子どもの喘息について

(最終更新:2011.3.6)

 勤務医時代は入院を繰り返す中等症〜重症の喘息患者さんを主に診療していました。
 開業後は軽症の患者さんの比率が増えました。そして、喘息と非喘息のボーダーラインをどこに引くべきか迷う患者さんもたくさん来院されます。
 日々、患者さん相手に説明している内容をまとめてみましたので、ご参照ください。

【ケース1】「この子は喘息です」「エーッ?」

 A君(1歳)は風邪で小児科医院を通院していました。風邪を引くたびに治りが悪くて咳が長引くのが以前からお母さんは気になっています。
 あるとき、夜間の咳込みが強く、息づかいが荒いので翌朝受診しました。医師は「聴診器ではゼーゼー聞こえるので、吸入治療をしてみましょう」と云い、霧になった薬を吸う治療を受けました。
 初めてのことなので子どもはぐずりがち・・・でも吸入が終わると幾分息づかいが楽そう。もう一度診察を受けると「気管支のゼーゼーがよくなってますね。ウ〜ン、A君は喘息の気があるなあ」
 「エーッ? 喘息ですか?」

 診察室での一場面です。
 喘息といきなり診断(宣告?)されてお母さんはショックを受けています。お母さんは「喘息とは苦しい発作を繰り返す病気」というイメージで捉えていたので、元気で息づかいが荒いだけのわが子が喘息だとはこれまで思ってもみませんでした。
 さて、どんな時にこのような会話があるのでしょうか。考え得るシチュエーションとして・・・

・風邪を引くとゼーゼーしやすいのが気にはなっていたけど・・・
・風邪で咳が長引いてなかなか良くならない・・・
・秋になると夜中・朝方によく咳き込むので受診
・走ると咳が出やすいので心配して受診

 などのパターンがあると思います。
 決して喘息のイメージである「ぜーぜーする呼吸困難の発作」ではありませんが、実はこれらの症状の中に喘息の要素が隠れていることがあるのです。

解説

 A君(1歳)は風邪で小児科医院を通院していました。①風邪を引くたびに治りが悪くて咳が長引くのが以前からお母さんは気になっています。
 あるとき、夜間の咳込みが強く、②息づかいが荒いので翌朝受診しました。医師は「聴診器ではゼーゼー聞こえるので、③吸入治療をしてみましょう」と云い、霧になった薬を吸う治療を受けました。
 初めてのことなので子どもはぐずりがち・・・でも吸入が終わると幾分息づかいが楽そう。もう一度診察を受けると「④気管支のゼーゼーがよくなってますね。ウ〜ン、A君は喘息の気があるなあ
 「エーッ? 喘息ですか?」

①:この時のカルテには「軽度の喘鳴を聴取」と繰り返し書かれていました。
②:軽いゼーゼーは夜間目立っても朝には消えてしまいますので、診察時間帯では気づかれないことも多い傾向があります。
③:吸入治療の中身は抗喘息薬のインタールとベネトリンです。
④:抗喘息薬(気管支拡張薬)の効果があったので、喘息の可能性だ大と判断しました(治療的診断)。このとき、吸入後もゼーゼーが変わらず改善していないときは「気管支炎」という診断になります。
・・・もっと詳しく知りたい方は【診断編】をご参照ください。

【ケース2】調子がよくても治療を続けるの?

 Bちゃん(4歳)は「喘息」と診断されて小児科に通院しています。
 1年前の秋はとにかく咳が止まらず、ちょっとはしゃぐとすぐ咳き込んで座り込んでしまう状態でした。飲み薬から始め、複数の薬を飲んでも治まりきらないので吸入する薬を処方されました。毎日吸入するキュバールと苦しい発作の時だけ使うメプチン・キッドエアーという名前です。その頃から症状が落ち着き、飲み薬が徐々に減っていき、最近は吸入だけ続けています。
 いけないなあと思いつつも、調子がよいとついついキュバールの吸入を忘れがち。ちょっと苦しそうなときはメプチン吸入でよくなるので、だんだんメプチンだけになってきました。
 でも調子が悪くなるわけでもないし、はしゃぐと咳き込むけど以前ほどではないし・・・ここ数ヶ月は通院をサボってます。
 そんな時、風邪を引き、咳がどんどんひどくなってゼーゼー苦しそうになり、久しぶりに小児科受診。「調子がよさそうに見えても吸入治療はしばらくつづけましょう、と云ったはず」と叱られてしまいました(反省)。

 実はこのようなケースは珍しくありません。
 日々の診療で感じることは、日本人は飲み薬が大好き、吸入薬は苦手。
 それから予防治療が苦手。備えあれば憂いなし、とわかっていても隣が火事になるまで焦らない傾向があります。
 Bちゃんのケースでは何が悪かったのでしょう・・・調子がよいのに治療を続ける必要があるのでしょうか?

解説

 Bちゃん(4歳)は「喘息」と診断されて小児科に通院しています。
 1年前の秋はとにかく咳が止まらず、ちょっとはしゃぐとすぐ咳き込んで座り込んでしまう状態でした。①飲み薬から始め、複数の薬を飲んでも治まりきらないので吸入する薬を処方されました。②毎日吸入するキュバールと苦しい発作の時だけ使うメプチン・キッドエアーという名前です。その頃から症状が落ち着き、飲み薬が徐々に減っていき、最近は吸入だけ続けています。
 いけないなあと思いつつも、調子がよいとついついキュバールの吸入を忘れがち。ちょっと苦しそうなときはメプチン・キッドエアーの吸入でよくなるので、③だんだんメプチン吸入だけになってきました
 でも調子が悪くなるわけでもないし、④はしゃぐと咳き込むけど以前ほどではないし・・・ここ数ヶ月は通院をサボってます。
 そんな時、風邪を引き、咳がどんどんひどくなってゼーゼー苦しそうになり、久しぶりに小児科受診。「⑤調子がよさそうに見えても吸入治療はしばらくつづけましょう、と云ったはず」と叱られてしまいました(反省)。

①飲み薬の内容は発作止め(商品名:メプチン、スピロペント、テオドールなど)と予防薬の抗ロイコトリエン薬(商品名:シングレア、キプレス、オノンなど)です。
②キュバールは発作予防の吸入ステロイド薬なので、調子がよいときも悪いときも毎日欠かさず吸入する薬。一方メプチンは発作止めであり悪化時のみ吸入する薬です。
③発作止めのメプチンだけ吸入していても気道炎症が治まらないどころか悪化します。それだけに頼る治療は喘息死の原因になることが1990年代のニュージーランドで社会問題になりました。メプチンを週に1回以上使う必要がある患者さんは、予防薬としての吸入ステロイドが必須です。
④「はしゃぐと咳き込む」など、運動により誘発される喘息発作を「運動誘発性喘息(EIA)」と呼びます。これが出る状態は気道炎症が残っている証拠であり、まだ治療が必要なサインです。
⑤予防治療は喘息が落ち着いていることを確認して3ヶ月単位でゆっくり減らしていきます。

・・・もっと詳しく知りたい方は【治療編】をご参照ください。

【診断編】

アトピー性皮膚炎があると喘息になりやすいって本当?

 確かにその傾向があります。
 小児のアレルギーの病気は乳児期のアトピー性皮膚炎、幼児期の喘息、学童期のアレルギー性鼻炎や花粉症と、大きくなるとともに病気の種類が代わっていく現象を認め、これを「アレルギー・マーチ」と呼んでいました。しかし、どうしてこうなるのか誰も説明できませんでした。
 近年、アトピー性皮膚炎の皮膚バリアの壊れた乾燥肌からアレルゲンが侵入して喘息などの吸入性アレルゲンにも反応する(これを「経皮感作」と云います)ようになることがわかってきました。
 ですから、アトピーの赤ちゃんはスキンケアで皮膚バリアを保ち、生活環境からダニ・ホコリを減らす努力が必要です。
 喘息にアトピーがどれくらい合併するのか、その逆はどうなのか・・・西日本で調査されたデータを見つけましたので提示します;

小児気管支喘息患者におけるアレルギー疾患合併頻度

合併症 アレルギー疾患名
気管支喘息 アトピー性皮膚炎 アレルギー性鼻炎 アレルギー性結膜炎 花粉症
気管支喘息  ー 14.6%  16.9% 16.3% 14.2%
アトピー性皮膚炎  30.9% 26.2% 27.6%  27.3%
アレルギー性鼻炎 52.8% 38.8% 64.1%  87.8%
アレルギー性結膜炎  24.4% 19.5% 30.6% 72.2%
花粉症 12.5%  11.3% 24.6% 42.3% 

喘息は不治の病?

 喘息と宣告されたお母さんが一番心配になることは「治るかどうか」だと思います。その答えは・・・

・子どもの喘息の6〜7割は思春期までに治ります
・適切な治療で友達と同じように過ごせる場合がほとんどです
・治療が早く始まれば始まるほど有効です

 というわけで、「この子は喘息で一生苦しむことになる」と悲観する必要はありません。

一度治ったら、大人になってぶり返すことはないの?

 残念ながら一度治っても一部の患者さんは大人になって再燃することがあります。
 大人の喘息からみた比率は次のように報告されています:


備考
小児発症型 13.8 持ち越し型
成人歳発症型 6.9 一旦治って2年以上経過
思春期発症型 2.3  
成人発症型 56.0

喘息と風邪の微妙な関係

 「風邪が長引くと喘息になってしまう」と思いこんでいるお母さんを時々見かけます。でもその考え方は医学的に正しくありません。真実は、

×「風邪を繰り返すから、風邪が長引くから喘息になる」
○「風邪をひくと元々あった喘息が顔を出す」

です。また、風邪を引いたときの経過と喘息症状が出るタイミングは・・・

初期:くしゃみ&鼻水、コンコンと乾いた咳        
 ↓
中期:鼻水が減りネバネバの青っぱなになる          
 ↓
後期:痰がらみのゴホゴホという咳(喘息児はゼーゼー
 ↓
治癒

というのが一般的です。
 後期の「痰がらみ咳」が出る時期は少し気管支へ炎症が広がっており、気管支表面の粘膜細胞がはがれ落ちてアレルゲン(ダニ・ホコリなど)が侵入しやすくなるので喘息発作が起こりやすいと考えられています。

ゼーゼー ≠ 喘息

 喘息はゼーゼーする病気ですが、ゼーゼーする病気がすべて喘息とは限りません。
 一口に「ゼーゼーする」と云っても、実はいろいろなパターンがあります;

息を吐いたときにゼーゼー ・・・気管支の病気
息を吸うときにゼーゼー  ・・・咽頭・喉頭の病気
ヒューヒュー高い音    ・・・気管支が狭くなっている状態
ゼロゼロ低い音      ・・・痰が絡んでいる状態

などなど。
 喘息は気管支が狭くなって苦しくなる病気ですから「息を吐くときにヒューヒュー 高い音がする」(高張性喘鳴)のが基本です。

喘息が怪しい症状:乳幼児編

 乳幼児のゼーゼーの種類は以下の通り;

・生まれつきゼーゼーする病気:喉頭・気管軟化症血管輪 他
・カゼを引いたときのゼーゼー:細気管支炎(RSウイルス)喘息様気管支炎喉頭炎

 一方、喘息の発症は乳幼児期に多いことも事実です。

喘息の発症年齢のピークは1〜2歳で2歳までに60%、6歳までに90%が発症。

 つまり「乳幼児期はゼーゼーする病気が混在する時期」なのです。
 1回ゼーゼーしたからといって必ずしも喘息とは限りません。小児喘息診療ガイドラインには「乳児は3回ゼーゼーを繰り返したら喘息に準じた治療を考慮する」と記されています。

RSウイルスによる急性細気管支炎

 赤ちゃんがゼーゼーする最大の原因であるRSウイルスによる気道感染について説明します。
 毎年冬期に乳幼児に流行するイヤな風邪です。「○○ちゃんが入院した。RSウイルスだって・・・」とのうわさ話が飛び交うと不安になりますね。
 実は、RSウイルスは身近な風邪ウイルスで珍しい特別なものではありません。1歳までに70%、2歳までに90%以上の子どもが感染します。そして1回罹っても十分な免疫はできず、何回も罹ります。でも回数を重ねるごとに軽く済むようになり、3歳以降はふつうの風邪で済むことがほとんどです。
 要注意は最初に洗礼を受ける赤ちゃん! 赤ちゃんが感染すると約30%はゼーゼーする気管支炎にこじれてしまいます。細気管支(気管支が枝分かれした先の方)が炎症を起こしてむくんだり痰がたまったりして狭くなり呼吸が苦しくなります。特に生後3ヶ月までの乳児は重症化しやすく、痰が詰まって呼吸が苦しくなったり、息を止めてしまう無呼吸発作を起こすこともあります。その場合は入院治療が必要になります。
 また、お母さんがタバコを吸っていると増悪するリスクが上昇するというデータがあります。

「喘息様気管支炎」は喘息と違うの?

 風邪に伴いゼーゼーするけど、元気であまり苦しそうでない時につく病名です。
 「気管が弱いね」「喘息の気があるかな〜」と医者は言うことが多いですね。ゼーゼーしているけど、まだ喘息と確定診断するほどでもない、といったところでしょうか。
 その正体はほとんど「ウイルス性気管支炎」です。原因となるウイルスは、RS、ライノ、インフルエンザ、などなど。
 あれ、ここでもRSウイルスの名前が出てきましたね。RSウイルスはただの風邪で終わることもあるし、気管支炎・細気管支炎・喘息様気管支炎を起こすこともあるし、こじれて肺炎になることもあるのです。患児の体調・免疫状態により症状はさまざま。
 風邪の際、何回かゼーゼーしても呼吸が苦しそうでなければこのパターンであることが多く(近年、transient wheezer などと呼ばれることもあります)、将来「喘息」と診断される率は10〜20%と決して高くはありません。

喘息児の気管支では何が起きているの?

 喘息は「ゼーゼー苦しい発作をくり返す病気」です。
 気管支が狭くなるため苦しくなります。

気管支が狭くなる原因は以下の3つ:
① 気管支平滑筋のけいれん
② 粘膜のむくみ・腫れ
③ 痰の増加

 その昔(1990年以前)は「喘息は発作の時だけの病気」と考えられていました。治療も「発作を止めること」に終始していました。
 現在は発作の時だけの病気ではなく「発作時以外でも気管支の炎症がくすぶっていて過敏な状態が続いている」と考えられるようになりました。そして治療も「発作を止めること」だけではなく「症状がないときも発作を予防するための抗炎症治療を行う」という考え方に変わってきました。
 実際に発作のない時期の気管支組織を調べると、炎症細胞(好酸球、肥満細胞)の浸潤、基底膜肥厚、気管支平滑筋の肥大などの「炎症」が認められます。

気管支の形態と症状・治療

 喉につながっている「気管」が枝分かれをして「気管支」となり、それをさらに繰り返して(合計23回)「肺胞」という終着点にたどり着きます。
 枝分かれした気管支の直径が2mm未満になると「末梢気道」、それ以前を「中枢気道」と呼びます。大人ではおよそ6〜8分枝以降から末梢気道領域になります。容積は末梢気道:中枢気道=9:1で圧倒的に末梢気道の方が広いことになります。
 一般に中枢気道が狭くなると症状が出やすいのですが、末梢気道炎症は症状が出にくいとされています。つまり、症状が落ち着いているように見えても、あるいは自覚症状がほとんど無くても末梢気道炎症のくすぶりは続いている可能性があるのです。
 ではどのくらいの大きさの粒子がどのくらい深く気管支の末梢へ到達するのでしょうか。
 気道への薬剤送達には平均粒子径が2〜5μmが最適であり、末梢気道から肺実質への薬剤送達には平均粒子径0.8〜3.0μmの粒子径が最適と云われています。したがって、両方を満たす2〜3μmの粒子径の薬剤は中枢気道と末梢気道の両方に効果が期待できる理想的な薬剤となります。
 治療のところでも述べますが、吸入ステロイド薬は種類により粒子径が異なり、到達する末梢気道の領域も異なります。例えば、粒子径が大きいフルタイド(5.2μm)は主に中枢気道に作用し、粒子径が2.0〜2.6μmのパルミコート・タービュヘラー、アズマネックス・ツイストへラーは中枢気道及び末梢気道に作用し、粒子径が小さい超微粒子(1.1μm)のキュバール、オルベスコは主に末梢気道に作用します。その患者さんの気道炎症の程度・部位によって製剤を使い分けることも必要です。

アレルギーとは?

 小児喘息はアレルギーが主因(90%にダニのラスト抗体陽性)と言われています。
 この「アレルギー」について少し説明します。
 ヒトは体に何かが侵入してくると追い出そうとするシステムを持っています(防御反応)。 病原体(細菌・ウイルスなど)が侵入してくると、それに対応する抗体を作って対抗します。これを免疫反応と呼びます。生きていくために必要なシステムであり、全ての人が持っています。
しかし、病原体ではないダニ・ホコリ等が侵入してきても「敵」と誤認して排除しようとする反応が起きてしまうことがあります。これが「アレルギー」反応です。一部の人にしか起こらない病的反応であり、つまり

「アレルギーとは病的で過剰な防御反応」

と言えます。

「気管支の炎症」のイメージ

 「気管支が狭くなって苦しくなる」喘息発作はイメージしやすいのですが、「気管支に炎症がある」と言われてもイメージしにくいですね。こんな風に考えてみてください。

気道炎症 = 気管支に常に種火がついている状態
喘息発作 = 種火に油をそそぐと・・・一気に炎上する!

種火の大きさが喘息発作の起きやすさ、すなわち喘息の重症度と考えることもできます。

怪しい症状:年長児・学童編

 子どもが大きくなり「ゼーゼーして苦しいよ〜」と訴えられるようになると喘息の診断は比較的簡単ですが、最初に述べたように典型的な症状以外にも喘息を疑う怪しい症状はたくさんあります。

・はしゃぐ・走ると咳き込みやすい。
・煙(タバコ、花火、線香)で咳き込みやすい。
・冷たい空気(クーラー、冷凍食品売り場)を吸い込むと咳き込みやすい。
・笑い過ぎるとゼーゼー苦しくなる。

などなど。一言でいえば「とにかく咳が出やすい」こと。専門用語では「気道過敏性」と呼びます。また、軽い症状は本人が慣れてしまって訴えないことがあり要注意です。

ガイドライン「喘息の治療目標」からみた怪しい症状

 1990年代に「小児気管支喘息治療ガイドライン」が発表され数年に1回改訂されています。
 その中に「喘息の治療目標」が記してあります。その一部を抜粋します。

喘息の治療目標
・昼夜を通じて症状がない。
・スポーツも含め日常生活を普通に行うことができる。
・運動や冷気などにより発作が誘発されない。

ということは、
 秋になると朝方少しゼーゼーする・・・
 はしゃぐと咳き込む、走ると苦しくなる・・・
 スーパーの冷凍食品売り場に行くと咳が出る・・・
という症状は「たいしたことないから様子を見よう」ではなく治療対象と考えるべきなのです。喘息のイメージである「呼吸困難の発作」だけが治療対象ではありません。

医師が「喘息です」と診断する、その瞬間。

 ゼーゼーにはいろいろ種類があり、また喘息が疑われる怪しい症状のイメージができたでしょうか。
 このような症状・訴えをもとに医師は次のような情報を総合的に判断して診断に至ります。

所見;聴診にて高音のヒューヒュー音
視診:樽状胸郭、(湿疹)
検査所見:胸部レントゲン、血液検査、(呼吸機能検査)
抗喘息薬(特に気管支拡張剤の吸入)が有効

 ポイントは症状・所見と抗喘息薬への反応です(と私は考えています)。
 他の項目は判断しかねているときの補助的な情報です。

【治療編】

喘息治療の考え方

 喘息の病態のイメージをおさらいしましょう。

・気管支に常に種火(炎症)がくすぶっている。   
・種火に油(悪化因子)を注ぐと一気に炎上する(喘息発作) 。

と書きました。その対策として以下のことが考えられます。

・油を注がないようにする    →  悪化因子回避
・炎が燃え上がったら消火する  →  発作止め
・種火を小さく小さくしておく  →  予防治療

この3点が治療の三本柱になります。

喘息の治療 薬物療法

 ようやく薬の話にたどりつきました。
 喘息の薬は大きく2つに分けられます。

1.発作止め(気管支拡張剤);β刺激薬、テオフィリン製剤
2.予防薬(抗炎症薬);抗アレルギー薬吸入ステロイド

※ 予防薬であるステロイドと発作止めの気管支拡張薬を一緒にした吸入製剤もあります(商品名:アドエア、シムビコート)。

 軽症例では悪化したときに発作止め中心の治療をします。年に数回程度ならこれで十分ですね。
 慢性化して発作が頻繁に起こる場合は予防薬を考慮します。苦しくなってから治療するより、苦しくならないよう先手を打つのです。当然調子がよいときも欠かさず毎日使用します。かつ悪化時に発作止めを併用するのが一般的です。

幻の「抗アレルギー薬」
 1990年代は「抗アレルギー薬」全盛期でした。欧米では「抗ヒスタミン薬」に分類されている風邪薬(鼻水止め)が、日本ではアレルギーに効く薬として発売・使用されていました。
 アレルギーを専門分野として決めた頃の私は、これらの薬がアレルギー性鼻炎や花粉症には効くものの、喘息やアトピー性皮膚炎をよくする薬には思えませんでした。
 その後、2000年前後でしょうか。抗アレルギー薬の検証が始まり、「喘息には効かない」と報告されるようになりました。2011年現在、抗アレルギー薬はインタールと後に登場した抗ロイコトリエン薬を除いて喘息に使用されることは珍しくなりました(適応は残っています)。
 そしてとうとう、小児喘息診療ガイドライン2008年版は、予防薬としてインタールと抗ロイコトリエン薬のみの記載に変更されたのでした。

 では、どのくらいの頻度で発作が出る場合に予防すべきでしょうか。

一月に1回以上発作が出るときは予防治療を考慮。

 3ヶ月に1回しか発作が起こらないなら、その都度しっかり治療すればよいでしょう。ただし、そのたびに入院騒ぎするような大砲型は例外です。

内服と吸入、良いのはどっち?

 薬を使ったとき、気管支で薬効を発揮するまでの経路を示します。

内服薬:口 → 胃 → 小腸 → 肝臓 → 心臓 → 気管支

 あちこち寄り道しながらようやく気管支に辿り着きます。途中経由する内臓に負担がかかる(つまり副作用の可能性がある)のが欠点です。

吸入薬:口 → 気管支

 ダイレクトに気管支へ達するので、薬の量が少なくて済みます。すると他の内臓に負担がかかりにくく副作用が出にくい利点があります。ただ、乳幼児では吸入を上手くできないので不確実なのが欠点です。

 日本人は飲み薬が大好き。これは江戸時代まで行われていた日本の伝統医学「漢方」が飲み薬中心だった影響が残っているのかもしれません。
 吸入の方が有利であることをしつこく説明しても、さぼるのは内服よりも吸入の方が圧倒的に多いですね。

各薬剤について作用と副作用を教えてください。

【β-刺激薬】

(例)ベネトリン、メプチン、ホクナリン、スピロペント、セレベント
作用・効果:気管支平滑筋のけいれんを緩和、運動により誘発される気管支収縮を予防
副作用:頻脈、動悸、手の震え
剤型:内服・貼付剤(ホクナリンテープのみ)・吸入
 基本的に発作時のみ使用する薬であり、毎日長期間使用するのは重症例のみ。
 効果が現れる速さは、吸入(即効性)>内服(30分以上)>貼付薬(4-6時間)。
 副作用の発現率は内服>貼付>吸入です。
 幼児期に動悸や手の震えを訴えることはまれですが、小学校中学年あたりから内服薬で時々見かけるようになります。その場合は中止するか、貼付剤に変更したり、量を減らして使用します。

<注意> 内服と貼付を併用は避けるべし!
 内服薬(スピロペント、メプチンなど)と貼付薬(ホクナリンテープ、ツロブテロールテープ)は投与方法は違いますが、吸収経路は同じなので、併用すると倍量投与したのと同じ事になってしまいます。つまり副作用のリスクが増えるのです。これは「小児気管支喘息治療ガイドライン」にも記載されています。最近はジェネリック医薬品が多くてチェックしづらいのが難点です。

ホクナリンテープは「咳止めテープ」?
 風邪で咳がひどいときによく処方されるホクナリンテープは子どもを持つお母さんにはおなじみの薬です。元々は喘息の薬ですが、ゆっくり吸収され即効性はないので、呼吸困難発作を止めると云うより夜間〜朝方にかけてゼーゼーが少し出るときに使用します。あるいは、飲み薬ではドキドキしてしまう学童期にも穏やかな効き目を期待して使用することもあります。
 風邪の初期の咳には効きませんので、残っているテープをお母さんどうして融通しあったりしないよう、お願い致します。

【テオフィリン製剤】

(例)テオドール、テオロング、スロービッド、ユニフィル
作用・効果:気管支拡張作用と、低用量でわずかな抗炎症作用
副作用:悪心、嘔吐、軟便、不整脈、けいれん
剤型:内服のみ(類薬として点滴用ネオフィリン)
 よく効くのですが、有効域が狭い(少ないと無効、多すぎると副作用出現)ために血液中の濃度をチェックしながら使用する必要が出てきます。安定するまでは何回か通院していただき、量を調節するのがふつうでした。体調や併用薬剤によっても効き具合が変化します。高熱の時は体にたまりやすくなり血中濃度が上がるので半量に減らします。マクロライド系抗生物質と併用すると血中濃度が上がる傾向があるのでやはり減量します。
 不整脈とけいれんは過量投与で発生する重篤な副作用です。
 しかし過量でなくてもけいれんを誘発することが報告され「テオフィリン関連けいれん」と呼ばれています。また、一度けいれんが起きるとなかなか止まらないという性質もあります。このため、熱性けいれんの経験者には原則として使用しません。
 私が小児科医になった1980年代は喘息治療の主薬(主役)でした。日本でたくさん使用されたテオドールですが、欧米では不人気でした。その理由の一つに異なる医療事情が挙げられます。日本では医療機関へのアクセスがよく1ヶ月に1回通院もそれほど苦ではありませんが、欧米では数ヶ月に1回の通院がふつうだそうです。こまめな匙加減が必要な薬はなじまないのですね。

【抗アレルギー薬】

 喘息に有効と評価されている2つの薬について記します。

1.抗ロイコトリエン薬

(例)オノン(=プランルカスト)、 キプレス(=シングレア)
作用・効果:軽度の気管支拡張作用、咳の抑制、呼吸機能の改善、気道炎症・喘息増悪の軽減
副作用:特徴的なものはない(成人で使われるザフィルカストは高容量で肝障害が起こりやすい)。
 この薬は予防薬でありながら即効性もある(内服後数時間で呼吸機能改善効果)ので多用されています。以前使用されてきたテオフィリン薬に取って代わった感があります。
 登場した当時「よく効く患者(responder)は6割、それ以外は効かない」とされていましたが、最近は云われなくなりました。喘息に関与するひとつの物質をターゲットにしているので、その関与の強い弱いで効き目が異なるものと思われます。
 とくに以下の患者さんで有効度が高いとされています;
・鼻アレルギー合併例(鼻閉に有効)
・慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)合併例
・アスピリン喘息(下熱鎮痛薬で重症発作が誘発される例)
・運動誘発性喘息
・ウイルス感染増悪時(特に乳幼児)
・喫煙者
 小児喘息では「運動誘発性喘息」と「ウイルス感染増悪時」が多いので、私も処方する機会が多い薬です。

2.インタール

作用・効果:喘息発作予防(肥満細胞の膜安定化作用による)
副作用:ほとんどない
剤型:吸入(喘息用)、内服(食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎)
 1960年代にインタール吸入薬の登場した際、「喘息発作予防」「吸入薬」という点で画期的でした。1980年代の小児喘息の治療は「テオドール内服+インタール吸入」がスタンダードでした。
 しかし、吸入ステロイドの有効性が確立され普及すると、主役の座から去り、今はβ-刺激薬のベネトリンを吸入する際に併用される程度になりました。
 しかし、吸入ステロイドでコントロールできなかった患者さんにインタール吸入を試したら著効した、という報告例を時々アレルギー学会で耳にします。今でも積極的に使用されている医師もいます。
 また、インタールを定期吸入している患者さんは風邪を引きにくい、という現象は昔から有名です。

【吸入ステロイド薬】

(例)フルタイド、キュバール、パルミコート、オルベスコ、アズマネックス
 (別項で扱います)

予防治療が必要な理由

 「症状がないときもなぜ治療する必要があるの?」
 ・・・素朴な疑問です。

発作を起こす度に気管支の炎症が悪化・慢性化し次第に肺が硬くなって将来治りにくくなるのです(「リモデリング」と呼びます)。

 成人領域では「喘息=慢性進行性疾患」と捉えられています。
 一度硬くなった肺は元に戻りません。そのためには軽い発作でもできるだけ起こさない努力が必要です。

「その場しのぎの発作止め」だけで治療していませんか? 放っておくと大変なことになりますよ・・・(某TV番組風)

予防治療はいつまで続けるの?

 喘息の予防治療を始めると調子が良くなり、発作から解放されます。
 そこで次の疑問が生まれます。
「この治療、いつまで続けるんだろう?」
「症状が出なくなってから・・・3ヶ月? 6ヶ月? それとも1年?」
 大人では3ヶ月単位で治療を検討します。

3ヶ月ずっと調子が良かったら薬を減らしましょう

 となります。
 子どもでも基本は同じですが、季節性も考慮しながら薬を調節します。
 私は運動誘発性喘息の有無を重視して薬を管理しています。つまり「運動しても咳・ゼーゼーが出なくなったら薬を減らしてみましょう」と言うことが多いですね。幼児では「はしゃぐと咳き込む?」と尋ねます。大丈夫だったら「薬を減らしてみましょうか」と。

風邪を引いたときはいつもの喘息薬は続ける?それともやめる?

 続けるのが基本です。

薬が減らせなくて心配・・・

 予防治療を始めて調子が良くなった、でも減らすとすぐに悪化してしまう。ずっと治療を続けなければならないのかな?
 という患者さんは基本中のキホンである「悪化因子回避」を再確認しましょう!

吸入手技の再確認を!
ダニ対策は十分ですか?
ペットを成り行きで飼っていませんか?
□ 家族でタバコを吸うヒトはいませんか?

 タバコは喫煙者であれ、受動喫煙であれ、吸入ステロイドを効きにくくすると報告されています。

【生活指導編】

喘息の悪化因子

 まずは敵を知ることが必要です。喘息の原因となるアレルゲンは、

ダニ、ホコリ、カビ、ペット、花粉など

 血液検査で調べることが可能で、各喘息患者さんで反応するアレルゲンの種類は異なります。
 ただ、小児喘息患者さんの9割はダニに陽性ですので、まず反応すると考えて間違いありません。ここでいうダニとは、ヒトを刺すダニではなく、肉眼で見えるか見えないか程度(0.3mm)の大きさのチリダニです。それも生きている間は問題なく、死骸や糞がアレルゲンとなります。
 一方、咳の出やすい過敏な気管支(気道過敏性)を刺激する悪化因子として、

煙(タバコ、花火、線香)、大気汚染、強い臭い

気温・気圧の変化
疲れ、ストレス

などがあります。こちらは全ての喘息患者さんが反応します。
 これらを避ける生活をすれば、喘息発作は起きにくくなります。アレルギー疾患治療の基本です。

受動喫煙により増える子どもの病気

 中でも、タバコの煙は重要な悪化因子です。
 タバコを吸うことにより周囲に発生させるタバコの煙(副流煙)は、タバコを吸っている本人が吸い込む煙より高温で産生されるために毒性が強く、特に気道粘膜を指摘することがわかっています。
 お母さん、お父さんが子どもの前でタバコを吸うと、以下のような悪影響を子どもは受けることになります。

・肺炎、気管支炎のリスクが約2倍
・慢性呼吸器症状のリスクが1.4倍
・中耳炎を起こすリスクが1.5倍(意外ですね)
気管支喘息になるリスクが約2倍、気管支喘息悪化のリスクが1.8倍

 受動喫煙により子どもの喘息が悪化して薬がどんどん強くなっていくことがあります。ダニ・ホコリはがんばって掃除してもゼロにはできませんが、タバコの煙はゼロにできます。家族の協力をお願いします。
 例えば、生活習慣病対策でお父さんがタバコを止めると、頑固だった子どもの喘息発作が無くなることがあります。
 また、大人でタバコを吸っている患者さんには抗喘息薬が効かないそうです。

室内環境汚染

 喘息の原因として大気汚染がクローズアップされた時代がありました(四日市喘息など)。
 現在は家の中に悪化因子が多く存在することが判明し、「室内環境汚染」などと呼ばれるようになりました。かつての日本家屋は冬はすきま風が入ってきて寒く、夏に増えたダニも秋冬には死んでいました。近年増えてきた高気密性住宅の普及でダニ/カビが1年中繁殖するようになったことがダニアレルギー増加の大きな要因とされています。
 主なアレルゲンを列挙します:

ダニ・ホコリ:寝具、絨毯/カーペット、カーテン
二酸化窒素の増加:暖房器具から発生   
ペット:ネコ、イヌ、ハムスター:ペットの毛やフケはダニのえさ → 二重悪!
タバコ(発症&発作の原因)
カビ:湿気のたまりやすい所(洗面所・風呂場・台所)、 観葉植物

室内環境汚染対策

ダニ・ホコリ対策

・ジュータン・カーペットは置かない(少なくとも子どもの居住スペースには)。

 畳の上にカーペットを敷き詰めるとダニが大量発生して最悪。さらに家の中で犬やネコを飼うと、ダニのエサになる動物の毛やフケが絨毯についてさらに増えてしまいます。
 リフォームの機会があれば、床を板張りにするか、リノリューム張りにすることをオススメします。

・寝具はまめに掃除。そば殻枕・羽毛布団は避ける。

 枕は袋状の枕カバーにタオルケットを詰め込んで枕がわりとし、週に1回選択するのが清潔でオススメです。
 また、寝具全体を微細構造の繊維(ミクロガードなど)のカバーで覆うのも選択枝の一つですが、安くはありません。同素材で作られたぬいぐるみもあります。
<参考HP> 防ダニ布団の徹底比較

・布製のソファーは避ける。合皮は可。
・カーテンは短めで薄手の選択しやすいものを。
・冷暖房は喚起できるエアコンで。

 エアコンのフィルターは最低1ヶ月に1回は水洗いをしてよく乾燥させましょう。

・本棚はガラス戸付きで壁から離して設置
・電気はできれば天井据付型を

 お部屋掃除のポイントは、ホウキや掃除機を使うとホコリが舞い上がってしまいますので、その前にまず拭き掃除をした方が効果的です。掃除機はフィルター付きで二重になっているものがお勧めです。

・ぬいぐるみは洗濯できるものを

 高密度繊維でダニを通さない材質のぬいぐるみもあるようです。

 一番ダニ・ホコリが多い布団掃除のポイント;

・週に1回、表と裏の両面に掃除機をかける
・ローラー式ノズル(家電量販店やホームセンターで3000円前後で販売されてます)を使用
・ふとんの両面1㎡ 当たり20〜30秒間掃除機をかける(ふだんの感覚の2〜3倍が目安)
・掃除機の吹き出し口は窓の外に向けてホコリを舞い上げないようにする
・掃除機をかけている間は窓を開ける

※ 年に1回の大掃除は年末よりも梅雨明け頃がダニ対策としては最適です(年2回やればいい?)。

カビ対策

・通気・乾燥を心がける。
・入浴後は浴室の壁面やバスタブに冷水シャワーをかけて温度を下げる、早めに水分を拭き取る。
・カビが生えてしまったら市販の次亜塩素酸塩・水酸化ナトリウム製剤(カビキラーなど)を使用、ただし喘息患者は塩素ガス吸入により発作が誘発されるので、家族の誰かにやってもらう。

「ペットを飼いたい」と子どもがせがむんですが・・・

 アレルギー体質のある子どもの家庭に毛の生えている動物を飼うのは基本的に避けるべきです。
 ペットの毛、ふけ、唾液などがアレルゲンとして喘息発作を誘発します。とくにネコやハムスターは強い症状を起こす傾向があります。
 また、アレルゲン検査で「ネコは陽性、イヌは陰性」でも、「イヌを飼ってよい」と考えてはいけません。ずっと一緒にいると反応するようになるのが「アレルギー体質」の正体です。
 例えば、一時期流行したハムスター。飼い始めてしばらくは無症状ですが、半年程度立った頃から「家に帰ると咳が出やすい、息苦しい感じがある」から始まって、ハムスターに嚙まれたらアナフィラキシー・ショックを起こした、との報告は記憶に新しいところです。
 さらに、動物の毛、ふけはダニのエサになるので、ダニが集まってきて喘息児にとって二重悪。
 動物を飼うなら、毛の生えていないタイプ(金魚、亀、カエル、ヘビ・・・)がお勧めです。

逆説的な「衛生仮説

 近年のアレルギー疾患の増加は感染症に罹る機会が減ったためであるという学説を1989年にStrachanという人が提唱しました。また、結核の罹患率が高い国ほど喘息の発症率が低い傾向があり、ツベルクリン反応陽性者は陰性者に比べて血清IgE値や喘息の有病率が低いことから、結核菌への暴露がアレルギー性疾患発症を抑制するとの考え方も出てきました。さらに、都会生活者に比べ農村で小児期を過ごした者にアレルギー疾患が少ないのは、家畜と接触する機会や生の牛乳を飲むことで微生物やその成分に暴露されることが関与しているとの報告もあります。
 このように、年少期の感染症罹患や病原体成分への暴露がその後のアレルギー疾患発症を抑制するという報告が相次ぎました。
 しかし一方で、細菌毒素(エンドトキシン)暴露は喘息の発症を増加させ、気道過敏性の亢進、肺機能低下の危険因子になるとの報告、年少期の下気道感染症やRSウイルスによる細気管支炎、百日咳感染は喘息発症の危険因子になるとの報告もあります。
 というわけで、まだ定説には至らず、「アレルギー発症予防には衛生状態を悪化させるとよい」とまで云えない状況です。おそらく、患者側の遺伝的背景や、病原体の種類など細かい検討がなされてから真実が判明することと思われます。

学校生活での悪化因子

 子どもの生活環境を考える上で、学校は欠かすことができません。
 そこにもいろいろな悪化因子が存在します。

・体育などの運動(運動誘発性喘息)
  喘息児は長い時間息づかいが荒くなる運動が苦手です
  食物依存性運動誘発性アナフィラキシー(※)に注意
・理科の実験 ・・・強い臭いのする実験
掃除のホコリ ・・・マスク着用や係変更を
動物飼育係 ・・・ウサギ等有毛動物に注意

食物依存性運動誘発性アナフィラキシー

 ある特定の食材を食べ、その後に運動したときに重症喘息発作やショックを起こす病気です。
 不思議なことに、食べただけでは症状は出ません。運動しただけでは症状は出ません。
 「特定の食材」は小麦、甲殻類(エビ、カニ)であることが多いようです。
 実際には「給食で上記食材を食べた後、5時間目の体育でひどい喘息発作を起こした」などのパターンがありますね。

持久走大会は参加できる?

 喘息は心臓病や腎臓病と違って毎日状態が変わるので、事前の評価(参加可能かどうか)は困難です。
 検診の時に大丈夫でも当日ゼーゼーすることはあり得ますし、逆に検診時にゼーゼーしていても治療によりコントロールされれば問題ありません。

基本的に調子が良ければ持久走に参加可能。

 でも安全に参加するにはいろいろ準備が必要です。
 調子がよければまず練習に参加させ、症状が出るかどうか観察します。明らかに咳き込みやすい、あるいは呼吸が苦しくなる場合は治療が必要ですので主治医に相談してください。

 練習では発作は起きなかった・・・いざ本番! 
 と、その前に確認しておきたいことがあります。

「苦しくなったら無理しないで途中棄権OKという環境を確保すべし」

 苦しくなっても休めない状況では強い発作を誘発するので危険です。「がんばれば喘息は克服できる」という根性論は危険です。
 学校側と事前に相談し確認しておきましょう。

 ここまで準備すれば喘息児も安心して参加可能と思われます。もし、マラソン本番中に苦しくなったら残念ですが無理しないで歩いてゴールを目指すか途中棄権してください。軽い発作なら安静だけで10〜20分後には回復します。

宿泊旅行対策

 事前に主治医と相談しましょう。
 特に下記ポイントをチェックしてください。

・治療内容の確認(必要ならふだんよりワンランク治療を強化して乗り切る)
・枕投げ、布団蒸しは厳禁!(始まったら別の場所へ避難)
・布団のダニ対策は? ソバ殻枕は?
・ネコアレルギーのある場合は宿泊先でネコを飼っていないか事前に確認
・ハイキングには電源のいらない携帯用発作止め(メプチンエアーなど)を予め用意

喘息児と手術(全身麻酔)

 喘息罹患児の特徴の一つに気道過敏性(気管支がいろいろな刺激に反応して収縮しやすい傾向)があります。全身麻酔の際にはまさにその気道にチューブを挿入して人口呼吸を行うわけですから、大変強い刺激となり、喘息発作(気管支けいれん)を起こすリスクが高いとされています。
 このため、喘息発作がコントロールされている状態で手術に望むことが望ましいとされ、従来は十分な無発作期間(中発作:2〜3ヶ月間、大発作:3ヶ月以上)を開けてきました。
 近年は吸入ステロイドが導入されている例では2週間以上の無発作期間を空けることが推奨されています。

【喘息児と予防接種】

(「小児アレルギー疾患総合ガイドライン2011」協和企画より)

★ アレルギー体質(喘息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性鼻炎・蕁麻疹等)と云われているだけでは接種不適当者にはなりません。
 接種しようとするワクチンの成分に対してアレルギー反応が起こる可能性がある場合は接種用注意者となります。

ワクチン添加物とアレルギー接種液成分

ゼラチン(安定剤):国内の現行ワクチンでゼラチンを含んでいるのはポリオ・ワクチンのみであり、含有量は極めて微量(0.00375mg以下/回)となっています。
チメロサール(防腐剤):不活化ワクチンのチメロサールは除去あるいは従来の約1/10以下に減量されるか、代替品となっています。
卵成分(培養成分):インフルエンザワクチン中の卵白アルブミンは、メーカーにより多少含有量が異なりますが、理論的にはアレルギーは惹起しないと考えられている数ng/mL程度になっています。
抗菌薬

喘息児と主なワクチン

インフルエンザワクチン(鶏卵を用いた従来の製法による国産ワクチンの場合):医学的に卵アレルギーと診断され、卵完全除去中の児、接種後に重篤なアナフィラキシーを起こした児、コントロール不良の重症喘息児の場合は接種方法を専門医に相談します。
麻疹・風疹混合(MR)ワクチン:麻疹ワクチンはニワトリ胎児線維芽細胞を用いた組織培養由来で、卵白と交差反応を示す蛋白質は、有意な量は含まれていません。

【新しい薬】

アドエア

種類:吸入ステロイド+長時間作用型β-刺激剤の混合剤(DPI)
一般名:フルチカゾン(FP)+サルメテロール(SALM)→SFC
発売年:2007年成人、小児適応(5歳以上)は2009年
概要:長時間作用型β-刺激薬であるサルメテロール(SALM)と吸入ステロイドのプロピオン酸フルチカゾン(FP)の合剤。吸入ステロイドは通常量では副作用の心配が無く安全な薬ですが、高用量となると全身性副作用が無視できなくなり、また効果も頭打ちになります。大量の吸入ステロイド単独療法よりも、一定量の吸入ステロイドに気管支拡張薬であるβ-刺激薬を併用した方が治療成績がよいという報告が相次ぎ、相乗効果&副作用回避目的でこのような合剤が開発されました。SFCはFP2倍量と同等以上の効果が認められます。
 気管支拡張薬(つまり発作止め)が入っているので使用するたびに効果が実感できるのも特徴の一つです。
 実際に使用してみると、従来のフルチカゾン単独薬(フルタイド)より効果が優れ、なにより「サボる率が減る」という眼に見えない効果が注目されます。吸入ステロイドは「調子悪くないときもずっと続ける」というモチベーションが保ちにくいのですが、アドエアはこの点が一部解決されたといえます。

※ アメリカではこの薬の売り上げが全薬剤の中で第2位です(2007年)。

シムビコート

種類:吸入ステロイド+長時間作用型β-刺激薬の混合剤
一般名:ブデソニド+ホルモテロール
発売年:2006年(アメリカ)、2010年(日本) ・・・小児は未承認
概要:本剤に含まれるホルモテロールはアドエアに含まれるサルメテロールよりも速く効果が発現するお出、喘息発作時にメプチンなどの短時間作用製β-刺激薬(SABA)よりもシムビコートを使用する方が有効であるという報告(SMART試験)も存在します。

オルベスコ(CIC-HFA)

種類:吸入ステロイド(pMDI)
一般名:シクレソニド
発売年:2006年(日本)、2011年(小児適応追加:6-15歳)
概要プロドラッグという新しいタイプの薬です。そのままの状態では薬理活性を持たず、吸入後、肺組織でエステラーゼという酵素による加水分解を受け、デスイソブチル・シクレソニド(des-CIC)に代謝され、これが効果を示します。des-CICは高いステロイド受容体親和性を有し、高い抗炎症効果を示します。また脂溶性が高いため、長時間肺組織にとどまり抗炎症効果が持続するため1日1回吸入で済むことも特徴です。プロドラッグであるため、局所の副作用が生じにくく、さらにHFA定量噴霧式吸入方法により粒子径が小さく、末梢気道への効果を期待できます。

アズマネックス(MF-DPI)

種類:吸入ステロイド(DPI)
一般名:フランカルボン酸モメタゾン mometasone、MF
発売年:2005年(アメリカ、4歳以上の小児には2008年)、2009年(日本)
概要:平均粒子2μmとパウダーでは最も小さく能肺への送達率は約40%と高く、吸気流速が20L/分以上であれば約90%は吸入可能です。グルココルチコイド受容体に対する親和性も高く、デキサメサゾンの薬12〜30倍、ブデソニドの約5倍、フルチカゾンの約1.5倍であり、1日1回吸入で十分な効果が期待できます(しかし日本での承認は「1日2回吸入」)。さらに吸入時の生物学的利用率(バイオアベーラビリティ)は1〜5%と血中移行性が最も低く、血漿タンパク結合率が99%と高いことから全身副作用が少ないと予想されます。
 MF-DPIの吸入デバイスはツイストへラーと呼ばれるもので、ふたを外すと同時に一定量の薬剤が充填される簡便な仕組みになっています。ドーズカウンターの数字が縦読みながら大きくて見やすく、数字が”0”になるとキャップが回らなくなるロックアウト機構も備えています。
 以上より、この薬剤は若年者や高齢者の吸気速度が遅い患者においても、中枢気道から末梢気道までの十分な吸入分布とそれによる効果発現が期待できます。まとめますと、

アズマネックス・ツイストへラーの利点
・吸入器の取り扱いが簡単
・低い吸入速度でも十分な量を吸入可能
・強力な抗炎症作用と低い全身性副作用

ゾレア

種類:抗IgE抗体
一般名:オマリズマブ(omalizumab)
発売年:2003年(アメリカ)、2005年(ヨーロッパ)、2009年(日本)
作用・効果:血液中の遊離IgE抗体に結合することにより、IgEが未満細胞・好塩基球などのアレルギー炎症細胞への結合を阻害し、その結果ヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症性メディエーターの放出を抑制して1型アレルギー反応の成立を抑えることにより喘息症状を軽減する。
剤型:注射薬(2〜4週間に1〜2本使用)
副作用
適応:難治性喘息
 小児適応がありませんので私はまだ使用経験がないのですが、難治性喘息にもよく効くと報告されています。特にIgEが高い喘息群により有効とのこと。ただし、1バイアル7万円の高価な注射薬です。

★ 吸入ステロイド療法について

 喘息は気管支の病気であり、飲み薬で遠回りせずとも直接くすりを投与可能です。内服薬の数十分の一の量で効くのですから、副作用対策にもなります。つまり「効果と副作用の点で飲み薬より有利」なのです。
 しかし、日本人は吸入治療が苦手というか、嫌いというか・・・ついおっくうになりサボりがち。さらに飲み薬と違って上手に吸入しなければ効果半減。
 正しい吸入方法を理解・体得できるよう練習・訓練が必要です。

ステロイドの副作用が心配です

 ステロイドと聞くとドキッとしますね。でも皆さんが心配しているステロイドの副作用(易感染性、糖尿病、骨粗鬆症、成長障害、副腎機能低下など)は全身投与(飲み薬や注射薬)で起こるものです。
 副作用の怖さばかりが取り上げられがちなステロイドですが、その登場は1948年、アメリカのメイヨクリニックで関節リウマチ患者に投与したのが始まりです。それ以来、治療法がなかったさまざまな病気に用いられて絶大な効果が発揮され”夢の薬”と評価されました。しかし、経験が蓄積されるにつれて、副作用も無視できないことが判明し、臨床効果と副作用が紙一重の「諸刃の剣」と認識されるようになりました。それから約半世紀、より効果が強くより副作用が少ないステロイド薬が開発され、投与方法が検討されて現在に至ります。
 気道へ直接薬剤を投与する「吸入療法」はそのひとつです。吸入では全身投与の数十分の一の量で効果を発揮するので、全身への影響は少なく、つまり副作用も出にくい優れた方法なのです。
 内服薬・注射薬の単位は「mg(ミリグラム)」、一方吸入薬は「μg(マイクログラム)」であり、これはmgの千分の一と微量です。
 通常量の吸入ステロイドでは、全身性の副作用は無視して良いレベルです。

吸入ステロイドの副作用の目安 ーバイオアベーラビリティと親油性ー

 気道内に沈着した吸入ステロイド薬は局所で抗炎症効果を発揮しますが、代謝を受けずに肺循環から全身に吸収されます。全身循環中に移行した活性型薬剤の量(バイオアベーラビリティ、bioavailability)が多いほど全身性副作用の発現リスクは高くなります。
 また、親油性であれば細胞内へ入りやすいので作用時間が延長しますが、肺外の細胞へも蓄積するので安全面への配慮が必要となります。親油性は「CIC>FP>BDP>BUD」です。
 理想的な吸入ステロイド薬としては、肺への沈着率が高く、肺局所での滞留時間が長いにもかかわらず、全身性のバイオアベーラビリティは低く、速やかに体外へ排泄されることが望まれます。

 というわけで、全身性の副作用は通常量では心配ありませんが、局所の副作用は一定頻度で発生します。主なものは次の通り;

<吸入ステロイド薬の局所性副作用>

① 咽頭刺激感、咳嗽、咽頭痛
② 嗄声
③ 口腔・咽頭・食道カンジダ症
④ 気道感染、気道感染の増悪

①が気になるときは製剤変更、吸入補助器具(スペーサー)の使用で回避可能です。
②も対策は①同様。うがいでは防止できません。出現頻度はDPI(とくにFP-DH、FP-DK)>pMDI。用量依存性であり、高齢者で頻度が高くなります。
③は吸入後の「うがい」が不十分な例や何らかの理由で抗生物質使用例に見られる傾向があります。
④は局所の免疫能を抑えるために心配になりますが、喘息の良好なコントロールにより気道クリアランスが改善するためむしろ気道感染のリスクは減少すると云われています。
※ 気になるニオイ;無水エタノールが添加されているBDP-HFA、CIC-HFAはアルコール臭を嫌う患者さんがいます。FP-HFA、SFC-HFAではフロン臭が気になる患者さんも一部いますが、ほとんど使っているうちに慣れるので問題になりません。

どんな薬がありますか?

 吸入ステロイドはたくさん種類があります。薬剤の形態から大きく「粉」「霧」「懸濁液」の三つに分けられます。

「粉」(ドライパウダー型:DPI:フルタイドディスカス、パルミコート、アズマネックス
「霧」(定量噴霧型:pMDI:フルタイドエアー、キュバール、オルベスコ
「懸濁液」(SUS:パルミコート吸入懸濁液

注)略語説明:DPI(Dry Power Inhaler)、pMDI(pressurized Metered Dose Inhaler)

 薬剤名から整理すると:


pMDI DPI susupension
BDP

BDP-HFA

なし なし
FP

FP-HFA

FP-DPI

なし
BUD なし

BUD-DPI

BUD-SUS

CIC

CIC-HFA

なし なし

注)略語説明;
 BDP-HFA(キュバール・エアゾール)、FP-HFA(フルタイド・エアー)、FP-DPI(フルタイド・ディスカス、フルタイド・ディスクへラー)、BUD-DPI(パルミコート・タービュヘラー)、BUD-SUS(パルミコート吸入懸濁液)、CIC-HFA(オルベスコ・ツイストへラー)

吸入ステロイド薬の開発の歴史

 1970年代に使われはじめ、日本では当初特定フロン(CFC)を用いたベクロメタゾン(BDP)という薬が長らく使われてきましたが、地球温暖化への影響を考慮してCFCの使用は中止されました。フロンは構造式の中にClを含み、これがオゾン層を破壊しオゾンホールを拡大するため、1987年決議のモントリオール議定書に基づき、代替品としてHFAがClを含まない噴射剤として開発され、フロンを使用した吸入剤は2005年以降は主要先進国において使用禁止となりました。そのHFAを用いた加圧式定量噴霧式吸入(pMDI)であるBDP、フルチカゾン(FP)などが登場しました。
 しかしHFAの弱点が見つかりました。フロンガスのようなオゾン層の破壊はしませんが、地球温暖化に及ぼす影響は二酸化炭素の1300倍も高いことが判明したのです。今後さらに地球に優しい基剤の開発が望まれます。
 他にも定量ドライパウダー式吸入(DPI)であるFP、ネブライザー吸入様懸濁液であるブデソニド(BUD)も開発されました。
 キュバールは特徴のある吸入剤です。元々の粒子径は3.5μmの懸濁液なのですが、溶剤として無水エタノールを使用した結果、溶液にすることが可能となり、粒子径1.1μmと非常に小さくすることに成功しました。
 近年、プロドラッグであるシクレソニド(CIC、商品名:オルベスコ)、FPと長時間作用性β-刺激薬であるキシナホ酸サルメテロールの合剤(SFC、商品名:アドエア)も登場し、選択肢が増えました。

どのように使い分けるのですか?

 いろんな要素を考慮してその患者さんに最適の製剤を選択します。
 まず、薬の種類を選ぶ際には、粒子径、効力(抗炎症作用)、肺沈着率を。
 そして同じ薬でも吸入器具デバイス)により、年齢、簡便性/操作性、吸気流速、局所的副作用、臭い/味、携帯性、残量の確認しやすさ、など。
 上記を考慮し、小児では下表のように選択するのが一般的です;

年齢 望ましい器具 その他の選択枝
4歳未満

pMDI

マスク付きスペーサー

フェースマスク付き

ネブライザー

4〜6歳

pMDI

マウスピース付きスペーサー

フェースマスク付き

ネブライザー

6歳以上

DPI

or 吸気同調型定量噴霧吸入器

or スペーサー付きpMDI

マウスピース付き

ネブライザー


注)pMDI:加圧式定量噴霧吸入器
  DPI:ドライパウダー吸入器

吸入ステロイド剤の粒子径と肺沈着率

 吸入薬の効果はいかに肺の奥まで到達できるかによって決まります。最も大きい粒子径はフルタイドディスクへラーの5.4μmで、この大きさでは肺の奥の細気管支までは届きません。しかしフルチカゾンのガス製剤であるフルタイドエアーやパルミコートタービュヘラーは細気管支に到達し、さらにキュバールやオルベスコはさらに細い呼吸細気管支まで届きます。
 喘息治療に望ましい粒子径は1〜5μmが最適と考えられています。これより小さい粒子(<1μm)は肺胞マクロファージに貪食され、大きい粒子(>5μm)は中枢気道で粘液線毛系により排除されてしまいます。
 吸入製剤の違いやスペーサーの違いによっても粒子径・到達度が異なります。
 BDPの場合、懸濁液であったCFC製剤に比べ水溶液となったHFA製剤では微粒子の割合が増加して肺沈着量が飛躍的に増加しました。
 また、FPのCFC-MDIをスペーサーを用いて吸入した場合、粒子径の比較的大きいDPI製剤を吸入したのに比べ配当竜猟は4.3倍だったと報告されています。

製 品 種類 略称

粒子径

(μm)

肺沈着率

(%)

フルタイド

ディスカス

DPI FP-DK 5.2 15-17

アドエア

ディスカス

DPI SFC-DK 4.4 15-17

フルタイド

エアー

pMDI

FP-HFA

3.1

29

アドエア

エアー

pMDI SFC-HFA 3.1 30

パルミコート

タービュヘラー

DPI BUD 2.6 38

アズマネックス

ツイストへラー

DPI MF 2.0 40

キュバール

エアゾール

pMDI BDP-HFA 1.1 51

オルベスコ

インヘラー

pMDI CIC-HFA 1.1 52

※ 妊婦・授乳婦に優しいパルミコート

 アメリカのFDAが妊婦にも安全(妊娠経過に影響なし、胎児の成長に影響を与えない)と認めた吸入ステロイド薬はパルミコートのみです。なお、フルタイド、セレベント、アドエアは授乳婦への使用が禁止されていますので注意が必要です。

喘息の進行度とステロイド吸入剤の選択

 喘息における気道炎症は太い気管支(中枢気道)から始まり、診断されてからの期間の長さとともに細い気管支(末梢気管支)へ拡大すると考えられています。このことから、発病初期は太い気道をねらった製剤(フルタイドディスカスなど)、喘息が進行した段階では細い気管支をねらった製剤(キュバール、オルベスコなど)を選択すると治療効果が上がる傾向があります。

乳幼児でも吸入できますか?

 年齢に合わせて適当な剤型・吸入法を選べば可能です。子どもで問題なのは、
噴霧に同調できない
吸入力が弱い
マウスピースを加えられない
 こと。これらを考慮し、第一選択は以下のようになります;

乳児期:①&②&③ → pMDI(加圧式定量噴霧式吸入器)+マスク型スペーサー
幼児期:①&②   → pMDI(加圧式定量噴霧式吸入器)+マウスピース型スペーサー
学童期以降:ー   → DPI

※ ネブライザー(電動吸入器)で吸入するパルミコートは乳児期(生後6ヶ月)から全年齢で使用可能です(2010年に成人にも認可されました)。
 実際の吸入方法は次項へ。

吸入のコツを教えてください。

 いろんな吸入薬にそれぞれ製薬会社が用意した説明書・パンフレットがありますが、その表現が微妙に異なり混乱の元。以下にポイントを記します;

フルタイド・アドエアなどのDPI(小学生以上)
・軽く息を吐いてから吸入器をくわえ、口から大きく深く息を吸い込み(※1)、
・吸入器を口から離し、そのまま最低3秒間(※2)息を止めます。
・口や喉に残った薬を洗い流すために3回うがい(※3)をしましょう。

※1)適切な吸入速度について
 吸入速度が遅すぎると薬の粒子が気管支の末梢まで届きません。しかし、早すぎても乱流が生じて気管支へいく前に口喉の壁にくっついてしまい効率が落ちます。ストローでジュースを吸って飲む程度の吸気速度(60〜100L/分)が適切です。
※2)息どめの時間
 大人では5秒以上(海外では10秒)が標準です。幼児は3秒くらいが限界でしょう。
※3)うがいの回数と副作用の頻度
 FP(フルタイド)吸入後のうがいによる口腔カンジダ症や嗄声などの副作用防止率は、1回:76%、2回:90%、3回:95%、4回:98%と報告されています。

キュバールなどのpMDI(乳幼児)
・吸入補助器具(スペーサー)を取り付けます。乳幼児はマスク付き、幼児はマウスピース付きを選択。
・顔の前に吸入薬を持ち口をつけ、1回プッシュしたのち呼吸を5回以上(できれば10回)します。
・吸入後うがいをするか、できない年齢なら水分を飲ませて喉についた薬を洗い流します。
・定期的にスペーサーを水洗いしましょう。布で拭くと静電気が発生して次の吸入の時に効率が落ちるので自然乾燥が基本です。

※ pMDIのFP-HFA、BDP-HFA、CIC-HFAにはドーズカウンターがついておらず、正確に残量を知ることができません。しかし試し噴射ができるように容器に記載されている使用回数よりも多く噴射されるようになっているので、吸入したつもりでも薬液は含まれず喘息の調子が悪くなると云う現象が起こりえますので、そのことを患者さんに説明しておく必要があります。

パルミコート吸入液(乳児〜)
・ネブライザーに吸入液を入れて、マウスピースをくわえさせ(あるいはマスクを密着させ)、スイッチオン。
・薬がなかなか減らない場合は唾液が戻ってしまう可能性があります。5分間を目安に終了して結構です。
・泣いていると効果が半減しますので、機嫌のよいときが吸入のタイミングです。どうしても嫌がるときは寝ているときに口元に流すのも一つの方法です。

※ パルミコート吸入液は当初乳幼児用(6ヶ月以上5歳未満)として2006年に認可されました。しかし、5歳以上でも使用したい患者さんの声や、高齢者で携帯用吸入器を使いこなせない患者さん達の声が届き、2010年秋に5歳以上の小児〜大人でも使えるようになりました。

吸入補助器具(スペーサー)って何?

 pMDI吸入の際、子どもでは吸入補助器具(以下スペーサー)を用いるのが基本です。スペーサーとは、吸入器具に取り付けて噴霧した薬剤をためる空間をつくるプラスチック(またはビニール)製の器具を云います。
 薬液噴霧と吸気を同調させなくても済むので乳幼児にも使えるようにしてくれるすぐれもの。また、スペーサーを用いることにより大きい粒子を取り除いて副作用を予防する効果もあります。
(製品名)エアロチャンバーなど。

※ 数年前までは製薬会社が各吸入剤専用のスペーサーを用意していたのですが、現在は無償提供されなくなり、数千円で購入することになります。

 使用上の注意点は、

・1回の吸入には1噴霧だけ
・薬剤噴霧後、2秒以内に吸入
・プラスチック製スペーサーをこすらない(静電気対策)
・洗浄後(※)は自然乾燥が望ましい(静電気対策)
・体格/年齢に相応したサイズを使用

スペーサーの洗浄

 週に1回は洗いましょう。水かぬるま湯で洗い、石けんや洗剤はコーティングが取れてしまうので使用しないでください。乾燥機を使うと高温で変形する可能性がありますので避けてください。布やティッシュで拭くと静電気を帯びて噴霧した薬剤がかべにくっつき効率が落ちるので避けてください。原則は自然乾燥です。

<喘息関連記事拾い読み>

 目にとまった記事を拾い読みしました。

■ 環境中アレルゲンモニタリングと気管支喘息における環境整備の効果(第54回日本アレルギー学会総会)

西岡アレルギークリニック 西岡 謙二〔にしおか けんじ)

 気管支喘息、アトピー性皮膚炎、通年性アレルギー性鼻炎、花粉症、食物アレルギーといったアレルギー疾患は、それぞれの疾患に対して主要な原因となるアレルゲンが存在します。気管支喘息ではダニ、カビ、ペット、ゴキブリ、アトピー性皮膚炎ではダニ、プドウ球菌、カビ、食物、通年性アレルギー性鼻炎ではダニ、カビ、ペット、花粉症ではスギ、ヒノキ、ハンノキ、イネ科植物、雑草、食物アレルギーでは卵、牛乳、小麦、大豆が、それぞれ主要な原因アレルゲンとなっています。これらのアレルゲンの中でダニアレルゲンがアレルギー疾態において最も重要な原因です。
 言い方をかえれば、アレルギー疾憲患者さんのどの年齢においても最も重要なアレルゲンとも言えます。現在は、ダニをはじめとしてネコ、イヌなどのアレルゲンが定量的に測定可能となっています。アレルゲン量の測定としては寝具、寝室、居問の塵を掃除機で採取したものを測定するのが最も一般的です。今回この方法を用いて、寝具塵中ダニアレルゲン量の測定と気管支喘息患者さんの喘息発作の関係をお話します。気管支喘息患児24名を対象に、決められた掃除メニューをおこなってもらい、1年間毎月1回家庭訪問をおこない、寝具、寝室、居間のダニアレルゲン量を測定しました。結果は、著明なダニアレルゲン量の減少とともに喘息発作回数の著明な減少を認めました。ここではまた、血液検査でダニ陰性の喘息患児においてもダニアレルゲン対策は効果があることをお話します。次に、気管支喘息患者さんにお勧めする掃除メニューをこ紹介します。まず掃除する順番は寝具から、ついで寝室、居間の順で行うことをおすすめします。これは、寝具に最も多くのダニアレルゲン量が存在するという科学的なデータに基づきます。寝具対策は布団力バーの丸洗いと布団の天日干しと掃除機による清掃を行います。寝室と居問の床はフローリングが理想的です。絨毯は除去するのが望ましいです。その他、具体的な方法について細かくご紹介します。最後に、治療の最終目標は治癒です。薬物療法による症状の消失は治癒とは言えません。他の疾患と同様に成人の喘息患者さんにおいても治癒は現実的に困難なことが多いのです。しかし、十分な環境整備の実行によって、症状の軽減や治療薬を減らすことは可能です。特に、小児においてはより効果が現れやすいのです。気管支喘息の原因はダニアレルゲンだけではありませんが、原因としてダニアレルゲンが最も重要です。ダニアレルゲン対策は、治癒に近づけるために患者さん自らが行うことが出来る、一番はじめに行う治療法です。

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■ 普及する“苦しくない”呼吸抵抗検査(2013. 4. 16:日経メディカル

算定点数アップでクリニックでの導入に弾み

 京都市山科区のまつだ小児科では2011年、クリニックとしてはいち早く、オシレーション法による呼吸抵抗測定装置「MostGraph-01」(チェスト製)を導入した。同院には小児喘息の患者が多く訪れる。院長の松田義和氏は「小学生以下の小児は、スパイロメトリー検査の実施は難しく、呼吸機能の低下を客観的に把握する方法は皆無と言っていい状況だった。その意味で、普通に呼吸するだけで測定できるオシレーション法への期待は大きい」と語る。
 スパイロメトリーによる検査は、息を最大限に吸い込んだ位置からの努力呼吸が必要になるため、乳幼児や小児には難しく、また呼吸器疾患の患者や高齢者にも施行できないことが多い。「オシレーション法なら、幼児は少し工夫が必要だが、小学生はまず測定できるだろう」と松田氏。これまでに40~50人程度の小児に実施したという。

1950年代に生まれたオシレーション法

 マウスピースから音響信号を送り込みながら、呼吸器内(実際には口腔内)の気圧と流量を測定するオシレーション法の考え方は1950年代に提案された。努力呼吸が不要なことから注目され、国内では1960年代から特定周波数の音響信号を使った測定が試みられてきた。ただ、口腔内圧を測定するセンサーや解析機能などの実現が技術的に難しく、商用の測定機器が登場したのは2003年になってからだ。
 実際の測定は、マウスピースをくわえて頬が振動しないように上から押さえ、鼻から呼気がもれないようクリップを装着した状態で、1回~数回、普通に呼吸するだけで終了する。
 古くから呼吸機能検査として普及しているスパイロメトリーは呼気と吸気の流量(フロー)と流速を測定する。これに対し、オシレーション法では口腔内の気圧変化と流量から呼吸器系のインピーダンス(Zrs、呼吸筋が換気する際の実質的な抵抗を示す)を求め、さらにそれを呼吸抵抗(Rrs)と呼吸リアクタンス(Xrs)という2つの指標に分解して解釈する。
 このうち、呼吸抵抗(Rrs)は空気抵抗や組織の摩擦など、エネルギー消費を伴う抵抗成分の合計であり、気道の太さと関係する。呼吸リアクタンス(Xrs)はエネルギー消費を伴わない弾性や慣性による抵抗の合計を示しており、呼吸器系の弾力性や気道内のガス量の変化などが影響する。
 気管支喘息やCOPDなどの閉塞性疾患では、Rrsが大きくなり、Xrsはマイナス側にシフトする傾向がある。また、成人の健常者ではRrsは周波数に関係なくほぼ一定の値をとるが、COPDなどの閉塞性疾患では低周波数側ほどRrsが高くなる傾向がある。周波数依存を図る目安として周波数5Hzのでの値(R5)と20Hzでの値(R20)との差(R5-R20)が使われている。
 現在市販されている測定機器では、1回の安静時呼吸で広範な(メーカーにより5~35Hzもしくは0~100Hz)の周波数帯域にわたって、呼吸抵抗やリアクタンスを測定でき、2次元または3次元グラフによって、周波数依存性や呼吸周期依存性を確認できる。そこから気道の閉塞や組織の弾力性の低下なども推測できる。
 国内では、2003年にフクダ産業が「マスタースクリーンIOS(Impulse Oscillation System、ドイツJaeger社製)」の輸入・販売を開始した。2009年4月には、チェストと東北大教授の黒澤一氏による共同研究で開発された国産の「MostGraph-01」(チェスト製)が発売された。チェスト社長の保木英明氏は、「2011年度までの3年間で100台、2012年度には50台余りが採用された。2012年に呼吸抵抗測定検査としての算定点数が70点から150点になったことを契機にクリニックでの導入も徐々に増えており、2012年度実績のうち、14台がクリニック向けだった」と話しており、普及のすそ野が広がっている。

病状説明にも威力を発揮

 チェスト社のMostGraph-01では、測定結果は呼吸抵抗の周波数依存性と時間変化(呼吸周期依存性)が3次元グラフで表示される。COPD患者の場合は、健常者や喘息患者に比べて周波数依存性、呼吸周期依存性共に大きいのが特徴だ(図1)。また喘息患者の場合、呼吸抵抗の値は高めだが、周波数依存性、呼吸周期依存性ともにあまり強くない。

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図1 MostGraph-01での測定結果。呼吸抵抗の周波数依存性と時間変化(呼吸周期依存性)が3次元グラフで表示される

 国立病院機構相模原病院では、これまでに延べ9000人ほどの成人患者にオシレーション法による呼吸抵抗測定を実施している。クリニックからの紹介で受診し、治療方法を確定して戻す例も多い。
 同院アレルギー科の粒来崇博氏は、「特に軽症の喘息では、問診や聴診、スパイロメトリーだけで診断することは難しい。放置すればリモデリングが起こり、気管支が元に戻らなくなる危険があるので、軽症のうちに診断し、吸入ステロイド導入などで対応したい」と話す。

 症例1は、長引く咳で受診したがスパイロメトリーでは異常が検出されなかった33歳の女性の例である。気道過敏性検査を実施すれば軽症の咳喘息も把握できるが、「日常診療でそこまで調べることは少ない」(粒来氏)。このようなケースでオシレーションを施行できれば良い指標になるという。

症例1 スパイロメトリーは正常だった初期の咳喘息の例(粒来氏による)
33歳、女性。主訴:2カ月続く咳
 主訴は2カ月続く咳。アレルギー性鼻炎の既往あり。スパイロメトリーでは努力肺活量(FVC)が3.32L、一秒量(FEV1)が2.89Lで、共に平均値よりも10%程度多く、1秒率(FEV1/FVC)も87%と正常。だがオシレーション法で測定した呼吸抵抗には呼吸周期依存性がみられ(図)、初期の咳喘息が疑われた。気道過敏性試験(標準法)の結果(ヒスタミン陽性)からも初期の咳喘息と診断され、吸入ステロイドの導入により咳は収まった。
図 呼吸抵抗の測定結果

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 診断に際して客観的な指標が得られるほか、MostGraph-01では、3次元グラフで結果を患者や家族に見せることで、病状説明の説得力が増す効果もある。「吸入ステロイドに抵抗があるという喘息の患者さんに3次元グラフを見せて効果を説明したところ、治療に理解を得られた例もある」と粒来氏は話す。すぐに結果が出るので、気管支拡張薬の投与前後での変化を追うこともできる。図2はCOPD患者の例である。

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図2 COPD患者。気管支拡張薬の投与前後で測定したもの。

年齢や体格別の標準値の策定が課題

 オシレーション法には課題もある。黒澤氏らが代表世話人を務める「MostGraph臨床研究会」では、これまでに5回の研究会を開催し、2社の製品の測定データの比較検討や、小児気管支喘息患者における測定結果の解釈、標準値の検討など、様々な課題の解消に向けて議論を重ねている。
 特に重要な課題は正常な状態を示す「標準値」の策定だ。多数の病院を抱える国立病院機構ネットワークも指標値の検討を進めている。「2013年度中には成人の喘息に関する報告書を出す計画」と粒来氏。
 小児科領域では特に、子どもの体格差などによる測定結果のブレが大きいことが分かっており、こうした点を反映した標準値づくりが求められている。上記の報告書でも、可能な限り、小児分野の知見を盛り込む予定だという。

■訂正 2013.4.16に以下を訂正しました。
・2ページ目第1段落で、改正後の算定点数を120点から150点に修正しました。

■ 室内の空気環境で起こるアレルギーとは(2013年3月1日 東京顕微鏡院、瀬戸 博)

アレルギーとはどんな病気でしょうか?

 抗原(アレルゲン)と接触することで、体内に抗体(IgE)が誘導され、ヒスタミンなどの生理活性物質が遊離され、様々な症状(発疹、痒み、ぜん息など)が引き起こされる状態です。
 日本アレルギー学会の一般向け解説によれば、「アレルギー反応とはアレルゲンの持続的な暴露によりアレルゲンに対するIgE抗体産生が誘導され、アレルゲンの再暴露によりIgE抗体を介してマスト細胞や好塩基球からの脱顆粒反応を引き起こしヒスタミンやロイコトリエンなどの物質が遊離され様々な症状(皮膚、消化器、呼吸器など)が引き起こされる疾患です。
 複数臓器、全身的にアレルギー反応が起こるようなケースをアナフィラキシーと呼び、ショック症状に至る場合もあります。」とされています。
 「アレルギーマーチ」とは遺伝的にアレルギーになりやすい素質(アトピー素因)のある人が年齢を経るごとにアレルギー性疾患が次から次へと発症してくる様子を表した言葉です。室内環境のアレルゲンは、「気管支ぜん息」、「アレルギー性鼻炎」、「アレルギー性結膜炎」の原因となります。(保育所におけるアレルギー対応ガイドライン  厚生労働省 2013年3月より)

室内空気環境にあるアレルゲンにはどんなものがありますか? また、どのような症状になりますか?

 室内空気環境には様々なアレルゲンが存在します。アレルゲンになるものは、一般にたんぱく質です。主なものは、ダニ(虫体と糞)、カビ、家屋塵、昆虫(ゴキブリなど)ペット(猫、犬など)の毛、フケなどです。また、外部から侵入したスギやヒノキの花粉もアレルゲンとなります。
 空気中に浮遊しているこれらのアレルゲンを繰り返し吸入し続けることで、アレルギー状態になります。気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎が主な症状です。ぜん息患児のアレルゲン陽性率はヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニに対してそれぞれ89%、家屋塵に対して84%というデータがあります。

ダニアレルゲンの検査はどのように行いますか?

 ダニアレルゲンの検査はELISA法とグアニン量を測る方法に大別されます。ELISA法では、ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニの糞や虫体のアレルゲン量をそれぞれ測ることができます。素人でも扱える簡易なキットが市販されており、例えば「マイティーチェッカー」は、ダニ虫体を対象にスティックの色変化で判定し、学校環境衛生基準(1m2に100匹以下)に対して評価することができます。試料は、掃除機で吸引した家屋塵、寝具の塵埃が用いられます。(ELISA法:Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay法とは、サンプル中に含まれる微量の目的物質を、酵素標識した抗体または抗原を用い、抗原抗体反応を利用して定量的に検出する方法です。この方法の利点は、(1)高感度、定量性に優れ、(2)精製や前処理をほとんど必要とせず、(3)短時間で大量のサンプル処理ができることです。)

室内空気でアレルギーを起こさないためにはどのようなことに気を付けたらいいでしょうか?

 対策の基本は、ダニ、カビを増やさないことです。そのためには、湿度のコントロールと掃除機によるこまめな清掃が効果的です。家の中で空気が滞留しやすく、冷えやすいところ、例えば北側の部屋、洗面所、浴室はカビが生えやすいので特に注意して清掃と換気をよくしましょう。畳の上にカーペットを敷くとダニ、カビの絶好のすみかになります。
 可能であれば、カーペットを洗浄し、乾燥させるとアレルゲンを減少させることができます。寝具を日に干すことは、ダニを殺すのには有効ですが、アレルゲンとしての作用が強いダニの糞が残っています。布団をたたきますと糞を細かくするだけで逆効果です。糞を除くには掃除機による吸引と洗濯が有効です。

■ タレント乙葉さんの経験談(2012年11月:読売新聞)

(1)8歳 夜中に発熱、せき(2012年11月8日 読売新聞)

 大学1年生で芸能界デビューした。今は、子育てをしながら、テレビ番組やCMなどで活躍し、お茶の間に笑顔を振りまいている。
 だが、子どもの頃からぜんそくとのつらい闘病生活も経験してきた。
 最初に症状が出たのは、8歳の頃。夜中に発熱し、せきが止まらなくなった。
 「呼吸ができないくらい苦しくて、母が一晩中、背中をさすってくれました」
 翌朝、医療機関に行くとぜんそくと診断された。気道が炎症を起こして狭くなり、空気が通りにくくなる病気だ。発作を起こした日は、習い事からの帰り道、コスモス畑に寄り道した。花粉を吸い込み、それが引き金となって発作を起こした可能性が考えられた。
 学校を休み、発作を抑える治療を受けた。症状は治まったが、その後、季節の変わり目や風邪を引いた時などに、たびたび発作を起こすようになった。空ぜきが止まらなくなり、気管の辺りがむずがゆい感じがした。
 体育の時間もつらかった。授業は、なるべく休まずに受けたが、長距離を走る時は途中から息苦しくなり、ぜいぜいと呼吸した。
 「大げさに苦しんでいると思われないか、周りの目が気になりました」。吸える息の量も減っていくように感じた。いつしか「この病気とずっと付き合っていくしかない」と思うようになった。

(2)分かってきた付き合い方(2012年11月15日 読売新聞)

 8歳の頃に、ぜんそくを発症してから、季節の変わり目や風邪を引いた時など、たびたび、発作を起こすようになった。
 発作が起きると、それを薬で鎮めたが、体調や気候によって、発作が起きてしまう。
 「どうして自分だけこんなに苦しまなければならないのか、と悩みました。つらかったです」
 だが、中学生になると、発作がいつ、起きやすいのか、だんだん分かるようになってきた。
 「台風が来る前や疲れている時など、発作の前兆として吐く息の量が少なくなる感じがしました。発作が起こる前に、気管を広げる薬を飲みました」
 ぜんそくとの付き合い方が分かってきたこともあり、中学校では、軟式テニス部、高校では吹奏楽部で活動した。将来は、図書館で仕事をしたいと考え、その勉強のため、高校卒業後、親元を離れて東京の大学に進学した。
 「若いうちにしか挑戦できないと思って上京を決めました。東京では楽しいことが待っていると、ワクワクする気持ちしかありませんでした」
 一人暮らしを始めると、不安なこともあり、ストレスのせいか、ぜんそくの症状が悪化した。アトピーの症状も出た。
 この時、東京で、人生を決める大きな転機が訪れるとは思ってもいなかった。

(3)発作おびえつつ芸能活動(2012年11月22日 読売新聞)

 高校卒業後、親元を離れて東京の大学に進学した。
 大学1年生の時、東京・原宿を歩いていて「芸能界で仕事をしないか」とスカウトされた。
 「それまで、自分で何かを決断したことはありませんでした。悩みましたが、チャレンジしてみようと思いました」
 芸能界デビュー後は順風満帆で、仕事は次々と入った。知名度が上がり、雑誌やテレビ、舞台と、活躍する場は広がっていった。ただ、地方や海外での仕事も多くなり、不規則な生活が続くこともあった。
 「しっかり食事を取れなかったり、十分睡眠をとれなかったりし、きちんと体調管理ができないことも。薄手の衣装を着ることもあり、風邪を引きやすくなりました」
 風邪が原因で、ぜんそくの発作を起こすことが小さい頃からたびたびあった。仕事先に向かう車の中でせきが止まらなくなり、そのまま医療機関に駆け込み、治療を受けたことも何度かあった。
 舞台や撮影現場で発作が起きると、自分がつらいばかりでなく、共演者やスタッフにも迷惑がかかってしまう。発作を止める薬は常に手放せなかった。
 「発作が突然、起きやしないか」
 いつも笑顔は絶やさなかったが、心の奥底では不安を抱えながら仕事に臨む日々が続いた。

(4)長女を思い 新治療選ぶ(2012年11月29日 読売新聞)

 大学1年生の時に芸能界デビューし、テレビや雑誌の仕事に恵まれた。
 だが、ぜんそくの発作がいつ起こるのか、不安を抱える日々は続いた。発作を止める薬は手放せなかった。
 2005年、タレントの藤井隆さんと結婚、07年に長女を授かった。
 妊娠してから出産するまでは、幸いにも風邪をひくことはなく、ぜんそくの発作も起きなかった。
 だが、子育てが始まると、夜中でも子どもが頻繁に起きるため、睡眠不足に陥り、生活は不規則になった。
 すると、再び発作を起こすようになり、せきが止まらないことが何度もあった。授乳中だったため、服薬は控えていた。
 「発作が起きた時は、子どもが起きないよう、別の部屋に駆け込み、水を飲むなどして耐えました」
 症状を何とか改善したいという気持ちが、これまで以上に強くなった。2年前に医療機関を受診した際、発作を予防する治療法を知った。毎日、朝と晩、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬を合わせた薬を口から吸入するもの(※)だった。それまでは、発作がある時だけ薬を使い、しのいでいた。
 医師に相談し、このぜんそく治療薬を使ってみることにした。
 「これで本当に発作が起きなくなるのだろうか」。半信半疑だったが、子どものためにも、この薬を使ってみることにした。

※ 現在日本で使用可能な合剤は以下の2種類です;
アドエア(グラクソ・スミスクライン社)、使い方(YouTube)
シムビコート(アストラゼネカ社)
わかりやすい解説:「宮川医院HP

(5)発作から解放 快適な日々(2012年12月6日 読売新聞)

 「子育てのためにも、何とかしてぜんそくの発作を抑えたい」。その思いから、新たな治療に取り組むことにした。
 発作の有無にかかわらず、朝と晩、ぜんそく治療薬を口から吸入し、気道の炎症を抑える。この治療を続けたところ、発作は起こらないようになった。
 「いつ発作が起きるのかという不安が消え、快適に過ごせるようになりました。子どもの頃、せきが止まらない時、一晩中、背中をさすってくれた母も喜んでいます」
 今でも1日2回、欠かさずこの薬を使っている。
 ふだんから規則正しい生活を心がけている。部屋の掃除をする時にマスクを着けたり、ダニよけ効果が高い布団を使ったりし、発作が起きる一因となるホコリやダニを吸い込まない工夫もしている。
 以前は、夏から秋へと季節が変わる時期に、ぜんそくの発作を起こすことが多かった。これからは、大きく成長した長女とともに、ハイキングなどを楽しみたいと思っている。
 「私は、きちんとした治療を行うことで、ぜんそくの症状を抑えられるようになりました。自分の体験をぜんそく患者さんに伝え、一人でも多くの人が苦しい発作から解放されればいいなぁと思っています」(文・利根川昌紀、写真・米山要)

■ カビ対策のいろいろ(室内のカビを増やさないために)(2012年4月27日:日本顕微鏡院

財団法人 東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
食品微生物検査部 部長 難波豊彦 

室内環境とカビの発生

 梅雨そして夏と高温多湿の季節が始まります。この時期の室内環境の悩みといえばカビの発生がそのひとつではないでしょうか。風通しが良い昔の住宅と違い、気密性が高い近年の住宅は快適な生活ができる一方、温暖で湿度も比較的高いことに加え換気が不足しがちで、カビの発育に適する環境となります。特に高温多湿になる浴室・台所や洗濯機、栄養分が多く通気性が悪い冷蔵庫や押入れ、ハウスダストがたまりやすい畳・じゅうたんやエアコンなどはカビの汚染に注意が必要です。

カビの被害

 室内から見つかるカビはクラドスポリウム属、アスペルギルス属、ペニシリウム属の3つが大半を占めます。これらの汚染は基材を劣化させたり、アレルギーの原因になることがあります。なかでもアスペルギルス属は病原性を持つ種が複数存在し、医学上重要なカビです。室内空気環境のカビ汚染がもたらすヒトへの健康被害は感染症やアレルギーが主であると考えられてきましたが、最近ではカビ毒(マイコトキシン)を産生する菌種が含まれることが報告され、関心がもたれています。

カビの発育条件

 カビが発育するためには栄養、温度、水分、酸素などの環境条件がそろっていなければいけません。生育に最適な環境は温度25℃前後、相対湿度80%以上といわれます。気密性が高い住宅はこれらの条件を満たしていると考えられます。

カビの発育を抑えるには

 カビの被害を防ぐ有効な手段は次の2点です。

1. こまめに清掃する
 室内ではホコリ、手あか、食べ物の汚れなどがカビの栄養源となります。これらを除き室内を清潔に保つことが大切です。押入れや畳・じゅうたんの下など普段目の届かないところの清掃が大切です。

2. 換気・通気を行う
室内の空気が多湿になるとカビの発生原因になる結露ができ易くなります。浴室、台所、洗面所などの換気を十分に行い、湿気を除くことによりカビが発育しにくくなります。空気が滞らないよう家具と壁の隙間を多めにとるなど通気にも心がけて下さい。

 なお、すでにカビが生えている場合には、その部分を除去し、アルコールや市販のカビ取り剤などで殺菌してから修繕します。しかし、温度や湿度などの環境を変えない限り、再発の可能性は大きいと思ってください。カビが発育しやすいような環境は、他の有害な細菌や生物が存在する確率も高い可能性があります。アレルギー源でよく知られるダニは、カビを餌にすることもあります。これらの害を防ぐために、正しい知識を持って室内環境の管理を行うことが大切です。

■ 子どもの病気 小児ぜんそく(2012年1月:朝日新聞)

1 「体の中で誰かがお話」

 ゼーゼー、ヒューヒュー。呼吸をするたび、のどから色んな音が聞こえる。息苦しく、夜中に何度も目覚めた。
 2004年アテネ、08年北京と2度の五輪で金メダルに輝いた女子柔道コーチの谷本歩実さん(30)は、小児ぜんそくと闘ってきた。
 一番古い記憶が、2~3歳の頃の寝室でのことだ。「ぜんそく」という言葉も知らず、苦しいことも、うまく伝えられなかった。のどが鳴ることを、「体の中で、たくさんの人が話しているみたいになるんだよ」と家族に訴えても、早く寝るようせかされるだけ。泣きながら、眠った。
 「そんなに苦しかったんだ。わかってあげられず、ごめんね」。歩実さんが当時の話をすると、母の洋子さん(53)は今も謝ってしまう。
    ◇
 1981年、名古屋市で生まれた。両親は市内の病院で事務職として働いており、生後8週目で保育園に入った。
 はいはいの頃から、運動神経は抜群だった。走れるようになると、駆けっこはいつも一番。側転も逆上がりもすぐに覚えた。ただ、長く走るのだけが苦手だった。
 走っているうちに、のどをギューッと締めつけられるように苦しくなった。気管支が慢性炎症を起こし、空気の通り道が狭くなる、典型的なぜんそくの症状だった。
 「どうして一番になれないのかな?」。負けるのは悔しいが、途中で走るのをやめるのは、もっと悔しい。苦しくてもゴールまで走り抜いた。
 そんな日は、洋子さんが迎えに来ても、歩実さんの表情はさえなかった。「顔が真っ青だね」。いつもより口数が少ない歩実さんを連れて、夜間診療を行っている「みなみ子ども診療所」(現在は南生協病院に移転)に向かった。
 生後すぐに乳製品などの食物アレルギーが分かり、ぜんそくの診断も出ていた。ただ、洋子さんが働く小児病棟には重い症状の子も多く、歩実さんの症状はそれほど深刻に見えなかった。せき込んだり、ゼーゼーとのどが鳴ったりしたときだけ、診療所へ行った。
 診察を待つ間は、いつも忙しそうにしている洋子さんを独占できる。「今は、私だけのお母さん」。呼吸は苦しかったが、一緒に過ごせるのがうれしかった。
 診察後は1人で処置室に向かい、ステロイド薬などがセットされた吸入器を口に当てた。20分ほどたつと、ストローで息を吸っているような苦しさが、次第に和らいだ。
 小学校に入ると、祖父母が住む愛知県安城市に引っ越した。3年生から近所の柔道教室と水泳教室に通い始めた。4年生になると、陸上部で幅跳びを始めた。顧問の今村誠(いまむらまこと)先生(47)は「ゴムまりみたい」な歩実さんに期待した。
    ◇
 やっかいだったのは、毎週月曜日の長距離練習だった。特に冬場は、呼吸の苦しさが限界に達するまで走ると、翌日は決まって39度近い高熱が出た。一度発作が始まるとなかなか治まらず、ステロイド吸入を受けに近所の診療所に駆け込んだ。
 「ぜんそくと上手に付き合わないと、練習すらできなくなっちゃう」。自分なりに練習法を工夫し始めた。
 厚着をして走ったが、結果は同じだった。次はスタート直後をゆっくり走ってみた。すると、発作を起こさず徐々にスピードを上げられ、トップ集団のままゴールできた。準備運動の間は手で口を覆い、冷たい空気が直接、気管支に入らないようにした。
 6年生になると、バルセロナ五輪優勝の吉田秀彦選手を育てた「大石道場」(愛知県大府市)に通いだした。近所の柔道教室では無敵だったのに、道場では男の子に何回も投げ飛ばされた。「ここには乗り越える壁がある。みんな本気だ」。ワクワクした。
 室内競技の柔道は、冬場の陸上に比べ、ぜんそくの発作が起きにくかった。乱取り稽古で息苦しくなったときは、わざと相手に話しかけて時間を稼ぎ、呼吸を整えた。
 中学時代は東海大会優勝、高校時代は全国3位と、着実に実力をつけていった。息苦しいときもあったが我慢し、診療所に行くこともなくなった。(冨岡史穂)
    ◇

 たにもと・あゆみ 柔道コーチ(コマツ)。柔道女子63キロ級で、アテネ、北京の両五輪を連覇した。現在はコーチ業の傍ら、弘前大医学部博士課程でトップアスリートのコンディショニングを研究、栄養士を目指して専門学校にも通う。週末は、子ども向けの柔道教室など全国を飛び回る。昨年8月に鶴岡剣太郎さん(トリノ五輪スノーボード代表)と結婚した。

2 五輪前に発作 乗り切る

 女子柔道金メダリストの谷本歩実さん(30)は、小さいころから小児ぜんそくに悩まされてきた。走っても楽な方法を自分で編みだし、中学、高校時代は発作が出ることもなくなった。
 筑波大に進学後、19歳で全日本柔道連盟の日本代表に選ばれた。国立スポーツ科学センター(JISS)の検査で、1秒間、勢いよく息を吐き出すと、呼気の速度が急に落ちる、ぜんそく患者特有の曲線を示した。
 いつ発作が出て、ステロイド薬を使うかもしれない。ドーピング検査で陽性にならないように、国際機関に薬の使用許可を求めた。だが23歳で金メダルを獲得したアテネ五輪当時は、治療を受ける機会はなかった。
 「ぜんそくを治してみない?」。JISSスポーツ医学研究部の内科医、土肥美智子(どひ・みちこ)さんに言われたのは、北京五輪を3カ月後に控えた2008年5月だった。北京の大気汚染を懸念し、ぜんそく症状のある選手に積極的な治療を勧めていた。
 ぜんそく患者の気管支は慢性の炎症で粘膜が腫れ、空気が通りにくい。炎症をなくそうと、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬の配合薬を朝晩1回ずつ吸入する。治療を始めるとストローみたいだった気管支が一気に太くなったように楽になった。「これが当たり前なんだ」。走り込みでも体が軽くなった。
 「ぜんそくが治れば、パフォーマンスも上がる」。土肥さんの言葉に、連覇のプレッシャーが少し和らぐように感じた。
 だが7月末、発熱を機に発作が出た。せきが止まらず、ゼーゼーとのどが鳴った。試合は2週間後。激しい練習の合間に短時間で効く気管支拡張薬を吸っていた。「薬に頼る甘えがあったのでは」と、後悔した。
 試合の3日前、ようやく発作が収まった。発作前より動きやすくなったと感じた。「あの苦しさに耐えて、最後の追い込みができた。必ず勝てる」
 8月12日。歩実さんはアテネ五輪と同じように、全試合一本勝ちで、柔道女子63キロ級の金メダルをもぎ取った。自分の体と向き合い、練習を工夫してきた。苦しくなる前に勝ちたいと、短時間で勝負を決めるスタイルを究めた。「ぜんそくのお陰で強くなれたと思います」(冨岡史穂)

3 入院から1年、再び入院

 10年前の梅雨の季節だった。モデルの秋本祐希さん(35)は、当時2歳半だった息子の一輝(かずき)君(12)の様子がいつもと違うことに気づいた。呼吸にヒューヒューと高い音が混じり、せきがとまらない。
 「何だろう」。急いで、かかりつけにしていた中里医院(東京都杉並区)に連れて行った。おなかをへこませながら呼吸する一輝君を見て、小児科医の中里恵美子(なかざとえみこ)さん(63)は、一目でぜんそくだと判断した。
 すぐに吸入器の準備を始め、気管支を広げて呼吸を楽にする薬を吸入させた。20分ほど診察室で様子を見たが、発作は治まらない。
 「入院が必要ですね」
 中里さんは武蔵野赤十字病院(東京都武蔵野市)に電話し、ベッドが空いていることを確認。秋本さんに紹介状を渡した。
 「入院」という言葉を聞いても、秋本さんはそれほど慌てなかった。実は離婚した元夫はぜんそく持ちで、周囲から「もしかして遺伝するかもしれない」と言われてきた。「とうとう出てしまったか」と覚悟した。
 入院した一輝君は、手に刺さったままの点滴を嫌がり、少しもじっとしていない。実家の母親と交代で24時間付き添い、夜は小児用ベッドに体を折り曲げて一緒に眠った。入院は1週間にわたった。
 退院後、ぜんそくとの本格的な闘いが始まった。
 治療の柱は、日々の服薬と生活環境を整えることだ。発作を予防するため、抗アレルギー薬とβ2気管支拡張薬が処方された。急な発作の度に病院に行かなくても済むようにと、箱形の家庭用吸入器も購入。旅行に行く際にも、必ず持ち歩いた。
 一輝君が生まれる前から、室内で3匹の犬を飼っていた。中里さんは、部屋に掃除機をかけた後はできれば雑巾で水拭きし、ペットの毛に注意するよう伝えた。空気清浄機も購入し、各部屋に置いた。
 「ぜんそくとうまくつきあって、子どものうちに治してあげられたらいいな」。大人になっても発作が続いていた元夫の姿を見ていたこともあり、秋本さんは中里さんに治療を託そうと思った。
 体を鍛えようと、一輝君を体操教室に入れた際も、念のため中里さんに相談した。「マット運動はほこりが出るので、あまり良くないわよ」と聞くと、すぐにやめさせた。サッカー教室にも入れたが、少し走ると呼吸がゼーゼーするため、続かなかった。
 薬は毎日使うよう言われたが、調子がいいときは使わないこともあった。夜寝る前や気温の変化が激しいときには、たびたび発作が出た。初めての入院から1年後。再び大きな発作を起こし、武蔵野赤十字病院に緊急入院した。(岡崎明子)
    ◇

 あきもと・ゆうき ファッションモデル。福岡県出身。光文社『VERY』などでモデル活動のほか、タレント・女優としても幅広く活躍中。

4 服薬続け サッカーできた

 2歳半のときにぜんそくを発症したモデルの秋本祐希さん(35)の息子、一輝君(12)は、季節の変わり目に大発作が出て、2度の入院を経験した。
 小学校に上がる前に主治医が代わり、吸入薬だけでなく飲み薬も処方されるようになった。しかし、発作は続いていた。
 ある日、親子で参加したホームパーティーで、秋本さんは小児科医の矢作尚久(やはぎ・なおひさ)さん(37)と出会った。矢作さんは一輝君の姿勢を見て直感した。「ぜんそく持ちでしょう?」。無意識に肩を上げ、猫背の姿勢を取ることで、呼吸量を抑えていた。
 飲み薬の名前を聞くと、ぜんそく治療に標準的な薬ではなかった。しかも秋本さんは「薬は体によくない」と思い、たまにしか飲ませていなかった。
 矢作さんは「今度、先生に相談してみたら」と、2種類の抗アレルギー薬の名前を伝えた。「毎日飲んだ方が、一輝君の体も楽になる」とも説明した。
 これをきっかけに、薬が変わり、秋本さんも毎日薬を飲ませるようになった。発作の回数は格段に減った。
 ただ一輝君にとって、毎日の服薬は面倒くさい日課だった。吸入器の調合も任されるようになると、母の目を盗んでさぼることもたびたびだった。
 2009年暮れのことだった。秋本さんの実家の福岡に帰省した際に、自宅に吸入器と薬を忘れてしまった。その晩、一輝君は6年半ぶりに大きな発作を起こし、救急車で病院に運ばれた。元旦は病室で迎えた。
 この体験で、一輝君は薬の大切さを実感した。「薬を飲むとぜんそくが出にくくなって、体調もいい」。今は進んで、薬を飲むようになった。
 6年生になった昨年からは、サッカー教室に通い始めた。「本当に、走り続けられるの?」。小さいころを思い出し、秋本さんは心配した。だが、それは取り越し苦労だった。
 「ここ数カ月間、症状が落ち着いていますね」。2カ月前、現在の主治医の若木均(わかき・ひとし)さん(41)は、1日2回のステロイド吸入薬を、1回に減らした。
 秋本さんにとっても一輝君にとっても大きな進歩だ。「どうしてぜんそくになったんだろうと思ってきた。でも良くなってきてうれしい」(岡崎明子)

5 吸入薬を続け、発作予防

小児喘息の経過.jpg
<小児ぜんそくの経過(長倉俊和医師による)>

 ぜんそくは、気管支など空気の通り道が炎症により狭くなり、呼吸が苦しくなる病気だ。ゼーゼー、ヒューヒューとのどが鳴る喘鳴(ぜんめい)や、せきが止まらないなどの症状が出る。
 ぜんそくに悩む小児患者は、全国で数十万人と言われる。厚生労働省研究班がまとめた2008年の調査では、幼稚園児の19.9%、小学生の13.6%に症状があった。
 原因の9割以上は、ダニやその死骸、ふんなどを含むハウスダストのアレルギーとされる。さらに炎症によって気管支が過敏になるため、ダニ以外にも、冷たく乾いた空気やたばこなどの刺激臭、風邪のウイルスなどでも発作が起きるようになる。
 かつては、発作が起きてから薬を飲んだり、ステロイド注射を打ったりする治療が中心だった。だが、20年ほど前から、発作がないときも、「長期管理薬」として吸入ステロイド薬を毎日使い、発作を予防する治療の有効性が分かってきた
 日本小児アレルギー学会がまとめた治療ガイドラインでは、月1回以上の頻度で喘鳴などの症状が出る「軽症持続型」の子どもから、吸入ステロイド薬を継続的に使うことが勧められている。発作が起きた場合は、即効性のあるβ2刺激薬などの気管支拡張薬を使う。
 長期管理薬による治療が広まるにつれ、国内のぜんそくによる死者数も減少してきた。1990年ごろは年間6千人いた死者数は、2010年には2千人余りに。昭和大学呼吸器・アレルギー内科部門の足立満(あだち・みつる)教授は「ぜんそくは治らないイメージが強かったが、上手に付き合えば快適な生活を送れるようになった」と話す。
 飲み薬や点滴のステロイド薬は全身に副作用が出るリスクがあるが、吸入ステロイド薬はのどに向かって薬を噴霧するなど、作用する部分を気管支だけに絞ることができる。
 8~9歳の子どもが10年間、吸入ステロイド薬を使い続けても、健常児と比べ身長の差が出ないといった研究結果も英医学誌に発表されている。用賀アレルギークリニック(東京都)の永倉俊和(ながくら・としかず)院長は「適切な治療と、ハウスダストなどの環境調整、運動による体力強化が重要だ」と話す。(冨岡史穂)

■ 大人の喘息(2011年11月:読売新聞の特集)

(1)五輪出場の「鉄人」を襲う(2011年11月3日 読売新聞)

 水泳、自転車、ランニングの3種目を連続して行い着順を競うトライアスロン。その過酷さから「鉄人レース」とも言われる。
 日本を代表する女子トライアスロン選手の庭田清美さん(40)は、2005年頃から夜中や早朝、急にせき込むことが増えた。レース後には必ずむせてしまう。しばらくは深呼吸もできないほどだった。北京五輪(08年)を翌年に控えた07年になると、ランニングでペースを少しでも上げると、息苦しくなった。
 当初は体調不良と思っていた。だが、何日たっても体が思うように動かない。練習不足のせいとも考え、練習量を増やしてみたが、普段なら苦にもならない速さのランニングでも息が上がった。
 五輪大会はそれまで2大会連続で出場してきた。40歳を間近にして、年齢、体力的な限界など、不振の理由をいくつか探しているうちに、「引退」の二文字が脳裏をよぎった。
 悩み続ける中、練習先のオーストラリアで、いつものようにランニングを始めると、1キロもしないうちに息が思うように吸えない感覚に襲われた。全身がしびれ、酸欠のような苦しさが伴う。歩行もできなくなり、立ち止まった。
 「大丈夫か」。コーチが駆け寄り、声をかけたが、呼吸が落ち着くまで数分間は返事もできなかった。
 心配するコーチに促され、現地の診療所を受診した。医師は、気管支の過敏性などを調べる簡易検査を行い、ぜんそくと診断した。
 ぜんそくは、気管支の空気の通り道(気道)が、ダニやホコリ、たばこの煙など様々な刺激で収縮し、激しいせきや呼吸困難が起こる病気。気道内の慢性的な炎症が原因とされ、治療には、炎症を抑えるステロイド(副腎皮質ホルモン)の吸入薬や、気道を広げて発作を防ぐ気管支拡張薬などを使う。
 ぜんそく患者のうち、子ども(16歳未満)の割合は3分の1。残る3分の2は大人が占める。大人の患者のうち、子どもの時に発症した人は2割程度に過ぎず、残りの8割は大人になって初めて発症した人だ。
 昭和大(東京)呼吸器・アレルギー内科教授の足立満さんは「ぜんそくは子どもの病気と思われがちだが、実際には大人の患者の方が多い」と強調する。
 だが、庭田さんはこの時、半信半疑だった。
 「子どもの頃にぜんそくだったわけでもなく、信じられませんでした」
 北京五輪が半年後に迫っていた。

(2)治療続けて自己最高成績(2011年11月4日 読売新聞)

 オーストラリアで2008年2月、練習中に呼吸困難の発作を起こしたトライアスロン選手の庭田清美さん(40)は「ぜんそく」と告げた医師の言葉を素直に受け入れられなかった。30代後半に達しており、その年齢でぜんそくになると思っていなかったからだ。
 診断後、思うように練習ができなくなった。ランニングで呼吸が苦しくなりそうと思うと、ペースを落としたり、中断したりした。発作が起きた時のために、気道を広げて呼吸を楽にする気管支拡張薬を処方されていたが、練習では、薬を使わずにすむよう、無理をしなかった。
 北京五輪の日本代表に選ばれた同年6月、日本に帰国。国立スポーツ科学センター(東京)で健康診断を受け、肺機能や、気道の過敏性を調べる検査などを詳細に行った。
 同センターのスポーツ医、土肥美智子さんに「ぜんそくですが、大丈夫。治療をすれば、まだまだやれますよ」と激励され、「やはりぜんそくなんだ、と納得し、気持ちがすっきりした」。
 土肥さんからステロイド(副腎皮質ホルモン)の吸入薬と気管支拡張薬の配合剤を、朝と就寝前の1日2回使用するよう指導を受けた。土肥さんは「ぜんそくでも適切な治療を続ければ、激しいスポーツでも十分活躍できる」と話す。
 五輪まで残り2か月を切っていたが、ぜんそくの治療を本格的に行い、練習にも全力投球するようになった。寝ている時にせき込み、目が覚めてしまうことや、わずかな距離のランニングでも感じた息苦しさも次第になくなった。以前と変わらぬ練習メニューをこなせるようになった。
 同年8月、北京五輪の競技当日。発作を予防するためにレース開始の30分前に、気管支拡張薬を使った。水泳と自転車は順調にこなしたが、最後のランニング種目の残り1キロ・メートル付近で呼吸が苦しくなってきた。息を吐くことはできるのに吸えない。それでも懸命に吸おうとすると、顎があがって姿勢が崩れてしまう。「倒れるならゴールで」と、自分を奮い立たせた。たどり着くと同時に力尽きて倒れ込んだ。順位は9位。自己最高成績だった。
 庭田さんは、その後大きな発作もなく、各国のレースを転戦し、日本と台湾とのレースを中3日の過密スケジュールでこなすこともある。
 「体調不良の要因が、自分の努力不足や体力の限界ではなく、ぜんそくとわかって、逆に救われた。治療を続けながら、来年夏のロンドン五輪を目指します」と力を込める。

(3)地道な治療で薬減らす(2011年11月7日 読売新聞)

 治療を地道に続けることで、薬がほとんど必要がない状態にまで症状を安定させることも可能だ。
 神奈川県内に住む大学生の男性(22)は生後4か月頃から、アトピー性皮膚炎に悩まされた。小学2年の頃に症状は治まったが、高校進学後は、秋から冬への季節の変わり目には就寝時に呼吸が苦しくなった。部活動のテニスの練習中も息が切れ、むせることもあった。
 大学受験を控えた高校3年になると、症状がひどくなり、夜に息苦しさで目が覚めることが多くなった。地元の内科診療所の医師は「ぜんそく」と診断し、発作が起きた時に使う気管支拡張薬を処方した。
 ぜんそくの治療では、気道の慢性的な炎症を抑え、発作を予防することが重要だ。そのため、ステロイド(副腎皮質ホルモン)の吸入を継続的に行う。だが、発作が起きた時の対症療法として気管支拡張薬だけしか処方しない医師が少なくない。東京アレルギー・喘息研究所所長の佐野靖之さんは「ステロイドの吸入を用いた治療が不十分で、その結果、発作を繰り返すと、気道の炎症がどんどん悪化していく」と指摘する。
 男性は発作時にだけ気管支拡張薬を飲んでいた。
 2009年3月に風邪をひき、近くの診療所でせき止めなどを処方された。熱は下がったものの、せきが止まらなかった。体を横たえると苦しく、壁にもたれながら寝る日が続いた。
 数日後に国立病院機構相模原病院(相模原市)の呼吸器・アレルギー科の谷口正実さんの診察を受けた。男性には「ゼイゼイ」と呼吸が乱れる症状があり、谷口さんは風邪をこじらせて細菌性の気管支炎を併発し、持病のぜんそくが重症化したと判断。抗生剤で気管支炎の治療をしながら、高用量のステロイド吸入薬と気管支拡張薬の配合剤を処方した。
 男性は朝と就寝前の1日2回、処方された配合剤を使用。1か月後には呼吸が楽になり、吸入も1日1回に減った。季節の変わり目などに起きやすかった息苦しさもなくなり、その後はステロイドの吸入薬だけですむようになった。
 今年9月に受診した際には、「ほぼ完治に近い。薬をやめても大丈夫」と告げられたが、当面は、体調を見ながら数日おきに低用量の吸入薬を使っている。男性は「これまで発作の苦しさがいつも気になっていた。好きなテニスも思い切りできる」と喜ぶ。
 谷口さんは「治療をしないと、ぜんそくは決して良くはならない。ねばり強く続ければ、薬も減らしていける」と話す。

(4)吸入薬適量 正しく使う(2011年11月8日 読売新聞)

 横浜市の主婦(56)は2005年8月、風邪で38度台の発熱にうなされた。地元の病院で処方された飲み薬を服用し、熱は1週間ほどで下がったが、乾いたせきが止まらなくなった。
 1か月後に同じ病院を再度受診した。医師は「気管支炎」と診断、せき止めなどを処方した。だが、症状はよくならない。2週間後には「せきぜんそくかもしれない」と説明された。
 「せきぜんそく」は、ぜんそくの前段階と位置づけられ、「ゼイゼイ」「ヒュウヒュウ」など、ぜんそくの症状に典型的な呼吸音「喘鳴」がなく、せきだけが出るのが特徴だ。患者の3割がぜんそくに移行する。治療には気道の炎症を抑えるステロイド(副腎皮質ホルモン)の吸入薬を使う。
 主婦は朝と就寝前の1日2回、ステロイドの吸入薬とせき止めを処方されたが、せきはますますひどくなり、同じ年の11月頃には、会話の際に「ヒュウヒュウ」といった喘鳴が出てくるようになった。ぜんそくへと悪化したとみられた。就寝時も体を横たえると息苦しく、うつぶせになったり、タンスに背中を預けて眠ったりする日々が続いた。
 せきが止まらず、そばで寝ている夫も不眠を訴えるようになり、処方された1か月分の薬を半分も使い切らないうちに同じ病院に駆け込んだ。しかし、症状を訴えても医師は「そうですか」と曖昧に答えるだけ。薬の種類や量を変更することもなかった。
 苦しさに我慢できず、06年1月、知人の紹介で横浜市立みなと赤十字病院を受診。同病院アレルギーセンター長の中村陽一さんは、症状の程度に比べて、ステロイドの吸入薬の処方量が少なすぎることに驚き、量を2倍に増やした。主婦はこの時、「薬を吸ったら、息を止めて5秒待つ」ことなど、吸入薬の適正な使い方も初めて指導された。
 その後、せきは出なくなったものの、就寝時に息苦しくなることが時々あった。吸入薬の量をさらに増やすと、呼吸は随分と楽になった。薬の処方量も減った。現在は最も多かった時の半分になった。季節の変わり目などに、息苦しさから発作止めの気管支拡張薬を使うこともあるが、以前とは違い、眠れなくなることはない。主婦は「薬を使っても少しも良くならず、ずっと不安でした。熟睡できるようになったのがうれしい」と笑顔を見せる。
 中村さんは「症状が改善せず、仕方がないと諦めている患者も多いが、原因が不適切な治療であるケースが少なくない。患者に吸入薬の正しい使い方を指導するだけでも、随分と良くなる」と語る。

<参考ホームページ>

■ 小児喘息なんでも早わかり
(厚生労働省作成)

(日本小児アレルギー学会作成)

(厚生労働省作成)

(厚生労働省作成)

(2002年、厚生労働省)
ホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物(VOC)の指針値が示されています。

(埼玉医科大学 小児科・アレルギーセンター 教授 徳山 研一)