食物アレルギーの勉強部屋

 つい忘れがちなデータを記した私(院長)自身用のメモ書きです。医学用語がそのままなので、一般の方が読んでもピンと来ないかもしれません。

■ 総論

★ 食物アレルギー・アナフィラキシー対応の進歩

西暦 内容
2002年 ・アレルギー物質を含む食品表示開始(厚生労働省) ・・・それ以前はJAS法による食品の原材料表示として5%未満のものの表示義務はなかった。
2005年

・エピペンの食物アレルギーおよび小児への適応拡大(厚生労働省)

・「食物アレルギーの診療の手引き2005」(厚生労働省研究班)

・「食物アレルギー診療ガイドライン2005」(日本小児アレルギー学会)

2006年 ・食物アレルギー関連(入院での食物負荷試験・栄養指導)の診療報酬化(厚生労働省)
2008年

・学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドラインおよび管理指導表(日本学校保健会)

・外来での食物負荷試験の診療報酬化(厚生労働省)

・「食物アレルギー診療の手引き2008」改訂、「栄養指導の手引き2008」公開(厚生労働省研究班)

2009年

・「食物経口負荷試験ガイドライン2009」(日本小児アレルギー学会)

・エピペンの業務としての救急救命士への使用解禁(厚生労働省・総務省)

2010年 ・「保育所でのアレルギー対応ガイドライン」(厚生労働省)

■ 病態

★ 食物アレルギーの画期的な治療法につながる経口免疫寛容の仕組みを発見-マウスの経口免疫寛容の分子作用機構を世界で初めて証明-

(2010年9月30日:独立行政法人 理化学研究所)

ポイント

経口免疫寛容を誘導する腸管内の「樹状細胞(白血球)」の役割を解明
経口免疫寛容の成立に必須な共刺激分子2種をマウスで発見
免疫寛容の仕組みを利用して食物アレルギーの新たな治療法を提示

要旨

 独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、免疫システムが飲食物を異物として認識し、食物アレルギー※1と呼ぶ免疫反応を引き起こすことを防ぐ「経口免疫寛容※2」の仕組みを、マウスの実験で初めて明らかにしました。この経口免疫寛容が成立するためには、腸管に存在する樹状細胞※3がB7-H1B7-DCという分子を介して、免疫抑制能を持つ制御性T細胞※4を誘導することが必須であることを見いだしました。これは、理研免疫・アレルギー科学総合研究センター(谷口克センター長)樹状細胞機能研究チームの佐藤克明チームリーダーらによる研究成果です。

 免疫寛容は、生体の防御システムにおいて通常の免疫反応を引き起こすことができなくなった状態のことで、生体が自己の成分を異物として認識せず、免疫反応を引き起こさないのは、この免疫寛容によるものです。この自己に対する寛容性が崩れると、自己免疫疾患を発症することが知られている一方で、さまざまな方法によって免疫寛容を成立させて、自己免疫疾患を抑制する治療法の開発が進んでいます。
 食物アレルギーは、免疫寛容が崩れることで起こりますが、通常では、腸管で食物中の異種タンパク質に対する免疫反応を抑制する経口免疫寛容が成立しているため、食物アレルギーは起こりません。この経口免疫寛容の成立には、腸間膜リンパ節※5で、免疫細胞の1つであるT細胞の食物に対する過剰な反応を抑えることが重要と考えられていますが、その仕組みは不明のままでした。
 研究チームは、マウス食物経口投与免疫モデル※6を使い、共刺激分子※7のB7-H1とB7-DCが経口免疫寛容の成立に必須であることを初めて突き止めました。さらに、腸間膜リンパ節の樹状細胞が、B7-H1とB7-DCを介して制御性T細胞を誘導し、食物を異物と認識するT細胞の活性化を阻害するという仕組みを明らかにしました。この経口免疫寛容の仕組みを応用することで、食物アレルギーの画期的な治療法につながる可能性が期待できます。
 本研究成果は、米国の科学雑誌『Blood』オンライン版(9月30日付け:日本時間9月30日)に掲載されます。

背景

 食物中には、生体にとって異物である異種タンパク質が含まれ、飲食により食物アレルギーを引き起こすことがあります。食物の種類や生体の免疫システムの状況によってアレルギーの症状は異なりますが、一般的には下痢、湿疹、じんま疹、咳、ぜんそくを発症します。重篤な場合はアナフィラキシーショックを発症し、命にかかわることがあります。卵、ピーナッツ、そばなどがよく知られていますが、こうした食物アレルギーの予防は社会的な課題の1つで、食品衛生法の施行規則により、特定原材料の表示が義務化されるまでに至っています。
 腸管では、これらの免疫反応を抑制する経口免疫寛容が成立しており、通常、すべての食物に対するアレルギーは起こりません。しかし、食物アレルギーは、経口免疫寛容が適切に働かないことが原因で引き起こされます。経口免疫寛容の仕組みを応用すると、食物アレルギーの画期的な治療法につながると期待されています。
 腸間膜リンパ節を切除したマウスでは、経口免疫寛容成立がしないため、腸間膜リンパ節が、経口免疫寛容の成立に重要な腸管粘膜免疫組織であると考えられています。研究チームのこれまでの研究から、共刺激分子として知られるB7-H1とB7-DCが、腸間膜リンパ節にある樹状細胞で、脾臓(ひぞう)などほかの組織にある樹状細胞よりも高く発現していることが分かってきていました。また、経口免疫寛容の成立には、腸間膜リンパ節において、免疫細胞の1つであるT細胞の食物に対する過剰な反応を抑えることが重要であると考えられていました。しかし、共刺激分子を含む詳細な分子メカニズムは明らかとなっていませんでした。

研究手法と成果

(1)経口免疫寛容の成立に関与する分子の同定

 研究チームは、B7-H1とB7-DCが経口免疫寛容の成立に関与していることを明らかにするために、野生型マウスとB7-H1とB7-DCをそれぞれ欠損したマウス(B7共刺激分子欠損マウス)を用いて、経口免疫寛容の誘導について検討しました。
 野生型マウス1匹に対して、アレルギーの原因物質となる卵白アルブミンを体重20g当たり0.1mgの量と免疫強化剤0.05mgを皮下注射(皮下免疫)すると、卵白アルブミン反応性T細胞が誘発し、卵白アルブミンに対する抗体(抗卵白アルブミン抗体)が大量に産生しました。しかし、あらかじめ卵白アルブミンを体重20g当たり25mgの量を経口摂取させておくと、卵白アルブミン抗体の誘発が80%も阻害されました(図1)。これは、野生型マウスでは、あらかじめ卵白アルブミンを経口摂取させることで、卵白アルブミンに対する経口免疫寛容が成立していることを示しています。しかし、B7共刺激分子欠損マウスでは、あらかじめ卵白アルブミンを経口摂取させても、卵白アルブミン抗体の誘発阻害効果が30%以下にとどまり、免疫寛容が成立しませんでした(図1)。これらの結果から、経口免疫寛容の成立には、腸間膜リンパ節にある樹状細胞でのB7-H1とB7-DCの発現が必須であることが分かりました。

(2)経口免疫寛容の成立における腸管膜リンパ節樹状細胞の役割の解明

 卵白アルブミンをあらかじめ経口摂取した野生型マウスの群は、摂取しなかった群と比較して、腸間膜リンパ節での免疫抑制能をもつ制御性T細胞の数が約1.5倍増加していました。さらに、卵白アルブミンの経口摂取後に制御性T細胞を除去する機能を持つ抗CD25抗体を投与すると、経口免疫寛容は成立しませんでした。これらのことから、卵白アルブミンを経口摂取することによって、腸間膜リンパ節では制御性T細胞が誘導し、卵白アルブミン反応性T細胞の活性化を抑制することにより、経口免疫寛容が成立することが分かりました。
 さらに、試験管内の実験により、野生型マウスから採取した腸間膜リンパ節の樹状細胞が、ナイーブT細胞※8に卵白アルブミンを提示して、制御性T細胞を効率良く誘導することが分かりました。しかし、B7-H1欠損マウスやB7-DC欠損マウスから採取した腸間膜リンパ節の樹状細胞の場合は、その誘導効果がそれぞれ50%以上減弱していました(図2)。また、このB7共刺激分子欠損マウスでは、卵白アルブミンをあらかじめ経口摂取させても、腸間膜リンパ節の制御性T細胞の増加は認められませんでした。これらのことから、腸間膜リンパ節では、食物タンパク質を取り込んだ樹状細胞がナイーブT細胞にその情報を提示した後、B7-H1とB7-DCを介して制御性T細胞を誘導し、食物タンパク質に特異的に反応する反応性T細胞を抑制することで経口免疫寛容が成立することを解明することができました。

今後の期待

今回、経口免疫寛容の成立の仕組みを明らかにしたことから、この仕組みを応用した画期的な食物アレルギーの治療法の開発が期待できます。今後は、B7-H1とB7-DCをターゲットとした自己免疫病の分子標的治療の開発を進めていきます。

※ 補足説明
1.食物アレルギー
 食物を飲食することで体内に取り込まれ、アレルギー状態が発生する免疫反応。食物アレルギーでは、口腔(くう)粘膜の腫脹や腹痛・下痢など口腔・消化管の炎症、皮膚の湿疹や浮腫などが代表的な症状。重篤な場合には、毛細血管の拡張による血圧の低下などでアナフィラキシー症状を誘発することもある。
2.経口免疫寛容
 食物などの生体にとって必要なものを異物として認識せず免疫反応を起こさない仕組み。
3.樹状細胞
 樹状突起を持つ白血球で、多くの亜集団がある。微生物の排除やT細胞に異物の情報を伝える細胞(抗原提示細胞)として働き、免疫反応の本質的な司令塔としての役割を担っている。
4.制御性T細胞
 CD4陽性T細胞の5~10%を占めるT細胞亜集団で免疫抑制能を示す。膠(こう)原病などの免疫病の発症を阻止することが示されている。制御性T細胞を特定するマーカー分子は、表面抗原分子のCD25と転写因子のFoxp3である。
5.腸間膜リンパ節
 多様な免疫細胞が存在し、食物や腸内細菌に対する免疫反応を誘導する腸管免疫組織で、小腸の管をつなぐ膜(腸間膜)に存在する結節状のリンパ節のこと。ちなみに腸管は、大腸、小腸、結腸、回腸などからなる。
6.マウス食物経口投与免疫モデル
 マウスを用いたモデルで、食物と免疫強化剤をともに皮下注射して誘発する食物特異的な免疫反応を、あらかじめ食物を経口投与して阻害することができる実験モデル。
7.共刺激分子
 免疫細胞の細胞膜に発現する分子で、免疫細胞同士がこれを介して結合し、お互いに活性化・抑制の情報を伝える。
8.ナイーブT細胞
 異物に感作されていないT細胞。制御性T細胞の一部は、樹状細胞から提示される抗原などの情報によりナイーブT細胞から分化誘導する。

★ 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎

 アトピー性皮膚炎(AD)の基本的病態はバリア障害アレルギー性炎症である。増悪因子は複数存在し、食物アレルゲンはそのうちの一つと考えられるが、乳児期ほどその関与する割合は高く(食物アレルギー診療ガイドライン2012では約50%)、幼児期を過ぎるにつれて関連は少なくなる。
 アレルギー疾患としてのADは、Th2反応に傾きやすい個体に発生しやすく、病変が慢性化するにつれ、しだいにTh1反応が優勢になってくると考えられていた(Leung DYM, 2004)。しかしながら、2006年にADの約30%に filaggrin(FLGの null mutation が関係していることが発表されて以来、ADは根本的にはバリア障害が重要であり、二次的にTh2反応が惹起され、そのTh2反応が更に表皮を障害するという悪循環に陥る Outside-Inside-Outside 仮説が提唱されている(Elias PM, 2008)。ところが、FLGが100%欠損している尋常性魚鱗癬患者が全員ADを発症することはなく、やはりアトピー素因(Th2反応を起こしやすい体質)がある方がADは重症化することも事実であり、バリア障害とアトピー素因の双方が病因として重要であるというのが現在の認識である。
 食物アレルゲンとADとの関連では、近年経皮膚感作経路が注目されている。バリアの破壊された皮膚から食物アレルゲンの感作が起こり、同じ食物を経口的に摂取すると食物アレルギーの症状が起こる、初めから食物の蛋白質を本来の経路である経口的に摂取していれば、アレルギー反応は起こらず免疫寛容が生じる dual hypothesis をLack らは提唱している(Lack G, 2008)。これらの仮説が皮肉にも、我が国の「茶のしずく石鹸」事例によって証明された。

★ アレルゲンの検査方法

 IgEの測定法はRAST法に始まり、いくつかの新しい方法が開発されているが、固相化されたアレルゲンに結合する血清中特異的抗体を標識した抗IgE抗体を用いて検出するというのが基本原理である。

(参考資料㉚より)

イムノCAP法

 現在最も頻用されている。アレルゲンの固相化にセルローススポンジを用いて結合抗原量を増加させ、標識をRASTで用いられた放射性同位元素から、高感度の蛍光酵素に変えた改良法である。イムノCAP法は食物アレルギーの経口負荷試験におけるプロバビリティー(症状誘発の可能性)が報告されているため、食物アレルギーの診断、耐性獲得の予測など、検査結果をどのように解釈するかがわかりやすい。

MAST33

 同時多項目特異的IgE抗体測定法として multiple antigen simultaneous test(MAST)があり、現在は同時33項目の測定が可能である。
 多種のアレルゲンを結合した専用反応容器(MAST pette)に血清中の特異的IgE抗体を結合させ、アレルゲンと特異的IgE抗体の複合体にペルオキシダーゼ標識抗ヒト抗体を反応させる。この三者複合体にルミノールと過酸化水素を加えて専用ルミノメーターを用いて発行量を測定し、血清中の特異的IgE抗体を定量する。
 一度に多項目測定でき、多くの項目でイムノキャップと良好な相関を示すが、感度はイムノキャップが優れており、スクリーニングとして用いられる場合が多い。

好塩基球ヒスタミン遊離試験(HRT)

 測定原理は、末梢血中の好塩基球に抗原を加えることにより、好塩基球上のIgEレセプターに結合している抗原特異的IgE抗体を架橋して、遊離されるヒスタミン量を測定する。
 単に生体が感作され、血清中に抗原特異的IgE抗体が存在すると云うことを示すのみならず、アレルゲン暴露により隣り合ったIgEレセプター上の特異的IgE抗体が引き寄せられて化学伝達物質が遊離するという次の段階まで起こしうることを、化学伝達物質の一つであるヒスタミンを測ることにより示しているため、より生体内に近い状態をみている検査と言える。
 感度が高いこと、陰性的中率が高いことが特徴。
 イムノキャップが比較的低値であってもHRTが陽性なら実際に食べて陽性であることが多く、陰性であれば実際食べても陰性になることが多いので、負荷試験の適応を考える参考となり得る。

アレルゲン特異的リンパ球刺激試験(allergen-specific lymphocyte stimulation test, ALST)

 細胞依存性の非即時型アレルギーの診断に有用である。
 ヘパリン採血した末梢血が2〜3ml必要であり、血液をリンパ球分離液の上に重層し、遠心分離により単核球分画を採取する。単核球分画にはリンパ球と抗原提示細胞である探求が含まれる。これを培養液中に入れ、アレルゲンとなる抗原を添加して6日間培養すると、添加された抗原と反応するリンパ球が増殖を開始する。培養終了後、細胞成分を熱め、増殖細胞の比率を測定して刺激指数SIF(stimulation index measured by flowcytometry)を算出する。
 新生児や乳児に見られるIgE非依存性の消化管型牛乳アレルギーにおいて、牛乳調製粉乳の除去・負荷試験が陽性の乳児では、大半(>95%)がALSTが陽性であるとされており、イムノキャップとは異なる経路をみる検査として有用である。

★ アレルゲン総論

(食物アレルギーの基礎と対応 宇理須厚雄監修、2011年(株)みらい、他を参考)

抗原とアレルゲン;

 「抗原」は細菌やウイルスなど病原体を含む免疫系に作用する物質全般を指し、その中で特にアレルギー反応を引き起こす抗原を「アレルゲン」と呼ぶ。

アレルゲンは蛋白質:アレルゲンコンポーネントとエピトープ

・食物アレルゲンとしてこれまでに報告されているものはすべて蛋白質あるいは蛋白質と他の成分との反応物。
・蛋白質の多重構造;蛋白質を構成するアミノ酸の配列順序を一次構造といい、それが蛋白質の性質や機能を決定づける。ペプチド結合間でつくられる構造(αヘリックス構造やβ構造)が二次構造であり、これはペプチド鎖を構成するアミノ酸側鎖間の結合で、さらに折りたたまれた構造を三次構造と呼ぶ。さらに蛋白質が2つ以上のペプチド鎖から構成されている場合、その構造を四次構造といい、それぞれのポリペプチド鎖をサブユニットと呼ぶ。蛋白質は三次構造あるいは四次構造をとってはじめて機能する。
・蛋白質が熱変性して凝固する温度は50〜70℃。可溶性たんぱく質であるアルブミン、グロブリン類は特に加熱変性を受けやすくなっている。
・通常、食物には数種類から数十種類の蛋白が含まれる。IgE抗体が反応するそれぞれの蛋白のことをアレルゲンコンポーネントと呼ぶ。
・IgE抗体はアミノ酸の鎖の特定の部位を認識して結合する。IgE抗体が結合するアミノ酸の部位をエピトープと呼ぶ。エピトープには、アミノ酸10個程度の並び順(アミノ酸配列)を認識する連続性エピトープ(linear epitope)と、立体構造を認識する構造的エピトープ(conformational epitope)がある。
・食物中に含まれる炭水化物や脂質などは、その構造が単純でヒトの体内にも同じ成分を持っているため、抗体が作られることはない

アレルゲン・コンポーネントの意義

 各コンポーネントには、
・当該アレルゲンに特異なもの
・他のアレルゲンと交叉性を有するもの
・重篤な症状に関連するもの
などの性質を有することが知られている。これらのコンポーネントを測定することにより、
・感作アレルゲン暴露語に症状が発現する可能性
・発現した症状が重篤であるか
などが推定可能となる。さらに
・免疫療法適応患者の選択に有用
である。
 植物においても種々のコンポーネントが同定されている。
生体防御蛋白10(PR-10)プロフィリンなどは、食物間さらに花粉とも交差性を有し、花粉-食物アレルギー症候群(PFS)に関連する。
脂質輸送タンパク(LTP)は全身症状に関連し、交差性はそれほど強くない。
貯蔵タンパクはそれぞれのアレルゲンに特異的な蛋白群で、重篤な症状に関連する。

アレルゲンの条件としての分子量;

(参考資料㉘より)
 アレルゲンとして作用するためには分子量が1万〜7万である必要がある。
 1万未満では肥満細胞・好塩基球状のIgE抗体間に架橋できない。
 7万以上では消化管から吸収できない。
<卵と牛乳の主なアレルゲンと分子量>

食品 主なアレルゲン 分子量
卵白アルブミン 28,000
オボムコイド 45,000
リゾチーム 14,500
牛乳 αs1-カゼイン 23,600
αs2-カゼイン 25,200
β--ラクトグロブリン 18,300
α-ラクトアルブミン 14,200

主要アレルゲンとは;

ある食品に対するアレルギー患者の50%以上で血清中のIgEと反応する蛋白質を主要アレルゲンと呼ぶ。共通する性質として、
① 分子量が1万〜10万と比較的低分子 ・・・蛋白質がアレルゲンとして機能するためには抗原性が損なわれずに小腸粘膜を通過する必要がある)
② 加熱に対して比較的安定 ・・・卵白の主要アレルゲンであるオボムコイドは100℃・60分での加熱処理でも抗原性に変化が認められない。米の主要アレルゲンもまた同様の処理をしても約60%の活性が残存する。
③ 酵素処理に対して抵抗性を有する ・・・消化酵素であるペプシン、トリプシン、キモトリプシンをアレルゲンに作用させても分解されない。

交差抗原性と交差反応性:

①交差抗原性:ある食物のアレルゲンに反応するIgE抗体が他の食物にも反応する現象。異なる蛋白質でありながらその構造やアミノ酸配列が近似して同じエピトープ構造が存在するため。
②交差反応性:実際に両方の食物にアレルギー症状を起こす現象。
 ・・・交差抗原性があっても、すべての患者が交差反応性を有するわけではない。

<アレルギー症状から見た交差反応性>(「食物アレルギー診療ガイドライン2012」より)

アレルギー反応から見た交差反応性.jpg

脂質とアレルギー;

 脂質はアレルゲンにはならないが、アレルギー症状に影響を与えることがある。
 脂質の90%は油脂(中性脂肪)であり中性脂肪はグリセリン1分子と脂肪酸3分子からできている。この脂肪酸には様々な種類があり、どのような脂肪酸が多いかにより中性脂肪の性質が変わり、人体に与える影響も異なる。
 脂肪酸にはその構造(炭素数と二重結合の位置と数)により飽和脂肪酸、n-9不飽和脂肪酸、n-6不飽和脂肪酸、n-3不飽和脂肪酸の4つに分類される。体内でn-6不飽和脂肪酸はロイコトリエン4(アレルギー症状を誘発する)に、n-3不飽和脂肪酸はロイコトリエン5(アレルギー症状を生理活性が弱い)へ変化する。
 n-6不飽和脂肪酸を多く含む植物油を減らし、n-6不飽和脂肪酸が少ないオリーブ油やキャノーラ油に変えたり、n-3不飽和脂肪酸(α-リノレン酸)を多く含むエゴマ油やしそ油を食べたりすることで症状を軽くできる可能性がある。

腸管のバリア機構と蛋白質の吸収〜新たな食物アレルギー成立のリスクに関して〜

(参考資料㉘より)
 ターナーらはラットの腹腔内にあらかじめ卵白アルブミンを注射して免疫反応を起こすようにしておき、その後ラットにウシ血清アルブミンを卵白アレルゲンと共に投与した。すると卵白アルブミンを投与しなかった場合に比べてウシ血清アルブミンの血中濃度は有意に高くなることを確認し、腸管におけるアレルギー反応が同時に存在する別の蛋白質の吸収を促進することを示した。
 この結果は、いったん食物アレルギーが成立すると、新たな食物アレルギーが成立しやすいという乳児期にみられる現象と一致しており、乳児期における早期寄りのアレルゲン除去を指導する根拠となっている。

腸管分泌型IgA抗体の役割

(参考資料㉘より)
 分泌型IgAは抗原に特異的に働きかける。省庁に侵入した抗原に結合し凝集することで、異物の体内への吸収を妨げ、体の外に流れやすいようにしている。
 IgAは出生後作られ始める抗体の一つであるが、乳児期は成人の十分の一以下しか作られず、異物を流し出すのに十分ではない。食物アレルギーの子どもは2歳頃になると血液中のIgAの量が成人の半分近くまで増える。そのため、この頃になると腸管内に分泌される分泌型IgAにより、抗原性を持つ大きなものは吸収されずに便中に排泄されるようになると考えられている。血液中にアレルゲン特異的IgE抗体があっても、アレルゲンである食品を食べた時に症状を起こさなくなることが多くなる理由である。
 しかもこの2歳というのは、ちょうど消化機能が発達してきて蛋白質の消化も十分に行われるようになる時期でもある。

★ アレルゲン各論

(①小児科診療2010年7月号、②「食物アレルギーの基礎と対応」2011年(株)みらい、他を参考)

鶏卵

 鶏卵1個(約50g)は、30-35gの卵白と17-18gの卵黄が含まれる。卵白には蛋白質が11.3%含まれそれが主なアレルゲンとなる。
 鶏卵アレルゲンは加熱によって反応性が低下することが特徴である。その程度は加熱温度の高さと加熱時間の長さに比例する。例えば、フライの衣に使用された卵は、180℃近い高温に接しているため反応性が大きく低下している。ゆで卵でも、通常のゆで時間である12分と、60分ゆでた卵では反応性に違いがある。

蛋白名 部位 含有率

アレルゲン

アレルゲン

特徴

オボムコイド

卵白 11% Gal d  1 ++   熱で凝固しない、消化に安定

オボアルブミン

卵白  54%  Gal d   2 ++   熱で凝固する、消化に不安定

オボトランスフェリン

卵白  12%  Gal d   3  +  

リゾチーム

卵白

 3-4%

Gal d   4  +  風邪薬に含まれる

血清アルブミン

 卵白/卵黄   Gal d   5  +/-  加熱で反応性が消失

 卵黄に含まれる蛋白は卵白とは異なり、その中で血清アルブミンがアレルゲンになる。血清アルブミンは加熱によりアレルゲン性が失われやすい。
 鶏卵の卵白は、うずら卵白とは交差反応するが、鶏肉や魚卵(イクラ、タラコなど)とは交差抗原性を認めない。鶏肉の主要アレルゲンである血清アルブミンは加熱によりアレルゲン性をほとんど失う。

卵黄について(「食物アレルギーの基礎知識」より)
 卵黄の固形分は2/3が脂質、1/3が蛋白質、およびわずかな炭水化物からなり、蛋白質の大部分はリポたんぱく質として存在し、抗原性がほとんどない。卵黄中には卵白抗原の一つでもあるオボトランスフェリンが含まれているが、粘膜を通過しにくく加熱に弱いのでほとんど問題にならない。OVAやOMの含有量は痕跡程度である。そのため、卵黄摂取によるアレルギー症状は、生で分けるときに混入する卵白によるものであると考えてよい。(伊藤節子先生)

うずら卵について
 うずら卵と鶏卵の間には交差抗原性があるが、うずら卵はほとんどが卵黄で、卵白はわずか。また、給食では水煮が用いられることが多く、水煮のうずら卵ではOVAとOMは検出感度以下になっているので、ほとんどの卵アレルギー児が食べることができる。(同書:伊藤節子先生)

牛乳

 牛乳には3.3%の蛋白質が含まれる。その中の80%を占めるカゼインと、10%を占めるβ-ラクトグロブリンが代表的なアレルゲンである。これらの成分は、ヒツジやヤギ、その他の動物のミルクに共通に含まれる。
 主要アレルゲンであるカゼインは、特定の立体構造を持たない蛋白で、加熱によってアレルゲン性が低下しにくい反面、消化酵素による分解を受けやすいという特徴がある。
 牛乳は乳酸菌などを用いてヨーグルトやチーズなどの発酵食品に加工されるが、乳酸発酵によるアレルゲン性の低下は、一般的には麹菌を用いるみそやしょうゆの発酵のようにアミノ酸レベルまで分解されることはなく、牛乳と同等のアレルゲン性を残しているものと考えられる。
 以上より、牛乳成分を含む加工食品では、加熱や発酵といった加工処理の違いはあまり影響せず、蛋白質の含有量が最も問題となる。例えば、脱脂粉乳(34g/100g)やチーズ(22.7g/100g)は牛乳蛋白が濃縮されているが、一方でバター(0.6g/100g)は主に脂質であり、蛋白含有量は少ない。

蛋白名  含有率

アレルゲン

特徴

カゼイン

(80%)

α1-カゼイン

20%

++ 

 熱で変化しない、消化酵素で分解されやすい

乳清蛋白

(20%)

β-ラクトグロブリン 10%   熱でわずかに変化する
α-ラクトアルブミン 4%  +/- 母乳にも同様の成分が含まれる 
血清アルブミン  1%  +/-  加熱で反応性が消失、牛肉にも存在する

小麦

 即時型小麦アレルギーの多くは、ライ麦、大麦と交差反応するが、米やその他の穀物には反応を示さない。
 小麦はパンやクッキーのように高熱で焼かれてもアレルゲン性が低下することがなく(耐熱性)、小麦加工品の摂取量は、主として小麦蛋白の含有量を参考に考えることができる。
 パスタに使われるデュラム小麦は小麦粉の大部分を占めるパン小麦と同じ小麦の仲間であり、アレルゲン性に違いはない。
 みそやしょうゆは1年近い醸造過程で小麦蛋白がアミノ酸まで分解されているため、ごく一部の重症者を除いて摂取可能である。

 主要アレルゲンとなる蛋白は、グリアジン、グルテニン、アルブミン、グロブリンなど。グリアジンとグルテニンは小麦特有の成分で、水を加えて練ると特有の粘弾性を持つグルテンをつくる性質がある。
 これらは大きく分けて、

・水溶性(かつ塩溶性):アルブミン、グロブリン
・不溶性
 ーーアルコール可溶性:グリアジン
 ーーアルコール不溶性(アルカリ可溶性):グルテニン

に分類される。このような特性から、水溶性成分のみを評価している現存の小麦特異的IgE抗体の診断性能は、プロバビリティカーブからもわかるように鶏卵・牛乳より劣る。
 水溶性画分のα-アミラーゼインヒビターは、小麦粉を吸入して喘息を起こすパン屋喘息(Baker's asthma)の原因アレルゲンである。ωグリアジンはFDEIAn の原因アレルゲンとして同定され、後に即時型小麦アレルギーでも主要アレルゲンであることが明らかになった。

小麦のアレルゲン・コンポーネント(参考資料㉚:p2047-2050より)
 グリアジンに含まれるコンポーネントひとつであるω-5グリアジン(Tri a 19)は、成人の小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)患者の原因として見いだされた。成人のWDEIAにおいて、小麦及びグルテン特異的IgE抗体の感度は約50%と低い。一方、Tri a 19特異的IgE抗体は80%と高く、診断に有用である。
 小児の即時型小麦アレルギーでは、小麦陽性かつTri a 19特異的IgE抗体高値例は小麦アレルギーの可能性が高い。最近、イムノキャップによるTri a 19のプロバビリティカーブも算出された。
 Tri a 19の他にも多数のコンポーネントが同定され、その有用性が検討されている。
 グルテニンの一つである高分子グルテニン(Tri a 26)は、Tri a 19特異的IgE抗体陰性の成人WDEIAのうち約70%が陽性となり、Tri a 19とTri a 26特異的IgE抗体の同時測定は、成人WDEIAの診断に有用となる。
 小児のWDEIAでの検討では、Tri a 19およびTri a 26特異的IgE抗体の単独冠左例が認められ、成人とは感作パターンが異なるが、小児においても両者の同時測定は有用である。

ソバ

 タデ目タデ科の一年草で、種子の胚乳の部分を粉にして加工し食用にすることが多い。マメ科の植物とともに広義の穀物に分類され、米や小麦、トウモロコシなど他の穀物との交差反応性は抗原的には認めらるが、臨床的には見られないことが多い。
 蛋白質の必須アミノ酸含有量は非常に高く、機能性成分としてルチンを多く含む。
 ソバアレルゲンとしては約17kDaのアレルゲンCや24kDaの蛋白質が知られている。アレルゲンは耐熱性かつ水溶性でアレルゲン性が強く、アナフィラキシーを起こしやすく、耐性は獲得しにくい。
※ 主要アレルゲンに関するコンセンサスはまだ得られていない。

ピーナッツ

 ピーナッツは系統的には双子葉類バラ目マメ科に属し、ナッツ(木の実)よりマメ科の大豆やインゲン、エンドウ、小豆、ソラマメ、リョクトウなどに近い。ピーナッツアレルギー患者は、さまざまな豆類の芽や種子を摂取することによっても症状が誘発されることが報告されている。
 ピーナッツの主要アレルゲンとしてAra h1、Ara h2、Ara h3などの約17〜64kDaの蛋白質が知られている。交差抗原性は豆類だけでなく、ナッツ類との間にも認められる。これらの共通点は「タネを食べる」ということで、類似した構造を持つ貯蔵蛋白がアレルゲンになることによる。
 ピーナッツの貯蔵蛋白は、一分子に対してIgE抗体が反応するエピトープが多く存在するため、わずかな量でも強く反応する力を持っている。さらにこれらが高温でローストされると3分子の蛋白が結合してさらに安定した構造をとるため、アレルゲン性が増強する
 ピーナッツアレルギーでも、わずかではあるが貯蔵タンパクの特異的IgE抗体が検出されず、Bet v 1 ホモログである Ara h 8 特異的IgE抗体のみが検出され、主として口腔粘膜症状を誘発する症例が存在する。
 すべてのナッツ類にIgE抗体が同等の値を示す場合は、糖鎖(cross-reactive carbohydrate determinant, CCD)を認識する抗体を検出していることがあり、アレルギー症状を認める可能性は低い。

交差抗原性に関与するアレルゲンコンポーネント;(参考資料㉚:p2019-2024より)
 一つの食物に複数のアレルゲンコンポーネントが存在し、それぞれが異なる臨床像をもたらす場合がある。例えば、種子類(ピーナッツや大豆)のアレルゲンは、大きく二つに分けられる;
貯蔵タンパク:豆の中に蓄えられて発芽するための栄養になるもの。
 貯蔵タンパクは、その分四郎から7Sグロブリン、11Sグロブリン、2Sアルブミンに分画される。例えばピーナッツの2Sアルブミン(Ara h 2)はアナフィラキシー型のピーナッツアレルギーに強く関与する。貯蔵タンパクは手指の内部にしか存在せず、種子間相互では構造上の類似性はあるものの、強い交差反応性は認めない。
汎アレルゲン:植物の茎や葉も含めて広く存在するタンパク。
 代表はプロフィリン、Bet v 1 ホモログ、脂質輸送タンパク(lipid transfer protein: LTP)であり、花粉・果物・野菜・種子類など植物由来のアレルゲンに幅広く存在する。プロフィリンは植物細胞の骨格を形成する蛋白質、Bet v 1 ホモログは植物が自らの身を守るために産生する生体防御タンパク(pathogenesis-related protein 10: PR-10)、LTP も同様にPR-14に分類される蛋白質であり、多くの果物・野菜でこれらのアレルゲンが同定・命名されている。

大豆

 主要アレルゲンは貯蔵たんぱく(β-コングリシニン、グリシニン、コングルチン)に存在し、大豆により全身性の即時型アレルギー反応を起こす人はこれらの蛋白に反応している。
 一方、花粉を含む植物全体に共通性のあるプロフィリンPR-10だけに反応する人は口腔アレルギー症候群や豆乳だけに反応する傾向がある。
 大豆蛋白の多くは糖蛋白であり、その糖鎖(Cross-reactive Carbohydrate Determinant, CCD)を認識するIgE抗体は症状を起こす力が弱いことが知られている。そのため、IgE抗体が陽性でも大豆にアレルギー症状を持たないことがしばしばある。
 このようにアレルゲンが複雑なため、大豆アレルギーの臨床像は一様ではなく、豆乳だけに反応する例、豆腐だけに反応する例、納豆で遅発型アナフィラキシーを起こす例などの報告もある。
 みそやしょうゆ、納豆などの発酵食品は、製造過程で蛋白が分解されるため、アレルゲン性は大きく低下する。
 あずき、そらまめ、えんどう、いんげんまめなど他の豆類とは交差抗原性を持つと思われるが、十分評価されていない。

種実アレルギーにおけるクラス1とクラス2食物アレルゲン;(参考資料㉚より)
 種実類アレルギーは、
・クラス1食物アレルゲン:貯蔵タンパク
・クラス2食物アレルゲン:交差抗原性の結果生じる
に区別される。
 即時型大豆アレルギーの小児では、貯蔵タンパクである Gly m 5、Gly m 6 特異的IgE抗体が検出される。一方、成人の豆乳を中心とした大豆アレルギーでは、Bet v 1 ホモログである Gly m 4 が主なアレルゲンとなる。その場合の感作原は欧米ではシラカンバ、日本ではハンノキ花粉であり、豆腐にまで加工された大豆には反応しないことも特徴である。

大豆のアレルゲン・コンポーネント(参考資料㉚:p2047-50より)
 貯蔵タンパクである11Sグロブリン(Gly m 5)および7Sグロブリン(Gly m 6)が大豆摂取後の重篤な誘発症状に関連する。また、豆乳摂取後に重篤なPFSを呈する例が報告され、多くが大豆特異的IgE陰性となる。本症では、ブナ目花粉の主要コンポーネントと強い交差性がある大豆PR-10(Gly m 4)が原因と名考えられ、多くがGly m 4特異的IgE抗体陽性となることから、本PFSの診断にGly m 4特異的IgE抗体測定が有用となる。

果物・野菜

 多くの果実が果実同士だけでなく野菜や花粉、ラテックスなどと交差反応性を示す。

 果物とは食用になる果実を指し、狭義には樹木になるもの(木本性)を指すが、メロンやイチゴ、スイカなど草本性の食用果実(本来は野菜)も広義の果物(果実的野菜)として分類されることがある。

 果物のアレルゲンの代表としてPR蛋白質(pathogenesis-related proteins)が挙げられる。PR蛋白質は植物の生体防御蛋白質で17以上のファミリーが知られており、リンゴ、サクランボ、アンズ、モモ、洋ナシなどの果物だけでなく、セロリ、ニンジン、パセリ、ジャガイモ、トウモロコシ、大豆、シラカバ、ハンノキ、クリなど多くの野菜や花粉で確認されている。
 他の交差反応性が高いアレルゲンには profilinCCD(cross-reacting carbohydrate determinant)と呼ばれる糖鎖構造があり、シラカバ、ハンノキ、イネ科の植物やオリーブなどで確認されている。
 多くの場合、抗原は不安定なので、一部(セロリ)を除き加熱などの調理によって症状は出にくくなる。したがって、ジャムやママレード、缶詰めなどのように熱処理や酸処理を加えると摂取可能となることが多い。

※ 果実のアレルゲンとしてPR蛋白質(pathogenesis-related proteins)が挙げられ、これは果物(リンゴ、サクランボ、アンズ、モモ、洋ナシナド)のみならず、多くの野菜(セロリ、ニンジン、パセリ、ジャガイモ、トウモロコシ、大豆など)や花粉(シラカバ、ハンノキ、クリなど)と交叉反応を起こすことが知られている。
CCD;代表的な糖鎖は、アスパラギン酸結合性のグリカンであり、その構造はパイナップルのプロメラインや西洋わさびペルオキシダーゼでよく解析されている。側鎖中のキシロースとフコースの存在がIgE抗体エピトープを形成するが、マスト細胞を脱顆粒させる活性は弱く、誘発症状を惹起させにくい。臨床的には、多種の花粉や果物・豆類に一様に特異的IgE抗体が検出される場合の多くがこれに相当する。これをやみくもに多種食物アレルギーと判断することなく、摂取時の誘発症状を慎重に確認することが重要である。

ラテックス・フルーツ症候群(LFS)

(参考資料㉚: p2019-2024より)
 ラテックスアレルギーは、頻回の外科手術や導尿カテーテルなどでゴム製品との接触を繰り返す者や、ゴム手袋を職業的に頻用する医療従事者などに発生する、アナフィラキシーを主体とする即時型アレルギー疾患である。
 天然ゴム(ラテックス)は、主にパラゴムの木から得られる受益を減量として作られ、そこに含まれる1.5%程度の蛋白質成分がアレルゲンとなる。
 ラテックスアレルゲンとしては、13種類の蛋白質(Hev b 1〜13)が同定・命名されている。その一つであるプロへ部陰(Hev b 6.01)はN末端側に存在するヘベイン(Hev b 6.02)ドメインと、C末端側ドメイン(PR-4, Hev b 6.03)によって構成されている。
 一方、アボガド・クリ・バナナに含まれるクラスⅠエンドキチナーゼ(PR-3)は、Hev b 6.02と同様のヘベインドメインを含むため、両者には交差抗原性が存在する。
 そのために、ラテックスアレルギー患者の30〜50%が、これらの食物を摂取するとアナフィラキシー、喘息、蕁麻疹、口腔粘膜症状などの即時型アレルギー反応を発症する。この場合、症状はOASに限定されず、消化管から吸収されたアレルゲンが全身症状を引き起こすものと考えられる。

魚類

 主要アレルゲンとしては、以前はアレルゲンMとされていた12kDaのパルブアルブミン(parvalbumin:PA)が知られており、各種魚類間で交差反応性を示し、加熱に対して安定であるという。しかし実際にはほとんどすべての魚にアレルギーを示す場合や、ある特定の魚だけに反応し、他の魚は摂取可能であるという場合も少なくない(理由の詳細は不明)。また、PAは両生類や爬虫類の筋肉にも含まれており、魚アレルギーの患者はカエルなどの摂取にも注意を要する場合がある。
 PA以外のアレルゲンとしてコラーゲンがあるが、哺乳類のコラーゲンであるゼラチンとの交差反応性はない。
 「青背の魚はアレルギーが強い」という言い伝えは、鮮度の落ちた魚肉に区踏まれるヒスタミンによる蕁麻疹から由来したモノであり、真の魚アレルギーを示しているわけではない。
 ちくわやかまぼこのような練り製品は水さらしの過程でパルブアルブミンが減少する。ツナ缶は加圧・加熱処理によって蛋白が分解されている。かつお節や煮干しのだしは発酵によっれたんぱくが分解した後アミノ酸として抽出される。そのため、これらのアレルゲン性は弱く、魚アレルギーのヒトでも魚のだしは摂取できる可能性が高い。

パルブアルブミン
 ほとんどの魚に存在するので魚アレルギー患者は多種類の魚に対してアレルギー反応を起こす可能性がある。また、熱抵抗性があり煮ても焼いても症状の出やすさは変わらない。
 パルブアルブミンは多くの魚種で共通性の高いタンパク構造をとるため、交差抗原性が高い。つまり、多くの魚種でラスト検査値(特異的IgE抗体価)は類似した値を示しやすい。さらにパルブアルブミンは両生類や爬虫類の筋肉にも含まれている。
コラーゲン
 日本の魚アレルギー患者の1/3はコラーゲンに反応し、しかもその半数がコラーゲンのみをアレルゲンとし、欧米に比べてコラーゲンに反応する例が多いとされている。魚コラーゲンと動物コラーゲンに共通抗原性はなく、魚アレルギーでも牛肉/豚肉/鶏肉は問題なく食べられるのでご心配なく。コラーゲンは20〜30℃くらいで変性コラーゲン(ゼラチン)になるが、アレルゲン性は消えない。しかし加熱変性しやすいため、煮る/焼くなどの調理でアレルゲン性の低下が期待できる。

※ 魚類分類は形態学的分類(科・目・属)であり、DNA分析的な系統発生分類ではないので、分類上近くてもアレルゲン性が近いわけではなく参考にならない。

甲殻類・軟体類

 エビ・カニなどの甲殻類の主要アレルゲンは約37kDaのトロポミオシン(tropamyosin:TM)である。熱に対して安定であり、各種甲殻類のTMは交差反応性を有し、かつ臨床的交差反応性も低くない。また交差反応性は甲殻類にとどまらず、ゴキブリ、ダニなどの節足動物や貝類・軟体類との間でも認められている。イカ・タコなどの軟体類の主要アレルゲンもTMであるが、他にパラミオシンがある。
 したがって、エビアレルギーの場合、カニやアサリ、カメノテ、フジツボだけでなく、タコ、イカなどにも反応する可能性がある。一方で、エビだけに反応しカニは摂取可能という例もいる。
 パルブアルブミンとトロポミオシンに交差抗原性は認めない。

イクラ(魚卵)

 主要アレルゲンはbeta'-componentとlipovitellinで、タラコ、カズノコ、トビコ、シシャモなどとの間で交差反応性が認められているが、魚との交差反応性はないという報告もある。
 イクラアレルギーが圧倒的に多く、加熱したタラコやシシャモの卵のアレルギーは少ない。魚卵は鶏卵の卵白と交差反応することはなく、卵黄や魚肉とはごく僅かな交差反応を認めるものの、独立したアレルゲンと考えられる。

肉類

(文献①)食肉アレルギーは牛肉、鶏肉、豚肉によるものが多く、馬肉、羊肉、鹿肉のアレルギーは希である。肉類のトロポミオシンは甲殻類の主要抗原であるトロポミオシンと相同性が認められている。アルブミンは加熱による低アレルゲン化が起こりやすく、食肉の多くは加熱調理して摂取されるためアレルギー症状は出にくいとされる。鶏肉においては鳥類間での交差反応性が指摘されているが、やはり加熱調理により低アレルゲン化する可能性が指摘されている。
 以上より、食肉アレルゲンがラスト陽性であっても加熱や湯抜きによって利用可能となることは多い。

(文献②)動物の肉は、ヒトの筋肉と蛋白の構造が似ているために、アレルゲンとなることはほとんどない。主要なアレルゲンは血液中に含まれる血清アルブミンとグロブリンであり、これらの血清蛋白は熱に不安定なため、十分に加熱調理した肉はアレルギー症状を誘発することはほとんどない。鶏肉、豚肉、牛肉はそれぞれアレルゲン性が異なる。

ゴマ

 ゴマ目ゴマ科の一年草で、黒ゴマ、白ゴマ、金(茶)ゴマの3種類があり、種子を食材とする。
 アレルギー症状と血清IgE値との相関は低く、特異的IgE抗体が陽性であっても臨床的に症状が出るとは限らない。
 ゴマの主要アレルゲンには種子内貯蔵蛋白質として、2Sアルブミンや7SグロブリンなどSes i1〜Ses i5の五種類の蛋白質が知られてきた。細菌、新しいアレルゲンとしてSes i6、Ses i7が同定された。
 主要アレルゲンとしてSes i3はピーナッツの主要アレルゲンAra h1と80%の相同性を有しており、ライムギやヘーゼルナッツ、キウイフルーツ、クルミなどと共通抗原性があると云われている。
 ペーストやすりごまは吸収量が多いためか反応を起こしやすく、粒ゴマは少量なら摂取可能という患者も存在する。

■ 症状

★ 食物によるアナフィラキシーの臨床的重症度

Grade 皮膚 消化器
呼吸器
循環器 神経
1

ー限局性ー

掻痒感

発赤

じんま疹

血管性浮腫

口腔内掻痒感

口腔内違和感

軽度口唇腫脹



2

ー全身性ー

掻痒感

発赤

じんま疹

血管性浮腫

(上記に加え)

悪心

嘔吐

鼻閉

くしゃみ


活動性変化
3 上記症状

(上記に加え)

繰り返す嘔吐

鼻汁・鼻閉

咽喉頭の掻痒感・絞扼感

頻脈(+15/分) 不安
4 上記症状

(上記に加え)

下痢

嗄声

犬吠様咳嗽

嚥下困難

呼吸困難

喘鳴

チアノーゼ

(上記に加え)

不整脈

軽度血圧低下

軽度頭痛

死の恐怖感

5 上記症状

(上記に加え)

腸管機能不全

呼吸停止

重症徐脈

血圧低下

心拍停止

意識消失

(Sampson HA, Pediatrics, 2003:111:1601-1608, より一部改変)
(注)Grade4以上ある場合は、30件に1件の症例で二相性反応(一旦収まった症状が数時間〜72時間後に再度現れること)が認められるので、重症例では最低4時間程度の観察が必要(場合によっては入院も)である。

■ 診断

★ 食物アレルギーの臨床型分類

臨床型 発症年齢 頻度の高い食物 耐性獲得(緩解) アナフィラキシーショックの可能性 食物アレルギーの機序
新生児・乳児消化管アレルギー 新生児期・乳児 牛乳(育児用粉乳)
多くは寛解
(±) 主に非IgE依存性
食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎 乳児期 鶏卵、牛乳、小麦、大豆など 多くは寛解
(+)
主にIgE依存性
即時型症状 乳児期/成人期

乳児/幼児:鶏卵、牛乳、小麦、そば、魚類、ピーナッツなど

学童/成人:甲殻類、魚類、小麦、果物類、そば、ピーナッツなど

鶏卵、牛乳、小麦、大豆などは寛解しやすい

その他は寛解しにくい

(++) IgE依存性
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEIAn/FDEIA) 学童/成人期 小麦、エビ、カニなど 寛解しにくい (+++) IgE依存性
口腔アレルギー症候群(OAS) 幼児期/成人期 果物、野菜など 寛解しにくい (±) IgE依存性

※ 疾患の頻度;
・新生児消化器症状型:約0.2%(2009年、宮沢ら;ただしハイリスク施設を対象にした調査)
・FEIAn:中学生で0.017%(2004年、相原ら)

★ 食物アレルゲンのRAST値の読み方

(「食物アレルギーの基礎と対応」宇理須厚雄監修、2011年(株)みらい、他を参考)

卵・牛乳のプロバビリティ・カーブ(「食物アレルギーの診療の手引き2011年」より)

プロバビリティ・カーブ.png

 オボムコイドigE抗体は、加熱鶏卵の摂取可否を決めるのに有用とされているが、実際には卵白IgE抗体と同程度の値をとることが多く、抗体価だけで判断することはできない。卵黄IgE抗体価は卵白よりもやや低い値をとるが、加熱した卵黄に対するアレルギーの有無とは全く関連が見いだせない。
 卵白もオボムコイドも、IgE抗体価の高さとアレルギー反応を起こす摂取量(反応域値)や症状の強さを反映することはなく、卵アレルギーの強さを検査結果で推測することはできない。

特異的IgE抗体価の推移と耐性獲得
 2歳までの卵白特異的IgE抗体が耐性獲得群では3.4UA/ml、額星群の平均11.2UA/mlに比して低値であり、50UA/ml以上では耐性化が遅い(Savageら、2007年)。
 卵白アレルゲンの中でもオボムコイド特異的IgE抗体価が高い場合には耐性獲得しにくい。

牛乳:

 牛乳IgE抗体価は、クラス5以上であれば症状発現率が高い上に、症状を誘発する摂取量も少ない傾向が認められる。しかし、クラス3-4では症状誘発率は約50%にとどまる。
 カゼインIgE抗体が高値であればほぼ確実に牛乳アレルギーと云うことができる。α-ラクトアルブミンやβ-ラクトグロブリンIgE抗体も測定できるが、診断的価値は乏しい。

小麦:

 小麦IgE抗体価と症状発現率との相関は、クラス5でも約60%と高くない。
 小麦アレルギー患者の多くはIgE抗体が小麦だけに反応するので、小麦IgE抗体価が米より高い値をとる。一方、小麦と米が同程度のIgE抗体価を示す人では、小麦アレルギーの症状を認めることは少ないことが知られている。それはIgE抗体が小麦や米、さらには他の穀物やイネ科の花粉などとも交差反応するためである。
 この特徴を理解して小麦と米のIgE抗体価を比較してみれば、小麦アレルギーの可能性をより正確に推測することが可能となる。
 「ω-5グリアジンIgE抗体」は、抗体価がクラス3以上であれば、ほとんど例外なく小麦アレルギーと診断可能である。

特異的IgE抗体価の推移と耐性獲得
 小麦やグルテン特異的IgE抗体価よりもω-5グリアジン特異的IgE抗体価の推移(低下)が耐性獲得の指標になる(Shibataら、2011年)。

ソバ:

 ソバアレルギー患者ではソバIgE抗体が小麦や米よりも高値をとる傾向があります。逆に、ソバと小麦のIgE抗体が同程度かソバの方が低値の場合、ソバアレルギーである可能性は低くなります。そうした人の多くは、米やイネ科花粉のIgE抗体も陽性になります。

大豆:

 ラスト(特異的IgE抗体価)による診断は困難で、クラス4以上でも症状の出る確率は20%にとどまり、当てにならない。一方、大豆IgE抗体が陰性でも症状誘発例が存在する。
 経口負荷試験を行っても、その結果と日常的に食べたときの印象が一致しないこともあり、正確な診断が難しい。

魚類・魚卵:

 魚の種類によるIgE抗体価の違いは、症状を起こす魚の種類を必ずしも反映しない。IgE抗体が陰性でも症状を認めることがある。
 一人の患者が複数の魚に反応することが多く、87%の患者が4種類以上の魚にラスト陽性を示したとの報告もある。
 イクラアレルギーではラストが有用である。

甲殻類・軟体類・貝類

 エビのラストはクラス3-4でも20%以下と低く、逆に明らかなアレルギー症状を持つ人でもラスト陰性社が20%近く存在し、あまり当てにならない。
 エビとカニの抗体価は極めて強く相関するが、抗体価の高さとエビ・カニアレルギーの診断には一定の傾向を認めない。

肉類:

 ラスト陽性であっても、除去が必要な例はまれ。

★ ラスト検査陽性でも症状が出ないことがある

 ラスト検査(特異的IgE抗体)はタンパク質の特定の構造(エピトープ)を認識して結合する。エピトープの中には、一連のアミノ酸配列で規定される連続的エピトープと、立体構造上近接した不連続なアミノ酸配列で規定される構造的エピトープが存在する。前者はタンパク分解酵素でエピトープ部分が切断されなければIgE抗体結合能が保持されるが、後者は加熱や化学的修飾による変性によりタンパクの立体構造が変化するとIgE抗体結合能を失う可能性がある。
 さらに生体内には、アレルギー反応を抑制する阻止抗体(主としてIgG4抗体)調節性T細胞など、過剰な免疫応答を抑制するメカニズムが存在する。
 こうした種々の要因により、血液中に特異的IgE抗体が存在しても、それが臨床的に誘発症状を引き起こさない現象が発生し得る。

★ 食物負荷試験で重篤な症状を誘発しやすい要因

・・・これらに該当する場合は負荷試験を避ける方がよい(食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009)。

1)食品接種による誘発症状の既往
・アナフィラキシー、ショック、呼吸器症状などの既往
・過去1年以内に重篤な症状誘発
・誘発したアレルゲンがピーナッツ、木の実、甲殻類、魚類、ソバ
・微量のアレルゲン食品の摂取で症状が出現、アレルゲン性の低い加工品でも誘発歴を有する場合、経母乳的摂取でも誘発歴のある食品
2)検査データ
・食物特異的IgE抗体価が高値(次項参照)
3)患者の背景と基礎疾患
・年齢が1歳未満
・気管支喘息合併例
・合併アレルギー疾患の増悪時

★ 負荷試験を行わなくても食物アレルギーと診断できる特異的IgE抗体価(UA/mL)のカットオフ値

1)アメリカの報告

食品 2歳以下 2歳以上

2

7
牛乳 7 15
20
ピーナッツ  ー 14
 ナッツ  ー 15

2)Sampson(JACI 2001)
特異的IgE 卵白 牛乳 ピーナッツ
Diagnositic decision points 7 15 14 20

3)Komata(JACI 2007)
年齢 1歳未満 1歳 2歳以上

卵白

13.0 23.0 30.0
牛乳 5.8 38.6 57.3

抗原特異的IgE抗体価と負荷試験陽性適中率

年齢

卵白 牛乳
90% 95% 90% 95%

1歳未満

6.4 13.0 3.6 5.8
1歳 10.9 23.0 20.8 38.6
2歳以上 17.0 30.0 33.8 57.3

4)Ando(JACI 2008)
負荷食品 生卵白
加熱卵白
特異的IgE 卵白 オボムコイド 卵白 オボムコイド
Positive decision point  7.38 5.21 30.7 10.8

※ 小麦、大豆については上記のような抗体価からの誘発予測は困難であるとされる。

★ 食物経口負荷試験に影響する薬剤の中止期間の目安

・ヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬):72時間
・β刺激薬:12時間
・テオフィリン製剤、経口DSCG:12時間

★ アレルゲンのクラス分類

クラス1アレルゲン(完全食物アレルゲン)・・・経口摂取して消化管から吸収され感作が成立するタイプ。
クラス2アレルゲン(不完全食物アレルゲン)・・・経気道や経皮的に感作が成立し、交差反応性のために経口摂取してアレルギー症状が誘発されるタイプ。加熱や消化酵素に弱く、果実や野菜に多い。

★ 食物アレルギーの診断(慈恵会医科大学:勝沼俊雄Dr)

(小児科診療2010年7月号)
 ゴールデン・スタンダードは「経口負荷試験」であるが、アナフィラキシーのリスクを伴う。そのリスクを減らすために各種検査が存在し、最も一般化されているのは特異的IgE抗体(RAST)であろう。
 しかしながら、「RAST陽性=即食物制限」という単純な解釈は正しくない。摂取による反応は、①年齢、②抗原種(アレルゲン)、という2要素に左右されるためである。
① 乳児〜幼児期前半(3歳以下)では、RASTが陽性ならば経口負荷陽性の可能性が非常に高い。ところが3歳を過ぎると、スコア陽性でも摂取可能例が増えてくる。
② 動物性蛋白抗原(卵、牛乳など)ではRASTと経口摂取反応との間には相関性が認められる。すなわち、RAST高値ほど経口負荷陽性例は増える。一方で、穀物抗原(小麦、大豆など)では、とくに3歳以上において、このような相関性は消失する。これをグラフ化したのが「probability curve」である。

■ IgE-mediated food allergy の原因抗原診断におけるピットフォール 伊藤節子(同志社大学) 小児アレルギー学会誌2011;25:665-673

 食物アレルギーの診断・治療・管理のむずかしさは、負荷試験の結果から摂取可能と判定された食品の摂取可能量を摂取した場合でも、症状を誘発することがあること、さらに、そこには消化・吸収というブラックボックスが存在することである。

抗原診断過程における詳細な病歴と食物日誌の活用の必要性

 原因抗原診断に必要な情報の90%以上は問診と食事記録から得られる。適切に行われないと不必要な検査をすることになる一方で、問診からの見食物アレルギーと診断してはならない。
 米国ガイドラインでも、本人又は両親が食物アレルギーと考えた児の50〜90%は食物アレルギーではなかった。

1)問診のポイント・・・再現性の確認、生体側の条件

・どのような症状が起こったか
・症状を起こした食品は何か、またその食品により以前にも同様の症状が起こったかどうか
・症状発現児の食品の接種量と食品の状態。生であったのかよく加熱されていたのか
・摂取(抗原曝露)後、症状発現までの時間
・その食品を摂取しても症状が出現しなかったことはなかったか
・症状出現時の体調、運動との関係。アスピリンやNSAIDsの内服をしていなかったか
・その食品摂取(曝露)後以外にも同様の症状が起こったことはなかったか
・症状出現時に受けた治療を症状の持続時間

抗原特異的IgE抗体関連検査

 この検査が陽性であるということは感作されていることの証明に過ぎず、それだけを根拠として食物アレルギーの原因抗原と診断してはならない。

1)プリックテスト/スクラッチテスト

 感度と陰性適中率が高く、特異度と陽性適中率が低いのが特徴(Quality of evidence:moderate)
① prick-to-prick test
 抗原エキス調整段階で抗原性が失活しやすい果物・野菜の場合にはこの検査により感作を証明できる場合がある。
② 乳児における早期診断
 乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎の早期の原因抗原診断にこの検査の有用性がもっともよく発揮される。皮膚テストの優れた点は、即時型反応のみならず、遅発型反応や遅延型反応の観察も可能であることである。
 乳児において皮膚テストで即時型反応が陽性であれば感作を証明できるが、陰性の場合でも遅発型飯能が陽性の場合には、1〜2ヶ月後に即時型反応が陽性となることが多い。遅発型反応はテスト後6〜8時間後に判定するが自宅にて母親が撮影した写真により判定可能である。
 卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎における抗原感作は、遅発型反応→ 即時型反応→ 血中抗原特異的IgE抗体の順に陽性になる

2) 血中抗原特異的IgE抗体測定

 米国のガイドラインではこの検査が陽性であると言うことだけで食物アレルギーの診断を下すことはできないとしている(Quality of evidence:moderate)。さらにexpert panel の意見として、抗原特異的IgE抗体陽性は感作を受けていることを示し、抗体が高いほど経口負荷試験により症状が誘発されやすいことを示すが、原因であることを示すものではないとして血中抗原特異的IgE抗体検査の位置づけを明確にしている。

プロバビリティカーブが示すのは単なる確率である

 プロバビリティカーブが示すのはあくまでも特定の集団における確率であり、負荷食品の質と量、誘発症状の軽重は反映されないことを注意すべきである。

負荷試験の適応の決定における好塩基球ヒスタミン遊離試験(HRT)の有用性

 この検査は日本でのみ一般臨床検査として行われており、米国のガイド欄では標準化されていないことを理由に推奨できない検査のリストに挙げられている。
 現行の検査の中では in vivo で起こる現象を最も的確に in vitro において再現する検査であり、食物アレルギーの抗原診断と除去解除のための負荷試験の適応決定に活用できる検査である。
 卵白、牛乳、小麦HRTの臨床的有用性が高いのに対して、同時に測定される大豆、米については即時型反応を示す症例が少ないため評価が難しい(が、両抗原ともアナフィラキシー症例ではクラス4)。個別の抗原に対応可能なシステムとしたアラポートHRTが2011年5月から検査可能となった。

low responder の存在に注意

 HRTでは陽性コントロールとして抗原の代わりに5段階希釈の抗IgE抗体抗体を用いるが、すべての高度でヒスタミン遊離率が20%以下のものをlow responder として判定不能とし、20〜30%発生する。
 また、low responder 例の中には耐性を獲得した症例も含まれる。注意すべきは、乳児期に食品除去を開始した場合には low responder 化しやすく、耐性を獲得した症例と負荷試験により即時型反応を起こす例が混在することである。そのため、負荷試験を行う場合には、少量の食品から負荷を開始する。

■ 治療

★ 除去食指導基準

(「食物アレルギー児のための指導マニュアル」診断と治療社、2008年より)


  抗原の強さ
牛乳
小麦 大豆
A

最も強い

(一次食品)

生卵

鶏卵料理(ゆで卵、卵焼きなど)

ウズラ卵

牛乳、生クリーム、粉ミルク、練乳
パン、パン粉、麺、麩、パスタ、餃子、春巻き、ワンタンの皮
大豆、枝豆、おから、湯葉、サラダ油、大豆油、油揚げ、生揚げ、ピーナツ
B B1

強い

(半生加工品)

マヨネーズ、ミルクセーキ、ババロア、カスタードプリン、卵使用ドレッシング、アイスクリーム、茶碗蒸し

バター、ヨーグルト、チーズ、プリン、ババロア、チョコレート、アイスクリーム、ミルクセーキ

焼き菓子(クッキーなど)、天ぷら、フライの衣、ドーナツ、カスタード

練り製品のつなぎ

麦飯

ショートニング、マーガリン、きなこ、市販のルー、スナック菓子

B2

やや強い

(加熱加工品)

練り製品(ちくわ、はんぺん)

つなぎ類(ハム、ソーセージ、ハンバーグ、衣類)

ケーキ、カステラ、卵ボーロ

つなぎにカゼイン含有食品(ハム、ソーセージ)、シチュー、グラタン、ケーキカルピス、乳酸飲料 クリーンピース、小豆、インゲン豆、豆腐、もやし、豆乳、納豆
C C1

弱い

(含有量少加熱加工品)

焼き菓子(クッキーなど)、ドーナツ、今川焼、瓦せんべい、菓子パン

焼き菓子(クッキーなど)、パイ、ワッフル、ドーナツ、ウエハース

小麦含有の調味料(しょうゆ、みそ)

穀物酢

ケチャップ

麦茶、小麦胚芽油

みそ、しょうゆ
C2

弱い

(含有量微少加熱加工品)

中華麺、パスタ(麺類つなぎ)、パン、ロールパン 食パン、ゼラチン、キャラメル、粉末ジュース ハム、マッシュポテト、ソース、カステラ、アイスクリーム

※ 基準A:抗原の最も強い食物そのものを示す群
※ 基準B:抗原性が強いが、A群ほど強くはなく、食物の加工品を示している。同じB群でもB1群の方がB2群より強く、過熱の状態や含有量の割合で区別している
※ 基準C:抗原性が弱い食物で、加熱や発酵などにより抗原性が低下しているか含有量が少ない群を示している。C1群とC2群は抗原性の強弱で区別されているが、主に鶏卵と牛乳抗原の含有量で分けられている

★ 経口免疫療法(あいち小児保健医療総合センター:伊藤浩明Dr)

(小児科診療2010年7月号)
 乳幼児期に発症した食物アレルギーの多くは自然寛解(耐性獲得)が期待される。しかし、微量摂取でもアナフィラキシーを起こす重症例の耐性獲得率は低く、日常の食生活の中でも常にアナフィラキシーの恐怖から解放されない。このような事態を解決すべく考案されたのが経口免疫療法(oral immunotherapy, OIT)である。
 これまでの報告では・・・

 対象アレルゲン:牛乳、卵、ピーナッツ
 対象年齢:5歳以上(有効が期待される年齢上限の検討は見あたらない)
 有効率:80%

 導入期には即時型アレルギー症状が必発であり、医療機関での負荷が前提となる治療法であり、家庭で行うのは危険を伴う。

食物アレルギーの経口免疫(減感作)療法(国立病院機構相模原病院臨床研究センター アレルギー性疾患研究部 海老澤 元宏先生)

■ 予後

主な食物アレルギーの耐性化予後>(Teuberら、2006より改変)


推定頻度(小児) 主な発症年齢 小児期までの寛解率
牛乳 2% <1歳 85%
鶏卵 1.3% <1歳
55〜80%
大豆 0.4%(乳児) <1歳
85%
小麦 1% <1歳〜小児
85%
0.2% 2歳〜成人 不明
ピーナッツ 0.8% 2歳 20%
樹木ナッツ 0.2% 3〜5歳 不明
甲殻類 0.1% 5歳〜成人 不明
ゴマ 不明 幼児〜成人 20%(幼児発症)

1.牛乳アレルギーの耐性化予後

牛乳アレルギーの年齢的な寛解率>(乳幼児発症)


N数 1歳 2歳 3歳   4歳  6歳  8歳  12歳  16歳

Bishop(1990)

100
28
56 78


Host A(1990) 39 43(72) 62(94) 76(100)




Host A(2002) 39 56 77 87

92(5-10歳)
97(15歳)
Hill(1993) 98
27(59)





Jemeo(1992) 29




38(7歳)

Skirpak(2007) 807


19(〜26)
42(〜56) 64(〜88) 79(〜88)
池松(2006) 106

60




柴田※(2002) 40


30



※ ( )は非即時型、(〜)は穏やかな定義での寛解率、※ はアナフィラキシー症例

・非即時型:耐性化率が高く、3歳までに100%の報告もある。
・即時型 :3歳で焼く0%、15-6歳で80〜97%。重症のアナフィラキシー症例や特異的IgE抗体高値が持続する例では耐性化が遅くなる。

2.鶏卵アレルギーの耐性化予後

鶏卵アレルギーの年齢的な寛解率>(乳幼児発症例)

報告者(報告年) N数 1-2歳 3歳 4歳 5歳 6-8歳 10-12歳 16歳
Boyano-Martinez(2002) 58

16-28

52 66



Savage(2007) 881

4~19

12~55

37~76 68~91
Montesinos(2010) 42

50



池松(2006) 136
31




柴田(2002) 27

52



※ ( )は非即時型、(〜)は穏やかな定義での寛解率、※ はアナフィラキシー症例

3.小麦アレルギーの耐性化予後

 耐性化率は発症年齢で異なるのが特徴である。
 成人発症の職業性小麦アレルギーおよび小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの耐性化はほとんど得られない。一方、子どもの小麦アレルギーでは耐性獲得しやすく、4歳までに59%、6歳までに60-70%、多くは小児期までに85%以上が耐性獲得する。
小麦アレルギーの年齢的な寛解率>(乳幼児発症例)

報告者(年) N数 1-2歳
3歳   4歳  5歳  6-8歳 10-12歳  16歳
Keet(2009) 103


29 56 65 70
Kotaniemi-Syrjanen(2010) 28

59
69 84 96
池松(2006) 38
63




柴田※ (2002) 21

52




※ はアナフィラキシー症例

4.大豆アレルギー

 日本での報告では3歳までで78%。
 難治例の報告では4歳までに25%、6歳までに45%、10歳までに69%と耐性化が遅れる傾向があるが、小児期までの耐性化率は85%。

■ 予防

★ アレルギー物質特定原材料についての表示(省令/通知による規定)

 2002年に食品衛生法の改正が行われ、アレルギー物質を表示する制度が始まった(現在は消費者庁が管理)。アレルギー物質は症状が重篤で症例数が多い7品目(特定原材料)について省令で表示を義務づけている。症例数が少ないか、あるいは重篤な例が少なく、現段階では科学的知見が必ずしも十分でない18品目(特定原材料に準ずるもの)には、通知により表示を行うことを推奨している。
 表示の対象となるのは、容器包装された食品であり、例外的に次に該当する場合には表示義務がないので注意が必要である。

1)食品の容器包装ではなく、運搬容器と見なされる場合
2)注文を受けたその場で飲食料品を製造し、もしくは加工し、一般消費者に直接販売する場合(対面販売、量り売りなど)
3)容器包装の表示可能面積が30平方センチメートル以下のもの

 表示が必要となるのは、原材料の総蛋白質含量が一定量(数ppm、数μg/g、数μg/mL以上)含まれる場合である。

規定 特定原材料などの名称 理由
省令 卵、乳、小麦、エビ、カニ 症例数が多いもの
ソバ、落花生 症状が重篤であり生命に関わるため、とくに留意が必要なもの
通知 アワビ、イカ、イクラ、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、クリミ、サケ、サバ、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マツタケ、モモ、ヤマイモ、リンゴ 症例数が少なく、症例で定めるには今後の調査を必要とするもの
ゼラチン 牛肉・豚肉由来であることが多く、これらは特定原材料に準ずるものであるため、すでに牛肉・豚肉としての表示が必要であるが、パブリックコメントにおいて「ゼラチン」としての単独の表示を行う事への要望が多く、専門家からの指摘も多いため、独立の項目を立てることとする。


 日本のアレルゲン表示が諸外国のものと比較して優れている点として、アレルゲン蛋白量がμg/g(ppm)以上含有するものを対象として、その検知法が確立していること、「アレルゲンが混入しているかもしれません」というような曖昧な可能性表示を認めていないことが挙げられる。

★ アレルギー用ミルク一覧

種類

アミノ酸

調整粉末

蛋白加水分解乳

大豆粉乳 ペプチドミルク
商品名

エレメンタル・

フォーミュラ

ニューMA-1

ペプディエット

MA-mi ミルフィーHP

ボンラクト

i

E赤ちゃん

アイクレオの

ペプチドミルク

メーカー 明治 森永

ビーンス

ターク・

スノー

森永
明治
和光堂
森永
アイクレオ
原材料 精製アミノ酸 カゼイン カゼイン

カゼイン

乳清蛋白

乳清蛋白 大豆蛋白

カゼイン

乳清蛋白

ラクトフェリン

カゼイン

乳清蛋白

最大分子量

(kDa)

100 1000 1500 2000 3500 3500以下 3000以下
乳糖 無添加 無添加 無添加 0.06g/100ml 無添加


オリゴ糖
ラフィノース なし ラフィノース フラクトオリゴ糖


浸透圧

(mOsm)

400 300 330 280 280


特徴


アミノ酸のみでアレルゲン性なし。脂肪が少ない。 ほとんどトリペプチド(アミノ酸3個)以下。味が悪い。 味を改善。ペプチドがやや大きいため、まれに症状を誘発する。 大豆感作を起こす可能性あり。 ミルクアレルギー予防用。蛋白の分解が緩いため、治療用には使えない

★ 食物アレルギー治療の究極目標は「喘息予防」

(参考資料㉘より)
 小児にとって最も避けたいアレルギー疾患の行き着く先は気管支喘息です。何とか食物アレルギーだけで終わらせたいものです。早期に診断して、必要最小限の食品除去をすることにより、アトピー性皮膚炎が治ったり、即時型反応を起こさなくなるばかりではなく、新しい食物アレルギーになることを防ぐことができます。また早期に室内環境整備を開始しますと喘息発症の予防も可能です。
 ですから、食物アレルギーと診断されたら、室内環境整備(受動喫煙の回避、だに対策、室内ペットの飼育の回避)を行い喘息の発症を予防し、せっかくの早期発見をうまく生かしましょう。

 卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎は診断がつく時期が早いほど経過がよい傾向があります。
 生後半年以内に治療(母児の卵除去食と室内環境整備)を開始できた早期除去開始群(41名)と生後6ヶ月以降になってから治療を開始した降気除去開始群(28名)の間で、3歳までに喘鳴を経験する割合と、ダニ特異的IgE抗体がCAP法(現在のイムノキャップ法)でクラス2以上の陽性と成田に感作率の割合を比べますと、どちらも生後6ヶ月までに、卵の摂取を回避し室内環境整備を開始した患者さんの法が低いことが明らかとなりました。
 この結果をさらに、赤ちゃんの時から軟膏療法のみを受けていて1歳の時に卵特異的IgE抗体が陽性であったアトピー性皮膚炎の子どもを対症療法群(36名)として、3歳になった時のダニ特異的IgE抗体陽性率と喘鳴発症率をまとめたのが下表です。 両者とも対症療法群で最も陽性率が高く、即除去食を実施した場合には早く治療を開始する早期除去開始群の法が陽性率が低いことが判ります。
※ 「喘鳴」はゼイゼイという症状のことで、必ずしも喘息とは限りません。

3歳時におけるダニ特異的IgE抗体陽性率と喘鳴発症率


早期除去開始群(n=41) 後期除去開始群(n=28)
対症療法群(n=36)
ダニ感作率 24.4% 75.0%
97.2%
喘鳴発症率 2.4% 21.4%
50.0%

1歳までが鍵を握る

 食物による感作は主に1歳までの乳児期に起こることが複数の研究で示されています。また、1歳の時の感作状況がその後の経過、特に喘息発症に繋がる経過の鍵を握っており、卵単独感作群は複数食物感作群より喘鳴発症が低く抑えられています(下表)。
3歳時における喘鳴発症率、ダニ感作率、血清総IgE値


卵単独感作群 複数食物感作群
喘鳴発症率 2.7%

15.8%

ダニ感作率 37.8% 89.4%
血清総IgE値 147.4±354.3IU/ml 774.8±1120.8IU/ml

離乳食の進め方のポイント

 卵アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎と診断された場合、卵を除去しますがずっとではなく、卵の開始を最後に持ってくると考えればよいでしょう。離乳食の開始自体を遅らせる必要はありません。
 ポイントは、アレルギーを起こして除去が必要になると苦労をすることの多い食材である大豆や小麦の開始は、選択の幅の大きい魚や肉類をしっかりと取るようになってからにすることです。
 これは、卵以外のアレルギーの発症を予防し、1歳になった時にできるだけ多くの食品を摂れるようにするための方策です。
 なお、授乳中のお母さんの食事は、原因と診断された抗原によって、どれくらい除去すべきなのかは異なります。卵に関しては多くの場合に完全除去が必要ですが、牛乳・乳製品を完全に除去する必要があることは多くありません。どうしても除去が必要な場合にも完全に除去するのではなく、鉄分やカルシウムの補強がしてある部分加水分解乳である妊婦・授乳婦用のペプチドミルクを用います。