ワクチンで予防可能な感染症

ワクチンで予防できる感染症

(2010年7月掲載)

 ここにはワクチンで予防可能な感染症について記載しました。
 WHOは現時点で17種類のワクチンを定期接種にすべしと推奨していますが、日本で実現しているのは7種類だけ。さらに日本では子どもを持つ親に定期接種に関する通知はされますが、任意接種については誰も説明してくれないという寂しい現状です。
 病気に関する知識を持ち、自然に罹るのがよいのか、お金をかけてもワクチンで予防すべきか、考える材料となれば幸いです。ワクチン対象疾患は根治療法・特効薬がない病気が多く(インフルエンザと水痘と結核はありますが)、重症化や合併症による後遺症のリスクは運任せなのです。

任意接種おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

原因:ムンプスウイルス

※ ムンプスウイルス以外のサイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルス、HIVでも耳下腺が腫脹することがありますが、これらは「おたふくかぜ」とは呼びません。

疫学:好発年齢は3〜6歳、初春〜夏にかけて流行します。罹っても症状が出ない不顕性感染が1/3程度存在します。

(院長のつぶやき)「低年齢ほど不顕性感染率が高く、4歳以上では顕性感染率90%」と教科書には書いてありますが、うなづけますね。お母さんからもらった免疫が無くなるのは生後10ヶ月以降とされていますが、1歳未満の乳児を「おたふくかぜ」と診断した経験はほとんどありません。

※ 日本ではワクチン接種率が10〜20%と低いため流行に歯止めが効かず、一方アメリカでは年間500人以下とほぼ制圧されています。

感染形式:飛沫感染、接触感染
潜伏期間:2〜3週間(10〜21日、平均18日)(12〜25日、通常16〜18日)・・・本により微妙に違う・・・
症状
 唾液腺(耳下腺&顎下腺)腫脹&痛みが特徴です。75%が両側で、腫脹は3日目にピークとなり10日間近く続きます。
 発熱、頭痛、全身のだるさが先にみられることがあります。発熱は必須ではなく、あっても数日です。
 あごを使うと痛いので硬いものが食べられません。酸っぱいものを食べると痛みが強くなります。

※ 年齢による症状の違い:耳下腺の腫脹期間は7〜10日間ですが、一般に年少児では症状が軽く、腫れと痛みだけで発熱を伴わないことも多く、年長児以降では多くの場合発熱や疼痛も強い傾向があります(成人では10〜14日間腫れます)。

合併症
難聴(「1000〜3000人に一人」と少なくありません):高度の感音性難聴。難聴出現時、40〜45%に耳鳴りやめまいを伴います。片側性が多いので気づきにくく、残念ながら治療法はありません。年齢が高いほど合併するリスクが高くなります。

指こすりテスト(難聴チェック):おたふくかぜに罹ったら、1日1回耳の側で指をこすり聞こえるかどうか確認しましょう(2週間くらい)。

髄膜炎(3〜10%):頭痛、嘔吐、項部硬直など。髄液細胞数の増加は50%と高率です。予後は良好です。
脳炎(0.02〜0.3%):意識障害、けいれんなど。後遺症を残し、予後は不良です。
精巣炎(睾丸炎):思春期以降では25%と高頻度で、両側の睾丸が腫れる頻度は10%です。不妊症になるのは、実は極めてまれです。ムンプス睾丸炎合併者の1.5%に睾丸癌の発症をみます。
・乳腺炎(成人女性で15〜30%)、卵巣炎(成人女性で5%)
・その他(まれ):関節炎、甲状腺炎、糸球体腎炎、心筋炎、心内膜線維弾性症、血小板減少、小脳失調症、横断性脊髄炎、上行性多発性神経根炎、膵炎

★ まぎらわしい反復性耳下腺炎
 おたふくかぜと区別が難しい病気です。
 何回も耳下腺が腫れますが、数日で治ってしまうことが多いのが特徴です。
 腫れる度におたふくかぜに準じて園・学校を休まなくてはならないので、繰り返す場合は血液検査でムンプスウイルスの抗体価チェックをお勧めしています。どれか本物であれば抗体価が上昇しており、それが確認できれば、それ以降は耳下腺が腫れても「おたふくではない」と判断できるので、隔離の必要がなくなります。
※ おたふくかぜに罹るのは一生に一回だけです。片方の耳下腺しか腫れなくても1回です(おばあちゃんは「片方しか腫れなかったからまた罹るよ」と言いますが、医学的にはあり得ません)。

治療:対症療法(根治療法・特効薬はありません)

※ 痛くて食べられないときは小柴胡湯加桔梗石膏という漢方薬が効きます(ただし飲めればの話)。

予後:(脳炎・難聴の合併がなければ)後遺症無く治ります。
予防
・予防接種(生ワクチン):有効率80〜90%
・接触した際の緊急予防接種:効果は期待できません。理由は、発症前の潜伏期から感染力があり、また不顕性感染者からもうつるので、流行中はいつ接触したか特定できないからです。さらにワクチン後の免疫誘導時期が、麻疹ワクチンや水痘ワクチンに比べて遅いことも指摘されています。
感染力のある期間
 前述の通りウイルスは発症2〜3日前から耳下腺腫脹開始後5日頃まで唾液に排泄されます。さらに不顕性感染者もウイルスを唾液腺から排泄しています。耳下腺腫脹が無くなり、顎下腺のみ腫脹が残っているときは唾液からウイルスは分離されません。尿中へのウイルス排泄期間は唾液中への排泄期間より長期間です。
隔離期間
・日本:耳下腺の腫れが消失するまで
・米国:9日間

※ 症状出現後に登校停止措置を行っても流行を早期に消退させることは困難です。流行を避けたいなら集団生活の単位でワクチンを接種する以外に方法はありません。

(院長のつぶやき)日本の隔離期間の設定は「主要症状が消退するまで」とか「感染力が無くなるまで」とアバウトな表現が多く、現場に責任を押しつけている感があります(逆に医師の裁量を認めているとも取れますが)。一方、アメリカの基準は医学データに基づき明確に数字で表されており、大変参考になります。

任意接種みずぼうそう(水痘)

原因:水痘・帯状疱疹ウイルス
疫学
・冬から初夏にかけて多く、秋には減少します。
・患者の90%以上は10歳未満の子どもであり、1〜5歳での感染者を多く認めます。
・高齢者では水痘の再感染・再罹患も起こることがあります(!)が、ふつうは軽く済みます。
感染形式空気感染、感染源は水痘・帯状疱疹の水疱液と水痘患者の気道分泌物です。
潜伏期間:10日〜20日(通常13〜17日)
症状
水痘疹:はじめは胸・背中に赤い斑点が出現し、全身へ広がると共に、一個一個が大きくなると真ん中に水疱を作り、その後黄色っぽくなり(膿疱化)、1週間〜10日間くらいで全てかさぶたになります。

※ 水痘生ワクチン接種者が罹った場合は、皮疹が水疱を作らないことがあり、かえって診断が難しくなることがあります。しかし水疱を作らなくても、治るときはかさぶたになります。

発熱:必須ではありませんが、発疹出現前に発熱や倦怠感が出ることもあります。成人では発疹より発熱が先行する傾向があります。
合併症
□ 細菌の二次感染(〜5%):
伝染性膿痂疹(=とびひ・・・見た目がすごくなります)、
蜂窩織炎(局所の腫れ)・・・原因菌はレンサ球菌、黄色ブドウ球菌が多いとされています。
□ 中枢神経合併症(0.01〜1.5%):
脳炎(2.7人/1万人で成人に多い)
脳症急性小脳失調症:予後(回復具合)は悪くありません、
脳梗塞(1/6500人)
髄膜炎
脊髄炎
顔面神経麻痺(まれ)
□ その他;
肺炎:ウイルス性>細菌性
心筋炎(まれ)
肝炎
□ 胎内感染:
・妊娠第1・三半期に感染 → 水痘胎芽症:手足の低形成などの奇形など
・妊娠第2・三半期に感染 → 体内で治癒し、出生後乳幼児期に帯状疱疹を発症することがあります。
・出産14日前から出産2日後の間に水痘を発症した場合は、新生児は移行抗体がないために重症化し(周産期水痘)、集中治療が必要です。
治療:抗ウイルス薬:アシクロビル(商品名:ゾビラックス、ビクロックス他)を80mg/kg/日、分4
・・・発症後3日(72時間)以内に使用すると軽症化が期待できます。

※ 解熱剤としてアスピリンを使用すると急性脳症(Reye症候群)を発症するリスクが増加します(↓)。

Reye(ライ)症候群
 水痘罹患中にアスピリン系薬剤を服用した小児に起こることがある。PL顆粒もアスピリン系のサリチルアミドを含んでおり、危険である(でも未だに内科開業医で処方されることがあるので注意!)。

(院長のつぶやき)すべての患者さんに抗ウイルス薬は必要
 水痘は皮疹は目立つものの、重症化はまれで自然に治る病気でもあり、全ての患者さんに抗ウイルス薬が必要かどうか、今でも議論されています。ちなみにアメリカの小児科学会のガイドラインでは、健康な子どもへ一律に治療薬を使用することを勧めていません。

予後
・死亡率・・・1/10万人(1〜14歳)、2.7人/10万人(15〜19歳)、25.2人/10万人(30〜49歳)

※ 白血病などの免疫不全状態では高率に生命の危険を伴います。

予防
□ 生ワクチン;
・感染予防:1歳以降(任意接種:自己負担)、有効率8割(罹っても軽く済みます)。

※ 水痘ワクチンを受けた健康な子どもから周囲のヒトにワクチン株が感染することはありません。

・緊急接種:患者と接触後72時間以内にワクチンを打てば、発症や重症化を防ぐことができます。
□ 抗ウイルス薬(アシクロビル)の予防投与:接触時期から予測される発症日の7日前から7日間、あるいは接触後8〜9日目から5日間内服(40mg/kg/日・・・治療量の半分)することにより発症阻止〜軽症化が可能です。
感染力のある期間:皮疹が出る2日前からウイルスを排出します。
隔離期間:全ての水疱がかさぶた(痂皮)になるまで。

帯状疱疹
 皮膚のある部分に帯状に限局して水疱ができる病気で、実は水痘と同じウイルスの感染症です。水ぼうそうは罹って治った後も、ウイルスは排除されずに神経の一部(脊髄後根神経節)に潜んでいます。そして体力が落ちたときに、ここぞとばかりに表に出て症状を現すのです(再活性化)。
・潜伏期:不明です。
・高齢者の帯状疱疹:帯状疱疹に伴う痛みや後遺症としての神経痛が問題となります。
・小児の帯状疱疹:小児では帯状疱疹罹患中に神経痛を訴えることは少なく、帯状疱疹に神経痛が先行することは極めてまれであり、後遺症としての神経痛が問題となることはほとんどありません。なお、乳児期に水痘を発症した子どもは、1歳以降に水痘に罹った子どもに比べて、小児期に帯状疱疹を発病する可能性が高い傾向があります。
・隔離は必要?
 学校保健法では帯状疱疹患者の隔離期間について記載はありません。空気感染はせず、接触感染なので、皮疹部をガーゼなどで覆うことができれば出席停止にする必要はありません(顔面にできたり、まれながら全身にできる場合は出席停止もやむを得ません)。
・ワクチン株でも帯状疱疹になる?
 水痘ワクチン接種後、健康な子どもの場合はワクチン株により帯状疱疹が引き起こされることはほとんどありません

(院長のつぶやき)主に中年以降の病気であり、昔は子どもではめったに見かけませんでしたが・・・最近ときどきいるのですよねえ。子どもの免疫力が落ちてきた?

水痘・帯状疱疹と免疫不全者
 白血病などの免疫不全状態では水痘は重症化し命に関わる病気です。健康な子どもと状況が異なることを理解する必要があります。特殊な状況例を列記しました;
・水痘ワクチンは当初免疫不全状態の患者さんを対象として開発されました。
・免疫不全状態では水痘ワクチン接種後、感染源になることがあります。
・免疫不全状態では水痘ワクチン接種後、ワクチン株による帯状疱疹が出現することが報告されています。

任意接種細菌性髄膜炎(肺炎球菌とヒブ)

どんな病気
 細菌が血行性に脳の髄膜に達して炎症を起こし、ダメージを与える重い病気です。抗生物質が発達した現代でも発症すると重症化は避けられず、治療を尽くしても1/3は死亡〜後遺症が残ります。
 この項目は主に乳幼児期のヒブ・肺炎球菌による髄膜炎について記載します。

※ 近年主な原因菌(ヒブ、肺炎球菌)に対するワクチンが相次いで開発・認可され、予防できる時代となりました。

細菌性髄膜炎とウイルス性髄膜炎の違い
 細菌性髄膜炎は一刻を争い、命に関わる重い病気です。一方、同じ髄膜炎という名前でも、ウイルス性髄膜炎は重症化することなく自然治癒する軽い病気で、おたふくかぜに合併する髄膜炎が代表例です。

原因:全体として・・・
ヒブ(※):60〜70%
肺炎球菌 :20〜30%
※ 正式な名前は「インフルエンザ菌タイプb」

年齢層により原因菌は異なります
新生児〜生後3ヶ月: GBS(B群レンサ球菌)、大腸菌、黄色ブドウ球菌、リステリア菌
乳幼児期: ヒブと肺炎球菌が中心
年長児〜青年期: 肺炎球菌、ヒブ、髄膜炎菌
成人: 肺炎球菌、髄膜炎菌
高齢者(50歳以上): 肺炎球菌、グラム陰性桿菌、リステリア菌
※ 日本では諸外国と比べて髄膜炎菌の頻度が低いことが特徴です。

疫学
・5歳未満が全体の半数以上を占めます。
感染形式:飛沫・接触感染により咽頭炎・中耳炎・副鼻腔炎を起こし、その細菌が脳の髄膜(くも膜・軟膜)に血行性に侵入して炎症を起こします。

※ 実はヒトの喉や鼻の奥にふだんからいる当たり前の細菌ですが、体の奥に入り込んで増殖すると病原性を発揮します。

潜伏期間:不定
症状:一刻を争う病気ですが初期の診断は困難です。
発熱、嘔吐、頭痛、不機嫌で始まり、
進行すると意識障害、けいれん(※)が出現します。
乳児では「ぐずる」以外、症状が不明瞭なことがあります(not doing well)。
急速に悪化する敗血症型、電撃型もあります。

熱性けいれんと髄膜炎によるけいれんの違い
 熱性けいれんは発熱初期の上がりはじめに多く、ふつう5分以内に治まり意識も戻ります。髄膜炎によるけいれんは、発熱当日には少なく、長く続き、繰り返し起こり、意識が戻りにくい傾向があります。

合併症
硬膜下水腫、脳膿瘍、脳梗塞、等
後遺症として難聴、麻痺、てんかん、発達障害、等
治療:入院の上、有効な抗生物質を点滴で10〜14日間投与します。また、重症度に応じて全身管理が必要です。

薬剤耐性菌問題
 本来は必要のないウイルス性の風邪などに抗生物質が大量に使われた結果、薬が効かない耐性菌が増えてきて、いざ必要な中耳炎・肺炎・髄膜炎に使いたいときに効かない、という自分の首を真綿で絞めるような現象が社会問題化しています。

予後死亡率:5〜20%、後遺症残存率:30%

※ 未治療であればほぼ100%死亡する恐い病気です。治療を尽くしても重症化は避けられません。

予防:ワクチン
・ヒブ:2009年から日本で接種可能。しかし供給量が少なく、小児科開業医ではひと月に3人分しか手に入りません。任意接種なので有料です。
・肺炎球菌:2010年から日本で接種可能。こちらも任意接種。

(準備中)

原因
疫学
感染形式
潜伏期間
症状
合併症
治療
予後
予防
隔離期間

【任意接種】季節性インフルエンザ

<ポイント> ・・・当院待合室に置いてあるプリントの内容です;

◆ キーワードは「重症」「流行」「反復」
重症
 インフルエンザは発熱・咳だけでなく、頭痛・関節痛・筋肉痛など全身がとてもつらい病気です。同じ熱でも他の風邪とはグッタリ感が違い、子どもが熱でうなされることもしばしば。親としてかわいそうで見ていられません。
 乳幼児はこじれて気管支炎・肺炎を合併し、入院が必要になることもあります。
流行
 毎年12月頃から流行が始まり、1〜2月をピークに3月まで流行します。一口にインフルエンザといってもA香港型、Aソ連型、B型の3種類あり、これらが波状攻撃してきます。つまり、ひとシーズンに複数回罹る可能性があるのです。
反復感染
 一般にウイルス感染は一生に一回しか罹りません(例:水痘、おたふく)。インフルエンザはウイルスが原因なのになぜか何回も罹ってしまいます。それは、ウイルス自身が車のマイナーモデルチェンジのように毎年少しずつ変化する珍しい性質を持っているからです。
 乳幼児は毎年のように罹り、大人でも3〜5年に一回は罹りますね。
◆ 治療:タミフルについて
 インフルエンザウイルスの増殖を抑えるタミフルが数年前に登場し、それまでの対症療法から根治療法へと発展しました。発症から48時間以内に内服を開始すると約1日早く解熱し、合併症も減らすことが期待されます。
 しかし、副作用としてタミフル内服後の異常行動も報告されています。2007年に飛び降りによる転落死・骨折例が発生し、厚生労働省は3月に「原則的に10歳代にはタミフルの使用を控える」と発表しました(因果関係は証明されていません)。
 以上より、タミフルは1〜10歳未満の小児で重症感があるときに使用する、というスタンスになりつつあります。
※ 抗生物質は無効です(細菌をやっつける薬なのでウイルスであるインフルエンザには無効)
◆ インフルエンザ脳症について
 インフルエンザ発症後1〜2日で意識障害・痙攣などの神経症状が進行し、重症化する合併症です。死亡率約30%、後遺症が残る率約30%という怖い病気です。
 インフルエンザ脳症を100%予防する方法はあるでしょうか?
 残念ながら「これだ!」という魔法はありません。タミフルでも無理らしい。
 唯一期待できるのは「ワクチンを接種してインフルエンザに罹からないようにする」ことです(罹らなければ合併症としての脳症のリスクはゼロ!)。しかし、残念ながらワクチンの効果は完璧ではなく、接種後インフルエンザを発症して脳症に至ったケースも報告されています。

・・・では、少し詳しく・・・

原因:インフルエンザウイルス。直径100nmのRNAウイルス。
 近年の流行株は、「A香港型」「Aソ連型」「B型」の3種類です。

※ 2009年春に発生した新型インフルエンザは現時点では「パンデミックH1N12009」と呼ばれています(WHO)。

疫学
・毎年冬季に流行を繰り返し、人口の5〜10%が罹ります(計算すると日本では600万〜1200万人)。
・死亡者の大多数は高齢者であり、毎年数千人〜数万人が死に至ります。
感染様式:接触・飛沫感染(空気感染の可能性も指摘されています)
潜伏期:24〜48時間
症状

※ A香港型が一番重く典型的で、Aソ連型は比較的軽症、B型はやや異なります。

・突然の高熱から始まり、咽頭痛、頭痛、関節痛、倦怠感など全身症状が強く出ます。
・3日前後で解熱しますが、その頃から鼻漏・咳嗽など呼吸器症状が目立ってきます。
・嘔吐や下痢などの消化器症状は少ない傾向があります。
・完全な回復、体力が元に戻るまでには1〜2週間かかります。

<子どもの症状の特徴>

 学童以降では大人と同じ上記症状を呈することが多いのですが、低年齢では全身症状は比較的軽く呼吸器症状が中心となる傾向があります。また、二峰性の発熱(3日前後で解熱傾向になった後、再び発熱する)をみることも多く、合計1週間ほど発熱が続くこともあります。

<B型の症状の特徴>

 一般的症状の他、足の筋炎(痛くて歩けない)が合併することがあり、また嘔吐・腹痛などの胃腸症状月良く出る傾向があります。
検査
 病院・開業医院では「迅速診断キット」が使用可能です。咽頭ぬぐい液・鼻腔ぬぐい液・鼻汁吸引物を用いて15〜20分程度で結果が判明する検査です。A型とB型は区別できますが、Aソ連型・A香港型・新型の区別はできません。

※ 症状は典型的でも20%は違う感染症であったとの複数の報告があります。

合併症
<乳幼児>
・熱性けいれん
・中耳炎
・筋炎:B型に多く合併します。
・急性脳症「インフルエンザ脳症」(次項参照)
<高齢者>
・肺炎
治療抗インフルエンザ薬が有効です。
・ノイラミニダーゼ阻害薬:オセルタミビル(商品名:タミフル)、ザナミビル(商品名:リレンザ)
 A型(新型を含める)とB型に有効です。

耐性ウイルス:出現頻度は当初少ないと云われていましたが、2008-2009年シーズンでは一部の地域でAソ連型の耐性化が高率に発生し問題となりました。

・M2蛋白阻害薬:アマンタジン(商品名:シンメトレル)・・・小児適応はありません。

幼児用PL顆粒に注意!
 インフルエンザと水痘患者にアスピリンを投与すると「ライ症侯群」という急性脳症の発生リスクが増えることが判明し、アメリカではアスピリンと類似薬のサリチル酸系薬物の投与は禁止されています。
 日本では類似薬のサリチルアミドを含む幼児用PL顆粒が未だに使用されている現状があり注意が必要です。アセトアミノフェン(商品名:アンヒバ座剤、アルピニー坐剤、カロナール、コカール)が一番安全とされています。

(院長のつぶやき)特に休日当番医の際に開業小児科標榜医(もともと小児科専門医でない他の科の医師が「子どもの患者も診ます」と標榜すること)での処方が目立ちます。医師がこのレベルですから、悲しくなります。患者さん側が知識も持って「自分の子どもを薬の副作用から守る」という認識が必要な時代と考えましょう。

予後:合併症が無ければ1週間で回復します。
隔離期間:「学童では解熱後2日間、乳幼児では3日間の隔離が必要」です。
インフルエンザウイルスは発病後、喉から3〜5日間排泄されますが、乳幼児ではさらに長く1週間以上も排出されることがあります。
予防
① 不活化ワクチン(現在の日本で使用されているもの)
 有効率は最高70〜90%ですが、幼児では50%と低い傾向があります。これは、ワクチン接種量が日本ではアメリカより少なく設定されていることが大きな原因です(2010-2011年シーズンにはアメリカと同量になる予定です)。
 また、B型の有効率は60%(幼児では20%)とA型より低い傾向があります。

日本小児科学会による季節性インフルエンザワクチンに対する見解(2004年)

「1歳以上6歳未満については、インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、有効率20〜30%であることを説明した上で任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向である」(上記より抜粋)

 一方、アメリカでは乳幼児でも50%のワクチン効果は認められるとして、生後6ヶ月〜6歳までの子どもは高齢者と共にワクチン接種が推奨されています(多くは無料)。

※ 「学童集団接種」の評価の推移
 日本では1960年代から約30年間にわたり、学童へのワクチン集団接種を行っていましたが、1990年代に「流行を防ぐ効果がなく、むしろ副反応が問題だ」として中止するに至りました。
 しかし近年、「集団接種はやはり有効だった」と再評価されつつあります。1970〜1980年代のインフルエンザ流行期に伴う高齢者の死亡数(統計学的に「超過死亡」と呼びます)が低く抑えられていたと解析されたのです。
 さらに、学童の兄弟である乳幼児の重症化も防いでいたと評価されています。
 確かに、老人ホームや介護施設で高齢者の死亡が話題になり社会問題化したのは集団接種が中止となった数年後からと記憶しています。また、乳幼児の「インフルエンザ脳症」が問題になったのも中止後の1990年代ですね。

② 生ワクチン(日本では未導入)
 鼻から噴霧するタイプのワクチンで、弱毒化したウイルスを感染されることにより免疫をつける方法です。効果は抜群で、アメリカのデータでは、健康小児の有効率:A型95%、B型91%と驚異の数字。アメリカでは5歳以上50歳以下で使用されていますが、日本では認可されていません。

インフルエンザ脳症

役に立つHP:「インフルエンザ脳症ガイドライン」(厚労省)

 乳幼児にまれにみられるインフルエンザの合併症です。
疫学
・日本では毎年100〜500例が発生しています。
・タイプ別頻度はA香港型>Aソ連型・B型です。
・年齢は5歳以下の乳幼児(特に1〜3歳)が多くみられます。
症状
・発症は急激:発熱から1日以内の神経症状(けいれん、意識障害)の出現が80%です。
・初期に熱せん妄様の意味不明な言動が20〜30%にみられ注意すべき症状です。
・重症化すると全身が冒され、多臓器不全の進行により肝不全・腎不全・DIC(播種性血管内凝固症候群)などの症状が出ます。
治療:(ガイドライン参照)
・抗ウイルス薬
・ステロイド・パルス療法
・γグロブリン大量療法
・その他:脳低体温療法、血漿交換療法、シクロスポリン療法、アンチトロンビン-Ⅲ大量療法など。
予後:死亡率30%(ただし近年治療の進歩で漸減傾向)、後遺症が残る率25%。

鳥インフルエンザ

 2003年に発生した鳥インフルエンザは(H5N1)は東南アジアで流行し、その後全世界に感染が拡大しています。鳥インフルエンザはふつうヒトには感染しませんが、H5N1に感染したニワトリに濃厚接触した場合は例外的にヒトへの感染が起きています(ヒト-ヒト感染を疑わせる例も散見されますが流行には至っていません)。
 発症した場合の死亡率は50%以上と極めて高率です。
 現在も世界の一部で感染例は散発しており、今後も注意深い監視が必要です。

【任意接種】新型インフルエンザ

定期接種百日咳

原因:百日咳菌
疫学
 百日咳ワクチンがなかった時代は10歳未満が95%(1歳未満が7.5%)でしたが、2002年以降は約50%が10歳以上の患者であり、社会問題化しています。
感染形式:飛沫感染
潜伏期間:5〜21日(7〜10日が多い)
症状

カタル期(1〜2週間)・・・始まりは咳・鼻汁(ふつうの風邪と区別は不可能です)。
痙咳期(3〜6週間)・・・約2週間後、乾いた咳が悪化して夜間の「咳発作(※)」が出現し、これが数週間続きます。新生児〜生後半年までの乳児では「無呼吸発作」が起こり入院が必要になることがあります。
回復期(6週間以後)・・・その後数週間かかって回復していきます。

※ 乾いた咳が5〜10(〜30回)連続し(staccato)、顔が真っ赤になり呼吸が苦しくなり、咳込み後に息を大きく吸うとき笛のような音がします(whoop)。翌朝顔がむくんでいたり目のまわりに点状出血がみられることもあります。

非典型的な百日咳:DPTワクチン接種児は非典型的な経過をとります:咳の持続は約4週間、典型的な症状は6%のみで「感染源」となることが問題になります。成人の百日咳も非典型的な経過をとり、診断が困難です。

※ 回復期にほかの風邪を引くと、あの咳発作が蘇る!
 発症後数ヶ月が経過して咳発作から解放されたところに、ほかの風邪を引くとまたあの苦しい咳発作が蘇る傾向があります。気道の過敏状態が残っているためです。

合併症
・肺炎:12%
・けいれん:1.4%
・脳症:0.2%

生後2ヶ月以内の乳児は重症化しやすい傾向があります・・・肺炎25%、けいれん3%、脳症1%。

治療
抗生物質(マクロライド系)・・・ただし、痙咳期に入ってから開始してもあまり効きません。感染源対策としては意味があります。
予後:入院率63%、死亡率0.8%
予防:予防接種(DPTのなかの「P」)を4回

小児期に接種したDPTの効果は10年くらいで無くなってしまいます。アメリカではこれに対して新しく調整したワクチン(百日咳ワクチンとジフテリアの抗原量を減らした思春期・成人用のTdapワクチンを2006年から導入済み)

感染力のある期間:菌の排出は咳の始まりから約3週間続きます(有効な治療により短縮可能です)。
隔離期間:特徴的な咳が無くなるまで出席停止

<参考> ”アメリカ小児科学会が推奨する感染管理法

・患者との接触者でDTPワクチン1〜2回接種者は追加接種
・家族内や保育施設内の濃厚接触者はエリスロマイシン14日間内服
・医療従事者も接触後21日間は咳などの症状に注意し、咳が出始めたら培養検体採取後、抗菌薬内服を開始

定期接種はしか(麻疹)

原因:麻疹ウイルス
疫学:初春から夏にかけて流行します。
感染形式空気感染(ウイルス感染症で一番感染力が強い)&飛沫感染&接触感染
潜伏期間:10〜14日間、7〜18日(通常14日)
症状:不顕性感染はほとんどなく、ほぼ100%発症します。

カタル期(2〜4日):咳、鼻汁、発熱で始まり結膜炎を合併します・・・この時点では風邪と区別できません。
コプリック斑:カタル期後半から発疹期前半(合計2日間程度)に口内粘膜にみられる白いつぶつぶで、麻疹と診断する有力な根拠となる所見です。
発疹期(3〜4日):発熱4日目頃に一旦半日ほど解熱しますが、ほどなく再度高熱となり、発疹が顔・首のまわりに出現し全身へ広がり手足の先に到達するまで高熱が続きます。この間ひどい咳も続きます。
回復期(約5日):発疹が全身に広がりきると解熱しはじめ、発疹は褐色の色素沈着を残して消えていきます(これも麻疹の特徴)。

【特殊な臨床経過】

修飾麻疹 ・・・医師泣かせの病態
 麻疹に対する免疫が不十分ながらも体にある状態(※1)では典型的な症状が出ないことがあります(※2)。これを「修飾麻疹」と呼びますが、本人は軽症でも感染源になるので医師泣かせの病態です。

(※1)お母さんからもらった免疫が残っている乳児期前半、γ-グロブリン投与後、2次性ワクチン効果不全、等
(※2)潜伏期が長い、コプリック斑が見られない、発熱や発疹が軽い・・・何でもありなので診断困難!

重症出血性麻疹(内向型麻疹):
 細胞性免疫が低下している人に見られる病態です。発疹の急速な消退と呼吸困難、チアノーゼなどの一般状態の急速な悪化を認め、しばしばDIC(播種性血管内凝固症候群)を合併して死亡します。
異型麻疹不活化ワクチン(現行ワクチンは『生ワクチン』です)を接種したことのあるヒトが、麻疹に罹患したときに発症します。中和活性のない抗体による免疫反応とされています。4〜7日間持続する高熱、肺炎の合併、出血性発疹が出現します。
合併症
 麻疹に罹ると免疫力が低下し、元に戻るまでに治癒後1ヶ月くらいかかります。この間は予防接種は行わないという決まりがあります。
中耳炎(15%):細菌の二次感染により発症します。
角膜軟化症・角膜潰瘍・失明:細菌の二次感染による合併症で、ビタミンA欠乏児で出やすいとされています。
肺炎(6%):3種類あります。
ウイルス性肺炎:ウイルス増殖に対する免疫反応、成人麻疹では頻度高し。
巨細胞性肺炎:ウイルスの直接侵襲による・・・主として免疫不全者にみられ、予後不良です。
細菌性肺炎:細菌の二次感染によります。
脳炎(0.2%):3種類に分けられます・・・
麻疹後脳脊髄炎(発疹出現7〜14日後に発症):脳組織に対する事故免疫機序により発症し、ADEM(急性散在性脳脊髄炎)の病像をとります。死亡率20%、神経後遺症率30%。
麻疹封入体性脳炎(発疹出現1ヶ月後頃から発症):主として免疫不全者にみられ、麻疹ウイルスの直接侵襲により発症します。
亜急性硬化性全脳炎(↓)

亜急性硬化性全脳炎SSPE, subacute sclerosing panencephalitis)>
 麻疹に罹ったヒトに忘れた頃(数年後)襲いかかる合併症です。麻疹ウイルスによる中枢神経系の遅発性ウイルス感染症であり、そのメカニズムは、M蛋白が変異した麻疹ウイルスの中枢神経系への持続感染による脳組織の障害です。
 頻度は罹患者数万人に一人程度(2人/10万人)。麻疹ワクチン接種により<1人/100万人(自然感染の1/20未満)まで頻度が減ります。一方で、ワクチン接種後の発症者の脳から得られたウイルスの遺伝子解析ではすべて野外株であったとの報告もあります(つまりワクチンが下人ではないということ)。
 2歳未満の麻疹罹患が80%をい占め、1歳未満の軽症麻疹罹患が危険因子です。
 潜伏期間は多くは数年ですが、10年以上のこともあります。
 発症年齢は4〜12歳に多く、近年の日本の報告では平均10.3歳、男女比は1.4:1です。
 初発症状は周囲への無関心、おとなしくなった、友達と遊ばなくなったなどの正確面での変化、および学業不振、物忘れなど、非特異的症状であるため、不登校やサボりなどと誤解される場合があります。徐々に全身の機能が退行し、けいれんが出現し、ゆっくりと進行して死亡します。
 治療法は従来ありませんでしたが、近年イノシンプラノベスク、インターフェロン、リバビリンなどが試みられています。
 予後は不良です。発症から死亡までの期間は従来は2〜3年とされていましたが、近年の報告では平均6.4年(1〜12年)、死亡年齢は平均16.1歳(11〜25歳)とされています。

(院長のつぶやき)悲しく切ないSSPE
 健康に過ごしていた子どもが、どうも最近おかしい・・・勉強に身が入らず成績が落ちてきてお母さんは叱ってばかり・・・あれ?今までできたことができなくなってきた・・・おかしい・・・病院受診するも原因わからず・・・何人目かの小児科医から「このお子さんは昔『はしか』に罹ったことがありますか?」と聞かれて・・・「はい、乳児期に軽く罹りました」・・・その後検査を重ね、SSPEと確定・・・成績が落ちたのは病気のせいだった、叱ってごめんね・・・え?命までも奪って行くの? そんな・・・ああ、予防接種をしておけば・・・(どこの大学病院の小児科病棟でも伝え聞く悲しいエピソードです)。

治療:対症療法(根治療法・特効薬はありません)
予後:子どもが罹ると1/3〜1/2の患者さんが入院するほど重症な感染症です。
予防
・生ワクチンの予防接種:1歳時と小学校入学前の2回
・緊急接種:患者と接触後72時間以内ならワクチンによる予防が可能。接触後6日以内であればγ-グロブリン投与(ただし血液製剤なので使用の判断は慎重に)。
感染力のある期間:発疹出現3〜5日前から、発疹出現後数日間です。
隔離期間
学校保健法による出席停止期間は「解熱した後3日が経過するまで」または「主治医が感染の危険性がないと診断したとき」となっています。

2007年大学生を中心に麻疹が流行
 罹った若者達の中には、予防接種を幼児期に受けていたヒトも混じっています。つまり、ワクチンの効果は10年くらいしか持たないことが判明したのです。
 これを受けて厚生労働省は、2008年から5年間の期限付きで中学1年生と高校3年生時に2回目のワクチン接種を行うことにしました。

院長のつぶやき)麻疹は発症初期はふつうの風邪と区別がつきにくく診断は困難ですが、この時期が一番感染力が強く、まことに始末に悪い感染症です。
 合併症の辛さは他の感染症の比ではなく、勤務医時代に流行を経験しましたが、入院病棟に一晩中咳き込む声が響いていたイヤな記憶が残っています。

定期接種三日はしか(風疹)

はしかの軽症型ではなく別の病気です

原因:風疹ウイルス
疫学:流行は初冬から初夏に見られていたが、近年は散発するパターン。1994年の予防接種法改正後、全国的な流行は制圧されています。
感染形式:飛沫感染(麻疹や水痘より弱い)
潜伏期間:2〜3週間(14〜21日:ふつう16〜18日)
症状:不顕性感染は約30%
発熱(40〜60%)と同時に発疹が出現(顔・耳の後ろから始まり全身に広がる大きさ5mm程度の淡い赤い斑点)します。発疹は麻疹のように癒合することはなく、色素沈着も残しません。
 熱は高熱にはならず3日程度で解熱、咳・鼻汁もひどくなりません。悪寒や倦怠感の他、眼球結膜(白目)の軽度充血が見られます。
リンパ節腫張:耳介後部が特徴的で、後頭部・後頚部にも出現し、発熱・発疹に先行し2〜3週間持続します。

※ 大人が罹ると小児より重く、高熱や関節炎(指・手首・膝などの有痛性腫脹、1〜2週間で自然治癒)が多く見られる傾向があります。

先天性風疹症候群CRS
 妊娠初期(20週まで)の妊婦さんが風疹に罹るとお腹の中の赤ちゃんに影響が出ることがあり、CRSと呼びます。風疹ウイルスが胎盤を介して赤ちゃんに感染したのですね。生後に罹ったときの症状と異なり、重い後遺症(難聴、白内障、心臓病)に苦しめられることになります。

合併症
脳炎(1人/4000〜6000人):発疹出現後2〜7日で出現します。意識障害・けいれんの他、人格変化や自分の名前が書けないなどの症状をみることがあります。予後(回復)は比較的良好です。
血小板減少性至難病、ITP(1人2500〜3000人):発疹出現後2〜14日目に発症し、一般的には2〜8週で自然治癒しますが、γ-グロブリン大量療法やステロイド治療などを要することもあります。
・その他:溶血性貧血、肝障害、心筋炎、等。
治療:対症療法(根治療法・特効薬はない)
予後:3〜4日で回復(「三日はしか」と呼ばれる所以)
予防
・予防接種:1歳時と小学校入学前の2回

※ 女性はワクチン接種後2〜3ヶ月は避妊が必要です。

日本における風疹ワクチン接種の歴史

1977年〜:中学生女子に定期接種
1989〜1993年:12〜72ヶ月未満の小児にもMMRワクチンを接種
1994年:12〜90ヶ月未満の男女幼児に定期接種
2006年:MRワクチンを12〜23ヶ月に1回、就学前の1年間に2回目を接種。
※ 先進国ではMMRワクチンの2回接種が主流です

感染力のある期間:発疹出現数日前から出現後7日(発疹出現前2〜3日から出現後5日程度)

※ CRS児は例外で、数ヶ月以上鼻咽腔や尿にウイルスを排泄することがあります。

隔離期間:発疹が消失するまで。

定期接種日本脳炎

原因:日本脳炎ウイルス
疫学
・世界の中でアジアにのみ発生し、東アジア(日本、韓国、中国)、東南アジア全域、インド、パキスタンなどに広く分布しています。日本以外のアジア地域では現在も流行しており、年間4〜5万人発生しています(過去の病気ではありません)。
・日本では1950年代には子どもと高齢者を中心に、年間5000例以上の患者発生がみられました。1992年以降、日本での発生は年間10名未満です。減少の理由として、ワクチン接種、蚊の減少、豚舎の大規模集約化、エアコンの普及など、ウイルスとヒトとの接触の減少の関与が考えられています。
・日本では6〜9月に未感染ブタの間で感染が広がり、その血液を吸ったコガタアカイエカの中腸で増殖し、吸血時に唾液を介してヒトに感染します。
感染形式:蚊に刺されて感染(ヒトからヒトへはうつりません
潜伏期間:6〜16日
症状:いくつかの方に分類され、重症タイプの脳炎症状が出るのは1/1000(300〜3000)人程度です。

脳炎
・急な高熱、頭痛、悪寒、食欲低下、悪心・嘔吐、めまい、傾眠(ウトウトしがち)等の症状が2〜4日続きます。
・その後、項部硬直(首が痛くて動かせなくなること)などの随膜刺激症状、羞明(まぶしがる)、味覚異常、意識障害、けいれんへと進行します。
・その他、無気力顔貌、筋硬直、不随意運動(体の一部が勝手に動く)、振戦などの基底核症状、麻痺、病的反射の出現などがみられます。
・症状の速い進行、コントロール不良のけいれん重積、呼吸不全、発熱の遷延、錐体外路症状、病的反射などは予後不良兆候です。致死的な例はふつう発症5日以内に死亡し、1週間以上経過すると治癒過程に入ります。
・亜急性期から回復期にかけて筋力低下、萎縮、強直、麻痺などに対し理学療法などのリハビリテーションが必要になります。

□ 髄膜炎:自然治癒します。
□ 軽度の熱性疾患
不顕性感染(感染しても症状が出ないで終わること):これがほとんど。
合併症
治療:対症療法(根治療法・特効薬はありません)
予後:(脳炎発症例)死亡率17(5〜30)%、後遺症48%
予防:不活化ワクチンを3回接種・・・有効率81〜91%

※ 以前は4回(14歳以上で追加接種)が行われていましたが、2005年に廃止されました。

※ 「日本脳炎ワクチン積極的勧奨停止問題
 2005年5月、ADEM(急性散在性脳脊髄炎)の重症者がワクチンの副反応として認定され、厚生労働省は緊急に上記措置をとりました。
 そして2010年5月に他の方法で作成したワクチンの登場を機に解除。
 空白の5年間に、小児の日本脳炎患者は3例発生しました。

感染力のある期間:ヒトからヒトへの感染はありません。
隔離期間:隔離の必要はありません。

※ 映画「家宅の人」で日本脳炎に罹患した子どもの話が出てきました。

定期接種ポリオ(小児麻痺、急性灰白髄炎)

原因:ポリオウイルス
疫学:日本での患者は1980年が最後で発生していません。

★ 世界の状況:南北アメリカ大陸では1994年に、西太平洋地域では2000年に、ヨーロッパ大陸では2002年にポリオ根絶宣言が行われました。近年の流行地と考えられているのはインド北部、パキスタンなど6カ国です。

感染形式
潜伏期間
症状
・90%は「不顕性感染」・・・感染しても症状(下痢・嘔吐・軽い咳)が出るのは10%のみ。
・1%に髄膜炎発症、0.1%に神経炎(急性灰白髄炎)が起きて重症化し、死亡例や後遺症として麻痺が残ります。
合併症
治療:対症療法(根治療法・特効薬はない)
予後
予防:生ワクチンを2回経口接種(外国では不活化ワクチンが普及しつつあります)、集団接種
隔離期間

「集団接種」にはワケがある!
 飲む生ワクチンは弱毒化したウイルスが腸の中で増殖して免疫がつくようになるのですが、その増殖の過程で変異し毒性を取り戻してしまうことがまれながらあるのです。その頻度は250万〜300万接種で1例程度。
 それがヒトからヒトにうつると大変な事態になるので、集団接種で一斉に免疫をつけて、もし強毒性ウイルスが発生した場合も被害を極力少なく抑える、という目的がそこにあるのですね。
 海外ではこのようなリスクを避けるために「不活化ワクチン」を開発して導入しています。日本も現在検討中で、将来は4種混合ワクチン(現在のDPT+不活化ポリオ・ワクチン)となる可能性もあります。

ポリオ大流行とワクチン緊急輸入の記憶
 1960年(昭和35年)に日本で大流行し、全国で5000人の患者が報告されました。流行を阻止するために、時の厚生大臣の英断でポリオのなまワクチンをソ連(現在のロシア)とカナダから緊急輸入し、全国で一斉に予防接種を行いました。1ヶ月で接種を終了したそうです。そして翌年にはポリオ患者は激減した歴史があります。
 ・・・この話を知ると、2009年の後手後手に回った新型インフルエンザワクチン行政が寂しく見えませんか?

定期接種結核

原因:結核菌
疫学:かつて日本の国民病と云われ、1951年に結核予防法が制定された当時は、20歳になるまでに国民の半分以上が結核に感染しました。現在では20歳までに感染する確率は1%以下(人口10万人あたり25人)ですが、先進国の中では最悪発生で、WHO分類では日本は「中蔓延国」と不名誉な位置に甘んじている状況です。
感染形式空気感染(感染源は排菌している患者のみ)
潜伏期間:1〜6ヶ月
症状:乳幼児型と成人型に分けられます。
① 乳幼児型(1次結核)
・結核性髄膜炎:頭痛、嘔吐、発熱(高熱の持続)、意識障害・・・死亡率・後遺症率共に高い
・粟粒結核:
② 成人型(二次結核)
・肺結核:咳、微熱の遷延、体重減少
検査
・ツベルクリン反応・・・陽性なら感染の可能性大であるが欠点(BCG接種例でも陽性になる、活動性かどうか判断不能)あり
クォンティフェロン検査・・・活動性結核のみを検出可能、BCG接種の有無は問わない、非結核性抗酸菌症は陰性に出る、など、ツベルクリン反応の欠点をクリアした新しい検査。
合併症
治療
・抗結核薬・・・イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、ストレプトマイシン(SM)、エタンブトール(EB)、ピラジナミド(PZA)など。

※ 小児は排菌者と接触歴のあるツベルクリン反応(今後はクォンティフェロン検査)陽性者には予防治療(イソニアジド6ヶ月間)をすることがあります。

予後
予防:予防接種(BCG:牛の結核菌の毒性を弱くしたもの)を1回接種・・・重症結核(髄膜炎、粟粒結核)予防効果は8割ありますが、しかし肺結核の予防効果は5割程度と高くありません。

※ 以前は乳児期、小学校1年生時、中学1年生時にツベルクリン検査を行い、陰性の場合は追加接種をしていましたが、2005年からツベルクリン検査を省略し、生後0〜6ヶ月未満の児に1回接種する方法に変更されました。ちなみにアメリカではBCGは行われていません。

コッホ現象:結核に感染しているヒトにBCGを接種すると、数日〜1週間後に接種部位が腫れたり膿を持つようになる現象。健常者では接種後1〜2ヶ月頃は腫れて、3ヶ月後に目立たなくなるという経過を辿ります。

隔離期間:排菌がなくなり、医師が伝染の恐れなしと判断するまで。

定期接種破傷風

※ 参考HP:「意外と知らない感染症ー破傷風ー」(都立駒込病院 菅沼明彦先生)

原因:破傷風菌 Clostridium tetani
疫学:日本では年間100例程度発生
感染形式:ヒトからヒトへは感染せず、土の中などにいてキズから侵入して感染します(野外での事故、古いクギを踏み抜いた、などは危険)
潜伏期間:2日〜数ヶ月(ふつう14日以内に症状が出ることが多い)
症状:毒素による筋肉のけいれんが3〜4週間続き、治るまでに数ヶ月かかります。極期には音や光の刺激により全身けいれんが誘発され、深刻な合併症(嚥下困難、嚥下性肺炎)も起こし死に至ることもあります。
・開口障害(lockjaw):咀嚼筋のけいれんによります
・痙笑(ひきつり笑い、risusu sardonicus)
・後弓反張(opisthotonus):背部筋肉のけいれんによります

新生児破傷風
 生後3〜14日で現れ、元気にしていた乳児が突然哺乳不良となります。次いでけいれんが起こり、特別な治療が行われなければ死亡率は95%。開発途上国での頻度が高く、出生時の臍帯切断時の不衛生な処理により感染します。
※ 参考HP:「新生児破傷風の1例」(IASR)

合併症
治療:抗毒素
予後
予防:予防接種(DPTやDTの「T」)を定期接種として5回+任意の追加接種(10年くらいで免疫が無くなってしまうので)。日本に導入されたのは1968年頃。
隔離期間

(院長のつぶやき)昔の映画で破傷風を扱ったものを観たことがあります(題名は忘れました)。日の光でさえけいれんの誘発因子となるので、暗い病室の中で1ヶ月けいれん発作に怯えながら過ごす患者さん・・・忘れられない光景です。

定期接種ジフテリア

原因:ジフテリア菌
疫学:日本ではまれ・・・1999〜2005年では3人だけ(しかし過去には流行してました・・・1945年に8万6000人の患者が発生し、その約10%が死亡)

※ ソ連崩壊後のロシアではワクチン接種率が低下し流行したことがあります(1991〜1995年に死者急増)。

感染形式:飛沫感染、接触感染
感染期間:2〜3日間(適切な抗菌薬が投与された場合)

※ 抗菌薬なしの場合は約半数が2週間以内、80%が4週間以内、慢性保菌者では6ヶ月間排菌することがあります。

潜伏期間:2〜5日(以上のこともある)
症状:ジフテリア菌が産生する毒素により症状が起こります
・発熱・咽頭痛・嚥下痛(ものを飲み込むときの痛み)→ 喉の奥(喉頭)に炎症が進むと嗄声・犬吠様咳嗽〜呼吸困難(真性クループ
・喉の奥に白い膜(偽膜)、首のまわりのリンパ節の腫れ(頚部リンパ節腫脹)
合併症
心筋炎:早期(1-2週)および回復期(4-6週)に現れ突然死の原因になります。
・末梢神経炎:神経麻痺を起こすが予後は比較的良好です。
治療:抗毒素療法で毒素を中和します。

※ 抗毒素療法によるショックの可能性があり、十分な準備が必要です。
※ 抗生物質は菌を殺しても毒素には効かないので、効果は期待できません。

予後死亡率5-10%
予防:予防接種(DPTの「D」)を標準法では5回
隔離期間:学校伝染病に指定されており、治癒するまで出席停止。

(院長のつぶやき)私はこの病気の診療経験がありません。すっかり過去の病気と思い込んでいましたが、ソビエト崩壊後に予防接種率が低下し流行したとのニュースを聞いて驚いた記憶があります。