くすりに関するQ&A集

(初掲載:2011年1月)

 病院・医院で処方される子どものくすりに関する素朴な疑問にお答えします。

Q. 乳幼児に薬を飲ませるコツを教えてください。

赤ちゃんの場合

人工栄養(粉ミルク)児:哺乳直前に20ml程度の湯冷ましに溶いてほ乳瓶の乳首部分に入れて飲ませ、飲みきった後にミルク本体を与えましょう。
母乳栄養児:粉薬は小さい器か手のひらにとり、少量の水分を加えてペースト状とし、これをお母さんの人差し指に付け、赤ちゃんの口の中(ほっぺの内側・上顎の奥の方)に塗りつけ、直後に母乳を飲ませましょう。舌の上に乗せると嫌がって吐き出しがちです。
 シロップの場合は、スポイトで少しずつ流し込んで飲ませましょう。

幼児の場合

・粉薬はスプーンに乗せてパクリと食べさせ、水を飲ませます(基本はジュースではなく水)。
ストローを使用:薬の味が口に広がりません。
・味をごまかす方法:次項の「苦い薬を飲ませるコツ」を参照。ただし、主食(ミルクなど)に混ぜるのはタブーです。嫌いになったら困りますので。
・「飲めなくても起こらない、飲めたら必ずほめる」を原則としましょう。薬を飲んだらシールを貼って、枚数が集まればご褒美をあげるなどの動機づけも有効です。
・薬をなぜ飲むのか繰り返し繰り返し説明しましょう。お母さんの真剣な表情から、いつかはわかってくれます。

 薬剤師の先生が子どもをよ〜く観察し、薬の吐き出し方でなぜ飲めないのか分析し対策を立てる方法を提案しています;

吐き出し方による傾向と対策

吐き出し方 口の端からダラダラ出してくる 口からプーッまたはペッと吐き出す 一度飲み込んでからオエッと吐き出す
傾向 液体をゴックンと飲み込めないために、口の橋から出てきてしまう とにかく薬が嫌いで飲みたくない 苦味が残っているなどで気持ちが悪くなって吐いてしまう
対策 小麦粉、粉末クリーム、きな粉などを少量混ぜて、団子にして食べさせる なぜ嫌いになったかを確かめ、対策を考える(以前に嫌な思いをして嫌いになったケースが多い) 苦味が口に残らないように、ゼリーやオブラートで包んで飲ませる。また、後味を残さないように飴やチョコレートを舐めさせる。

(三重県亀山市「スズラン調剤薬局」の上荷裕広氏による)

Q. クラリスやジスロマックの苦味をごまかす方法はありますか?

 いろんな裏技があります(苦い薬共通)。

(その1)甘い味の飲み物と一緒に飲ませる。

例:アイスクリーム、チョコレート/パンに塗るチョコクリーム、プリン、ジャム、単シロップなど。乳児期以降なら牛乳、コーヒー牛乳もお勧めです。
※ 「甘いものはクセになるのであげたくない」というお母さんには、バナナがお勧め。つぶして柔らかくしたバナナに薬を挟みこむようにしてスプーンですくって食べさせてみてください。他にはのりの佃煮、ふりかけ、インスタント味噌汁やスープを濃いめに作ったもの、などいかがでしょうか。
ウーロン茶麦茶とまぜると味が無くなって飲みやすくなります(山田真先生)

ジスロマック小児用細粒を飲むときの注意事項
 この薬は元々のにが味をごまかすためにコーティングしてあるので、水または牛乳などの中性飲料で速やかに服用するのがベター。酸性飲料(酸っぱい味:オレンジジュース、乳酸菌飲料、スポーツ飲料など)で服用したり、嚙んで服用したり、つぶしたりした場合はせっかくのコーティングがとれて苦味が出るので避けましょう。

(その2)服薬補助ゼリー(商品名”おくすり飲めたね”等)を利用する。

 「ゼリーに薬を混ぜ込むのではなく、ゼリーに薬を乗せて、その上からゼリーをかぶせる」のがコツ。
 にがい味にはチョコレート味がベスト。酸味のあるフルーツ味は合いません。
※ 私のお勧めは、漢方薬製造メーカーの小太郎製薬が販売している「チョコゼリー」です。なんたって苦い漢方薬を飲ませるために開発されたシロモノです。作り方がゼリーより簡単でよいと当院スタッフに評判です。・・・2012年現在、発売が終了したそうです。残念

(その3)オブラートを利用する。

 粉薬をオブラートに包んで飲むのですが、そのままでは口の中にくっついてしまいます。表面を水でぬらしてとろみを出し、ゼリーのように飲み込ませましょう。あるいはオブラートに包んで口を閉じ、水を入れたコップにポトンと落とし、そのままゴクゴク飲ませるのも良し。
 薬の量が多いときは何回かに分けて作った方がのど越しがよく成功率がアップします。

(注意!)酸味は苦味を強調します。

 乳製品やスポーツドリンクを使いたくなるところですが、前述のように苦い薬と酸味のある飲料は合いません!
(例)オレンジジュース、リンゴジュース、スポーツドリンク、ヨーグルトなど

Q. 服用時間設定(食前、食後、食間)は守らないといけませんか?

 薬の種類にもよりますが、一つの目安程度に考えましょう。

「1日3回、食後に内服」という設定は”飲み忘れを防ぐ” "胃が荒れるのを防ぐ"という目的がありますが、医学的には下記のような理由もあります;

① 薬の代謝・動態より

(例1)胃薬(食前・食間)・・・ 直接胃粘膜に作用するので胃内容物がないときの方が効きます。食後服用では食物中の蛋白と結合して効果が弱くなる可能性があります。
(例2)乳酸菌製剤(食後)・・・ ビオフェルミンやラックBなどは胃酸により失活するので胃酸が薄まる食後の投与が好ましいとされています。なお、酪酸菌製剤であるミヤBMは酸性環境でも失活しない(有芽胞菌なので)ため、食事と関係なく服用可能です。

② 効果発現時間を考慮

(例1)鎮吐剤(食前)・・・ ナウゼリンなどは消化管の運動を促進して胃内容物を速く小腸に送る作用があり、食前内服の方が効果が期待できます。

③ 副作用防止目的

(例1)非ステロイド系解熱鎮痛剤(食後)・・・ ロキソニン、ボルタレンなど胃が荒れやすい薬剤は、胃内容物の存在により薬剤が直接胃粘膜に接触しにくくなるので消化器障害を防止します。
(例2)漢方薬(食前、食間)・・・ 胃粘膜障害が少なく作用が穏やかとされているため食後に服用する必要はありません。また、独特な苦味やにおいにより食物と一緒に服用すると気持ち悪くなることがあります。

(院長のつぶやき)漢方薬でも「麻黄」という生薬が入ったエキス剤は体力がない人では胃がもたれることがあります。この場合は他の薬に変えたり、軽ければ食後内服に時間をずらすことで対応します。
 また、真面目なお母さんは「”食後”と書いてあるから、食欲がなくて食べられないときは飲んではいけないと思い込んで薬を全く与えなかった」という笑えない話も経験しています。子どもの風邪薬の関してはより柔軟に「飲めるときが服用のタイミング」くらいに考えましょう。

Q. 1日3回の薬は、最低何時間飲む間隔をあければよいですか?

 一般に、4〜6時間あければ問題ありません。

 それ以上間隔を短くすると、効果が重なって効き過ぎてしまう可能性があります(特に解熱剤などは注意!)。
 「1日2回」という設定の薬は、最低8時間あけるようにしましょう。

Q. お腹がいっぱいの時は薬を飲んでくれません。食前ではダメ?

 子どもに処方される一般の風邪薬は、食前に飲んでも問題ありません。

 風邪を引いた乳幼児は、食欲がなく食事をしなかったり、哺乳後すぐに眠ってしまうことも多いのがふつうです。食後にしか飲めない薬は限られているので、このような場合は食前でもかまいません。
 前項に記載したように、整腸剤(乳酸菌製剤)は食後の方が効果が期待できます。

Q. 薬を飲んだ後に吐いたらどうすればよいですか?

 30分以内ならもう一度飲ませましょう。

 飲んだ薬は胃の中で溶けますが吸収はされません。胃を通り過ぎて小腸に行って初めて吸収されます。食べたり飲んだりしたものが小腸にたどり着くまで、30分程度かかるとされています。

Q. 解熱剤の坐薬を入れた後にウンチをしてしまったら?

 坐薬は挿入後10分程度で吸収がはじまりますので、それ以内なら30分様子を見た後に再挿入、それ以降なら必要ありません。

 アンヒバ坐薬(一般名:アセトアミノフェン)は肛門に挿入後30分以内に解熱効果が発揮されます。挿入直後にそのままの形で出てきたときは再挿入してください。数分〜10分以内の場合は、30分程度様子を見て熱が下がる気配がないなら再度挿入しましょう。
※ アンヒバ坐薬が挿入後3分で出てきてしまったときでも、全量吸収された場合の血中濃度の4割程度まで上昇したという報告があります。
解熱剤の効果持続時間;アンヒバ坐薬では、投薬後30分で効果が現れ始め、投薬後2〜4時間で最大の効果を呈し、投薬後7時間で元の体温に戻ります。

 薬剤師さんが考案した<失敗しらずの坐薬の挿入法

① 坐薬の先端を、肛門内へ挿入しやすいよう手で温めたり水で濡らしたりして柔らかくする。
② 子どもの両足を持ち上げて、肛門へ挿入する。この際、以下に直腸の奥に坐薬を押し込むかがポイント。指の第二関節くらいまで入れて10秒間ほど指を抜かずに止めておく。指を挿入するのに抵抗があれば、坐薬挿入後肛門のしわを何度ももんで奥に押し込み、10秒間ほど指やティッシュで肛門を押さえる。
③ 手を離して肛門を確認する。肛門の奥に坐薬の末端が見えているようだと途中排出しやすいので再度押し込む。
④ 挿入後すぐ動いたりすると出やすいので、保護者は足や腕で子どもの股間を押さえながら5分間ほど抱っこする。
⑤ その後、オムツや下着の股間部分を脇から除いて坐薬が出ていないことを再確認して終了。

(東京都中央区「チトセ薬局」の田中嘉一氏による)

(院長のつぶやき)「肛門に指の第二関節まで入れて10秒間」は一般のお父さん・お母さんには無理では無いでしょうか・・・。

他の坐薬の場合
ナウゼリン坐薬:効果発現までに約1時間かかるので、挿入後1時間以内に形が残った状態で排出された場合は再挿入を考えましょう。
ダイアップ坐薬:有効血中濃度に達するまでに要する時間は15〜30分程度。挿入後30分以内に排出された場合を除き再挿入は不要です。なお、ダイアップ坐薬と解熱剤を両方使用したいときは、ダイアップを先に入れ、その30分後にアンヒバ坐薬を使用しましょう(同時に入れるとダイアップの効果が弱くなります)。

※ ちょっと変わった意見(山田真先生);「便と一緒に出したのは子どもが薬を拒否する態度を表明したんだ」くらいに考えて、それ以上は坐薬を入れるのはやめましょう。くすりを吐いてしまった場合も同じように考えましょう。

(関連質問)アンヒバ坐薬が「1回1/2個使用」で処方されたのですが、残りの1/2個は後で使ってもいいですか?

 細菌汚染などのリスクを考えると基本的には破棄すべきですが・・・1日以内なら冷蔵庫保存を条件に使用しても問題ないでしょう。

解熱剤の意味は?
 解熱剤は病気を治す薬ではありません。「熱を下げることによりつらさを和らげる」薬です。ヒトの体は病原体の侵入に対して熱を上げることにより退治しようとします(高熱殺菌のイメージ)が、自分もつらくなり体力を消耗します。その際に”休憩を入れる”のが解熱剤と考えてください。熱が下がると体が楽になり食事が摂れて熟睡できますね。

Q. 間違って兄の解熱剤を飲ませてしまいました。どうすればよいですか?

アセトアミノフェン(商品名:アンヒバ坐薬、カロナール、コカール)は平熱より下げることはありませんので、少し量が多いくらいでは心配いりません。

 昔使っていたポンタールシロップボルタレン坐薬は強力で、通常量を使っていても熱が下がりすぎて救急外来を受診する患者さんをたまに経験しましたが、現在はインフルエンザ脳症の重症化因子と考えられており、小児科医は使わないようになりました。
 小児科で処方する解熱剤はふつうアセトアミノフェン(商品例:アンヒバ坐薬)のみです(この薬にアレルギー反応がある場合のみイブプロフェンが使われます)。

Q. 「細粒」と「ドライシロップ」は何が違うのですか?

「細粒」はそのまま服用し、「ドライシロップ」はそのままでも服用可能、水に溶かしても服用可能な剤型です。

 「細粒」を水に溶かしてから服用するとコーティングが溶けて苦味が出たり、含量が低下したりする可能性があります。

Q. 錠剤やカプセルは何歳から飲めますか?

 個人差がありますが、錠剤は小さいものなら5歳頃から、カプセルは小さいものなら7歳頃からが目安です。

小児用の錠剤・カプセル剤が用意されているくすり
・抗菌薬:クラリス、ジスロマック、バクシダール
・抗アレルギー剤:キプレスチュアブル
・咳止め:フスタゾール
・抗てんかん薬:ラミクタール

Q. 薬をお茶で飲んではいけませんか?

 基本は水・湯冷ましです。

 水が適している理由は、飲食物と薬の相互作用や配合変化の問題を取り除く必要があるためです。
 「お茶」と薬の相互作用で問題となるのは「タンニン」と「カフェイン」です。

① タンニン

 昔は「鉄剤とお茶を一緒に飲むと効果が落ちる」とされてきましたが、現在は問題ないことがわかっています。ただし、濃いお茶で鉄剤を飲むと胃がもたれることがあり避けた方が無難でしょう。

② カフェイン

 気管支拡張剤であるテオフィリン(製品名:テオドール、テオロングなど)と併用すると、中枢神経興奮作用が増強され、頭痛などが起きる可能性があります。

(院長のつぶやき)喘息発作の際にテオドールを処方すると、お茶とは関係なく、興奮する患者さんが希に出てきます。「ゼーゼーはよくなったけど、一晩中ハイテンションで眠れなかった」と苦情を訴える方が年に一人程度いらっしゃいます。
 なお、テオフィリンという薬の起源はコーヒーのカフェインです。

他に注意すべき飲み物
牛乳:ニューキノロン系抗菌薬の一部、ビスホスホネート系骨吸収抑制剤→ 消化管からの吸収が低下する可能性。胃で溶けず腸で溶けるようにコーティングされた腸溶性製剤(セフェム系抗菌薬など)も効果が低下する可能性有り。
グレープフルーツジュース:成分のフラノクマリン酸は薬物代謝酵素(CYP3A4)の阻害物質なので、この代謝酵素が働くタイプの薬剤の効果を増強する可能性があります。
酸味のあるジュース:オレンジジュースやスポーツドリンクなどの酸性飲料は、ドライシロップ製剤のコーティングをはがし苦味が増す原因となります。酸味のあるおくすりゼリーも同様です。

Q. 薬と混ぜるとよくない食品を教えてください。

 当院でよく処方する薬と合わない食品を表にしました;


避ける食品 理由
アドソルビン

オレンジ、リンゴ

苦くなる

クラリス

オレンジ、リンゴ、乳酸菌飲料、グレープフルーツ、スポーツ飲料、ヨーグルト

苦くなる

ジスロマック オレンジ、リンゴ、スポーツ飲料、ヨーグルト 苦くなる
タミフル リンゴ、乳酸菌飲料

苦くなる

ムコダイン オレンジ、乳酸菌飲料

酸味が強くなる

メイアクト オレンジ

苦くなる

ユナシン

オレンジ、リンゴ、乳酸菌飲料、スポーツ飲料、ヨーグルト
苦くなる
リカマイシン オレンジ、リンゴ、乳酸菌飲料、スポーツ飲料、ヨーグルト
苦くなる

Q. くすりの賞味期限(有効期限・使用期限)はどのくらいですか?

 一般に「製造後3年」とされています(ただし未開封の場合)。

 当院では以下のように説明しています;

処方された薬の使用期限>(原則として飲み残しは破棄すべし)
・錠剤は1年(花粉症など、診断・症状が決まっている場合に限る)
・粉薬は半年(ただし湿気で固まったものはダメ)
・風邪薬のシロップはその時の風邪だけに使用し、保存して次の風邪の時使用するのはダメ

Q. 薬の保管方法を教えてください。

 剤型により異なります。保管の際に問題となるのは温度(成分の分解・変質)・湿気(カビ・変質)・(分解)です。剤型別に整理すると・・・

錠剤・カプセル剤・散剤(分包品):室温(1〜30℃)保存。夏の車の中は40℃以上になることがあるので放置してはいけない。

水剤・シロップ剤:水剤は細菌感染の影響を受けやすいので低温(冷蔵庫)で保存する。凍らせると薬の成分が変わってしまう可能性があるので、冷凍庫は禁。

散剤(薬局で分割包装):室温保存。包装紙は防湿性があまり高くない。直射日光や湿気対策として乾燥剤を入れた缶や密閉容器に入れ、陽の当たらない場所に保管するのが望ましい。冷蔵庫に保存するとかえって湿気を帯びやすくなるので勧められない。

軟膏:室温保存。高温では溶けて内部で偏りが出てしまう。

坐薬:冷蔵庫保存。体温で溶ける坐薬は30℃で溶けるよう作られている。一度溶けてしまった坐薬の使用は避けるべし。

スプレー・ローション:アルコールやガスを含むものが多く、火気や高温を避けるべし。

点眼薬:開封前は室温保存、開封後は細菌汚染の危険を考慮し、直射日光を避けて涼しいところに保管する。リザベン点眼液以外は冷蔵庫も可。

Q. 飲み忘れを防止するコツを教えてください。

 生活習慣に組み込みましょう。

 忙しいとついつい飲ませるのを忘れがち。まず、生活習慣を規則正しく整え、歯磨きの時に薬を飲ませるなど、工夫をしましょう。

Q. 薬を飲んだ後のオシッコが赤くなりました。大丈夫?

セフゾン

 という抗生物質と鉄添加製品(粉ミルク、経腸栄養剤)を併用すると、便(や尿)が赤味〜ピンク色を帯びることがあります。体に害はなく、効果にも大きな影響はありません(10〜20%低下するという報告有り)が、気になるようでしたら鉄剤(インクレミン)は3時間以上間隔を開けて服用しましょう。

【アスベリン】

 よく使われる咳止めです。飲むと尿が赤くなることがあります。こちらも副作用というわけではないので服用を続けてかまいません。

Q. 薬で便の色が変わることがありますか?

 あります。

 便の色は健康のバロメーターであり、食生活でも変化を認めます。乳児ではしばしば胆汁色素のために緑色便がみられたり、ロタウイルス性胃腸炎では白色便になることがあります。また、肉食が多ければ黒褐色で臭いがきつくなり、植物性の食べ物が多いと黄色便になります。
 薬の影響で便の色が変化する例を挙げます;

色調

商品名

セレニカR、デパケンR
黄色 サントニン
黄褐色

アローゼン、アジャストA、大黄

黒色 インクレミン、フェロミア、フェロ・グラデュメット、スローフィー
赤褐色 セフゾン
橙赤色 リファジン、リマクタン

Q. 鼻水止めやアレルギーの薬で"けいれん"が起きやすくなるって本当?

 一部、本当です。

 抗ヒスタミン作用のある薬(鼻水止め、一部の抗アレルギー薬)はけいれんを起こしやすくしたり、けいれん重積を起こすという報告があります。

 脳の中でヒスタミンという物質はけいれん・てんかんの抑制に関係しており、これをブロックする抗ヒスタミン薬はこの抑制を解除することになるのです。また鼻水止めは抗ヒスタミン作用の他にも抗コリン作用などによりけいれんを起こしやすくする作用があります。近年、脳へ移行しにくい抗ヒスタミン剤が開発され、これらの薬は動物実験でけいれんに関与しないことがわかってきました。

 個別の薬剤に関する情報を列挙します;

・市販の風邪薬(カルノキサミンジメチンデンなど)・・・ 熱性けいれんを増加させる。
ザジテン(抗アレルギー薬)・・・ 熱性けいれんの持続時間が長くなる。動物実験でもてんかん発症を促進するという報告有り。
セルテクト(抗アレルギー薬)・・・ ザジテンとともに、West症候群というてんかんを発症した報告例有り。

(院長のつぶやき)小児科専門医は熱性けいれん経験者にはザジテン、ペリアクチンなど抗ヒスタミン薬を処方しなくなってきています。このような情報は小児科専門医にしか認知されていませんので、内科小児科・耳鼻科などでは上記薬剤が処方され続けています。
 正式に添付文書に記載されているのはザジテンのみ(ペリアクチン、セルテクトは未記載)。抜粋しますと;
慎重投与(次の患者には慎重に投与すること):てんかん等の痙攣性疾患、又はこれらの既往歴のある患者〔痙攣閾値を低下させることがある。〕

Q. 目薬を使うときの注意点を教えてください。

・点眼時に内側の目尻を3分程度圧迫 ・・・目から鼻へ薬が流れて全身へ移行するのを防ぎます。
・点眼は1滴で十分 ・・・まぶたの中にたまる量は1滴分のみ、あふれて皮膚に接触するとかぶれる可能性が発生します。
・複数の点眼液を併用する際は、最低5分あけましょう。
・点眼を嫌がり目を開けてくれない幼児には、頭を固定した状態で目頭付近に点眼します。まばたきすると薬が目の中へ入っていきます。また、下まぶたを反転させた状態で点眼する方法もあります。
・泣いているときに点眼しても涙で流れてしまいますので避けてください。
などなど。

なお、目薬がしみる頻度は・・・

・抗菌薬一般:0.1%
・インタール点眼薬:3.1%
・リボスチン点眼薬:1.9%
・リンデロン点眼薬:子どもの多くが痛みを訴えます

いずれも一過性です。薬自身の性質と、pH(酸性・アルカリ性)が関係するようです。

Q. 軟膏の塗り方の注意点を教えてください。

基本は「こすらず、薄く」

 ついつい力を入れてすり込んでしまいがちですが、かえって皮膚に刺激を与えることになりかねません。軟膏なら少しテカテカする程度、クリームなら白い色が消える程度が適当です。
 ただし例外あり。筋肉痛などに処方される「非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)」はすり込むように塗った方が効果的です。また、火傷やケガの傷に対して保護剤として亜鉛華軟膏などの外用剤を用いる場合には少し厚めに塗った方がよいです。

具体的にはどれくらいの量をどれくらいの範囲に塗るの?

 軟膏チューブ(5g)から5mm出すと、直径5cmくらいの円の範囲に塗るのが目安です。
 また、人差し指の先から第一関節までチューブから出した量は手のひら2枚分になるという目安もあります(Finger Tip Unit, FTU)。

★ アトピー性皮膚炎患者に軟膏を全身に塗る場合、どれくらい必要?
 大人では1回約12.5g、1日2回塗ると約25g(軟膏チューブ5本!)となります。

重ね塗りの”塗る順番”は皮膚科医により意見が分かれる?

 ステロイド剤と保湿剤など、同じ部位に複数の軟膏が処方された場合、どちらを先に塗るか悩みます。
 実は皮膚科医の間でも意見が分かれるそうです(困りますねえ)。
 ステロイドを先に塗ることでしっかり吸収させようとする医師が半分で、他は保湿剤を先にする、時間差をつけて塗るなどの意見もあります。
 私は”強さが弱いモノから塗る、つまりステロイド軟膏は最後”派です。理由は「ステロイド軟膏を先に塗った部位に保湿剤を重ねて塗ることにより、ステロイド剤が患部以外の健康皮膚に広がってしまい副作用の原因になりかねない」からです。ステロイド軟膏が複数種類処方されたときは、”弱い → 強い”順番が基本です。

軟膏とクリームはどう使い分けますか?

 ”軟膏”は乾燥〜ジクジク病変まで広く適用可能です。一方の”クリーム”はジクジク病変には合わないとされています。刺激感が出てジンジン痛むことがあるのです。

二種類以上の軟膏が混合された外用剤の使用期限はどれくらい?

 よくステロイド軟膏は他の軟膏(保湿剤など)で薄めて容器で処方されることがあります。その際は、基本的に「使用期限は3ヶ月」と考えてください。容器に処方された日付を書いておくと確認しやすいですね。また、軟膏が分離していたら使わないで破棄してください。

軟膏を塗った上から化粧をしてもよいですか?

 化粧は皮膚に刺激を与え、薬物との化学反応の可能性も考えられるため基本的には好ましくありません。患部を外して口紅、アイライン程度にとどめましょう。

【くすり関連記事】

 くすりに関する記事を拾い読み。

■ 4月から義務化,「くすり教育」で中学生の理解深まるか(2012年3月2日:MTPro)

筑波大附属中でモデル授業

 2012年度の新学期を迎える4月から,中学生の授業で「くすり教育」が義務化される。新学習指導要領の完全施行を受けてのもので,3年生の保健体育で1〜2時間を割き,医薬品の仕組みからセルフメディケーション,薬局と薬店の違いなどを教育する。この「くすり教育」を全国に先駆けて行っている筑波大学附属中学では,保健体育科教諭の小山浩氏が試行錯誤したオリジナルの授業を実施。わずかな授業時間でどこまで理解を深められるか疑問だが,生徒たちからは「なぜ水以外で飲んではいけないかが分かった」など,薬に対する意識が変わったとする声が聞かれた。

改正薬事法で教育が必要に

 文部科学省の新学習指導要領で「くすり教育」が追加された背景には,厚生労働省の改正薬事法施行がある。同法によってコンビニエンスストアなどで医薬品販売が可能になったが,便利になった半面,医薬品が手軽に入手できるようにもなった。そのため,義務教育の段階から医薬品に対する教育を行おうというのが,「くすり教育」の目的だ。
 既に小学校,中学校,高校で各校の判断によって学習に組み込んでよいことになっており,中学校では2012年度,高校では2013年度から全面実施になる。
 筑波大学附属中学では,2008年度に保健体育の授業に組み込み,2009年度の休止を経て2010年度,2011年度と3年度にわたって3年生に「くすり教育」を行っている。まだ教科書がないため,授業は小山氏が他校の教諭らと意見交換をしてつくり出したオリジナルのものだ。

見て触れて楽しく学習

 授業は,生命の連続性とそれを阻む病気の説明に始まり,人類と病気の闘い,薬の歴史を紹介。薬の効き方や正しい飲み方,薬を購入するときの注意点などを説明する。
 薬の仕組みについては,腸溶錠を縦に割った模型や血中濃度の変化を示すツールを使い,実際のカプセル錠を湿らせて触る,生徒が持参した薬の分類や効能,注意書きなどを配布したプリントに記入するなど,単なる講義だけでなく,視覚や触覚を使って短時間でもざっと理解できるよう工夫されている。
 また,薬局と薬店の違いについては,小山氏が学校付近の両店を撮影したり,生徒の最寄り駅の地図を配布し,両店の所在地に異なる色のシールを張らせたりなど,生徒が身近に感じることができるよう配慮した。

「お茶で薬を飲まなくなった」

 授業の中で流された映像で,「薬を飲むとき,水以外で飲んでも良いものは?」との質問があった。選択肢はジュース,牛乳,紅茶,スポーツドリンク,コーヒー。これらはすべて薬と飲んではいけないのだが,答えが表示されると生徒たちからは小さな驚きの声が上がった。実際,くすりの適正使用協議会が小中学生を対象に行った調査では,小学生の43%,中学生の42%が「お茶やコーラでの服用経験あり」と回答している。
 授業を受けたある女子生徒は「薬をお茶で飲むなど,飲み方をきちんと考えていなかったけど,最近病気になって薬を飲んだときには水で飲むように気を付けた。この辺は,授業で習ったことが生きたかなと感じる」とした。
 また,ある男子生徒は「薬の歴史や使い方など,ほかの授業では教わることができないので,新たな知識を得られた。きょうだいにも伝えていきたい。普段読まなかった注意書きを授業を受けたことで読むようになり,用法・用量を守るようになったり,保管場所などに気を付けるようになったりした」としており,薬に対する理解を多少は深められたようだ。
 小山氏は「文科省から導入の方針が示されたとき戸惑った。しかし,早いうちに薬の教育は必要だろうと感じたし,生徒を通じて家族も薬のことを知る機会が増えればとの思いもあって,この授業は重要だと認識している」と述べた上で,「正直に言うと,1〜2時間では足りない。総合教育や理科,家庭科などの時間と連携し,より深い教育ができればと考えている」との展望を語った。

(院長のつぶやき)くすりの前に病気に関する教育をするのが筋では? 一般の風邪やワクチンの知識が日本人はなさ過ぎます。

■ 妊娠中の服薬、相談を(2012年2月:朝日新聞)

 薬を飲んでいて妊娠がわかったが、子どもへの影響は大丈夫だろうか――。こんな不安を抱く妊婦は少なくない。薬による胎児への影響に関する正しい情報はあまり知られていない。最近、妊婦に薬の上手な飲み方を伝えたり、相談に乗ったりする取り組みが全国に広がってきた。

●母体の心・健康が第一

 約20年前から躁鬱(そううつ)病の薬物治療をしている都内の女性(42)は昨年11月、男児を出産した。「子育ても順調。もう一人欲しい」
 2002年の結婚後、子どもを産みたいと当時の主治医に相談したが「薬をやめてからでないと妊娠してはいけない」と告げられた。10年間、何度も薬をやめようと、量を減らす努力をしたが、断念したという。
 主治医が代わったこともあり、「妊娠と薬情報センター」(東京都世田谷区)に相談した。センターは厚生労働省の事業の一環で、05年から妊婦の相談を受け付けている。女性が飲んでいた抗精神病薬のセロクエルは、動物実験では胎児に重大な障害が出ておらず、海外の出産例でも大きな問題は報告されていないと教えられた。「気持ちが楽になった。薬をやめて具合が悪くなったら、妊娠どころでは無かった」
 妊娠と薬について、正しい知識をもつ人は多くない。「妊娠中の薬はいけない」との考えも根強い。だが、先天奇形の発生率は妊娠の3~5%で、薬剤によるものは奇形全体の1%にとどまるのが実情だ。
 一方で、自分の勝手な判断で服薬を中止するリスクもある。たとえば、糖尿病の治療中に急に薬をやめると、妊婦の血糖値が急上昇して、胎児に奇形が生じる可能性は10倍に上がるというデータもある。
 リスクは、胎児の発達の時期によっても異なる。妊娠発覚直後の4~15週は重要な臓器が作られる時期で、胎児の成長に与える影響が問題になる。16週以降は、胎児の臓器障害や、出生後の赤ちゃんへの薬の残留などが問題になる。
 同センターの村島温子センター長(母性内科)は「母体の治療を優先すべき時には、妊娠の時期によって使う薬を変えるなどして治療する方法がある。リスクとベネフィットのバランスをきちんと判断する必要がある。一人で悩まず、専門家に相談を」と話す。

妊娠と薬.jpg

●支援する機関、拡大

 妊婦を支える体制も充実してきた。「妊娠と薬情報センター」は、年間約1千件の相談を受けている。相談の4割は抗不安薬や睡眠薬など精神疾患の薬だ。全国18カ所の拠点病院と結ばれ、居住地に近い病院で相談することもできる。病院で医師と薬剤師による20~30分の面談も可能だ。外来の相談料は、5千円~1万円程度。

虎の門病院(東京都港区)や、聖路加国際病院(同中央区)にも、妊娠と薬の相談ができる外来が開設されている。
 日本病院薬剤師会は08年から、虎の門病院の林昌洋薬剤部長らが中心になって、「妊婦・授乳婦専門薬剤師」制度を導入。薬のリスクに詳しく、きちんと相談にのれる人材を育てるのが目的で、現在、全国に48人の専門・認定薬剤師がいる。
 林さんは「妊娠時期と薬の特徴を見極めれば、飲める薬の方が多い。『母親さえ我慢すれば』と考えがちだが、薬とうまくつきあって、母体の健康を維持することが、赤ちゃんのためになることを知って欲しい」と話す。

■ 薬:子どもに無理せず飲ませて 「食後」こだわらず、タイミング見て、意味説明も

(毎日新聞 2012年2月12日)
 子どもがきちんと薬を飲んでくれない……と悩む親は多いのでは。飲みやすくなる方法を考えた大学の研究者や子育て中の薬剤師に、どんな工夫をすればいいのかを尋ねた。【鈴木敦子】
 「こども×くすり×デザイン実行委員会」(福岡市)は、08年に九州大大学院の平井康之准教授(デザイン工学)とNPO「こどもとくすり」(福岡市)の中村守男代表(34)ら4人が結成した。子どもがストレスを感じずに服薬する方法や、薬の重要性を大人が子どもに伝える方法を考えつつ、薬のデザインも研究している。

 平井准教授の研究室に所属する大学院生が、07年8月に育児情報サイトを通して行った調査では、0~8歳の子どもの母親42人のうち18人(43%)が「子どもは薬を正しく飲めていない」と回答した。うまく飲めない理由(複数回答)は「嫌がるため」が最多(16人)で、理由(複数回答)は全員が「薬の味」を挙げた。苦さに加え、小児薬特有の甘さや香りを嫌う声があったという。「気持ちの問題」も10人に上り、口に入れてのみ込むまでの心理的な障壁が高いことも分かった。
 子どもの心理的・身体的な拒否感をなくすにはどうしたらよいのか。大切なのは、遊びの要素を加えるなどの「動機付け」だという。その一つが形の面白さだ。実行委は▽魚のカプセル▽ゾウの鼻の吸入器▽動物や果物の経皮吸収型シート(気管支拡張剤など)▽カメのばんそうこう--などを考案、モデルをつくった。
 製薬会社に見てもらったところ、「魚のカプセルはのどに引っかかるのでは」「コストが掛かる」との意見があり、現実的には早期の実用化は難しい。平井准教授は「子どもが薬を飲まないのは気分の問題が大きい。意識の転換も考えてもらえれば」と話す。
 苦い薬をゼリーで包んだり、アイスクリームに混ぜ込んだりする方法もある。だが薬によっては苦みが増すものもあり、素人には判断が難しい。平井研究室では、味覚を感じやすい部分を避けて飲めるようなストローの開発も提案している。
    ×  ×  ×
 中村代表は薬剤師で2児の父。育児を経験し、衝撃を受けた。すんなり薬を飲んでくれるものと思っていたのに、長男(7)が小さいとき、薬を嫌がって大泣きする姿を見て、今までの仕事を反省したという。
 例えば「1日3回、食後に飲ませてください」という保護者への言葉掛け。何の気なしに使っていたが、中村さんの子どもたちは離乳期の食事にムラがあり、1日2回のことも。また満腹時は口を開こうとしなかった。体力が低下していれば3食取れるかも怪しいし、授乳後は満腹で薬を吐いてしまう乳児もいる。
 「食後にこだわる理由はない。1日3回の薬なら約4時間、2回なら約8時間の間隔で大丈夫。それを伝えるだけで、親は気が楽になる」。中村さんはいう。
 「極論を言えば、鼻水を抑える薬などは無理に飲ませなくてもいい。時間はかかるけど自然に治る症状は多い。親が必死の形相で飲ませようとすると子どもはますます嫌がってしまう」。中村さんの助言に、ある女児(1)の母親からは「無理に飲ませなくなった途端、子どもが飲むようになった」と喜ばれたという。
 中村さんが自分の子どもで成功した方法は簡単なものだ。まず風呂上がりや寝起きなど、のどが渇いていたり、ぼんやりしている時に飲ませた。言葉が話せるようになると、「テレビを見終わったら飲んでみる?」などと飲むタイミングを本人に選ばせた。同じ効果で液体・粉末・錠剤の種類がある薬なら、自分で選ばせるようにした。
 また効果を理解させることも重要だ。最近は長女(5)には、「これはバイ菌をやっつける薬だよ」と説明すると、苦い粉薬でも我慢して飲むようになったという。

 ◇薬に親しむ絵本、製薬会社が作製
 塩野義製薬(大阪市)は、ライオンの子どもが薬を飲んで元気になるストーリーの絵本を作製、07年から病院などで配布してきた。市場調査から、子どもが薬を飲まなくて親が苦労している様子が明らかで、「薬に対する抵抗をなくしたかった」からだ。自社製品の抗生物質のイメージキャラクター「モックスくん」を使って、0歳児用▽1~3歳児用▽4、5歳児用を完成させた。

 苦い薬を包み込むゼリーも販売されているが、子どもの飲みやすさに着目した薬の開発はなかなか難しい。少子高齢化で小児より成人向けの薬の開発が優先されている製薬業界の事情もあるという。

■ ジェネリック(2011年8月:読売新聞)

(1)効き目は同等 安価な薬

  埼玉県上尾市の男性(66)は1999年に脳梗塞を患って以来、脳の血流を良くする薬など5種類の薬を飲み続けている。4~5年前、かかりつけ病院の院外薬局で薬剤師に「後発(ジェネリック)医薬品を使ってみませんか」と声をかけられた。
 ジェネリックは、新薬の有効成分の特許(20~25年)が切れた後に発売される同じ有効成分の薬だ。多くの開発費がかかる先発品に比べ、値段が2~7割程度と安いのが特徴だ。
 男性が医師から出された処方箋には、ジェネリックに変更しても良いとの医師の署名があった。ジェネリックの普及を図るために2006年に始まった制度で、署名があれば、処方箋には先発薬(新薬)が書かれていても、患者と薬剤師が相談の上、ジェネリックに切り替えてもよい。
 ちなみに08年からは、医師が「変更不可」と指示した場合以外は変更できる制度に、さらに規制緩和が進んでいる。
 男性は「薬代が少しでも安くなるなら」と、薬剤師から説明を聞いた。
 5種類の薬のうち、3種類でジェネリックが発売されていた。うち、脳血流を良くする薬は価格差があまりなかったため先発薬を使い続けることにし、血の塊をできにくくする薬と、胃酸を抑える薬をジェネリックに変更することにした。
 血の塊をできにくくする薬は、現在の薬価で1日当たり124円なのが同15円に、胃酸を抑える薬は同66円が同17円とかなり安い。1日当たりの合計差額は158円で、1か月の自己負担(3割の場合)に換算すると、1500円近く安い計算だ。男性は「家計が助かるだけでなく、ささやかでも国の医療費削減につながるのがうれしい」と話す。
 日本国内で出荷された医療用医薬品に占めるジェネリックの割合(数量)は徐々に増えているものの2割程度で、7割の米国など、かなり浸透している国と比べるとまだまだ低い。国は医療費節減の観点から、12年度までに3割以上にする目標を掲げている。
 日本ジェネリック医薬品学会代表理事の武藤正樹さん(国際医療福祉大教授)は「普及がなかなか進まない背景には『ジェネリックは何となく嫌』との根拠のない拒否感が根強い。経済性の高さを始めとしたジェネリックの利点をもっと社会に広める必要がある」と話す。

ジェネリック医薬品
 薬の有効成分を示す一般名(ジェネリックネーム)で処方されることが多いので、こう呼ばれる。新薬は承認に20種類以上の試験が必要なのに対し、有効成分の溶け方や血液中の濃度など三つの試験でよく、開発費が抑えられる。薬を固めたり覆ったりする添加剤は異なることが多い。国は「効き目や安全性は先発薬と同等(ほぼ同じ)」としている。

(2)ネットで検索 差額計算

 自分の飲んでいる薬には後発(ジェネリック)医薬品があるのかどうか、値段はいくらなのかなどを知るにはどうしたらよいか。
 埼玉県上尾市の男性(66)は、院外処方の薬局の薬剤師からジェネリックの情報を教えてもらった。医師からもらった処方箋の「ジェネリックへの変更不可」欄に医師の署名がない限り、薬剤師と相談の上、変更することができる。「変更不可」に署名がある場合や薬が院内処方の場合は、まず医師に理由などを尋ねたい。
 インターネットのホームページで自分で調べる方法もある。
 日本ジェネリック医薬品学会が運営する「かんじゃさんの薬箱」は、薬の名前を入力するとジェネリックの名前やメーカー、値段が一覧表で示される。よく使われる薬では20~30社程度からジェネリックが発売されており、ジェネリック間でも値段に違いがある。
 検索は薬の商品名でも一般名でもできる。ジェネリック処方に積極的な医療機関や薬局もわかる。
 メーカーで作る日本ジェネリック製薬協会の「かんたん差額計算」は、先発薬の名前と服用量、処方日数を入れて検索ボタンを押せば、1日当たりの差額が分かる。ジェネリックが何種類もある場合は、差額は範囲で示される。
 中小企業の従業員らが加入する「協会けんぽ」は2009年度から、使っている薬をジェネリックに変更した場合の1か月当たりの差額を通知する取り組みを始めた。過去2年間で、薬代の多い約200万人に通知し、約50万人が切り替えた。
 1人当たり年平均1万7000円、自己負担(3割)でみると年5000円軽くなった。全体では1年当たり85億円が浮いた計算になるという。
 差額通知は大企業の健康保険組合の6割、国保は42市町村(10年5月時点)が実施している。
 ジェネリックの発売時の薬価は原則、先発薬の7割と決まっている。2年ごとに先発薬、ジェネリックとも個別に薬価が見直されるためまれに先発薬より高いジェネリックもある。
 薬局での情報提供料(3割負担で30円)やジェネリック調剤料(同6円)など、ジェネリックに替えることで増える負担も一部ある
 東京医科歯科大教授の川渕孝一さん(医療経済学)は「差額が小さく、処方期間が短い場合は、薬代が安くなった分が加算で打ち消されることもあるので薬局などでよく相談してほしい」とアドバイスする。

(3)先発薬にはない工夫も

 後発(ジェネリック)医薬品の中には、先発薬にはない長所を盛り込んだ薬もある。
 水戸市の無職永井和夫さん(83)は2009年10月、胃がんで胃を3分の1切除する手術を受けた後、理由は不明だが食べ物をうまくのみ込めなくなった。
 栄養は、鼻から胃に通したチューブを通じて、栄養剤を流し込んだ。薬も直接飲めないため、水に溶かしてチューブで入れていた。ところが、便通を良くするためにチューブの患者に使われることの多い薬(酸化マグネシウム)は、粉末が大きめで水に溶けにくく、チューブが詰まりやすい問題があった。
 「溶けやすいジェネリックに替えてはいかがですか」。永井さんはかかりつけのフローラ薬局河和田店(同市)の薬剤師に勧められた。酸化マグネシウムのジェネリックには、錠剤を水に入れるとすぐに崩れて細かい粒になり、チューブが詰まりにくいよう改良されたものがある。薬代も半額(6円)だ。説明を受け、永井さんは提案を受け入れた。
 ジェネリックはチューブに詰まることもなくスムーズに摂取できた。3か月ほどでチューブがいらなくなった後は、薬を水に溶かして口から飲んでいる。「チューブでの栄養補給を始めたころは不安だったが、溶けやすい薬に替えて安心できた」と振り返る。
 ジェネリックは、効き目の有効成分は先発薬と同じだが、薬の味や形は変えられる。ジェネリックメーカーでは、先発薬にはない工夫をこらした薬を『付加価値型ジェネリック』などと呼び、積極的に開発する企業も増えている。
 苦みがある抗生物質(クラリスロマイシン)に子どもでも飲みやすいよう甘味をつけたり、高血圧薬の錠剤を、嚥下機能の衰えた高齢者向けに口の中で溶けるフィルム状にしたり、といった例がある。
 このほか、容器から1回分ずつカップで量って飲む薬を、1回分ごとに個別包装して利便性を高めたり、他の薬との誤使用を防止するため特徴的な色や形に変えたり、容器や包装に使用上の注意を目立つように表示したりなどの工夫が行われている。
 付加価値型ジェネリックを積極的に採用している同薬局代表で東京薬科大客員教授の篠原久仁子さんは「経済的負担の軽減だけでなく、医療の質を向上させるという視点も重要」と話す。

(4)薬価低く出回らぬ物も

 東日本大震災で後発(ジェネリック)医薬品は、高血圧薬や胃腸薬、消毒薬など10トンが被災地に送られ、医薬品不足の解消に一役買った。一方で課題も見えた。
 仙台市青葉区の大学研究員の女性(32)の長女(1)は、生まれつき甲状腺の働きが弱い先天性甲状腺機能低下症で、生後すぐからホルモン剤を使っていた。ところが、同剤で国内の98%を占める薬(チラーヂンS)を作っている「あすか製薬」の工場(福島県いわき市)が大震災で被災し、生産が止まった。
 この薬が必要な人は全国で約60万人おり、症状の重い人が長期間服用できないと命にかかわる。薬の特許はすでに切れているが、国内企業のジェネリックはない。1錠が約10円と安く、利益が小さいことがジェネリックが発売されない主な理由とみられる。
 あすか製薬は、長期処方の自粛を求めるなどの対策を取りつつ、工場の復旧を急いだが、震災前の生産体制に戻ったのは7月末。その間、同成分の薬をドイツから緊急輸入し、供給が途絶えるのを回避した。
 この女性は、手持ちの薬が約2か月分あったが「なくなったら大変」と、自分でも海外から個人輸入した。結局は使わずに済んだが、「国内で複数の会社が分散して作る体制になってほしい」と願う。だが、他メーカーが開発に乗り出す動きはない。
 ジェネリックの商品名を巡る混乱もあった。
 宮城県薬剤師会専務理事の広重憲生さんは「被災地の病院や救護所では、患者が日頃使っているジェネリックの商品名を医師に伝えても、耳慣れない商品名で、どんな薬なのかの確認に時間がかかり、診療が滞る場面が度々あった」と話す。
 薬価が高く需要が見込める先発薬には、20~30社ものジェネリックが市場に出回る。たとえば2002年に特許が切れた高脂血症治療薬「メバロチン」(第一三共)には、メバリリン、ブラバチン、アルセチンなど、様々な商品名のジェネリックが発売されている。
 「紛らわしい」との指摘から、05年以降に承認されたジェネリックは、有効成分名(一般名)とメーカー名の組み合わせで表記されるようになったが、それ以前に承認された薬はまちまちの商品名のままが多い。
 「災害時などにも円滑に使えるよう、05年より前に承認されたジェネリックも成分名表記に統一してほしい」と広重さんは訴える。

(5)高額な薬ほど節減効果(2011年9月5日 読売新聞)

  バイオ医薬品と呼ばれる高額な薬が近年相次いで登場し、患者の経済的負担が問題になるなかで、その後発(ジェネリック)医薬品であるバイオシミラーに注目が集まっている。
 「年間55万円も安くなる」。日大薬学部教授の亀井美和子さんは、「低身長症」の治療薬として認可されている成長ホルモン剤を、2009年に発売された後発品に替えた場合の年間薬剤費を試算した。先発薬の費用は総額約197万円なのに対し、後発品は約142万円だった。
 バイオ医薬品は、複雑な構造を持つ体内のホルモンやたんぱく質などを人工的に合成したものだ。抗がん剤や関節リウマチ治療薬、ホルモン剤など、幅広く使われている。開発、製造に手間がかかり、価格が高いのが難点だ。国立医薬品食品衛生研究所研究員の山口照英さんは「もともと高額なので、2~3割安いだけで節減効果が高い」と話す。 
 国内で現在承認されているバイオシミラーは、成長ホルモン剤と、10年に発売された腎性貧血の治療薬の2種類だ。難病などの助成制度がある病気では元々患者負担が軽減されているが、薬の適用が広がったり、新たな後発品が登場したりすれば、直接、患者の負担軽減につながるケースも増えるとみられる。
 山口さんは「バイオ医薬品は1990年代以降に作られたものが多く、これから続々と特許切れを迎える。バイオシミラーは今後増えるだろう」と予想する。
 抗がん剤治療の際、低下した白血球を増やす目的で広く使われている薬について、複数のメーカーが開発中で、早ければ来年中に承認を申請する見通しだ。抗がん剤や関節リウマチ治療薬についても、開発に取り組む動きがある。
 亀井さんは「国は、浮いた財源を新薬の開発支援や小児医療の充実などに回せば、さらに患者にとってプラスとなる」と提言する。

バイオシミラー
 一般のジェネリックは先発品と有効成分が同じだが、バイオ医薬品の場合、技術的理由から全く同じではないため、「似ている」を意味する英語で「シミラー」と呼ばれる。開発費が抑えられ、薬価を安くできる基本的な仕組みは同じことから、ジェネリックとほぼ同様に扱われる。

■ 医薬品供給ピンチ、工場被災で緊急輸入も(2011年4月4日 読売新聞)

 東日本大震災で東北地方や北関東の多くの製薬工場も被災し、様々な医薬品の生産が止まっている。代替品がない薬は、海外製品を緊急輸入したり、在庫を有効に使うため長期間分の薬の処方を避けたりすることなどが求められる。
 深刻なのが、甲状腺機能低下症などの治療薬レボチロキシンナトリウム。あすか製薬の「チラーヂンS」が市場の98%を占めるが、福島県いわき市の工場が被災し、生産が停止した。国内30万人の患者が服用しており、薬が途絶えれば命にもかかわるため、全国保険医団体連合会などが先月、国に緊急輸入支援を求めた。
 在庫は1か月弱あるものの、薬の偏在もあり、同連合会には「処方が受けられない」との声もあるという。関連学会は、被災地以外では原則1か月以内の短期の処方を求めている。
 同社は3月25日に工場を再開させたが通常体制には戻っておらず、国の要請を受け海外から緊急輸入される製品の販売を今月中旬にも始める方針だ。
 普通の食事ができない患者に、胃や腸にチューブで栄養注入する時に使う「経腸栄養剤」として最も普及しているアボットジャパンの「エンシュア」は、缶容器工場が被災した。再開は5月下旬になる。保険で使える製品は、ほかに大塚製薬の製品しかなく、厚生労働省は別の缶容器工場の早期確保を求めている。
 中外製薬は、抗てんかん薬でパニック障害などにも使う「リボトリール」やパーキンソン病治療薬「マドパー」などの生産が止まった。当面は在庫でまかなうが、リボトリールが体に合っている患者は代替薬への変更が難しい。マドパーの場合は別の薬に代えられるが、代替品増産では間に合わないとの指摘もある。

東日本大震災で生産停止した薬(一部)
■チラーヂンS(甲状腺ホルモン薬) あすか製薬
 一部生産再開。海外製品を輸入予定
■エンシュア(経腸栄養剤) アボットジャパン
 5月下旬に生産再開。在庫1か月分
■リボトリール(抗てんかん薬) 中外製薬
 当面、在庫でまかなう
■マドパー(パーキンソン病治療薬) 中外製薬
 当面、在庫でまかなう

医の値段 Q 後発薬、どれくらい安い?(2011年4月14日 読売新聞)

Q 後発医薬品(後発薬)は先発医薬品(先発薬)よりどれくらい安いですか?
A 先発薬の半額以下も

 後発薬は、病気に対する効き目を発揮させる成分(有効成分)の種類と分量が先発薬と全く同じ薬です。「ジェネリック医薬品」とも呼ばれます。国は「効き目も安全性も先発薬と同等」としています。
 後発薬は、先発薬の実績があるため、国の承認を得るために製薬会社が行わねばならない試験が先発薬よりもずっと少なく、開発費が抑えられます。それで、値段が安いのです。
 後発薬の最初の薬価は、薬価算定のルールに基づいて国が決めます。
 ある先発薬について初めて後発薬が出る場合、薬価は原則として、先発薬の7割です。ただし、個々の医薬品の薬価は2年に一度改定されますので、将来的にもずっと、先発薬の7割になるわけではありません。
 すでに後発薬がある場合は、先発薬と後発薬の合計数が20を超えるかどうかで、新たに加わる後発薬の薬価の計算方法が変わります。
 20品目以内の場合は、その中で最も低い薬価が新たに加わる後発薬の薬価となります。一方、21品目以上の場合は、最も低い薬価の9割に抑えられます。これは、同じような後発薬が増えすぎて医療現場が混乱するのに歯止めをかけるためです。
 薬価を下げることばかりにも見えますが、飲みやすさの向上など先発薬にはない工夫を加えた場合、「有用性加算」として、薬価を上げる仕組みもあります。
 このように様々なケースがあるので、すべての後発薬について「先発薬より何割安い」とは言えませんが、国は目安として、「3割以上、中には5割以上安くなる場合もある」としています。

Q 後発医薬品への変更 服薬している高血圧の薬を、後発医薬品に変更すると、薬代は安くなりますか。
A 薬のみなら半額以下も

 後発医薬品は先発医薬品と同様の有効成分を含む薬です。先発医薬品の特許は出願後、最長25年で切れ、その後は、ほかの製薬会社が後発医薬品を製造販売できるようになります。
 開発費が抑えられるため、先発医薬品より3割以上、価格が安く、中には半額以下の薬もあります。実際、薬代がどれだけ安くなるか、血管を広げて血圧を下げるカルシウム拮抗薬で比較してみましょう。
 よく使われている先発医薬品「ノルバスク錠5ミリ・グラム」は1錠64・9円。これに対し、同様の有効成分を含む後発医薬品は30種類以上あり、価格も30~50円程度と様々です。最も安い「アムロジピン錠5ミリ・グラム『TCK』」は29・9円。薬代の計算は特別な方法で行われ、ほかに併せて飲んでいる薬がなければ、ノルバスク60円、TCK30円となります。
 薬局では、この薬剤料のほか、薬局に支払う基本料金の「調剤基本料」、処方日数などによって決まる「調剤料」、服用指導料の「薬剤服用歴管理指導料」などを加えた額を支払います。
 これらは先発医薬品も後発医薬品も変わりませんが、後発医薬品には、「後発医薬品調剤加算」20円分などが加わります。
 後発医薬品は、先発医薬品と有効成分が同じでも、品質保持のためなどの添加物が異なるものもあります。横浜市の宮川内科小児科医院院長の宮川政昭さんは、「薬の変更を希望する場合は、価格だけで決めず、主治医に相談してみましょう」と話しています。(利)

■ 村重直子の眼16・近藤達也PMDA理事長(2010年12月:ロハス・メディカル)

 ご好評の『村重直子の眼』、間を置かずに続けます。今回のお相手は、医薬品や医療機器の薬事承認審査を担当している独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)の近藤達也理事長です。在野のキラリ光る人に会いに行くというコーナーのコンセプトからすると大変な大物ですが、厚労省在職時に相手が大臣であっても物怖じしなかった村重氏ですから、当然のように発言にブレがありません。3回に分けてお楽しみください。(担当・構成 川口恭)

近藤
「村重さんの本は正確な知識に基づいて書かれてらっしゃいますよね。世の中には情報が飛び交っていますが、一番ほしいのは正確な情報ですよ。データベースと言っても正確な情報だからほしい訳です。それをどう解釈するかは別の話ですが。私が先生を一番尊敬しているのは、本当に正しいデータに基づいてお話してくださるから。世の中には風聞で動く人が結構いますが、足元をさらわれるところがありますよね。けれども、先生のお話は信頼感があり、本当に『そうだよね』と思えます」

村重
「できるだけたくさんのデータを、できるだけ皆さんで共有できると、今おっしゃったような風聞で動くのではなくて、一段レベルアップした議論が皆さんできるはずなのにと、いつも思っていました。PMDAにも有害事象のデータベースがあるので、あれもぜひぜひ国民の皆さんが共有できるように公開していただけませんでしょうか。一応、検索すると一部表示されるようになっていますが、エクセルで全体をダウンロードできると、国民それぞれが研究し多様な視点から解釈するという意味ではもっと使いやすくなると思うんですけど」

近藤
「そうですね。やはり社会の進歩のための研究ですから」

村重
「国民なら誰がダウンロードしてもいいですし、外国人だって構わないわけですよね。他の国のデータベースは私たち日本人もダウンロードできますからね。誰でもアクセスできる、しかも正しい情報が、量もたくさんあって自由に解析できる、というデータベースが公開されていると国民の皆さんの議論のレベルって、もっともっと上がって行くだろうと思っています。きちんと正しい情報を知らされれば、皆さんきちんと解釈できるので」

近藤
「皆さん、賢いのですしね」

村重
「そうです」

近藤
「私もそういう考え方なのですが、個人情報という側面もあり、その辺は適切なブロックも必要かと思います」

村重
「今、PMDAがホームページで出している部分の情報も、もちろん個人情報は削除してあるじゃないですか。個人情報は削除したまま、あのデータ全体をエクセルでダウンロードさせてくださるとだいぶ違うのです。検索ワードを入れないと出てこなくて、しかも上限20件くらいまでしか出てこなくて、全体が何件なのかも画面を変えて行かないと分からないんですよね。
 検索して一部分だけ表示するようになっていますが、その元には全体のデータベースがあると思うので、全体のデータベースを公開するために手間は増えないと思うのですけど」

近藤
「なるほど、そうですよね。先生は官僚の良い所をしっかり身につけてらっしゃいますよね、悪い所ではなくて。国際医療センターにいた時の私は、官僚に対してあまりいいイメージを持っていなかったのですが、PMDAへ来てから官僚のイメージが変わりました。非常に確実に物事をやっていける、信頼関係があると判りました」

村重
「その信頼の輪をぜひ国民にも広げていただきたいのです。その意味でも情報を公開していただけると、PMDA職員はこんなにやっているんだということも見えて、国民の安心感にもつながると思います。PMDAはドラッグラグ被害者の声と、薬害被害者の声、両方の期待を背負っておられますが、両方に共通する問題です。共通の問題なので、それこそデータベースの公開というような同じ方法で解決に向かうと思います」

近藤
「その通り。共通の利益になる話ですよね」

村重
「ドラッグラグ被害者と薬害被害者のPMDAへの期待は同じですし、情報を公開して皆さんで議論しましょうという願いも同じです。正しいデータを国民の皆さんが共有できれば、薬害を早く見つけることや、ドラッグラグを短縮することにもつながると思います」

近藤
「その通りだと思います。今まで何というか、依らしむべし知らしむべからずというのが、ずっと続いてきてしまったのでしょうね」

村重
無意識のうちに『データは出さないものだ』というのが前提になってしまっていて、『どうしてこのデータを出すの?』とよく言われたことがあったのですが、『どうして出さないの?』と思います。前提が逆になってしまってますね」

近藤
「自分の手の内を見せない方がやりやすいことは事実ですが、卑怯ですよね」

村重
「そうです。国民が知らない方が、役人が決めやすいということですよね。だから国民のニーズと乖離しているのです」

近藤
「PMDAは基本的に手の内は明かすことにしているのですよ。私たちは何を知っていて、ここまでの事をしているということを示すことにしているのです。そう取り組んでみると、意外と喜んでくれたのが外国でした。日本の官庁の人達はPMDAをどのように評価してくれるか知らないけれど、アメリカの商務省からは、大したものだと言われました。要するに自分たちの考え方、何をしようとしているか明確だと。だからこういう人は信頼できる、この組織は信頼できると言ってくれましたよ。PMDAの理念を策定した時、最初のリアクションがそれだったのです。ロスさんなんて、それまでPMDAと厚労省に恐らく年間に2回や3回は必ず来て、いろいろ質問されていたのですが、それがこちらへは来なくなり、代わりに、おまえを信用しているという手紙が届くようになりました。つまり、信頼関係というのは情報公開だと思うのです。」

村重
「もちろん日本の国民にも、世界にもですね。国際共同治験も、少しずつ進んではくると思いますけど、そういう意味でも本当に審査の内容やレベルも、国際的に同じようにできないといけないですものね」

近藤
「いきなり100%できるとはあり得ないながらも、こうやって審査していますよ、こうやって努力していますよというのが、示されていけばいいですよね。何かズルいことしているのではないかと思われると、捜索とかしたくなるのでしょうけれど。その辺はやはり行政も変わって行かないといけないですよね」

村重
「そうですよね。行政でありながら、PMDAは専門家の集団でもあるので、皆さん専門家としての情報発信、論文を書いたり、学位を取ったりできると聞いておりますけど、ぜひ審査員の方たちが専門家としてレベルアップしていただきたいですね。それが新薬の審査や、薬害早期発見の安全対策などのレベルに直結していますから」

近藤
「PMDAの職員は意外と外部で講演等しているのですが、オフィシャルではない場合もあるので、その辺をもう少しオフィシャルに出来ればいいと思います」

村重
「オフィシャルでないとは」

近藤
「オフィシャルな講演会と、そうではない場と様々な場所がありますが、オフィシャルな講演会が増えてくれたらと思います。また、講演だと一方的な話で終わってしまうことも多いのですが、一方的ではなく皆で話し合い、ディスカッション出来る場として、レギュラトリーサイエンス学会がとても重要な場になると思っています」

村重
「FDAの方も、よく学会に来てディスカッションしたり論文書いたりしてますよね」

近藤
「そうですね。PMDAの職員も、もう少し気楽に出て行けて、話ができるチャンスが増えればいいですね」

村重
「どんどん作ってください、色々な場で」

近藤
「PMDAは、行政機関ではあるけれど、教育機関でもあり、研究機関でもあると考えています。ですので、10月から研究課という課をつくりました」

村重
「どんな風に」

近藤
「レギュラトリーサイエンスの研究課をつくりました。これまでは研修課という課のみがあり、PMDA職員に色々な形で勉強してもらうチャンスをどのように作るか、職員の勉強の仕方のコースを企画したりしていたのですが、今後はレギュラトリーサイエンスとは何なのかという研究に対しても魂を入れていこうと考え、研究課をつくりました」

村重
「頑張ってほしいですね。専門家どうしの情報交換ですものね、それは楽しみですね」

近藤
「本当は研究所を作りたいのですが、いきなりそんなに大規模なものもできませんから。まずは課から、魂を入れるところから始めました」

村重
「審査や安全対策の部門と直結した形で、つまり普段の日常の業務と直結した形で研究できるのは、すごくいいですよね」

近藤
「研究というのは、上司に対してもフランクに、お互いの違う意見を言い合えますよね。一方的に俺の言うことは神様だというわけではなく。お役所って、そういう問答無用な雰囲気はありませんでしたか」

村重
「上司の言うことに従わないといけませんからね」

近藤
「問答無用というのはおかしな話ですよね」

村重
「言論の自由がなければ専門家として成り立たないですよね」

近藤
「成り立たないですよ。軍隊の内務班みたいなもので、『真空地帯』になってしまう」

村重
「専門家とは相容れない立場になっちゃいますからね」

近藤
「そういう意味では、厚生労働省も研究所を作ったら良いと思うけれど、無理かな」

村重
「厚労省が抱える必要はないですね。現場に専門家は大量にいますから。情報を公開さえしてくれれば、現場の専門家がいくらでも使って、解釈とか議論とかできますからね。でもPMDAはそうはいかない、専門家がここにいてくれなければならないというのはあると思うんです。ぜひ現場の専門家と、人が入れ替わってもいいし情報が入れ替わってもいいので、それこそ自由に議論ができるようになるといいですよね」

近藤
「PMDAとしては、人材交流にも力を入れたいと考えています。ずっと一カ所で育った人間ばかりになったら、気持ち悪い組織になると思うのです。大学の医局の中にもそういう気持ち悪い医局はありませんでしたか。やはりある程度の流動性が必要だと考えています」

村重
「そうですね、色々な場所をグルグル回って、色々なセッティングの場所とか地域とかを見て、初めて専門家としても発展していくと思うので、人はグルグル入れ替わった方がいいですよね」

近藤
「PMDAだけではなく、社会全体がそういうコンセンサスを持ってほしいですね。キャリアパスとして交わっていくのが望ましいと考えています。PMDAの場合、一番のネックは企業間との就業制限で、企業に行ってはいけないとか、企業からPMDAへ就職する際も就業制限が設けられている。PMDAと企業とが人材交流することはいけないことなのでしょうか」

村重
「おかしいですね、そうやって終身雇用から逃れられない組織になっちゃうと、だんだん言論の自由がなくなっていきますよね」

近藤
「育つ人材も、あまりに狭い世界にしかいられないとなると、十二分に育たないと思うのです。流動性があるからこそ自由な発言ができるというのはありますよね」

村重
「よく、PMDAの人は『上にも横にも行けなくてかわいそうだ』と聞くんです。『上にも』というのは、幹部が厚労省から来ているのでPMDAにプロパーで採用された人たちが昇進できないという意味で、『横にも行けない』というのは、メーカーに勤められないという制限があるので、辞めても行くところがないから辞められないという意味です。『上にも横にも行けない』閉塞感というのをよく聞きますよね」

近藤
「上の方は、私が薬事行政の外から来たみたいに、違う世界から来るのがいいのかもしれない。逆に、PMDAからどこかのトップになってもいいわけですし。アメリカが何でうまくいっているかというと、FDAから企業へ行ったり、A企業からB企業へ行ったりできるからで、これはすごい話ですよね」

村重
「だから専門家としての議論が発展して全体のレベルが上がって行くんだと思います」

近藤
「こういう流動性は、Transparencyですよね。就業制限とかが無くなる代わりに、悪事を働けばもちろんアウトですけれど」

村重
「悪いことするのとTransparency(透明性)とは違いますからね」

近藤
「思いきって流動性のある世界にするのがいいのでしょうね。実は私の同級生に弁護士がいて、PMDAに就職すると将来の昇進が制限されていて、しかもどこにも外部へ行けない就業制限があるというのは、かわいそうでおかしな話だと話していました。米国FDAには、別の所に行ったら接触禁止というのがあると聞いていますが、この接触禁止の意味が、日本では正しく理解されていませんね。口利きの役目、渉外の役目を禁止すればいい、例えばPMDA出身者がA製薬会社に移った際に、レギュラトリーサイエンスをサポートするのはいいけれど、顔をこっちに向けてPMDA職員と接触するのはいけないということです。日本では、省庁出身の人が、色々な企業や大学へ行きますよね。学部を作ったりする際に、こういう風にしたら学部ができるよ、こういう人材を揃えるといいよと知恵を授けることは構わないけれど、過去のツテなどで文科省の担当者に何か口を利いたり、やってちょうだいよとニッコリしたりしてはいけないということ。こういう渉外の役や口利きなどの接触をするような仕事に就いてはいけないというのが筋だと思うのですが」

村重
「そんなに制限しちゃって大丈夫なんですか。悪いことしちゃいけないのはその通りですが」

近藤
「適切な仕組みが出来れば構わないと思います。どういう仕組みにすべきなのかはまだ具体的ではありませんが」

村重
「色々やってみて試行錯誤するしかないのではと思うんですけどね」

近藤
「ルールをしっかり、インモラルにならないように、その辺を工夫した仕組みを作る必要がありますよね。お互いにインモラルにならない形で行き来する、それを全社会で活性化する必要があるのかなと思います」

村重
「ルール以前に、隠すと何でもできちゃったりするので、透明性のない状態でモラルだけ期待するのは難しいでしょうね。どんどん公開すれば公平性とかモラルとかも保ちやすいですよね。情報をどんどん公開して透明にしてやれば、悪いことはできなくなります」

近藤
「逆にね。お互いに、市民社会としてね。市民社会のありかたはそうですよね」

村重
「透明性やデータベース公開の話に戻ってくると思います」

近藤
「それに尽きますよね」

村重
「もう一つお聴きしてみたかったのは、未承認薬検討会で、ある意味、特急券が付いたようなものと、普通に申請されて来たものと両方になり、かなり件数が増えるんじゃないかという心配を患者さんたちから聴くんですけど、それをどんな風に捌いて行かれるんでしょうか、優先順位をどうするかという点はいかがでしょう」

近藤
「本当に必要な薬は早く届けなければならないというPMDAの理念があるわけですから、公知申請で済むなら公知申請というのは当然だと思います。全然これは問題ないと思いますよ。ただし、この公知申請はあくまでもドラッグラグがあることが前提だと思います。ですので、テンポラリーだと思うのです。日本の不備でおこったドラッグラグについては、患者さんにとって非常に不利益な状態を改善するということで、欧米で認められている薬について公知申請でやっていくというスタンスはいいのですが、将来、ドラッグラグがなくなった時には不要なシステムになると思います」

村重
「ドラッグラグがなくなるんですか」

近藤
「国際共同治験も増えていますし、なくなると思いますよ。そうすると、日本と欧米での申請の時期が並ぶ時が必ず来ますよね。そういう時に、欧米に申請した資料で、日本はそのまま認可すべきだという考え方はおかしいです。同時開発が増えれば、最終的にはドラッグラグというのは基本的にはなくなるわけですから、だから今の状態がテンポラリーな状態だと考えているのですよ」

村重
「ドラッグラグはなくなりますか」

近藤
「違いますか? 私はそう思いますが。違うでしょうか」

村重
「私はドラッグラグはなくならないと思うんです。PMDAは申請を受けて始まるわけですからメーカーが申請して来ないと始まらないわけですよね。でもメーカーの立場から見れば、グローバルに開発しているような大きなメーカーは、日本に早く持ってくるインセンティブがあまりないんじゃないかな、と。だから、現に持って来てない薬や医療機器がたくさんあるわけです。海外にはあるけれど、日本にはないまま持ってこないものがたくさんある。ラグ(遅れ)どころか、日本には存在しないわけですよね」

近藤
「本当に必要な薬だったら、日本での開発も進むでしょう。本当に必要な薬かどうかというところではないでしょうか」

村重
「でもメーカーのインセンティブは、患者にとって必要かどうかだけではないので」

近藤
「オーファンドラッグはオーファン向けの制度もありますし」

村重
「ええ。でも他にも色々な問題、薬価の問題もありますし」

近藤
「それはあるかもしれませんね。皆保険である反面、薬価の問題が日本には残ってしまう可能性はあります」

村重
「ドラッグラグはなくならないということです」

近藤
「どんな医薬品でも日本で承認すべきというのは、おかしな話だと思います」

村重
「それはそうなんです。だた、ドラッグラグはなくなるのかなと思って」

近藤
「それは何としても、色々な方向でなくさないといけないと思いますよ。国民のニーズに応えるためにも」

村重
「そうですか。ぜひよろしくお願いします」

近藤
「ただし、注意しなくてはいけないのは、日本でもう治験しないでいいと、治験しないで欧米でやればいいという極論。欧米で認められた薬は日本でもそのまま認可しなさいというのはおかしいと思います。国際共同治験というスタンスを始めたからには、日本でもやる、同時にやる、何としてでもやるというくらいではないと」

村重
「国際共同治験をやっても、他の国では言われないような、あまり科学的でない指摘をされて、共同治験が成り立たないという話を、よく聞くんですけど」

近藤
「国際共同治験はICH基準などで調整が進めば、各国の条件はほとんど同じになると思いますよ。ですので、日本の審査官が理解に困る指摘をしたとかいうのは、段々と解消されていくと思います。基本は同じ基準になるのではないでしょうか。そういう風に持っていかないといけないのですから。そういう意味においても、日本の治験は高額だからという理由で日本では治験せずに他国でのみ試験を実施し、他国の承認を得たからそのデータのみで日本で認めてもらおうというのは違うと思います。日本を無視して治験を全部やって、欧米で認められた医薬品は全部認めるべきというのは違うだろうと。日本国民で全例しなければならないといっているわけではないのです。ある程度の相関が見えるデータ等を準備していただかないとおかしな話ですよね。実はね、診療現場にいると、日本の治験はかなり真面目にされていることが判ります。外国の製薬企業の方も日本の治験データのきめ細かさについて評価してくださっていますよ。特にフェイズ2、フェイズ3の治験データは勉強になるというか、データがさらにキメ細かく出ているから参考になる情報がたくさん含まれていると思う。しかし、現実には、それがあまり評価されてない」

村重
「科学的にどこまで必要なのか、現実的なのかということですよね。あとは折角取ったデータですから全部公開してくださいね、ということ」

近藤
「今は、埋もれてしまっていますからね、もったいない。高額な治験かもしれないけれど、内容は濃いのであれば、少々高額になる価値はあるのかなと私は思うのですが」

村重
「ちゃんと公開されて、国民にフィードバックされるんであれば。国民が判断するんだと思います」

近藤
「それはPMDAがどの程度取り組めるかでしょうね。質の高い治験データであること、その辺をどうアピールするかでしょうね」

村重
「公開していただければ十分にアピールになると思いますよ」

近藤
「そうですよね。概念として、世界共通ということですよね。世界共通に向かって標準化していくことですよね」

村重
「もっともっとレベルアップして、世界から置いていかれないようにしないと」

近藤
「ICHの基準づくりだって、日本がもっとイニシアチブを取って行かないと。とりわけ臨床が関係するところでは。今までは薬事が中心だったと思いますが、もう少し臨床関係の、安全の辺りから入って行くところはいっぱいあると思っています。それが日本の役目だなと」

村重
「それはプレマーケット(市販前)よりもポストマーケット(市販後)のデータ収集に重点を移行するということですか」

近藤
「そうではありません。ポストマーケットにも取り組むというのは私のアイデアなのですよ。ラグやなんかもなくなるように処理していかなければ」

村重
「どうやって」

近藤
「それこそがレギュラトリーサイエンス学会の役割ですね。議論するテーマが、ICH基準などに反映されていく。今までの行政は、依らしむべし知らしむべからずで、いつまで経っても疑問点が続いていたと思うのです。だからレギュラトリーサイエンス学会は、そこを依らしむべしではなく、オープンにする。どういう判断をすべきなのかというところをお互いにディスカッションするわけです。患者さん側も入ってもらうので、これは無視してもらっては困るよとか、この点は注意してもらわないと困るよとか、この点はどんどん言ってもらった方がいいよとか、こういう薬をどんどん作ってもらった方がいいよとか、だけどこういう点は心配だよねという点を、公の場で記録に残る形でディスカッションしてもらう。あそこでこういう風に決めたということが将来行政へ反映されるような、同じ市民社会なのだから、裁く側も裁かれる側も同じ場でディスカッションするということがとても大事で、これは大事な一歩だとおもいますし、これは先程お話した情報公開につながると思います。このようなフランクなディスカッションについては、反対する人もいるかもしれませんが、私はそう思わなくて、やるべきことだと考えている。プロモーターですね。今の段階では、レギュラトリーサイエンスというものは、焦点がいま一つボケているように思われるかもしれない。色々なことが含まれるのだし、だから色々なテーマに発展するのだと思う。その時のカレント、トピックスを持ってくることもできる。生物製剤だって何だってレギュラトリーサイエンスの対象になるのです。情報公開のありかただって、どこまでオープンにすべきなのかを、ここで議論できるのですよ」

村重
「公開情報があるならディスカッションが成立するでしょうけれど、守秘義務とか言われて情報が隠されていたら成立しないのでは」

近藤
「私が病院にいた頃の話になりますが、医療相談で多くの患者さんとお話することもありました。彼らを保護しながら同時に治療しなければならないのですが、そこで大きな矛盾点として気が付いたことは、守秘義務と情報公開の関係です。両者は相反する話ですよね。彼らは守秘義務守秘義務と言いながら情報公開とも言う。自分にとって都合の悪いことは守秘義務、都合のよいことは情報公開となるのです。その辺りはお互い様で、バランスを取ってやらないといけないわけです。それこそレギュラトリーサイエンスですよね。社会というのは、必ずバランスを取ってかないと、ハーモナイゼーションを取ってかないと」

村重
「そこのバランスが、もうちょっと公開する方に傾けばいいわけですよね。今の状態だと、個人情報じゃないもので出してない部分が相当あるので、まだまだ公開できるものはたくさんあると思うんですよね」

近藤
「先生のおっしゃる通り。そして、それをどこまでやるかというのがレギュラトリーサイエンスなのです。もっとここまでしてもいいのではないかと皆で言えばいい」

村重
「ぜひよろしくお願いします。個人情報以外はもっと出せると思うんです。もっと使いやすくとか、もっと見やすくとか、データベース丸ごととか、もちろん個人情報は出さないように、やり方はいくらでもあるし、もっともっと出せる情報はいくらでもあると思うんです」

近藤
「そういうことを言っていただければいいと思うのです。それを議論してもらう場なのですから。お互いに利益相反にならない程度で、どこまでだったら出せるのか、ここまでだったら出せるよね、という話を。」

村重
「利益相反にならないレベルで出せるものがまだまだいっぱいあると思うんです」

近藤
「私もそう思いますよ。だから行政が一方的にこれ以上出さないというのはダメですよね」

村重
情報を出さないのは誰のためですか?ってことですね。それによって得をするのは役人ですよね、国民じゃありませんよね。国民に知らせるべきだと思いますけどね」

近藤
「役人は知らせない方がやりやすいからかもしれないけれど、そうではなく、同じ市民だということ。だからお互いに人格を尊重しながら、同じ平地で議論しあうということ、それがレギュラトリーサイエンスの心だということを、理解してもらえるとありがたい。レギュラトリーサイエンスという言葉だけが広まっても意味がない。同時に、世界共通の学問だから、これがなかなか難しいのですよ。例えば、アカデミックな科学は非常に理路整然と話を進めていけると思うのですが、これがレギュラトリーサイエンスになると、次元の違うものを比べてバランスを取るものなので、本来比べることのできないものを比べるわけですから、それでもバランスを取っていかなきゃいけない。とても難しい。科学としては、極めて東洋的ですよね」

村重
「ああ、なるほど」

近藤
「レギュラトリーサイエンスが日本発の学問だというのは、まさにそこですよね。西洋人からはこういう概念が出てこない。禅の世界に近いところもありますし、日本人じゃないとできないのでしょうね。実を言うと、こんなに広まるとは思っていませんでした。FDAのハンブルグ長官も、就任後、レギュラトリーサイエンスをFDAの運営の基本として位置づけられておられ、このように日本発の学問として世界中で広めつつあります。また、今年の2月にも、FDAの前長官のエッシェンバッハさんが、レギュラトリーサイエンスについての話を聴いて、納得されていました。この混迷の世界の中、解決する一つの手段として、これはどんどん進めるべき学問ですね。ICHで作成している基準などもほとんどレギュラトリーサイエンスに当てはまりますよね。それから、先程のお話の情報公開をどこまでやるのかという議論も。こういう議論は、カオスになっているものとか、訳分からなくなって混乱しているものがほとんどで、レギュラトリーサイエンスとは、そのような状態の問題をどう解きほぐして、分解して、それを正しく導くかっていう学問なのです。皆が困っていることや、目をつぶってあきらめていることを分解していくわけです。先生たちがおっしゃっているようなことを、分解して誰もが納得するような方法に解決していかないといけない。ハンブルグ長官さんは、レギュラトリーサイエンスをどちらかというとトランスレーショナルサイエンスを社会へ具現化する科学として捉えられておられますが、我々は、レギュラトリーサイエンスはハーモナイズ、コンプライアンスの科学と考えています。情報公開なんて、まさにコンプライアンスの科学だと思いませんか。どこまでを公開し、どこまでは守秘すべき事項なのか、これはバランスをどこに置くかではないのでしょうか。これがまさにレギュラトリーサイエンスです。それを議論して決めていく。しかもそれが日進月歩ですから。今はここまでだけど来年はここまでとかですね。日々変化することを、皆さんに理解いただくことにも本当に時間がかかると思います」

村重
「では、情報公開と自由な議論をもっと活発にということですか」

近藤
「それが原則ですよね。自由な議論をしなければアカデミアにならない。専制国家ではなくアカデミーな国家なのですから。それを皆で、賢い人どうしで議論するのです。風聞で動くのではなくて、ディスカッションして動く。だから先生のデータに基づいたお話が非常にいいのですよ」

村重
「ああ、そうかもしれませんね。考え方は似ているかもしれません」

近藤
「先生のお話は、標題を見ただけでもハっとします。レギュラトリーサイエンスの学問が進めば、日本は世界で最も進んだ国家になるかもしれませんね。人権はもちろん、個人個人だけではなく企業の問題も、デメリットにならないよう、皆のためになるように、きちんとフォローしなければいけない。レギュラトリーサイエンスはものすごく意味の深い学問なのですよ」

村重
「そうですねえ。和の心と科学を一緒にしたような」

村重
「最後に、国民に何かメッセージがありましたら」

近藤
「やはりレギュラトリーサイエンスについてお伝えしたいですね。レギュラトリーサイエンスを進めるためには、カオスの状態にある問題を判断していくためには、分析することも大切です。ですので、様々な薬事に関する高い分析的な仕事にも取り組まなければなりません。また、より難しい薬が多くなってきていますので、益々組織として強化していかなければならないと考えています。今までは一つのものとして考えられていたものをいくつかに分ける必要性も出てくる可能性もあります。そのためにも、分析という研究面も高めていく必要があります。そして、それに取り組めるのはPMDAしかないだろうと考えています。将来は自前で研究所を持たなければならなくなるかもしれませんし、その分、お金も必要になるのかもしれません。もしくは、お金をかけないで研究に取り組まなければならないのかもしれませんが」

村重
「審査員の科学としてのレベルアップですよね。どんどん皆さん専門家としてレベルアップしていただいて、論文を書いたり講演や学会にも来ていただいて、情報が外に出てくると全体のレベルアップにつながりますよね。それが審査や安全対策のレベルアップにもつながっていくんだと思います」

近藤
「おっしゃる通りです」

■ ホメオパシー関連記事(2010年:朝日新聞)

(院長のつぶやき)ホメオパシーは、人の不安につけ込んでお金を搾取するだけでなく健康も害する可能性のある悪質な民間療法ビジネスと捉えることができます。マインド・コントロール(洗脳)された信者達を救い出すのは、オウム真理教にはまった若者達を救い出すのと同様、エネルギーのいる仕事です。

問われる真偽 ホメオパシー療法

(2010年7月31日付 朝日新聞)
 気が遠くなるほど薄めた「毒」を飲むことで病気を治す、という欧州生まれの代替医療ホメオパシーが「害のない自然な療法」と日本でも女性層を中心に人気が高まりつつある。だが、この療法が公的医療の一角を占める英国は今年、議会委員会がその効果を全面否定、公的医療から外すよう政府に勧告した。日本でも裁判が起こされるなど、その効果を巡ってホメオパシーは批判対象にもなってきている。

ホメオパシー200年の歴史、治療の流れ<グラフィック・下村佳絵>

homeopathy200年の歴史.jpg

◇ 自然派ママの心つかむ ◇

 「本当にいいものだから、みんなに知って欲しいんですよ。(中略)病名のつかない症状やメンタルな問題まで対応できる自然療法なんです」
 女優の沢尻エリカさんはホメオパシーについて、講談社のファッション誌「グラマラス」5月号のインタビューでそう語った。作家の落合恵子さん経営のクレヨンハウスが出す育児誌「クーヨン」も2007年以降、ホメオパシー関連の記事を掲載している。
 クーヨン編集長の吉原美穂さんは「自然な子育てに関心が集まり、化学物質が入った医師の薬に不安を持つ人が多い」と、育児の最中の母親らがひかれる理由を説明する。
 国内の代表的なホメオパシー業界団体のひとつ、日本ホメオパシー医学協会(東京)によると、ホメオパシーは今年だけで20回近く雑誌などで紹介され、利用者は国内に数十万人はいるとみられるという。
 ホメオパシーの原理は200年前、ドイツの医師ハーネマンが確立。彼がマラリア治療薬を飲んでみたら、マラリアと同様の症状が起きた。そこで「病気と同じ症状を起こせる物質なら、病気を治せる」という着想を得た。
 似た症状を起こす物質が、似た病気を治すというので「同種療法」と呼ばれる。一方、西洋医学の場合は逆に、病状を消すための治療を行うので「異種療法」とされる。
 ホメオパシー治療は「レメディ」と呼ばれる丸薬のようなものを飲んで行う。「症状を起こす毒」を、よく振りながら水などで薄め、砂糖粒に染み込ませたものだ。薄める毒は、毒草のトリカブトや昆虫、鉱石など約3千種類。
 ホメオパシーでは「薄めるほど効く」ともされる。その薄め方は半端ではない。一般的なレメディでは、10の60乗(1兆を5回掛け合わせた数)分の1に薄める。
 ここまで薄めると毒の物質は、事実上もう入っていないが「薄める時によく振ることで、毒のパターンが水に記憶される」と、協会会長の由井寅子さんは解説する。
 「自己治癒力が病気と闘っている時に現れるのが病気の症状。西洋医学は症状を緩和するが、治癒はさせない」。ホメオパシーで治せる病気は精神病から皮膚病まで多種多様で、がん治療も可能かと聞くと、由井さんは「そうです」と力強く答えた。

◇ 効果否定、「被害」訴えも ◇

 しかし、ホメオパシーは本当に効くのか。
 ニセ科学に詳しい大阪大学の菊池誠教授は「分子が1個も残らないほど希釈するのだから、レメディは単なる砂糖粒」とした上で「最大の問題は、現代医学を否定し、患者を病院から遠ざける点にある」と指摘する。
 今年5月、ホメオパシーが効かず「乳児が死亡した」という損害賠償請求訴訟が山口地裁で起こされた。乳児を自宅出産した母親が、助産師を訴えた。訴えによると、乳児が生まれた昨夏、助産師は一般に多く使われているビタミンKを乳児に投与せず、代わりにホメオパシーのレメディを投与。乳児はビタミンK欠乏性出血症と診断され、約2カ月後に死亡したという。
 インターネット上にも「被害」の訴えは多い。
 6月には都内の医師のブログに「悲劇を繰り返さないため何かできないものでしょうか」と訴える書き込みがあった。血液のがんの悪性リンパ腫で友人を失ったという人物の書き込みで、友人はホメオパシーでがんを治そうと通常の治療を拒否。結果、病院に運び込まれた時には、すでに手遅れになっていたという。
 このブログを開設する大塚北口診療所の梅沢充医師は「自分が実際に診た人のなかにも、ホメオパシーに頼った結果、手遅れになったがん患者がいる」と証言する。
 梅沢さんは患者を病院から遠ざける一因に「好転反応」という用語を挙げる。
 好転反応について、ホメオパシー医学協会の由井さんは「症状は有り難い」との持論で説明する。ホメオパシー治療では、病気の症状がかえって激しく出ることがあるが、それは治療で自己治癒力が向上したことの証しの「好転反応」で、有り難いことなのだ、という理論だ。こんな極論を信じた結果、患者は症状が悪化しても「良くなっている」と思いこみ、病院に行くのを拒否する、というのが梅沢さんの指摘だ。
 ホメオパシーの効果については、玉石混交の論文が多数書かれている。05年にスイスのベルン大学のチームが、110件の研究から極めて良質な8件を選び出し、ホメオパシーの効果の有無を総合判定する論文を英医学誌ランセットに報告した。チームは、良質な論文群を包括的に分析した結果、「ホメオパシーはプラセボ(偽薬)効果に過ぎない」と結論づけた。
 偽薬効果とは、薬効が全くない物質でも、本人が「効く」と信じて飲めば効くことがあるという効果のことだ。つまり、ベルン大の結論は「ホメオパシー自体には、治療効果は全くない」ということを意味している。
 さらに今年2月、英国議会下院の委員会は、ベルン大の報告など多くの報告例を調査検討した結果「ホメオパシーには偽薬以上の効果はないので、英国の公的医療の対象から外すべきだ」とする270ページをこす勧告を英政府に提出した。効果がないことについては「再調査の必要すらない」とまで強調している。
 一方、日本の厚生労働省は今年、ホメオパシーを含む代替医療を現在の医療体制に取り込むことを検討するため、鳩山前首相の所信表明演説に基づき作業班を発足させた。
 がんの代替医療の検証を行っている埼玉医科大学の大野智講師は「日本の行政はホメオパシーを含む代替医療について、ずっと当たらず障らずの立場を続けてきた。効かないものは効かないということも、国は責任を持って情報発信すべきだ」と指摘する。

◇ 担当した長野記者より ◇

 この記事の掲載作業が終わった直後の7月26日、英国政府は、ホメオパシー療法への公的補助を続けると発表した。上記記事にあるように英国議会下院の委員会が、「ホメオパシーには偽薬以上の効果はないので、英国の公的医療の対象から外すべきだ」と勧告を出していた。英国政府は「ホメオパシーに医療上の効果がない」ことに関しては全く反論せず、「委員会の結論の多くについては同意する」としている。勧告に従わなかったのは「患者の選択の自由は、妨げられないから」などと説明した。

5600万円の賠償求める 山口地裁 ホメオパシー絡みトラブル

(2010年8月5日付 朝日新聞)

 山口市の女性(33)が同市の助産師(43)を相手取り、約5600万円の損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。
 訴状などによると、女性は2009年8月に長女を出産。助産師は出血症を予防するためのビタミンK2シロップを投与せず、長女はビタミンK欠乏性出血症にもとづく急性硬膜下血腫を発症し、同年10月に死亡したという。
 女性は、助産師が母子手帳にあるK2シロップ投与欄に「投与した」とウソの記録を残していた▽K2シロップを投与しない場合の出血症の危険性も説明しなかったなどと主張している。一方、助産師は関係者などに対し、ホメオパシーのレメディーを与えたと説明しているという。
 ビタミンK欠乏性出血症は、K2シロップの適切な投与でほぼ防ぐことができるとされる。
 この日の弁論に助産師側は出席せず、事前に請求棄却を求める書類を提出したが、詳細については言及していないという。

◇医師ら以外の処方、問題◇
ホメオパシーを治療に取り入れている、東京女子医大自然医療部門の川嶋朗准教授の話

 ワクチンを打つなとか薬を飲むななどと主張する過激なホメオパシーのグループも存在する。山口のケースでのビタミンK2シロップや抗生剤など、西洋医学で明らかに治療できるものは西洋医学で対応するのが当たり前だ。患者にレメディーを投与するのは医療行為で、医師や歯科医師ら、薬の処方権がある人以外がホメオパシーを使うのは大きな問題だ。

◇考え、科学的におかしい◇
「科学と神秘のあいだ」などの著書がある大阪大の菊池誠教授(物理学)の話

 原子や分子の存在が分かった今では、「元の物質の分子が残らないほどに希釈した水を含む砂糖玉が体に作用を及ぼす」との考えが科学的におかしいのは明らか。科学的なものは不自然で体に優しくないという信念など、「ファッショナブルな自然志向」の存在が、ホメオパシーをはやらせる背景にあるのではないか。ホメオパシーに頼り、医療を拒否する危険性を理解する必要がある。

医療敬遠に危機感 学術会議、ホメオパシー否定

(2010年8月25日付 朝日新聞)

 砂糖玉をなめれば、病気が治るという民間療法「ホメオパシー」に、日本の頭脳集団、日本学術会議が24日、荒唐無稽(こうとうむけい)と「ノー」を突きつけた。副作用も明らかになっている通常の医療に比べ、「自然だから安心」と、自然派志向の女性たちを中心に広まりつつある。しかし、傾倒するあまり、通常の医療を否定して病院から遠ざかり、命の危険にさらされる人たちも出ている。

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ホメオパシーとは

◇ 元利用者「宗教のよう、洗脳されていた」 ◇

 「ビーッ、ビーッ」
 2008年春、埼玉県内の病室で、血中酸素濃度の危険な低下を示すブザーが鳴った。酸素を充満させたビニールテント内のベッドで、生後8カ月の娘が重い肺炎でせき込む。「このまま死んじゃうの」。母親(40)は青ざめた。風邪をひいて1週間。ホメオパシーの療法家に「薬と併用はだめ」と説かれ、ホメオパシーだけに頼った結果だった。

◇ 症状は日々悪化 ◇

 母親は元々、食品添加物などの化学物質を避け、自然な育児を目指していた。インターネットを通じて付き合う「自然派ママ」の間ではやっていたのが、ホメオパシーだった。疑心暗鬼だったが、07年ごろ、腰痛の時に試すと、腰が軽くなったような気がし、効果を信じ始めた。
 08年1月、娘が風邪をこじらせ、医師の薬と同時に、ホメオパシーで使う砂糖玉を口に含ませたが、気管支炎に。療法家に相談すると「薬を使うならホメオパシーはやめて」と告げられた。
 推進団体は、ホメオパシーが効くと、いったん症状が強まる「好転反応」が起こると説明する。この反応は自然治癒力が上がった証拠で「ありがたいもの」だが、薬と併用すると、この反応を抑えて体の負担になってしまう、と療法家に説かれた。
 3月、娘がまた風邪をひいた。ホメオパシーで乗り切ろうとしたが、症状は日々悪化。胸が「ゼーゼー」と鳴る。1週間後、不安に耐えられなくなり、病院行きを決めたという。母親はいま、「娘は入院9日で済んだが、もっと私が洗脳された後なら、危なかった」と振り返る。

◇ 2年間で300万円 ◇

 日本学術会議が最も懸念するのは、ホメオパシーが通常の医療から患者を遠ざけてしまう点だ。30代の女性もそんな一人だ。
 「ホメオパシーは宗教のようなもので洗脳されていた。どんな症状でも過去のトラウマと結びつけて説得され、泥沼にはまってしまった
 数年前、不眠が続き、精神科で処方された睡眠導入剤や抗うつ薬を飲んでも効かなかった。ある雑誌で興味を持ち、日本ホメオパシー医学協会が主催する講演会に申し込むと、個室に通され、DVDを見せられた。「好転反応」の説明と、アトピー性皮膚炎で真っ赤な赤ちゃんが登場し、由井寅子(ゆい・とらこ)会長が「症状はありがたい」と訴えていた。
 観賞後、子どもの頃のトラウマなどを記入するよう求められた。相談料は1万円。ホメオパシーに使う砂糖玉36種類入りのセットや、砂糖玉を電磁波から防ぐ布袋などに約2万円を支払った。
 それから毎日、砂糖玉を飲んだ。しかし、不眠は治らない。療法家に相談すると、「症状は、あなたが味わった過去の痛みだから受け入れて。医者に行かないで」と言われた。半年間、毎月約1万5千円を支払い続けた。
 女性は、協会が主宰するホメオパシーの専門学校に通うことにした。授業料は2年間で300万円超。授業の録音は禁止された。しかし、人が亡くなってもホメオパシーを正当化する主張に疑問を感じ始め、2年ほどで縁を切った。
 自然派志向の女性たちを中心に広まる理由について、代替医療に詳しい埼玉医科大の大野智講師は「通常の医療は、副作用も明らかになっているため『危険』と思ってしまう。一方で、ホメオパシーなどの自然に近いとされるものは『安全』と信じ切って、口コミで広がっているのではないか。リスクが評価されていないだけで、自然イコール安全ではない」と指摘する。

◇ 誤解広まる前に先手 ◇

 「この談話で一番重要なのは、ホメオパシーは科学的に否定されているということです」。日本学術会議の唐木英明副会長は記者会見の冒頭、強い口調で言った。
 ホメオパシーへの危機感を強めたのは、医学系の学術会議で、ホメオパシー関連商品の展示が増えているのに気づいたのがきっかけ。宣伝本をみると、大学病院や公立病院など約20の医療機関が掲載されており、衝撃を受けた。
 さっそく金沢一郎会長に相談。金沢会長は、昨年2月の厚生科学審議会で「(ホメオパシーについて)審議会も把握しておくべきだ」と警告し、その一方で、各国の科学者とも連絡を取った。ドイツでは2004年から、ホメオパシーへの公的医療保険適用をやめた。だが、完全に使用規制するのは難しい状況になっていた。海外の科学者からは「日本もこうした状況になる前に、手を打った方がいい」との助言も受けた。
 社会への影響を考え、日本医師会などの団体に水面下で協力を呼びかけた。だが「なぜホメオパシーだけ」といった反対意見もあり、議論はなかなか進まなかった。
 長妻昭厚生労働相は今年1月、「統合医療はホメオパシーなど色々ある。その効果も含めた研究に取り組む」と発言。西洋医学に漢方やはりなどの代替医療などを採り入れた統合医療を研究するプロジェクトチームを立ち上げた。厚労省も、医師法や薬事法の観点から情報収集は始めていた。ただ、特定団体が通常医療から患者を遠ざけているとの指摘に、「そうした行為を法律で取り締まるのは難しい」との立場。ホメオパシーについて結論は出ていない。
 そんな中、昨年10月に山口市で起きた女児死亡が転換点となった。各団体が「ホメオパシーは危険」との認識で一致、今回の談話につながった。金沢会長は「(ホメオパシーの問題を)厚労相も理解して頂きたい」とくぎを刺した。

◇ 普及団体会長「予防接種、がんを作る」 ◇

 「予防接種はがんを作っています。これは、事実です」
 今年5月、東京都内の日本ホメオパシー医学協会の施設で開かれた講演会で、由井会長はこう断言した。この講演会の参加者の一人は「涙あり、笑いありの2時間半で、全く飽きなかった。聴講者は熱心にメモを取り、最後は泣き出す人もいた」と話す。
 由井会長は「予防接種トンデモ論」などの著書でも、予防接種を「体の中に入る人工毒の代表」として批判している。アトピー性皮膚炎や自閉症、がんなどは予防接種による「医原病」だと指摘。薬に対しても「(病気の)症状を抑え、自然治癒力を弱める」と否定的で、ホメオパシーで使う砂糖玉の役割は、その薬の排泄(はいせつ)反応を起こすこと、と説明している。
 日本学術会議の記者会見には、同協会の機関誌記者も出席。「どの程度、調査したのでしょうか。あまり深くないように思うが」と質問する場面もあった。
 同協会はこれまでの朝日新聞の取材に対し、「現代医療は否定しておらず、協力する立場」と答えてきた。その一方で、8月13日のメールマガジンでは「一連の報道は、日本の国民により一層広く普及していくために通らなければならないステップのようなものだと思います」と、会員に結束を呼びかけていた。
 ホメオパシーを行う団体は他にもある。協会とは一線を画し、患者から必要な治療機会を奪わずにホメオパシー療法を勧める、と主張する。
 医師や歯科医師ら約400人の会員を抱える日本ホメオパシー医学会専務理事の板村論子医師は「ホメオパシーのみを信じ、必要な現代医療を受けなかった人々が出たことは残念。ホメオパシーは医療の選択肢の一つとして、医師が行うべきだ」と話す。日本ホメオパシー振興会の永松昌泰代表は「医学協会の活動や言動がいたずらに現代医学に否定的な行動を誘発している。当会は細心の注意を呼びかけている」と説明する。

「ホメオパシー」についての日本学術会議会長談話の記者会見

2010年8月25日(アピタル・オリジナル記事)

日付・場所
2010年8月24日 日本学術会議大会議室
出席者
金沢一郎・日本学術会議会長
唐木英明・日本学術会議副会長

 記者との懇談会という形で開かれた。前半は、勧告「総合的な科学・技術政策の確立による科学・技術研究の持続的振興に向けて」について。後半が、会長談話「ホメオパシー」について行われた。

記者会見で配布された資料(全12ページのPDFファイルが開きます。後半に図表入りの説明資料あり)
司会 次は、ホメオパシーについての会長談話です。
金沢 これは、(資料を)読んでいただくしかないんだな。
司会 (資料の)うしろにホメオパシーに関する説明資料があります。これもご覧いただきながら。
金沢 読んで頂ければ、一目瞭然なんですけどね。むしろ質問を受けた方がいいかもしれない。
唐木 一番大事なところは、たぶん会長談話の一番最後の3行になります。ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です。このことを多くの方にぜひご理解いただきたいと思います――というのが、一番大事なところだと思います。
司会 それでは、会長談話についてのご質問等があれば。まず、毎日新聞さんから。
記者1 談話、という形式をとられたというのはどういうことなんでしょうか。もっと強い調子のこともありうると思いますが…。
金沢 強い調子。たとえばですが、前の話ですが「あるある大辞典」で納豆食べるとやせるという話のときも、あのときも会長談話ですよ。けっこうやっているんですよ、会長談話というのは。
記者1 最近だと?
金沢 最近だと、食品安全委員会の委員が任命されない事態が起こったときとか。いわゆるリスク評価とリスク管理と、混同ではないかと。あのときは民主党に対して、言ったんだ。当時は野党でしたけどね。そういうのも談話でやっています。むかしと違うんですよね。むかしは勧告といって、もう61、62年たっているわけですが、最初は出すもののすべてが勧告。もう強烈だったんですよね。さきほど言いましたように、脳科学を推進しろ、とかそういうのは自分たちのためなんですよ。でも、そういうのはやめようと。全人類、国民のためにということで切り替わった。それ以後勧告は減りまして、大都市の災害に備えろとか、その程度になった。そういうなかで、ちょっとしたことを言おうではないかと、そういうときに会長談話というのが使われるようになったんですよね。
記者2 朝日新聞の岡崎と申します。2点ありますが、まず1点、なぜこのような会長談話をいまのタイミングで出されたのか、その背景について教えてください。
金沢 あの、これはですね、学術会議っていうのの役割と関係があるんですけどね、いくつか役割があるわけですが、たとえば政策提言ですとか、そのなかの一つに「科学リテラシーの向上」というのがあるんですよね。まあちょっと、リテラシーという言葉が適切ではないかもしれないけれども、国民のみなさんが科学に対してもっている力っていうかね、それを向上させた方がいいと。科学をもっときちんと理解していただくのがいいと。そういう役割があるんですね。そういう意味でですね、たとえばサイエンスカフェだとか、サイエンスアゴラだとか、いろいろやってはいるんですけどね。そうはいうものの、ものを申さなければならない場面というのがあるわけですよ。たとえば、これはいい例かどうかわかりませんけれども、当時の委員だった唐木先生がまとめられたんですが、BSEに対するまとめとか、最近まとめた遺伝子改変作物のまとめなどがあるわけですね。そういう科学を無視してくださらないでちゃんと理解してください、ということを言い続ける義務があるわけです。学術会議にはですね。
 その一環として、いろいろなものを見ていくんです、常に。そのなかの一つにホメオパシーがありました。えー、ところがですね、ご存じのように事件が起こった。で、これは放置するわけにはいかないと思って出したわけです。もちろん決着がついていない、ということはよく知っています。しかし、さきほど最後の3行が読まれましたけれども、やはり医療関係者がこれをすすめるというのは非常に問題がある、ということであります。
記者2 2点目の質問なんですが、この談話を出すだけでなく、たとえば実態調査なり、または厚労省への働きかけとか、学術会議として何かアクションをすることは。
金沢 わかります。大変わかるのですが、あの、談話を出すことがファーストステップだと思います。さきほど「科学リテラシーの向上」といいましたが、誰が向上するのかというとそれは厚労省の方なんで、向上してもらいたい。直接自分で聞いたわけではないですが、厚生労働大臣がなにか口走ったことがあるようで、それはやはり、向こうで考えてもらわないといけない。名指しをする必要はないでしょう。わざわざ反発を招く必要はない。むしろ理解してくださるのが本来の形ではないかと。
司会 ほかにございませんか?
記者3 この関係では、ホメオパシー医学協会とかホメオパシー医学会とか、「学会」という言い方をつかっているところがありますが、それに対して学術会議としての認識は。
金沢 さっきも言いましたけども、あくまでもこれはファーストステップでですね、学術会議としてはこう考えている、と申し上げたわけです。それに対してどういうレスポンスをされるか、というと、反論されるかもしれませんね。
記者4 先生の眼から見ると科学的ではないものが、一方では日本でも世界でも多くの方に、まあ日本ではそれほど多くないと思いますが、世界で一定の影響力をもっているということは、どういう背景があるのだと、いま認識されていらっしゃるのか。
金沢 それは難しい質問ですね。社会学的な考察が必要かもしれませんね。ハーネマンがこういうのを考えついた背景には、当時は本当に西洋医学というものがほとんどない時代ですから、当然といえば当然かもしれないが。いったん、しかし、西洋医学がこういうものを排除した歴史はあるんですよね。最初ゼロからこういうものがスタートして育ってきている、というわけではない。いったんこれはしずまっているんですよ。それがまた盛り返してきている、というように見えるのがたぶん大事なポイントなんだろうと思います。
 それは、反省すべき点がないとはいえない。西洋医学が、患者さんたちに、苦しい思いをしている方々に、どういうアプローチをしてきたかということは、確かに問題になるかもしれません。ただそのこととですね、いいですか、そのことと、科学的に否定されていることだっていいではないか、ということは別物です。ここはあなた方には区別してもらわなければならない。科学を無視してはいけない。そういうことです。あえてここには入れておりませんが、そのほかの替わりになるいろいろなものがありますよね。それをあえて入れていないのはですね、必ずしもみんな、科学的に否定されているものではないからです。これはちょっと余計なことを言ったかもしれないけれども、科学的に否定されたものを、信じさせてはいけません。そういうことです。
記者5 日本ホメオパシー医学協会の「ホメオパシックジャーナル」をやっています。あの、今回…
金沢 議論はしませんよ。
記者5 議論ではなく、調査というのは、どのぐらいホメオパシーについてされたのでしょうか。具体的に、調査が世界中のホメオパシーについて。これを見ると、あまり深く調査されていないような。
金沢 これ見てください。
記者5 あの、、、
唐木 科学の世界では、ホメオパシーは100%否定されています。それで十分だろうと思います。
記者5 調査はどのぐらいされたのかを教えていただきたい。
唐木 調査って、何をおっしゃっているのですか?
記者5 ホメオパシーに関する。
唐木 ホメオパシーの何ですか。ホメオパシーの有効性ですか。
記者5 有効性かどうかわかりませんが、実態がどのようになっているのかという点と、あとホメオパシーが現在問題になっているといいますが、問題になっていることが事実なのかどうか、事実になっているかわかっていないものをあげられていますけども。そのへんについてどのようにお考えになっているのでしょうか。
唐木 会長がさきほどご説明されたように、科学でないものを治療と称して使うことは、適切ではない。というのが、われわれの見解です。
(会見終了)

■ホメオパシーを巡る問題

(その1) 「ホメオパシー療法、信じる前に疑いを」

東京本社科学医療グループ  長野 剛

 「私はホメオパシーを使っています。実際に良さも悪さも実感しています」
 そんなお便りを頂きました。7月31日付の朝日新聞土曜別刷り「be」に書いた「問われる真偽 ホメオパシー療法」に対してです。
 ホメオパシーとは、欧州生まれの代替医療で、最近、国内でも流行りつつあります。記事は「効かない」ことを示す報告や、効くと信じて使った結果、重大な健康被害を受けた例があるとみられることを報じたものです。
 ですが、お便りをくださった方のように「実際に使った。効いた」という意見は、インターネットでもよく見ます。
 あえて言います。あなたが自身の経験で「効いた」というのは、客観的な根拠には全くなりません。実は、放っておいても治ったかもしれない。ホメオパシー以外で受けている通常治療のおかげかもしれません。
 実際に「効く」かどうかを確認するには、検証が必要です。
 効果の検証は、医学の世界ではダブルブラインドテスト(二重盲検試験)という手法が、最上の手法とされています。「医学の世界」というと難しげですが、特に難しい理屈ではありません。
 テストの原理は、患者さんに本当の薬と偽の薬を使ってもらい、効果を比較するものです。このとき、患者さんが「偽の薬だからどうせ効かない」とか「本当の薬だから効くだろう」と思うと、「病は気から」の原理で効くものも効かず、効かないものも効く、ことが起こりえます。
 これを避けるために、患者さんには使う薬が本当の薬か偽薬かは言いません。さらに、お医者さんが「この人は薬を使っているから良くなるはず」と思っていると、実際よりも病気が良くなって見えるかもしれないので、お医者さんも、誰が偽薬を使っているか知らずに、テストを行います。患者さん、お医者さん双方が「本物か偽物か」を知らないので、ダブルブラインドというわけです。
 良くできた検証法でしょ?
 「私には効いた」というご個人の感想では、絶対的な効果を保証するものではない、ということは分かって頂けたでしょうか。
 さて、今回の取材では、ホメオパシー団体からも「効く」とする「学術的」な論文を頂きました。英国のホメオパシー病院で「ホメオパシーを利用した人の7割が健康が良くなった」とするものです。ダブルブラインドの観点からすれば、突っ込みどころ満載でした。
 ダブルブラインドテストを経て「効く」となれば、ホメオパシーは本物です。記事中に紹介したのは、2005年に発表された英医学誌ランセットの論文。ランセットは医学雑誌の中でも最も権威ある論文誌のひとつです。「ホメオパシーの効果」に関するテストを紹介した論文を集め、「ダブルブラインドテストがしっかりできているか」などの観点でふるい分けを行います。その上で内容を分析したところ、「ホメオパシーは効いていない」と結論づけました。
 この論文では、評価する手法についても検証しています。「こんなに厳密な評価だとすべてが否定されかねないのではないか」という批判を想定したのでしょう。通常の医療で使う薬を調べた時の手法を同様に検証したところ、「薬は効く」と判断。つまり、誰もが認める結果をもたらすことから、この論文の検証手法が正しいことを示しました。
 また、このランセット以外にも、多数の研究報告を分析し、「ホメオパシーは効かない」と報告した論文があり、少なくない論文がホメオパシーの効果を否定しています。
 記事中に、英国会の委員会が「ホメオパシーには効果がないので、公的医療の対象から外せ」と英政府に勧告をした旨も紹介しました。
 実は、beの印刷が始まったあとの7月28日、英政府が議会の勧告に従わなかったことを知りました。すぐに英政府の26日付の回答文を読んだのですが、実は、「効果がない」ことには、全く反論がありませんでした。英政府としても「ホメオパシーの医療効果上の根拠は弱く、あるいは存在しない」という認識で、勧告に従わなかったのは「患者や現場医師らには選択の自由がある」ためとのことでした。
 なんだか、納得いかないのですが、ホメオパシーの業界団体によるとホメオパシーは英王室御用達だそうなので、なかなか難しいのでしょう。英議会事務局の担当者によると普通、議会の勧告には60日程度で政府の返答があるようですが、ホメオパシー問題では半年近くかかったのもそんな特殊事情のせいかもしれません。勧告をまとめた英国会の議員さんたちは、かなり思い切った行動だったのでしょう。一種、尊敬を感じます。
 くどくどと書いてきましたが、何が言いたいのかというと、大事なお命や健康を守るため、もっと注意深くなって頂きたいのです。
 記事で紹介したようにホメオパシーで「治る」と信じたのに治らず、なくなるケースさえもありそうだ、ということです。なので、まず、ホメオパシーを含む代替医療に頼る場合、「信頼できるものかどうか」をしっかり考えて頂きたい、と思うのです。特に重い病気を患っていらっしゃる場合、「効かない」と思えたときにはすでに手遅れ、ということもありえます。
 私がホメオパシーの記事を書こうと思ったのはかなり昔です。近所のお母さんで、お子さんの食物アレルギーをホメオパシーで治そうとしていた方がいたのです。「アナフィラキシーが起こってもホメオパシーで治すの? 死ぬんじゃないか?」と思いました。
 具体的な「被害」の例がつかめず、なかなか書けなかったのですが、「be」の流行紹介のコーナー(be report)で書くという手を思いつき、6月中旬に着手した次第です。
 ただ、もっと具体的な「被害例」を集め、ホメオパシー治療の実際について、もっと世間に発信したいと思っています。「治る」と信じた結果、かえって通常医療を受ける機会を逸してしまったような方は、いらっしゃいませんか? ぜひ、お話をお伺いしたいと思います。お心当たりのある方はぜひ、アピタル編集部(apital&asahi.com)=&を@に変えてください=までご連絡ください。よろしくお願いいたします。

(その2) 続「ホメオパシー療法、信じる前に疑いを」

 前回のエントリー 「ホメオパシー療法、信じる前に疑いを」 を読んで下ったみなさん、ありがとうございます。いろいろご意見、ご批判、ご声援を頂き、本当に有り難い限りです。本日8月5日、同僚たちが助産師に広がるホメオパシーに関して、 社会面に記事 を書きました。こちらも併せてごらんください。
 お寄せいただいた多くのコメントにお答えする十分なスペースがとれなかったため、新しいエントリーを立てさせて頂きました。

○ Norah_Sさま、neko_asahiさま、みつぼんさま、牡丹さま

 おっしゃるように、ホメオパシーを含む代替医療は、「医療を補う存在として」使われていると思います。あるいは大きな危険に出会うことなく「幸福感を得ている」方も多くいらっしゃると思います。そのような方々に、「それは効きませんよ」と伝える必要はあるのか。難しい問題だと思います。
 エビデンスベースドメディスンという、治療上の証拠に基づく医療が重要視される現在、裏を返せば、重病の患者さんが「5年生存率××%」というシビアな数字を知る機会も増えていると思います。もちろん、それを正面から受け止めて、闘う患者さんもいらっしゃれば、できれば忘れたい、と言う方もいると思います。仮に全く効かない代替医療であれ、シビアな医学の数字のショックを和らげてくれる精神的な効果があるのなら、それを使った方が患者さんの幸せ度は上がると思います。
 ただ、記事にも書きましたように「好転反応」という概念を信じさせられたため、患者さんが病院に行くのを拒んでしまう、というケースが、実際にあると考えられます。その時、やはり、「効かない」という事実が周知されていることは、大変重要かと思います。
 患者さんが病院を拒否し、それが決定的な健康リスクを生む、という現象が、世の中にどれくらいの頻度で起こっているか、私は知りません。極めて少数の現象なら、そして、代替医療が提供している幸せが膨大な量に上るなら、仮に全く効かない代替医療であれ、「無効」と宣告することは、社会的に「必要がない」という結論に至ることもあり得るかもしれません。
 大変悩ましいです。ただ、私の考え方は、少なくとも「患者さんを病院から遠ざける代替医療」に関しては、排除しなくてはいけない、というところにあります。そのためには、効かない代替医療は効かない、という事実は明確にされる必要があると思います。やはり、うまく言い表せないですね。ごめんなさい。
 あと、誤解を避けるために一言。ホメオパシーがどうかは別にして、代替医療の中にも効くものはあるかもしれないと思います。もちろん、それはダブルブラインドテストを経て効果が確認されて始めて、そう言えるわけですけど。

○ bkbkさま

 薬事法。そうなんですよね。私も違反なんじゃないか、と疑う気持ちは持っています。もちろん、法律の素人なので、断言はできませんけど。日本ホメオパシー医学協会会長の由井さんに取材させて頂いた際も、その件に関する由井さんの言い分はうかがっています。どこかの記事で紹介できるといいんですが・・・
 ただ、ホメオパシーが社会的な大ムーブメントになっていれば、その疑問を検証するだけで記事になってしまいますが、現時点では紙面に載せる記事として成立しない気がします。「被害」例があれば、それを報告する中で、うまく織り込みたいと思います。そのためにも、キチンと取材できる具体的な「被害例」が必要なんですよね。鋭意、探させて頂こうと思います。
 ところで、ホメオパシーを使っていらっしゃった喘息のご友人の件、よろしければ詳しくお教え願えませんか? ブログ上ではなくて、前エントリでご案内したメールアドレスでよいのですが。

○ okamottiさま

 西洋医学も万能ではありません。では、他のものがもっと良いのか、というと、そうは言えないと思います。少なくとも、西洋医学を捨てて、それだけに頼ることは危険だと思います。
 私自身の結論もokamottiさんと同じで、医は仁術。本当に患者さんの健康を思えば、少なくともエビデンス(治療効果上の証拠)がある治療が数多く確認されている西洋医学を捨てろ、とは言えないですよね。

○ AAYAKOMさま

 一方的な書き方だとお感じになったのなら、私の未熟さのせいでしょう。申し訳ないです。由井さんが主張されるホメオパシーの効果については、きちんと紹介させて頂いたつもりなのです。

○ 我楽者さま

 海外の情報提供、ありがとうございます。同僚が本日、社会面に書いた記事の中でデータを使っています。

○ Socchokskiiさま

 ご指摘、ありがとうございます。現代医療において、慢性病の患者に対する心のケアのあり方などは、ご指摘の通りだと思います。さらに、様々な問題があることは、我々も報道させて頂いております。ただ、今回は、ホメオパシーについて、情報提供をさせて頂きたいと思った次第です。

○ Kataseさま、オヨネサンさま、pomposoさま、うたにさま、あさちゃんママさま、怠けウサギさま

 激励やご指摘、ありがとうございました。感謝しています。
そして、お読みになってくださった多くのみなさま。本当にありがとうございました。

(その3) 続々「ホメオパシー療法、信じる前に疑いを」

 初回のエントリー 「ホメオパシー療法、信じる前に疑いを」、前回のエントリー続「ホメオパシー療法、信じる前に疑いを」に、本当にたくさんのコメントを寄せていただきました。ありがとうございます。私にとっても、寄せられたコメントは、とてもためになっています。
 さて、私自身は、ホメオパシーのレメディー自体に、なんらかの効果があるとは思っていません。それは、記事にも紹介した2005年のランセットの論文や、その他のホメオパシー研究を集めて検証した論文が、妥当で説得力のあるものだと思っているからです。それは「効果がない」ことの検証になっています。
 もう一つ、理由があります。「効果がない」ことの検証ではありませんが、「効くわけ無い」という理屈です。
 いい例があります。どこかで見たのですが、「水道水は最高のレメディー」というジョークです。種明かしとしては、「レメディーは、元のものがなくなるぐらい薄めて作るんだから、いろんなものが薄まりまくって入っている水道水は最高のレメディー」という話です。
 記事でも紹介したとおり、レメディーは、様々な「病気の症状を起こす毒」を薄めた水を、砂糖粒にしみこませたものです。ホメオパシーでは、この砂糖粒にしみ込ませる水が大切だと考えられています。
 ホメオパシーを大事に思っていらっしゃる方には、本当に失礼な話ですが、そのジョークを検証してみたいと思います。関西の水瓶、琵琶湖の水を全部使ってレメディーを作りましょう。どれだけの「毒」が必要か、計算してみます。
 一般的に使われているレメディーは、「30C」の希釈が繰り返されます。「C」とは100分の1に薄めることだそうです。30Cは100分の1に薄めることを30回繰り返しているので、元の物質を10の60乗分の1に薄めることになります。「10の60乗」とは、1の後にゼロが60個ならんだ数です。
 では、思考実験です。よくレメディーに使われるトリカブトを30Cにしてみましょう。
 Wikipediaによると、琵琶湖の貯水量は27.5立方キロ。だから、必要なトリカブトは27.5立方キロの10の60乗分の1ですよね。

 27.5立方キロ÷10の60乗
 =275億立方メートル÷10の60乗
 =2.75立方メートル÷10の50乗
 =27億5千万cc÷10の50乗
 =2.75cc÷10の41乗
 2.75cc(重さで言えば、ほぼ2.75グラムです)を1兆の1兆倍の1兆倍の10万倍の数字で割った量のトリカブトしか、琵琶湖の水を全部レメディーにするのには必要ありません。ちょっとした計算ですが、あまりに極小となる数字に自分でもびっくりです。
 ただ、レメディーは薄めるだけではなく、作るときに良く振ることが必要だとされているそうです。英国の科学ジャーナリスト、サイモン・シンさんが共著者とお書きになった「代替医療のトリック」によると、ホメオパシーの創始者ハーネマンは、レメディーを馬車で運ぶと「効力=ポテンシーが高まる」と気付き、薄める際に良く振るようになったみたいですね。
 例えば、こう考えられませんか?
 山の渓流沿いにトリカブトが生えていました。何かの拍子で、トリカブトの一部がほんのわずか渓流に落ちます。激流にもまれてゆられるのは、馬車に揺られるのとそう変わらないでしょう。その水が琵琶湖まで流れ着いても、「馬車」と同じようには揺れないでしょうが、風で波立ったり、水流が発生したりして、もまれます。さて、この琵琶湖の水は、何らかの効力があるのでしょうか?
 あるいは、水晶もレメディーに用いる「毒」です。水晶は質のいい石英です。石英なら、渓流の岩にもあるでしょう。なかなか水に溶けるものではありませんが、激流に洗われて少しくらいなら溶けそうです。すると、琵琶湖の水はすべて、シリカ(水晶)のレメディーをつくるもとになるでしょう。
 アコナイト(トリカブト)のレメディーは、かぜのひき始めや熱の出始めに。シリカ(水晶)のレメディーは消化不良や便秘に効くことになっています。でも、水道水を飲んでいたら風邪をひかないか、便秘にならないか。そうではないですよね。
 論より証拠、という言葉があります。上に書いたのは「論」です。
 証拠、つまり、「使ったら効いた」か「使っても効かなかった」かを、総括的に検証したのが、私が冒頭に挙げたランセットの論文などです。こちらについては、「問われる真偽、ホメオパシー療法」の新聞記事でも、ブログ「ホメオパシー、信じる前に疑いを」でも書かせて頂きました。答えはご承知の通り「効かない」です。
 もちろん、論も論理立てを間違えば誤った結論になりますし、証拠も見誤ることはあります。ですが、私自身は今、そのような理解でいます。
 うさぎ林檎さんは 「私は実は医療従事者がプラセボ効果を利用することにも反対です。何故?と謂えばそれはやっぱり"嘘"だと思うからです。プラセボ効果というのは与える側が「効かない」と説明した途端に消えてしまうものです、ですから「効く」と"嘘をつく"必要があるのです。"嘘"を挟んで人間は本当に信頼関係を築けるものでしょうか?そこにあるのは"豊かな可能性"でしょうか?私は疑問です」 と書いてくださりました。
 私も基本的には賛成です。ただ、lamer さんが言うように、ファンタジーの効用はあり得ると思います。すぐ治るような軽い風邪ひき程度の不調に、ファンタジーは不要かと思いますが、非常に厳しい病状で希望を失っている方にとって、ファンタジーが全くないのは辛いことではないだろうか、とも思います。
 前のブログで Norah_S さんがご指摘された「神」のような存在があれば、救われるのかもしれません。最近、精神腫瘍科というがん患者の心をいやすような診療科も、できてきました。こういう取り組みをもっと進めないといけない、と、思っています。
 ところで、うさぎ林檎さんが挙げてくださった、英国のガイドライン、私もネットで原本を見ました。ホメオパシーを使ってはいけない対象の疾患は、重い病気ばかりです。ホメオパシーの経験が日本とは比べものにならないほど多い英国の判断は、重い病気でホメオパシーのみに頼ってしまう危険性を熟知しているからじゃないか、と思いました。
 リストの中にマラリアがあったのは、皮肉でしたね。200年前、創始者のハーネマンがホメオパシーの原理を「発見」したきっかけになった疾病ですから。
 なお、「長野記者はレメディーを試したのか」とのご指摘も頂きました。試していません。私にとって、ホメオパシーの取材はどきどきするものです。正直にいって臆病者の私には、負のプラセボ効果がありそうです。

(その4) 赤ちゃんは治療法を選べない

東京本社科学医療グループ  岡崎明子

 みなさん、長野剛記者のブログにたくさんのコメントをありがとうございます。
 8月5日付の朝刊「『ホメオパシー』トラブルも 日本助産師会が実態調査」の記事と、 11日付の朝刊「代替療法ホメオパシー利用者、複数死亡例 通常医療拒む」の記事を長野記者と一緒に取材した岡崎明子です。
 「助産師の間でホメオパシーが広がっている
 そんな話を聞いたのは、代替補完医療の科学的根拠について研究しているある大学の先生との雑談でした。山口市の助産師の訴訟については知っていましたが、それは特異なケースだと思っていました。
 助産師がかかわる「自然なお産」は、ちょっとしたブームです。
 会陰切開をしない、ベッドの上にこだわらず、自分の望んだスタイルで産む――
 雑誌で特集されたり、芸能人がインタビューにこたえたりしているのを読むと、産科医が管理する病院での出産は、自然の摂理に背くことのように思えてしまいます。複数の友人に「いい助産院、知らない?」と聞かれた経験もあります。
 確かに、戦後しばらくまでは自宅の布団の上で、「産婆さん」の助けを借りて産むのが普通でした。しかし、そのころの新生児死亡率は、現在の死亡率と比べると20~30倍も高いのです。出産の時間さえも決めてしまう病院の行き過ぎた管理出産には私も反対ですが、リスクの高い出産でも「自然なお産」にこだわるのはどうかと思います。
 話が少しずれてしまいましたが、「自然なお産」の流れに、ホメオパシーの言う「自然治癒力を高める」というキャッチフレーズは、大きな親和性があるのでしょう。日本助産師会への取材でも、ホメオパシーを実践しているのは、比較的若い助産師が多いとのことでした。
 日本助産師会のスタンスは、「ホメオパシーを含む代替補完医療を全否定はしないが、通常医療を行わないのはおかしい」というものです。実際の現場でも、妊産婦さんに「ホメオパシーではこういうことを行う。通常医療ではこういうことを行う」と選択肢を示した上で、本人に選んでもらうとのことでした。
 でも、ホメオパシーを信じている助産師からの説明は、公平でしょうか。その説明を受けた妊産婦さんが、いわゆる自然なお産を志向していれば、ホメオパシーを選択してしまうのは、容易に想像がつきます。
 日本助産師会の機関誌の8月号では、特集記事として「産科における代替医療を考える」が掲載されています。この中で、ある助産師がホメオパシーを薦める原稿を載せており、こんな一文で締められています。
 「ホメオパシーと助産師ケア、その考え方の根拠にあるものが共通だから、助産師はホメオパシーに惹かれてしまうのではないかと思います」
 赤ちゃんは、治療法を選べません。
 日本助産師会は根本的に、この問題に対処すべきではないでしょうか。

(その5) 普及団体に最低限の社会責任を

東京本社科学医療グループ 長野剛

 皆さま。日頃のご関心とご助言、ご批判に感謝しております。
 日本学術会議を筆頭に、各団体によるホメオパシーへの問題提起が相次いできました。岡崎記者とともに25日の朝刊で、その背景まで含めて詳報できたのは、情報をメールでお送り頂いた皆さま、書き込みを頂いた皆さま、そして、もっと多くの関心を持ち続けてこられた皆さまのおかげに、ほかなりません。改めて感謝の念を伝えさせて頂きます。
 さて、日本学術会議(会長談話のPDF)。ホメオパシーが科学的には「効果がない」ことを、公共性が極めて高い機関としては初めて、宣言したという意味で、大変意義があったと思います。特に、ホメオパシーをまだよく知らない多くの方々に、「頼ることで、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性」を指摘し、注意を促した点は大きいと思います。
 ただ、会長談話には多少、残念に感じた点もあります。
 それは、日本学術会議が行ったホメオパシーに関する検証の過程が詳細に説明されなかった点です(記者会見の詳細はこちら)。7月31日のbe report「問われる真偽、ホメオパシー療法」でご紹介した、今年2月の英国議会下院の科学技術委員会の勧告は200ページを超す大ボリュームのものでした。どのような論文を検証し、数多くの論点について、どう判断したのかが詳述されています。委員会は英政府に「ホメオパシーを公的医療から外す」よう勧告し、それを政府は「患者や医療現場の選択の自由」などを理由に断りましたが、「効果がない」ことには異議を唱えませんでした。
 今回の談話は、ホメオパシーを信じる方には非常に受け入れるのがつらい内容です。それだけに、検討過程を細やかに提示しないと、「権威が真実をよそに一方的に断定した」と思われかねません。確かに、会長談話は2005年の英医学誌ランセットに掲載された論文と英国下院の勧告を、根拠として挙げています。その根拠を、日本学術会議としてどのように検証したかという過程は、論文などの内容とあわせて、詳しく紹介されるべきものでしょう。ホメオパシーを信じる方にも、十分に考える材料となりえる科学的データを提供した方が、より説得力のある談話になったと思います。
 そして今後、私が非常に期待したいのは、現代医療の関係者以外の「ホメオパシー治療者」に対して、社会がどう対峙するべきかという提言です。
 皆さまが情報をお寄せ下さったおかげで現在、私たち担当記者は、8月11日の「ホメオパシー使用者に複数死亡例」の記事の段階よりも、多くの健康トラブル例を知っています。ホメオパシーを使わなければご存命だった方か、を完全に検証することはできませんが、少なくともホメオパシーの影響で現代医療から遠ざかった人々であることは確かです。それぞれの例に携わったホメオパシー療法家は、助産師だった例を除き、現代医療の従事者ではありません。助産師を含め、任意の団体が独自に作った認定基準による療法家、あるいはそれを目指して勉強中の学生が、すべてのケースに関わっていました。
 記事で何度も紹介させて頂いたとおり、任意団体の認定療法家は「好転反応」という言葉で患者の皆さんを惑わせてきました。「好転反応」は、「ホメオパシー療法が効くと、一時的に病気の症状が重くなるが、それは自然治癒力が高まった証拠のありがたい反応である」という理屈です。これを信じた患者さんは、症状が重くなっても「これは病気が良くなっている証拠だ」と思い、病院に行くのをやめる、という行動に移るのです
 ホメオパシー普及団体は「そうではない。その患者さんの理解は間違っている」と言うかもしれません。ただ、少なくとも、普及団体側の療法家の言説を、そのように理解して、病院から遠ざかった人々がいるのは現実です。もし、その理解が誤解であるなら、患者さんに誤解をさせないようにし、また、誤解を解くのが社会に存在する団体としての当然の責務でしょう。そして、問題が起きれば真相を明かして改善し、さらには適切な責任をとるのが当然です。
 少なくとも、現代医療に関わる方々は、その医療行為の内容に対し、責任を持たなくてはいけないことは、自覚していらっしゃると思います。そして、不適切な治療の結果、生じた患者さんの健康被害について、しかるべき責任をとることも、当然のことと思っていらっしゃるでしょう。逆に、不祥事の隠蔽が発覚したとき、マスコミ報道を含めた厳しい非難の声が飛び交うのは、医療関係者以外の皆さまもよくご承知のことと思います。
 8月11日の記事でご紹介した死亡例に関わった療法家は、「説明対応は自分を認定した団体に任せている」と言いました。そして、その団体は取材に対しては「調査中」だとして、責任について回答していません。
 「ホメオパシーに頼ることによって、確実で有効な治療を受ける機会を逸する可能性」を本当に減らすためには、今回の日本学術会議の会長談話よりもっと踏み込んだ策が必要だと考えます。今後まず、任意のホメオパシー普及団体を最低限の社会的責務を果たす存在にするため、新たな社会的枠組みを作るべきではないでしょうか。
 新しい法律が必要かもしれません。日本学術会議は、約84万人の科学者を代表する組織であると同時に、政府への政策提言を目的とする機関です。繰り返しますが、私は日本学術会議の会長談話はとても意義深いものだと考えています。そして、この談話が「第1弾」に過ぎないことを、願っています。
 そしてもちろん、このブログを読んで頂いている皆さまにだけでなく、朝日新聞の紙面や医療サイト「アピタル」でも、同様な問題提起をしていきたいと思います。
 問題提起には「事実」こそが強い論拠になります。つらいことですが、「ホメオパシーに傾倒して現代医療を避けていた人が亡くなった」というような悲しい「事実」を掘り起こし、世にお伝えしていくしかありません。そして、私たちがまだ、想像もできないような違うタイプの悲しい「事実」も、あるのではないかと思っています。
 皆さま。
 私たちは引き続き、ホメオパシーを筆頭とする民間療法の諸問題に取り組んでいきたいと思っています。世に訴えるべき「事実」を知るために、引き続き、皆さまのご助言、情報のご提供を頂きたいのです。お心当たりのある方は、または当事者の方は、ぜひ、アピタル編集部(apital&asahi.com 、&を@に変えてください)まで、ご連絡をお寄せ頂ければ幸いです。

(その6)  「思いこみ薬」という判断力

東京本社科学医療グループ 長野剛

 同僚の岡崎記者と私の署名で、9月2日の朝日新聞朝刊に記事が載りました。「保健室でホメオパシー」です。公教育の場で、少なくとも「科学的根拠が示されていない」民間療法が実践されることは、生徒にとって誤解を生む教育になっているのでは、という問題提起として書いたものです。
 この記事の取材、執筆でも、皆さまからお寄せ頂いたメールの情報やブログのコメントが、大きな力となりました。改めて感謝の意をお伝えいたします。
 ネット上では、この問題が数年前から指摘されていました。様々な現場にいらっしゃる方々が発信する情報は、非常に真に迫ったものも多く、重要だと思います。一方、現場や関係者の方々にお話をうかがい、事実確認をしたり、さらなる事実の発掘をしたりすることが私たちの仕事です。
 高い問題意識を持った方々のネットなどでの発信と、私たちの職業上の機能をうまくあわせることで、社会により有益な情報を発信していけるのではないか。そんな可能性を、ホメオパシーの取材を通じて、感じております。皆さま、今後ともよろしくお願いいたします。
 さて、岡崎記者と私は8月30日から沖縄入りしました。観光客で混み合う那覇空港から、岡崎センパイを乗せたレンタカーを運転し、現場に向かったのです。正直なところ、風景は素敵な亜熱帯。これからの取材で解き明かそうとした問題とは、ほど遠いムードでした。
 そんな中、現場の中学校区に着き、見かけた生徒さんに声をかけると「レメディーをもらっています」との言葉が出て、びっくり。レメディーとはホメオパシー療法で用いられる砂糖玉ですが、他の生徒さんにも聞いていくと、こちらが「レメディー」という単語を口にする前から「レメディー」について語ってくれるなど、校内での浸透ぶりがよく分かり、非常に驚きました。
 ホメオパシーの理論や効果を信じていたと疑われる例や、生徒が自宅でも使用していた例もありました。「保健室の先生」が用いることで、科学的根拠のないものを「根拠がある」と誤認させていた可能性があります。「(普通の)薬はダメ」という養護教諭の発言も、生徒さんたちは聞いていました。
 これまで私たちが伝えてきた「ホメオパシー利用者の死亡例」は、現代医学を否定して末期まで病院にかからなかった方々でした。現代医学の否定の程度には差はあるかもしれませんが、やはり「薬はダメ」とすることは危険だと思います。
 一方で感心したのは、取材に応じてくれた生徒さんたちの判断力です。
 記事でもご紹介したように、レメディーを「思いこみ薬」と呼ぶ生徒さんたちがいました。腹痛などの時に養護教諭に与えられるものの、疑いを持つ自分にはさっぱり効かない。でも「効く」という生徒もいる。「効くと思いこんでいるから効くんじゃないの」という訳で、「思いこみ薬」なのだそうです。
 科学の世界では「レメディーの効果は偽薬(プラセボ)効果」と指摘されます。「効くと思うことで一定程度出る効果」です。生徒さんたちは、自身と周囲の経験を客観的にとらえて考えた上で、偽薬効果だと判断していたことになりそうです。
 薬剤などの効果を確認するには、緻密に計画された検証実験が必要です。その基礎となる「客観性」を備えた考え方をする生徒さんたちに、本当に感心しました。
 ホメオパシーに限らず、どんな案件でも、それを受け入れる前には「判断」が必要だと思います。思いこみを廃し、できるだけ多くの情報を客観的に判断することが、どんな局面でも、自分自身を守る最大の武器ではないでしょうか。
 「判断力」を伸ばしていくことこそ教育には大事なんだ、と感じさせられた取材でした。それを教えてくれた生徒さんたちにも、感謝の気持ちでいっぱいです。
 蛇足ですが今回、「レメディーを作る装置」があることも確認できました。製法は「ただの砂糖玉」を機械に入れて「電磁波」(?)をかけると、「効果を持ったレメディー」になると、生徒さんたちは聞いていました。どうやら、「症状を起こす物質」を気が遠くなるまで薄めた水を砂糖玉にかけて作る本来の製法とは違うようです。養護教諭は、保健室でこの装置を使っていたそうです。
 いろいろな疑問に答えていただきたい、「レメディーを作る装置」を見せていただきたいと取材をお願いしました。ですが、養護教諭からは、校長先生でも教育委員会でもなく、「ホメオパシー普及団体を通して取材を」と要請され、直接お伺いすることはできませんでした。

(その7) 家族が信奉者、どう向き合えば?

東京本社科学医療グループ 長野剛

 先日のことです。私たちホメオパシー取材に関わる記者に、1人の女性から相談がありました。
 その女性の息子さんのお嫁さんがホメオパシーを信奉し、お孫さんが病気になっても病院に連れて行かず、薬も与えない、困っている、という相談でした。お孫さんはまだ、小学生に上がる前だということで、大変ご心配の様子でした。
 お嫁さんは出産時、助産院でホメオパシーを教えられ、信じ込んだようです。少なくとも普通の医療は受け入れるように勧めても、受け入れてくれない。どこに相談に行けば、対処の方法を教えてくれるのだろう、とおっしゃっていました。
 これまで報道してきたとおり、ホメオパシーを信奉する余り現代医療を拒否し続けた人や、同様に現代医療を否定した人のお子さんに、死亡をも含む健康被害が出ています。ご心配はごもっともだと感じました。
 どこに相談にいけばいいのか、少しでも助言できればよかったな、と思います。ですが、残念ながら、私はその答えを持ち合わせません。
 同じようなお話は、インターネット上でもたくさん拝見しています。ホメオパシーに傾倒した奥様と離婚した方へのかなり詳細なインタビューが掲載されたブログは、ネット上でもかなり注目を集めていました。ご存じの方も多いと思います。
 でも、健康被害が起こる前に、あるいは家庭不和が起こる前に、どうすればよいのか。
 児童相談所も、具体的に虐待などと判断できなければ、介入は難しいらしいといいます。それに、できれば、行政に家庭内に入ってもらうような事態は避けたい、というのも、普通の人情だと思います。どうしたらいいのでしょう。
 少なくとも、現代医療は「治療上の効果の証拠が確認されている」療法を行うことを目標とし、既存の療法が検証されて「NO」の結果が出た際には使用をやめる、というものです。各療法の限界についても評価された上で、行われています。年々、よりよい治療法が選抜され、生み出されています。
 一方、ホメオパシーは論理的な見地から「治療上の効果がない」とする報告まで存在する「療法」です。
 奇跡のような「効果」をホメオパシーに期待するのはともあれ、現代医療を拒否することは危険すぎると思います。ホメオパシーを使うなら、最低でも現代医療との併用が必須だと思います。しかしながら、それをどう、身内の信奉者に理解してもらうのか。
 お気づきの通り、今回のエントリーには結論はありません。当事者でもない私が、万全の対処策なんて考えられるわけがありません。でも、何か解決策はないものでしょうか。同じ境遇の人たちが意見を交換するような仕組みはできないものでしょうか。
 ネットを見ていると、私たちの報道について「ホメオパシーを陥れるための陰謀だ」などと言い、ホメオパシーに固執する気持ちを強くする方々もいるようです。お身内の方々にとってはさらに、冷静な議論が難しくなっているかもしれません。
 正直なところ、忸怩たる思いでこのエントリーを書いています。皆さまのご意見をお聞かせ願えないでしょうか。
 いつも活発なご議論を頂き、ありがとうございます。関連の記者ブログは、これで7本目になります。皆さまのコメントを拝見したり、取材したりする中で、ホメオパシーを巡る問題は決して「効くか効かないか」だけではないなぁ、と改めて感じています。

(その8) 問いかけの原点

東京本社科学医療グループ 長野剛

 皆さま、お久しぶりです。
 このブログにコメントを下さっていたNATROMさんのブログで、大変興味深いご指摘がありました。ぜひ、ご紹介したいと思い、久々にエントリーを立てさせて頂きました。
 ブログのエントリーは先日、弊社の山口総局の記者が特報した「「ホメオパシーで長女死亡」助産師と母親和解 山口地裁」の記事と、それに対する普及団体、日本ホメオパシー医学協会の反論に関するお話でした。NATROMさんは、「ホメオパシー訴訟の和解がもたらした最大の成果」は、協会の反論の言葉の中から「ホメオパシーのレメディー(記者注:ホメオパシーに用いる砂糖玉)は、ビタミンK2のシロップの代用にはなりません」という言葉を引き出したことだ、と述べています。
 NATROMさんの指摘では、協会やその会長、関連の療法家育成学校は過去、ホームページや著書で「レメディーはビタミンK2シロップの代わりになる」との内容の主張を続けてきました。私も実際、ホームページを確認しましたが、そのようにとれる記述はありました。
 例えば、NATOROMさんがご指摘された部分です。協会系の療法家育成学校の「体験談」コーナーでは2007年3月9日付けで、「出産後K2シロップを与えたくない」と言う利用者に対し、「先生」と名乗る人が「K2シロップの件ですが~中略~代わりにそのレメディーを与えていただいてもかまいません」と答えています。
 弊紙の紙面でもお伝えしてきたとおり、ホメオパシー側は、通常の医療の否定につながるような言動を続けてきました。例えば、協会会長の由井寅子さんが書いた「予防接種トンデモ論」では「日本人は薬漬けになっていて、それが日本のクライアント(記者注:ホメオパシー利用者)がなかなか治癒していかないことと深く関連している」とか「日本人には医原病というぶ厚い壁があった」などと書いています。
 通常医療に用いられる薬の全体を否定しているようにもとれる文章で、「ずいぶん乱暴だなぁ」と思ったものです。協会は私たちの取材に「現代医療は否定しておらず、協力する立場」と答えるなど、確かに通常医療を全否定はしていませんが、否定的な言動はそこかしこにありました。
 そういう意味で、「レメディーはビタミンK2のシロップの代用にはならない」という見解を協会自身が公表したのは、非常に意義あることだったと思います。少なくとも、現時点の科学的な見地から真実とみられる事実を、ホメオパシー利用者がもっとも信用していると思われる協会自身の言葉として公表したことになるからです。
 私は以前のエントリーで、「普及団体に最低限の社会責任を」と訴えました。
 最低限の社会責任とは何か。それは、普及団体自身の言説などによって、患者が通常医療から遠ざかる事態を、団体自身の責任において回避させる、ということだと思います。もちろん、ホメオパシーだけに限った話ではありません。
 その意味で今回、協会の弊紙の記事への反論文は、ごくごく一部ではありますが、この責任を果たしたものと考えます。
 手前みそになりますが、こういう協会側の反応を引き出したものの一部は、我々が行ってきたホメオパシーに関する報道だったのではないかと思っています。そして、その報道を可能にしたのは、NATROMさんをはじめとする、ネット上で問題点を追求し続けてこられた方々のご指摘でした。
 ホメオパシー報道に関連して今夏、毎日新聞記者の石戸諭さんは、「ネット上には良質な専門的知識がそこかしこに点在している。私は、記者の取材力と読者の専門知を結びつけることが次世代の新聞に必要だと思う」と、紙面で指摘されました。私も全くその通りだと思います。
 誰もが接続できるネットではありますが、一定の意志、あるいはある程度の知識を持っていないと、必要とする情報にはつながらない、というローカル性があります。さらに言えば、真実でないものも混じっています。
 我々、マスコミの持つ機能は、社会に必要な情報を収集し、真贋を見極め、記事にすること。そして記事にすることとは、ローカルな存在だった重要事実を、必要とするローカルの枠外にいる人々にお伝えすることです。それは、今も昔も変わっていません。
 これまでも、私たちが頼りにしてきたのは、組織の矛盾を極秘裏に教えてくれる内部の人々、社会的な怒りから誠実に情報収集した人々、不条理な事実を押しつけられた当事者の人々でした。その人たちに、私たちは、つてをたどってなんとかたどり着くこともあれば、その方々が勇気を持って私たちに連絡してくれることで、つながったこともありました。
 今、ネットという手段ができました。まだまだ身近になって十数年の歴史しかない道具ですが、私たちはつながりやすくなったと思います。

ホメオパシーだけじゃない 民間療法規制に壁(1)

(2010年12月28日付 朝日新聞)

 砂糖玉をなめれば、病気に効くというホメオパシーなど、科学的に効果が証明されていない民間療法や健康食品によるトラブルが後を絶たない。国はようやく、健康食品の広告規制の強化に乗り出した。しかし、いまの規制の仕組みでは、健康被害があっても法律違反に問うのは、ハードルが高いのが実情だ。(長野剛、岡崎明子)

◇ 健康食品 国の監視強化 ◇

 「ご不便をおかけし、大変心痛く感じております」
 今月上旬、ホメオパシー療法の利用者らに療法で使う砂糖玉の販売業者から手紙が届いた。今夏以降に相次いだ報道による影響や、砂糖玉の販売方法の変更で苦労、不便をかけたとして、わびていた。
 ホメオパシーをめぐっては、がん患者らが「効く」と信じ込み、通常の医療を拒否する例が相次いで発覚。死亡する人まで出た。東京都は8月上旬、販売業者に薬事法に基づき立ち入り検査を実施。8月下旬には、日本学術会議が医療現場からの排除を求める会長談話を出した。
 普及団体の日本ホメオパシー医学協会は10月から、使うべき砂糖玉を利用者に伝える療法家が、利用者に直接販売できないようにした。
 薬事法では、医薬品として認められていないものを効果があるように宣伝する広告行為を禁止している。厚生労働省の基準によると、広告とは「顧客の購買意欲を刺激する」もの。利用者が療法家の「顧客」でなければ法に触れない。
 療法家は砂糖玉の種類を伝えるのにとどめ、利用者は販売業者から直接買う仕組みになり、「利用者が療法家の顧客だと証明するのは困難」(厚労省)になった。
 また協会は全国の療法家に利用者本人の意思に反して、通常医療にかかることを妨げないよう指示。利用者が医療を拒めば「私自身の判断と選択により、現代医学の治療を受けません」と記した確認書に署名させるよう徹底した。
 ホメオパシーは、患者を通常医療から遠ざける行為が問題になった。慶応大の磯部哲准教授(医事法)によると、正常な医療の機会を奪うことも、医師法などの違反とする考え方は、広がっている。
 磯部さんは「だが、個人がきちんと判断し、民間療法を信じるのは自由。患者から正常な判断力が奪われていたことを立証する必要があるが、何をもってそう認定するか、が難しい」と話す。
 健康食品については、消費者庁は来年度から虚偽・誇大広告を取り締まる態勢を強化する。砂糖玉や水などの食品を「著しく誤認させる方法」で広告した業者への監視を強め、命令に従わない業者には罰則を科す。

《キーワード》 ホメオパシー
 植物や鉱物などの成分を限りなく薄めた水を砂糖玉に染み込ませ、飲み薬のようにして使う民間療法。がんや皮膚病など多くの病気を治療できる、と普及団体は主張している。

◇ 「香りの水」信じて医療拒否 ◇

 効果が証明されていない民間療法は多い。国民生活センターには2001年度以降、健康食品の苦情や相談が年間1万数千件寄せられている。
 昨年10月に肺がんが見つかった神戸市の女性(61)は「もって2年」と診断された。代替療法の本を書いた福岡県の開業医を受診。「抗がん剤は要らない。3カ月で治る」と、植物の香り成分を入れた水を勧められた。信じて通常の医療を一切受けなくなり、1本0・5リットルが2万円の水を毎月26万円分購入。今春、脳への転移が分かった。
 闘病中の女性は「命がけだったのに許せない」と憤る。開業医は取材に「治るとか抗がん剤が要らないなどとは、言っていない」と話した。
 販売会社の幹部は「顧客は全国に3万人。米国でエイズやがんへの効果も証明済み」という。
 指の開き方で、病気を診断するという療法もある。助手が診断用のカードと一緒に患者の患部を触り、もう片方の手の指で輪を作る。診断者がその輪を引っ張って開けば、がんなどの病気がわかるという。がんの刺激が脳に伝わり、指が開くというのだ。
 この療法をめぐり、国民生活センターには「歯科医に『肩こりの原因は金属アレルギー』と、治療済みの銀歯を抜かれ、かみ合わせが悪くなった」「『心臓が悪い』などと、高額な布団やネックレスなどを売りつけられた」といった苦情が寄せられている。
 療法を広める協会創始者は「効果は証明済み。著名な医学誌に効果を示す論文が掲載された例はないと思うが、一般の医者が原理を理解できないからだ」と主張した。
 厚労省研究班の調査によると、がん患者の2人に1人が健康食品などを利用し、うち半数が「体力・免疫力が高まる」「病気の治療につながる」と期待。利用者の2割が効果を実感していた。しかし利用について、医師から聞かれた人は2割にとどまる。
 民間療法の問題に詳しい福岡市の内科医、酒井健司さん(39)は「多忙な医師が患者の不安や悩みを受け止めきれていない一方、民間療法の療法家はよく話を聞くようだ。患者の心の支えにもなることもある。ただ、現代医療を否定したり、高い対価を払わせたりするようなものは許されない」と話している。

関連ホームページ

■ 添付文書情報
(医薬品医療機器総合機構:PDMA)

正式の使用方法解説書です。

■ くすりの情報ステーション
(クスリの適正使用協議会)

■ 保育園とくすり
(日本保育園保健協議会)

■ 上手なセルフメディケーション
(日本大衆薬工業協会)

市販薬に関する医薬品情報満載

■ おくすり一口メモ
(日本薬学会)

<妊娠と薬>

■ 妊娠と薬情報センター
(国立成育医療研究センター)

■ 妊娠と薬相談外来
(虎の門病院)

■ 妊娠と薬相談クリニック
(聖路加国際病院・生殖医療センター)

■ 妊婦・授乳婦専門薬剤師
(インタビュー記事)