療をしなくても1週間ほどで自然に治る。「軽いと風邪の症状と区別が難しい」(安井主任研究官)。
 「今年も大きな流行になる可能性がある。新型は健康な成人でも注意が必要。インフルエンザを疑ったら、すぐに医療機関へ行ってほしい」とけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師は注意を呼びかけている。

■ 感染症を防ぐ正しい手洗い法 指はねじるように洗う

(2011年12月20日 朝日新聞)

手にはどれくらいの細菌がいる?.jpg
手にはどれくらいの細菌がいる?正しい手洗いの手順 <グラフィック・くぬぎ太郎>

 12月も半ば、インフルエンザや感染性胃腸炎が流行のピークを迎える時期です。手洗いは基本の予防策の一つですが、自己流で洗ったつもりは禁物。正しい手洗い法を調べました。
    ◇
 手で鼻や口の周りを触ることでウイルスや細菌が体内に入ることを「接触感染」と呼ぶ。インフルエンザのほか、ノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎、腸管出血性大腸菌などによる食中毒も、手が感染の橋渡しをする病気だ。
 接触感染を防ぐためには、見た目の汚れを落とすだけでは不十分。群馬県衛生環境研究所(前橋市)を訪ねた。
 「まずはいつも通りに手を洗って見せて下さい」と担当者。洗い残しがないかどうか、ひと目でわかるように、ブラックライトという特殊な光に反応するクリームを両手に塗る。暗い部屋でこの光を当てると、両方の手のひらも甲も、手首までクリームで真っ白になっていた。
 この状態で手を水でぬらし、泡状の液体せっけんをつけて、手のひらと甲をそれぞれ2往復ずつこすり合わせた。その後、指の間や手首をなでるように洗い、水で流した。かかった時間はすすぎも含めて30秒ほどだ。
 改めて両手にブラックライトを当てると、手のひらや甲は白色がやや薄くなっていたものの、指や手首は真っ白のまま。
 次は、教えられた方法で洗ってみる。手のひらから甲、指、手首へと進み、それぞれ心の中で1~10まで数えながら洗った。約2分かかった。
    ◇
 再びブラックライトの下に手を入れると、手のひらや甲はクリームがほぼ落ちていたが、指先や指の関節の周り、しっかり洗ったつもりだった手首はまだ白さが残っていた。
 「指はもっとねじり洗いするといいですよ」と言われ、片手の指1本ずつをもう一方の手で包み込んで回転させながら洗う。今度は、ほぼ完全に落ちた。洗った手はペーパータオルか、自分専用のタオルで拭くのが一番いい。自宅で常にタオルを使い分けるのは難しいが、家族の誰かが感染症にかかった時は手間を惜しまないようにしたい。
 静岡県立大の内藤博敬助教(微生物学)の研究室は、人間の身の回りの物に付着する細菌の数を調べている。例えば、携帯電話なら10平方センチメートル当たり1216個、エレベーターのボタンで490個、電車のつり革からは190個という結果が出た。
 見つかったのは、健康な人には病気を起こさない「一般細菌」がほとんどだったが、食中毒や院内感染の原因になる菌もわずかにいた。
 内藤さんは「アルコールなどの薬剤による消毒が必要な感染症もあるが、ふだんの生活ではまずは手洗いでしっかりとウイルスや細菌を落とすことが予防の基本です」と話している。(南宏美)

 ◆インフォメーション

 洗剤や消毒剤メーカーのサラヤが運営するウェブサイト「みんなの手洗いサイト」(http://tearai.jp/tetete/)は、イラストやクイズで、正しい手洗い法を楽しく学べる。子どもにおすすめ。杏林製薬による「ミルトンママクラブ」(http://www.miltonmama.jp/)も手洗いなど、家庭でできる感染症の対策を紹介している。

■ 【医の手帳】子どもと感染症(2011年11月:朝日新聞の特集)

(1)新潟大学大学院医歯学総合研究所・斎藤昭彦教授(小児科学)

 今年も、インフルエンザの季節がやってきました。2年前の今ごろは、2009 A/H1N1インフルエンザ(当時の新型インフルエンザ)が大流行しました。昨年のシーズン前には、その更なる流行が心配されましたが、大きな流行はなく終わりました。今年はどの型が流行するのか。その予想が難しいのがインフルエンザの特徴です。
 インフルエンザは、数日間の高熱、頭痛、呼吸器症状、全身倦怠(けんたい)感、関節痛などをきたす病気です。かかるととてもつらいですし、学校などを数日間は休まなくてはいけません。肺炎、脳炎などの合併症をきたすこともあり、後遺症を残したり、死亡したりする人もいます。かかる前に、予防することが最も重要です。
 インフルエンザウイルスは、感染した人のせきやくしゃみで飛び散ります。それから身を守るため、二つの重要なことがあります。一つは、外から帰った時にしっかりと手を洗うこと。水ですすいだ後、せっけんをつけ、よく泡立てた後、手のひらと甲、洗い忘れやすい指先、親指、指の間、手首を洗い、水でよくすすぎます。洗った後、きれいなタオルなどで拭き取ることも大切です。せきなど呼吸器症状のある人は、マスクを着け、他の人にうつさないよう心がけて下さい。
 もう一つは、インフルエンザのワクチンです。ワクチンは、インフルエンザにかかった場合に重い症状や合併症にならないこと、そして、かからないように予防する効果もありますので、ぜひ、接種を心がけましょう。また、皆がワクチンを接種することで、様々な理由でワクチンを接種できない人たちを守ることもできます。
 今年のワクチンには、昨年のワクチンと同じ三つの株が含まれており、2年前に流行した2009 A/H1N1インフルエンザ株が含まれています。流行の始まる前から接種しておくことが重要ですので、早めの接種をお勧めします。

<参考HP>

(日本鼻科学会)

 山中昇先生による上記ガイドラインの解説記事