漢方

漢方について

 私は小児科医には珍しく漢方薬を使います。
 といってもはじめから使うわけではなく、西洋医学の治療に限界を感じたら「試してみますか?」とお勧めし、希望される方に処方する程度です。気がつくと、数割の通院患者さんに使用していました。西洋医学だけでは解決できないことが多いのかもしれませんね。
 さて、漢方医学に関しては現在も修行中の私です。今後も診療範囲を広げていく所存ですが、現況を以下に記しましたので、興味のある方はどうぞ読み進めてください。

■ 私と漢方薬との出会い

 小児科医なのに漢方を使っているなんて珍しい、と思われる方も多いでしょう。
 私自身も小児科医になって15年間は漢方薬とは無縁の、いわゆる西洋医学中心の診療をしていました。
 漢方医学の存在は知っていましたが、学生時代は講義もなかったし、なんとなく「怪しいもの」考えがちで縁遠い分野でした。

 きっかけはとある漢方セミナー。
 たまには気分転換に良いかな、くらいの軽い気持ちで参加しました。
 講師の話を聞いていても「病気の性質は気・血・水で考える」など、その考え方があまりにも西洋医学とは異なるのでやはり「怪しい」と思わざるを得ませんでした。

 さてお昼の後に漢方薬を煎じたお茶が供されました。「補中益気湯」という名前でした。
「食後に眠くなりやすい人にいいんですよ。」との説明。
 実は私、お昼を食べると眠くて仕方が無く、午後の予約外来をいつもつらく感じていました。
 そしてお茶を飲んだ後の午後の講義は暗い部屋でスライド上映、居眠り必発の状況です。
 ところが・・・あれ?眠くない!
 ビックリしました。
 その後病院に戻り「補中益気湯」を処方してもらい、お昼に服用してみると・・・午後の外来がつらくなくなりました。漢方薬の効果を自ら実感した瞬間でした。

 その後は身内に試してみました。
 膝が痛くて整形外科へ通院するも「年だからあきらめてください」と見放された母に「防已黄耆湯」をいう漢方薬を飲ませたら明らかに痛みが軽減し、跛行がなくなりました。
 妻は生理痛に悩む人でしたが「温経湯」という漢方薬で軽く済むようになりました。
 スギ花粉症持ちである私は「小青竜湯」を試しました。それまでは西洋医学の抗アレルギー剤を使用していましたが、漢方の方がよく効きました。

 そして自分が診療している子ども達にも使えないか考えました。
 子どもの漢方薬に関する教科書はなかなか見つからず、漢方セミナーがあるたびに参加して講師に質問し、少しずつ情報を集めました。
 そうこうしているうちに書籍も集まり、「小児漢方懇話会」や「小児東洋医学会」や「東京小児漢方研究会」などを知るに至り、参加するようになりました。
 まだまだ修行中の身ですが、西洋医学では「検査で異常がないので治療が必要な病気ではありません。様子を見ましょう。」としか言えなかった体の不調に対応できる漢方薬がたくさんあることを知るにつけ、ふだんの診療の中に少しずつ取り入れるようになりました。

 漢方医学を知ってから自分の診察方法が丁寧になったような気がします。
 漢方の基本的診察方法を「四診」と呼びます。
 「望聞問切(ボウブンモンセツ)」がその内容です。

 「望」は視診で視覚から得る情報、
 「聞」は聴診で聴覚から得る情報、
 「問」は問診で患者の言葉から得る情報、
 「切」は患者に触れて得る情報。

 優先順位は言葉の順番通り。
 つまり、手を体に当てて得た情報より目で見て耳で聞いた情報を大切にするのです。
 検査の数字より自分の五感を駆使して得た情報を信じるということです。
 血液検査など無かった時代に発達した医学ですから、当然といえば当然ですけどね。

 漢方的診察方法で特徴的なのはお腹の診察です(「腹診」と呼びます)。
 西洋医学では膝を立てて、お腹の緊張を解いて、内臓の形や大きさを手で確認する方法です。
 でも漢方医学では膝を立てません。足を伸ばしたままお腹に手を当てます。
 そして皮膚の状態・温度や緊張の程度、血管の拍動などあらゆる情報を得る努力をします。
 一言でいえば「体の声を聴く」感じですね。

 漢方医学を知ってから自然とお腹の診察に時間をかけるようになりました。
 するとその子どもの体力や性格さえも垣間見えてくるようです。
 お腹の筋肉が緊張している子どもは虚弱でふだんから緊張しがちな性格。
 朝お腹を痛がり幼稚園へ行けない子どもはみぞおちが硬くなりがちです。こんな小さな子どもがストレスで身をこわばらせているのを感じると涙が出そうになります。

豆知識:漢方の歴史ー漢方は日本の伝統医学です
 漢方はその昔中国から伝わった医学ですが、鎖国状態だった江戸時代に日本独自の発展を遂げました。その時点で中国医学とは一線を画する日本の伝統医学が形成された歴史があります。
 西洋医学が日本に伝わった幕末に、オランダ医学を「蘭方」と呼ぶようになり、それまでの日本の伝統医学を「漢方」と呼ぶことになりました。ですから、「漢方」は日本の伝統医学なのです。
 明治維新は欧米に追いつき追い越せという考えで日本古来の伝統を否定し始めました。医学も西洋一辺倒となり、西洋医学を勉強した人間でなければ「医者」になれないという法律を作ってしまいました。漢方医学不遇の時代がしばらく続きました。
 しかし昭和時代に入り、細々と伝えられていた漢方が見直され、カリスマ医師会長の武見太郎さんの尽力で漢方薬が保険収載されるに至り、復権の時代を迎えました。でも、私の医学生時代は漢方の講義はゼロ。講義が取り入れられるようになったのはまだ最近のことです。

(院長のつぶやき)明治維新以降、日本の伝統をないがしろにして西洋崇拝が始まってから日本という国がおかしくなったきたような気がします・・・私だけ?
 一万円札の肖像は「学問のススメ」の福沢諭吉より「和をもってと尊しとなす」の聖徳太子の方が良いと思います。

■ 漢方薬のススメ

 下記のような症状でお困りの方、漢方薬の効果が期待できますのでご相談ください。
 現代医学では病気と捉えない症状にも対応する薬が用意されています。漢方薬は「体を調整して望ましい状態に近づけ、病気に対抗できる体を作る」イメージです。ですから、同じ病気でも子どもの状態(体質・体力)により効く漢方薬は異なってきます。

【夜泣き・泣き入りひきつけ・寝ぼけ・夢遊病】
 現代医学では病気と考えないので「時期が来れば治まります」としか言われませんね。でも夜泣きは毎日のことなのでお母さん・お父さんは参ってしまいます。漢方では昔から「疳の強い子」に使う薬、「寝ぼけ」に使う薬などが用意されています。

【水いぼ】
 「水いぼ」や指にできるカサカサしたいぼ(尋常性疣贅)に効く漢方薬があります。
 急いでいるときは皮膚科で「いぼ摘除」するしかありませんが、時間的余裕があるなら1〜2ヶ月くらい試してみる価値があります。有効率は50%くらいでしょうか。

【汗っかき・寝汗】
 ふだんから汗をかきやすく、毎晩着替えが必要、あせもになりやすい、手の湿疹がなかなか良くならない、という子どもに「黄耆」という生薬が入った漢方薬が効きます。
 汗をかきやすいことは漢方的には「皮膚が弱い」「体力がない」ことの目安になります。私は西洋医学の治療法ではコントロール不良のアトピー性皮膚炎患者さんにも使用しています。

【風邪を引いてばかり・・・】
 「保育園・幼稚園へ行き始めてから風邪の引きっぱなし。うちの子どこか悪いんじゃないでしょうか?」・・・よく聞く話です。虚弱児に体力をつける漢方薬を長期服用させることにより風邪を引きにくくし、引いても軽く済むことが期待できます。
 当院のレギュラーメンバーになっているお子さん、試してはいかがでしょうか。

【花粉症】
 現代薬の抗アレルギー薬はたくさん発売されており、それで満足できている方は良いのですが、「効くけど眠くて困る」とか「鼻づまりがつらくて」などでお困りの方、「授乳中なので薬が飲めないと言われた」お母さんは漢方薬がお勧めです。花粉症に使う漢方薬は基本的に眠くなりません(かえって目が覚めます)。体質・体力により約10種類を使い分けます。

【便秘】
 現代医学では「下剤」を使いますが、漢方では「痛みを和らげながらお腹を温めて腸の働きを助ける」とか「食欲が出てその結果便通が良くなる」という薬を使用します。
 長期にわたり下剤を手放せいない子ども、下剤を使うとお腹が痛くてつらい場合は試す価値があると思います。また、ストレスがお腹に来やすい(毎朝登園時間になるとお腹が痛くなる)、下痢と便秘を繰り返す、外出先でお腹が痛くなるなどの「過敏性腸症候群」も漢方薬の良い適応です。

アトピー性皮膚炎の漢方治療

当院ではガイドラインに沿った治療(スキンケア・軟膏療法・環境整備)を行ってもなかなか良くならない場合はご希望により漢方治療を試しています。

しかし、漢方は「アトピーだったらこの薬が効く!」という単純なものではありません。なぜって、漢方医学には「アトピー性皮膚炎」という診断名・病名が無いからです。
漢方の診断名は「証」と呼ばれています。
湿疹の状態と患者さんの年齢・体質により「証」を読み取り、薬を使い分けることになります。

また、漢方には今あるつらい症状を治す「標治」と、長期投与により体質改善を図る「本治」という概念があり、状態によりこれらを単独で、あるいは組み合わせて治療に当たります。

「標治」・・・湿疹の状態により薬を選択

 湿疹の状態から「証」を推察しますと以下のようになります;

1.乾燥が強い  →  「血虚」の証
2.発赤が強い  →  「熱証」の証
3.腫れる・ジクジク→ 「水毒」の証
4.ゴワゴワ難い →  「瘀血」の証

 実際の湿疹は1〜4が単独で見られるわけではなく、これらの要素が混じり合っています。その状態に応じて「血虚」「熱証」「水毒」「瘀血」を改善する生薬が様々な比率で入っている漢方薬を使い分けるのです。


・顔面の発赤が目立つ→「熱証」を冷ます方剤である黄連解毒湯を選択
・全身の乾燥が強いが赤みがほとんど無い→「血虚」を治す四物湯を選択
・全身の乾燥が目立つが、赤く炎症を起こしている湿疹も見られる→「熱証」と「血虚」を治す温清飲(実は黄連解毒湯と四物湯の合剤)
・ゴワゴワ硬い湿疹がたくさん→「瘀血」を治す桂枝茯苓丸加ヨクイニンを選択

<主な漢方薬>

温清飲、消風散、黄連解毒湯、四物湯、越婢加朮湯、白虎加人参湯、十味敗毒湯、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、当帰飲子、桂枝茯苓丸加ヨクイニン、桂枝加黄耆湯、等

「本治」・・・小児は胃腸虚弱の要素を考える

 乳幼児期は食物アレルギーの関与も大きい年齢層です。その一因は西洋医学的には「消化吸収機能の未熟性による」と説明されています。漢方的には「脾虚」と捉えて、これを改善する生薬入りの漢方薬を選択します。年齢が高くなると心因の関与が大きくなる傾向があります。


乳児期から湿疹が続き、食が細く偏食もありやせて風邪を引きやすい→ 小建中湯でお腹を温めて消化管の発達を促し、黄耆という生薬で皮膚を強くする目的で、2つの合剤である黄耆建中湯を選択。証に合った場合は「食欲が出て元気になり便通も良くなり湿疹も改善する」という健康的な効き方をします。

<主な漢方薬>

黄耆建中湯、小建中湯、補中益気湯、六君子湯、等

 私は西洋医学の抗アレルギー薬を長らく使用してきましたが、かゆみがやわらぐ程度で湿疹そのものが体の中から良くなるという印象はありません。一方、体に合う漢方薬が見つかると、体と皮膚の状態が改善して多少スキンケアをサボってもまあまあの状態が得られるようになることを経験し、診療に取り入れるようになりました。

花粉症・アレルギー性鼻炎の漢方治療

私は自分自身が花粉症患者であり、以前は西洋医学の抗アレルギー剤(眠くならないアレグラ)を使用していましたが、効果は十分とは言えず点眼・点鼻薬が手放せませんでした。漢方医学に出会ってから自分に小青竜湯を試したところよく効きました。眠くならないし、なにより点眼・点鼻薬に手が伸びなくなり効果を実感しました。

その後漢方の勉強を進めると、花粉症に効く漢方薬はたくさんの種類があって患者さんの体質・体調(漢方では「証」と呼びます)により使い分ける必要があることを知りました。

その人に合う漢方薬は「花粉症」とか「アレルギー性鼻炎」などの西洋医学の病名で決まりません。
「証」で決まるのです。つまり「証」が漢方医学の診断名ということであり、同じ花粉症でも「証」が異なれば効く漢方薬も異なります。
つまり、「全ての花粉症患者さんに小青竜湯が効くことはあり得ない」ことを理解する必要があります。

私は以下の薬を使い分けています:

小青竜湯、苓甘姜味辛夏仁湯、葛根湯加川キュウ辛夷、麻黄湯、越婢加朮湯、柴朴湯、麻黄附子細辛湯、麦門冬湯、柴胡桂枝湯、など


まず、漢方的に冷えている「寒証」と炎症で熱を持っている「熱証」で使用する方剤が異なります。
小青竜湯はスタンダードになりつつありますが、体力が無く消化器系が弱い患者さんには合いません(胃が重くなったり夜眠れなくなったり)。慢性的に鼻づまりがつらい方には葛根湯加川キュウ辛夷、目の症状がつらいヒトには越婢加朮湯、咳を伴うときには柴朴湯や麦門冬湯などを試し、使用感・効果を確認しながら修正して、一番合う漢方薬を患者さんと一緒に探します。

麻黄」について
小青竜湯・葛根湯加川キュウ辛夷・麻黄湯・越婢加朮湯には「麻黄」という生薬が含まれており、この薬効が大きなポイントです。
眠気を飛ばし、つらい鼻閉を和らげてくれるのはこの「麻黄」です。
しかし切れのよい薬は一方で副作用に注意が必要になります。心臓疾患・高血圧・高齢者には適しません。また、胃の悪い人にも合いません

<漢方関連記事拾い読み>

 新聞の特集記事や経験談を拾い読みしました。

■ ドクター柴原の漢方塾(2011年11月〜読売新聞の特集)

「体がだるい」 という症状(1) 倦怠感と気虚(ききょ)

2011年11月11日

 「体がだるい」という症状は誰もが経験したことのあるものではないでしょうか? 風邪を引いて熱がある時に体がだるいと感じた人、過労のためか寝ても疲れが取れずに朝からずっと体のだるさを感じている人、午前中は元気だが夕方になると体がだるくなる人など、様々な形の「体がだるい」があると思います。最近、中高生を中心とした若者がよく「だるい」と口にしていますが、この「だるい」は「体がだるい」とは違っているようです。では、体がだるいと感じた時は病気なのでしょうか?
 体がだるいという症状は、医学的には「倦怠感(けんたいかん)」と呼ばれ、貧血や低血圧、肝臓や腎臓の障害、あるいは肺炎など、多岐にわたる病気でもみられる症状です。しかし、その一方で、様々な検査を行ったにもかかわらず、異常が見当たらず、「体に異常はありません」と言われることが多い症状であることも事実です。「では、この体のだるさの原因は何でしょう」と聞くと、精神的なものが原因であるとの意味で、「気のせいではないでしょうか?」と言われてしまうこともあります。
 漢方の外来にも、この「体のだるさ」を主な訴えとして受診される方が多くおられます。では、この体のだるさを漢方医学においてはどのように考えているのでしょうか? 確かに「気」のせいなのですが、いわゆる「気のせい」ではなく、漢方医学では「体がだるい」という症状を「気」の異常による症状と考えます。
◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 漢方医学の考え方の一つに「気(き)・ 血(けつ)・ 水(すい)」という考えがあます。この三つの要素が過不足ない状態で体を巡ることによって体の恒常性を維持していると考えられています。この三要素の中の一つである「気」の不足が体のだるさと関係しています。「気」とは元気、気力、気分、やる気の気であり、気は体に存在する根源的なエネルギーと考えられています。この気が不足した状態、つまり、体のエネルギー欠乏状態を漢方医学では「気虚(ききょ)」と呼んでいます。体のだるさは、この気虚の代表的な症状です。
 この世に生まれ出た後、人は呼吸や食事、飲水によって体を維持しています。理科の授業で勉強したと思いますが、人は呼吸によって酸素を体に取り込み、飲食物を消化・吸収することによって水分やタンパク質などを体に取り込んでいます。漢方医学が発生した2000年以上前には酸素やタンパク質というものは分かっていなかったので、漢方医学では、人は胃腸などの消化管を通して飲食物から、肺を通して空気から気を取り入れていると考えたのです。
 胃腸の調子が悪かったり、肺の病気があったり、あるいは飲食物や空気が十分な気を含んでいなかったりすると、気の取り込みが不足して十分な気の量を維持できなくなってしまい、気の量が不足してしまいます。この気の量の不足が気虚という状態です。胃の調子が悪いと、次第に体がだるくなることがあると思います。これは、胃腸から吸収される気が少なくなったために気虚を生じた結果、体がだるいという症状がみられるのです。
 一方、気の消費過多によっても気の不足である気虚が生じます。気は体の中で常に消費されていますが、いわゆる「気を使う」ことが消費過多を引き起こすことがあります。上司との旅行、あるいは夫や妻の実家へ行った後などに体がだるくなった経験を持っている方もおられると思います。このように気虚という病態は様々な要因で生じますが、多かれ少なかれ、気虚という状態になると体がだるいという症状がみられます。

「体がだるい」 という症状(2) 気虚を改善する方法とは・・・

2011年11月18日

 前回は「体がだるい」という症状は、漢方医学では「気虚(ききょ)」という状態でみられる症状であると書きました。それでは、この気虚という状態になった時、どのようにすればよいのでしょうか?
 人は胃腸などの消化管を通して飲食物から、肺を通して空気から気を取り入れているので、体の中にあるべき気の量が不足した時には、取り入れる気の量を増やす必要があります。
 では、どのようにして気の取り込みを増やすのでしょうか?
 「気虚」を改善する方法は、その原因によって異なります。気は空気や飲食物から取り込むので、原料である空気や飲食物に気が含まれていないと、取り込みは悪くなってしまいます。
 近年は規制強化もあって公害と認定されるような空気の汚れが少なくなっています。しかし、都市部から脱出して緑豊かな自然の中を散歩したりすると、何となく元気になったと感じる人もいると思います。森林浴の効果も同様で、漢方医学的には、良い気を多く含む空気から取り込む気が増えたことにより気虚の改善に関係したのだと思われます。飲食物においても空気と同じです。
 最近は、科学技術の発達に伴い、様々な食品が栽培されるようになり、「旬」ではない食品が大量に市場に出ています。栄養素という面では、ハウス栽培の野菜と天日を浴びて無農薬で育った野菜に違いはないと思います。しかし、漢方医学的には、天日を浴びて育った野菜の方が良い気を含んでいると考えます。干物も同様で、工場内で作られた物よりも天日干しの方が良い気を含んでいると考えています。このように、生活環境や食生活も気虚の発症に関係していますので、少し変えることで気虚が改善されることもあります。
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 では、胃腸の調子が悪くなったために気虚となった時はどうでしょうか? 
 体がだるいので、元気が出るようにとステーキや焼き肉を腹いっぱい食べればよいと考える人もいると思います。しかし、どんなにおいしい高価な食事を取っても、胃腸の調子が悪いので気を取り込むことが出来ず、気の量は増えません。
 かえって胃腸の調子が悪化してしまい、改善すべき気の取り込みがますます減ってしまいます。胃腸への負担を減らす必要があるのです。
 昔から、風邪を引いたり、胃腸の調子が悪くなったりして元気がなくなると、「おかゆ」を食べていました。今でも、どんなの病気であっても、入院した際に食欲がない時にはおかゆが出されることが多いと思います。おかゆでは元気が出ないと考える方もいると思いますが、胃腸が弱っている時にはあっさりした物がよいのです。しかし、あっさりしたおかゆであっても、それを腹いっぱい食べるとやはり調子が悪くなってしまいます。胃腸の調子が悪い時には胃腸への負担を考えて、「こってり」ではなく、「あっさり」とした食事を腹八分目に取ることが重要なのです。
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 このように、体のだるさを感じた時には、安易に大丈夫とは考えず、暴飲暴食を避けて胃腸を休める、天日を浴びて育った野菜中心の食事を取り、ゆっくりと深呼吸をするなどで良い気を取り込むことが重要です。生活面に気をつけることで体のだるさが改善しない時には、不足した気を補う作用がある漢方薬(補気薬)が用いられます。
 気虚に使用される漢方薬には様々なものがありますが、その多くのものに人参(にんじん)、いわゆる朝鮮人参や黄耆(おうぎ)が入っています。特に朝鮮人参は気を補う代表的な生薬です。中国の古書である「神農本草経」では、生命を養う目的の薬に分類されていますので、市販されている多くの滋養強壮剤に朝鮮人参が用いられているのも、うなずけます。

【人参(にんじん)】

 ウコギ科(Araliaceae)のオタネニンジンPanax ginseng C.A.Meyer(Panax schinseng Nees)の細根を除いた根又はこれを軽く湯通ししたもの

 主な薬理

 人参は、病後の体力低下、疲労倦怠を主訴とする補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯や、胃腸疾患に適用される人参湯、六君子湯に配合される生薬です。
 人参単独では、以下に示す抗疲労作用、副腎皮質ホルモン様作用、コルチコステロン分泌亢進作用が報告されています。

【黄耆(おうぎ)】

 マメ科(Leguminosae)のAstragalus membranaceus Bunge又はAstragalus mongholicus Bungeの根

 主な薬理

 黄耆は、関節の痛みを主訴とする防已黄耆湯、また病後の体力低下、疲労倦怠を主訴とする補中益気湯、十全大補湯、黄耆建中湯に配合される生薬です。
 なお黄耆は、補気薬として使われていますが、日本漢方においては体表の鬱滞(発汗異常や浮腫)を治します。
 一方、中医学では益気固表(気虚による多汗、風邪を引きやすい状態を改善する)と補中昇陽(脾胃気虚による胃下垂、脱肛などの内臓諸器官の下垂、頭痛への栄養供給不足によるめまい、視力、思考能力低下を改善する)の他、浮腫、尿量減少や関節や筋肉の疼痛、痺れ、片麻痺を改善します。

【出典:QLife漢方(キューライフ)「生薬辞典」より引用】

「イライラ」は性格? イライラを改善する食生活と漢方薬

2011年11月25日

 現代の日本はストレス社会とも言われており、8割以上の人がストレスを感じているとも報告されています。しかし、まったく同じ事象に対してもストレスを感じる人と感じない人がいることも事実ですし、ストレスを与えている側の多くはストレスを与えたいと考えているわけではありません。つまり、ストレスとなるか否かは、受け取る側の問題となります。
 このように、多くの人が様々なストレスを感じながら生活しているわけですが、ストレスに対する反応は人それぞれで異なります。今回のテーマである「イライラ」は、ストレスを強く感じている人にみられる症状とされています。上司や部下、家族に対して、あるいは、メディアから流れる情報に対してイライラすることもあると思います。では、イライラするのは性格でしょうか。
 「イライラする」という症状を訴えて病院を訪れた際、異常がなければ、心療内科や神経精神科への受診を勧められる、あるいは年齢にもよりますが、更年期症候群を疑われて婦人科や泌尿器科を勧められることが多いと思います。一方、漢方医学ではこの「イライラ」という症状を、治療を進める上での非常に重要な症候と考えています。気血水の「気」が逆行して循環している状態を気逆(きぎゃく)と呼び、イライラはその存在を示す重要な症状です。イライラした人が顔を真っ赤にして怒っている姿を想像してみて下さい。その姿が漢方医学で言う気逆の典型的な姿です。では、イライラすると感じる人は、どのように対処すればよいのでしょうか。
◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 漢方医学では、イライラする感情は、下へ降りるべき気が降りられずに上へ昇ったために生じると考えます。食生活では、肉食を減らして野菜中心とするとともに、香辛料を控えることが重要です。これは、香辛料には気を上に昇らせる働きのあるものが多いからです。さらに、就眠時間を早めるなど、生活リズム全般をゆっくりとしたリズムに変えることも、イライラの解消となります。また、呼吸についても、太極拳のようにゆっくりとした呼吸にすることで、気の上昇が改善します。
 このような方法ではイライラが改善しない、あるいは生活を変えることは出来ないという人は、漢方薬で改善することも可能です。桃核承気湯(とうかくじょうきとう)や抑肝散(よくかんさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)といった漢方薬はイライラを主とした気逆に対して使用される代表的な漢方薬です。イライラするのは単なる性格と考えるのではなく、気逆の症状、つまり、体に歪(ゆが)みが生じた結果であると考えるべきだと思います。イライラに対処することは、単に人間関係を円滑にするだけではなく、体の歪みを是正することにもつながります。

イライラ解消の漢方薬
 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
 抑肝散(よくかんさん)
 加味逍遙散(かみしょうようさん)

【参考:漢方薬に関する詳細は、QLife漢方(キューライフ)へ】

「のどがイガイガする」という症状を改善するには・・・

2011年12月2日

 人が「咽喉(のど)」と表現する部分には、咽頭(いんとう)や扁桃腺、リンパ節、気管、食道、甲状腺など様々な臓器や器官があります。咽喉に感じる症状は、これら臓器や器官の異常で生じることが多く、咽頭炎や扁桃腺炎の際には「咽喉の痛み」、気管支炎では「痰(たん)のからみ」、逆流性食道炎では「咽喉の焼ける感じ」、食道疾患では「食事摂取時の違和感」、甲状腺が腫大している際には「咽喉の腫れや圧迫感」といった症状が自覚されます。
 一方、咽喉の症状を自覚するにもかかわらず、病的な状態が認められない方も多くおられます。このような症状は、古くはヒステリー球や咽喉頭神経症と呼ばれたもので、近年では咽喉頭異常感症と診断されます。「咽喉がつまる」はその代表的な症状ですが、「咽喉に何か引っかかっている」や「咽喉が圧迫される」「咽喉が狭くなってのみ込めない」「咽喉がイガイガする」「何となく咽喉の感じが、いつもとは違う」といった表現で訴えられる方もおられます。
 この「咽喉がつまる」は、漢方医学では明らかに病的な状態にあることを示す症状と考えます。気血水の「気」の流れが悪くなって停滞してしまった状態を気鬱(きうつ)と呼び、「咽喉がつまる」はその代表的な症状です。「咽喉がつまる」との症状は、2000年ほど前に、既に中国で書かれたとされる『傷寒雑病論(金匱<きんき>要略)』に記されています。その婦人雑病篇には、「婦人、咽中炙臠(しゃれん)あるが如きは、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)之を主(つかさど)る女性で、咽喉に炙(あぶ)った肉片があるように感じる者には半夏厚朴湯を用いる」とありますので、「咽喉のつまり」は非常に古くからみられた症状なのです。
 では、咽喉がつまるといった違和感を自覚する際にはどうすればよいのでしょうか。まず病院を受診して病的な状態の有無を診てもらう必要があります。病的な状態がみられない時には、抗不安薬や精神安定剤を投与されたりします。
◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇
 これら薬剤が有効なこともありますが、漢方薬が有効なこともあります。先に記した半夏厚朴湯はその代表的漢方薬ですが、咽喉のつまり(咽中炙臠)に対して用いられる漢方薬はこれだけではなく、抑肝散(よくかんさん)や柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、香蘇散(こうそさん)なども有効なことがあります。咽喉のつまりという症状は、気鬱という体の歪(ゆが)みが生じてきていることを示すサインです。
 さらに進行して病的な状態となる前に治療した方がよいのではないかと思います。

咽喉のつまり(咽中炙臠)に対して用いられる漢方薬
 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
 抑肝散(よくかんさん)
 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
 香蘇散(こうそさん)

【参考:漢方薬に関する詳細は、QLife漢方(キューライフ)へ】

皮膚の乾燥は体質?

2011年12月9日

 師走という時期とともに湿度が低下し、皮膚が乾燥してきたと感じている人もいるかと思います。皮膚の乾燥はかゆみを生じる要因にもなることから、加湿器を使用したり、保湿剤を塗布したりする方も多いのではないでしょうか。また、皮膚はかくことによってかゆみが生じることから、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患をお持ちの方は、皮膚瘙破(そうは)予防ためにも、湿度が気になる時期だろうと思います。
 しかし、環境としての湿度の低下のみによって皮膚の乾燥が生じるのではありません。皮膚が乾燥するか否かは、個々の皮膚の状態によって大きく異なるのです。最近では美肌の指標として皮膚水分量が用いられるようになり、女性であれば、ご自身の皮膚水分量を測定して憂鬱(ゆううつ)になっている方もいるのではないでしょうか。皮膚が乾燥している人の中には、「皮膚の乾燥は体質だから諦めている」と言われる人もいます。本当に皮膚の乾燥は体質なのでしょうか。
 皮膚の乾燥が体質であるかどうかという問題には、体質という言葉の定義が大きく関係しますので即答できませんが。少なくとも皮膚の乾燥は、その時点における体の状態を反映しているものであり、治療よって変えることが可能な症状であると言えます。
 では、どのようにして皮膚の乾燥感を改善するのでしょうか。漢方医学では皮膚の乾燥も体の状態を把握するための非常に重要な症状です。気血水の一つである「血(けつ)」が不足した状態を「血虚(けっきょ)」と呼び、体が必要とする血の量を維持するのに十分な血を産生できない、あるいは血が過剰に消費されるなどの状態によって生じます。
 血虚では皮膚の乾燥以外にも、顔色が悪い、眠れない、毛髪が抜けやすい、眼が疲れる、めまい感、爪の異常、こむら返り、手足のしびれといった様々な症状がみられます。これらの中でも皮膚の乾燥は血虚の非常に重要な症候です。皮膚の乾燥を体質と考えて諦めている方は、一度、漢方薬を試してみる価値があると思います。
 皮膚の乾燥に対して用いられる漢方薬には、四物湯(しもつとう)や温清飲(うんせいいん)、当帰飲子(とうきいんし)などがあります。特に四物湯は、血虚の治療に用いられる代表的治療薬、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)という四つの生薬で構成されていて、この四つの生薬には血を補う作用があります。
 漢方薬の使用に際しては、処方を構成しているすべての生薬が非常に重要で、一つの生薬だけを使用することはほとんどありません。これは、一つの生薬だけで効果を得るには多くの量が必要になり、副作用が生じる可能性があるので、他の生薬とともに少量ずつ用いることで、副作用を減らしていると考えられています。

皮膚の乾燥に対して用いられる漢方薬
 四物湯(しもつとう)
 温清飲(うんせいいん)
 当帰飲子(とうきいんし)

【参考:漢方薬に関する詳細は、QLife漢方(キューライフ)へ】

「めまい」 の原因と漢方薬

2011年12月23日

 今回のテーマは「めまい」です。めまいという言葉は外来診療でも頻繁に聞かれる症状です。一口にめまいと表現されますが、実際には、横になって安静にしているのに床や天井がグルグルと回った、立ち上がった時にクラッとした、朝礼で急に倒れた、歩いている時にグラッとした、体がフワフワと宙に浮いた感じがしたなど、めまいという言葉には様々な内容のものが含まれています。
 天井が回るようなめまいは前庭神経や三半規管などの異常でよくみられる症状で、難聴や耳鳴りがみられることもあります。立ち上がった時や朝礼で生じるめまい、あるいは「貧血を起こして倒れた」と表現されるめまいの多くは「起立性めまい」と呼ばれるもので、脳へ充分な血液を送るだけの血圧を維持できない場合にみられます。
 「貧血を起こした」の貧血は医学的な意味での貧血ではありませんが、鉄不足などによる医学的な貧血も、めまいの原因になります。また、歩行時のめまいは「浮動性めまい」と呼ばれ、脳幹や小脳の異常、あるいは高血圧などの際によくみられる症状です。めまいを感じた時には、まずは医療機関を受診する必要があります。
 めまいの原因が特定された場合には適切な治療により改善することも多く、西洋薬に漢方薬が併用されることもあります。

原因不明の「めまい」には・・・・・・

 その一方で、めまいを感じているのに、原因がみあたらないこともあります。このような場合には漢方薬が頻用されます。漢方医学では気血水の一つである水(すい)が偏在した状態、つまり、本来は水のたまらない場所に水がたまった、あるいは水のあるべき場所から水がなくなった状態を水毒(=水滞)と呼んでいます。めまいは、この水毒の重要な症状です。
 水毒では、めまい以外にも,身体が重い、ズキズキとした拍動性の頭痛、頭が重い、車酔いしやすい、むくみや手のこわばり、尿の異常などの症状もみられます。
 めまいに対して用いられる漢方薬には,沢瀉湯(たくしゃとう)や真武湯(しんぶとう)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)などがあります。特に「回転性めまい」には沢瀉湯、「浮動性めまい」には真武湯、「起立性めまい」には苓桂朮甘湯がよく用いられ、効果をあげています。
 めまいに頻用される漢方薬を構成する生薬の中心となるのが、「利水薬」と呼ばれるもので、沢瀉(たくしゃ)や茯苓(ぶくりょう)、(じゅつ)、猪苓(ちょれい)などがあります。
 これらの生薬は水の偏在を調整するので、時には尿量が増えることもあります。しかし、利尿薬ではありませんので、時には尿量が減ることもあります。
 漢方薬は、その漢方薬の適した病態の方には有効ですが、異なっているとまったく効きませんので、自分には効いたからといって、友人に薦めるのはやめるべきです。

めまいの治療に用いられる漢方薬
 沢瀉湯(たくしゃとう)
 真武湯(しんぶとう)
 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)

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肩こりは漢方薬で

2011年12月16日

 長時間同じ姿勢を続けていると、首や肩の筋肉が痛くなることがあります。今、これを読んでいる人の中にも、肩や首、あるいは肩甲骨のところが重苦しいとか痛いと感じている人もいるのではないでしょうか。これがいわゆる「肩こり」です。中にはひどい肩こりのために、頭痛や嘔気(おうき)まで感じて日常生活に支障をきたす人もいるようです。
 同じ姿勢をとることなどで筋肉に負担が生じ、負担がかかった筋肉は緊張して硬くなり,その結果として血液の循環障害をきたして、筋肉に痛みや重苦しさを感じるようになります。ストレスが原因のこともある症状で、欧米の人には少なく、日本人では非常に多いと言われています。 
 肩こりには、首や肩のストレッチやマッサージ、あるいは入浴などでの温熱刺激が有効とされていますが、中には鎮痛剤や筋弛緩(しかん)薬の服用を必要とすることもあります。
 一方、漢方薬も有用で、肩こりの治療目的に受診される方もおられます。では、漢方医学では肩こりをどのように考えているのでしょうか。
 漢方医学では、気血水が過不足なく体を巡ることによって、全身の臓器や細胞の恒常性が維持されていて、この巡りが悪くなると様々な症状がみられるようになります。気の巡りが悪くなった状態が以前に「咽喉のつまり」で書いた気鬱(きうつ)という病態です。一方、血の巡りが悪くなった状態は「お血(おけつ)」と呼ばれています。
 肩こりは、このお血や気鬱を原因としていることが多い症状です。お血は、精神的ストレスや運動不足、睡眠不足、過食、便秘などの生活習慣の乱れによって生じるとされていますので、最近は非常に多い病態です。また、瘀血では肩こり以外にも、腰痛や筋肉痛、目の下のクマ、顔のシミ、不眠、冷えのぼせ、手足のほてりなどの症状がみられることがあります。これらの症状を自覚される方は、病気ではありませんが、漢方医学で言うお血の存在が疑われます。
 肩こりの治療に用いられる漢方薬には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)、四逆散(しぎゃくさん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などがあります。特に桂枝茯苓丸はお血に対する治療薬(=駆瘀血剤)の代表的な漢方薬で、桂皮、茯苓、牡丹皮(ぼたんび)、桃仁(とうにん)、芍薬(しゃくやく)という五つの生薬により構成されています。
 この五つの生薬のすべてがお血を改善する作用をもっているわけではなく、この中の牡丹皮桃仁にお血を改善する作用があります。桂枝茯苓丸は脳梗塞や腎機能障害といった病気の進行を予防するために用いられていますし、お血が微小循環障害と関連するとも指摘されていますので、肩こりは大きな病気へと進む前に現れた警笛とも考えられます。単なる肩こりと考えずに、他にお血の症状はないか、チェックしてみて下さい。

肩こりの治療に用いられる漢方薬
 桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん)
 加味逍遙散 (かみしょうようさん)
 四逆散 (しぎゃくさん)
 柴胡加竜骨牡蛎湯 (さいこかりゅうこつぼれいとう)

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冷え症は症状なの?(1)

2011年12月28日

 人の感覚は十人十色で、おいしかったからと友人に薦められて行ったレストランで,その友人の味覚を疑ってしまったという経験をされた方もいるのではないでしょうか。気温に対する感覚も同じで、隣に座っているのに、一人は上着を脱ぎ、もう一人はコートを着ようかと迷っているということもあるのではないでしょうか。
 このように、他の人は冷たさを感じないような温度にもかかわらず、体全体、あるいは手足や腰などが冷たく感じる状態を「冷え症」と呼んでいます。冷えは秋から冬になると多くなる症状で、最近では冷房の関係もあって夏に冷えを自覚する方もいます。
 また、足が冷えて眠れない、手が冷たいので握手をするのも嫌がられる、腰が冷えるのでカイロを使っている、体全体が冷えるので部屋の中でも厚着していたいなど、冷えを感じる場所やその程度は様々です。これを読んでいる人の中にも、「そう言われれば、自分も足が冷たい」「夜は靴下をはかないと眠れない」、あるいは「冬にはカイロは手放せない」と思っている人がいるのではないでしょうか。
 冷え症という言葉を国語辞典で引くと、「冷え性:冷えやすい体質。特に、腰から下が冷えること。女性に多い。」と記されています。冷えや冷え症という言葉は、一般には広く受けいれられています。しかし、西洋医学では冷えという症状を重視しません。膠原病(こうげんびょう)や更年期症候群などでは冷えを症状としてとらえていますが、冷えそのものを治療の対象とすることはありませんし、治療薬もありません。
 では、漢方医学ではどうでしょうか。
 漢方医学の古典には、手足厥寒(けっかん)や腰中冷(ようちゃくれい)、厥冷(けつれい)、厥逆(けつぎゃく)、腹中寒気など、二十に余る「冷え」に関する言葉が記されています。つまりこれは、漢方医学では非常に古くから冷え症を治療の対象ととらえていたことを示しています。国語辞典の引用として「冷え性」という言葉を使いました。国語辞典には冷え性と冷え症が併記されていて、冷え性の方が一般的なようです。しかし、漢方医学では冷えを治療対象として、あるいは治療薬選択の上での非常に重要な症状と考えていますので、冷え症という字が用いられているのです。
 冷え症は、冷えるという症状そのものが生活の幅を狭くしますし、冷えることから生じる痛みや不眠などを考えると、明らかに生活の質を損なっていると思われます。冷え症は改善すべき症状であり、改善可能な症状であると認識すべきなのです。次回は、冷え症の改善方法についてです。

冷え症は症状?(2) 冷え症の改善方法

2012.1.6

 冷え症は遺伝だから仕方がないと諦めている方もおられます。確かに、冷え症には遺伝的な要因も関係していますが、より密接に関係しているのは環境要因、つまり、生活習慣です。これまでの生活習慣の積み重ねによって冷え症となっていることを考えると、その改善には生活習慣を見直すことが重要です。
 便利になった生活では体を動かさなくなっていますので、買い物には歩いて行く、エレベーターなどはなるべく使わない、炊事や洗濯、掃除に手間をかけるなど、普段の生活の中に体を動かすという意識を取り入れることが必要です。食生活では、体を冷やす冷性食物(果物や葉菜、果菜)を少なくして、温性食物(肉や魚、根菜、豆類)を多くすることが必要です。サラダや刺し身という調理方法は、冷え症という観点からは良いとは言えません。
 加熱した物の方が体を温めます。また、調味料では、砂糖や酢は体を冷やすとされています。入浴方法にも見直す点があります。最近はシャワー浴が多いようですが、これでは体の芯は温まりません。また、熱い風呂にサーッと入るという方法では、芯が温まらずに表面だけが熱くなって発汗しますので、かえって冷えてしまいます。少しぬるめの温度にしてゆっくりと温まるという入浴方法が良いとされています。半身浴や足浴も有効です。

冷え症を改善する漢方薬・・・

 では、冷え症に有効な治療薬はないのでしょうか。
 西洋薬には冷え症を効能としているものはありませんが、漢方薬は冷え症に対して非常によく使用されています。冷え症を漢方薬で治療する際には、体のどの部位に冷えを感じているかが重要になります。
 体の全体が冷えるという方には、附子(ぶし)や乾姜(かんきょう)という生薬が中心となる四逆湯(しぎゃくとう)や茯苓(ぶくりょう)四逆湯真武湯(しんぶとう)、附子理中湯(ぶしりちゅうとう)などが用いられます。
 手足が冷えるという方は、血の巡りが悪くなった瘀血(おけつ)という病態であることが多く、その治療薬である桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)などが使用されます。
 足だけが冷えるという方の中で、顔はのぼせるという方を漢方医学では「上熱下寒」と呼び、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)や加味逍遙散(かみしょうようさん)、温経湯(うんけいとう)などが用いられます。
 一方、足は冷えるが、のぼせはないという方には八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)といった漢方薬が用いられます。このように、冷え症のタイプによって使用される漢方薬は違ってきます。
 冷え症は、冷えという症状自体が苦痛なだけでなく、痛みや痺(しび)れ、あるいは不眠の原因にもなる可能性がありますので、改善すべき症状です。その改善には、生活習慣の見直しとともに、適切な漢方薬の服用が有効です。

冷え症を改善する漢方薬
 四逆湯(しぎゃくとう)
 茯苓(ぶくりょう)四逆湯
 附子理中湯(ぶしりちゅうとう)
 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
 加味逍遙散(かみしょうようさん)
 温経湯(うんけいとう)
 八味地黄丸(はちみじおうがん)
 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
 苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)

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「胃もたれ」は病気? 胃腸症を改善する漢方薬

2012年1月13日

 忘年会、クリスマス、正月休み、新年会と胃が休まる暇もなく、「胃がもたれる」と感じている方も多いのではないでしょうか。よく「胃もたれ」という言葉を耳にしますが、胃もたれは病気でしょうか。
 食べものは、胃の中で消化された後に小腸へ送られます。しかし、暴飲暴食やストレス、不眠などによって胃の働きが弱くなると、消化が遅くなったり、小腸への送り出しが充分に出来なくなったりします。これが、胃もたれと呼ばれる状態です。胃がんやポリープ、潰瘍といった病気でも同じ症状がみられることもありますので、一度は胃の検査を受けるべきと思います。
 一方で、このような症状があるにもかかわらず、胃の検査で異常がみられないこともあります。このような場合、以前は「明確な(器質的な)病気がない」という意味で、慢性胃炎や神経性胃炎、胃下垂、胃アトニー、胃痙攣(けいれん)などと診断されていました。しかし、最近は、胃の機能が悪くなった状態と考えられるようになり、「機能性胃腸症」と呼ばれています。胃の動き(蠕動〈ぜんどう〉運動)は自律神経によってコントロールされていますが、様々な要因で自律神経のバランスに異常が起きて、胃の動きが悪くなるのです。
 しかし、機能性胃腸症という診断がついたからといっても、特効薬があるわけではありません。一般には胃の運動を調整する薬や胃酸の分泌を止める薬が用いられますが、その有効率は高いものではなく、効果が得られない時にはストレスを緩和する薬が併用されたりします。

機能性胃腸症に有効な漢方薬とは・・・

 では、機能性胃腸症に有効な治療薬はないのでしょうか。
 最近、機能性胃腸症に対しても漢方薬が非常によく使用されています。漢方医学では、胃もたれは「気」が不足した気虚や「気」の巡りが悪くなった気鬱(きうつ)、「水」のバランスが悪くなった「水毒」が関係して生じる症状と考えています。
 そこで、気を補う作用のある六君子湯(りっくんしとう)や人参湯(にんじんとう)、気の巡りを改善する作用のある二陳湯(にちんとう)や帰脾湯(きひとう)、四逆散(しぎゃくさん)、胃の辺りの水毒を改善する茯苓飲(ぶくりょういん)や平胃散(へいいさん)などが用いられています。
 中でも六君子湯は、機能性胃腸症に対する第一選択薬として用いられていて、最近では、どうして効くのかといった研究も盛んに行われています。六君子湯の効果には、胃の蠕動運動を正常化させる作用や「グレリン」という食欲増進ホルモンを増やす作用などが関係すると報告されていて、今後、さらに解明されると思われます。
 胃もたれは非常に苦痛な症状であり、その原因を取り除くべきです。特に機能性胃腸症と診断された場合は、適切な漢方薬を服用することをお勧めします。

機能性胃腸症に有効な漢方薬
 六君子湯 (りっくんしとう)
 人参湯 (にんじんとう)
 二陳湯 (にちんとう)
 帰脾湯 (きひとう)
 四逆散 (しぎゃくさん)
 茯苓飲 (ぶくりょういん)
 平胃散 (へいいさん)

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風邪には葛根湯?

 寒さが厳しくなったためか、あるいは年末年始の不摂生がたたっているのか、最近、「風邪を引いた」という人が周りにふえています。主としてウイルスに感染したことによって鼻や咽頭に炎症が起こった状態を風邪と呼んでいて、発熱や悪寒、頭痛とともに、咽頭痛や鼻汁、鼻閉、咳(せき)などの症状がみられます。インフルエンザも風邪の一つですが、最近は通常の風邪とは別に扱っていることが多いようです。風邪の治療では、総合感冒薬や解熱剤、咳止めといった対症療法が治療の中心となります。そのような中で、漢方薬も風邪の治療に用いられています。
 風邪という病気は、漢方医学がその治療を非常に得意としている病気です。そもそも、風邪という言葉の語源は古代中国の医学にあって、「風邪(ふうじゃ)」という風の邪気が体に入り込み、発熱や悪寒などの症状を引き起こすと考えられていました。その考え方が日本へと伝わり、風邪(かぜ)と呼ぶようになったとされています。「風邪には葛根湯」という言葉をよく耳にするように、風邪に用いられる漢方薬としては、特に葛根湯の使用頻度は高いようです。では、本当に「風邪には葛根湯」でよいのでしょうか。
 一口に風邪と言っても、人によって症状は千差万別です。漢方医学では、体の中の熱の状態や症状の強さといった個々の状態の違いを陰と陽、虚と実といったものに分類して、それぞれの状態に適した漢方薬を使い分けています。発熱や頭痛に悪寒(寒気)と熱感の両方を伴う風邪の初期状態は「陽(証)」と判断されることが多い状態で、葛根湯はこの陽証の人に用いられる代表的な漢方薬ですが、陽証の風邪の人に対しては麻黄湯(まおうとう)や桂枝湯(けいしとう)といった漢方薬も使用されます。風邪の初期では虚実という考え方が重要で、高熱が出ているのに汗がまったく出ない状態(無汗)は「実(証)」と判断します。陽証かつ実証と判断した場合、強い咽頭痛や関節痛などがみられる場合には麻黄湯が適し、肩こりや下痢がみられる場合には葛根湯が適しています。葛根湯や麻黄湯は汗がない状態の人には有効ですが、既に汗をかいている人が服用すると汗が出過ぎてしまい(脱汗と呼びます)、体がだるくなってしまうこともあります。発熱とともに汗が出ていて、他の症状もそれほど激しくない時は、「虚(証)」と判断して桂枝湯が用いられます。
 このように、同じ風邪でも、症状や体の状態によって使用される漢方薬は異なります。「風邪には葛根湯」ではなく、「熱があって寒気や頭痛があり、汗がなく、肩がこるという風邪には葛根湯」なのです。葛根湯を服用しても効かなかったという方は、次回は体の状態をよく考えた上で服用してみて下さい。

風邪に用いられる漢方薬
葛根湯(かっこんとう)
麻黄湯(まおうとう)
桂枝湯(けいしとう)

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風邪を引いた時の養生法

 暦の上では新春ですが、まだまだ寒い日が続いています。風邪を引いている、あるいは風邪気味という人も多いと思います。先週は「風邪に葛根湯」ではないという話でした。今回も風邪についての話ですが、今回は風邪を引いた時の養生法についてです。
 風邪に使用される漢方薬として、葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)、桂枝湯(けいしとう)を紹介しました。これらの漢方薬には葛根や麻黄、桂皮が入っていて、これらの生薬が汗を出させるように働きます。しかし、西洋薬の利尿剤によって強制的に尿が出るのとは異なり、これらの生薬が強制的に発汗させるわけではありません。先に体を温めて発汗するところまで体温を上昇させ、それによって発汗を促すのです。ですから、風邪で高熱がある時に体を冷やすようなことをすると、本来は効くはずの漢方薬が効かなくなってしまいます。「どうしても外せない仕事があるので、早く効く漢方薬が欲しい」と言われる方がおられます。
 しかし、仕事を続けるということは、体を冷やすことを意味しますので、これでは漢方薬が効果を発揮しません。風邪を引いた時には早く帰宅し、布団にくるまってゆっくりと体を休めることが重要です。また、冷たい物のとり過ぎにも注意が必要です。冷蔵庫の中には様々な飲料水が冷やされていて、熱が高くなると喉が渇くので、この冷たい飲料水を飲みたくなると思います。しかし、これを飲むことによって改善されるのは渇きであって、熱が下がるのではなく、かえって漢方薬の効果の足を引っ張ることにもなります。果物も同じで、多くの果物は体を冷やしますので、とり過ぎは禁物です。
 風邪を引いた時の食事はどうでしょうか。
 2000年ほど前に書かれた『傷寒論』には、桂枝湯を服用する時の方法として、「熱稀粥(ねつきしゅく)を啜(すす)り以(もっ)て薬力を助く(熱い粥〈かゆ〉を食べて薬の効果を助ける)」とあります。昔から、風邪を引いた時には「熱い粥」が食されていました。「栄養をとらなければ風邪は治らない」と考えてステーキや焼き肉を食べる方が居られるかも知れませんが、これは逆効果です。風邪を引いた時には胃腸の消化・吸収も低下していますので、このような栄養過多のものはかえって胃腸の負担になってしまいます。粥は体を温めて発汗を促す作用だけではなく、胃腸に優しいという面もあります。昔から継続されている事には、ちゃんと意味があるのです。
 養生という言葉には、健康に注意して病気にかからず丈夫でいられるように努める(=摂生)という意味と、怪我(けが)や病気が治るように努める(=保養)という意味があります。今回は風邪を引いた時の養生法についての話なので、後者の「治るように努める」という意味の話です。風邪を引いた自分に適した漢方薬やその時の養生法を知ることも重要ですが、摂生により風邪を引かないことが何よりも大切です。過度な労働を避けて充分に睡眠をとって体を休め、冷たい風には当たらないような服装に心がけ、うがいで咽喉の湿気を維持するといったことで、風邪の予防に励んで下さい。

■ 小児への鍼治療は安全と言えそう

(2011/11/29:ケアネット)[2011年11月21日/HealthDayNews]

 訓練を積んだ(熟練した)専門家が行えば、小児の鍼治療は安全な治療法であることが、カナダの新しい研究で示唆された。何千年も前に中国で生まれたといわれる鍼治療は、東洋医学では遮断された気(生命力の経路)を開くと考えられ、西洋医学では身体が生来持っている鎮痛物質の放出を刺激することで作用するとされている。最近の推計によれば、米国では300万人が鍼療法を試した経験のあることが示されている。
 カナダ、アルバータ大学小児科教授のSunita Vohra氏らは、小児に対する鍼治療が安全かどうかを調べるため、小児の鍼療法に関して入手可能な全文献をレビューし、選択基準を満たした研究および症例報告を37件見出した。分析の結果、小児では成人に比べて有害事象(イベント)の発生率が有意に低かった。鍼治療を受けた小児1,400例以上のうち、出血、疼痛、号泣、あざおよび症状の悪化など、軽度の有害事象がみられたのは168例のみ(約12%)であった。
 重篤な事象は25例にみられ、12例で鍼療法後に拇指の変形、5例で感染がみられ、心臓障害や肺障害、出血、神経損傷、腸閉塞、入院、可逆性昏睡なども特定(単離)された。Vohra氏は「訓練を積んだ専門家が行えば、小児の鍼治療は安全であり、重篤な有害事象の多くは低レベルの治療の結果と考えられる」と述べている。研究結果は、医学誌「Pediatrics(小児科学)」オンライン版に11月21日掲載された(印刷版は12月号に掲載予定)。
 米国鍼治療・東洋医学会(AAAOM)会長のJeannie Kang氏は、「小児の鍼治療を専門とする鍼師は何人かいるが、小児への鍼治療の経験が多少ある鍼師がほとんどだ。11歳未満の小児への鍼の挿入は一般的でなく、通常、“先の尖った麺棒のような”ものを用いてつぼ(acupoint)を押す」と述べている。
 米ピッツバーグ小児病院(ペンシルベニア州)救急部門副医長のRaymond Pitetti氏は、「今回の研究は、鍼治療がおそらく安全な手技であると保護者を少し安心させるものであるが、鍼治療を行う者について綿密に検討し、評判がよく熟練していることを確認するよう促すものでもある」と述べている。3人の専門家はいずれも、鍼師が十分な訓練を受けていることを確認するよう勧めている。

■ (知っ得ワード)漢方薬(2011年10月〜日本経済新聞)

(回答者=渡辺賢治・慶応義塾大学漢方医学センター診療部長)

(1) 医師の8割、治療に使用(2011/10/30)

 漢方薬は中国が起源ですが、中国では伝統医学を中医学と呼び、漢方といっても通じません。5~6世紀に日本に伝来し、独自の発展を遂げてきました。江戸時代に蘭学と区別するため漢方という言葉が生まれました。古くから伝わるという点では民間薬もありますが、これは口伝えで伝承されてきたもの。漢方薬は原典がはっきりしており、この点が大きく違います。

明治政府は漢方薬を否定し、漢方医に医師免許を与えませんでした。日本では現在も医師免許は1つですが、中国や韓国では西洋医学と伝統医学で医師免許がわかれています
 だからといって日本にとってマイナスではありません。西洋医学と漢方を併用し、患者の治療にあたることができるからです。2008年の調査によると、全国の医師の83.5%が、漢方薬を日常的に治療に取り入れています。
 漢方薬は風邪や高血圧、関節痛から不眠症まで様々な病気に対して使われます。医療用としては、江戸時代の医師、華岡青洲が考案した軟こうを含め148種類。最も古いのは葛根湯(かっこんとう)などで、1800年前の古典「傷寒論(しょうかんろん)」に記載されています。一番新しいのは、医療漢方の父、大塚敬節が考案した血圧を下げる「七物降下湯」。約60年前に開発されました。

(2) 複数の病気に1つの薬で(2011/11/6)

 痛みに悩む高齢者は多く、膝に水がたまって痛む場合には防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)、手足の関節が痛い場合は桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)などを使うのがよいでしょう。高齢者の場合、体の痛みだけでなく、他の疾患を伴う場合も多くみられます。例えば、腰痛があり、前立腺肥大で夜間尿に悩むことはよくあります。漢方薬なら八味地黄丸(はちみじおうがん)で両方の病気に対応できます。
 漢方薬が1つの薬で複数の病気に対応できるのも、様々な生薬を組み合わせているからです。八味地黄丸には文字通り、8つの生薬が入っています。腰痛、前立腺肥大のほかにも高血圧や耳鳴りにも使われます。
 西洋医学ならそれぞれの診療科で診てもらって薬をもらうことになりますが、漢方薬なら1つの薬で済みます。高齢化社会において、薬代を抑える観点からも、漢方薬の重要性は高まると考えています。
 認知症に効く漢方薬があることも紹介します。釣藤散(ちょうとうさん)は、脳の血流を改善することで動脈硬化による認知機能の低下を改善します。また、徘徊(はいかい)や怒りっぽくなるといった、認知症が引き起こす異変に対応する漢方薬もあります。抑肝散(よくかんさん)で、医療の現場で非常によく使われています。

(3) 神経のバランス保つ(2011/11/13)

 西洋医学では、精神と肉体は別物として取り扱いますが、漢方では「心身一如」の立場で治療をします。現代社会はストレス社会ともいわれており、漢方薬が活躍しています。
 例えば、会社での大事なプレゼンテーションを控え、神経質になると、のどがつまる人がいます。このような人に対し、よく使う漢方薬が半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)です。身体症状がなく、なんとなく気分が沈んだときには香蘇散(こうそさん)を使います。豊臣秀吉の時代の朝鮮半島での戦争「文禄・慶長の役」で加藤清正軍の士気が落ちたときに使われたことでも有名です。
 また、ちょっとした物音が気になったり、夢をたくさん見たりする人は、交感神経と副交感神経のバランスが崩れています。こうしたケースでは、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが使われます。
 不眠症に関しては、高齢者には酸棗仁湯(さんそうにんとう)や加味帰脾湯(かみきひとう)などを使い、若い人には神経の高ぶりを抑える抑肝散(よくかんさん)などを使います。食事や入浴を早めに済ませ、ゆったりした気持ちで温かい漢方薬を飲むと、より有効です。

(4) 感染症への処方、臨機応変に(2011/11/20)

 ここ数年、マスク姿の人を見かけることが多くなりました。実は漢方薬は感染症の治療を得意としています。西洋医学では老若男女を問わず一律の薬が処方されがちですが、漢方薬は体質や症状に応じて細かく使い分けます。
 具体的にどう使い分けるのかみていきましょう。風邪の初期段階で汗をかきにくい人には、葛根湯麻黄湯(まおうとう)を使います。麻黄湯は2009年に新型インフルエンザが大流行した際、最も使われた漢方薬です。一方で、汗が出て体温が上がらない人は、桂枝湯(けいしとう)や香蘇散(こうそさん)を使います。「寒い寒い」と繰り返す人には、冷え症にも使われる麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が効果を発揮します。
 風邪が悪化し、せきがひどくなってくると、葛根湯などは効きにくくなります。代わりに、小柴胡湯(しょうさいことう)や柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)を使います。熱は下がったけれどせきが残るケースでは、麦門冬湯(ばくもんどうとう)が有効です。
 ウイルスは熱に弱く、漢方薬が体温を上げることで、ウイルスを排除します。このため、風邪を引いたと思ったら、すぐに体を温めてください。漢方薬がエキス剤の場合は、熱湯で溶かし、少し冷ましてから飲むのがよいでしょう。

(5) 抗がん剤の副作用を抑える(2011/11/27)

 がん治療の現場でも漢方薬がよく使われるようになってきました。まずは抗がん剤の副作用を抑える目的で使用する場合です。肺がんなどに使う「イリノテカン」は、副作用として激しい下痢を引き起こしますが、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)で止めることができます。
 また、乳がんに適用する「パクリタキセル」や大腸がんに適用する「オキサリプラチン」は、手足のしびれをもたらしますが、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)により改善することが、しばしばあります。
 漢方薬だけでがんを治すことはできませんが、抗がん剤の副作用を軽減することで、治療を最後まで続けることが可能となります。
 ほかにも大腸がんの手術の後に起こる腸閉塞を予防するため、大建中湯(だいけんちゅうとう)が使われています。入院期間が短くなったという研究成果も報告されています。がんそのもの、または治療により消耗した体力を回復させる目的で、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)と補中益気湯(ほちゅうえっきとう)がよく使用されます。
 これらの漢方薬は長い歴史の中で他の目的で使われてきました。漢方薬をうまく使う、まさに東西医学を融合したがん治療は、今、世界で注目を集め始めています。

(6) 生薬「甘草」も資源争奪戦(2011/12/4)

 日本は漢方薬の原料となる生薬の8割以上を中国から輸入していますが、最近、入手が困難で大きな問題になっています。中国の経済発展による国内需要の伸びに加え、伝統医学のグローバル化で欧米も生薬を買い求めているからです。
 日本漢方生薬製剤協会の調査によって、2010年までの4年間の平均輸入価格が約1.6倍になったことがわかりました。約7割の漢方薬に使われる「甘草」や、花粉症に効く小青竜湯に使う「麻黄」は、中国の輸出規制対象です。電子機器に使う「レアアース(希土類)」に例える人もおり、資源争奪戦が起きています。
 生薬が手に入りにくい現状を踏まえると、日本で生薬栽培を強化していくことが必要となります。農家の高齢化や安い輸入品に押されて国内の自給率は約1割にまで低下しました。一つの解決方法として、喫煙者の減少を受けて、葉タバコ畑を生薬畑に転換することが有効ではないかと考えています。
 生薬価格が上昇しているにもかかわらず、国が定める薬価は2年ごとの改定で工業製品と同様に下がっています。生薬を栽培しても適正価格で売れないことは問題です。日本の伝統医学をどう守っていくのか。しっかりとした議論が必要です。

■ 阪大・理研など、甘草の有効成分を合成する酵素遺伝子を発見

(2011/11/29:化学工業日報社)
 大阪大学、理化学研究所、横浜市立大学、常盤植物化学研究所など7機関の産学連携チームは、医薬品や化粧品などに使用される薬用植物である甘草の主活性成分グリチルリチンの生合成にかかわる酵素遺伝子を発見し、酵母菌に導入して中間体グリチルレチン酸を生産することに成功した。中国ではレアプラント(希少植物・生薬)として甘草の採取や輸出を規制する動きが出ており、価格の高騰、安定供給への懸念が高まっている。この技術を基盤にすれば、組み換え酵母や植物を用いた工業生産への応用が見込める。
 甘草は、地下の肥大根や茎から抽出したエキスが医薬品、化粧品、甘味料などに用いられる。世界市場の年間輸出額は4200万ドルにのぼる。グリチルリチンが植物体内で生合成される反応プロセスは複雑で、すべて解明されてはいないが、複数の酸化酵素や配糖化酵素の関与が推定される。酸化酵素シトクロムP450が関与することなどが部分的に解明されはじめている。またグリチルリチンは、トリテルペンの1種β-アミリンを炭素骨格とし、これを合成するβ-アミリン合成酵素が知られる。グリチルレチン酸は、抗炎症作用などもつグリチルリチンの薬理活性の本体で、非糖部分に相当する化合物。
 研究チームは、カンゾウ類の地下茎から作製した完全長cDNAライブラリーと転写産物の目印となるESTのデータを利用し、生合成中間体の1つ11-オキソ-β-アミリンに変換するP450の1つとして発見したCYP88D6酵素遺伝子、新たに見つけた別のP450ファミリーに属するCYP72A154遺伝子を用いて、生合成経路の再構築に挑戦。宿主とする酵母にまずミヤコグサ由来のβ-アミリン合成酵素遺伝子とCYP88D6遺伝子を同時導入し、11-オキソ-β-アミリンが生産できるように改変して、さらにCYP72A154を導入することで、グルチルレチン酸の生産に成功した。
 成果は、米科学雑誌「ザ・プラントセル」に近く掲載される。

■ 漢方最前線(2011年2月16日〜:読売新聞)

(1)ずばり的中、ツボ診断

 漢方--日本に根付いた中国伝統医療だ。明治以来主流からはずれていたが、1980年代から漢方薬を使う医師たちが増え始めた。
 根強かった医学界の反発も和らぎ、現在、漢方は医療現場に広く普及している。その最前線を訪ねる。
   ◇
 7か月待ちという人気の医療ドックがある。東京女子医大・東洋医学研究所(東京・北区)の「漢方養生ドック」。通常の臨床検査と同時に漢方的な体質診断を行い、食事、運動、節制など日常生活の養生法を伝えるという。
 「この電極を左手で握ってください」。手渡された金属棒を握ると、針灸師(しんきゅうし)の吉川信(きっかわまこと)さん(48)はもう一つの電極を記者の左右の手や足のツボに当て、体の電気抵抗を読み取ってゆく。そして良導絡(りょうどうらく)という針灸診断結果がプリントされた。
 「筋肉のこりや痛み、目の疲労がありませんか」。こころの余裕がない、手足が冷えやすいなど、体質がずばりと診断された。
 2年前に始まった漢方ドック、針灸以外にも、同研究所長の佐藤弘教授(63)らが受診者の手首に指先を当てて脈の拍動の様子を調べたり、痛みはないか、夜は良く眠れるかなど、会話をしながら「漢方データ」を集めてゆく。
 「漢方医学には病気になる前の段階、未病(みびょう)を診断する方法があり、未病を治して長生きにつなげる養生法があります。これは数値化できるようなものではありませんが、1人ずつ体質に合わせたアドバイスができるのです」という。
 それは、西欧近代医学とは全く違う診断体系だ。
 「気」「血」が全身をバランスよくめぐることで健康が支えられる、という身体論に基づいて、体が健康状態からどのくらい、どの方向にズレているのかを診る。漢方薬もこれに基づいて処方される。
 その漢方医学は明治以降、政府の西洋医学一本化政策で臨床医療現場からはほとんど姿を消していた。
 ところが80年代、臨床現場で漢方医療に取り組む医師たちを取材して驚いた。患者の身体に丁寧に触れ、患者の訴えに真剣に耳を傾ける医師の姿があったのだ。「漢方では、脈に触れたり、訴えを聞かないと診断できないのです」(佐藤教授)
 臨床検査データに頼り、患者には触れない医師、患者の顔もきちんと見ない医師が増えている傾向とは、正反対だったのだ。現代の患者の多くが求めているのは、身近なまなざしで心身の健康を見守ってくれるこうした医療ではないのか。
 果たして漢方への蔑視、批判は次第に減り、漢方薬を使用する医師は増え続けた。最近の臨床医を対象とする実態調査では、80%以上の医師が「漢方薬を使用する」と回答。漢方診療機関は全国に広がっている。

(2)近代薬に変身、必須科目に(2011年2月17日)

 漢方医学はどこで、誰が作り出したのだろうか。
 「神農(しんのう)さん」の名前で親しまれる大阪市の少彦名(すくなひこな)神社は毎月23日に漢方薬の神、神農にお湯を奉納する献湯祭が続けられている。
 三浦於莵(おと)東邦大学医学部教授(63)は「易経、老荘など古代中国の自然思想と、生薬の膨大な知識とが結びついて、漢代に集大成された」という。奈良時代に日本に持ち込まれている。
 同大学の講義室。三浦教授は「漢方は日本の気候・風土に合わせて独自の発展をしましたが、生薬など周囲のいのちが、人体という小宇宙の健康を支えるという思想は、現代の漢方薬にも生きています」と説く。
 全国には80の医学部があるが、漢方医学は現在、そのすべてで必修科目となっている。実は明治政府が1874年、医師資格を「西洋近代医学」に統一して以来、漢方は1世紀以上、医師教育から姿を消していた。それが表舞台に復権できたのはなぜか。
 突破口は、煎じ薬をインスタントコーヒーのように乾燥、粉末化させた「漢方エキス製剤」だった。
 小太郎漢方製薬(大阪市)が1957年に開発、薬局用漢方薬として販売した。続いてツムラ(東京都)が医師向けのエキス製剤を発売し、医療現場にも普及した。煎じ薬から近代的な医薬品への変身。効果も煎じ薬と大差なく、飲みやすい。これが漢方の世界を変えた。
 当時の武見太郎・日本医師会長の要請もあり、厚生省(現厚生労働省)は70年代から、健康保険で漢方薬が投与できるよう、漢方処方や生薬の認可をしていった。
 それでも医学界や厚労省には、「東洋思想など荒唐無稽」「漢方薬は科学的な裏づけがない」という批判、不信が根強かった。
 「主治医に見つかると治療を拒絶されるのでと、こっそり漢方治療を受けに来る患者が多かった」
 三浦教授は、診察の様子をこう振り返るが、この30年で、漢方の受け止め方は大きく変わってきた。
 古代中国思想とは無縁な現代人にも、エキス製剤は効いたのだ。厚労省研究班の臨床試験などで効果を確認するデータが報告され、漢方薬を使う臨床医が増加。これを受けて文部科学省は2001年、医学部のカリキュラムに「漢方薬の知識」を加えた。
 講義を聴いて「最初は漢文の時間かと思った」という東邦大医学部1年、西田藍さん(19)は「内科医の父も患者さんの希望で漢方薬を使っており、学んでおいて損はないと思う」と現実的な感想を語る。
 130年の空白を超えて、医師国家試験に漢方薬の知識が出題されるのも間近になっている。

3)日本が伝える「Kampo」(2011年2月18日)

 「Kampo」って、漢方のこと?

 慶応大学医学部・漢方医学センター(東京・信濃町)は、お灸や煎じ薬のにおいという漢方イメージとはかけ離れた雰囲気だ。共通語は英語。2001年以来、オーストリア、米国、ブラジル、中国――世界各国の医学生が研修に集まり、数か月から1年間、英語で討論し、漢方を学ぶ。漢字の羅列だった漢方は、Kampoとして紹介され、国際的な関心を集める。
 日本の漢方は、西洋医学に理解されやすかったと、同センター診療部長の渡辺賢治准教授(51)は語る。「実は日本の医師だけが、漢方、西洋両医学を自在に使いこなすことができるのです」
 中国伝統医学は東アジア各国に伝わったが、日本以外では漢方医(伝統医)と西洋医、二つの医師資格があり、お互い別世界だ。ところが日本では明治初期に医師を西洋医学に統一したため、日本には「漢方医」はいない。医学部を卒業し、さらに漢方も学んだ日本の医師は欧米研修や英語文献を読む機会も多く、1980年代から漢方医療の成果を英語で発表してきた。
 また、煎じ薬を粉末化したエキス製剤は品質が均一で、漢方を学ばない医師にも薬効がわかりやすい。英語で説明しやすい。だからKampoを学びに各国から留学生が集まるようになったのだ。
 国際的な関心を集める代表的な薬があるという。
 朝鮮人参、山椒、ショウガなどの生薬から作られる「大建中湯」。外科出身の北島政樹・国際医療福祉大学長(69)は、「大腸がんの手術後など、腸閉塞症状を起こす人が多いが、大建中湯は腸閉塞を早期に回復させ、予防にも効果がある」という。伝統的な胃腸薬に、手術後の主治療薬として、新しい活用法が見いだされた形だ。
 北島学長らは09年から、国内64医療施設で数千人規模の大規模臨床試験を続けている。メイヨー・クリニックなど米国の医療機関でも効果を確認しており、「欧米の研究者の目をKampoに向けさせる論文になると思う」(北島学長)。
 一方中国も、国家戦略として伝統医学の国際化に着手。世界各国で活用される針灸治療をユネスコに申請し、昨年、世界無形文化遺産リストに採択されている。
 「新たに漢方のインフルエンザ治療薬も開発。成果をアピールしており、日本漢方も外に目を見開かなければならない時代です」と、渡辺部長は話している。

■ (医師の目)慶応大学医学部漢方医学センター診療部長 渡辺賢治氏(2011年2月:日本経済新聞)

※ わたなべ・けんじ
 1984年慶応大医学部卒。慶大内科学教室などを経て91年米スタンフォード大留学。北里研究所東洋医学総合研究所で漢方を学ぶ。2001年慶大漢方医学講座准教授を経て11年から現職。伝統医学を活用した日本型医療を提案、WHO伝統医学国際分類作成会議の共同議長も務める。

(1) 漢方を学ぶ西洋医学(2011/2/3)

 近年、私たちの漢方医学センターに欧米を中心に海外から多くの留学生が訪れる。ドイツ・シャリテ大学、オーストリア・グラーツ大学、米国ジョンズホプキンス大学、ジェファーソン大学、テンプル大学などの医師や医学生が1~3カ月滞在し、漢方を学ぶのだ。
 わが国の医療は戦前はドイツ、戦後は米国の影響を色濃く受けて発展してきた。その欧米が、積極的に漢方を学ぼうとしているのである。
 最近の調査によると、日本の医師の83.5%が日常診療に漢方を使っている。先端医療と伝統医療を融合した新しい医療が創出されようとしている。医療史上類をみない社会実験が進んでいるといっても過言ではない。
 例えば、大腸がんの内視鏡手術の後で、大建中湯という漢方薬を飲むことにより回復が早まり、入院期間を短縮できるという報告がある。また、抗がん剤治療の副作用を軽減する漢方もある。こうした東西医療が融合した医療を今の日本は日常的に行っているのである。このような事例は世界を見渡してもどこにもない。各国の関係者の目が、「実験」の成果に注がれている。
 漢方は、文字通り古代中国国家「漢」に起源をもつが、多くの点で日本化した医学である。漢代の医学はある症状にある漢方が効果がある、という極めてシンプルなものだった。しかし、なぜ効くのかを追究するあまり、中国では理論が大きくなり過ぎて実践的でなくなってしまった。
 一方、江戸時代に伊藤仁斎らの「古義学」に触発された医師らが、実学を重んじた医学として打ち立てたのが今日の日本の漢方の源流である。漢方は日本独自のもので、漢方という言葉自体、江戸時代に作られたわが国の造語で、中国で「漢方」と言っても通じない。英語の“KAMPO MEDICINE”は日本の伝統医学を指す
 世界保健機関(WHO)は伝統医学の多様性を認めており、中国の中医学、韓国の伝統韓医学、日本の漢方は共通部分もあるが、異なる部分も多い。特に、中韓と違って医師免許が一つしかないわが国の医療制度の中で、漢方は非常に特異な存在といえるのである。

(2) 伝統医学 日本も磨きを(2011/2/10)

 世界保健機関(WHO)は1978年の「アルマアタ宣言」で、プライマリーケア(初期医療)の中で伝統医学が重要な役割を果たす、と宣言した。スイス・ジュネーブの本部にも、また日本が所属する西太平洋地域事務局にも伝統医学を担当する部署があり、世界で伝統医学を推進している。
 欧米での鍼灸(しんきゅう)の普及には目を見張るものがある。ドイツでは、地域医療を担う総合医の4人に1人が250時間以上の講義と実技を必要とする鍼灸治療の資格を取得している。また、米国立衛生研究所(NIH)は99年に国立補完・代替医療センターを設立し、年間約300億円を投じてこの領域を研究している。
 中国は昨年、鍼灸治療をユネスコの世界無形文化遺産に登録申請し、リスト入りを果たした。韓国の17世紀の医学書『東医宝鑑(とういほうかん)』は、2009年に世界記録遺産になっている。中韓両国にはいずれも政府の専門機関があり、伝統医学見直しの世界的潮流を受けて、自国の伝統医学のプレゼンスを高めようと積極的に活動しているのである。
 昨年世界的に広がった新型インフルエンザへの対応でも、中国は「蓮花清瘟(れんかせいおん)カプセル」という麻黄湯(まおうとう)と銀翹散(ぎんぎょうさん)を組み合わせた薬を開発。イノベーション新薬のモデルとして「国家新製品」に認定、新型インフルエンザ治療に採用した。
 これに対し、わが国の伝統医学への取り組みは大幅に立ち遅れている。「麻黄湯が解熱に要する時間は抗インフルエンザ薬と同等」との研究がいくつかあるにもかかわらず、高価な抗インフルエンザ薬を多用し、安価で医療経済上もメリットのある漢方はほとんど使われなかった。麻黄湯を活用すれば医療費の削減効果は数十億円に上るとみられる。
 ただ、インフルエンザに対する漢方薬としてはこのほかにも、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、桂枝湯(けいしとう)など数多くある。個人差を重んじるのも漢方の特色で、漢方教育をさらに充実させて使いこなせる医師を増やすことも課題といえる。
 世界の動向に合わせようとするばかりに、自国の持つ強みをおろそかにしているわが国の姿勢と、伝統を重んじながら新しいものを貪欲に取り込む中国との違いは明らかだ。国を挙げて伝統医学の振興に取り組む中韓にならい、日本も独自の医療に磨きをかける時ではないだろうか。

(3) 「日本型医療」創生を(2011/2/17)

 この国で漢方が活用されない理由の一つに、「臨床的エビデンス(証拠)がないから」ということがよく挙げられる。中国、韓国が国家戦略として積極的に伝統医学を推進するのに対し、わが国には専門部局がないうえ、「人・金・物」が圧倒的に不足しており、次世代を担う人材も育成されていないのが現状である。
 2010年8月に英文誌「サイエンス」に掲載された「PHY906」という中医薬は、大腸がんなどの治療に使う抗がん剤「イリノテカン」の副作用である重度の下痢を抑制する、という結果であったが、黄●湯(くさかんむりに今、おうごんとう)という漢方薬の量を調整し、特許を取って臨床試験を行っている。
 実は日本でも、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)という漢方薬に同様の効果があることは10年以上前に示されているのである。臨床・基礎のデータが蓄積されているにもかかわらず、活用されていないが、海外からこうした研究論文が出ると国内の関係者はみな注目する。数年前にハーバード大学と米国立衛生研究所(NIH)の助成金をもらった時に驚いたのは、ハーバード大が漢方薬を研究したがる一番の理由が、特許を取って、経済効果を生むことだったのである。
 欧米を中心に伝統医学市場が広がっている中で、中国、韓国のみならず東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々が、自国の伝統医学を売り込もうとしている一番の理由も経済効果である。伝統医学は未来の医療として莫大な経済効果が期待されている。
 国が医療・健康を成長戦略の柱の一つにしているのなら、もっと漢方の安全性や有効性を検証するための投資を増やし、輸出産業に育てる方向に向かってほしい。近年の欧米での生薬需要の伸びには目を見張るものがある。国内の休耕地で生薬を栽培すれば地域経済を潤すばかりでなく、有力な輸出商品になるはずだ。
 大事なことは、今がどうだということよりも、この国の売りになる強みは何かを考えることではなかろうか。自国の優れたものを認めようとせず、海外で認められたらやっと自国で認める、というわが国の悪しき文化を改めるべきではないだろうか。

 東西医学が融合した新しい医療の創生は、大きな経済効果を生むことのみならず、医療の効率化にも大きな役割を果たすだろう。今こそ海外の追随ではない、「日本型医療」を創生すべき時に来ている。その道筋をどうつけるかを真剣に考えたい。

(4) 国産生薬、総合的育成を(2011/2/24)

 2009年末、事業仕分けで漢方の保険診療がはずされそうになった時、わずか3週間で92万を超す署名が集まった。その結果、10年度は保険診療を継続することになった。国内の医師の83.5%が日常診療に漢方を用いているこの時代に、なぜ保険診療からはずそうというのだろうか。日本の医療をどうするかという視点はなく、取りあえずの金を捻出する安直な方策に思えてならない。
 漢方が直面している危機は深刻だ。原料である生薬の国内生産は15%にまで落ち込んでいる。もともと日本で作られていた生薬も、農家の高齢化などで需要の拡大に生産が追いつかなくなり、中国での栽培への依存度が高まった。
 しかし中国の経済発展に伴う人件費高騰や干ばつ、地震などの自然災害による原価の高騰が著しい。国内の生産を高めるにも、農家からの買い上げ価格は国が定める「薬価」によって規定されているため、低く抑えられている。
 薬価は工業製品を対象に開発費込みで当初の価格を設定するため、2年ごとの改定で下がるのは理解できる。しかし、時価ともいえる生薬の価格が同じ仕組みで下がるのはおかしい。薬価はその価格通り売られていれば問題はないが、値引きにより実勢価格は薬価よりさらに低くなる。
 例えば、あるメーカーの葛根湯(かっこんとう)の1日当たりの薬価は69.75円、患者の自己負担(3割)は21円である。医療用漢方製剤が大々的に登場したのは1976年で、葛根湯が今の形になったのは86年。その後の四半世紀で価格は33%も下落した。原材料が安い中国産に頼らざるを得ないのは自明の理ではなかろうか。
 レアアース(希土類)の例を挙げるまでもなく、中国の資源に頼るリスクは小さくない。中国は、生薬の中でもよく用いる甘草(かんぞう)、麻黄(まおう)を99年から輸出規制している。トレーサビリティー(生産履歴の管理)がしっかりしている国産の生薬を増やせればいいのだが、これは農林水産省の管轄。産業振興の面では経済産業省、最終製品の医療の観点からは厚生労働省となり、ここでも省庁の縦割りが足かせになっている。
 政府には、生薬の栽培から医薬品製造までの工程をきちんと管轄し、産業として育成する部署がぜひ必要だ。そうした体制をつくらない限り、漢方という“日本の宝”を将来にわたって残していくのは難しい。漢方を存続させるかどうか、国民が判断すべき時期に来ている。

■ 髙島系子の「カラダが教えてくれる食生活」(2010年2-3月:nikkei WOMAN Online)

花粉症と「風邪」の意外な関係(2010年2月26日)

 春一番を皮切りに、強い風が吹き荒れる春。中医学では、この「風」は春という季節の象徴と考えている。「風は外だけでなく、体の中でも吹き荒れる」なんて考えるところが独特だ。こじつけみたいに思えるかもしれないが、春にイライラしやすいのも、頭に血が昇りやすいのも、この「体の中の風」のせいなのである。

黄耆(おうぎ)」というマメ科の植物

 もうちょっと詳しく説明しよう。体の中の風は、自然界の風と似たような症状を起こす。特徴は、「突然起こる」「体の上のほうに症状が現れやすい」「変化しやすい」ということ。イライラや頭に血が昇りやすいという状態も、この条件にぴったりと一致する。これらの症状は、「酸味」のある柑橘類で、春特有のイライラを撃退実はダイエットに最適の春、「苦味」で余計なものを「出す」「下げる」紹介したように、体の中のエネルギーである気のめぐりが、春のエネルギーに揺さぶられて起こるのだけれど、もっとダイレクトに、外界の「風」が体の中に入ってきて起こる病気がある。それは何か?
 答えは、「かぜ」。そう、鼻水や咳や熱が出たりする、あのかぜのことである。「なんだか言葉遊びみたい」と思うかもしれないけれど、かぜを「風邪」と書く理由に思いを馳せると、案外納得がいくと思う。
 今では、かぜはウイルスが引き起こすものだと誰もが知っているが、それが分からなかった時代にも、ちゃんと対処法は存在していた。「風のような症状を引き起こす邪(じゃ)が体内に入ってきた!その邪を追い出せば病気は治る」と考えたのだ。それがかぜ=風邪の語源なのである。
 外界から体内に侵入して、風のような症状を引き起こす邪を、中医学では風邪(ふうじゃ)と呼ぶ。ここではかぜとの混同を避けるために、風の邪、と呼ぶことにする。さてこの風の邪、なにもかぜを引き起こすウイルスのことだけを指すわけではない。実は、花粉症の原因である花粉も、風の邪のひとつなのである。

花粉症を軽くする、防衛力アップ作戦

 さて、ここからが今回の本題。花粉が風の邪のひとつだとしても、「追い出す」のは、そう簡単なことではない。けれど、考えてみてほしい。花粉がたくさん飛んでいても、まったく症状を起こさない人もいる。そして、花粉症であっても、必ずしも花粉量が多い年に症状がひどくなるというわけでもない。「どういうわけか今年は去年より楽」という年もあれば、その逆もあるはずだ。その理由は、体の中の“防衛力”の違いにある、というのが、中医学の考え方だ。
 この防衛力には、衛気(えき)という名前がついている。体のエネルギーである「気」の一種で、総元締めは呼吸器である「肺」である。肺が、衛気というバリアを、しっかりと体表面(鼻や口、目も含む)に張りめぐらせていれば、かぜもひきにくいし、花粉症の症状も出にくくなる、というわけだ。もちろん、その防衛力アップの味方となる食べ物や薬も存在する。代表格は「黄耆(おうぎ)」というマメ科の植物。
 日本では、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「帰脾湯(きひとう)」などの漢方薬に配合されているため、「薬」という扱いになっているけれど、シンガポールや中国では食品扱いで、よくスープの素などにも入っている。このほか、「苦手な季節で分かる『体の癖』」で紹介した冬の養生や、ごく一般的な健康法、つまり、たっぷり睡眠をとるとか、栄養のバランスに気をつけるとか、そんなことも大いに役に立つ。
 ただ、残念ながらこういった予防対策は、症状が出てからではちょっと遅い。花粉が飛び始めたら、できる限りの「追い出し作戦」と症状緩和に努める必要がある。そのためには、自分の花粉症の症状が「熱タイプ」か「冷えタイプ」かを見極めることが大切だ。次回は、そのチェック法とそれぞれの対策を紹介したい。

■ 「寒」と「熱」、花粉症タイプで対処法が違う(2010年3月5日)

寒タイプ、熱タイプ、それぞれに合った対処法を…

 前回のコラムで花粉症の予防対策について紹介したが、そうこうしているうちに花粉が本格的に飛び始めたようだ。シンガポールで迎える2度目の春、これからどんどん暑くなる一方だが、花粉症のことを考えると、この暑さもなんだかありがたく思えてくる。そう、東京にいたころは私も花粉症に悩む一人だった。それでも、「朝晩、目や鼻がムズムズする」という程度で済んでいたのは、やはり中医学的な対策が功を奏していたのだと思う。
 さて、具体的な対処法に入る前に、ちょっとおさらいを。前回、花粉症もかぜも、外界から体内に侵入して自然界の風のような症状を引き起こす「風の邪」によるもの、という話を書いた。この「邪(じゃ)」という概念について、もう少しだけお付き合いいただきたい。
 「邪」とは、体にヨコシマな影響を与える気候の変化や、病理物質(ウイルスや細菌、花粉なども含む)、というふうに考えると分かりやすい。そしてこの邪は「風」ばかりでなく、寒、暑、湿、燥、火(熱)という性質を持ったものもある。ちなみにこの6つ、ひっくるめて「六淫の邪(ろくいんのじゃ)」なんて呼ばれていて、それぞれ単独で働くばかりでなく、コンビを組んで体に悪さをしたりもする。例えば、風+寒、風+熱、湿+熱、といった具合だ。
 ただし、この邪というのは、必ずしも外因そのものを指すわけではない。「どんな邪によるものか?」は、あくまでその人に現われた症状によって判断されるので、もともと持っている体質素因や、そのときの体の状態も当然絡んでくる。そのあたりも含めてのタイプ分けだということはぜひ理解しておいてほしい。
 さて、花粉症に最も関係が深いのは、「風+寒」と「風+熱」の邪である。ここでは「寒タイプ」と「熱タイプ」として紹介しよう。
寒タイプ」の症状として典型的なのは、「水のようにサラサラとした鼻水が止まらなくなる」ということ。放っておくとたら~り、なんてこともあるので、とにかくティッシュが手放せない。まだ外も寒く、花粉の飛散が始まったばかりの今は、こういう症状から始まる人も多いだろう。くしゃみは出るが、目のかゆさなどはあまりない。
 一方の熱タイプ」は、目の充血やかゆみが強いのが特徴。鼻水は粘りが強くて、ときに黄色っぽくなることもある。鼻づまりもかなりひどい。症状が長期化したときや、体にもともと熱がこもっている人に起こりやすい症状だ

「寒タイプ」は温め、「熱タイプ」は熱をこもらせない対策を

 なぜ、こんなタイプ分けが必要かというと、「寒タイプ」か「熱タイプ」かによって、対策がまったく違ってくるからだ。寒タイプは、その名前と症状からも分かるように、ある種の冷えが原因となっている。だから、まずは体を温めることが大切。風邪の引き始めと同じように、しっかり着込んで(特に首筋をガード)、温かいものをとることを心がけよう。
 「守る」だけでなく、花粉という風の邪を追い出す手だても必要だ。ここで思い出して欲しいのが、「味で分かる食物の“効き目”、『辛味』は“よぶんなもの”を追い出す」で紹介した辛味食材。体を温めて軽く発汗させる生姜、ネギ、紫蘇、山椒などが大いに役立つはず。ただし、辛味の中でも唐辛子のような刺激物は、鼻粘膜や結膜の炎症を悪化させるため、寒タイプでも避けたほうが無難。なお、このタイプの症状は、体の中の防衛力(衛気)の低下(前回のコラム参照)とも深い関係にあるので、寝不足や過労などを避けることも心がけて。
 一方の熱タイプは、必要以上に体を温めると、かえって目のかゆみや鼻づまりがひどくなることがある。冷たいものは「衛気」を作り出す消化器の働きを低下させてしまうので、熱タイプとはいえあまりとらないほうがいいのだが、体を温めすぎる食べ物、例えば唐辛子などはてきめんに症状を悪化させる。
 熱を体にこもらせないために、まずは旬の野菜をたっぷりとることを心がけよう。セロリ、ゴボウあたりは特によい。ミントティーや菊花茶、緑茶などを温かくして飲むのもおすすめ。また、紫蘇も「温性」ではあるけれど、痰を切る作用があるので、このタイプにも向いている。
 花粉症の漢方薬としては、「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」がよく知られているが、この薬は熱タイプには合わないのでご注意を。「麻黄(まおう)」というエフェドリンの原料でもある生薬が比較的たくさん入っていて、温めて発汗させる作用が強いため、寒タイプの鼻水なら1包飲んだだけでぴたりと止まることもあるのだが、熱タイプの人が飲むと、とたんに目のかゆみが強くなったり、のどが渇いてしかたがなくなったりする。
 なお、熱タイプには、体の熱を冷ましながら軽く発汗させる「銀翹散(ぎんぎょうさん)や「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」などがよく使われるのだが、そのときの体に合ったものを選ぶために、漢方薬を服用するときはやはり専門家にきちんと相談を。
 そもそも「寒熱」をきちんと見極めるのは意外に難しい。最初は寒タイプの症状が出ていても、だんだん温かくなるにつれて、熱タイプの症状に変わってくることも多いので、「私の症状は寒」と決めつけることのないようにしたい。まずは、じっくりと自分の体が発する「声」に耳を傾けよう。花粉症は季節限定の症状ではあるけれど、この機会に自分の体と向き合うことは、別の機会にも必ず役立つはずだ。

<小児漢方関連研究会>

 私(院長)がよく参加する研究会を挙げておきます。HPは「日本小児東洋医学会」しかなく、まだまだマイナーですねえ。

日本小児漢方懇話会
講演を記録した書籍集の紹介。

■ 東京小児漢方研究会
漢方に興味のある小児科医の集まり。