■ 食物アレルギーってなあに?
特定の食物が体に入って(※)つらい症状が出ることを「食物アレルギー」と呼びます。
ただし免疫反応を介する病態に限定し、乳糖不耐症(代謝酵素の欠乏症)や誰にでも起こりえる毒(フグ、キノコなど)などは除きます。
「○○を食べたらじんま疹が出た・・・もう一生この子は卵が食べられないのかしら?」
ご安心下さい。乳幼児期に多い食物アレルギーは治ることが多く、一生制限しなければならないことはまれです。一方、年長児以降に発症した場合は一生食べられないことも多く、正確な知識が必要です。
※ 体への侵入経路は「食べたり飲んだり」だけではありません。吸い込んだり、皮膚に付着したり、いろいろあります。
アレルギー反応には2つのパターン:即時型と非即時型
前述のように「○○○を食べたらじんま疹が出た」「○○○を食べたら湿疹が悪化してかゆがった」という皮膚症状のみが圧倒的に多いのですが、ワンパターンではありません。実はアレルギー反応による症状は色々あり、また時間経過も様々です。医学的には以下のように分類されています;
即時型:食べた直後〜2時間以内に症状が出る場合
【皮膚・粘膜症状】口の中/のどの違和感、唇の腫れ、皮膚の痒みと発赤、じんま疹、結膜浮腫(白目がぶよぶよゼリー状に腫れる)
【消化器症状】嘔吐、腹痛、下痢
【呼吸器症状】声がかすれる(嗄声)、咳込み、喘鳴(ゼーゼー)、呼吸困難、鼻汁/鼻閉
【アナフィラキシー】複数の臓器にわたる上記症状が同時に、あるいは次々に現れること。
【アナフィラキシー・ショック】アナフィラキシーに顔面蒼白・血圧低下(循環不全)・意識障害を伴う状態。重症で救急処置が必要。
(アナフィラキシー・ショックの典型例)アレルゲンとなる食物を口に入れると、まず口の中やのどの痒みや気持ち悪さが出てきます。まもなく口唇が腫れ、皮膚の発赤、かゆみ、じんま疹が出てきます。腹痛や吐き気・嘔吐、下痢なども起こります。食べ物を触った手で目をこすりますと、結膜浮腫が起こり、白目が浮腫を起こしてゼリー状になったり、目が開かないほど眼瞼が腫れてくることがあります。のどが腫れてくると(喉頭浮腫)、乾いた咳をしてのどをかきむしり苦しがります。これは大変危険な状態です。
非即時型:食べた後2時間以降に症状が出る場合
主に「湿疹の悪化」という症状が現れます。出現時間により、さらに2つに分けられます;
(遅発型)6〜8時間後
(遅延型)翌日〜数日後
即時型は家族が気がつきやすいのですが、非即時型はなかなか見つけにくい・・・この場合、食物日誌(食事内容と症状の経過を記録)をつけていただくと、診断の参考になります。
乳児アトピー性皮膚炎において、卵・牛乳・ピーナツ・小麦・大豆などによる食物負荷試験では、陽性率(症状が出る率)は即時型70%、遅延型25〜50%と報告されています。
食材の中では、大豆、米、肉類は遅延型反応の方が多く認められます。
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係
二つは別の病気です。でも合併することがあります。
なぜ混乱し誤解が生まれたかはネーミングの由来が関わっています。「食物アレルギー」は原因からのネーミング、「アトピー性皮膚炎」は症状からのネーミングなのです。
実際には、
乳児期では;
・食物アレルギーの90%以上がアトピー性皮膚炎を併発
・アトピー性皮膚炎の約20%が食物アレルギーを合併
しています。
さて、乳児期の食物アレルギーによくみられる皮膚症状は2種類あります。その一つが「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」、もう一つが「即時型反応〜アナフィラキシー」です。
離乳食開始前の「食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎」
生後1〜2ヶ月より顔面に湿疹が出現して受診し「乳児湿疹」などと診断される例です。乳児湿疹は一過性で自然軽快しますが、アトピー性皮膚炎はかゆみを伴い、改善と悪化を繰り返し長引くのが特徴です。
湿疹は顔から頭や首回り、胸やお腹・背中、そして手足に広がる傾向があります。
離乳食開始前に発症することの多いこの病態は、お母さんの母乳を通じて原因食物アレルゲンを摂取し、症状を起こすことがほとんどです。
症状の出方は即時型と非即時型の2種類あり、両者が混在する例が多い傾向があります。
① 母乳を飲んだ後、赤ちゃんがすぐに痒がったり皮膚が赤くなったりします(即時型反応)。じんま疹が出ることもまれにありますが、それ以上の重篤な症状はまず起きません。
② 母乳を飲んで2時間以上経ってから湿疹が出たり皮膚炎が悪化します。より詳しく観察すると、6〜8時間以上経ってから(遅発型反応)、あるいは半日〜2日後(遅延型反応)の二通りあります。
処方されたステロイド軟膏を塗ると一時的によくなっても、その効果が切れるとまた湿疹が出てくることを繰り返します。
実際の臨床ではステロイド軟膏塗布は対症療法と割り切り、やめられない時はその理由を考えて対応することが必要です。
また、乳児期発症のアトピー性皮膚炎には食物アレルギーが関与していることが多いのですが、1歳のお誕生日を過ぎてから発症したアトピー性皮膚炎では食物アレルギーの関与はほとんどありません。
離乳食開始後の「即時型反応〜アナフィラキシー」
初めて粉ミルクを飲んだ時や離乳食として茶碗蒸しの上澄みを飲んだ時に、全身が真っ赤になる、発疹や蕁麻疹が出る、嘔吐や呼吸器症状が出るなどの症状が起こり、救急外来を受診するのが典型例です。即時型反応により発症した場合でも、ほとんどの赤ちゃんには湿疹があるか、過去に湿疹を繰り返していたことが確認されます。
食物アレルギーとアトピー性皮膚炎、どっちが先?
従来、乳児期は「経胎盤・経母乳感作」されて発症した食物アレルギーが先で、その症状が遷延し結果としてアトピー性皮膚炎になる、と考えられてきました。
しかし、2008年にこれがひっくり返される論文が発表されました。イギリスのLackにより提唱された「二重抗原曝露説(dual allergen exposure hypothesis)」です。簡単に言うと、食物が口から入るとアレルギーの原因になりにくいけど、皮膚から入るとアレルギーの原因になりやすい、ということ。
この考え方が発表されたとき、学会レベルで賛否両論の議論が白熱しました。 しかし、ある事件がこの説を現実に証明することになりました。それが2011年に社会問題となった「茶のしずく石鹸」事件です。小麦成分(加水分解小麦:グルパール19S)を含んだこの石鹸を使用することにより、皮膚の微細な傷から小麦成分が体内に入り、小麦アレルギーを発症した、という病態。それまで小麦食品(パン、うどんなど)を食べても無症状だった大人にも発症したことは驚きでした。
食物アレルギーの臨床型分類
日本小児アレルギー学会作成の「食物アレルギー診療ガイドライン2012」による分類表を挙げておきます;
臨床型 | 発症年齢 | 頻度の高い食物 |
耐性獲得(寛解) |
アナフィラキシーショックの可能性 | 食物アレルギーの機序 |
新生児・乳児消化管アレルギー(※) | 新生児期・乳児期 | 牛乳(≒乳児用調製粉乳) |
多くは寛解 |
(±) |
主に非IgE依存性 |
食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎 | 乳児期 | 鶏卵、牛乳、小麦、大豆など |
多くは寛解 |
(+) |
主にIgE依存性 |
即時型症状(じんましん、アナフィラキシーなど) | 乳児期〜成人期 | 乳児〜幼児:鶏卵、牛乳、小麦、そば、魚類、ピーナッツなど 学童〜成人:甲殻類、魚類、小麦、果物類、そば、ピーナッツなど |
鶏卵、牛乳、小麦、大豆などは寛解しやすい その他は寛解しにくい |
(++) | IgE依存性 |
特殊型:食物依存性運動誘発アナフィラキシー | 学童期〜成人期 | 小麦、エビ、カニなど | 寛解しにくい | (+++) | IgE依存性 |
特殊型:口腔アレルギー症候群 | 幼児期〜成人期 | 果物、野菜など | 寛解しにくい | (±) | IgE依存性 |
※ 新生児・乳児消化管アレルギー:この疾患のみ、他の病態と異なり「非IgE依存性」というメカニズム、つまり食べてもすぐに症状が出ないタイプです。原因物質を摂取すると、嘔吐、血便、下痢などの消化器症状を引き起こします。原因として牛乳が大半を占めますが、大豆や米のこともあり、完全母乳栄養児に発症することもあります。
アレルゲン食品の特徴と経過
食物アレルギーはその種類と発症した年齢により経過が異なります。
「食物アレルギー診療ガイドライン2012」によると、全年齢でまとめると以下の順です;
1.鶏卵:38.3%
2.牛乳:15.9%
3.小麦:8.0%
4.果物:6.0%
5.そば:4.6%
6.魚類:4.4%
7.エビ:4.1%
乳児期
前述のように乳児期に発症するパターンでは「食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎」の形を取ることが多く、アレルゲンとして卵、牛乳、小麦がベスト3です。そして乳児期発症の食物アレルギーは成長とともに軽快・治癒することが多いのが特徴です。
幼児期・年長児以降
「即時型反応」で発症します。何歳になっても発症する可能性が有ります。それまで大好物で食べていた食品によりある日突然、アレルギー症状を起こして食べられなくなることがあります。その場合の原因食物は甲殻類(エビ、カニ)、そば、ピーナッツ、果物など、色々です。
また、「口腔アレルギー症候群」「ラテックス・フルーツ症候群」「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」など様々な病型をとることがあります。幼児期以降発症の食物アレルギーは一生治りにくい傾向があります。
・乳幼児期に多いもの(治りやすい) :卵、牛乳、小麦
・年長児以降に多いもの(治りにくい):魚介・甲殻類、ナッツ類、ソバ、果実
※ 耐性化率(食べられるようになる率)の数字いろいろ;
・1年でおよそ三割程度の人が除去を解除できたり、少しずつ摂取を開始できるようになったりします(二村昌樹先生)。
・食物アレルギー有病率は乳児が圧倒的に多く、単純に云えば3歳までに70〜80%、6歳までに80〜90%が耐性獲得に至ります(勝沼俊雄先生)。
・主要原因食物である鶏卵、牛乳、小麦は3歳までにおよそ50%、6歳までに80〜90%が耐性を獲得していくと考えられている(今井孝成先生)
食品
発症年齢
耐性化率
ピーナッツ
2歳
20%
樹木ナッツ
3〜5歳
不明
甲殻類
5歳〜成人
不明
牛乳
1歳以下
85%
鶏卵
1歳以下
55〜80%
魚
2歳〜成人
不明
大豆
1歳以下
85%
小麦
1歳〜成人
85%
ゴマ
幼児〜成人
20%(幼児)
※ 資料㊱より
耐性獲得 | 1歳 | 3歳 | 4歳 |
5歳 |
6歳 | 7歳 | 8歳 |
鶏卵 | 31% | 50% |
80% |
100 |
|||
牛乳 | 50/60% | 80% | 200 |
200 |
|||
小麦 | 63% | 30〜60% | 80% | ||||
大豆 | 30% | 78% | 400 | 400 | 400 | 400 | 400 |
・食物依存性運動誘発アナフィラキシーと口腔アレルギー症候群は一度発症すると寛解は難しい。
・ナッツ類・ピーナッツアレルギー:成人までキャリーオーバーすることが多い。
・甲殻類アレルギー:乳児期発症例では耐性獲得できる可能性はある。粘稠発症の場合は耐性獲得しにくい。
診断のための血液検査:特異的IgE抗体(次項も参照のこと)
特異的IgE抗体はながらくRAST(ラスト)法で測定されてきましたが、近年はイムノキャップ法が主流です。最近ではアラスタット3gAllergy法も評価されるようになりました。
<特異的IgE抗体検査薬の比較>
イムノキャップ | アラスタット3gAllergy |
オリトンIgE |
マストイムノシステムズⅢ | Viewアレルギー | |
アレルゲン固相 | 多孔質セルローススポンジ | ポリスチレンビーズ |
多孔性ガラスフィルター |
ポリスチレンウェル |
多孔質セルローススポンジ |
抗原数 | 182(単項目) 6(多項目) |
200(単項目) 7(多項目) |
57(単項目) |
33 (多項目同時測定) |
36 (多項目同時測定) |
測定範囲 | 0.1〜100UA/mL | 0.1〜500IUA/mL | 0.35〜100IU/mL | クラス判定 | クラス判定 |
特徴 | 半定量検査 | 定性検査 | |||
備考 | 最も頻用されている | 対応抗原数が最も多い | 測定に要する時間が短い | 必要血清量0.7mL | 必要血清量0.5mL |
食物に対する即時型アレルギー抗体の有無を検出する血液検査です。非即時型(=遅延型)アレルギーは検出できません。特異的IgE抗体陽性でも症状が出ないことがありますので、特異的IgE抗体陽性のみを除去食の根拠としてはいけません。あくまでも「確認のための参考の検査」とお考えください。
※ 他に皮膚テスト(プリック、スクラッチ)もありますが、当院では行っておりません。
※ 遅延型アレルギーを検出する検査には「抗原特異的リンパ球刺激試験 Lymphocyte Stimulation Test, LST」がありますが、2012年現在、研究レベルでのみ行われています。
※ インターネットサイトや一部の医師が行っている特異的IgG抗体検査には診断的な価値は認められていません。
■ 食物アレルゲンと検査
最初に白状してしまいますが、アレルギー検査は皆さんが期待するほど役に立ちません。症状と検査結果の一致率は、残念ながら100%には遠く及ばないのです。
また、以下に述べる血液検査は食べるとすぐに出るじんま疹などの即時型反応を検出するものであり、食べた翌日に湿疹が悪化する非即時型反応は検出できません。遅発型反応を診断する方法は、食物除去・負荷試験という原始的な方法を行う必要があります。
「保育園で食物アレルギーの検査結果を提出するように言われました」と受診される方が後を絶たず小児科医は困っています。小児科医は皮肉を込めてこれを「IgE信仰」と呼んでいます。
素人の方が「検査が陽性だから食べられない」と単純に判断してはいけません。
逆に「検査が陰性だから食べられる」と単純に判断してもいけません。
アレルギー検査結果の判定・判読には専門知識が必要です。一般の方にはかえって混乱のもととなり振り回されてしまう傾向があります。例えば・・・
・実際は食べても症状が出ないのに検査が陽性だからずっと制限している。
・検査が弱陽性だから食べて大丈夫と思いこみ、子どもがショックを起こしてしまった。
などなど。検査の読み方が間違っているために子どもにつらい思いをさせてはいけません。
以下を読んでいただき、検査の必要性と評価は医師の判断で行うべきであることをご理解ください。
「即時型反応」の検査
Q. アレルギーの血液検査にはどんなものがありますか?
A. 代表的なのは「総IgE抗体」と「特異的IgE抗体」です。
・総IgE抗体・・・アレルギー体質の強さがわかります。
・特異的IgE抗体・・・ひとつひとつの抗原(=アレルゲン:卵や牛乳などの食材のほか、ダニやホコリ、花粉など)にどれくらい反応しやすいかがわかります。患者さんに手渡す検査結果は0(陰性)〜3あるいは6(強陽性)のクラス分類で表示されています。
Q. 食べ物で特異的IgE抗体が陽性に出たら、危ないから食べない方がいいの?
A.「特異的IgE抗体陽性=食べたら100%症状が出る」わけではありません。
前述のように特異的IgE抗体の評価方法は単純ではありません。
強陽性の場合は症状が出る確率が高くなりますが、無症状のこともあります。逆に特異的IgE抗体のスコアが低くてもショックを起こすことがあり安心はできません。さらに、特異的IgE抗体スコアの評価は年齢や食べ物の種類により異なります。
【例1】(年齢による違い)
下図は牛乳アレルギーについて、「特異的IgE抗体」と「症状の出る確率」をグラフ化したものです(プロバビリティカーブ=可能性曲線)。青は1歳以下、赤は1歳台、緑は2歳以上を表しており、年齢により症状の出る確率が異なることがわかります。
(「食物アレルギーの診療の手引き2011」より)
オレンジの点線部分・・・X軸のラスト値3(牛乳のIgE抗体価3.0UA/mL)のところを見てください。症状を誘発する可能性は1歳未満の児では約90%、1歳児では約50%、2歳以上では約30%でと成長に伴い同じラスト値でも症状が出にくくなっていくことが読み取れます。
(注)このグラフの特異的IgE抗体の単位は「UA/mL」であり、患者さんに渡される検査結果の「スコア」とは異なります。なお、プロバビリティカーブは1種類だけでなく、2016年現在、複数の施設から報告されています。その施設の患者層(重症度)によりカーブは微妙に異なります(上に提示したカーブは比較的重症者が集まる専門施設のデータです)。
【例2】(年齢による違い)
卵アレルギーではスコア2(弱陽性)の場合、食べて症状が出る可能性は・・・1歳未満で約80%、1歳台では約70%、2歳台では約50%と低下していきます。
【例3】(アレルゲンの種類による違い)
同じスコア4(中等度陽性)であっても、食べて症状が出る可能性は・・・卵:98%、牛乳:95%、小麦:74%、大豆:16%。
なんと大豆では特異的IgE抗体陽性でも症状が出ない人の方が圧倒的に多いのです。
Q. 卵を食べると翌日湿疹が悪化して痒がるんですけど、特異的IgE抗体はマイナスでした。卵アレルギーじゃないと安心していいの?
A. 特異的IgE抗体が陰性でも卵アレルギーがないとは言えません。
特異的IgE抗体は「即時型」と言って食べてから2時間以内に症状が出る反応を検出する検査であり、数時間後~翌日以降に出る「非即時型(遅延型)」反応は検出できません。
残念ながら遅延型アレルギー反応の検査は一般化しておらず、医師の管理下に食物除去負荷試験を行い症状出現の有無で診断しているのが現状です。
Q. もっと頼りになるアレルギー検査はないのですか?
A. アレルゲン・コンポーネントを使用した特異的IgE抗体価が期待できます。
詳しい分析により、多くの食物で複数の種類のアレルゲン蛋白(アレルゲン・コンポーネント)が存在することがわかってきました。
(例)
・牛乳・・・カゼイン、β-ラクトグロブリン
・卵白・・・オボアルブミン、オボムコイド
・小麦・・・グルテン、ω-グリアジン
コンポーネントの種類により、IgE抗体との結合しやすさ等の性質が異なり、これにより症状の強弱も一部説明できます。食物全体のIgE抗体よりもコンポーネントに対するIgE抗体の方が症状と一致すること等が研究で明らかになってきました。
(例)
・小麦・・・小麦による食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは、小麦特異的IgE抗体価よりも、ω-グリアジン特異的IgE抗体価の方が陽性率が高く診断に有利
・大豆・・・即時型アレルギー症状を示す小児(Gly m 5)と成人の豆乳を中心とした大豆アレルギー(Gly m 4)では反応するコンポーネントが異なる。
※ コンポーネントレベルで食物アレルギーを診断する技術を component-resolved diagnostics(CRD)と呼び、さらにコンポーネントを軸として食物アレルギーの概念を再構築することを molecular allergology と呼び、現在日進月歩の研究分野です。
【用語説明】アレルゲン・主要アレルゲン・アレルゲンコンポーネント・エピトープ・交差抗原性
アレルギー関連の書籍を読んでいると、これらの単語によく出会います。資料36にわかりやすい説明がありましたので引用させていただきます;
「食物アレルゲンの多くはタンパク質であり、ひとつのアレルゲンは複数のタンパク質(アレルゲンコンポーネント)で構成されている。そのうち、患者の半数以上で特異的IgE抗体が認識し、誘発症状を起こすことが確認されているアレルゲンコンポーネントのことを主要アレルゲンという。アレルゲンの中で特異的IgE抗体が結合する部分をエピトープ(抗原決定基)という。エピトープには連続したアミノ酸配列のものや3次元構造をとる不連続なアミノ酸配列のものがある。異なるアレルゲンに共通のアミノ酸配列を持つエピトープが存在すると、IgE抗体はいずれにも結合する(交差抗原性)。・・・しかし交差抗原性による感作は必ずしも症状の誘発と結びついていないため、診断をする際には注意を要する。」
「非即時型反応」の検査
非即時型アレルギーを検出する検査には「抗原特異的リンパ球刺激試験 Lymphocyte Stimulation Test, LST」がありますが、2012年現在、研究レベルでのみ行われています。
非即時型が疑われる場合は「食物除去/負荷試験」を行い、症状が実際に出るかどうかで判断します。
【食物除去試験】
・怪しいアレルゲン食物とその加工品を2週間完全に除去
・除去により皮膚症状が改善したら、アレルギーの可能性大です。次の負荷試験へ進みます。
【食物負荷試験】
・除去していたアレルゲン食物をふつうに食べさせる。
・負荷により皮膚症状が悪化したら、アレルゲンと確定。
とまあ、シンプルで原始的な方法です。
■ 食物アレルギーの治療
残念ながら、現時点で食物アレルギーを治す薬は存在しません。
食物アレルギーの治療は、食べて症状が出た時の治療と、日常生活上の食事療法(除去食)の2つに分けられます。
近年注目されつつある経口免疫療法は、根本的な治療になり得る可能性を秘めているものの、現段階では病院レベル・研究レベルにとどまり、一般外来診療では勧められません。
1.即時型症状(含:アナフィラキシー)への対応
即時型で一番多いのが皮膚症状(じんま疹など)であり、軽症なら様子観察・回復待ちでOKです。
しかし中にはアナフィラキシー〜アナフィラキシーショック(「食物アレルギーってなあに?」の項を参照)を起こす子どももいます。
アナフィラキシーは時間経過に従い次々に出てくるので、初期段階での速やかな対応が必要です。
多くの場合、口腔内の違和感から始まり、皮膚症状や消化器症状、呼吸器症状と、症状が時々刻々と広がっていきます。
初期症状の段階では抗ヒスタミン薬の内服が有効です。この場合、ドライシロップ剤などの粉薬が使いやすくお勧めです。アレルギー反応を抑制するステロイド薬も用いられることがありますが、残念ながら即効性はなく、二相性反応の抑制効果を期待して内服することがあります。リスクのある患者さんはこららの薬をあらかじめ処方して常備しておく必要があるか主治医と相談してください。
抗ヒスタミン薬を服用しても皮膚症状の広がりが止まらない場合や、皮膚症状のみならず気道症状が出はじめたら医療機関を受診しましょう。呼吸困難が強い時は救急車を要請してください。
<エピペンについて>(より詳しくは次項を参照)
アドレナリン自己注射器(商品名:エピペン)を処方されている場合は、大腿外側部に筋肉内注射をしてください。その後必ず医療機関を受診しましょう。
保育園・幼稚園・学校でアナフィラキシーが起こった時には、その場に居合わせた教職員が代わりに打っても医師法違反にはなりません(「反復継続する意図がない」ものと認められるため)。人命救助の観点からやむを得ず行った行為であるとして、その結果についても民事・刑事的責任は問われないという見解が「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」に示されています。
また、エピペンを処方されている食物アレルギー児に対しては救命救急士が注射することも認められるようになりました。
★ 参考:「学校のアレルギー疾患に対する取り組みQ&A」
◆ エピペン®について
アナフィラキシー(※)の治療を緊急的に自己注射という方法で行うもの。
<日本におけるエピペン®の歴史>
・2003年:ハチ毒アレルギーに認可
・2005年:食物や薬物などに起因するアナフィラキシーに認可
・2008年:学校での緊急時の対応として、エピペン®を自ら注射できない本人に代わって、本人以外の関係者が投与しても医師法などの法律上問題にならないことが「学校におけるアレルギー疾患の取り組みガイドライン」に示された
・2009年:保育園においても同様のことが示された
・2009年:事前にエピペン®が処方されている場合において、緊急時に救急救命士がエピペン®を使用することが可能となった
・2011年:薬価収載(=保険適応)
※ アナフィラキシー:一般的に皮膚症状、呼吸器症状、循環器症状、消化器症状のうち2系統以上の症状がある場合(複数の臓器にわたる場合)をアナフィラキシーと呼びます。しかし、既知アレルゲンの暴露がわかっている場合は血圧低下のみでもアナフィラキシーの可能性が高いとされています。また、乳児は呼吸器症状をきたすことが多く、循環器症状は血圧低下よりも頻脈から出現することが多いことにも注意すべきです。
アドレナリンは皮下注射→ 筋肉注射へ
アナフィラキシーの治療における第一選択薬はアドレナリンの筋肉内注射です。この薬物により、血圧上昇、上気道閉塞の軽減、さらには喘鳴、蕁麻疹、血管浮腫の改善が期待できます。
注射方法として、従来は皮下注射の記載が多くみられていましたが、現在は即効性が期待できる筋肉内注射が推奨されています。
※ 4〜12歳の小児において0.3mgのアドレナリン筋肉内注射は血中濃度が最大に到達するまで平均8分、一方、0.01mg/kg(歳台0.3mg)のアドレナリン皮下注射の到達時間の平均34分、という報告があります。
エピペン®について
エピペン®は0.1%アドレナリンの筋肉注射用製剤です。
・体重15〜30kg用の0.15mg製剤
・体重30kg以上用の0.30mg製剤
の2種類存在します。残念ながら、15kg未満の小児には使えません。
※ アメリカ国立衛生研究所のガイドラインでは、10〜25kgが0.15mg、25kg以上が0.30mgを使用するように記載され、日本と少し異なります。
※ 2012年4月に、注射後に針先が隠れるような新しいデザインに変更されました。
<適応>
・重症のアナフィラキシーの既往
・医療機関までのアクセスの悪い環境
・アレルゲンの回避が困難な場合
<使用のタイミング>
下記項目<図表>の「自宅・園・学校でアレルギー症状が出た時の対処法」における「重症」がエピペン®の適応となります。ほかに、日本小児アレルギー学会HPの「食物アレルギーによるアナフィラキシー学校対応マニュアル」も参考になりますが、2005年作成と少し古い(アドレナリンがエピネフリンと記載されている等)ので改訂が望まれます。同ページ下段にある「学校生活における救急治療プラン」や「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」の「緊急時個別対応表」(p68-69)を利用し、家族と園・学校側が連携して対応することを検討してください。
<エピペンと併用できない薬剤>
エピペンの成分であるアドレナリンは交感神経に作用するため、以下の薬剤と併用はできません;
(例)ブチロフェノン系・フェノチアジン系等の抗精神病薬、α-遮断薬、カテコールアミン製剤、アドレナリン作動薬など
※ エピペンの航空機への持ち込みは事前に申請すれば許可されることが多いので、各航空会社のHPを御参照ください。
・アレルギーをお持ちのお客さま(JAL)
・インシュリン注射・エピペンなどの自己使用注射器(針)のお持ち込みについて(ANA)
<参考HP>
□ 「アレルギー疾患対応資料(DVD)映像資料及び研修資料」(文部科学省)
□ 「エピペン®ガイドブック」(ファイザー:製造・販売している製薬会社)
□ 「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」の「C」(東京都:2013年)
□ 「エピペン®〜正しくお使いいただくために」(ファイザー)
□ 「学校のアレルギー疾患に対する取り組みQ&A」(日本学校保健会)
□ 「学校給食における食物アレルギー対応の手引き」のp30(さいたま市教育委員会:2014年改訂版)
□ 「エピペン®について」(滋賀県小児アレルギー疾患 対策推進事業によるスライド:2014)
■ 「一般向けエピペン®の適応」(2013.7.24:日本小児アレルギー学会)
この度、日本小児アレルギー学会のアナフィラキシーワーキンググループにおいて「一般向けエピペン®の適応」を決定致しました。
一つの症状だけでエピペンの適応を示すことはとても難しい作業でしたが、各国の状況を調査した上で、一般の方にも分かりやすい症状の記載・適応判断としました。
当学会としてエピペン®の適応の患者さん・保護者の方への説明、今後作成される保育所(園)・幼稚園・学校などのアレルギー・アナフィラキシー対応のガイドライン、マニュアルはすべてこれに準拠していくことを基本とします。
2.食事療法
食物アレルギーの治療目標は、もちろん「食べられるようになること」。
でも、従来は「原因アレルゲンを除去して食べられるようになるのを待つ」という消極的な方法しか選択枝がありませんでした。
アレルギーを勉強しはじめた頃(約20年前)から、私は食物アレルギーに関してひとつの疑問を持ち続けてきました。
食べられることへの近道は、
① アレルゲンを少しずつ食べてみる
② アレルゲンの完全除去を続ける
のどちらが正解なのか?
アレルギー学会に参加しても、食物アレルギーに関する書物を読んでも答えは得られません。
しかし近年、大きな動きがありました。
それは「経口免疫療法」。
アレルゲンを積極的に食べさせることにより、食べられるようにする方法。
つまり、①が正しかったという結論です。
まだ標準法が定まらず、複数の専門施設で試行錯誤が繰り返されている状況ですが、徐々に形になりつつあるのを感じます。
今後に期待したいと思います。
→ その後多くの検討がされた結果、2016年現在では「経口免疫療法は安全性が確立されていない治療法であり、一般診療で行うことは推奨されない、専門施設・研究レベルで行うべき治療法」とされています(後述)。
1)除去食療法
さて、現在のところ食物アレルギー治療の基本は原因食物の除去、より正確には「正しいアレルゲン診断に基づく必要最小限の除去」です。
この治療法の目的は3つあります。
① 食べるのをやめることで、現時点で食べ物が原因で起きている症状をよくすること
② 再び食べ始めたときに症状が出ないようにすること
③ 新たな食物アレルギーを獲得しないよう予防すること
食物アレルギーでは、消化管にアレルギー性炎症が起きています。炎症の原因となる食べ物を食べないようにすると、消化管の炎症が治まります。すると、消化管についた傷がふさがって抗原となる食べ物が吸収されにくくなるので、アレルギー体質(感作の記憶)は消えていないものの、食べても症状が出なくなります。腸管のバリア機構が弱まった状態では、他の食物もアレルゲン性をもったまま吸収されやすくなり、新たな食物アレルギーが起こりやすくなりますので、これも食べないことにより予防できます。
除去する食物は、症状を中心に検査結果を参考にして医師が判断します。
※ 繰り返し申しますが、「何となく心配だから・・・」とか「アレルギー検査で陽性だから・・・」という理由だけで除去することは正しい方法ではありません。自己判断で何種類もの食物を長期間にわたり必要以上に厳格に除去していると体が敏感になり、わずかに混入したアレルゲンを摂取しても激しい症状を起こすことがあります。
アレルゲンが決定したらその食物を除去します。そのものだけではなく、その食物が少量でも含まれている加工品なども一切除去するのが基本です。
(例)卵アレルギーなら生卵はもちろん、天ぷらの衣などにも卵を使ってはダメ、市販のビスケットなどのお菓子も卵入りのものはダメ。
ただし、1歳以降で症状が軽ければ一部のみの除去で済むこともありますので、そこは主治医の判断に従ってください。
不足する栄養分は他の食物で補う必要がありますので、素人判断ではなく、医師・栄養士の管理下で行ってください。特に複数の食物を除去する場合は管理栄養士の指導が必須です(詳しくは次項で)。
Q. アレルギーの原因食物は完全に除去した方がよいでしょうか?
A. 原因食物でも、症状が誘発されない“食べられる範囲”で食べて結構です。
“食べられる範囲”での摂取を行うことによって、
①食べられるメニューが広がる
②同じものを摂取しても誘発される症状が軽くなる(脱感作)
③原因食物の耐性獲得が促進される効果
などが期待できます。ただし、家庭ではきめ細かい対応ができても、保育園/幼稚園、学校では対応が困難であることが多く、完全除去が基本です。
また、ふだんは食べても無症状の範囲でも、感染症、解熱鎮痛剤(NSAIDs)の使用、運動、ストレス、疲労など体調の変化により症状が出やすくなることがあり、注意が必要です。
2)除去食中の栄養面の問題
・牛乳アレルギーにおけるカルシウム不足
牛乳アレルギー児のカルシウム摂取量は、一般の児と比較して半分程度しかありません。
これを解決するためには、乳製品の代替としてアレルギー用ミルクの使用が効果的です。アレルギー用ミルクのカルシウム含有量は牛乳の50〜60%と他の食品と比較して高いのです。アレルギー用ミルクが飲みづらい場合には、ココアパウダーや果物、ジュースなどを混ぜ、風味を変えると飲みやすくなります。また、そのほかにカルシウム含有量の多い大豆製品、青菜類、小魚などの食品を積極的に摂りましょう。
また、市販の加工食品の中にも、カルシウムを強化している食品があり、牛乳と同程度のカルシウムを含む調整豆乳や、カルシウムを強化した「だしの素」などは日常生活に取り入れやすいと思われます。
<カルシウムを多く含む食品とその目安>(参考資料㊱より)
食品 | カルシウム100mgの目安 |
|
牛乳 | コップ1/2杯 | 90mL |
アレルギー用ミルク | コップ1杯 | 180mL |
調整豆乳 | コップ2杯弱 | 320mL |
豆腐(木綿) | 1/4丁 | 80g |
しらす干し | 2/3カップ | 50g |
さくらえび(素干し) | 大さじ1-2杯 | 5g |
ひじき煮付け | 小鉢1皿 | 29g |
切り干し大根煮物 | 小鉢1/2皿 | 19g |
さつまいも(蒸し) | 中1本 | 100g |
小松菜(ゆで) | 2株 | 70g |
・アレルギー用ミルク使用の際の微量元素不足
乳児期にアレルギー用ミルクのみで栄養摂取した場合に、ビオチン、セレン、L-カルニチンなどの微量元素が不足する可能性が指摘されています。離乳食が進めば食品から補うことができます。
・魚アレルギーにおけるビタミンD不足
全ての魚を除去する場合以外は問題になりません。魚以外のビタミンD摂取源となる食材は、鶏卵(卵黄)、キノコ類(特に乾燥したもの)です。また、ビタミンDを強化した加工食品や、ビタミンD製剤など取り入れる方法もあります。
牛乳の完全除去もビタミンD欠乏性くる病の発症を促すという報告があります。
3)除去食中の食事の実際
(参考資料㉘より)
「○○と○○を除去してください」と医師は簡単に言いますが、実際に料理するお母さんは途方に暮れ、悪戦苦闘が始まります。具体的考え方として、3つの方法があります;
① アレルゲンを用いずに調理する(アレルゲン除去食)
② 加熱調理などにより低アレルゲン化させる
③ 低アレルゲン化食品(アレルギー用ミルク、発酵食品など)を用いる
詳しくは、各アレルゲンの項目を御参照ください。
実際に三大アレルゲンである卵・牛乳・小麦を制限された場合は、どのような食生活が考えられるでしょうか。
何も食べるものがない、と悲嘆に暮れることはありません。主食には米、おかずには魚、肉、大豆食品と季節の野菜が使えますから、それらを組み合わせて、美味しい副菜や汁物など、工夫次第で家庭料理はいくらでも作ることができます。
市販の調味料では、醤油は使用可能です。原材料に小麦が使用されていますが、発酵により十分に低アレルゲン化されているため、小麦アレルギー患者さんでもほとんどが使用可能です。昔からあるトマトケチャップやウスターソースには卵、牛乳、小麦は使用されていません。オイスターソースや豆板醤にも本来は含まれていませんが、最近のインスタント調味料や合わせ調味料には小麦が含まれていることがありますので、表示の確認が必要です。香味野菜(ショウガ、ニンニクなど)ももちろん使用可能です。
子どもに食物アレルギーがありインスタントの調味料が使用できずに、昆布と鰹節から出汁を取るようにしたら家族の高血圧がコントロールできるようになったという話も耳にします。グルタミン酸ナトリウムの摂取量が減ったためと考えられます。
<除去食調理の工夫>
調理の工夫 | |
鶏卵除去 | ・ハンバーグ等のつなぎは片栗粉、すりおろしたイモ類(ジャガイモ、ナガイモ等)、レンコン等で代用 ・揚げ物の衣は、水で溶いた小麦粉や片栗粉で代用 ・菓子類をふっくら仕上げるためには、重層やベーキングパウダーを利用 |
牛乳除去 | ・シチューやグラタン等のホワイトソースには豆乳を ・生クリームの代わりには豆乳のホイップクリームやココナッツミルクを |
小麦除去 | ・パンやケーキの生地は米粉や雑穀粉で代用 ・揚げ物の衣、カレーやシチューのルウは米粉、雑穀粉、片栗粉で代用 |
<参考> ・・・栄養士が勧める食物アレルギー除去食レシピがあるウェブサイト
・食物アレルギーねっと(日本ハムグループ)
・アレルギー i:食物アレルギーについて(SANOFI社)
・アレルギー支援ネットワーク:食物アレルギー対応・家庭料理のレシピ(NPO)
・Team-Allergy(NPO法人ヘルスケアプロジェクトが運営する食物アレルギーっ子のための献立サイト)
除去食指導基準
(「食物アレルギー児のための指導マニュアル」診断と治療社、2008年より)
抗原の強さ | 卵 |
牛乳 |
小麦 | 大豆 | ||
A |
最も強い (一次食品) |
生卵 鶏卵料理(ゆで卵、卵焼きなど) ウズラ卵 |
牛乳、生クリーム、粉ミルク、練乳 |
パン、パン粉、麺、麩、パスタ、餃子、春巻き、ワンタンの皮 |
大豆、枝豆、おから、湯葉、サラダ油、大豆油、油揚げ、生揚げ、ピーナツ |
|
B | B1 |
強い (半生加工品) |
マヨネーズ、ミルクセーキ、ババロア、カスタードプリン、卵使用ドレッシング、アイスクリーム、茶碗蒸し |
バター、ヨーグルト、チーズ、プリン、ババロア、チョコレート、アイスクリーム、ミルクセーキ |
焼き菓子(クッキーなど)、天ぷら、フライの衣、ドーナツ、カスタード 練り製品のつなぎ 麦飯 |
ショートニング、マーガリン、きなこ、市販のルー、スナック菓子 |
B2 |
やや強い (加熱加工品) |
練り製品(ちくわ、はんぺん) つなぎ類(ハム、ソーセージ、ハンバーグ、衣類) ケーキ、カステラ、卵ボーロ |
つなぎにカゼイン含有食品(ハム、ソーセージ)、シチュー、グラタン、ケーキカルピス、乳酸飲料 | クリーンピース、小豆、インゲン豆、豆腐、もやし、豆乳、納豆 | ||
C | C1 |
弱い (含有量少加熱加工品) |
焼き菓子(クッキーなど)、ドーナツ、今川焼、瓦せんべい、菓子パン |
焼き菓子(クッキーなど)、パイ、ワッフル、ドーナツ、ウエハース |
小麦含有の調味料(しょうゆ、みそ) 穀物酢 ケチャップ 麦茶、小麦胚芽油 |
みそ、しょうゆ |
C2 |
弱い (含有量微少加熱加工品) |
中華麺、パスタ(麺類つなぎ)、パン、ロールパン | 食パン、ゼラチン、キャラメル、粉末ジュース | ハム、マッシュポテト、ソース、カステラ、アイスクリーム |
※ 基準A:抗原の最も強い食物そのものを示す群
※ 基準B:抗原性が強いが、A群ほど強くはなく、食物の加工品を示している。同じB群でもB1群の方がB2群より強く、過熱の状態や含有量の割合で区別している
※ 基準C:抗原性が弱い食物で、加熱や発酵などにより抗原性が低下しているか含有量が少ない群を示している。C1群とC2群は抗原性の強弱で区別されているが、主に鶏卵と牛乳抗原の含有量で分けられている
Q. 食物アレルギー乳児の母親の食物除去は必要ですか?
A. 最重症の患児以外では母親の完全除去を行う必要はありません。経母乳的抗原摂取により即時型症状を呈した症例も報告されているものの、きわめて稀です。
ただし、乳児アトピー性皮膚炎に食物アレルギーの関与が考えられる場合は、除去負荷試験を行った上で、母親の食物除去を行うことがあります。その場合でも、皮膚の軽快と共に母親の食物除去はほとんどの場合、不要となります。
3)除去食解除
乳児期に判明した食物アレルギーは年とともに改善へ向かうので、適切な時期に解除可能です。ただ、この「適切な時期」の設定には専門的知識が必要です。
なお、 食品の除去・解除は危険(栄養障害・ショック)を伴うことがあり、必ず医師の管理下で行ってください。
【軽症例】皮膚症状(蕁麻疹や湿疹の悪化)のみ
1歳のお誕生日から離乳食が完了する頃を目安に解除を開始します。
加工品 → 加熱調理品 → アレルゲンそのもの、の順で少しずつ試していきます。
Q.「加熱調理」は全ての食材のアレルゲン性低下に有効ですか?
A. 加熱によりアレルゲン性が弱くなるものと、変わらないものがあります。
なお、牛乳と卵は加熱で弱くなるアレルゲン・コンポーネントと変わらないアレルゲン・コンポーネントが混在しており、その患者さんが感作されているコンポーネントによります。ほかは以下の通り(カッコ内はアレルゲン・コンポーネント)。
<加熱調理とアレルゲン性の変化>
・弱くなるもの:牛乳(β-ラクトグロブリン)、卵(オボアルブミン)
・変わらないもの:牛乳(カゼイン)、卵(オボムコイド)、小麦(グルテン)、大豆、魚(パルブアルブミン)、甲殻類(トロポミオシン)、ソバ、ピーナッツ、ゴマ(ピリシン)、ジャガイモ
・果物アレルゲンはちょっと複雑です。主なアレルゲンは汎アレルゲンと呼ばれ、PR-10(pathogenesis related protein-10)、プロフィリン、LTP(lipid transfer protein)の3種類。一般的に熱・消化への耐性は弱い順にプロフィリン、PR-10、LTPの順で、この順で全身症状も弱→ 強となります。
【重症例】皮膚症状+全身症状(ゼーゼー、ショックなど)
解除に際して専門医療機関での食物負荷試験が必要です。定期的に血液検査(乳幼児では3〜6ヶ月、幼児以降は6〜12ヶ月間隔)を施行し、イムノキャップ法による特異的IgE値が減少したのを確認後に入院して行います。施行時期は遅くとも2歳台には行うのが良いでしょう。
日本では2009年に日本小児アレルギー学会が「食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009」を作成しました。諸外国ガイドラインとの比較を表に示します(参考資料㊱)。
アメリカ | ヨーロッパ |
日本 |
|
目的 | 診断の確定、耐性獲得の確認、症状誘発閾値の確認 | ||
除外基準 | アナフィラキシー歴あり | アナフィラキシー歴あり |
1年以内の即時歴またはアナフィラキシー歴あり(原則) |
方法 | DBPCFCが基本 | オープン法>ブラインド法 | オープン法が基本 |
開始量 | 総負荷量の1/1000 | 食物蛋白量3mg | 総負荷量の1/20〜1/16 |
総負荷量 | 負荷食物・患者の年齢・重症度に応じて決める | 主に食物蛋白量3g (ただし年齢に準じて変更) |
負荷食物・患者の年齢・重症度に応じて決める |
分割法 | 2〜6回 | 記載なし | 3〜6回 |
摂取間隔 | 15分 | 15〜30分 | |
判定基準 | ・客観的症状で陽性 ・主観的症状の場合はブラインド法で再施行 |
解除順番の例
アレルゲン | 負荷食品名 |
卵 | (固ゆで卵黄)→ パン・クッキー類 → カステラなどのケーキ類 → 練り製品 → ハンバーグなどのつなぎ → 固ゆで全卵 |
牛乳 |
ペプチドミルク(E赤ちゃん®、MA-mi®、アイクレオHI®)→ ケーキ類 → 牛乳つなぎ食品 → ヨーグルト →(普通ミルク)→(普通フォローアップミルク)→ 牛乳 |
小麦 | (みそ・しょうゆなど)→ 低アレルギー小麦を用いた焼き菓子 → うどん → パン |
大豆 | (みそ・しょうゆなど)→ 豆腐 → きなこ → 大豆煮豆 |
魚類 |
かつおぶしなどのだし汁 → ツナ缶・サケ缶 → 小魚 → 干物 → フカ → 白身魚 |
ゴマ | 黒ゴマ(粒)→ ゴマ油 → 炒りゴマ(粒)→ すりゴマ |
解除の際の注意点
・解除を試みるときは体調がよい時を選んで行うのが基本です。体調が悪いと腸の消化分解機能がうまく働かず、蛋白質が十分に分解されないまま吸収されて症状が出やすい傾向があるためです。
・食べた後すぐにはしゃいだり、運動をしたり、お風呂に入ったりすると症状が出やすくなるので、30分くらいの間はおとなしくさせて様子を見ましょう。
Q. 一応、食べられるようになったけど・・・また症状が出た!
解除が進み、食べられるようになったけど、抗原食物に触れたり、触れた手で顔などを触ったときに肌や眼が赤くなる、腫れるといった症状がある場合は、まだ要注意。
この場合、消化吸収能力の成長により食べられているだけで、抗原食物に対するアレルギー反応性は消えているわけではありません。発熱したときや解熱鎮痛剤を飲んでいるとき、下痢・軟便などのお腹の調子が悪いとき、口内炎や歯肉炎があるときなどに食べるとアレルギー症状が出る可能性が高い状態と認識すべきです。
Q. 園・学校での除去解除のタイミングは?
自宅で十分量(※)を摂取でき、体調不良時や摂食後の運動など症状が誘発されやすい状況下でも問題ないことを確認し、十分に安全性が確保できてから除去解除をすることが望ましいとされています。一部の食品や調理形態のみ解除とする部分解除は、予期せぬ要因(運動、体調不良、多量に摂取など)により症状が誘発されるリスクがあるため、園・学校での給食では原則として除去で対応します。
※ 年齢に応じた1食分を目安とし、学童期では、鶏卵:全卵1個およびマヨネーズ、牛乳:200ml、小麦:うどん200gまたは食パン1枚程度
4)発症予防:ハイリスク児への対応
ハイリスク児(家族の中に食物アレルギー患者がいる)の食物アレルギー発症が予防できるかどうか、長い間いろいろな研究がされてきました。妊婦・授乳婦さんが食事制限をしたり、赤ちゃんの摂取開始時期を遅らせたり・・・しかし皮肉なことにそのどちらもが「食事制限しても予防できない」という結論に至りました。
それどころか、「早期に摂取した方が予防できる」という新しい知見が一般化しつつあります。ただし、口ではなく皮膚から浸入するとアレルギーの原因になるリスクがあり、湿疹がある場合はスキンケアが重要と考えられ、現在研究されています。
(以下は参考資料㊱より)
・妊娠中の除去食に食物アレルギーを予防する効果はありません。偏食をせず、バランスのとれた食事を摂ることが大切です。
・離乳食の開始を遅らせる必要はありません。離乳食の開始を遅らせても食物アレルギーの発症を予防する効果は無く、生後5〜6ヶ月を目安に開始することが推奨されています。
・鶏卵とピーナッツに関しては早期摂取ができれば食物アレルギーの発症予防効果が期待できます。他の食物は検討中です。
・新生児期からの保湿剤使用によりアトピー性皮膚炎の発症を予防することが報告されています。しかし食物アレルギーの発症予防については証明されていません。
・乳酸菌やビタミンD摂取による食物アレルギー予防効果は、現在のところ確認されていません。
・小児期に発症する食物アレルギー自体が遺伝することは少なく、両親にアレルギー素因がある場合に子どもに食物アレルギーが出る確率は高いとされています。
<ハイリスク児への対応>
「食物アレルギー診療の手引き2014」(厚生労働科学研究班),「食物アレルギー診療ガイドライン2012」(日本小児アレルギー学会)より
AAP2008レポート | ESPACI/ESPGHAN1999, ESPGHAN2008勧告 |
SP-EAACI2004/2008勧告 |
JPGFA2012 | |
ハイリスク児の定義 | 両親・同胞に1人以上のアレルギー | 両親・同胞に1人以上のアレルギー(1999) |
両親・同胞に一人以上のアレルギー |
両親・同胞に一人以上のアレルギー |
妊娠中の母親の食事制限 | エビデンスなし | 推奨しない |
推奨しない |
推奨しない (偏食はしない) |
授乳期の母親の食事制限 | アトピー性皮膚炎発症率低下のエビデンスあり | 推奨しない | 推奨しない | 推奨しない (偏食はしない) |
人工栄養 | (牛乳蛋白に対して)加水分解乳の効果あり (大豆乳は推奨しない) |
低アレルゲン化ミルク(1999) |
生後4ヶ月まで完全加水分解乳(2004)、低アレルゲン化ミルク(2008) | 低アレルゲン化ミルクを使用する場合には医師の指導の下で行う |
離乳食の開始時期 | ・生後4ヶ月まで開始しないことによる予防のエビデンスあり ・特定の食品除去のエビデンスなし |
・生後5ヶ月になってから(1999) ・生後18週〜26週に開始。魚・卵などのアレルゲン性の強い食品について離乳食開始の遅延による予防に関してエビデンスなし(2008) |
・生後4〜6ヶ月以降の開始による予防のエビデンスなし |
・生後5〜6ヶ月頃が適当(わが国の授乳・離乳支援ガイド2007に準拠) |
APP: merican Academy of Pediatrics
ESPACI: Europian Sociaty for Pediatric Allergology and Clinical Immunology
ESPGHAN: Europian Sociaty for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Immunology
SP-EAACI: Section of Pediatrics, Europian Academy of Allergology and Clinical Immunology
JPGFA: Japanese Pediatric Guideline for Food Allergy
◆ 期待される「経口免疫療法」
近年注目されている治療法ですが、症状誘発のリスクがあるので、現時点では一般診療として推奨されていません。
乳幼児期発症の食物アレルギーは加齢とともに治って食べられる可能性の方が圧倒的に高いのですが、小学校に入学する頃になってもアナフィラキシーを起こす重症例も存在し、そのような患児がこの治療法の対象となります。
具体的には入院の上、症状が出ても対応可能な医療環境下で積極的に抗原食物を食べさせ、短期間で一定以上の抗原食物を食べられるように“治療”します。
残念ながら成功率は100%ではありません。副作用も報告されています。
また、治療が成功した場合も、一時的に食べることができるようになっただけなのか(脱感作状態)、本当にアレルギーが出なくなったのか(耐性獲得)判断が難しい面があり、自宅でも治療として一定期間無理をしても食べ続ける必要があります。
※ 日本小児アレルギー学会の提言「食物アレルギーに対する経口免疫療法(Oral Immunotherapy: OIT)に関する本学会食物アレルギー委員会の見解」
※ 「食物アレルギーの経口免疫(減感作)療法」(国立病院機構相模原病院 海老澤 元宏先生)
2012年現在、複数の小児アレルギー専門医療機関が取り扱っていますが、まだスタンダードの方法を模索している状況です。
(例)関西医科大学滝井病院、神奈川県立子ども医療センターアレルギー科、国立病院機構相模原病院小児科、あいち小児保健医療総合センター、千葉こども病院アレルギー科、群馬大学小児科
■ 食物アレルギー児の集団生活における管理
(参考資料㉚:p2096-2102より)
除去食療法中の子どもが保育園・幼稚園・学校へ行くようになると、どのレベルの患者が特別対応が必要なのか、誤食事故とその対策、症状が出現した時の対応色々悩ましい問題が出てきます。
<参考HP>
・「保育園におけるアレルギー対応の手引き 2011」(厚生労働省、2011年)
・「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(厚生労働省、2011年)
・「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(文部科学省、2008年)
・「学校・保育所における食物アレルギー対応の進展と今後の社会的対応のあり方」社会医学研究.第 32 巻 1 号.Bulletin of Social Medicine, Vol.32(1)2015
□ 集団生活で対応が必要な食物アレルギー児
食物除去の根拠には医師による正しい診断のもと、必要最小限とすべきです。しかし、保育所で除去を行っている対象児のうち、医師の指示のあるものは50%弱しかないとの報告があります。さらに残念ながら、医師の指示でも、特異的IgE抗体価陽性だけを根拠に延々と制限を続けている不適切例も存在します(乳児期発症の食物アレルギーは特異的IgE抗体陽性であっても3歳までに約50%は治るのです)。
診断書や管理指導標を作成する際、給食対応をしないアレルゲンであっても、給食以外でのアレルゲン接触や屋外活動でアレルギー症状が出現することもあるため、すべてのアレルゲンを記載し、園や学校はそれを職員に周知すべきです。
<園・学校における食物アレルギー児の割合>
・全国の小中高校調査
2004年:食物アレルギー児2.6%、アナフィラキシー児0.14%
2013年:食物アレルギー児4.5%、アナフィラキシー児0.48%
→ 計算すると、アナフィラキシー児は小学校では1校に平均2人、中学校では1校に平均1人が在籍し、エピペン®保有者は小学校で1校に平均1人、中学校では2校に1人となります。
・食物アレルギー児は1歳児で7.7%、保育所全体では4.9%であり、ほとんどの保育所に食物アレルギー児がいると考えられます。
<保育所・幼稚園・学校において食物アレルギー対応が必要な対象者>
1.対象疾患および症状
① アナフィラキシーおよびショック
② 即時型症状(皮膚/呼吸器/消化器症状など)
③ 食物依存性運動誘発アナフィラキシー
④ 口腔アレルギー症候群
⑤ 食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎(保育所のみ)
2.医師の診察・検査によりアレルゲンが特定され、医師からの食餌療法を指示されていること(保護者の自己判断による申請だけでは該当しない)。
① 数年以内に特定食品の摂取や接触などで症状が出現したことがある。
② 上記に加えて免疫学的検査(特異的IgE抗体価など)が陽性。
③ 1〜2年以内の食物負荷試験が陽性。
④ 0〜1歳児の鶏卵および牛乳では免疫学的検査が陽性であればプロバビリティ・カーブ(probability curve)を参考に判断。
⑤ 鶏卵、牛乳以外の食品で特異的IgE抗体で陽性を示し、摂取したことがないものについては、当面は対象者とするが、数年以内に負荷試験による確定診断が必要。
⑥ ピーナッツ、カシューナッツ、ソバ、甲殻類などアナフィラキシーを生じやすい食品で一定以上の特異的IgE抗体価(目安はクラス3以上)であれば負荷試験をせず対象者としておくのが安全。
3.家庭でも食事療法を行っていること。
□ 園・学校における給食提供
園・学校での給食対応は、患者側の重症度やアレルゲンの種類だけではく、給食提供システムや施設側の設備・人員など複数の要素により異なってきます。
2012年時点の報告では、保育所では95%が自園調理であり、保護者のニーズに応える形で熱心に対応されていますが、配属されている調理師は83%、栄養士は26%と十分とは言えない体制です。
<給食提供の要点>
1.保育所・幼稚園・学校での対応の柱は食物アレルギーの原因となる食材の除去や接触回避を原則とする。
2.シンプルに原材料からアレルゲンを完全に取り除いた食事を基本とする。
3.各園や学校あるいは自治体ごとに安全に対応できる食物アレルギー児の範囲を決定しておく。
4.献立や調理に工夫をする。
① 共通献立メニューにするなど、誤食リスクを減らす工夫を行う。
② アレルギー専用の調理室を設ける。アレルギー専用の調理場がない場合は、一般職調理の前にアレルギー食を作成する。
③ 調理器具はアレルゲンごとに専用のものを用意して調理する。
④ 食器は対象者専用年、配膳トレーにクラス名、氏名を明記し、可能であればトレーや食器の色を変える。
⑤ 学校給食センターにおいては、受配校と十分連携して対応する。
5.誤配や誤食に配慮する。
① アレルギー食対象園児・児童生徒を職員全員で把握しておく。
② 誤記がないように責任配膳とする。
③ 食事中の誤食がないように十分な監視をする。
6.弁当を持参させる場合は、保護者と十分協議のうえ理解が得られるよう対応する。
7.児童生徒においては、その発達段階に応じて教職員による栄養指導や保健指導を行い、自己管理能力を育成する。
8.対象となる児童生徒の気持ちを十分考慮し、他の児童生徒の理解を深めるよう学級担任が実情に応じて適切に指導する。
9.職員は常にアップデートした食物アレルギーに関する正しい知識を持ち、全員で共有する。
10.症状が発生した時、全職員が迅速かつ適切に対応できるよう講習を受ける(エピペンを含む)。
□ 誤食事故への対策
誤食(除去している食品を間違って食べてしまう事故)は保育所で多く、1年間に約30%で誤食事故を起こし、その10%は医療機関を受診しているという報告があります。
その発生要因として、
・煩雑な細分化された食品除去対応
・献立や配膳ミスなどの人的エラー
・給食中の他児に原因するもの(他児がこぼした食品を拾って食べる、他児の食品が飛び散る、となりの園児が嫌いな食品を対象児の食器に入れてしまう、など)
などが代表的です。
対策については前項の囲みの中をご覧ください。
・「アレルギー疾患対応資料(DVD)映像資料及び研修資料」(文部科学省)
・「ひやりはっと事例集(2014年版)」(認定NPO法人:アレルギー支援ネットワーク)
・「ひやりはっと事例集(2013年版)」(認定NPO法人:アレルギー支援ネットワーク)
・「ひやりはっと事例集(2012年版)」(認定NPO法人:アレルギー支援ネットワーク)
(内容を一部紹介)基礎編の事例には、①アレルギー反応を誘発するアレルゲンの量には個人差があることを知らなかったために起こした事例、②同じ種類の加工品であってもアレルゲン含有量には商品ごとに違いがあることを理解していないために起こした事例、③食べさせなければ大丈夫と思い、原因食物アレルゲンとの接触により皮膚や粘膜にアレルギー反応を起こした事例、④血液特異的IgE抗体に関する親の過剰な心配で体重増加不良を起こした乳児の事例、⑤特異的IgE抗体価の低い食品から自宅で試しアレルギー反応を起こした幼児の事例、などがある。
□ 症状出現時の対応
食物アレルギー患児が医療機関を受診した際の症状は以下の通り;
・皮膚症状 :約90% ・・・急性蕁麻疹など
・呼吸器症状:約27% ・・・咳込み、嗄声、喘鳴
・粘膜症状 :約24% ・・・のどの痒み、イガイガ感
・消化器症状:約13% ・・・嘔気/嘔吐、腹痛、下痢
・ショック症状:約10%・・・顔色不良、意識消失
「よくわかる食物アレルギーの基礎知識 2012」の27ページには、出現した症状(軽症・中等症・重症)によってとるべき段階的手段が示されています。
・症状が軽微:
摂取した食物を吐かせる、うがいをさせる、皮膚症状であれば冷やす、眼の浮腫であれば軽く水で洗うといった処置を行いながら保健室などで様子を見る、保護者に連絡をする。
・中等症〜重症:
症状の判断がつかない場合、症状が中等症以上、あるいは進行する場合は園医/校医に連絡をして指示を仰ぐとともに、準備していた医薬品(※)の服薬援助を行い、状況によっては救急車要請も考慮しながら医療機関を受診させる、とくにアナフィラキシーやショックなどの強い症状が出たことがある対象者は、軽い症状でも早めの対応が必要である。
※ 皮膚粘膜症状に対して抗ヒスタミン薬、アナフィラキシー既往児ではアドレナリン自己注射(エピペン“)
「食物アレルギー診療ガイドライン 2012」(ダウンロードできず、要購入)の記載「自宅・園・学校でアレルギー症状が出た時の対処法」は以下の通り。
(「食物アレルギー診療ガイドライン 2012」より)
軽症 | 中等症 | 重症 | |
皮膚症状 |
・限られた範囲の痒み ・部分的に赤い斑点 ・蕁麻疹が数個以内 ・唇が少し腫れている |
・強い痒み ・赤い斑点があちこちに出現 ・蕁麻疹が10個以上 ・眼瞼や唇が腫れ上がる |
・激しい全身の痒み ・全身が真っ赤 ・全身に蕁麻疹
|
消化器症状 |
・口の中の痒み
|
・嘔気もしくは1回の嘔吐 ・軟便もしくは1回の下痢 ・間欠的な腹痛 |
・嘔吐を繰り返す ・数回以上の下痢 ・激しい腹痛 |
呼吸器症状 |
・単発的な咳 ・くしゃみ
|
・断続的な咳 ・鼻づまり、鼻水 ・のどの痛み
|
・声がれ、声が出しにくい ・間断ない激しい咳込み ・犬が吠えるような咳 ・喘鳴 ・呼吸困難 |
循環器症状 | (なし) | (なし) |
・脈が速い ・脈が不規則 ・顔色が蒼白 ・唇や爪が白い、紫色 |
神経症状 | (なし) |
・元気がない(不活発)
|
・不安、恐怖感 ・ぐったり ・意識がもうろう |
治療の段階 | 抗ヒスタミン薬を内服し、注意深く症状を観察する段階 |
医療機関を受診する段階 |
緊急に医療機関を受診すべき段階 |
(具体的な治療内容) |
・抗ヒスタミン薬を内服し、経過観察
★ 症状が進行するようなら中等症の対応を行う |
・携帯している緊急時薬(抗ヒスタミン薬、ステロイド薬あるいは気管支拡張薬)を使用した上で医療機関を受診 ★ 症状が進行するようなら重症の対応を行う |
・エピペン®を使用した上で、可能なら抗ヒスタミン薬、ステロイド薬あるいは気管支拡張薬を使用 ・救急車などで医療機関に搬送 |
<留意事項>
1.患者や保護者は緊急時薬を携帯し、外出先や園・学校でも使用できるようにする。
2.アナフィラキシー歴がある患者ではエピペン®の携帯を考慮する。
3.食物学値の中に残っていたら、取り出してうがいをする。
4.目に入ったら水道水で洗顔する。ステロイド点眼薬を携帯していればさすその後、眼科を受診する。
5.アナフィラキシーは進行性であり、初期の軽い症状から急速に悪化することがある。
6.過去にアナフィラキシーやショックなどの強い症状が出たことがあれば、軽い症状でも早めの対応をすること。
■ 食物アレルギーと予防接種
(参考資料㊱)
一般に、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、じんましん等、アレルギー体質というだけでは接種不適当者には該当しません。
しかし、一部のワクチンに食物由来成分が微量含まれており、食物アレルギー患者さんは注意が必要です。
日本小児アレルギー学会の見解(2013年)は以下の通り;
・接種液の成分によりアナフィラキシーを起こしたことが明らかな患者は「接種不適当者」
・接種後にアレルギーを疑う症状を起こしたことがある患者は「接種要注意者」
以上の記載でわかるように、実際に症状が出た患者さんが対象です。血液検査で食物抗原に対する特異的IgE抗体が陽性であっても、原因食物や加工品を摂取できていれば予防接種は問題なく受けられます。
ハイリスクの患者さんは、アナフィラキシー・ショックに対応可能な体制が取れる施設(開業医院ではなく総合病院レベル)での接種が必要です。
具体的に注意すべき成分は、鶏卵、牛乳、ゼラチンの3つです。
鶏卵由来成分
ニワトリ胚培養細胞
(例)麻疹・風疹混合(MR)、おたふく、狂犬病ワクチン
・・・卵白と交差反応性を示す蛋白はきわめて少ないとされています。
卵白アルブミン
(例)インフルエンザ、黄熱ワクチン・・・日本国内のインフルエンザワクチンに含まれる卵白アルブミン量は10ng/mL以下ときわめて微量であり、WHO基準(5000ng/mL)やAAP(700ng/mL)の推奨値と比べて少なく、欧米の製品より高度に精製されています。
牛乳由来成分
下記のごとく乳糖、牛乳由来成分が微量混入している可能性がありますが、重篤な牛乳アレルギー児(※)でなければ副反応を起こす可能性は低いと考えられています。
※ 重篤な牛乳アレルギー児:乳糖の経口摂取で即時症状を認める例、乳糖を含む製剤の点滴静注・吸入でアレルギー症状を認める例、など。
乳糖
(例)麻疹・風疹混合(MR)、日本脳炎、おたふくワクチン
牛乳由来成分
(例)4種混合(DPT-IPV)、麻疹・風疹混合(MR)、肺炎球菌、水痘、ヒブ(Hib)、ロタウイルス・ワクチン
ゼラチン由来成分
1990年代に問題になり、その後ゼラチンを含まない(ゼラチンフリー)のワクチンに切り替わってきました。 現在では下記のみです。(例)黄熱、狂犬病ワクチン
※ 経口ポリオワクチンにはゼラチンが含まれていますが、2012年からは不活化ポリオワクチンに切り替えられています。
(接種液成分)
食物アレルギーの範囲から外れますが、食物アレルギーの有無にかかわらず、接種液成分そのもの(ウイルス抗原、アジュバント、安定剤、防腐剤、抗菌薬など)に対する薬剤アレルギーの可能性もあります。
また、バイアルやシリンジに天然ゴム(黄熱ワクチン、B型肝炎ワクチンの一部)が使用されている場合、ラテックス成分が溶出する可能性が否定できず、ラテックス・フルーツ症候群では注意を要します。
■ 牛乳アレルギー
牛乳(=ミルク)は生後最初に気づくことの多い食物アレルギーであり、鶏卵に次いで2番目に多い原因アレルゲンです。食物によるアナフィラキシーの原因としては最多です。
一口に牛乳アレルギーと言っても症状の程度は様々で、ショックを起こす重症例から生の牛乳以外は飲み食べしても症状が出ない軽症例まで存在します。即時型アレルギー症状では呼吸器症状が比較的多いことが特徴です。また、重症例では牛乳に触れたり、牛乳成分入りの入浴剤でも症状が出たり、牛乳を沸かした湯気を吸い込んで喘息発作が出ることもあります。この際は、集団保育や学校現場などでも対応が必要となります。
治療の基本は症状が出る食品を食べない除去食療法です。医師の指示のもと、重症度に応じて適切な食物除去を行い、除去により不足する栄養を代替食品で補う方法です。
牛乳アレルギーは3歳までに50%、6歳までに90%が耐性獲得(食べても無症状、つまり「治る」こと)ので、一生制限が必要となることはまれです。適切な時期に食物除去を解除していきます。
ただし、牛乳アレルギーは卵アレルギーと比較すると耐性獲得(治ること)が遅い傾向があり、特異的IgE抗体価が低くてもショックを起こす例があることに注意が必要です。最近では、小学校入学時期になっても遷延する重症の牛乳アレルギー児が増加傾向にあります。
牛乳中のアレルゲン成分(コンポーネント)について
牛乳を放置しておくと、沈殿物と上澄み(乳清)に分かれます。主なアレルゲンとして、沈殿物には「カゼイン」(牛乳蛋白の80%を占める)、乳清には「βラクトグロブリン」が存在します。カゼインは加熱してもアレルゲン性は低下しません(耐熱性)が、β-ラクトグロブリンは加熱によりアレルゲン性が低下します。カゼインは加水分解されやすい性質があり、これを利用したのがカゼイン加水分解乳(ニューMA1®、ペプディエット®)です。乳清由来の蛋白質を利用したミルク(MA-mi®、ミルフィーHP®)もあります。
一口に牛乳アレルギーと云っても、乳清に反応する人と、カゼインに反応する人がいます。チーズはほとんどカゼインの成分でできていて乳清は入っていません。従って、「牛乳を飲むとダメだけどチーズは大丈夫」という人がいるわけです。
※ 牛乳アレルギーの方が注意すべき医薬品(当院で処方されることはありません);
・下痢止め、整腸剤の一部はカゼインを原料としているので注意が必要です。歯科で使用されるフッ素製剤の一部にもカゼインが含まれるため、必ず歯科医師に確認しましょう。
(例)タンナルビン®、ラックビー®、ビオスリー®、エンテロノン-R®等
・重症牛乳アレルギー患者では乳糖による副反応も問題になります。乳糖はタンパク質ではないので本来はアレルゲンになり得ないのですが、乳糖は牛乳から精製されて作られるため、極微量ですがの乳たんぱくが含まれます。内服薬(漢方エキス剤に付加されていることが多い)のほか、吸入剤には要注意
(例:吸入性剤)イナビル®/リレンザ® (アナフィラキシーの報告があります)、アドエアディスカス、フルタイドディスカス、アズマネックスツイストへラー、シムビコートタービュヘラー、セレベントロタディスク、セレベントディスカス、レルベアエリプタ、メプチンスイングへラー、メプチンクリックへラーなど
(例:注射製剤)ソル・メドロール静注用40mg(125mg/500mg/1000mg製剤には含まれない)
・・・番外編の「食物アレルギー児が注意すべき薬」も御参照ください。
牛乳アレルギーで注意すべきポイント
アレルギー食品表示;
牛乳は特定原材料として法律により市販加工食品への表示を義務づけられています(ただし「牛乳」ではなく「乳」とのみ表示)。しかし、食堂や食品売り場でつくられた料理・総菜、ファーストフード、レストランには表示義務がないので注意が必要です。
※ その他のまぎらわしい添加物:乳酸カルシウム、乳化剤、乳糖
牛乳とは関係が無く、食べても問題ありません。
「乳糖」は本来糖質なのでアレルゲンとはならないはずですが、原料が牛乳であり乳成分が微量(0.3%)残るため、重症の牛乳アレルギー児(ラスト値5〜6では要注意)では症状が出ることがあります。
牛乳アレルギー用ミルク;
治療として牛乳を除去することはカルシウムの摂取不足につながるため、アレルギー用ミルクによる代替が必要となります。アレルギー用ミルクはアレルゲンである乳蛋白質を分解してできる低分子ペプチドあるいはアミノ酸乳のため、独特のニオイと苦みがあります。乳児期に開始しますと飲めるようですが、離乳食が進んで美味しい味に慣れてしまうとどうしても飲むことができない場合があります。その時には離乳食の中に混ぜて使いましょう。独特のニオイや苦みを目立たなくさせるには、牛ミンチ肉に混ぜたり、みそに混ぜたりするなどの方法があります。
種類としては、MA-mi®、ニューMA-1®、ミルフィーHP®など。大豆乳(ボンラクト®、ソーヤミール®)も使用可能ですが、長期間使用した場合大豆アレルギーを引き起こす危険性がありお勧めできません。
牛乳アレルギー用ミルクにはビオチンがほとんど含まれていないため、適切な時期に離乳食を開始しないと欠乏症を発症する可能性があります。
※ まぎらわしいペプチドミルク:
ペプチドミルク(ペプチドミルクE赤ちゃん®、アイクレオHI®)はアレルゲン性が残っており治療用ミルクとしては使用できませんが、除去食解除の際には利用可能です。
□ アレルギー用ミルク一覧表
種類 |
アミノ酸 調整粉末 |
蛋白加水分解乳 |
大豆粉乳 | ペプチドミルク | ||||
商品名 |
エレメンタル・ フォーミュラ |
ニューMA-1 |
ペプディエット |
MA-mi | ミルフィーHP |
ボンラクト i |
E赤ちゃん |
ペプチドミルク |
メーカー | 明治 | 森永 |
ビーンス ターク・ スノー |
森永 |
明治 |
和光堂 |
森永 |
アイクレオ (グリコ) |
原材料 | 精製アミノ酸 | カゼイン | カゼイン |
カゼイン 乳清蛋白 |
乳清蛋白 | 大豆蛋白 |
カゼイン 乳清蛋白 ラクトフェリン |
カゼイン 乳清蛋白 |
最大分子量 (kDa) |
100 | 1000 | 1500 | 2000 | 3500 | ー | 3500以下 | 3000以下 |
乳糖 | 無添加 | 無添加 | 無添加 | 0.06g/100ml | 無添加 | |||
オリゴ糖 | ラフィノース | なし | ラフィノース | フラクトオリゴ糖 | ||||
浸透圧 (mOsm) |
400 | 300 | 330 | 280 | 280 | |||
特徴 |
アミノ酸のみでアレルゲン性なし。脂肪が少ない。 | ほとんどトリペプチド(アミノ酸3個)以下。味が悪い。 | 味を改善。ペプチドがやや大きいため、まれに症状を誘発する。 | 大豆感作を起こす可能性あり。 | ミルクアレルギー予防用。蛋白の分解が緩いため、治療用には使えない。 |
牛乳アレルギー用ミルクはアレルギー反応を起こしにくい状態まで低分子化されているため、風味が独特で赤ちゃんにとって飲みづらい傾向にあります。
・MA-1 ・・・味がやや悪く飲みにくいけど下痢を起こすことは少ない傾向
・ミルフィーHP ・・・味はいいけど下痢を起こすこともあります
乳製品・ヨーグルト;
乳酸菌飲料やヨーグルトは乳酸菌の力である程度牛乳たんぱくを分解していますが、アレルギーを抑制するだけの効果はなく、牛乳アレルギーでは利用できません。チーズは乳蛋白が濃縮される(牛乳の約7倍)ので強い反応が出る可能性が大です。一方、バターは主として乳脂肪分で、蛋白質含有量は牛乳の約1/5と少なくなります。
「粉乳」には牛乳の約10倍の乳たんぱくが含まれる可能性があり、注意が必要です。
※ マーガリンは乳製品?
・・・植物油に水素を添加し、脱脂粉乳を少量(ふつう0.3%)添加してある食品ですので、牛乳アレルギーの方は症状が出てしまうことがあります。
他の動物の乳、牛肉は?
・牛乳アレルギー児の90%はヤギ乳に反応して症状が出ます。
・牛肉の主なアレルゲンは血清アルブミンで牛乳のアレルゲンと異なります。牛肉中に牛乳のアレルゲン(カゼイン、β-ラクトグロブリン)はほとんど入っていません。牛肉を食べて症状の出る人は牛乳アレルギーの約10%で、残りの90%は無症状です。血清アルブミンは加熱により反応性が低下するので、十分加熱した牛肉ではアレルギー反応は起こしません(レアステーキには注意)。
★ 「牛乳アレルギーと牛肉」「卵アレルギーと鶏肉」の関係
卵は鶏が産む、牛乳は牛の乳であるから、親子関係で抗原性も同じと誤解されがちですが、そのようなことはありません。なぜなら、アレルゲンとなるのは蛋白質でありDNA(遺伝子)ではないからです。
牛乳アレルギーの除去食品と代替食品
牛乳入り食品をアレルゲン性の強弱順に並べ、その代わりになる食品を例示した表です。いろいろな書籍で作られていて比較すると微妙に異なるのですが、この表が一番整理されていると思われます。
この表は、制限食を解除する際にも利用します。
医師の管理の下、一番下の欄の食品少量から開始し、症状が誘発されたら中止してまた数ヶ月後にトライし・・・これを繰り返しているといずれ症状が出ないときが訪れます。その後は量と回数を増やし、その食品がクリアできたら同じレベルの種類を増やし、その欄を制覇したら次の強度の食品を試す・・・この粘り強い繰り返しで解除を進めることになります。
抗原の強さ | 除去食品 |
代替食品 |
最も強い (一次食品) |
牛乳、生クリーム、粉ミルク、練乳 |
アレルギー用ミルク(ニューMA-1®、MA-mi®、ミルフィーHP®、エレメンタルフォーミュラ®等) ココナッツミルク |
強い (半生加工品) |
バター、ヨーグルト、チーズ、プリン、ババロア、チョコレート、アイスクリーム、ミルクセーキ |
菜種マーガリン、A-1ソフトマーガリン、綿実ショートニング、果汁シャーベット、かき氷、寒天よせ、アレルギー用チョコレート |
やや強い (加熱加工品) |
つなぎにカゼイン含有食品(ハム、ソーセージ)、 シチュー、グラタン、 ケーキ、 カルピス、乳酸菌飲料 |
アレルギー用ハム、ソーセージ、 アレルギー用シチュー、アレルギー用ミルクで手作り 牛乳不使用で小麦、ベーキングパウダーで手作り、 自家製ジュース、調整豆乳(牛乳混入なし) |
弱い (含有量少加熱加工品) |
焼き菓子(クッキーなど)、パイ、ワッフル、ドーナツ、ウエハース |
もち、かしわもちなど牛乳不使用の和菓子類、牛乳不使用の小麦、ベーキングパウダーで作った自家製菓子、ソーダクラッカー、せんべい |
弱い (含有量微少加熱加工品) |
食パン、ゼラチン、キャラメル、粉末ジュース | 牛乳抜き食パン、寒天、カラギーナン、アレルギー用キャンディー、氷砂糖、自家製の天然果汁 |
(「食物アレルギー児のための指導マニュアル」診断と治療社、2008年発行より)
<参考> 新生児-乳児消化管アレルギー
★ 発酵食品は安全?
一律には捉えることができませんので、ご注意ください。
乳酸発酵
牛乳は乳酸菌などによりヨーグルトやチーズなどの発酵食品に加工されます。乳酸発酵によるアレルゲン性の低下は、発酵に用いられる乳酸菌や酵母類のたんぱく分解酵素活性の強さにより異なりますが、一般的には麹菌をもちいるみそやしょうゆの発酵(醸造)のようにアミノ酸レベルまで分解されることはなく、牛乳と同等のアレルゲン活性を残していると考えられます。
したがって、牛乳アレルゲンの摂取量を考えるときには、食品中に含まれる牛乳蛋白の量を基準とすることが可能です。例えば、脱脂粉乳やチーズは牛乳蛋白が濃縮されている一方で、バターは主に脂質であり蛋白含有量は低い傾向があります。
みそ、しょうゆ
麹菌による1年近い発酵(醸造)過程で小麦蛋白がアミノ酸まで分解されています。完成したしょうゆには小麦蛋白質は残っていません。
小麦/大豆アレルギー患者でもごく一部の重症例を除いて摂取可能です。
かつお節、煮干し
かつお節や煮干しのだしは、発酵により蛋白が分解した後にアミノ酸として抽出されます。そのため、これらのアレルゲン性は低く、魚アレルギーのヒトでも魚のだしは摂取できる可能性が高いとされています。
・・・以上は「食物アレルギーの栄養指導」医歯薬出版社(2012年発行)より
■ 卵アレルギー
鶏卵(以下卵)は食物アレルギーの中で最も多い原因アレルゲンで、全年齢においては38%、0歳児の食物アレルギーの5〜8割を占めると言われています。
一口に卵アレルギーと言っても症状の程度は様々で、ショックを起こす重症例から生卵以外は食べても症状の出ない軽症例まで存在します。即時型アレルギー症状では、皮膚症状(77%)、消化器症状(32%)、呼吸器症状(24%)の順で多く見られ、消化器症状が比較的多い特徴があります。
治療の基本は症状が出る食品を食べない除去食療法です。医師の指示のもと、重症度に応じて適切な食物除去を行い、除去により不足する栄養を代替食品で補う方法です。
卵アレルギーは3歳までに50%、6歳までに70%が治ります(※ )ので、医師と相談の上、適切な時期に食物除去を解除していきます。ただし重症例は危険を伴いますので、入院の上、食物負荷試験を行います。
※ 3歳までに30.9%、6歳までに73%が耐性獲得(資料㊱)。
卵の中のアレルゲンについて
・ 鶏卵のアレルゲンは主に卵白(白身)に存在し、「オボアルブミン」「オボムコイド」「リゾチーム」などのアレルゲン・コンポーネントが主犯格です。卵黄(黄身)がアレルギーを起こす力は実は弱いのです。
・「オボムコイド」は耐熱性アレルゲンと呼ばれ、加熱しても分解しません。残念ながら、オボムコイドの特異的IgE抗体陽性者は卵を加熱調理しても症状の出やすさは変わりません。
・最近、小麦や米といった副材料を混ぜて加熱調理すると、オボムコイドの水溶性が不溶性となり、抗原性が低下するという報告もあります(伊藤節子先生)。
※ 卵アレルギーの方が注意すべき医薬品;(当院で処方されることはありません)
リゾチームは「塩化リゾチーム」として市販の風邪薬の一部に使用されていますので注意が必要です。
(処方薬の例)レフトーゼ®、ノイチーム®、アクディーム®・・・いわゆるジェネリックにも多数あり、薬剤名を挙げるとキリがありません・・・しかし、2016年に発売が中止になりました。
卵アレルギーで注意すべきポイント
・アレルギー食品表示;卵は特定原材料として食品衛生法によりスーパーなどで市販される加工食品への表示を義務づけられています。しかし、食堂や食品売り場でつくられた料理・総菜、ファーストフード、レストランには表示義務がないので注意が必要です。アヒル卵、ウズラ卵も表示対象ですが、魚卵や爬虫類の卵は対象外です。
・ゆで卵を食べて症状が出る人は、生卵を食べて症状が出る人の半分です。
・卵黄:生卵から卵黄だけ取り出すと卵白の混入が避けられないため、卵黄だけを使用した食品や調理も除去の対象とすべきです。
・鶏肉と卵白は交差反応しないので別のアレルゲンと考えます。鶏肉を食べて症状が出る人は卵アレルギー児の5%以下です。肉類は加熱による低アレルゲン化が起こりやすく、食肉の多くは加熱調理して摂取されるためアレルギー症状は出にくいとされています。鶏肉アレルギーの患者さんは他の鳥の肉にも反応する可能性が指摘されていますが、やはり加熱調理により低アレルゲン化する傾向があります。
・ニワトリ以外の鳥の卵(ウズラ、ダチョウ/ガチョウ、アヒル、カモ、七面鳥・・・)は鶏卵と交差反応を起こします。反応の強さは鶏卵より弱い傾向がありますが、鶏卵と同じレベルの除去が必要です。
・魚卵と卵白は交差反応しないため、別のアレルゲンと考えます。魚卵に反応する鶏卵アレルギー児は希です(イクラでは3〜5%)。
・加工食品に添加されている「卵殻カルシウム」には卵の成分が微量混入している可能性がありますが、焼成・未焼成ともにアレルギー反応を起こすことは希で無視できるレベルです。ただし、鶏肉を食べると症状が出る過敏な方はやめておいた方が無難でしょう。
・重症例では卵に触れたり舐めただけでも症状が出ることがあります。
Q. マヨネーズの原料は「卵黄」だから大丈夫?
A. いいえ。
生の卵黄に脂と酢を加えてできるマヨネーズですが、生の卵黄と卵白を厳密に分けることは不可能なので卵白も混入します。卵黄成分が油で守られたようになって長期保存が可能となりますが、アレルゲン性は強いのです。アイスクリームも同様に、卵黄が主原料ですが卵白も混入しています。
ただし、マヨネーズは酢(酢酸)と混じり合って変性しているため、生卵よりも食べられる可能性が高い食品ではあります。
Q. 鶏卵アレルギーと魚卵アレルギーは関係ありますか?
A. 関係ありません。
前述のように抗原性については科学的なデータから関連性は否定されています。
ただ、乳幼児では鶏卵アレルギーが多く、鶏卵アレルギーがないのに他の食物アレルギーがあることはほとんど無いという事実があります。そのため、イクラアレルギーはほぼ100%が鶏卵アレルギーの子どもに発症するのも事実です。
Q. 卵アレルギーの子どもが注意すべき予防接種は何がありますか?
A. 麻疹ワクチンとインフルエンザワクチンです(理論上は安全ですが)。
麻疹ワクチンに関しては、1990年代にアレルギー性副反応が多発して問題になりましたが、その原因は卵成分ではなく添加物のゼラチンであることが判明しました。重症の卵アレルギー児の中にはゼラチンにも反応する患者がいたということですね。現在製造されているワクチンからは除去されていますので問題ありません。
ワクチンに含まれるオボアルブミン(卵白アレルゲン)でアナフィラキシーを引き起こす濃度は600ng/回(ワクチン濃度としては1200ng/ml)以上と云われています。一方、麻疹ワクチンに含まれるオボアルブミンの濃度は1ng/ml以下、最近(2010年時点)の国産のインフルエンザワクチンに含まれるオボアルブミン濃度は10ng/ml以下です。つまり、理論上副反応は起こらないことになり、安全と考えられます。
少なくとも鶏卵でアナフィラキシーなど重篤な症状を起こさない児では、普通に接種して差し支えありません。微量でもアナフィラキシーを起こすような重症者では、接種に際して事前に皮膚テスト、プリックテスト、分割接種なども考慮します。どれも完全なものではないので、有事の際に対応可能な体制で行うことが必要です。
※ 予防接種総論「卵アレルギー児への予防接種」もご参照ください。
卵アレルギーの除去食品と代替食品
卵入り食品をアレルゲン性の強弱順に並べ、その代わりになる食品を例示した表です。いろいろな書籍で作られていて比較すると微妙に異なるのですが、この表が一番整理されていると思われます。
この表は、制限食を解除する際にも利用します。医師の管理の下、一番下の欄の食品少量から開始し、症状が誘発されたら中止してまた数ヶ月後にトライし・・・これを繰り返しているといずれ症状が出ないときが訪れます。その後は量と回数を増やし、その食品がクリアできたら同じレベルの種類を増やし、その欄を制覇したら次の強度の食品を試す・・・この粘り強い繰り返しで解除を進めることになります。
抗原と強さ | 除去食品 |
代替食品 |
最も強い (一次食品) |
生卵、鶏卵料理(ゆで卵、卵焼きなど)、ウズラ卵 |
魚介類、豚肉、牛肉、大豆食品 |
強い (半生加工品) |
マヨネーズ 卵使用ドレッシング
茶碗蒸し、ミルクセーキ ババロア、カスタードプリン、アイスクリーム |
アレルギー用マヨネーズ フレンチドレッシング ノンオイルドレッシング フローズンヨーグルト ミルクプリン、卵抜きアイスクリーム、フルーツシャーベット |
やや強い (加熱加工品) |
練り製品(ちくわ、はんぺん)
つなぎ類(ハム、ソーセージ、ハンバーグ)
衣類(天ぷら、フライの衣)
ケーキ、カステラ、卵ボーロ |
卵不使用練り製品、片栗粉、サクサク粉、タピオカ粉などで手作り 卵不使用ハム、ソーセージ、ハンバーグ、つなぎにレンコンや片栗粉使用の自家製ハンバーグ 卵除去の衣(水溶きホワイトソルガム、水溶きサクサク粉、雑穀粉+大和芋のすりおろし) 重曹やベーキングパウダーと小麦や雑穀で作ったケーキ |
弱い (含有量少加熱加工品) |
焼き菓子(クッキーなど)、菓子パン、ドーナツ、今川焼、瓦せんべい |
重曹やベーキングパウダーと小麦や雑穀で作った卵抜きクッキー・マフィン・スコーン、菓子パン、ドーナツ、きびだんご、よもぎだんご、ようかん、おはぎ、わらびもち、しょうゆせんべい |
弱い (含有量微少加熱加工品) |
中華麺、パスタ(麺類つなぎ)、パン、ロールパン |
卵抜き自家製中華麺、卵不使用のパスタ、卵抜き自家製パン、フランスパン |
(「食物アレルギー児のための指導マニュアル」診断と治療社、2008年発行より)
<こんなものにも注意!>
・外食用サラダ・・・乾燥防止の予防スプレー
・表面の光沢・・・味付け海苔、一部の和菓子、菓子パン
・卵白で濁りを取る・・・こんにゃく、メープルシロップ、はちみつ、コンソメスープ、果実酢、みりん
・製造ラインで混入・・・パン、菓子パン、ベビーフードなど
・その他の卵・・・しらす干し(お腹がオレンジのもの)
■ 小麦アレルギー
小麦アレルギーは食生活の欧米化とともに増加し、近年の調査では卵、牛乳に次いで第3位となり、その1割を占めています。軽症者とショックを起こす重症者が別れるのが特徴です。臨床型は以下の3つに分けられます;
① 乳幼児期に発症する即時型症状
② 学童期以降に小麦摂取後の運動で起こる小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)
③ 主に製粉・製パン業で経気道的に感作され喘息を起こすパン屋喘息(Baker’s asthma)
食物アレルギー治療の基本は症状が出る食品を食べない除去食療法です。医師と相談しながら適切な除去食療法を行い、それにより不足する栄養を代替食品で補い、食べられるようになるのを待ちましょう。
乳幼児期に発症した小麦アレルギーは4歳までに約60%、6歳までに60〜70%が治ります。しかし学童期以降に発症した小麦依存性運動誘発アナフィラキシーや職業性小麦アレルギーは基本的に治りません。
<まめ知識>
・小麦の特異的IgE抗体価は当てになりません。強陽性でも症状が出ないことがある一方で、弱陽性でもショックなど強い症状を起こすことがあります。
※ プロバビリティ・カーブが描きにくいアレルゲンの一つです。
<ちょっと詳しく> 小麦の特異的IgE抗体価の読み方の注意
穀物のタンパクには構造が似ていて交差抗原性を有するものが多く含まれます。そのため、米・小麦・トウモロコシ・ソバ・雑穀類といった多種穀物に対して、同等のIgE抗体価を示す患者さんがいます。こうした患者さんは、どの穀物に対しても即時型アレルギー症状を呈することは少なく、抗体価のみを食物制限の根拠とすることは避けるべきです。症状が真実です。
・小麦粉には約10%の蛋白質が含まれています。小麦蛋白質は塩不溶性と塩溶性とに分けられます。塩不溶性分画はグルテンと呼ばれ、さらにグリアジンとグルテニンに分けられます。
小麦アレルギーで最も有名なものはω-5グリアジンで診断特異度が高く、3UA/mLでの症状誘発の可能性は約9割です。しかし小麦アレルギーを有する時の約3割が陰性のため、陰性であっても小麦アレルギーを否定できません。
WDEIA(食物依存性運動誘発小麦アレルギー)では小麦特異的IgE抗体価は低値あるいは陰性であることが多く、成人ではω-グリアジンの有用性が報告されています。しかし小児あるいは20歳以下の若年成人では陽性になりにくいとされています。
また、塩溶性蛋白はパン屋喘息の原因となることも報告されています。
※ 2010年に話題になった「茶のしずく石鹸」で食物依存性運動誘発アナフィラキシーを起こすのは、石鹸に含まれる塩不溶性のグルテンが酸によってグルパール19Sという水溶性の蛋白質となり、この蛋白質の抗原性が強くなり、皮膚で感作され、小麦を摂取するとアナフィラキシーを起こすとされています。
・グルテンは耐熱性で煮ても焼いてもアレルゲン性が低下しません。ただし、しょうゆ・みそ(※)、酢などの調味料は発酵によりタンパク質が分解されてアレルゲン性が低下しており早めに利用できます。
※ しょうゆ・みその小麦含有量については醸造過程で蛋白がアミノ酸まで分解されているためアレルゲン性はほとんどなく、制限の必要はないと報告もあります。
・小麦はグルテンの含有量により、少ない方から薄力粉・中力粉・強力粉に分けられます(下図参照)。加工品との関係は以下の通り;
【薄力粉】ケーキ類
【中力粉】うどん、お好み焼き、タコ焼き
【強力粉】パン、麺類
うどんは薄力粉や中力粉で作られますが、パンは強力粉です。スパゲティ製品に含まれるグルテンの量はうどんとほぼ同じですが、症状の出方はスパゲティの方が軽い傾向があります。ですから、制限解除の際に試す順番は、スパゲティ → うどん → パンがお勧めです。ただし、食べる量も影響しますのでご注意を。
(2011.6.4:朝日新聞より)
・パスタの原料であるデュラム小麦は一般のパン小麦と同じ仲間でアレルゲン性も同じです。
・小麦アレルギーの人が他の穀物(大麦、ライ麦など)を食べて症状が出る可能性は約20%と高くありません(大麦・ライ麦は小麦表示の対象外)。オーツ麦(オートミールなど)はグルテンを含まず、小麦アレルギーでも利用しやすい食品です。キビ、ホワイトソルガムもグルテンを含有しておらず、小麦粉の代わりになり、アレルギー用の食品にも多く用いられています。
・小麦アレルギーでは小麦粘土による湿疹(接触皮膚炎)が出ることがあります。粘土状になったものは湿疹程度で済みますが、小麦粉に水を混ぜるときに粉が舞い散ると、それを吸い込んで喘息発作を起こすことがあります。図工などでこれを使用する場合は代替の粘土が必要となります。
Q. 小麦アレルギーでは麦茶は飲めないの?
A. 麦茶の成分は小麦ではなく大麦なので、基本的には大丈夫ですが、例外もあります。
麦茶の原料は小麦ではありません。大麦です。小麦アレルギーの人が麦茶を飲んでも基本的には無症状ですが、大麦アレルギーも合併している人(約20%)は症状が出ます。重症の小麦アレルギーでは要注意、と書いてある本もあります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
・小麦アレルギーは食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因となることがあります。これは不思議な病気で、小麦を食べただけでは症状は出ません。運動しただけでも症状は出ません。でも小麦を食べて数時間以内に運動をすると全身じんま疹、呼吸困難・喘息発作、血圧低下や意識障害など重い症状を起こすのです。頻度は、中学生で6000人に1人程度の希な病気です。薬物(アスピリンなどの非ステロイド系消炎鎮痛剤)の内服、疲れなども症状の出方や程度に関係することがあります。
乳幼児期に発症する小麦アレルギーと異なり、小麦特異的IgE抗体価(※)も全例陽性にはなるわけではありません。
※ 原因蛋白は小麦成分の中の「ω-5グリアジン」という成分(コンポーネント)であることが近年判明しました。
※ 小麦が食物依存性運動誘発アナフィラキシーを起こしやすい理由:詳細は未だ不明ですが現在わかっていることを記します。ω-5グリアジンは運動により血中濃度が上昇しやすくなるという性質が一つ。さらにω-5グリアジンが含有している塩不溶性分画分子のアミノ酸配列に特徴があり、数個のアミノ酸配列が1分子上に繰り返し存在します。これらが抗原決定基になるとIgE受容体が凝集し架橋を起こしやすくなると考えられ、その結果、肥満細胞や好塩基球から脱顆粒が促進され、化学伝達物質が多量に放出されるのです。
2010年に「茶のしずく石けん」(製造販売元:悠香)の使用により数十人の患者さんが発生し、問題になりました。また、プロテニス選手のノバク・ジョコビッチ選手もこの病気が疑われ、運動前に小麦を食べないようになってから調子が上向いて2011年ウィンブルドン初制覇に至ったと報道されました。
・ベーカリー喘息(Baker's asthma):パンを製造する過程で舞い上がった小麦粉を吸い込むことにより喘息発作を起こす病気です。不思議なことに、小麦を食べても症状は出ません。
原因アレルゲンはα-アミラーゼインヒビターという水溶性画分のコンポーネントと考えられています。
Q. 小麦アレルギーはないのにお好み焼きでじんましん〜アナフィラキシーを起こしたと聞いたのですか?
A. 犯人は小麦ではありません。開封後の保管中に繁殖したダニ成分を食べた事によるアレルギー反応です。
この「お好み焼き粉・ミックス粉」によるアレルギー反応(パンケーキシンドローム)は10年ほど前から時々アレルギー学会でも報告されています。
※ 参考「パンケーキシンドロームについて」(医薬品情報21)
小麦アレルギーの代替食品
主食として
ビーフン、雑穀めん:あわめん®、ひえめん®、きびめん®、米パン(A-カットパン®、おっ米パン®、グルテンフリー米粉パン®冷凍便)
※ 米パンに注意!・・・上記以外の市販されている米パンは純粋に米粉から作っているものではなく、小麦グルテンを含むので小麦アレルギーの人は食べると症状が出ます。近年、米粉パン専用のホームベーカリーと米粉が市販されていますので、これを利用すると安全です。
実は私自身が「GOPAN」(サンヨー→ Panasonic)を購入し、スタッフが米を使ったパンを焼いてくれました。ちょっとしっとりした生地でほのかに米の香りが感じられる、まあまあの味でしたよ。
小麦粉として
米粉(上新粉、白玉粉)、雑穀粉(あわ、ひえ、きび、ソルガム、アマランサス等)
でんぷん(片栗粉、くず粉、タピオカ粉)
アレルギー用のカレー・シチューのルウ(ひえ粉)
調味料
米みそ、米しょうゆ、雑穀みそ、雑穀しょうゆ、米酢、果実酢(りんご酢、白梅酢、ワインビネガーなど)
小麦アレルギーの除去食品と代替食品(番外編「アレルギー食品の入手先情報」も参照)
(「食物アレルギー児のための指導マニュアル」診断と治療社、2008年より)
抗原の強さ | 除去食品 | 代替食品 |
<強い> 強力粉中力粉加工品 |
パン、パン粉 麺、麩、パスタ、餃子、春巻き、ワンタンの皮 |
ご飯、もち、米パン、さつまいも、じゃがいも、米パン粉、コーンフレーク、 あわめん(ラーメン風)、きびめん(スパゲッティ風)、ひえめん(うどん風)、ビーフン、キヌアスパゲッティ、ホワイトソルガム麺 |
<やや強い> 薄力粉加工品 |
焼き菓子(クッキーなど)、天ぷら、フライの衣、ドーナツ、カスタード
練り製品のつなぎ 麦飯 |
上新粉、ホワイトソルガム、雑穀粉、ひえ粉、あわ粉、きび粉、キヌア粉、アマランサス粉、サクサク粉、タピオカ粉、ホワイトソルガム粉、いも粉、くず粉、ワイルドオーツ粉、キャロブパウダーなどで手作り かたくり粉、サクサク粉、 タピオカ粉ご飯、雑穀 |
<弱い> 含有量少加熱加工品 |
小麦含有の調味料(しょうゆ、みそ)
穀物酢 ケチャップ 小麦胚芽油 麦茶 |
米しょうゆ、あわしょうゆ、ひえしょうゆ、きびしょうゆ、こーりゃんしょうゆ、キヌアしょうゆ、いわししょうゆ、米みそ、ひえみそ、あわみそ、きびみそ、キヌア みそ米酢、りんご酢、ぶどう酢、梅酢、白梅酢 アレルギー用ケチャップ、アレルギー用ソース オリーブ油、なたね油、大豆油、サフラワー油 緑茶、紅茶、ウーロン茶 |
<こんなものにも注意!>
・麦芽糖は蛋白ではなく糖類なので基本的に安全ですが、大麦、じゃがいも、トウモロコシから作られていることが多いので確認が必要です。
・雑穀麺にはタピオカ粉、キヌア麺にはトウモロコシが添加されたものもあります。
・水飴は小麦胚芽が使用されていることもあります。
・シナモンなど粉末の香料に小麦粉が混入していることがあります。
・麦芽エキスは小麦蛋白を含みます。
小麦制限解除の例
(必ず医師の指導下で行ってください)体調の良いときにアレルゲン性の弱いものから少量で始め、症状が出なければ量を増やし、十分量を食べても症状が出なくなることを確認後に次のステップへ進みます。
① 調味料(醤油など) → ② オーツ麦 → ③ 大麦 → ④ 低アレルゲン小麦 → ⑤ うどん
★ 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)
(food-dependent exercise-induced anaphylaxis, FDEIAn)
不思議な病気です。
食物アレルギーの仲間ではありますが、アレルゲンとなる食物を食べても無症状です。でも、食べた後に運動をすると激しいアレルギー症状が出ます。逆に運動しただけでも無症状です。
小児では「給食の後の体育の時間にひどいじんま疹が出て苦しくなる」という例が怪しいです。
<参考>
・「特殊型食物アレルギーの診療の手引き2015」(厚生労働省)
疫学
平均年齢23.9歳、1.3:1で男性に多い。
初発年齢:10〜20歳台。
日本の小中学生における検討では、有病率0.0085%(12000人に一人)。近年は6000人に1人と報告されています。
中学生に多く、男女比は4:1。
※ 残念ながら養護教諭でこの病気を知っている人は30%程度(1998年)その後の調査で90%へ上昇(2012年)。
病態
原因となる食材
小麦製品:60%
甲殻類:30%
近年、果物や野菜も増加傾向
3%の患者さんは不特定の食物により発症
※ 乳幼児期の食物アレルギーの原因となりやすい鶏卵や牛乳が多くないことが特徴。
※ イタリアの報告では、トマトが30%、小麦は10%と日本と原因が異なります(資料㊱)。
きっかけとなる運動その他
運動負荷が大きいタイプ(球技・ランニングなど)が多い。
しかし散歩など軽い運動や、入浴や飲酒による発症の報告例もあります。
食事から発症までの時間;
・30分未満:75%
・2時間未満:90%
例外的に運動直後の食事での発症例も報告されています。一方で5時間後に発症した報告もあります。
発症時間帯の80%は昼食後であり、季節による変動は認めません。
約15%で非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDs)が発症に関与してあり、これらの例は女性に多く、平均年齢が高い傾向があります。また、NSAIDs関与例の報告は日本発が多く認められます。
発症のメカニズム
基本的には、
・抗原特異的IgE抗体が関与する即時型反応
・通常の即時型反応ではアレルゲンと特異的IgE抗体の存在が必要十分条件であるが、FDEIAsでは「+運動負荷」
・・・なのですが、しかし、上記3つが揃えば毎回発症するとは限らないところが悩ましい。
他にも複数の食物の同時摂取、運動負荷量、運動方法、女性ホルモンの影響、花粉症の影響、体調などなど修飾因子の存在が指摘されています。
1.アレルゲンの解析
■ 小麦:小麦およびグルテン特異的IgE抗体の陽性率は約50%にとどまります。成人の小麦発症例ではω-グリアジン特異的IgE抗体陽性が80%、high molecular weight(HMW)グルテニン特異的IgE抗体陽性率が20%と報告されており、現在ω-グリアジンによりスクリーニングが行われるようになりつつあります。
☆ 小児におけるω-グリアジンの意義:小児例ではω-グリアジン特異的IgE抗体の陽性率は必ずしも高くない(成人92.8%、20歳未満46.1%)ため、診断の参考所見にとどまります。一方、通常の即時型小麦アレルギー小児例ではω-グリアジン特異的IgE抗体の有用性は高く、診断的価値があります。
その他のFDEIAnに関与する小麦抗原として、塩不溶性画分α・γグリアジン、塩可溶性画分αアミラーゼインヒビター、lipid transfer protein(LTP)の報告もあります。
■ 大豆:豆腐によるFDEIAn症例の原因抗原はβ-コングリシニンであることが近年解析されました。
2.運動の役割
運動は消化管からの食物抗原吸収量を増加させます。動物実験からは、運動により消化管上皮の微細な傷害が起こり、多量の抗原が消化管から吸収させたとの報告があります。
3.アスピリン(ASA)の影響
基本的に用量依存的にアレルギー症状を増強させます(微量で影響が出る例外あり)。消化管からの小麦抗原吸収量が増加することによります。
さらに、シクロオキシゲナーゼ(COX)-1阻害薬にその作用が強いことが示唆されています。
症状
・皮膚症状(ほぼ全例)・・・広範なじんま疹・血管浮腫、紅斑
・呼吸器症状(約70%)・・・喘鳴、咳嗽、呼吸困難
・ショック症状(30〜50%)・・・血圧低下、意識レベル低下
80%以上が複数回発症(反復している)
アレルギー疾患の有病率は約70%に認められるが、特定のアレルギー疾患との関連はなく複数のアレルギー疾患を有している・・・つまり、この病気があるからなりやすい、危ないとは予測不能です。
診断
確定には誘発試験が必要です。ただし、超重症例は危険を伴うので禁忌とされています。
実際には、患者家族の説明と了解の元に入院設備のあるアレルギー専門施設で実施すべきです。
2009年に日本小児アレルギー学会から発行された「食物アレルギー経口負荷試験ガイド」(協和企画発行)に方法が記載されています。
ポイントは、
・詳細な問診により原因食物を絞り込む
・条件を変えて繰り返し誘発試験を実施する
・誘発試験陰性の場合はASAの前投与を考慮する
・運動負荷はエアロバイクやトレッドミルを用いて準最強度の負荷を行う
など。
治療
DSCG(インタール®)有効例の報告があるがスタンダードにはなっていません。
頻回にアナフィラキシー発症を繰り返す場合には携帯用アドレナリン(エピペン®)の処方が望ましいとされています。
「食物アレルギー診療ガイドライン2012」(日本アレルギー学会)推奨の管理方法;
① 運動前には原因食物を摂取せず、原因食物を摂取した場合、食後最低2時間は運動を避ける。
② 皮膚の違和感やじんましんなど前駆症状が出現した段階で、運動をただちに中止して休憩する。
③ ヒスタミンH1受容体拮抗薬、ステロイド薬、アドレナリン自己注射器(エピペン®)を携帯する。
④ 感冒薬や解熱鎮痛薬を内服した場合は運動を避ける。
Q. 運動制限は必要ですか?
A. 原因となる食物を摂取していない場合には、運動制限は不要です。
原因食物を摂取した場合には、食後最低2時間は運動を避けることが必要です。
予後
不明ですが、現在までの観察では治癒は難しいとされています。
★ 「茶のしずく石鹸」事件(加水分解小麦型WDEIA)
(参考資料㉚、p2015-2018&p2078より)
前項の食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は食後の運動量が増える学童期以降に好発します。これらの患者は、全身の膨疹が主症状ですが、近年、眼瞼浮腫を主症状とする患者が急増しました。
患者は大部分が女性であり、発症前に加水分解小麦(グルパール19S)を含有した石鹸(「茶のしずく石鹸」)を使用していました。その多くが従来のFDEIAで陽性率の高い ω-5グリアジンや高分子量グルテニンに対する特異的IgE抗体を有しておらず、一方加水分解小麦に反応するIgEを有していたことから、石鹸中の加水分解小麦に経皮膚または経粘膜的に感作され、後に経口摂取した小麦たんぱく質との交差反応によって、小麦によるFDEIA(wheat dependent exercise-induced anaphylaxis, WDEIA)を発症したと考えられました。製品使用前の小麦アレルギー歴は必ずしも存在せず、獲得されていた小麦に対する耐性が障害され、小麦アレルギーが発症したことになります。すなわち、通常の小麦に対する耐性獲得は永続するものではなく、可逆性を示している点で食物アレルギーの病態解析に一石を投じる事例です。
※ グルパール19Sを含有する「茶のしずく石鹸」は2004年3月〜2010年9月までに4650万個がのべ466万人に販売され、その結果小麦アレルギーの発症が確認された患者は2012年10月時点で1540例にのぼります(日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」発表)。
患者のほとんどがアトピー性皮膚炎の既往がなく、その他のアレルギー疾患のの罹病も明らかではありません。
約半数の患者は石鹸使用開始後に顔面の膨疹、鼻汁、くしゃみ、流涙などの局所即時型アレルギー症状を自覚し、その後WDEIAを発症していました。残りの半数は石鹸使用時の局所即時型アレルギー症状の自覚なく発症していました。
石鹸の使用開始からWDEIA発症までの期間はおおむね数ヶ月から数年で、臨床症状の特徴は小麦摂取後の運動時の眼瞼浮腫でした。
通常型 | 加水分解小麦型 | |
好発年齢 | 学童〜老年期 | 20〜60代 |
性別 | 男女問わず | ほぼ女性 |
先行する加水分解小麦含有石鹸の使用歴 | 通常なし | あり |
発症前の局所即時型アレルギー症状の自覚 | なし | 半数はあり |
主症状 | じんま疹 | 血管性浮腫(とくに眼瞼浮腫) |
アナフィラキシーショック | しばしば | 起こりえる |
加水分解小麦(グルパール19S)による皮膚プリックテスト | 陰性(n=5) | 600(n=30) |
病態・アレルゲンの解析(ちょっと専門的です)
加水分解小麦は、小麦不溶性蛋白質のグルテンを酵素や酸で処理したものです。ではすべての加水分解小麦が危険かというと、そうではありません。患者血清中IgEは加水分解小麦の分子量の大きい蛋白質に強く結合する傾向があり、不完全な分解による高分子量の蛋白質を含む加水分解小麦が感作能力が高いと考えられました。当該石鹸に含まれていた加水分解小麦は酸分解型のものでした。
グルテンを酸分解すると、グルタミンはグルタミン酸へ、アスパラギンはアスパラギン酸へと変化し、生成された加水分解小麦はかなり小さい分子量の分解産物から、本来の小麦構成蛋白質よりも大きい分子量の重合体まで含むことがあります。その結果、新しいエピトープが生じて感作され、経口摂取した小麦蛋白質との交差反応によりWDEIAを発症したものと考えられます。分子量の大きな蛋白質にもかかわらず、患者の多くがアトピー性皮膚炎など皮膚バリア障害の既往なく感作されたことについては、加水分解小麦が石鹸に含まれていたこと、つまり石鹸中の界面活性剤によって皮膚バリア機能が傷害され、感作が成立しやすかった可能性が考えられます。また、本来我々は幼小児期から経口摂取している自然界の小麦蛋白質に対しては耐性を獲得しているものと思われますが、加水分解小麦は自然界に存在しない修飾された蛋白質であったため、生体が異物として認識し、感作が成立しやすかった可能性があります。
感作経路によりアレルゲン蛋白が異なる?
(参考資料㉛より)
この事件は感作経路とアレルゲン蛋白の関係をいう視点からも興味深い現象です。
同じ小麦という抗原食物であっても、経皮感作により抗原と認識されたのか、経気道感作からなのか、経消化管感作からなのかによって、食物中の抗原蛋白が異なることが示されたのです。
・「茶のしずく石鹸」による経皮感作ではグルパール19S
・パン屋喘息(baker's asthma)にみられる経気道感作ではα-アミラーゼインヒビターなど
・アトピー性皮膚炎にみられる経消化管感作・経皮感作ではα-アミラーゼインヒビター、グルテンなど
がそれぞれ抗原蛋白となります。
さらに抗原蛋白が異なることによって引き起こされるアレルギー反応にも、即時型・非即時型などの違いが認められます。
■ 大豆アレルギー
大豆は古くは卵・牛乳とともに3大アレルゲンの一つでしたが、食生活の変化により近年小麦にその座を明け渡し、現在は第11位(1.5%)です。
大豆アレルギーは3歳までに約80%が治ると言われています。
大豆アレルギーの症状は多様です。即時型ではアナフィラキシーを誘発することもあれば、口の中の症状だけのこともあります。遅発性のじんま疹や紅斑(赤い斑点)、翌日に湿疹が悪化するなどの非即時型の経過をとることも多いのも特徴です。
食物アレルギー治療の基本は症状が出る食品を食べない除去食療法です。医師と相談しながら適切な除去食療法を行い、それにより不足する栄養を代替食品で補い、食べられるようになるのを待ちましょう。
<まめ知識>
・大豆アレルゲンは熱抵抗性(加熱調理してもアレルゲン性は弱くならない)ですが、発酵により著減し、納豆、みそ、しょうゆなどは自然の低アレルゲン食品となっています。ただし、しょうゆでもアトピー性皮膚炎の悪化をきたす患者さんも存在します。
・納豆菌で発酵した納豆は豆腐よりアレルゲン性は低くなり、大豆アレルギーの人が食べても症状が出ない傾向があります。
・大豆油には蛋白残存量が少なく、症状を誘発することは希です。大豆油で症状が出る患者さんは他の油(エゴマ、しそ油、菜種油)を使用しましょう。なお、紅花油、綿実油、ひまわり油、ごま油などはリノール酸の割合が高く、多価不飽和脂肪酸のバランスが悪い(→ アレルギー炎症を悪化させる)ので避けましょう。
・小豆、ソラマメ、エンドウ豆、インゲン豆など他の豆類とは交差抗原性をもつと思われますが、十分評価されていません。可能であれば経口負荷試験で個別に評価します。
※ 大豆はアレルゲンとなりうる蛋白質の種類が多く、加熱や調理による抗原性の変化がまだ十分に解明されておらず、食品の形態によっても吸収や消化の受け方が異なるため一律の対応ができないという難しさが存在します。例えば、豆乳だけに反応する例、豆腐だけに反応する例、納豆で遅発型アナフィラキシーを起こす例(次の項目)等。
※ 大豆のアレルゲンコンポーネント研究(参考資料㊱):Gly m 8(Gly m 2 S albumin)や、Gly m 5, Gly m 6が大豆の即時型アレルギーに関与していることが判明しているが、2016年現在では保険適応となっていない。
不思議な「納豆による遅発型アナフィラキシー」
アナフィラキシーはふつう即時型でアレルゲン摂取後30分以内に起こります。しかし、この常識が通用しないタイプが納豆関連で存在することがわかってきました。
納豆を食べて5〜14時間後にアナフィラキシー(じんま疹の他に嘔吐/腹痛や呼吸困難など複数の症状を生じる状態)を発症する人がいます。大豆の特異的IgE抗体価はなぜか陰性で、原因は発酵食品の納豆に新たに発生したアレルゲンによる特殊な遅発性アナフィラキシーと考えられています。ふつうアナフィラキシーは即時型反応ですが、納豆は吸収されるまでに時間がかかるので遅れて出るようです。
※ ポリガンマグルタミン酸の役割;(参考資料㉚:p2029より)
納豆特有のネバネバ成分であるポリガンマグルタミン酸が徐放物質の役割を果たしており、これが納豆の中のアレルゲンを包み込んで徐々に腸管内でアレルゲンが放出され、症状惹起に十分なアレルゲン血中濃度に達すると、はじめてアナフィラキシー症状が引き起こされると考えられています。
花粉症に伴う豆乳アレルギーは豆腐を食べても大丈夫?
大豆アレルギーに花粉症(ハンノキなど)を合併する人の中に、豆乳を飲んで口腔アレルギー症候群(口の中が痒くなる)やアナフィラキシーを起こす人がいます。大豆の特異的IgE抗体価は陰性のことが多く、一方皮膚テストでは全例陽性を示します(反応は豆腐で弱く豆乳で強い)。
豆乳アレルギーには通常の食物アレルギーであるクラス1食物アレルギーと口腔アレルギー症候群によるクラス2食物アレルギーが混在しているようです。豆乳アレルギーがあっても豆腐では症状を起こさないことが多く、これはにがりによって固体状になるため、口腔内で吸収しにくくなることと、抗原性自体も変化するためだと考えられています。
※ アレルゲン・コンポーネントによる解析;(参考資料㉚:p2023より)
即時型アレルギー症状を示す小児と成人の豆乳を中心とした大豆アレルギーでは反応するコンポーネントが異なることがわかってきました。前者では貯蔵タンパクである Gly m 5, Gly m 6 特異的IgE抗体が検出され、後者では汎アレルゲンのBet v 1 ホモログであるGly m 4 が主なアレルゲンとなります。その場合の感作源は、欧米ではシラカンバ、日本ではハンノキ花粉であり、豆腐にまで加工された大豆には反応しないことも特徴です。
※ 豆乳アレルギーとアレルギーコンポーネント;(参考資料㊱:p73より)
大豆のコンポーネントであるGly m 4は、シラカンバ花粉の主要抗原Bet v 1と同じPR-10蛋白に属しています。PR-10蛋白は熱や消化管酵素に対する耐性が低く、加工や発酵によりアレルゲン性が低下するため、豆乳で症状を呈するPFAS(pollen-food allergy syndrome)の患者の多くは豆腐や納豆、味噌は摂取できます。豆乳ではGly m 4が多く残存し、また液体のため口腔や咽頭粘膜に接する時間が長くなりアレルゲンが吸収されやすいためと考えられています。Gly m 4特異的IgE抗体の測定は大豆によるPFASの診断に有用です(2016年に保険適応)。
大豆アレルギーの除去食品と代替食品
(「食物アレルギー児のための指導マニュアル」診断と治療社、2008年より)
抗原の強さ | 除去食品 | 代替食品 |
最も強い (一次食品) |
大豆、枝豆、おから 湯葉 サラダ油、大豆油 油揚げ、生揚げ ピーナツ |
鳥卵、魚介類、肉類、乳製品 麩類など しそ油、えごま油、ぶどう油、なたね油、米油、オリーブ油など大豆油が混入していない油 使用可能な油で自家製 |
強い (半生加工品) |
ショートニング、マーガリン きなこ
市販のルウ スナック菓子 |
綿実ショートニング、A-1ソフトマーガリン(なたね油使用) はったい粉(関東では大麦、関西では裸麦、地方によってはトウモロコシやきびが原料)、キアヌ焙煎粉 使用可能な油で自家製ルウ せんべい、揚げていない菓子、大豆油以外の油で自家製 |
やや強い (加熱加工品) |
豆腐、納豆 クリーンピース、小豆、インゲン豆、もやし 豆乳 |
鶏卵、魚類、肉類、乳製品、麺類など いもあん、コーリャン(赤飯、あん風) 牛乳 |
弱い (含有量少加熱加工品) |
みそ
しょうゆ |
大豆ノンみそ(大麦、食塩)、米みそ、雑穀みそ 大豆ノンしょうゆ(小麦、食塩、カラメル)、米しょうゆ、いわししょうゆ、いかしょうゆ |
弱い (含有量微少加熱加工品) |
ハム、マッシュポテト、ソース
カステラ アイスクリーム |
大豆蛋白の入っていない本物のハム、A-1ソフトマーガリンで料理、大豆ノンソース(大豆ノンしょうゆが含まれるため小麦アレルギーには不可) 大豆油以外の油で手作り 大豆レシチンの入らない本物のアイスクリーム、自家製アイスクリーム |
<こんなものにも注意!>
・冷凍野菜はカット野菜のほぐれをよくするために油が使用されている場合もあります。
・くずでん粉は大豆が除去食品の場合使用できないことがあります。
大豆制限解除の例
(必ず医師の指導下で行ってください)体調の良いときにアレルゲン性の弱いものから少量で始め、症状が出なければ量を増やし、十分量を食べても症状が出なくなることを確認後に次のステップへ進みます。
① 調味料(味噌など)→ ② 納豆→ ③ 豆腐→ ④ 煮豆→ ⑤ きなこ
※ 大豆食品豆知識:
豆乳は大豆を水で膨らませてすり潰し、搾り取った液を加熱してつくられます。絞りかすが「おから」で、豆乳をにがりで凝固させると豆腐になります。枝豆は未成熟な大豆、きな粉は大豆を煎って粉にしたもの。大豆レシチンは多くの食品に乳化剤として使用されています。
■ 魚アレルギー
日本は魚介類の摂取量が多く、魚介類アレルギーも卵、牛乳、小麦のアレルギーに次いで多く存在します。特に成人になり頻度が増加する傾向にあります。
乳幼児期発症例では年齢と共に部分的に治る例も多い一方で、学童以降や成人発症例では治る率は低いとされています。
アレルゲンは魚の筋肉中に含まれる「パルブアルブミン」という物質と、骨と皮にたくさん含まれている「コラーゲン」、他に香蘇散などが報告されています。パルブアルブミンは熱に対して安定であるため、魚を加熱調理しても抗原性の低下は期待できません(つまり煮ても焼いても食えない、ということ)。ただし、重症患者さん以外では魚の出汁は摂取可能で、一部では缶詰の状態であれば摂取可能です。
実際にはほとんどすべての魚にアレルギーを示す患者さんがいる一方で、ある特定の魚だけに反応し他の魚は摂取可能であるという場合も少なくありません(理由の詳細は不明)。というわけで一律に「魚は全部ダメ!」と制限するのは問題で、「注意しつついろんな魚を試してみる」のが現実的な対応です。
一般的に魚アレルギーは寛解しにくい(治りにくい)と考えられていますが、乳幼児期の魚アレルギーは比較的早期に寛解するとの報告もあり、摂取できる範囲の確認および耐性獲得確認目的で、積極的に食物経口負荷試験を行うことが望ましいとされています。
・サバ、サケが多く、マグロ、タラ(外国で多い)でも報告があります。青背の魚のアレルギーは白身の魚に比べて少ない傾向があります。
・魚肉のアレルゲンと魚卵のアレルゲンは一般に交差抗原性に乏しく、イクラがダメならサケもダメというわけではありません。
・一般に鶏卵アレルギーのある人が魚卵のアレルギーを持っている割合は3〜7%と報告されており、多くはありません。
・発症パターンは「アトピー性皮膚炎の悪化因子」が多く、即時型症状で発症することもあります。乳児期は症状が明らかでも特異的IgE抗体価は陰性のことがあります。
★ 「サバアレルギー」の正体
サバを食べてじんま疹や腹痛を起こすと「サバアレルギー」と考えられてきました。
免疫学の進歩により原因を詳しく調べることができるようになると、その中で本物のサバアレルギー(サバ特異的IgE抗体陽性者)は10人に1人のみで、大半は「ヒスタミン中毒」であることが判りました。この現象は誰でも起こりえる毒なのでアレルギーとは呼びません。
また、一部にはサバの寄生虫であるアニサキスに対するアレルギー反応が原因のものも存在します。
① ヒスタミン中毒
サバやアジなどは鮮度が落ちると魚に含まれるヒスチジンから痒み物質のヒスタミンがつくられ、食べるとじんましんが出る「サバ中毒(あるいはヒスタミン中毒)」です。
予防対策として、魚は購入後すぐに調理して摂取し、家庭では冷凍保存しないようにしましょう。
ヒスタミンは鮮度の落ちた魚以外にも多くの食品に含まれています。ほうれん草、ナス、タケノコなどの灰汁(アク)の強い野菜や、肉類、果物、チーズや赤ワインなどの発酵食品中にも含まれています。
② アニサキスのアレルギー
鮮度のよいサバなのにアレルギー症状が出てしまったときに疑います。
たまたま食べたサバにアニサキスが寄生していたのです。
アニサキスはアジ、サバ、サンマ、ハマチ、イカなどに寄生します。加熱してもアレルギーを起こすことがあります。アレルギーの血液検査で、サバは陰性、アニサキスは陽性に出ることで診断できます。
食生活のヒント
・くん製、缶詰(※)の加工過程でアレルゲン性が低下しやすく、かつおぶし(「かつおだし」から試しましょう)、マグロのツナ缶、シーチキン、サケ缶などは魚アレルギーでも早期から利用できます。干物も生魚よりアレルゲン性が低下していますが、ヒスタミンなどの薬理活性物質(=仮性アレルゲン)が増えて痒みを訴えることがあります。ただし、乳児期、発症初期、重症例では「かつおだし」に対しても反応することがあるので昆布だしなど他のだしで代用するのが無難です。
※ 缶詰は高圧下において高温加熱されているため、通常の加熱処理では変化しない魚の蛋白質が変性して、アレルギー反応を起こしにくくなると考えられています。
・缶詰や干物でも症状が出なくなったら、魚を調理して少し試しましょう。ポイントは「旬の魚であること」「鮮度がよいこと」で、調理方法として「二度茹で・三度茹で(その都度煮汁を捨てる)」「圧力釜で炊く」などです。
※ パルブアルブミンは水に溶けやすい性質がありますので、食塩水での「水さらし」が製造過程で行われる練り製品(かまぼこやちくわなど)はパルブアルブミンも減っています。一方、コラーゲンは水溶性ではないので、練り製品でも減ってはいないのですが、熱処理に弱いのでアレルギー症状は起きにくくなっています。
・(参考資料㉘より)どの魚を食べてもじんま疹が出てしまう人もいます。こういうときは、魚冷凍せずに買った日に調理するようにし、青背の魚から試していきます。症状が発赤とじんま疹のみであれば、抗ヒスタミン作用を持つ抗アレルギー薬を飲みながらでも症状を起こさずに摂取できるのならば、積極的に摂取していきましょう。すると症状が出なくなることがよくあります。薬をやめても症状が出なくなります。
・魚はビタミンDが豊富であり、制限する際は干し椎茸やきくらげなどビタミンDが豊富な食品の摂取が必要です。
イクラアレルギー
近年、魚卵(特にイクラ)摂取による幼児の即時型アレルギー反応が問題となっています。初発年齢は2〜3歳に最も多く認めます。
主要アレルゲンはbeta'-componentとlopovitellinで、タラコ、カズノコ、トビコ、シシャモなどとの間で交差反応性が認められており、摂取の際は注意が必要です。魚卵は加熱によりアレルゲン性が低下する傾向があり、タラコやシシャモは加熱して食べるためか、イクラほどアレルギーが多くありません。
魚卵アレルギー患者の約40%に魚、甲殻類アレルギーがあります。
また、魚アレルギーのないイクラ・アレルギーも存在します。
魚卵と鶏卵はアレルゲンとして関係なく、卵として一律の制限は必要ありません。
■ 甲殻類(エビ、カニ)、軟体類(イカ・タコ)、貝類アレルギー
甲殻類のアレルギーは、成人の食物アレルギーの原因の中では小麦に次いで第2位を占め、食物依存性運動誘発アナフィラキシーの臨床像を呈することもあります。小児期発症の甲殻類アレルギーも少なからず存在します。
すべてに共通する主なアレルゲンは「トロポミオシン」(Tropomyosin:TM、約37kDa)という筋性蛋白で熱や酸に対して変化しにくく、水溶性で煮汁にも簡単に溶け出る性質があります。
※ トロポミオシン以外のアレルゲン・コンポーネント(参考資料㊱):これまでにアルギニンキナーゼ、ミオシン軽鎖、筋形質カルシウム結合蛋白などが同定されていますが、日本においては、これらに含まれない新規70kDaの蛋白がエビアレルギーの重要なコンポーネントである可能性が示唆されています。
血液検査(特異的IgE抗体価)ではエビとカニはほとんど同等の抗体価を示す傾向があります(一致率65%)が、陽性でも症状を認めない患者さんも存在します(イムノキャップ®の検出率が低いとの報告あり)。
軟体類・貝類にも含まれるトロポミオシンは甲殻類のトロポミオシンとは微妙に異なるため、甲殻類との一致率は17.5%にとどまります。
このため、確定診断・制限は明らかな誘発症状がある場合に限定すべきです。
エビアレルギー
・小児期から20歳代での発症が多く、食べて60分以内に起こる即時型反応が多く、じんま疹などの皮膚症状のみの軽症例から、ショックを起こすほどの重症例もいます。治りにくく一生食べられないことが多いのが現実です。
※ 甲殻類アレルギーの耐性化(参考資料㊱):成人発症例では耐性化しにくい印象がありますが、小児期発症例に関しては、そのエピトープ認識の大きさからアウトグローしやすい可能性が近年指摘されつつあります。
・エビアレルギー患者の2/3はカニアレルギーもあり甲殻類には注意が必要ですが、軟体類(イカ、タコ)・貝類(アサリ、フジツボなど)にも反応するのは約20%と決して高くはありません。
・魚類は摂取可能な場合が多く、別々の食物アレルギーとして対応します。
・軽症例で制限解除を考えるときはエビせんべいや干しエビから試しますが、あくまでも主治医と相談してからにしてください。
・海苔やしらす干しの中に小エビ(アミ)が混ざっていたり、すり身の原材料の魚がエビを食べていたり、海産物には微量のエビアレルゲンが混入していることがありますが、実際にこれらによるアレルギー症状を経験した人は少ないようです(ゼロではありません)。
■ ソバアレルギー
・ソバアレルギーは頻度は0.2%と多くないものの、一旦発症すると重症化してショックを起こしやすいため、食品衛生法により「特定原材料」に指定されて加工食品では表示が義務づけられています。一生もので治る可能性はないと考えて対応する必要があります。なお、ソバは学校給食では使用されていません。
・食べたときに出る主な症状は、
① 蕁麻疹(37%)
② 喘鳴(26%)
③ ショック(4%)
・多くは幼児期以降にそばを食べることで発症します。
・ソバは食べて症状が出るだけではなく、吸い込んでも症状が出るという特徴があります。喘息を合併している患者さんが「ソバ殻枕」を使うと夜間の喘息発作の原因になりますので避けましょう。また、ゆでたソバの湯煙でも喘息発作を起こすことがあります。
・ソバのアレルゲンは水溶性で耐熱性であり、加熱調理後もそのアレルゲン性は弱くなりません。アレルゲンとして約17kDaのアレルゲンCや24kDaの蛋白質が知られています。ソバアレルゲンは小麦や米など他の穀物と交差反応することはありません。
・一方で、ソバ特異的IgE抗体陽性でも誘発症状なく摂取できる例も多く存在します。つまり、検査陽性のみでソバの除去を指導されている患者さんの中には、実は実際に食べても症状が出ない例があるということ。そのような患者さんは、十分な安全対策をしたうえで負荷試験を行うことも選択肢です(医師に相談してください)。
<ソバアレルギーの思わぬ落とし穴>
・ふりかけの隠し味にソバ粉が使われている例
・蕎麦屋でうどんを頼んだが、そばと同じナベで茹でたためにソバ成分が混入した例
・卵ボーロやクレープなどのお菓子にも使用されていることがある
<小麦アレルギーの人はソバを食べられない?>
ソバを打つときには小麦粉を同時に使う場合が多いので、小麦アレルギーの人はソバで症状が出ることがありますので要注意です。
■ ピーナッツ(落花生)アレルギー
・米国ではピーナッツは4歳以降の食物アレルギーの中で最も多い食物抗原であり、ショックを起こしやすく死亡例も年間数十人と多いため社会的に注目されています。
・ピーナッツはアレルギー食品表示制度の特定原材料(表示義務食品)に指定されています。ピーナッツオイル、ピーナッツバターも対象です。クルミは表示推奨食品ですが、その他のナッツ類は表示制度の対象外です。
・多くの場合一生治りません(食べられません)。例外的に乳幼児期発症例は10〜20%治ると報告されています。
・ピーナッツの特異的IgE抗体価が14UA/mL以上の場合は、食べると100%症状が出ます。
・ピーナッツのアレルゲン・コンポーネントとしてAra h 1、Ara h 2、Ara h 3などの約17〜64kDaの蛋白質が知られています。熱抵抗性であり、ピーナッツ油が微量残っていてもショックを起こすことがあります。
・ローストピーナッツではアレルゲン性が生より3倍以上に高まり(※1)、これらを利用したピーナッツバター、菓子類、料理にはさらに注意が必要です。
・近くで食べたピーナッツの粉を吸い込んで喘息発作を起こした例もあります。食べた場合は消化されますが、吸い込んだ場合はそのまま血液の中に入るのでより症状が激しくなります。
・ピーナッツアレルギーの人が他の「ナッツ類」に反応する確率は20〜40%と多く、しかし分類上近縁の大豆などの「豆類」に反応するのは1%のみ(※2)で、誘発される症状も軽いと報告されています。
・実際にピーナッツで症状が出る子どもでも、他のナッツ類でも症状が出るとは限りません。ナッツの種類ごとに一つ一つ検査、あるいは経口負荷試験をして食べられるかどうかを確認する必要があります。
注意すべき食品
ピーナッツはソース、ドレッシング、バター、ピーナッツオイルなどに用いられており、食べるだけではなく接触や吸い込むことによっても症状が出ることがあります。調味料やカレーのルウにも入っていることがあります。店頭で販売されているサラダやサンドイッチ、スナック菓子などにも隠し味として含まれていることがあり注意が必要です。
ピーナッツの殻にもアレルゲン性があるので、保育園や幼稚園で豆まきに使用する際には殻の微粉で症状が出る可能性があります。
※1:ビーナッツアレルゲンと加熱処理の不思議:
ピーナッツは高熱処理をするとメイラード反応を起こして生のピーナッツより抗原性が強くなり、消化酵素にも抵抗性を増すと報告されています。このことは、「ゆでる」「揚げる」といった比較的低い温度で調理される中国よりも、より高温の「煎る」調理法の欧米の方がピーナッツアレルギーが多い理由と考えられています。
※2:ピーナッツと大豆は親戚?
ピーナッツは植物学的にみるとマメ目マメ科に属し、大豆・インゲン・エンドウ・小豆などと近縁種になります。しかし、ピーナッツアレルギーの患者で大豆などのマメ目マメ科植物に反応するのは15%以下であり、分類上の「目」が異なる他のナッツ類(クルミ、カシューナッツ、ピスタチオなど)に対しては20〜30%がアレルギー反応を認めると報告されています。なぜなんでしょう?
ちなみにナッツ類の植物学的分類は・・・・
・バラ目マメ科:ピーナッツ
・バラ目バラ科:アーモンド
・クルミ目クルミ科:クルミ
・ムクロジ目ウルシ科:カシューナッツ、ピスタチオ
・ブナ目カバノキ科:ヘーゼルナッツ
・タデ目マンサク科:ハシバミ
・・・だそうです。
亜綱 | 目 |
科 |
属 | 種 |
バラ亜綱 | マメ目 |
マメ科 |
ラッカセイ属 |
ピーナッツ |
大豆属 |
大豆 |
|||
エンドウ属 | エンドウ豆 | |||
バラ目 | バラ科 | サクラ属 | アーモンド | |
リンゴ属 | リンゴ | |||
ムクロジ目 | ウルシ科 | カシューナットノキ属 | カシューナッツ | |
カイノキ属 | ピスタチオ | |||
マンゴー属 | マンゴー | |||
ヤマモガシ目 | ヤマモガシ科 | マカダミア属 | マカダミアナッツ | |
キク亜綱 | ゴマノハグサ目 | ゴマ科 | ゴマ属 | ゴマ |
マンサク亜綱 | クルミ目 | クルミ科 | クルミ属 | シナノクルミ |
クロクルミ | ||||
ペカン属 | ペカンナッツ | |||
ブナ目 | ブナ科 | クリ属 | ニホングリ | |
ヨーロッパクリ | ||||
カバノキ科 | ハシバミ属 | ヘーゼルナッツ | ||
ビワモドキ亜綱 | アオイ目 | アオギリ科 | カカオ属 | カカオ |
サガリバナ目 | サガリバナ科 | ブラジルナッツ属 | ブラジルナッツ |
(食物アレルギー診療ガイドライン2012より)
<ナッツ(木の実)アレルギー>
ナッツ類:アーモンド、ヘーゼルナッツ、くるみ、ブラジルナッツ、マカダミア、ココナッツ、クリなど。
・ピーナッツ同様、幼児期にアレルギー症状を発症し、一生続き、症状も重篤になる傾向があります。
・ピーナッツの多くは2〜4歳、ナッツ類の多くは4〜5歳が初発年齢です。
・ナッツ間の交差反応性は50%以上と高率です。つまり、上記のナッツのうち一つと反応する人は50%以上の確率で他のナッツを食べても症状が出るので注意が必要です。
・カシューナッツは用事でアナフィラキシー頻度が高いことがオーストラリアから報告されています。
・カシューナッツは同じウルシ科に属するピスタチオと強く交差反応します。同様にクルミは同じクルミ科に属するペカンと強い交差抗原性が認められます。しかし、これらナッツもナッツ全体に交差反応することはほとんどありません。ナッツ類は加工食品への原材料表示義務がありません。ご注意ください。
※ ナッツアレルギーの特異的IgE抗体価の読み方の注意
カシューナッツ・アレルギー患者は、同じウルシ科に属するピスタチオだけに高い交差抗原性を示し、クルミアレルギー患者は同じクルミ科のペカンナッツだけに強く交叉反応します。したがって、ピーナッツやナッツ類アレルギーにおいて、各種ナッツ特異的IgE抗体は個別に評価することが必要です。
一方、全ての豆類やナッツ類に同等のIgE抗体価を認める場合、植物の糖タンパクに共通な構造をとる糖鎖(Cross-reacting Carbohydrate Determinant, CCD)を認識するIgE抗体が存在することが多いとされています。CCD特異的IgE抗体は、ヒスタミン遊離能が低くてアレルギー症状を誘発しにくいことが知られており、多くの場合ナッツアレルギーとは診断されません。こういった患者さんを安易に多種ナッツ類アレルギーと診断することは、患者さんの食生活を大きく脅かすことにつながるため、負荷試験を含めて十分な根拠を持った判断が求められます。
■ 米アレルギー
・小麦と違い、ショックのような激しい反応はほとんどみられません。しかし、即時型・遅延型ともにアトピー性皮膚炎の悪化因子となる患者さんが増えています。
・血液検査で米の特異的IgE抗体陽性でも炊いたご飯では症状が出ないことが多く、下記低アレルゲン米は米によって明らかにアレルギー症状が出る場合に限って使いましょう。
・アワ、ヒエ、キビなどの雑穀は米との共通抗原性があるので、特異的IgE抗体が陽性になることが多いのですが、食べたときの症状は穀物によって違いがあることが多く、除去が必要かどうかは症状の出方を観察しながら決めていきます。一方で、米の代替食として雑穀を日常的に使用するメリットはないという意見もあります(同志社大学:伊藤節子先生)。
・代替食品として米の中のアレルゲンたんぱくを酵素分解した低アレルギー米「ケアライス®」、米の蛋白を物理的に除去した「A-カット米®」、米蛋白(グロブリン分画)を減少させた「ゆきひかり米」などが利用できます。
※ コメの代替食品例;
ケアライス®(ホリカフーズ):加水分解酵素処理後に食塩水による洗浄を行ったもの
A-カット米®(越後製菓):超高圧処理後の急速減圧により細胞壁に小孔をあけ、塩水で洗浄したもので、米タンパク質の約95%が除去されている。
AFTライス®(パールライス):米の主要アレルゲンであるグルテリンが少ない品種を使用し、さらにアルカリ処理後に食塩水洗浄を行い、低アレルゲン化をはかったもの。
(注)2011年11月現在、ネット検索でAFTライスの入手先が見つかりません・・・。
※ この3種類ともにレトルトパックで市販されており、電子レンジでチンすれば食べることができるので便利。ただし、価格はふつうの米の2〜3倍と割高です。
ゆきひかり:加工はされていないけれどアレルギーの出にくい品種。ふつうの米で軽く症状が出る程度の子どもにお勧めです。
★ 離乳食開始の際に重湯/お粥で湿疹出現・・・米アレルギー?
(参考資料㉙より)重湯やお粥を初めて与えた時に口周囲の発赤や湿疹が出ることがあります。しかし1-2週間経ってから再度お粥を与えると症状が出ないことが多いので、米アレルギーと慌てて思い込まないようにしましょう。血液検査をすると米特異的IgE抗体が陽性になる例は多く、クラス6の強陽性者も少なからず存在するのですが、実際に食べて症状が出ることはむしろ希です。「症状が真実」が原則です。検査値に振り回されないようにしましょう。
■ ゴマアレルギー
ゴマは近年健康志向から食品での利用が増加しており、英国、イスラエルではゴマアレルギーに対する警告が出され、欧州、カナダ、オーストラリアでは食品ラベルの表示義務食品になっています。
最近の乳幼児アトピー性皮膚炎でも特異的IgE抗体の陽性率が高くなっています。しかし、症状と検査の相関は必ずしも高くありません。特異的IgE抗体価クラス4でも食べて症状が誘発されるのは50%程度で、特異的IgE抗体が陽性であっても実際に食べて症状が出るとは限らないのが悩ましいところです。
ゴマの主要アレルゲンは「ビシリン」という物質で、熱耐性です。より詳しくは、Ses i 1〜7という種子内貯蔵蛋白質が知られています。このうちSes i 3はピーナッツの主要アレルゲンであるAra h 1と80%の相同性を有しており、ライムギやヘーゼルナッツ、キウイフルーツ、クルミなどと共通抗原性があると云われています。
ゴマは堅い種皮のままでは消化されないこともあり症状は出にくいのですが、給食でも提供されるセサミトーストのような大量にゴマを含んだ食品では誘発されることもあります。
ゴマを一度に大量摂取するすりゴマ、ゴマペーストには注意が必要です。
黒ゴマは白ゴマより蛋白含有が少なく、利用する場合は黒ゴマから粒で開始します。
精製度の高いゴマ油はゴマの蛋白質の混入が極めて少ないため、ゴマアレルギーでも基本的に除去する必要はありません。しかし精製度が高くない製品もあるため、微量でも症状が出る重症例は注意する必要があります。
ゴマアレルギーは耐性化しにくく、治るのは14歳までに約20%と報告されています。
※ 「サラダ油」ってなあに?
サラダ料理などに生でも使用できる食用油の総称で、その原料は菜種、綿実、大豆、ゴマ、紅花(サフラワー)、ひまわり、トウモロコシ、米、落花生と様々です。
■ イモアレルギー
・ジャガイモアレルギーは、とくに多種類の食物抗原についてアレルギーを示す乳児例において比較的高い頻度に見られます。
・加熱した抗原についても反応します(耐熱性)。
・即時型の反応が出現する可能性もあります。
・交差抗原性ははっきりしていません。ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマイモなどは、それぞれ植物学上の分類も異なるので、同じイモという理由で一律に除去をする必要はないとされている一方で、ほかのイモ類にもアレルギーを示す場合もあります。
・乳児期早期では実際にアレルギー症状を起こす場合でも特異的IgE抗体は陰性であることも多く、診断が難しいのが現状です。
・予後に関するデータは少ないのですが、あまり長期間の除去を要する例は少なく、鶏卵や牛乳に比べても早期に耐性を獲得する場合が多い傾向があります。
・ジャガイモを除去する場合、これが原料となる片栗粉も除去する必要があります。
※ でんぷんとして加工食品に含まれていることが多いのですが、表示義務はありません。
★ 「ヤマイモ・アレルギー」の正体は「シュウ酸カルシウム」
ヤマイモをすりおろした手が痒くなったり、口の周りについて赤くなったりすることがあります。この現象の犯人は、生のヤマイモの皮付近に多く含まれるシュウ酸カルシウムという成分の針状結晶です。ヤマイモを切ったり、すりおろすと、この針状の結晶が皮膚に刺さって強い痒みを起こすのです。なお、加熱したヤマイモではほとんどの場合症状を起こしません。
■ 果実・野菜アレルギー
果物類は原因食物として、鶏卵、乳製品、小麦、ピーナッツについで5番目に多く、全体の4%を占めています。新規発症の原因食物を年齢別でみると、4〜6歳で果物が1位(17%)、7〜19歳では甲殻類に次いで果物が2位(13%)であり、種類はキウイフルーツ、バナナ、モモ、リンゴの順です。
果実アレルギーは大きく2つに分けられます。
全身症状が誘発される「クラス1」、口の中の症状に限定される「クラス2」。どちらかというと、クラス2の方が患者さんが多い印象があります。
① クラス1食物アレルギー:感作アレルゲンと誘発アレルゲンが同一です。
母乳を介して、または果物を食べることにより直接感作されたタイプ。乳幼児期に発症することが多い。
アナフィラキシーを含む全身症状を誘発します。乳児期はバナナが多く、大きくなるとキウイフルーツ、モモ、オレンジなど。重症例では、揮発した果汁や加工食品に含まれるものでも反応することがあります。
乳児期に発症した果物アレルギーは、しだいに耐性獲得する(つまり食べられるようになる)ことがありますが、幼児期以降に症状が見られる場合、耐性獲得の可能性は低くなります。
② クラス2食物アレルギー:感作アレルゲンと誘発アレルゲンが異なります。
花粉症を先に発症し、それと交差抗原性のある果物アレルゲンに反応するようになったタイプで口腔アレルギー症候群(次項参照)と呼ばれます。花粉-食物アレルギー症候群(Pollen-food allergy syndrome, PFAS)とも呼ばれます。ラテックス(ゴム)アレルギーに伴って発症するラテックス-果物症候群(Latex-fluits syndromeC, LFS)も知られています。
学童・成人期以降に発症する果物アレルギーのほとんどはこれ。
OASによる果物アレルギーは、生の果物だけに反応し、加熱・加工された果物にはふつう反応しません。
OASでは花粉症が先行することが多いのですが、小児では先にOASが発症し、花粉症の症状は数年後に始まることもあります。花粉症が続く限り自然治癒は期待できません。
以上を表にまとめると・・・
サイズ |
(クラス2) 口腔アレルギー症候群 |
(クラス1) 食物アレルギー即時型反応 |
感作経路 |
<経気道感作> 気道粘膜で花粉抗原による感作が起こり、その後に果物・野菜抗原に交差反応性を起こす |
<経腸管感作> 食物抗原が腸管粘膜に達して感作が成立
|
発症者の特徴 | 花粉症に罹患している成人または年長児 | アレルギー素因があり、消化機能が未熟な乳幼児 |
抗原の安定性 | 熱や消化酵素に対し不安定 | 熱や消化酵素に対し安定 |
症状 | 口腔粘膜に限局する症状が主 | 口腔粘膜以外にも症状あり |
診断法 | 皮膚試験(prick to prick test) | 食物負荷試験(二重盲検法) |
治療 |
原因食物除去療法 加熱すれば食べられる場合もある(セロリ、モモなど以外) |
原因食物除去療法
|
リンゴなどの果実アレルゲンは熱に不安定であり、一部(セロリ、バナナ、モモ)を除き加熱などの調理により症状は出にくくなります。そのためジャムやママレード、缶詰めなどのように熱処理・酸処理を加えると摂取可能な場合が多いのです。
特異的IgE抗体価は「クラス1食物アレルギー」では有用ですが、「クラス2食物アレルギー」では陰性のことがしばしばあり、その場合は新鮮な果汁を用いた皮膚プリックテストで診断します。
★ まぎらわしい「仮性アレルゲン」
野菜・果物中にはヒスタミンなどの薬理活性物質(いわゆる仮性アレルゲン)が含まれているものがあります。ヒスタミン類が直接体に作用してじんま疹などの症状が誘発されることもありますが、これは免疫反応を介さないのでアレルギーとは呼びません。血液検査をしてもIgE抗体は陰性です。
代表的なものに、サバによるヒスタミン中毒があります(魚アレルギーの項参照)。古くて過剰に発酵したチーズによるチラミン中毒も知られています。ヤマイモはアセチルコリンを含む代表的な食品であり、アセチルコリンは血管拡張作用があるため、とろろ芋を食べると口の周りが赤くなるのですね。中には本物のヤマイモアレルギーの人もいますが、こちらはIgE抗体が陽性になりますので検査で鑑別可能です。
症状として、食べた直後に口周囲の痒みや赤みなどアレルギー様の軽い症状がみられますが、1時間以内には消失します。大量に食べると全身じんま疹や頭痛、喘息発作が起こることもありますが、一般的に厳密な除去は必要ないことがほとんどです。
アクの強い野菜類はたっぷりの塩水でゆでるなど基本通りのアク抜きを行ってから調理しましょう。
仮性アレルゲン | 食品 |
ヒスタミン | ナス、ほうれん草、トマト、エノキ茸、鶏肉、牛肉、サバ類 |
チラミン | チーズ、ニシンの塩漬け、パン酵母 |
セロトニン | トマト、バナナ、キウイフルーツ、パイナップル |
アセチルコリン | ナス、トマト、筍、サトイモ、ヤマイモ、クワイ、マツタケ |
トリメチルアミンオキサイド | カレイ、タラ、スズキ、タコ、アサリ、ハマグリ、エビ、カニ |
★ 口腔アレルギー症候群(OAS, oral allergy syndrome)
どんな病気ですか?
新鮮な野菜や果物を食べた直後に口の中や喉の違和感・痒みなどを生じる病気です。
<OASの歴史>
比較的新しい病気(病名)です。1987年Amlot(英)、1988年Ortolani(伊)が病気の概念を提唱しました。花粉症患者に合併することが多い食物アレルギーで、2001年Sampson(米)が米国のガイドラインにてOASを定義しました。
原因は?
果物・野菜の成分に対するアレルギー反応です。花粉症をもっている人に多い傾向があります。その理由は、果実や野菜のアレルゲンと花粉のアレルゲンの間には共通する部分があるため(交差抗原性)。
この抗原の正体は、野菜や果物が病原体や環境変化などのストレスから自らを守ろうと分泌している蛋白質です。特徴として熱や酸や消化酵素に対して不安定なものが多く、分解されて構造が変わると抗原性がなくなる傾向があります。したがって、野菜や果物を生で食べると症状が出る人でも加熱調理すると症状が出なくなったり、缶詰めや加熱殺菌されたジュースなどを食べても症状が出ないこともあります。
また、下の表のように花粉症の種類と反応する果実・野菜の種類に関連があるのも特徴です。
(代表例)
・ブタクサ花粉・・・メロン、バナナ、スイカ、キュウリ、ズッキーニ
・スギ花粉 ・・・トマト
・カモガヤ花粉・・・ジャガイモ、トマト、メロン、スイカ、オレンジ
・シラカバ花粉 ・・リンゴ、サクランボ、ナシ、モモ
※ キウイフルーツやパイナップルは、シュウ酸カルシウムやプロテアーゼによる皮膚と粘膜への刺激があるため、OASと鑑別が必要です(資料㊱)。
☆ より詳しく知りたい方へ・・・「口腔アレルギー症候群:関連する原因花粉の植生と食物」(Phadia社)
よくある病気ですか?
花粉症のある大人の30〜70%に認められます。最近は幼児や学童でも認められることがわかってきました。
どんな症状が出ますか?
原因食物を食べて15分(多くは5分)以内に接触した場所にアレルギー症状が出ます:口唇・口内・喉の粘膜にチクチクした刺激感、痒み、ヒリヒリ感、イガイガ感、つっぱり感など。
一過性で消えることがほとんど(85%)ですが、まれにさらに強い症状(皮膚症状、鼻粘膜・眼球粘膜症状、喘息様症状、呼吸器症状、血圧低下)へ進行する例もあります。
※ なぜ口・喉の症状だけが多いの?
前述のようにOASの原因となる野菜・果物抗原は消化酵素により分解されると抗原性を失う特徴があります。生で食べても一旦口や食道を通過してしまうと胃酸や胃の消化酵素に出会い、成分が活性を失ってそこから下部の消化器の症状は出なくなるのです。
どんな検査で診断されるのですか?
症状の出る食物の特異的IgE抗体が陽性に出れば確定しますが、陰性でも否定できません。疑わしい場合は食物に直接針を刺し、それを皮膚に刺して反応を見る”プリック-プリック・テスト”が有用です。
※ アレルギー症状が明らかなのになせ特異的IgE抗体が陰性なの?
OASに関与するアレルゲンは加熱や加工に不安定で、容易にIgE抗体結合能を失う性質があります。さらに粗抗原に含まれるタンパク質が少ないため、ラスト検査で陰性になることがあるのです。
原因果物・野菜は全く食べられないのですか?
これらのアレルゲンは加熱すると反応性が低下します。例えば皮を剥いたばかりのリンゴを食べると喉がムズムズしても、リンゴジャムは全然平気という場合がほとんどです。
通常の食物アレルギーと同様に“症状が出現する抗原を除去する”ことが基本です。
治りますか?
まだ歴史の浅い病気なので数十年後に治るかどうかのデータがありませんが、発症したら寛解は期待できないという意見が多いようです。原因食物を控えて生活するほかないようです。また、関連する花粉の飛散時期には症状が出やすい傾向がありますのでご注意ください。
※ OASへの免疫療法(参考資料㊱):2016年現在研究段階ですが、その有効率について以下のような報告があります。
・原因花粉に対する皮下注射法:10〜84%
・舌下免疫療法:0〜73%
・抗原そのものによる経口免疫療法:62%
【ラテックス・フルーツ症候群】(LFS)
天然ゴムのラテックスにアレルギーのある人が、バナナ、クリ、アボガドなどの果物や野菜(ジャガイモ、トマト)を食べたときに激しいアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こす病気です。
上記OASと異なり、口腔症状にとどまらず全身症状が出るのが特徴です。これらの抗原は消化酵素で分解されにくく、吸収されて全身症状が出やすい傾向があるからです。
※ LFSの詳細は「食物アレルギーの勉強部屋」へ。
■ 食肉アレルギー
即時型食物アレルギー調査における肉類の占める割合は1.8%と少数派です。
動物の肉は、ヒトの筋肉と蛋白の構造が似ているので、アレルゲンになることはほとんどありません。肉の主要アレルゲンは混入している血液成分である「血清アルブミン」で、これは哺乳動物間で相同性の高いものです。アルブミンは加熱処理で抗原性が低下しますので、アレルギーがあっても十分に加熱調理すれば食べられることが多いようですが、逆に不十分な加熱調理は症状が誘発されやすいとも言えます。
牛肉アレルギー
牛肉の特異的IgE抗体が陽性の子どもは、生牛肉では症状がほとんど誘発されますが、加熱調理した牛肉では症状は認められなくなります(例外あり)。
牛肉の抗原は肉に残っているウシの血の成分(ウシ血清アルブミン)とウシガンマグロブリンで、ともに加熱により低アレルゲン化が起こりやすいと考えられます。
鶏肉アレルギー
卵の特異的IgE抗体陽性の場合、鶏肉の特異的IgE抗体も陽性になる例によく遭遇しますが、実際には鶏肉を食べても症状を認める例はまれです。
鶏肉は調理により加熱されるため抗原性が低下していると考えられます。
豚肉アレルギー
豚肉によりアレルギー症状を呈する例は少なく、牛肉、鶏肉にアレルギーのある場合の代替食品としてよく利用されます。
<番外編>
食物アレルギーの周辺情報を集めました。
◆ アレルギー物質特定原材料についての表示
(参考資料㉚、ほか複数の書籍を参考)
2001年4月に食品衛生法が改正され、容器包装された加工食品1g中に特定原材料(卵、牛乳、小麦、そば、落花生、2008年よりエビ、カニ)が数μg以上含まれている場合にはアレルギー表示が義務づけられるようになりました。
これは画期的なことです。アレルギー物質の食品表示がなされるようになってから、「念のために」行う食品除去から表示を参考にして行う「必要最小限」の食品除去が可能となり、食物アレルギー児のQOLの向上に大きく貢献しています。
なお、「特定原材料に準ずるもの」は表示が勧められてはいますが義務はありませんので注意が必要です。
2016年現在、以下の構成になっています;
・特定原材料7品目(表示義務):卵、乳、小麦、ソバ、落花生、エビ、カニ
・・・症例が重篤か、または症例数が多い
・特定原材料に準ずるもの18品目(表示推奨):あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、バナナ、ゼラチン
・・・症例数が比較的少ないか、あるいは重篤な例が少なく、現段階では科学的知見が必ずしも十分でない
(院長のつぶやき)小児科医をなりわいとして四半世紀経過しましたが、「準ずるもの」の中でもあわび、オレンジ、豚肉、まつたけのアレルギーは経験したことがありません・・・。
表示義務は包装された加工食品には適応されますが、例外があります;
・店頭で調理して売られている総菜
・レストランなどの調理済み食品
・パッケージが小さい食品やばら売りの食品
には表示義務はありません。注意してください。
さらに表示はあくまでも濃度を基準になされており、表示義務以下の抗原濃度であっても、1食分摂取するとアナフィラキシー反応を起こす量に達し症状が発現する場合もあり得ることにも注意すべきです。
加工食品1gあたり数μgでも、100g食べると数百μgの抗原量となり、敏感な患者さんであれば症状が出るというカラクリです。ですから重症の方は「表示されていないから大丈夫」と過信しないでださい。
原材料名の表示の順番は、含有量の多いもの順になっています。材料にこの7品目が含まれていても、代わりの呼称があったり(=代替表記)、明らかに含まれていることがわかる食品(=特定加工食品)(※)は省略してもよい場合があるので注意が必要です。
(例)「乳」では、代わりに生乳、成分調整牛乳、バター、チーズ、脱脂粉乳、れん乳、発酵乳などの代替表記でもよく、生クリーム、ヨーグルト、アイスミルク、ラクトアイス、ミルクなどの商品は乳製品であることが明らかなので、あえて「乳」の文字は入れずに省略してもよいことになっています。
※ 「特定加工食品」表記は2020年に廃止される予定です。
<代替表記と特定加工食品> (参考資料㊱より)
代替表記 | 特定加工食品 |
|
表示されるアレルギー物質には、別の書き方も認められている | 一般に、名称からアレルギー物質が含まれていることが明白なときは、アレルギー物質名表記をしなくてもよいことになっている |
|
卵 | たまご、鶏卵、あひる卵、うずら卵、タマゴ、玉子、エッグ | マヨネーズ、カニ玉、親子丼、オムレツ、目玉焼き、オムライス |
乳 | 生乳、牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、クリーム(乳製品)、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ(乳製品)、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー(乳製品)、ホエイパウダー(乳製品)、タンパク質濃縮ホエイパウダー(乳製品)、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料 | 生クリーム、ヨーグルト、ミルク、ラクトアイス、アイスミルク、乳糖 |
小麦 | こむぎ、コムギ | パン、うどん |
落花生 | ピーナッツ | |
エビ | 海老、えび | |
ソバ | そば | |
カニ | 蟹、かに |
<参考資料・HP>
※「食物アレルギー危機管理情報」(表示漏れ事例、製品回収情報)
※ 消費者庁:食品表示:アレルギーに関する情報
・ アレルギー物質を含む食品に関するQ&A(消費者庁)
・ 加工食品に含まれるアレルギー物質の表示(消費者庁:患者・消費者向け)
・ アレルギー物質を含む加工食品の表示ハンドブック(事業者向け)
問題点・注意すべき点
まだルールができて日が浅いので、いろいろな細かい問題が出てきているのが現状です。単純な「表示漏れ」の以外にも、表示ルールの複雑さに由来する矛盾点が多々あります。
以下では、上記概要で満足できない方のために、より詳しい情報を記載しました。細かいことを云うとキリがないのですが・・・現実に問題となりそうな項目を取りあげました。
表示対象品目
・「準ずるもの」の表示はあくまでも「推奨」であり「義務」ではありませんので、生産者・業者・メーカーの考え方により、表示されないことがあります。
・特定原材料の類似物の範囲は日本標準商品分類(総務省が統計などをとる際に利用するもの)の分類番号で指定しているので、現場では混乱が発生する可能性があります。
(例)
・「乳」の範囲には、90%をこえる交差性があるといわれているヒツジやヤギの乳が含まれています。
・「オレンジ」の範囲は、バレンシアオレンジとネーブルオレンジのみで、みかん、グレープフルーツは含まれていません。
表示方法の原則
「個別表示:個々の材料を列記し必要な項目に(〜を含む)と表示」と「一括表示:原材料名を列記し、末尾に(材料の一部に〜を含む)と表示」のどちらも許されていますので、前者ではアレルギー物質の含まれる量が推察できますが、後者では個別の量はわかりにくい点に注意が必要です。
個別表示 | 一括表示 | |
(例) | じゃがいも、にんじん、ハム(豚肉を含む)、マヨネーズ(大豆油、小麦を含む)、たんぱく加水分解物、調味料(アミノ酸など)、発色剤(亜硝酸Na)、リン酸Na | じゃがいも、にんじん、ハム、マヨネーズ、たんぱく加水分解物、調味料(アミノ酸など)、発色剤(亜硝酸Na)、リン酸Na、(原材料の一部に豚肉、大豆油、小麦を含む) |
また、原材料表示は量の多い物から順番に書くというルールがありますが、アレルギー物質の表示は量的に多い方から書くというルールがないことにも注意すべきです。
代替表記と特定加工食品
表示スペースを考慮して定められたルールです。
・代替表記:表記方法や言葉は違うけれど、特定原材料などと同じであると理解できる表記
(例)「卵」に対し、「玉子」「エッグ」など
・特定加工食品:一般常識として、特定原材料などにより製造されていることが理解できる食品
(例)
・卵:マヨネーズ、オムレツ、目玉焼き、かに玉、親子丼、オムライス
・小麦:パン、うどん
・乳:生クリーム、ヨーグルト、アイスミルク、ラクトアイス、ミルク
・いか:するめ、スルメ
・大豆:醤油、味噌、豆腐、油揚げ、厚揚げ、豆乳、納豆
・豚肉:とんかつ、トンカツ
・やまいも:とろろ、ながいも
※ 特定加工食品として定められているのは26品目あるが、その中で加工食品の原材料として使用が考えられるのは9品目しかない。
省略規定
このルールも表示スペースのを考慮して定められました。ただし、トラブルの原因になる可能性もあります。
(例)一つの加工品中に、ある食材に「卵黄」が含まれこれを表示、他の食材に「卵白」が含まれておりこちらは省略可能、すると「卵黄」しか表示されないことになり、卵白アレルギー患者が食べてしまう。
コンタミネーション
製造過程で特定原材料を使用していない食品でも、同じ工場内に特定原材料を使用する製造ラインがあると微量混入する可能性があります。この場合「入っているかもしれない」と表示することは禁止されており、「本製造工場では○○○(特定原材料名)を含む製品を生産しています」と表記することにより注意喚起するようになっています。
2008年に「えび・かに」が義務表示になって以降、人間の努力では防ぎようがない状況が生じ、コンタミネーション表示は寄り複雑化しました。
※ 「えび・かにの混入の可能性のある製品」(財団法人:食品産業センターまとめ)
現在、消費者庁より次のような注意喚起例が示されています;
○ 原材料の採取方法によるコンタミネーション;本製品で使用しているしらすは、かに(特定原材料などの名称)が混ざる漁法で採取しています。
○ えび、かにを捕食していることによるコンタミネーション;本製品(かまぼこ)で使用しているイトヨリダイは、えび(特定原材料などの名称)を食べています。
まぎらわしい表示用語
以下の表示はアレルギーとは無関係なので除去する必要はありません;
鶏卵:卵殻カルシウム
牛乳:乳酸菌、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳化剤、カカオバター
小麦:麦芽糖
◆ アレルギー食品の入手先情報
(「食物アレルギーの基礎知識」診断と治療社、2011年発行より)
昔はアレルギー対応食品を探すのが大変でしたが、現在はネット通販で入手できる時代になりました。会社の名前をクリックするとそのHPへ移動します。
□ ヘルシーハット(宮城県)
【問合わせ先】022-292-0355
【取り扱い】アレルギー食品全般。
□ 東北日本ハム(山形県)
【問合わせ先】0120-68-1186
【取り扱い】特定原材料7品目不使用のハム、ベーコン、ソーセージ、ウィンナー、ハンバーグ、ミートボール、米粉パンなど。
□ 米工房ひろおか(埼玉県)
【問合わせ先】048-882-2942
【取り扱い】お菓子、パン、低アレルギー米、雑穀、調味料、冷凍食品など。
□ 辻安全食品(東京都)
【問合わせ先】0800-8000-399
【取り扱い】自社のオリジナル製品を中心に食品だけでなく生活全般のアイテム。
□ アレルギーケア・ショップ ハッピーフレンズ(東京都)
【問合わせ先】03-5679-0930
【取り扱い】アレルギー食品のみでなく生活全般。
□ らでぃっしゅぼーや(東京都)
【問合わせ先】0120-831-375
【取り扱い】アレルギー食品全般。会員制宅配サービス。
□ 永谷園(東京都)
【問合わせ先】0120-919-454(お客様相談室)
【取り扱い】特定原材料5品目不使用のレトルトカレー(アンパンマンシリーズ他)、ふりかけなど。
□ キューピー(東京都)
【問合わせ先】0120-14-1122
【取り扱い】ベビーフード「よいこになあれ」シリーズ(特定原材料7品目不使用の瓶詰、レトルト、おやつなど)。
□ 自然食品の店 小平マナ(東京都)
【問合わせ先】042-341-2908
【取り扱い】雑穀、冷凍食品、お菓子、パン、ケーキなど。
□ シェ・ワタナベ(静岡県)
【問合わせ先】055-923-0141
【取り扱い】特定原材料7品目除去のケーキ。
□ 越後天風(新潟県)
【問合わせ先】0120-36-4050
【取り扱い】A-カットご飯、A-カットパン。
□ げんきタウン(大阪府)
【問合わせ先】050-3580-1976
【取り扱い】お菓子、粉、ケーキミックス、ふりかけなど。ただし、製品のすべてがアレルギー対応ではありません。
□ もぐもぐ共和国(大阪府)
【問合わせ先】06-6969-5558
【取り扱い】アレルギー用食品のみならず生活全般。
□ Apt-Cake(アプトケーキ)(徳島県)
【問合わせ先】088-668-7489
【取り扱い】アレルゲン除去のケーキ(個人対応、予約販売)。
□ 中野産業(香川県)
【問合わせ先】0120-05-1345
【取り扱い】ホワイトソルガムとその加工品(冷凍食品、お菓子、麺)
★ 全般的な市販の離乳食についての参考HP「日本ベビーフード協議会」
ベビーフードの残留農薬や食品添加物に関する自主規格を見ることができ、各メーカーへのリンクもあります。
◆ アレルギー料理ブック
□ 子供が喜ぶ食物アレルギーレシピ100(海老澤 元宏監修)成美堂出版、2009年発行
□ アトピッ子のお料理ブック(2)(小倉英郎、小倉由紀子著)女子栄養大学出版部、2003年発行
□ 卵・牛乳・大豆・小麦を使わないアトピッ子のお料理ブック2(小倉英郎、小倉由紀子監修)女子栄養大学出版部、2008年
□ アトピッ子料理ガイド(アトピッ子地球の子ネットワーク編)コモンズ、2002年発行
□ アレルギーっ子の安心レシピ大百科(千葉友幸著)家の光協会、2009年発行
□ アトピー・アレルギー料理ブック(梅崎和子著)明石書店、1992年発行
□ アトピー料理BOOK(梅崎和子著)新泉社、1988年発行
□ アレルギーっ子のためのおいしい毎日ごはん(オレンジページ)、2006年発行
□ 食物アレルギーを持つ子のヘルシーレシピ(独立行政法人環境再生保全機構)、2007年発行
□ アトピーにも安心100%米粉のパン&お菓子(陣田靖子著)家の光協会、2006年発行
(おまけ)食物アレルギー関連の絵本
□ げんちゃんのふしぎなおやつ(落合順子著)自費出版、1999年発行
□ ちかちゃんのきゅうしょく(光元多佳子著)かもがわ出版、2007年発行
□ ふしぎの山のしんりょうしょ(佐藤のりこ著)東京新聞出版局、2007年発行
□ むっちゃんのしょくどうしゃ(國本りか著)芽ばえ社、2002年発行
◆ 母乳と牛乳の違い
育児用ミルクは牛乳から作られていることをご存じですか?
牛乳を母乳成分に近づけるよう加工・調整したのが育児用ミルクです。
人間は哺乳類ですから、ヒトの赤ちゃんはヒトの乳、つまり母乳を飲むのが自然であり、赤ちゃんにとって最適・最良の食品であることは明らかです。
さまざまな理由で母乳があげられない場合は育児用ミルクを使うことができますが、母乳があげられる環境であるにもかかわらず、育児用ミルク(つまり牛乳)を選択するのは残念なことです。
以下に母乳と牛乳の違いを各項目別に比較してみました。結構違いますね。
タンパク質
カゼインと乳清蛋白質に分けられます。母乳ではその割合は4:6、牛乳では25:5と含有比率が大きく異なります。カゼインが多いと消化されにくく、母乳の方がお腹に優しいことがわかります(育児用ミルクではカゼインを除去して比率を母乳に近くなるように調整されています)。
また、母乳中には新生児・低出生体重児に必須と考えられているタウリンが含まれています。
脂質
脂質の中の必須脂肪酸は n-6系多価不飽和脂肪酸(リノール酸、アラキドン酸など)とn-3系多価不飽和脂肪酸(エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸など)からなり、n-6/n-3比は母乳で5〜6であり、その比が狂うと種々の障害をを起こすため、調整粉乳ではこの値に近くなるよう作られてます。
糖質
母乳中の糖質の大部分は乳糖であり、牛乳の2倍含まれています。乳糖は生理的にブドウ糖よりすぐれています。また母乳にはオリゴ糖も含まれており、これはビフィズス菌の増殖因子でもあります。
電解質(ミネラル分)
母乳の濃さ(浸透圧)は牛乳の1/3程度です。薄いこと(ナトリウムやカリウムが少ない)により腎臓への負担が軽くなっているのです。牛乳はその他のミネラル分(カルシウム、リンなど)も多く、育児用ミルクでは母乳に近い値に調整されています。
(院長のつぶやき)乳の濃さの違いはその動物の育児形態によると読んだことがあります。濃い乳は赤ちゃんが自分で移動できて水分補給も可能な動物(ウシの赤ちゃんは生まれてすぐに歩けます)、薄い乳は赤ちゃんが自立できないので頻回に授乳が必要な動物に合わせたものだそうです。なるほど。
抗アレルギー効果
母乳中には分泌型IgAを代表とする乳児の消化管の免疫抵抗力を高める物質がたくさん含まれています。ビフィズス菌増殖効果のあるオリゴ糖が多く、また殺菌効果のあるトランスフェリン、TGF-βという物質はIgA抗体の産生を促します。このように母乳は腸管の炎症を防ぎ、腸内環境を整え、抗アレルギー効果を発揮します。
発展途上国では乳児期の急性胃腸炎・脱水で命を落とす率が高く問題になっています。母乳栄養児の方が重症化率が低く抑えられることが報告されています。
※ お母さんが食べたものはどのくらい母乳中に出るのでしょう?
薬のテキストでは「飲んだ量の1/100」と書いてある本が多いのですが、伊藤節子先生(同志社大学教授)が「母乳中に移行する抗原量は摂取量の1/10万〜1/100万にすぎない」と書かれています。
★ 母乳研究は現在も日進月歩であり、今後も赤ちゃんの体に有利な物質が新発見され続けることでしょう。
◆ 赤ちゃんに食物アレルギーが多い理由
主に3つの原因・要素が考えられます。全ての要素が赤ちゃんの成長とともに解決していきます。
腸管粘膜のバリア機能が弱い
アレルゲンは基本的にタンパク質であり、分子量1万〜7万程度がアレルゲンとして認識される大きさといわれています。この大きさのものは、消化されなくても、大人では腸のバリア機構によって吸収されにくくなっています。しかし生後間もない赤ちゃんでのバリア機構はザルのように目が粗く、大きな分子量のものも素通りの状態で簡単に吸収されてしまいます。
成長していったん食べられるようになった食物に対して、湿疹ができたり風邪を引いた時にアレルギー症状が出てしまうことを患者さんは経験しますが、その理由として、体調が悪化したり風邪を引いたりすると、一時的に腸粘膜から大きな分子が吸収されるようになることがあげられます。
食べた食物を消化する力が弱いため、アレルゲン性を保ったままの分子量レベルで吸収されてしまう
生後数時間から胃酸が分泌されるようになりますが、1歳くらいまでは胃酸の分泌が不十分であり、蛋白質を十分分解できません。
ここで、ヒトが食べたタンパク質の行方を確認してみましょう。
タンパク質(肉・魚・卵・大豆・乳)
↓ 胃内での消化 ・・・胃液(胃酸&ペプシン)による
ポリペプチド
↓ 十二指腸での消化 ・・・膵液(トリプシン、キモトリプシン)
ジペプチド
↓ 小腸での消化 ・・・ジペプチダーゼ、オリゴペプチダーゼ
アミノ酸
とこんな感じです。アミノ酸まで分解されて吸収されると分子量が小さいのでアレルゲンとして認識されなくなります。つまりアレルギー反応を起こせないのです。
しかし赤ちゃんは消化吸収能力が未熟であり、アミノ酸まで分解されることなく大きな分子のまま吸収されてしまいがちです。すると、アレルギー反応を起こす可能性が出てくるのです。乳児では消化酵素の量が成人の1/7程度(特にトリプシンなど膵液の酵素が少ない)だそうです。
腸管の免疫システムが未発達でアレルゲンを排除できない
2歳までは消化管を守っている分泌型IgA抗体の量が成人より少ないことも一因と言われています。
◆ 食物アレルギーは予防可能?
現時点で明らかな効果のある方法は残念ながらありません。
食物は本来、ヒトにとって異物です。それを進化の過程で長い時間をかけて消化・吸収できるシステムを作ってきたのです。これを専門用語で免疫寛容と呼びます。しかし、異物と認識してしまうと排除するシステムが働くようになります。これを感作と呼びます。食物アレルギーの予防とは、感作を避けて免疫寛容を誘導することに他なりません。
近年の検討でわかってきたことを列挙します;
① 妊婦に対して予防的な食物除去は勧められない。
妊婦に食事制限をして食物アレルギー児の発症が減少したと結論づける報告はありません。妊娠中の母親はバランスのよい食事を摂取し、受動喫煙を含めた禁煙を心がけるべきです。
② 生後4ヶ月間は母乳栄養が好ましい。
母乳栄養はアレルギー疾患の抑制効果が認められています。
欧米のガイドラインでは、母乳不足などの完全母乳栄養が困難な場合、ハイリスク児に対してはアレルギー発症予防のため低アレルゲン化ミルクが推奨されています。日本のガイドラインでは使用す場合は医師の指導の下に行うとされています。
③ 適切な時期に離乳食(食物の経口摂取)を開始する。
現在、日本の離乳指導は生後4〜5ヶ月頃からとされていますが、アレルギー疾患の予防の面からもその時期が適当であり、鶏卵や牛乳の開始を遅らせるなどの対応は推奨されません。
この根拠として、Prescottらは、経口摂取した食物による免疫寛容には適切な時期があるとし、おおむね生後3〜7ヶ月を tolerance induction window とし、この時期より以前でも以後でも感作が促進されるというモデルを提唱しています(2008年)。
④ 経皮感作を予防するために皮膚のバリア機能を良好に保つ。
これは比較的新しい考え方です。食物アレルギーの原因は食べたからではなくドライスキン〜湿疹のある皮膚から吸収された微量の食物アレルゲンがメインであるという考え方です。つまり食物アレルギーを予防するには湿疹知らずの皮膚を保つべくスキンケアに精を出す必要があるのです。
食物アレルゲンをある程度の量で経口的に摂取した場合には免疫寛容が誘導されるのに対して、経皮的に微量に摂取した食物アレルゲンに関しては感作が成立するというLackらの学説(2008年)に基づいています。
☆ 話題の「衛生仮説」とは?
衛生状態がよくなって感染症が減ったためにアレルギーが増えたという学説です。
1989年にイギリスのStrachanという学者が、生活水準や衛生環境の向上による幼少期の感染の減少がアレルギー疾患増加の原因であると報告しました。その機序として、エンドトキシン(細菌が出す毒素)はアレルゲンに対してアジュバント(補助)として作用しTh1細胞を誘導しますが、衛生環境の改善などでその暴露量が減ったことにより、アレルギー反応を起こすTh2細胞が誘導されやすくなったためと推論したのです。
◆ 治ったはずなのに、また症状が出たんです。
以下のパターンが考えられます。
体調が悪い時
乳児期に発症した食物アレルギーは幼児期以降には食べられるようになることが多いのですが、風邪を引いて体調が悪い時は、一旦症状が出なくなった食材でも出現することがあります。
これは体調の悪化に伴い腸管のバリア機構が弱まり、吸収される抗原量が増えるためです。
アレルゲンと直接接触した時
牛乳アレルギーは治ったはずなのに、牛乳が手につくと皮膚が赤くなることがあります。
これは、牛乳を飲んだ時は消化酵素により分解されて吸収されるのでアレルゲンとして作用しませんが、その過程を経ない牛乳そのものはアレルゲンの塊であり、皮膚症状が現れたと考えられます。
◆ 油脂、糖類、食品添加物はアレルギーの原因になりますか?
3つともアレルギーの原因はなりません。
基本的にアレルゲンになるのは蛋白質のみです。
油脂
精製された油脂や糖類のアレルギーは存在せず、食物アレルギーだからと云って避ける必要はありません。ただし、精製が甘い(製造過程における原因食物のわずかな残留がある)と、非常に過敏な患者さんでは症状を誘発する可能性があります。
大豆油やピーナツオイル、ゴマ油は精製度が極めて高く、原因食物由来の蛋白残留はほとんど認められないため、通常は大豆/ピーナッツアレルギーがあっても除去する必要はありません。
糖類
精製された糖類もアレルギーの原因にはなりません。
ただし、油脂と同様、精製過程での残留蛋白質が問題になることがあります。
例えば「乳糖」。
乳糖自体はアレルゲンになりませんが、乳糖は牛乳から乳製品への加工段階で大量生産され、精製の段階において微量の牛乳蛋白の残留が確認されています。このため、加工食品のアレルギー表示でも牛乳の特定加工食品として指定されており、極微量の乳製品の摂取でも症状が誘発される患者さんは乳糖にも注意する必要があります。
食品添加物
食物由来でない添加物は食物アレルギーの原因とはならず、食物アレルギーを理由に添加物全般を除去する必要はありません。添加物が食物由来であっても、原因食物の蛋白含有量は非常に少ないため、微量で症状が誘発される患者さんでなければ除去する必要がないことが多いです。
※ 特定の不飽和脂肪酸の摂取がアレルギー性炎症を抑制する可能性があると云われていますが、これは食物アレルギーと直接関係するものではなく、患者さんが特定の油(えごま油、シソ油、等)を使わなければいけないと云うことではありません。
◇ 植物油の栄養学的視点からの選択
(参考資料㉙より)
植物油はその多価不飽和脂肪酸のバランス(n-6/n-3)が高いとアレルギー炎症を修飾することが指摘されており、使用する際は考慮する必要があります。
栄養学的視点からは、油を取り過ぎている現代では、まず植物油の摂取量全体を減らすことが健康のために必要です。次に1価不飽和脂肪酸(オリーブ油)と多価不飽和脂肪酸の割合(4:3)、さらに多価不飽和脂肪酸のn-6/n-3バランスを考えることになります。エゴマやしそ油はα-リノレイン酸を豊富に含み多価不飽和脂肪酸のバランスの観点からは優れていますが、酸化しやすく味の面からも調理には適さず、しかも高価です。リノール酸の割合が高い紅花油、綿実油、ひまわり油、ごま油などは避け、バランスのよいなたね油(n-6/n-3=2)などを用いるのが実際的です。
n-6/n-3 | |
さば |
0.1 |
あじ | 0.1 |
さんま | 0.1 |
いわし | 0.1 |
さけ | 0.1 |
糸引き納豆 | 4.6 |
絹ごし豆腐 | 7.2 |
鶏:もも肉(皮あり) | 8.0 |
牛:肩ロース(脂身つき) | 11.0 |
豚:もも肉 | 22.4 |
しそ油 | 0.3 |
なたね油 | 2.0 |
大豆油 | 6.7 |
オリーブ油 | 13.0 |
パーム油 | 32.0 |
コーン油 | 33.7 |
ごま油 | 74.7 |
ひまわり油 | 99.9 |
綿実油 | 113.8 |
紅花油 | 382.0 |
◆ 調理でアレルゲン性が変わる食品・変わらない食品
(参考資料㉘より)・・・この分野は伊藤節子先生の独壇場です。
同じ食品を同じ量用いても、調理方法や副材料により抗原性が異なってきます。
加熱調理によってアレルゲン性が低下するのは卵、野菜、果物類です。ゼロになるわけではありません。
調理によりアレルゲン性が変わる食品
卵
卵黄はアレルギーを起こす力が弱いため、卵アレルギー=卵白アレルギーと考えてかまいません。卵白の中で主にアレルギーを起こすのは卵白アルブミンとオボムコイドという蛋白質です。これまで卵白アルブミンは加熱によりアレルゲン性が大きく低下するが、オボムコイドは変わらないといわれてきました。しかしこれは見かけ上の現象であることが判ってきました。
① 加熱しても卵白アルブミンが凝固しない程度に薄くした卵白の溶液を作って調べますと、卵白アルブミンだけでなくオボムコイドの抗原性もほぼ同様、加熱によりアレルゲン性が低下します。
② 小麦粉や米粉を使用した焼き菓子の中の卵白アルブミンのアレルゲン性はオボムコイドと同様、あるいはそれ以上残っています。
この現象を説明するキーワードは以下の二つ;
【凝固】
固ゆで卵の卵白中の卵白アルブミンは加熱されて硬く凝固します。一方オボムコイドは凝固しません(100℃で長時間加熱してもダメ)。検査のために固ゆで欄の卵白を細かく粉砕して抽出液中にと下層としても卵白アルブミンは固まっているので溶けてきません。そのため、広言がうまく吐かれず低アレルゲン化したように見えます。一方、オボムコイドは凝固していないのでそのまま測れます。
固ゆで卵1個を食べても症状が出ないのに、卵ボーロ1個で顔が赤くなったりじんま疹が出ることがあります。卵ボーロ1個中に含まれている卵の量はわずかでオーブンで高温処理しており、抗原性は減っているはずなのに・・・不思議な現象です。
これを説明する鍵は卵白アルブミンが握っています。確かにオボムコイドの量は卵ボーロの方がはるかに少なくなっていますが、卵白アルブミンは一緒に使う片栗粉により加熱による凝固が妨げらることにより、胃の中で溶け出しやすくなっていたのです。
【不溶化】
卵以外の副材料と一緒に調理すると、卵白アルブミンもオボムコイドも同じように加熱の影響を受けるようになります。パン、クッキー、卵ボーロなどがその例です。
卵ボーロのようにでんぷんと合わせた焼き菓子よりも小麦粉と合わせて作った焼き菓子の方がアレルゲン性が1/10程度まで低下します。これは、卵と一緒に用いる材料によって卵を不溶化させる力に違いがあることが原因です。オボムコイドが小麦粉や米粉の成分と固く結合したために溶けにくくなりアレルゲン性が低下したのです。一方、卵白アルブミンは凝固が妨げられて抗原が検出しやすくなり、結果として卵白アルブミンとオボムコイドは同レベルの抗原性を発揮することになります。
※ 調理温度とアレルゲン性の意外な関係
焼き菓子は高温(170〜200℃)のオーブンで焼くので、ゆで卵よりも低アレルゲン化すると考えがちです。一方、ゆで卵や卵を用いた煮込み料理も100℃を超えることはありません。
ところが、高温で調理したはずの大きな焼き菓子で中心温度を測ってみますと100℃を超えませんでした。アレルゲン量との関係をみてみますと、一番大事なのは中心温度が100℃以上に維持されている時間でした。
野菜・果物
野菜や果物は加熱や消化によりアレルゲンとしての働きを失いやすいのが特徴です。そのため、生の野菜・果物で症状が出る場合でも、加熱調理したものは摂取可能であることが多く、リンゴアレルギーでも焼きリンゴやアップルパイは大丈夫という例がよくみられます。一方、バナナやモモなどに含まれるアレルゲンは熱や消化に耐性があり、加熱による低アレルゲン化が期待できません。
野菜には薬理活性物質(仮性アレルゲン)が含まれるため、これによる症状を起こさないために野菜類はたっぷりの塩水でゆでるなと料理の基本通りの灰汁(アク)抜きを行ってから調理することが大切です。
調理によりアレルゲン性が変わりにくい食品
牛乳
牛乳の主なアレルゲンのうち、β-ラクトグロブリンは加熱により不溶化しやすく、見かけ上はアレルゲン性が低下しますが、卵白アルブミンほど大きくは下がりません。
一方、カゼインは加熱による影響をまったくといってよいほど受けません。また、加工食品を造る家庭の熱処理によっても低アレルゲン化は期待できません。したがって、原材料として用いられていなくても、製造ラインにおける微量の乳成分の混入により症状が引き起こされることがあるので注意が必要です。
カゼインを低アレルゲン化するには「加水分解」という反応が必要です。牛乳アレルギー用ミルクは「カゼイン加水分解乳」はこの性質を利用して調整してあります。軽度の牛乳アレルギー児に用いられている「ペプチドミルク」の中のカゼインもほとんどアレルゲン性が認められない程度にまで分解されていますが、β-ラクトグロブリンは通常の育児用ミルクの1/250〜300程度残っていますので、過敏性の高い牛乳アレルギー児では症状が誘発されることもあり注意が必要です。
ところが、ペプチドミルクをパン作りの材料II使用した時には症状が出ずに食べられる例を経験します。この理由として、小麦粉と混ぜてこねた後に焼いたパンの中の牛乳抗原を調べてみると、カゼインは少し低アレルゲン化されるだけですが、β-ラクトグロブリンはしっかりと低アレルゲン化されていることが挙げられます。
小麦
小麦粉は調理による低アレルゲン化は若干認められるのみで、通常の調理法では小麦アレルギー児が摂取できるまで低アレルゲン化することはありません。
しょうゆ中の小麦は発酵過程でアレルゲン性が非常に低下しており、微量の小麦でアナフィラキシーを起こすような過敏性の高い例でも使用可能です。
小麦除去により栄養的な問題が生じることはなく、無理をして摂取する必要はありません。むしろ米飯を主食とすることにより副食の取り方のバランスがよくなります。
調理過程で用いる小麦粉は片栗粉やコーンスターチで代用可能です。また、上新粉や白玉粉などの米粉もおやつなどに利用可能です。
大豆
調理により抗原性が低下したというデータはありません。
大豆も発酵による低分子化によりアレルゲン性が低下するといわれていますが小麦ほどではなく、しょうゆで症状が出る例もあります。しょうゆが使えない場合は、離乳期の乳児に対しては、昆布や鰹節で出汁を十分に取れば調味料の使用開始を遅らせることができます。
大豆の発酵食品である納豆は大豆アレルギーの患者さんでも症状をおこさずに摂取可能な場合が多いのですが、症状が出る例もあります。その際、納豆の周りの粘稠物質によりアレルゲンの吸収が遅れ、IgE依存性反応でありながら症状の発現が遅くなる傾向があります。
米
米アレルギー患児でも、軽症の子どもの多くは二度精米の白米なら摂取できますが、それでも症状が出る場合には超高圧処理炊飯米など市販の低アレルゲン化米や炊飯米を用います。
低アレルゲン化米が必要な例は小児では希ですが、成人の重症アトピー性皮膚炎で有効例が報告されています。
◆ アレルギーハイリスク児の離乳食・食生活
(参考資料㉛より)
乳児期の食物アレルギー発症は、
① 食べた後に即時型症状が起きた場合
② 湿疹が通常の皮膚科的治療では改善しない
の二つのパターンがあります。また、
③ 食物アレルギーの兄姉がいる場合
④ IgE検査の値が高い場合
も含め、「食物アレルギーハイリスク児」と呼びます。
アレルギーハイリスク児の離乳食
このような子どもが今まで食べたことのない食物を初めて摂取する離乳期は注意が必要です。ポイントは、次の2点;
・離乳食開始時期はアレルギーがない子どもと同じでよい。
・食べ初めの順序の並び替えを工夫する。
離乳食の準備
離乳準備として果汁を与えることは望ましくありません。
果物には仮性アレルゲンと呼ばれる化学物質が含まれているので、アレルギーとよく似た症状が起きることがあります。また、果物がアレルギーの原因になる例も増えてきました。
離乳食の開始時期
食物アレルギーがあると云うだけで離乳食開始を遅らせる必要はありません。
目安は生後5〜6ヶ月、体重6kgを超えた頃です。
赤ちゃんは5ヶ月を過ぎる頃からお父さんやお母さんが食事をしているとその口元をじっと見つめて赤ちゃん自身も口元を動かし欲しそうな仕草をするようになります。これも一つのサインです。
離乳食の進め方
※ 「授乳・離乳の支援ガイド」(厚生労働省)の44ページ参照
① 離乳初期(5〜6ヶ月):ごっくん期
② 離乳中期(7〜8ヶ月):もぐもぐ期
③ 離乳後期(9〜11ヶ月):かみかみ期
④ 離乳完了期(12ヶ月以降):ぱくぱく期
食材の選び方と順序
① まずは野菜
淡色野菜→ 緑黄色野菜の順番で
② 次に穀類
米から与えます。米は十分に精米したものを選びます。
米アレルギーがある場合は低抗原化米(A-カット®ごはん、ケアライス®)を使います。
イモ類はサツマイモ→ ジャガイモの順に与えます。サトイモ・ヤマイモは仮性アレルゲンが多く含まれているために離乳食には不向きです。
小麦は9ヶ月以降にうどんからはじめるのが無難です。
③ つづいて魚を
どの魚にアレルギーが出るのか法則は見つかりません。以前は白身魚は比較的安全とされてきましたがそうでもないようです。
魚は少し古くなると仮性アレルゲンが多くなり症状が出やすくなるので、刺身用の魚を調理して使います。
刺身などの魚を生で食べるのは2歳を過ぎるまで待ちましょう。
④ 大豆類は豆腐から
豆腐は調理しやすく離乳食によく用いられます。
豆腐が大丈夫でも豆乳で症状が出たり、おからやきな粉で症状が出たりするなど、思わぬ症状につながることがあり注意が必要です。
⑤ 肉類は9ヶ月を過ぎてから
牛肉に比べて豚肉のアレルギーは少ないので、まず豚肉の赤身から与えます。
牛乳と牛肉はアレルゲンとなる成分が異なるので、すべての牛乳アレルギー児が牛肉を制限する必要はありませんが、牛肉の中には成形肉といって牛肉の赤身に牛脂やカゼインナトリウムなどの乳たんぱく成分を注入したもの(インジェクション加工)が流通しているので注意が必要です。
⑥ 調味料は7ヶ月以降
調味料は薄めの味付けを心がけましょう。
昆布だしは7ヶ月頃から使います。魚アレルギーが無い場合はカツオやいりこだしも使うことができます。
大豆アレルギーがある場合でも味噌・醤油はほとんどの子どもに使うことができます。
砂糖・酒・みりん・酢は1歳過ぎから、ソース・ケチャップは1歳半過ぎから使います。
カレー粉・香辛料は2歳まで待った方がよいでしょう。
<豆知識> 調味料にご用心
(参考資料㉛より)
従来、うまみは化学調味料でしたが、コクや自然のうま味を出すために最近は動物性や植物性蛋白(大豆、小麦、トウモロコシなど)加水分解物、および酵母エキスが使われています。アミノ酸まで分解されるとアレルゲンにはなりませんが、分解が不十分(分子量10kDa以上)のポリペプチドではアレルゲン性が残っています。
調味料にも何が含まれているかを確認しましょう。以下の意外な例が確認されています;
・コショウに小麦
・中華調味料に小麦
・焼肉のたれに小麦
・ケチャップにカゼイン
・酢に卵白
調理のコツ
① 調理形態の工夫
細かく砕く・すりつぶすなどの工夫が必要です。口の中でのかみくだきや、胃の中でのぜん動運動の弱さを助けるために、離乳初期ほど細かく、柔らかく調理する必要があります。
② 加熱の程度
離乳初期ほどしっかりと火を通す必要があります。
加熱調理には「煮る/茹でる」「蒸す」「焼く」「炒める」等の方法があります。食物の表面だけでなく内部までしっかりと加熱するために、離乳初期は「煮る/茹でる」という調理方法をとります。食物アレルギーが強くない場合には、1歳を超えてから「蒸す」「焼く」「炒める」などの調理方法にも少しずつ慣らしていきます。
除去食と栄養バランス
離乳食の注意点
・牛乳アレルギー児はフォローアップミルクは使用できません。
・牛乳アレルギー用ミルク(牛乳アレルゲン除去調製粉乳)のみで育てている期間はビオチン不足になる可能性があるため、野菜・魚・肉などの様々な食材に含まれるビオチンを摂取して補います。
・果物は仮性アレルゲンの影響を考慮して頻繁に摂らないようにしましょう。加熱で仮性アレルゲンを減らすことができますが、バナナやモモなどは例外なので注意します。
幼児食の注意点
・牛乳/乳製品/粉ミルクは250cc程度摂取しますが、牛乳アレルギーがある場合には牛乳アレルギー用ミルク(牛乳アレルゲン除去調製粉乳)で代用します。
・米を主食にすると、副食も和食傾向になり脂肪酸バランスが整います。また、米は蛋白質のアミノ酸スコアが小麦より高いため栄養性にも優れます。
カルシウムと鉄分が不足しがち
a. カルシウム
牛乳アレルギーがある場合には、カルシウムが不足することが多いので注意が必要です。
① カルシウムを効率よく吸収する工夫
ビタミンDはカルシウムを腸管で吸収しやすくしてくれます。
魚を除去している時はビタミンD不足になりやすいので、干しシイタケやキクラゲなどで補うようにします。また、酸味のあるものと組み合わせるとカルシウムの吸収がよくなるので、酢の物を料理に取り入れましょう。小麦使用の穀物酢がダメなら、米が原料の純米酢を使用します。
② カルシウム吸収が悪くなる食べ方
脂肪分を過剰摂取すると、脂肪がカルシウムと結びつきカルシウムが吸収されにくくなります。また、リンを摂り過ぎると小腸でのカルシウム吸収を妨げてしまいます。
b. 鉄分
除去食実行中は鉄分の不足しがちになります。
鉄分は食材により吸収率の違いがあり、知っておくと便利です。
肉・魚などの動物性食材は体への吸収率が高いヘム鉄で、海藻・野菜・大豆・豆製品・ゴマなどの植物性食材は体への吸収率が低い非ヘム鉄が含まれています。
① 鉄分吸収率が低い非ヘム鉄はビタミンCと組み合わせて吸収アップ
ビタミンCを多く含む食材:キャベツ、小松菜、カリフラワー、ブロッコリー、レタス、ピーマン、カブの葉、大根の葉、サツマイモ、ジャガイモ、カボチャなど。
食材が空気に触れたり熱によって大幅にビタミンCの減少率が大きくなるものがあります(デンプン質に守られるサツマイモ、ジャガイモ、カボチャは大丈夫)。
② 鉄分吸収が悪くなる食べ方は避ける
生のままで食べられる食材にはビタミンCを破壊する酵素を含む食材があります。キュウリやニンジン、キャベツなどです。これらを食べる時には加熱する、酢漬けにするなど工夫をしましょう。
③ 食材だけでなく調理器具も利用
鉄が材質の調理器具(鉄鍋など)を利用し鉄分を補給できます。供給効率を考えてゆで汁ごと食べられる調理にします。
アレルゲン以外の食生活上の注意点
交差反応性
食物アレルギーになると、反応するアレルゲンと近縁種の食物にも反応することがあります。全員が反応するわけではないので症状が出るかどうかは個別の検討が必要です。各アレルゲンの項目を御参照ください。
まぎらわしい仮性アレルゲン
あらかじめアレルギー類似の症状を起こす化学物質(=仮性アレルゲン)が入っている食物があります。これは個人差がありながらも誰にでも起こすものであり、食物アレルギーがある人がハイリスクというわけではありません。
具体的な症状は、口唇・口内・咽喉・全身の皮膚にピリピリ感、かゆみ、赤み、腫れ、じんましんなどがでます。症状は食べたり触れたりした直後に出ますが比較的軽く、持続時間も短いことが多いので食べてはいけないと指導するほどではありません。また水にさらしたり、茹でたり、灰汁抜きしたり、加熱調理で活性が失われる傾向があります。
ただし、症状からは本物の食物アレルギーと区別は難しいので、繰り返し症状が出る場合は病院で血液検査を受け、IgE抗体の有無を確認する必要があります。
アレルゲンを含む医薬品
医薬品の中には卵、牛乳、ゼラチン、大豆成分が含まれるものがあり、アレルギーのある場合は注意が必要です。
詳細は次項を御参照ください。
同じ食材を食べ続けると新たなアレルゲンとなる(?)
食物アレルギーを発症した子どもが、それまでアレルゲンでなかった食物を毎日継続して食べていると、新たなアレルゲンになることがあります。
小麦アレルギーで粟、稗、黍などの雑穀を継続使用すると比較的早期(半年くらい)で使用している雑穀アレルギーになることがあります。
大豆では納豆などを毎日続けると新たなアレルゲンとなります。
同じ食物を毎日食べることは控え、週に2回くらいにとどめましょう。
外食時の注意点
皮膚接触に注意
外食先で、皮膚にアレルゲンとなる食材が接触して症状が出ることがあります。皮膚の状態が悪い時(湿疹・掻き傷など)は特に要注意。
人がものを食べている時、とくに話しながら食べると小さな食片が周囲に飛散し、手や衣服、テーブルなどに付着します。ふきんでそれを拭くと塗り広げることになり、そこに患児が手を置くと皮膚から抗原が侵入して症状が出てしまいます。
調理器具・食器に注意
アレルギー対応レストランでも、器具・食器の洗浄が不十分だと敏感な食物アレルギー児は症状が出ることがあります。
想定外のアレルゲン混入
メニューの材料として書かれていなくても混入する場合があります。具体的な事例を;
【卵白】食材の照りやつやを出すためにパンや海苔、焼き魚、パイなどの表面に塗られ、さらに回転寿司や刺身の乾燥防止に塗られることがあります。また、和洋を問わずスープやシロップの濁りをとるためににも使われます。
【卵黄】鳥、肉類、魚、その他の食材の表面に塗って使用されることがあります。
【小麦】米粉のパンにも小麦のアレルギー成分であるグルテンが使われていることがあります。
【牛乳】豆乳に牛乳が混ぜられていて、知らずに豆腐を食べた牛乳アレルギー児がアナフィラキシーを起こした例があります。コップ式やノズル式の自動販売機も乳成分が混入することがあります。
◆ 食物アレルギー児が注意すべき医薬品
(参考資料㉛より)
医薬品には卵、牛乳、ゼラチンが入っている製品が存在するので該当する食物アレルギー児は注意が必要です。
卵成分を含む医薬品
・卵白から抽出される塩化リゾチームは、のどの炎症や鼻炎を抑える目的でよく処方され、市販かぜ薬(※)にも含まれています。一部のアルコール除菌消毒薬にはリゾチームが使われているものがあります。
※ 医療用医薬品(病院で処方される薬)としては2016年3月に販売が中止されました。
・添加物として卵黄レシチンを含むリプル、リメタゾン、イントラリポス、ディプリバンなどの添付文書の禁忌欄には卵アレルギーは入っていませんが、卵アレルギー患者にディプリバンを使用してアナフィラキシーを生じた報告があり注意が必要です。
・インフルエンザワクチン、黄熱病ワクチンには微量ですが卵成分が含まれており、卵摂取により重篤なアナフィラキシーの既往のある子どもは接種不適当者になります。麻疹/風疹混合ワクチン(MRワクチン)、麻疹ワクチン、ムンプス・ワクチン(おたふくかぜわくちん)、狂犬病ワクチンも問題視されてきましたが、現実には卵成分はほとんど入っておらず卵アレルギー児でも通常は問題なく接種できます。ただし、重篤なアナフィラキシーの既往のある子どもは現在でも要注意とされています。
含有成分 | 使用法 | 商品名 |
薬効 |
塩化リゾチーム |
内服 | ノイチーム、アクディーム、レフトーゼ、市販の塩化リゾチーム配合総合感冒薬・トローチ剤 |
抗炎症薬 |
外用 | 点眼薬:リゾティア、ムコゾーム 貼付薬:リフラップ 軟膏:リフラップ |
||
水素添加卵黄ホスファチジルセリンナトリウム | 注射用 | ソナゾイド | 超音波診断用造影剤 |
精製卵黄レシチン |
注射用 | リプル | 末梢血管拡張薬 |
リメタゾン | 副腎皮質ホルモン剤 | ||
イントラリポス | 脂肪乳剤 | ||
ディプリバン | 全身麻酔薬 |
牛乳成分を含む医薬品
牛乳アレルギー患者では、乳蛋白質のカゼインを含有する製剤「タンニン酸アルブミン」「乳酸菌」「カゼイン」「乳糖」「リカルデント(CCP-ACP)」に注意が必要です。
・カゼインは医薬品情報提供活動に指定されており、賦形剤や粘着剤、結合剤などに使用されています。乳酸菌製剤では製造過程でカゼインが使用されたり、菌培養の培地成分に牛乳蛋白由来成分がごく微量含まれることがあります。タンニン酸アルブミンや乳酸菌製剤は急性胃腸炎の腸管の透過性が亢進している状況下で使用されるため、重篤なアナフィラキシーが起こる危険があります。
・乳糖は蛋白質ではなく糖なので本来はアレルギーの原因にはなり得ませんが、牛乳から製造されるため微量の乳蛋白が残存し、過敏な牛乳アレルギー患者では症状を引き起こす可能性があります。精製度が高ければ抗原性はほとんど問題ないとされていますが、ソル・メドロールによるアナフィラキシー例の報告があり安全とは言い切れません。ドライパウダータイプ(DPI)の各種吸入剤にも乳糖が使用されており、DPI製剤中の乳糖が経気道的に感作を増強することが報告されています。漢方薬エキス顆粒の大半にも乳糖が使用されているので重症の牛乳アレルギー児は注意が必要です。
・リカルデント(CPP-ACP)はカゼインの部分分解物であるカゼインホスホペプチド(CPP)を含有するため、牛乳アレルギー患者は使用すべきではありません。歯科で使用されるジーシーMIペーストは歯科医及び患者自身が留意しなければなりません。また、リカルデントガムは市販され容易に購入することができるため、注意が必要です。
含有成分 | 使用法 | 商品名 |
薬効 |
カゼイン |
内服 | エンテロノン-R、エントモール、ラックビーR、コレポリーR、市販の整腸剤 |
整腸剤(乳酸菌製剤) |
タンニン酸アルブミン、タンナルビン、市販のタンニン酸アルブミン含有止瀉薬 |
止痢薬 |
||
ミルマグ錠・液 | 制酸・緩下薬 | ||
エンシュア・リキッド、エンシュア・H、ハーモニック-F、ハーモニック-M、ラコールNF、アミノレバンEN | 経腸栄養剤 | ||
エマベリンLカプセル | 高血圧治療薬 | ||
ジーシーMIペースト | 口腔ケア用塗布薬 | ||
乳糖 |
注射薬 | ソル・メドロール40、ソル・メルコート40 | 副腎皮質ホルモン薬 |
吸入 | フルタイドディスカス、アドエアディスカス、シムビコートタービュヘイラー | 喘息治療薬 | |
リレンザ、イナビル | 抗インフルエンザ薬 |
ゼラチンを含む医薬品
ゼラチンは薬のコーティング目的で使用され、内服用カプセルはゼラチンを主成分としており、ゼラチンアレルギー児は要注意です。
漢方薬エキス顆粒のなかに賦形剤としてゼラチンを含むものがありますが、メーカーにより素性が異なります。ゼラチンに相当する阿膠を含む漢方薬に温経湯、炙甘草湯、芎帰膠艾湯、猪苓湯などがあります。
ワクチンにはゼラチン添加はほとんどされなくなりましたが、狂犬病、黄熱病ワクチンには現在も使用されています。
含有成分 | 使用法 | 商品名 |
薬効 |
ゼラチン |
内服 | SPトローチ |
口腔・咽喉感染予防薬 |
トコニジャストカプセル |
ニコチン酸系薬 |
||
ヘモクロンカプセル、ヘモタイトカプセル | 傾向痔核治療薬 | ||
注射薬 | ウロキナーゼ | 血栓溶解薬 | |
レプチラーゼ | 凝固促進薬 | ||
坐薬 | エスクレ坐剤 | 抗けいれん薬 | |
軟膏 | ケナログ口腔用軟膏 | 口内炎治療薬 | |
注射薬 | スポンゼル、ゼルフォーム、ゼルフィルム | 止血・癒着防止薬 | |
散布薬 | フランセチン・T・パウダー | 抗菌薬 |
大豆を含む医薬品
経腸栄養剤のエレンタールには大豆レシチンが使用されており、大豆アレルギー児には禁忌です。
小麦を含む医薬品
生薬の小麦を含む漢方薬に甘麦大棗湯があり、小麦アレルギー児は要注意です。
<サイト内関連ページ>
<参考になるオススメHP>
■ よくわかる食物アレルギーの基礎知識(2012年改訂版)(独立行政法人 環境再生保全機構)
■ 食物アレルギーQ&A(日本アレルギー学会)
■ 学校のアレルギー疾患に対する取り組みQ&A(学校保健会)
■ 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン及び「Q&A」(厚生労働省、2011年)
■ 学校給食における食物アレルギー対応の手引き(愛知県版)
■ 離乳食の在り方と食物アレルギーの考え方(千葉県アレルギー相談センター)
■ 食物アレルギーによるアナフィラキシー・学校対応マニュアル(小中学校編)(日本学校保健会、日本小児アレルギー学会)
■ アレルギー物質を含む食品に関する表示指導要領(厚生労働省)
■ アレルギー物質を含む食品に関する表示Q&A(厚生労働省)